(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】スクリュ機械
(51)【国際特許分類】
B29C 48/25 20190101AFI20240620BHJP
B29C 48/40 20190101ALI20240620BHJP
F16D 1/02 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B29C48/25
B29C48/40
F16D1/02 100
(21)【出願番号】P 2020211738
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 真伸
(72)【発明者】
【氏名】片平 利彰
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-009705(JP,A)
【文献】特開平11-105090(JP,A)
【文献】特開2017-170855(JP,A)
【文献】特開2016-159610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/25
B29C 48/40
F16D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配置されて互いに噛み合う一対のスクリュと、
前記一対のスクリュをそれぞれ軸線周りに回転駆動するための駆動部と、
前記駆動部の回転を減速し一対の出力軸を通じて出力する減速部と、
前記減速部の前記一対の出力軸の端部と前記一対のスクリュの端部とをそれぞれ同軸的に連結する一対の連結部と、を備え、
前記出力軸の前記端部は、連結される前記スクリュの前記端部よりも大きな外径を有し、
前記連結部は、
前記スクリュの前記端部と前記出力軸の前記端部とが挿入される挿入孔を有するカップリングと、
前記カップリングと前記スクリュの前記端部とを固定する固定部と、
前記出力軸の前記端部に取り付けられると共に、周方向に分割される複数の分割片によって構成されて前記出力軸の前記端部よりも大きな外径を有する係止部と、を有し、
前記カップリングは、
前記出力軸の前記端部を収容する第一収容部と、
前記第一収容部よりも大きな内径を有して前記係止部を収容する第二収容部と、
前記第一収容部と前記第二収容部との間に形成される段差部と、を有し、
前記挿入孔の前記段差部が前記係止部に係止されることによって、前記スクリュの軸線方向に沿って前記スクリュへ向かう方向への前記出力軸に対する前記カップリングの相対移動が規制される、
スクリュ機械。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリュ機械であって、
前記連結部は、前記出力軸の前記端部に取り付けられ前記スクリュの前記端部に対向するストッパをさらに有し、
前記係止部は、前記ストッパと前記出力軸の前記端部とによって挟持されて前記出力軸に取り付けられる、
スクリュ機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスクリュ機械であって、
前記係止部は、環状に形成され前記出力軸の周方向全体にわたって前記カップリングの前記段差部に係止される、
スクリュ機械。
【請求項4】
請求項3に記載のスクリュ機械であって、
前記係止部は、第一分割片、第二分割片、及び第三分割片の三つの前記分割片によって、中央孔を有する円環状に構成される、
スクリュ機械。
【請求項5】
請求項4に記載のスクリュ機械であって、
前記カップリングは、前記第二収容部に接続され前記スクリュの前記端部を収容する第三収容部をさらに有し、
前記第一分割片、前記第二分割片、及び前記第三分割片は、それぞれ前記係止部の円形の外周面の一部を構成する外周円弧部を有し、当該外周円弧部に対する弦が前記第三収容部の内径以下に形成され、
前記第一分割片と前記第二分割片とは、互いに同一形状を有し、
前記第三分割片は、
前記係止部の前記中央孔の内周面の一部を構成する内周円弧部と、
前記中央孔の中心軸に平行であって、前記中央孔の内径よりも小さい間隔を空けて互いに平行に設けられ前記外周円弧部と前記内周円弧部とを接続する一対の平行部と、を有する、
スクリュ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2本のスクリュを備えたスクリュ式二軸混練押出機が開示されている。この二軸混錬押出機では、2本のスクリュは、それぞれが軸継手を介して減速機の出力軸へ連結され、減速機が電動機へ連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクリュと減速機の出力軸とを連結する連結部(継手)には、軸方向に相対移動しないようにスクリュと出力軸とを連結することが求められる。そのような連結部の構造としては、例えば、スクリュと出力軸とにわたって設けられるカップリングを、ナットによってスクリュ及び出力軸にねじ締結する構造がある。
【0005】
一方、スクリュ機械には、スクリュの駆動トルクの高トルク化の要望がある。スクリュの駆動トルクを高トルク化するには、駆動部のトルクをスクリュに伝達する減速部の出力軸を大径化する必要がある。出力軸が大径化すると、これに応じて連結部のナットも大径化する。
【0006】
ここで、特許文献1に開示されるような一対のスクリュを備えるスクリュ機械(押出機)では、一対のスクリュの軸間距離は、スクリュ形状等に応じて定められるものであり、スクリュ間のスペースには制限がある。
【0007】
よって、2本のスクリュと減速機の出力軸とをそれぞれ連結する連結部が、カップリングと出力軸とをナットによって締結する構造であると、スクリュと減速機の出力軸とを連結するナット同士で干渉が生じるおそれがある。このため、カップリングと出力軸とをナットによって締結する連結部の構造では、減速機の出力軸の大径化に限界がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、スクリュと減速部の出力軸とを連結する連結部を小型化したスクリュ機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様によれば、スクリュ機械であって、平行に配置されて互いに噛み合う一対のスクリュと、一対のスクリュをそれぞれ軸線周りに回転駆動するための駆動部と、駆動部の回転を減速し一対の出力軸を通じて出力する減速部と、駆動部の一対の出力軸の端部と一対のスクリュの端部とをそれぞれ同軸的に連結する一対の連結部と、を備え、出力軸の端部は、連結されるスクリュの端部よりも大きな外径を有し、連結部は、スクリュの端部と出力軸の端部とが挿入される挿入孔を有するカップリングと、カップリングとスクリュの端部とを固定する固定部と、出力軸の端部に取り付けられると共に、周方向に分割される複数の分割片によって構成されて出力軸の端部よりも大きな外径を有する係止部と、を有し、カップリングは、出力軸の端部を収容する第一収容部と、第一収容部よりも大きな内径を有して係止部を収容する第二収容部と、第一収容部と第二収容部との間に形成される段差部と、を有し、カップリングは、挿入孔の段差部が係止部に係止されることによって、スクリュの軸線方向に沿ってスクリュへ向かう方向への出力軸に対する相対移動が規制される。
【発明の効果】
【0010】
この態様によれば、分割される複数の分割片によって出力軸よりも大きな外径を有する係止部が構成され、当該係止部がカップリングの挿入孔に挿入されて挿入孔の段差部と係止されることで、スクリュへ向かう方向への出力軸とカップリングの相対移動が規制される。このように、出力軸とカップリング、ひいてはスクリュとの相対移動を規制する構造がカップリングの内部で構成されるため、連結部の構成を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る押出機の全体構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る押出機の連結部周辺の構造を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る押出機の係止部の正面図である。
【
図4A】本発明の実施形態に係る押出機の連結構造の組み立て方法を説明する図であり、
図2におけるA矢印からみた係止部の正面図である。
【
図4B】本発明の実施形態に係る押出機の連結構造の組み立て方法を説明する図であり、
図2におけるA矢印からみた係止部の正面図である。
【
図4C】本発明の実施形態に係る押出機の連結構造の組み立て方法を説明する図であり、
図2におけるA矢印からみた係止部の正面図である。
【
図4D】本発明の実施形態に係る押出機の連結構造の組み立て方法を説明する図であり、
図2におけるA矢印からみた係止部の正面図である。
【
図4E】本発明の実施形態に係る押出機の連結構造の組み立て方法を説明する図であり、
図2におけるA矢印からみた係止部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るスクリュ機械について説明する。なお、各図面においては、説明の便宜上、各構成の縮尺を適宜変更しており、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、複数の同一の構成については、その一部にのみ符号を付し、その他については符号を省略することがある。
【0013】
本実施形態のスクリュ機械は、バレル20のスクリュ孔21内に供給される粒状または粉体状の材料をスクリュ10a,10bによって搬送しながら混練し、混練された材料をバレル20の吐出口23から押し出して成形する押出機である。以下では、本実施形態のスクリュ機械を「押出機100」として説明する。
【0014】
押出機100は、
図1に示すように、一対のスクリュ10a,10bと、一対のスクリュ10a,10bが挿入されるスクリュ孔21を有するバレル20と、一対のスクリュ10a,10bをスクリュ孔21内で回転させる駆動部としての電動モータ30と、電動モータ30の回転を減速して一対のスクリュ10a,10bに伝達する減速部40と、を備える。このように、押出機100は、一対のスクリュ10a,10bを備える、いわゆる二軸混練押出機である。
【0015】
バレル20は、一方向に延びるように形成され、その長手方向に沿ってスクリュ孔21が形成される筒状部材である。
【0016】
バレル20の長手方向の一端には、スクリュ孔21内に材料を供給するための供給口22がスクリュ孔21に開口して形成される。バレル20の長手方向の他端には、溶融及び混練された材料により生成された混練物を吐出するための吐出口23がスクリュ孔21に開口して形成される。以下では、スクリュ孔21において供給口22側(
図1中右側)をスクリュ孔21の「上流」、吐出口23側(
図1中左側)をスクリュ孔21の「下流」とも称する。供給口22を通じてスクリュ孔21内に供給された材料は、スクリュ10a,10bによって下流に向けて搬送され、吐出口23を通じてバレル20外に吐出される。
【0017】
また、図示は省略するが、バレル20には、バレル20を加熱する加熱装置、バレル20を冷却する冷却装置、脱揮を行うための真空装置、バレル20の温度を検出する温度センサなどが設けられる。
【0018】
一対のスクリュ10a,10bは、互いに同様の形状を有し、中心軸が所定の間隔を空けて互いに平行に延びるように設けられており、互いに噛み合った状態でバレル20のスクリュ孔21内に挿入される。一対のスクリュ10a,10bは、電動モータ30によって、それぞれの中心軸(軸線)回りに同一方向に回転される。つまり、一対のスクリュ10a,10bは、互いに同期して回転される。以下では、一対のスクリュ10a,10bを総称して単に「スクリュ10」とし、具体的構成について説明する。
【0019】
スクリュ10は、減速部40を介して電動モータ30に連結される基端から先端に向けて、バレル20の長手方向に沿って設けられる軸部材である。スクリュ10の基端が、スクリュ孔21の上流に位置し、先端がスクリュ孔21の下流に位置する。
【0020】
スクリュ10は、外周に螺旋状のフライト11(スクリュ羽根)を有する。供給口22からスクリュ孔21に供給された材料は、回転するスクリュ10によって下流側に向けて移送される。下流側に向けて移送された材料は、スクリュ10に設けられる複数のニーディングディスク等で構成される混練部(図示省略)によって溶融させると共に混練される。混練部によって溶融された材料は、吐出口23から押し出されてバレル20外に吐出される。
【0021】
電動モータ30は、コントローラ(図示省略)によって作動が制御される。電動モータ30のモータ軸31は、減速部40に連結され、モータ軸31の回転は、減速部40を介して一対のスクリュ10a,10bに伝達される。これにより、一対のスクリュ10a,10bが電動モータ30によって回転駆動される。
【0022】
減速部40は、一対の出力軸41a,41bを備え、複数の歯車によって構成される歯車機構(図示省略)によって電動モータ30のモータ軸31の回転を減速して一対の出力軸41a,41bを通じて出力する。一対の出力軸41a,41bは、互いに同方向に同期して回転する。減速部40の歯車機構の構成は、公知の構成を採用できるため、詳細な説明及び図示は省略する。
【0023】
減速部40の一対の出力軸41a,41bは、一対の連結部50a,50bによって一対のスクリュ10a,10bにそれぞれ同軸的に連結される。
【0024】
以下、一対のスクリュ10a,10bと一対の出力軸41a,41bとの連結構造について、具体的に説明する。なお、一方のスクリュ10aと一方の出力軸41aとの連結構造と、他方のスクリュ10bと他方の出力軸41bとの連結構造とは、互いに同様の構成である。よって、以下では、一対のスクリュ10a,10bを総称して「スクリュ10」、一対の出力軸41a,41bを総称して「出力軸41」、一対の連結部50a,50bを総称して「連結部50」とし、スクリュ10と出力軸41の連結構造について説明する。
【0025】
図2に示すように、スクリュ10と出力軸41とは、連結部50によって同軸的に連結される。連結部50に連結される出力軸41の端部42の外周には、スプライン42aが形成される。連結部50に連結されるスクリュ10の端部12の外周には、スプライン12aが形成される。本実施形態では、出力軸41の端部42の外径は、スクリュ10の端部12の外径よりも大きく形成される。
【0026】
連結部50は、スクリュ10の端部12と出力軸41の端部42とが挿入される挿入孔51aを有する筒状のカップリング51と、カップリング51とスクリュ10の端部12とを固定する固定部60と、出力軸41の端部42に取り付けられる係止部70と、出力軸41の端部42に取り付けられ、スクリュ10の端部12が軸方向に当接可能なストッパ80と、を有する。
【0027】
カップリング51の挿入孔51aは、カップリング51の軸方向両端部に開口する貫通孔であり、スクリュ10及び出力軸41と同軸的に形成される。カップリング51は、出力軸41の端部42を収容する第一収容部52と、第一収容部52よりも大きな内径を有して係止部70を収容する第二収容部53と、スクリュ10の端部12を収容する第三収容部54と、を有する。第一収容部52、第二収容部53、及び第三収容部54は、この順番で減速部40側からスクリュ10側(
図2中右側から左側)向けて、カップリング51の軸方向に並んで設けられる。第一収容部52の内周面52a、第二収容部53の内周面53a、及び第三収容部54の内周面54aによって、挿入孔51aが形成される。また、第一収容部52と第二収容部53との間には、内径差によって段差部55が形成される。段差部55は、円環状の平面である。
【0028】
第一収容部52の内周面52aは、出力軸41の端部42のスプライン42aとスプライン結合される。よって、カップリング51は、スプライン結合を通じて出力軸41の回転が伝達され、出力軸41の回転に伴って回転する。
【0029】
第三収容部54の内周面54aの一部は、スクリュ10の端部12のスプライン12aとスプライン結合される。よって、スクリュ10は、スプライン結合を通じてカップリング51、ひいては出力軸41の回転が伝達され、出力軸41の回転に伴って回転する。
【0030】
第二収容部53の内径D2は、第一収容部52の内径D1、ひいては第三収容部54の内径D3よりも大きく形成される(D2>D1>D3)。なお、出力軸41の端部42の外径は、第一収容部52の内径D1に略一致する。係止部70の外径は、第二収容部53の内径D2に略一致する。スクリュ10の端部12の外径は、第三収容部54の内径D3に略一致する。よって、以下では、「出力軸41の端部42の外径D1」、「係止部70の外径D2」、「スクリュ10の端部12の外径D3」とも称する。
【0031】
係止部70は、
図3に示すように、周方向に分割される複数の分割片によって、中央孔70aを有する円環状に構成される。係止部70は、出力軸41の端部42の外径D1よりも大きな外径D2を有しており、径方向外側の一部は、カップリング51の段差部55に対向している。
【0032】
係止部70は、
図2に示すように、ストッパ80によって出力軸41の先端に取り付けられる。ストッパ80は、係止部70の中央孔70aを挿通する円柱状のボス部81と、ボス部81の端部に設けられボス部81よりも大きな外径を有するフランジ部82と、を有する。フランジ部82とは反対側のボス部81の端部は、出力軸41の端面に当接する。フランジ部82の外径は、第三収容部54における挿入孔51aの内径よりも小さい。つまり、フランジ部82の外径は、係止部70の外径D2よりも小さい。
【0033】
ストッパ80は、図示しないボルトによって出力軸41の端部42に取り付けられる。これにより、係止部70は、出力軸41の端面とストッパ80のフランジ部82との間で挟持されて出力軸41に取り付けられる。係止部70とフランジ部82とは、常時当接する構成でもよいし、係止部70とフランジ部82との間に隙間が設けられるものでもよい。フランジ部82の端面は、円形の平面に形成され、スクリュ10の端面に対向する。
【0034】
係止部70は、
図3に示すように、所定の板厚を有する環状のリング部材を周方向に分割した複数の分割片によって構成される。本実施形態では、係止部70は、第一分割片71、第二分割片72、及び第三分割片73の3つに分割された分割片により構成される。
【0035】
第一分割片71、第二分割片72、及び第三分割片73は、それぞれ係止部70の円形の外周面の一部を構成する外周円弧部71a,72a,73aと、係止部70の中央孔70aの内周面の一部を構成する内周円弧部71b,72b,73bと、を有する、略扇形形状に形成される。第一分割片71、第二分割片72、及び第三分割片73、の各外周円弧部71a,72a,73aに対する弦の寸法L1,L2,L3は、第三収容部54の内径D3以下に形成される(L1≦D3、L2≦D3、L3≦D3)。言い換えると、第一分割片71、第二分割片72、及び第三分割片73の外形における最大寸法L1,L2,L3は、第三収容部54の内径D3以下に形成される。これにより、第一分割片71、第二分割片72、及び第三分割片73は、係止部70の中央孔70aの中心軸とカップリング51の挿入孔51aの中心軸とが平行となる姿勢でスクリュ10側から挿入孔51a内に収容することができる。
【0036】
第一分割片71と第二分割片72とは、互いに同一形状に形成される。第三分割片73は、外周円弧部73aに対する弦の寸法L3が第一分割片71及び第二分割片72の弦の寸法L1,L2よりも小さい(L1=L2>L3)。第三分割片73は、係止部70の中央孔70aの内径よりも小さい間隔を空けて互いに平行に設けられる一対の平行部73c,73dを有する。つまり、第三分割片73の外周円弧部73aに対する弦の寸法L3は、係止部70の中央孔70aの内径D4よりも小さい(D4>L3)。一対の平行部73c,73dは、第一分割片71及び第二分割片72に対向する平面であって、第三分割片73の外周円弧部73aと内周円弧部73bとを接続する。
【0037】
また、第一分割片71と第二分割片72には、第三分割片73の平行部73c,73dに面接触する平面部71c,72cと、平面部71c,72cと交差するように平面部71c,72cに対して垂直に形成される面取り部71d,72dと、がそれぞれ設けられる。面取り部71d,72dが設けられることで、第一分割片71及び第二分割片72の一方の端部を尖った形状(いわゆるピン角)とすることがなく、応力集中の発生を防止できる。また、面取り部71d,72dが設けられることで、外周円弧部71a,72aに対する弦の寸法L1,L2が短くなるため、第一分割片71及び第二分割片72を挿入孔51aへと挿入しやすくなる。
【0038】
固定部60は、
図2に示すように、スクリュ10の端部12の外周に形成された環状の凹部12bに装着される割りカラー61と、割りカラー61を介してスクリュ10の端部12とカップリング51とを連結するナット62と、を有する。
【0039】
割りカラー61は、周方向に分割された形状を備え、径方向に拡縮可能なリング部材である。割りカラー61は、スクリュ10の端部12の外周に装着された状態で、スクリュ10の端部12の外径D3よりも大きな外径となるように構成されている。割りカラー61は、スクリュ10の凹部12bに対して軸方向に係止されている。
【0040】
カップリング51の第三収容部54の外周には、ナット62が螺合する雄ねじ部54bが形成される。ナット62の内周には、割りカラー61に対して軸方向に当接する着座部63が形成される。ナット62の着座部63が割りカラー61に当接した状態でナット62をカップリング51の雄ねじ部54bに螺合させ、所定の締め付け力で締め付けることで、ナット62及び割りカラー61を介してスクリュ10とカップリング51とがねじ締結される。このようにして、スクリュ10は、固定部60によりカップリング51と固定される。
【0041】
次に、主に
図4A~4Eを参照して、本実施形態におけるスクリュ10と出力軸41との連結方法について説明する。なお、
図4A~4Eでは、図中上下方向が鉛直方向の上下方向を表している。また、
図4A~4Eにおける破線は、第三収容部54の内周面54aを模式的に示すものである。
【0042】
スクリュ10と出力軸41とを連結するには、まず、出力軸41の端部42をカップリング51の第一収容部52に挿入して、出力軸41とカップリング51とをスプライン結合する。
【0043】
次に、カップリング51の第二収容部53に係止部70を収容する。具体的には、
図4A及び
図4Bに示すように、第三分割片73が配置される開口を相対的に下方に向けた状態で、第一分割片71及び第二分割片72を他方側(スクリュ10側)から挿入孔51aに挿入する。この際、第一分割片71及び第二分割片72は、最大寸法L1,L2が第三収容部54の内径D3よりも小さいため、
図4Aに示すように、第二収容部53に収容される姿勢(
図2に示す姿勢)のまま、スクリュ10側から挿入孔51aに容易に挿入することができる。
【0044】
次に、
図4Cに示すように、挿入孔51a内で第一分割片71及び第二分割片72を挿入孔51aの中心軸回りに180°回転させ、第三分割片73を配置する開口を相対的に上方に配置する。この状態では、第一分割片71及び第二分割片72の平面部71c,72cが、鉛直方向に沿うように配置される。そして、第三分割片73を挿入孔51a内に挿入して、第一分割片71と第二分割片72との間に配置して、円環状の係止部70を構成する。
【0045】
ここで、第三分割片73には一対の平行部73c,73dが設けられ、第一分割片71及び第二分割片72には平面部71c,72cが設けられる。このため、まず
図4Dに示すように挿入孔51aの径方向中央付近から第一分割片71と第二分割片72との間に第三分割片73を挿入し、その後径方向外側(
図4D中上側)に移動させることで、第一分割片71と第二分割片72との間に配置することができる。このように、一度挿入孔51aの中心付近から挿入孔51a内に第三分割片73を挿入し、その後径方向に移動させることで、第三分割片73を所定の位置に配置して、第一収容部52及び第三収容部54の内径よりも大きな外径の係止部70を容易に構成することができる。
【0046】
次に、
図4Eに示すように、第一分割片71、第二分割片72、及び第三分割片73を挿入孔51aの中心軸周りに180°回転させ、第三分割片73を相対的に下方に配置する。これにより、支持がなくても第一分割片71、第二分割片72、及び第三分割片73がばらけることがなく、円環状の係止部70の形状を保つことができる。
【0047】
次に、ストッパ80を挿入孔51aに挿入し、係止部70の中央孔70aにストッパ80のボス部81を挿入する(
図2参照)。この状態で、ストッパ80をボルトによって出力軸41に取り付ける。これにより、係止部70は、ストッパ80によって出力軸41に取り付けられる。
【0048】
次に、スクリュ10の端部12の外周にナット62を挿入し、その後、スクリュ10の端部12の外周に割りカラー61を取り付ける。外周にナット62及び割りカラー61が取り付けられたスクリュ10の端部12をストッパ80に当接するまでカップリング51の挿入孔51aに挿入し、スクリュ10とカップリング51をスプライン結合する。
【0049】
次に、ナット62を所定の締め付け力によってカップリング51にねじ締結することで、スクリュ10とカップリング51とを固定する。
【0050】
以上のようにして連結部50によってスクリュ10と出力軸41とが連結される。これにより、出力軸41へ向かう方向への軸方向へのスクリュ10の移動は、スクリュ10がストッパ80に当接することで規制される。また、出力軸41から離れる方向へのスクリュ10の移動は、スクリュ10と連結されたカップリング51の段差部55が、出力軸41に取り付けられた係止部70の外周に係止されることで規制される。このように、スクリュ10と出力軸41とは、連結部50によって軸方向への相対移動不能に連結される。これにより、一対のスクリュ10a,10bが軸方向に相対移動することで生じるスクリュ10a,10bの噛み合いのずれやスクリュ10a,10b同士の干渉を防止することができる。
【0051】
また、スクリュ10と出力軸41とは、カップリング51の内部の段差部55とカップリング51に収容される係止部70とによって軸方向に係止されるため、連結部50が径方向に大型化することを抑制できる。よって、スクリュ10の駆動トルクを高トルク化するために出力軸41を大径化しやすくなる。
【0052】
また、本実施形態では、減速部40の出力軸41の端部42の外径D1が、スクリュ10の端部12の外径D3よりも大きい。このため、カップリング51の内周の段差部55と係止部70とを係止するために、係止部70の外径D2は、出力軸41の端部42の外径D1、ひいてはスクリュ10の端部12の外径D3よりも大きく形成される(D2>D1>D3)。これに対し、係止部70は、周方向に分割される複数の分割片によって構成される形状であるため、係止部70の外径がスクリュ10の端部12の外径D3(第三収容部54の内径D3)より大きい場合であっても、挿入孔51a内に挿入しやすく、組み立てを容易にすることができる。
【0053】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。また、各変形例において、上記実施形態と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0054】
上記実施形態では、スクリュ機械は、一対のスクリュ10a,10bを備える、いわゆる二軸混練押出機である。これに対し、スクリュ機械は、少なくとも一対のスクリュを備えるものであればよく、3つ以上の複数のスクリュを備える多軸押出機でもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、スクリュ機械は、材料を混練して押し出す押出機100である。これに対し、スクリュ機械は、押出機100に対して材料を供給する多軸の材料供給機(サイドフィーダ)であってもよい。材料供給機のスクリュは、混練部を備えておらず、材料を混練・溶融せずに移送する。
【0056】
また、上記実施形態では、一対のスクリュ10a,10bは、互いに同一方向に回転する。これに対し、一対のスクリュ10a,10bは、互いに反対方向に回転するものでもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、係止部70は、3つの分割片によって構成され、周方向の全周がカップリング51に対して接触する円環状に構成される。これに対し、係止部70は、2つの分割片によって構成されてもよいし、4つ以上の分割片によって構成されてもよい。また、係止部70は、例えば分割片の周方向の間に隙間を有する形状に形成されて、周方向の一部だけがカップリング51に対して接触する構成でもよい。また、上記実施形態では、3つの分割片によって係止部70が構成され、第三分割片73は、第一分割片71及び第二分割片72とは異なる形状であるが、各分割片が互いに同一の形状に形成されて係止部70が構成されてもよい。
【0058】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0059】
押出機100は、平行に配置されて互いに噛み合う一対のスクリュ10と、一対のスクリュ10をそれぞれ軸線周りに回転駆動するための電動モータ30と、電動モータ30の回転を減速し一対の出力軸41を通じて出力する減速部40と、減速部40の一対の出力軸41の端部42と一対のスクリュ10の端部12とをそれぞれ同軸的に連結する一対の連結部50と、を備え、出力軸41の端部42は、連結されるスクリュ10の端部12よりも大きな外径を有し、連結部50は、スクリュ10の端部12と出力軸41の端部42とが挿入される挿入孔51aを有するカップリング51と、カップリング51とスクリュ10の端部12とを固定する固定部60と、出力軸41の端部42に取り付けられると共に、周方向に分割される複数の分割片によって構成されて出力軸41の端部42よりも大きな外径を有する係止部70と、を有し、カップリング51は、出力軸41の端部42を収容する第一収容部52と、第一収容部52よりも大きな内径を有して係止部70を収容する第二収容部53と、第一収容部52と第二収容部53との間に形成される段差部55と、を有し、挿入孔51aの段差部55が係止部70に係止されることによって、スクリュ10の軸線方向に沿ってスクリュ10へ向かう方向への出力軸41に対するカップリング51の相対移動が規制される。
【0060】
また、押出機100では、連結部50は、出力軸41の端部42に取り付けられスクリュ10の端部12に対向するストッパ80をさらに有し、係止部70は、ストッパ80と出力軸41の端部42とによって挟持されて出力軸41に取り付けられる。
【0061】
このような押出機100によれば、分割される複数の分割片によって出力軸41よりも大きな外径を有する係止部70が構成され、当該係止部70がカップリング51の挿入孔51aに挿入されて挿入孔51aの段差部55と係止されることで、スクリュ10へ向かう方向への出力軸41とカップリング51の相対移動が規制される。このように、出力軸41とカップリング51、ひいてはスクリュ10との相対移動を規制する構造がカップリング51の内部で構成されるため、連結部50の構成を小型化できる。
【0062】
また、押出機100では、係止部70は、環状に形成され出力軸41の周方向全体にわたってカップリング51の段差部55に係止される。
【0063】
この構成では、係止部70と挿入孔51aの段差部55との接触面積を充分に確保でき、係止部70と段差部55とをより確実に係止することができる。
【0064】
また、押出機100では、係止部70は、第一分割片71、第二分割片72、及び第三分割片73の三つの分割片によって、中央孔70aを有する円環状に構成される。
【0065】
また、押出機100では、カップリング51は、第二収容部53に接続されスクリュ10の端部12を収容する第三収容部54をさらに有し、第一分割片71、第二分割片72、及び第三分割片73は、それぞれ係止部70の円形の外周面の一部を構成する外周円弧部71a,72a,73aを有し、当該外周円弧部71a,72a,73aに対する弦の寸法L1,L2,L3が第三収容部54の内径以下に形成され、第一分割片71と第二分割片72とは、互いに同一形状を有し、第三分割片73は、係止部70の中央孔70aの内周面の一部を構成する内周円弧部73bと、中央孔70aの中心軸に平行であって、中央孔70aの内径よりも小さい間隔を空けて互いに平行に設けられ外周円弧部73aと内周円弧部73bとを接続する一対の平行部73c,73dと、を有する。
【0066】
この構成では、第三分割片73が一対の平行部73c,73dを有するため、先に第一分割片71及び第二分割片72を挿入孔51aに挿入し、その後第三分割片73を挿入孔51aに挿入した後、平行部73c,73dに沿って第三分割片73を径方向外側に移動させることで、係止部70が構成される。このような構成によれば、出力軸41よりも外径が大きい係止部70を挿入孔51a内で容易に組み立てることができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0068】
100 押出機
10 スクリュ
12 スクリュの端部
30 電動モータ(駆動部)
40 減速部
41 出力軸
42 出力軸の端部
50 連結部
51 カップリング
51a 挿入孔
52 第一収容部
53 第二収容部
54 第三収容部
55 段差部
60 固定部
70 係止部
70a 中央孔
71 第一分割片
72 第二分割片
73 第三分割片
71a、72a、73a 外周円弧部
73b 内周円弧部
73c、73d 平行部
80 ストッパ