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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】蛍光を発しない黒化光学部品
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/12 20060101AFI20240620BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G02B1/12
G01N21/64 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020534338
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 US2018066786
(87)【国際公開番号】W WO2019126492
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】62/608,953
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】エリーナ エー.ビトル
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-053638(JP,A)
【文献】特開平09-071872(JP,A)
【文献】特開2013-019819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10-1/18
C23C 22/00-22/86
G01N 21/62-21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学測定デバイスの光学部品を黒化させる方法であって、
表面を光学的に黒化させ、250nm~600nmの範囲内の光に曝されたときに非蛍光性である光学的に黒化された光路をもたらすのに有効な時間、光路を画定する光学部品の表面を、亜セレン酸及び遷移金属を含む光学的黒化組成物に曝すことと、
前記光学部品の前記表面から、残留している光学的黒化組成物を除去することと、
前記光学部品を乾燥させることと、を含み、
前記遷移金属は銅を含む、方法。
【請求項2】
前記光学的に黒化させた経路を画定する前記表面が、紫外光に曝されたときに蛍光発光を放射しないように、前記光路が、非蛍光性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学的黒化組成物が、有機染料を含まない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
亜セレン酸が、前記光学的黒化組成物の0.05体積パーセント~1体積パーセントの範囲であり、水が、80体積パーセント超である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記遷移金属が、前記光学的黒化組成物の0.1~3体積パーセントの範囲の金属銅である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光学部品の前記表面を、亜セレン酸を含む前記光学的黒化組成物に曝すことが、
前記光学部品の前記表面を、第1の濃度の亜セレン酸に曝すことと、
前記表面から前記第1の濃度の残留している亜セレン酸を除去することと、
続いて、前記光学部品の前記表面を、前記第1の濃度より高い第2の濃度の亜セレン酸に曝すことと、を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記光学部品の前記表面を、前記第1の濃度の亜セレン酸に曝すことが、前記光学部品の前記表面を、前記第2の濃度の亜セレン酸に曝されるよりも長い時間、前記光学部品の前記表面を、前記第1の濃度の亜セレン酸に曝すことを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の濃度の亜セレン酸が、前記光学的黒化組成物の0.1体積パーセント~0.4体積パーセントの範囲であり、前記第2の濃度の亜セレン酸が、前記光学的黒化組成物の0.15体積パーセント~0.6体積パーセントの範囲である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記光学部品の前記表面を、前記光学的黒化組成物に曝すことが、前記光学部品を、前記光学的黒化組成物に浸漬することを含み、
前記光学部品の前記表面から、残留している光学的黒化組成物を除去することが、前記光学部品の前記表面を水ですすぐことを含み、
前記光学部品を、乾燥させることが、華氏250度~華氏1350度の範囲の温度で乾燥させることと、を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記光学部品が、光エミッタのための開口部および光検出器のための開口部を画定する光センサーのためのハウジングであり、前記光路が、前記光路に光学的に接続された光学窓を介して前記光エミッタからの光を、分析中の流体サンプル中へと指向し、前記光学窓を介して前記流体サンプルから光を受け取り、前記光を前記光検出器に指向するように構成される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
分析中の流体サンプルから光学レンズを介して光を受け取るように構成された光路を画定する金属で形成された表面を含む、光学測定デバイスの光学部品であって、
前記表面は、セレン化金属で光学的に黒化されており、250nm~600nmの範囲内の光への暴露に対する応答において蛍光発光を放射せず、
前記セレン化金属における金属が、銅を含み、前記光学部品の表面が、アルミニウムまたはステンレス鋼から製造され、
前記表面が、陽極酸化されておらず、有機分子を含有するコーティングを含まない、光学部品。
【請求項12】
光路を有するハウジングであって、前記光路に光学的に接続された光学窓を介して光を分析中の流体サンプル中へと指向し、前記光学窓を介して前記流体サンプルから光を受け取る、ハウジングと、
前記光路に光を放射するように配置される光エミッタと、
前記光路から光を受け取るように配置される光検出器と、を含む、光学測定デバイスの光センサーであって、
前記光路を画定する前記ハウジングの表面が、金属で形成され、かつセレン化金属で光学的に黒化され、紫外光への曝露に対する応答において分析中の前記流体サンプルによって放射される蛍光放射線よりも弱い蛍光放射線を放射し、
前記光路を画定する前記ハウジングの前記表面が、250ナノメートル~600ナノメートルの波長内の光に曝される応答において蛍光発光を放射せず、
前記セレン化金属における金属が、銅を含む、光センサー。
【請求項13】
記ハウジングの表面が、アルミニウムまたはステンレス鋼から製造された、請求項12に記載の光センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連事項
本出願は、2017年12月21日に出願された米国特許出願第62/608,953号の優先権を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、光学測定デバイスに関し、より具体的には、蛍光光度計での使用に好適な光学部品に関する。
【背景技術】
【0003】
クリーニング作業および抗菌作業において、商業的使用者(例えば、レストラン、ホテル、食品、および飲料プラント、食料雑貨店など)は、製品を効果的に機能させるために、クリーニング製品または抗菌製品の濃度を重視している。クリーニング製品または抗菌製品が(例えば、濃度問題に起因して)効果的に機能しない場合、商業的使用者は、製品を低品質と見なすことがある。また最終消費者も、かかる製品の商業的提供者を、劣悪なサービスを提供している者と認識する場合がある。さらに、商業的使用者は、政府の規制当局および保健機関によって調査かつ/または制裁を受けることがある。したがって、例えば、製品の濃度が、指定された濃度範囲内にあるか否かを判定するために流体溶液の特性をモニターすることができるシステムに関するニーズが存在する。同じことが、他の用途、例えば、水処理、害虫駆除、飲料およびボトリングの作業、石油およびガスの精製と処理作業などにも当てはまり得る。
【0004】
製品の濃度をモニターする1つの方法は、サンプル(およびサンプル内の製品)が所定の波長の光に曝されるときに発生する製品の蛍光をモニターすることである。例えば、製品内の化合物または製品に添加された蛍光トレーサーは、特定の波長の光に曝されると蛍光を発し得る。そのとき、製品の濃度は、化合物の蛍光を測定し、その測定された蛍光に基づいて化学物質の濃度を計算する蛍光光度計を使用して判定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分析対象のサンプル中の蛍光化合物の濃度が低い用途では、サンプル自体によって、またはサンプルを分析する機器によって引き起こされた信号干渉により、測定エラーおよび不整合が生じる場合がある。例えば、分析対象のサンプルからの信号が弱い場合、干渉源からのバックグラウンド蛍光がサンプルの信号よりも強くなり、サンプルの濃度を判定することが難しい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概して、本開示は、光センサーの部品を光学的に黒化させるための技術と、そのように黒化させた光学部品とを対象にするものであり、得られた光学的に黒化した部品は、実質的または完全に非蛍光性である。光学測定中に光に曝される可能性のある光センサーハウジングまたは他の光学部品を構築するプロセスにおいて、光学部品の表面は、光学的に黒化させるか、または光学的に黒化させた材料で形成されるように処理することができる。光学的に黒化させた表面は、作動中に光センサー内の迷光を吸収し、信号ノイズを抑制し、かつ光センサーの性能を向上させるのに役立ち得る。
【0007】
蛍光光センサーでは、光は、調査中のサンプルに発光スペクトルで指向され、サンプルからの蛍光応答が、励起スペクトル内で検出される。蛍光光センサーは、単純な吸光度測定で検出することができるものよりも低い桁の蛍光応答を検出し得る。これにより、サンプル中の少量の対象分析物を検出するための高感度を提供することができる。
【0008】
実際には、光センサーで典型的に使用される光学的に黒化しているコーティングおよび光学的に黒くなった材料は、発光スペクトルに曝されたときに蛍光を発する部品または分子を含有し得る、ことが観察されている。これらの自己蛍光材料によって放射される蛍光の量は、調査中のサンプルによって放射される蛍光の量と比較して低い場合がある。しかしながら、光センサーの設計者は、改良された正確さと予測性で、さらにより低レベルの蛍光分子を検出しようとするため、センサーの光学的に黒化した表面の蛍光が、センサー性能を制限するエラーの原因をもたらす。センサーの光学的に黒化した表面によって放射される蛍光は、調査中のサンプルからの蛍光信号を妨害し、センサーの検出能力を制限する場合がある。
【0009】
本開示のいくつかの例に従って、非蛍光性の光学的に黒化した経路をもたらす、光学部品を、光学的に黒化させるための方法を説明する。例えば、光学部品は、表面を光学的に黒化し、非蛍光性の光学的に黒化した表面を提供するのに有効な時間、亜セレン酸を含む光学的黒化組成物に曝され得る。いくつかの例では、光学的ブラッキング組成物は、亜セレン酸と反応してセレン化金属コーティングを形成する遷移金属も含む。光学的黒化組成物中に含まれ得る遷移金属の例としては、ニッケル、亜鉛、および銅が挙げられるが、それらに限定されない。いずれの場合でも、光学的ブラッキング組成物による処理によって、光学的に黒化され非蛍光性である、作動中に発光スペクトルに曝される表面を有する光学部品を製造することができる。
【0010】
一例では、光学部品を黒化させる方法を説明する。その方法は、表面を光学的に黒化させ、非蛍光性である光学的に黒化された光路をもたらすのに有効な時間、光路を画定する光学部品の表面を、亜セレン酸を含む光学的黒化組成物に曝すことを含む。その方法は、光学部品の表面から、残留している光学的黒化組成物を除去することと、光学部品を乾燥させることと、をさらに含む。
【0011】
別の例では、光学部品を説明する。光学部品は、分析中の流体サンプルから光学レンズを介して光を受け取るように構成された光路を画定する金属で形成された表面を含む。その例は、表面がセレン化金属で光学的に黒化されており、紫外光に曝される応答において蛍光発光を放射しないことを明示する。
【0012】
別の例では、ハウジングと、光エミッタと、光検出器と、を含む光センサーを説明する。ハウジングは、光路に光学的に接続された光学窓を介して光を分析中の流体サンプル中へと指向し、光学窓を介して流体サンプルから光を受け取る光路を有する。光エミッタは、光路に光を放射するように配置される。光検出器は、光路から光を受け取るように配置される。ハウジングは、金属で形成され、光路を画定するハウジングの表面は、セレン化金属で光学的に黒化される。その例は、ハウジングの表面が、紫外光への曝露に対する応答において、分析中の流体サンプルによって放射される蛍光放射線よりも弱い蛍光放射線を放射することを明示する。
【0013】
1つまたは複数の例の詳細が、添付の図面および以下の説明に記載される。他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】光学部品を黒化するための例示のプロセスを図示している流れ図である。
【0015】
図2】光学部品を黒化するための別の例示のプロセスを図示している流れ図である。
【0016】
図3】本開示による、光学的に黒化された部品を含み得る光センサーの例示的な構成のブロック図である。
【0017】
図4図3の光センサーに使用することができ、かつ本開示の技術に従って光学的に黒化された1つ以上の光学部品を含むことができる、部品の例示的な配列の概略図である。
【0018】
図5】本開示に従って光学的黒化組成物で処理された光学部品の蛍光に対する標的トレーサー分子の蛍光を図示する例示的なプロットである。
【0019】
図6】黒のアクリル絵の具でコーティングされた光学部品の蛍光に対する標的トレーサー分子の蛍光を図示する例示的なプロットである。
【0020】
図7】黒の陽極酸化されたアルミニウム光学部品の蛍光に対する標的トレーサー分子の蛍光を図示する例示的なプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一般に、本開示は、光学的に黒化させた光学部品と、光学部品を光学的に黒化させるための技術と、に関する。光学部品という用語は、概して、より大きな光センサーアセンブリの一部を構成し(例えば、光センサーハウジングの内部に配置されるか、または光センサーハウジングの一部を形成する)、かつ光センサーアセンブリの作動中に光が当たる物理的要素を指す。例えば、光学部品は、分析中のサンプル中に放射された光が、光エミッタからサンプルに移動するときに光る表面、および/または分析中のサンプルから受け取った光が、サンプルから光検出器に移動するときに光る表面を画定することができる。以下でより詳細に考察するいくつかの例では、光学部品は、光検出器と、分析中のサンプルと接触して配置されるように構成されたレンズとの間に延在している光路であるか、または光路を画定する。
【0022】
光学部品の特定の構成とは無関係に、光学部品は、開示の例示的な技術に従って光学的に黒化され得る。得られる光学的に黒化させた光学部品は、光学的に黒化させた部品の表面に当たる光が、表面による蛍光発光を引き起こすように、非蛍光性であり得る。いくつかの例では、光学部品は、亜セレン酸を含む光学的黒化組成物に曝される。例えば、光学的黒化組成物は、亜セレン酸と、部品の表面にセレン化金属コーティングを形成するように選択された遷移金属と、を含み得る。遷移金属は、周期表の第3族から第12族までの1つ以上の元素、例えば、それらの組み合わせであり得る。得られるセレン化金属コーティングは、例えば、可視スペクトル内の光に曝されたときに、実質的または完全に非蛍光性であり得る。例えば、蛍光センサーシステムに実装されたとき、光学部品の光学的に黒化された表面からの蛍光発光の強度は、分析中のサンプルからの蛍光発光の強度よりも小さく、例えば、サンプルからの蛍光発光の強度よりも、少なくとも1桁小さい、少なくとも2桁小さい、少なくとも5桁小さい、または少なくとも10桁小さい場合がある。
【0023】
従来の黒化組成物で処理された光学部品は、分析中のサンプルから放射された蛍光応答を妨害する蛍光発光を予想外に示し得ることが観察されている。励起波長において光センサーを介して放射された光は、分析中のサンプルから、ならびに、従来の黒化組成物を含有する光センサーの表面から、蛍光発光を励起波長で発光させ得る。光センサー自体の1つ以上の光学部品からのこれらの蛍光発光は、特にサンプルに比較的低レベルの蛍光分子が含有されているときに、サンプルから受信した蛍光信号に干渉する可能性がある。
【0024】
光センサー部品上のコーティングからの干渉は、任意の光センサー構成の作動に影響を及ぼす可能性があるが、干渉は、(例えば、分析中の流体サンプルと接触する単一のレンズに光学的に接続された)共有光路を介して光を放射および検出する光センサー構成に関してより大きい影響を及ぼす可能性がある。分析中の流体サンプルの反対側にエミッタと検出器とを有するパススルー光センサー構成の場合、センサーのエミッタ側における光学部品の表面からの蛍光発光は、センサーのエミッタ側に到達する前に減衰され得る。対照的に、共通の光路を介して光を送受信する光エミッタと検出器とを有する光センサーの場合、光路に当たる光エミッタからの光によって引き起こされる蛍光発光は、パススルー構成と同じ程度まで減衰せずに、光検出器よって検出され得る。したがって、開示による光学的黒化技術および光学的黒化部品は、流体サンプル中に光を放射し、かつ共通(例えば、単一)のレンズおよび共有の光路を介して流体サンプルから光を受け取るように構成された光センサーに特に有用であり得る。とは言え、その技術および部品は、広範囲の異なる光センサー構成への適用性を見出すことができ、本開示はこの点に限定されない。
【0025】
図1は、光学部品を黒化するための例示のプロセスを図示している流れ図である。その技術は、光学的黒化のための準備において光学部品をクリーニングすること(100)と、光学部品の表面を、その光学的黒化組成物に曝すこと(102)と、を含む。光学部品の表面を光学的黒化組成物に曝した後、残留している光学的黒化組成物を部品から除去し(104)、光学部品を乾燥させる(106)。以下でより詳細に説明するように、様々な異なる光学的黒化組成物成分および処理条件を使用して、図1の例示的なプロセスを利用して光学的に黒化させた光学部品を作製することができる。
【0026】
上記のように、光学部品は、より大きな光センサーアセンブリの一部を構成し(例えば、光センサーハウジングの内部に配置されるか、またはその一部を形成する)、光センサーアセンブリの作動中に光が当たる物理的要素であり得る。いくつかの例では、光学的に黒化される光学部品は、金属で製造される。例えば、光学部品は、アルミニウム、ステンレス鋼、または他の光学的に互換性のある金属から製造することができる。
【0027】
光学的に黒化される光学部品を準備するために、光学部品は、光学的黒化組成物に曝される前に任意選択的に清浄にすることができる(102)。クリーニングにより、部品の表面と光学的黒化組成物との間の反応を抑制することできる油、汚れ、破片、または他の表面汚染を、除去することができる。光学部品の表面の機械的クリーニングおよび/または光学部品の表面の化学的クリーニングなどの任意の好適なクリーニング技術を使用して、後続の処理のために光学部品を準備することができる。光学部品は、水性液体(例えば、液体水、蒸気)または有機溶媒などのクリーニング液中に浸漬またはクリーニング液ですすがれて、部品の表面を清浄し、さらなる処理に準備することができる。
【0028】
いくつかの例では、光学部品は、酸性溶液に光学部品を浸漬することによって、光学的黒化組成物に曝される前に清浄する。酸性溶液の強度は、光学部品の表面に存在すると予想される汚染物質の種類に応じて変えることができる。例えば、酸性溶液は、比較的弱い有機酸または比較的強い鉱酸であり得る。使用される場合、酸の濃度は、1体積パーセントから10体積パーセント、例えば、3体積パーセントから7体積パーセントの範囲であり得る。一例では、リン酸溶液を使用して光学部品を清浄する。他の浸漬時間を使用することもできるが、光学部品は、酸性溶液に、少なくとも30秒間、例えば、1分~2分の範囲の時間浸漬することができる。
【0029】
光学的黒化組成物とのその後の接触を阻害し得る実質的にすべての汚染物質を除去するのに有効な時間、光学部品をクリーニング液に曝した後、その光学部品を、さらなる処理の前に、乾燥させることができる。酸性溶液を使用して光学部品を清浄する用途では、光学部品の表面に存在する残留酸性溶液は、光学部品を浸漬することによって、かつ/または光学部品を清浄な水ですすぐことによって、除去することができる。いずれの場合でも、光学部品は、大気条件(例えば、周囲温度および/または周囲圧力)下または高温条件(例えば、ヒートガン、乾燥オーブン)下のいずれかにおいて乾燥させて、光学部品の表面から、残留している液体を除去することができる。これにより、さらなる処理のために、清浄かつ乾燥した表面を有する光学部品を準備することができる。
【0030】
図1の例示的な技術は、光学部品の表面を光学的黒化組成物に曝すことをさらに含む(102)。光学的黒化組成物に曝される光学部品の表面は、光学部品が組み込まれる光センサーの作動中に励起光が当たる表面であり得る。例えば、表面は、作動中に光センサーを通る光の透過に境界を付ける光路を画定することができる。光路は、光センサーのエミッタおよび/または検出器を光学窓に光学的に接続する光学ハウジングの少なくとも一部を画定することができる。作動中、分析中の流体サンプルは、光学窓の反対側に配置されている光路と、光学窓の片側を接触させることができる。
【0031】
いくつかの例では、光学部品の一部は光学的黒化組成物に曝され、光学部品の残りの部分は組成物に曝されない。他の例では、例えば、光学部品を光学的黒化組成物に浸漬することによって、光学部品全体を光学的黒化組成物に曝す。例えば、光学部品は、光学的黒化組成物を含有するリザーバ中に光学部品を浸漬するか、光学部品上に光学的ブラッキング組成物を噴霧するか、光学部品を光学的黒化組成物ですすぐか、または光学部品の1つ以上(例えば、すべて)の表面を光学的黒化組成物と接触させることによって、光学組成物に曝すことができる。いずれの場合でも、光学部品の1つ以上の所望の表面は、光学的黒化組成物を使用して光学的に黒化させることができる。
【0032】
光学的黒化組成物は、組成物が曝される光学部品の表面を黒化させるのに効果的であることができ、実質的にまたは完全に非蛍光性である光学的に黒化された表面をもたらすことができる。例えば、光学部品は、処理されている光学部品の表面を、表面に当たっている迷光を吸収するのに十分な黒色の色調に変化させるのに有効な時間、光学的黒化組成物に曝すことができる。金属の光学部品を光学的に黒化させるプロセス中に、光学部品は、金属色から、淡いオリーブ色、濃いオリーブ色、濃い灰色、最終的には実質的に均一な黒色に移行することができる。本開示による光学的に黒化された表面の追加の特性を、以下でより詳細に説明するが、いくつかの用途では、光学的黒化表面は、紫外スペクトル(例えば、10nm~400nm)内の光の波長に対して反射率が低いかまたは実質的にない。例えば、得られた光学的黒化表面は、紫外スペクトル内の光の波長に対して10%未満の反射率、例えば5%未満の反射率、3%未満の反射率、または1%未満の反射率を示し得る。追加または代替として、光学的黒化表面は、可視光スペクトル(例えば、400nm~700nm)内の光の波長に対して50%未満の反射率、例えば25%未満の反射率、10%未満の反射率、または5%未満の反射率を示し得る。
【0033】
光学部品の表面を光学的に黒化させるために使用される光学的黒化組成物は、亜セレン酸を含有する水性組成物であり得る。一般に、亜セレン酸は、二酸化セレンを水に添加することによって形成され得る無機の酸素含有酸であり、式H2SeO3で表される。光学的黒化組成物中の亜セレン酸の濃度は、処理されている光学部品の表面を黒くするのに有効であり得るが、処理されている表面をエッチングまたは化学的に劣化させるほど強くはない。
【0034】
いくつかの例では、光学的黒化組成物中の亜セレン酸の濃度は、光学的黒化組成物の0.01体積パーセント~10体積パーセントの範囲であり、例えば、光学的ブラッキング組成物の0.05体積パーセント~1体積パーセント、または光学的ブラッキング組成物の0.1体積パーセント~0.5体積パーセントの範囲である。亜セレン酸の前述の範囲のいずれかを有する光学的ブラッキング組成物中の水の濃度は、組成物全体の80体積パーセントを超える場合があり、例えば、90体積パーセントを超える、または95体積パーセントを超える場合がある。例えば、光学的ブラッキング組成物中の水の濃度は、組成物全体の95体積パーセント~組成物全体の99.9パーセントの範囲であり得る。
【0035】
光学部品を形成するために使用される材料に応じて、光学的ブラッキング組成物中の亜セレン酸は、光学部品を形成する材料と反応して、他の反応剤の存在なしに黒化表面または表面コーティングを形成し得る。しかしながら、他の例では、1つ以上の追加の成分が光学的黒化組成物中に存在して、処理されている光学部品の表面上での黒化処理および/または光学的黒化コーティングの形成を促進し得る。
【0036】
いくつかの例では、光学的黒化組成物は、(例えば、酸素の存在下で)亜セレン酸と反応して、下にある表面上に光学的黒化コーティングを形成することによって光学部品の表面を光学的に黒化する遷移金属を含み得る。遷移金属は、概して、周期表の第3族~第12族に該当するものと考えられる。一例では、光学的黒化組成物中に含まれる遷移金属は、銅を含む(または、他の例では、銅からなるか、または本質的に銅からなる)。
【0037】
含まれる場合、遷移金属を、選択することができ、かつ、処理されている光学部品上に(実質的にまたは完全に非蛍光性である)光学的黒化コーティング表面を形成するのに有効な量で、光学的黒化組成物中に、遷移金属が存在し得る。いくつかのかかる例では、遷移金属は、光学的ブラッキング組成物の0.01体積パーセントから、光学的ブラッキング組成物の5体積パーセントまでの範囲の量で、例えば、光学的ブラッキング組成物の0.1体積パーセントから、光学的ブラッキング組成物の3体積パーセントまでの範囲の量で、光学組成物中に存在し得る。
【0038】
光学部品が、亜セレン酸および1つ以上の遷移金属を含む光学的ブラッキング組成物に曝されると、セレン化無機金属コーティングが形成され、それにより、部品の表面が光学的に黒化され得る。例えば、銅および亜セレン酸を含む光学的黒化組成物の場合、セレン化銅コーティングが、処理されている光学部品の表面上に形成され得る。コーティングの厚さは、例えば、コーティングの特定の組成および光学部品がコーティングに曝される時間の長さに応じて変えることができる。いくつかの例では、コーティングの厚さは、250マイクロメートル未満、例えば、25マイクロメートル未満、または2.5マイクロメートル未満である。
【0039】
光学部品が光学的黒化組成物に曝される時間量は、例えば、コーティングの組成および所望のレベルの光学的黒化に基づいて、変えることができる。一般に、処理されている光学部品の表面が光学的コーティング組成物に曝される時間量は、表面を光学的に黒化させるのに有効であり得るが、処理されている表面を化学的に分解するほどではない。いくつかの例では、光学部品が光学的黒化組成物に曝される時間量は、15秒~10分、例えば、30秒~5分、または1分~2分の範囲である。
【0040】
図1の技術は、処理されている光学部品の表面から、残留している光学的ブラッキング組成物を除去すること(104)と、続いて、その光学部品を乾燥させること(106)と、を含む。光学部品が処理されている光学的黒化組成物の供給源から光学部品を取り出すことによって、残留している光学的ブラッキング組成物を、処理されている光学部品から除去し得る。いくつかの例では、光学部品を物理的に振盪して、光学部品の表面上に残留している光学的黒化組成物を光学部品から振り落とし得る。さらに、またはあるいは、光学部品を水(例えば、酸を含まない蒸留水および/または光学的黒化組成物)に曝して、残留している光学的黒化組成物の除去を助け得る。例えば、処理されている光学部品を、光学的黒化組成物を含むリザーバから取り出し、水流下ですすぐか、または水のリザーバに浸漬してもよい。これにより、光学部品が光学的黒化組成物の供給源から除去された後も、コンポーネント上に依然として残留している光学的黒化組成物を除去することができる。残留している光学的黒化組成物を光学部品から除去することは、進行中の反応をクエンチするのに役立ち得る、例えば、光学部品の表面におけるエッチングを防ぐのに役立ち得るか、かつ/または光学的歪みを引き起こし得る表面の凹凸を防止するのに役立ち得る。
【0041】
処理されている光学部品から、残留している光学的黒化組成物を好適に除去した後、その光学部品を乾燥させることができる(106)。その光学部品は、大気条件(例えば、周囲温度および/または周囲圧力)下および/または高温条件(例えば、ヒートガン、乾燥オーブン)下において乾燥させて、光学部品を乾燥させ得る。例えば、光学部品は、華氏250度から華氏1350度の範囲の高温で乾燥させ得る。いくつかの例では、光学部品は、30秒~10分の範囲の時間、周囲空気に曝したままにし、その後、30秒~5分の範囲の時間、高温で乾燥させることによって、大気条件下で乾燥させる。その光学部品は、部品の表面に目に見える水分がなくなるまで乾燥させ得る。いくつかの例では、光学部品の光学的に黒化された表面は、光沢のある黒色の外観から、くすんだまたはつや消しの黒色の外観に移行し、部品が好適に乾燥されたことを示す。得られた光学部品は、その後、分析中のサンプルの蛍光定量的応答(fluorometric response)を測定するために使用される蛍光光度計などの光センサーに組み込むことができる。
【0042】
図2は、光学部品を黒化するための別の例示のプロセスを図示している流れ図である。図2の技術は、光学部品の表面が、複数の異なる光学的ブラッキング組成物に曝されることを除いて、図1の例示的な技術と同じである。特に、図2の例示的な技術は、光学部品を任意選択的にクリーニングした後、処理されている光学部品の表面を2つの異なる光学的黒化組成物に曝すことを含む。
【0043】
図2に示すように、光学的黒化プロセスは、処理されている光学部品の表面を、第1の時間量の間、第1の光学的ブラッキング組成物に曝すこと(150)と、第1の光学的ブラッキング組成物の残留物をすすぐこと(152)と、続いて、処理されている光学部品の表面を、第2の時間量の間、第2の光学的黒化組成物に曝すこと(154)と、を含み得る。第1および第2の光学的ブラッキング組成物は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。例えば、第1および第2の光学的ブラッキング組成物は、それらが、異なる構成成分または同じ構成成分を異なる濃度で有するという点で互いに異なっている場合がある。
【0044】
残留している光学的黒化組成物が除去される介在工程によって分離される光学的ブラッキング組成物の複数の異なるラウンド(round)に対して、処理されている光学部品の表面を曝すことは、光学部品の表面エッチングを防止または最少化するのに有用であり得る。光学部品の形成に使用される材料に応じて、処理されている光学部品の表面は、高過ぎる濃度の亜セレン酸に曝される場合、および/またはあまりに長時間にわたって曝される場合、化学エッチングされる可能性がある。光学的黒化組成物で複数回の処理を行うが、各回の処理の曝露時間を制限することによって、望ましくないエッチングを最小限に抑えながら、光学部品を、十分に光学的に黒化し得る。
【0045】
いくつかの例では、第1の光学的ブラッキング組成物は、第1の濃度のセレン酸を有するが、第2の光学的黒化組成物は、第1の濃度とは異なる第2の濃度のセレン酸を有する。セレン酸の第2の濃度は、第1の濃度より高くてもよい。最初に光学部品を比較的薄い濃度の亜セレン酸に曝すことによって、光学的黒化保護コーティングが光学部品の表面に形成し始め得る。続いて、光学部品を比較的濃い濃度の亜セレン酸に曝すことによって、最初に形成された光学的黒化コーティングは、その光学コーティングの下にある構造がエッチングかつ/または化学的に分解される程度を制限すると同時に、厚くかつ/または黒く成り得る。
【0046】
第1の光学的ブラッキング組成物および第2の光学的ブラッキング組成物は、それらの構成成分から形成することができ、図1に関して上で考察した範囲内に入る。いくつかの例では、第2の光学的黒化組成物中の亜セレン酸の濃度は、第1の光学的黒化組成物中の濃度よりも少なくとも20パーセント高く、例えば、少なくとも40パーセント高い。例えば、第2の光学的黒化組成物中の亜セレン酸の濃度は、第1の光学的ブラッキング組成物中の亜セレン酸の濃度よりも20パーセント~200パーセント高くてもよく、例えば、40パーセント~100パーセント高くてもよい。第1および第2の光学的黒化組成物が遷移金属を含む場合、遷移金属は、両方の組成物において同じであってもよく、両方の組成物において同じ濃度であってもなくてもよい。
【0047】
いくつかの例では、光学部品は、光学的黒化組成物の0.1体積パーセント~0.4体積パーセントの範囲である亜セレン酸の第1の濃度を有する第1の光学的黒化組成物に曝され、続いて光学的黒化組成物の0.15体積パーセント~0.6体積パーセントの範囲である亜セレン酸の第2の濃度を有する第2の光学的黒化組成物に曝される。光学部品は、第1の時間、第1の光学的ブラッキング組成物に曝されてもよく、第2の時間、第2の光学的ブラッキング組成物に曝されてもよい。第1の時間は、第2の時間と同じであっても異なっていてもよい。
【0048】
例えば、第1の時間は、第2の時間よりも長くてもよい。第1の時間対第2の時間の比率は、1.5:1~3:1の範囲であり得る。例えば、光学部品は、30秒~3分の範囲の時間、第1の光学組成物に曝されてもよく、15秒~1.5分の範囲の時間、第2の光学組成物に曝されてもよい。
【0049】
図2の技術は、第1の光学的ブラッキング組成物(150)に曝されることと、第2の光学的黒化組成物(152)に曝されることと、の間に、処理されている光学部品(152)の表面から、残留している光学的ブラッキング組成物を除去することを含む。除去技術は、図1の工程(104)に関して上で考察した技術を含むことができる。例えば、残留している光学的ブラッキング組成物は、第1の光学的黒化組成物の供給源から光学部品を取り出し、その光学部品を水(例えば、酸および/または光学的黒化組成物を含まない蒸留水)に曝して、残留している光学的黒化組成物物の除去を助けることによって、除去され得る。例えば、処理されている光学部品は、光学部品が第1の光学的黒化組成物の供給源から取り除かれた後も光学部品上に依然として残留しているなんらかの量の第1の光学的黒化組成物を除去するために、水流下にあってもよく、または水のリザーバに浸漬されていてもよい。光学部品は、第2の光学的ブラッキング組成物に曝す前に、乾燥させてもさせなくともよい。光学部品を第2の光学的黒化組成物に曝した後、図1に関して上で考察したように、残留している第2の光学的ブラッキング組成物を除去し、そしてその光学部品を乾燥させるさらなるプロセス工程を行うことができる。
【0050】
本明細書に記載の技術に従って光学的に黒化させた光学部品の表面は、例えば、表面に1つ以上の励起波長の光が当たることに対する応答において、実質的または完全に非蛍光性であることができる。蛍光発光は、より短い波長の入射光の結果として発生する、比較的長い波長での発光として特徴付けることができる。本明細書で説明するように光学的に黒化させた光学部品の表面は、表面からの発光が分析中のサンプルの蛍光測定に干渉しないように、より短い波長の光が表面に指向されたことに応答して、表面が、より長い波長で十分に少量の光を放射するように、実質的に非蛍光性であり得る。本明細書で説明するように光学的に黒化させた光学部品の表面は、表面が、より短い波長の光が表面に指向されたことに対する応答において、より長い波長の光を放射しないように、完全に非蛍光性であり得る。
【0051】
本明細書に記載の技術に従って光学的に黒化させた光学部品の表面は、紫外スペクトル(例えば、10nm~400nm)および/または可視光スペクトル(例えば、400nm~700nm)内の入射励起光に対する応答において、実質的または完全に非蛍光性であることができる。例えば、その表面は、250nm~600nm、例えば、260ナノメートル~350ナノメートルの範囲の1つ以上の波長の励起光に対する応答において、実質的にまたは完全に非蛍光性であり得る。
【0052】
光学部品の光学的に黒化させた表面の特性によっては、表面は、完全に非蛍光性ではない場合があるが、その代わりに、分析中の任意のサンプルの蛍光応答の測定に実質的に干渉しないように、そのような低レベルの蛍光で蛍光発光を放射してもよい。例えば、光学部品の表面は、分析中のサンプルによって放射される蛍光放射線の量または強さよりも少ないまたは弱い蛍光放射線を放射することがある。分析中の表面および/またはサンプルから放射される蛍光放射線は、290nm~450nm、または300nm~350nmなどのUVスペクトルの可視光または可視光近傍部分であり得る。
【0053】
したがって、本開示の技術に従って処理された光学部品は、陽極酸化されておらず、かつ有機分子を含有するコーティングを含んでいない、光学的黒化表面を有することができる。陽極酸化表面処理および有機黒化コーティングは、分析中のサンプルの蛍光応答の測定を妨害する、許容できないほど高いレベルの蛍光発光を示す場合がある。得られた光学部品は、追加のハードウェアおよび/またはソフトウェアコンポーネントと組み合わせて、光学部品を含む光センサー(例えば、蛍光光度計)を製造することができる。
【0054】
光学部品が組み込まれる光センサーは、様々な異なる構成を有することができるが、図3は、本開示による光学的黒化部品を含み得る光センサーの1つの例示的な構成のブロック図である。この例では、光センサー202は、ハウジング203、コントローラ220、1つ以上の光エミッタ222(本明細書では「光エミッタ222」と称する)、1つ以上の光検出器224(本明細書では「光検出器224」と称する)、およびレンズ230を含む。コントローラ220は、プロセッサ226およびメモリ228を含む。ハウジング203は、光センサー202の様々な電子部品を含み、レンズ230への、およびレンズ230からの、光の移動を制御するための光路も画定する。作動中、光エミッタ222は、光を流体サンプル232に指向し、光検出器224は、サンプルによって生成された蛍光発光を検出する。光エミッタ222によって流体へと指向された光は、流体内の蛍光分子の電子を励起し、その分子に、光検出器224によって検出することができるエネルギー(すなわち、蛍光)を放射させることによって、蛍光発光を生成させ得る。例えば、光エミッタ222は、1つの周波数(例えば、紫外線周波数)で光を流体サンプル232に指向し、異なる周波数(例えば、可視光周波数)で光エネルギーを蛍光分子に放射させ得る。
【0055】
メモリ228は、コントローラ220によって使用または生成されるソフトウェアおよびデータを格納する。例えば、メモリ228は、光センサー202によってモニターされている流体内の1つ以上の化学成分の濃度を判定するためにコントローラ220によって使用されるデータを格納することができる。いくつかの例では、メモリ228は、光検出器224によって検出された蛍光発光を、1つ以上の化学成分の濃度に関連付ける方程式の形でデータを格納する。
【0056】
プロセッサ226は、メモリ228に格納されたソフトウェアを実行して、本開示における光センサー202およびコントローラ220に起因する機能を実行する。コントローラ220、コントローラ104、または本開示で説明される任意の他のデバイス内のプロセッサとして説明される部品は、それぞれ、1つ以上のプロセッサを、例えば、1つ以上のマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジック回路を、単独または好適な組み合わせで含み得る。
【0057】
光エミッタ222は、光エネルギーを流体サンプル232に放射する少なくとも1つの光エミッタを含む。いくつかの例では、光エミッタ222は、ある範囲の波長にわたって光エネルギーを放射する。他の例では、光エミッタ222は、1つ以上の離散的な波長で光エネルギーを放射する。例えば、光エミッタ222は、2、3、4、またはそれを超える離散的な波長で放射し得る。
【0058】
一例では、光エミッタ222は、紫外(UV)スペクトル内の光を放射する。UVスペクトル内の光は、約200nm~約400ナノメートルの範囲の波長を含み得る。光エミッタ222によって放射された光は、流体サンプル232に指向される。光エネルギーを受ける応答において、流体内の蛍光分子は、励起し、分子に蛍光発光を生じさせ得る。光エミッタ222によって放射されるエネルギーとは異なる周波数であってもなくてもよい蛍光発光は、蛍光分子内の励起電子がエネルギー状態を変化させるときに、生成され得る。蛍光分子によって放射されるエネルギーは、光検出器224によって検出され得る。例えば、光エミッタ222は、約260nm~約290nmの周波数範囲の光を放射することができ、流体の組成に応じて、約300nm~約350nmの範囲の蛍光発光を引き起こし得る。
【0059】
光エミッタ222は、光センサー202内で様々な異なる仕方で実装され得る。光エミッタ222は、流体内の分子を励起するための1つ以上の光源を含み得る。光源の例としては、発光ダイオード(LED)、レーザー、およびランプが挙げられる。いくつかの例では、光エミッタ222は、光源によって放射された光をフィルタリングするための光フィルターを含む。光センサー202は、光検出器224も含む。光検出器224は、流体サンプル232内の励起分子によって放射された蛍光発光を検出する少なくとも1つの光検出器を含む。光検出器224は、光信号を電気信号に変換するために、例えば、フォトダイオードまたは光電子増倍管などの1つ以上の光子検出器を含むことができる。いくつかの例では、光検出器224は、流体から受け取った光エネルギーを集束および/または整形するために、流体と光子検出器との間に配置されたレンズを含む。
【0060】
光センサー202は、上記のように様々な異なる構成を有することができるが、いくつかの例では、光センサー202は、流体サンプル232に光を放射し、また流体サンプル232からの光も受け取る、レンズ230を有するように設計される。この配列により、180度の後方散乱ジオメトリーで、レンズ230を介して、流体サンプル232から光を収集することができる。この配列は、少量のサンプルにおける弱い蛍光信号を検出するために使用することができる高感度光学システムを提供する。かかる配列は、2015年4月2日に発行された“Multi-Channel Fluorometric Sensor and Method of Using Same”という名称の米国特許第9,618,450号においてより詳細に記載されており、その全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0061】
本開示の技術に従って、光センサー202における任意の光学部品を光学的に黒化させることができる。いくつかの例では、光学的に黒化される光学部品は、光エミッタ222からサンプル232へと、および/またはサンプル232から光検出器224へと、光が伝播する光路を画定するハウジング203またはその一部である。光路を画定するハウジングの表面は、(例えば、好適に処理されない場合に蛍光を生じさせる可能性がある)光エミッタ222からの放射線を受け取ることができ、またサンプル232によって放射された蛍光発光を光検出器232へと伝播することもできる。
【0062】
図4は、図3の光センサーに使用することができ、かつ本開示の技術に従って光学的に黒化された1つ以上の光学部品を含むことができる、部品の例示的な配列の概略図である。図4は、第1の光エミッタ320および第2の光エミッタ324を含むセンサー302を示している。作動中、第1の光エミッタ320は第1の波長で光を放射することができ、第2の光エミッタ324は第2の波長で光を放射することができる。用途に応じて、第1の光エミッタ320および第2の光エミッタ324は、紫外(UV)スペクトル、赤外(IR)スペクトル、および/または可視光スペクトル内の光を放射することができる。上記のいくつかの例では、第1の波長は、分析中の流体サンプル(例えば、流体サンプル230)中の分子を励起し蛍光を発生させることができ、一方、第2の波長は、分析中の流体サンプルで散乱し得る。
【0063】
さらに、第1の320および/または第2の324の光エミッタは、放射されることが望まれる光の第1または第2の波長に加えて、一方または両方が、不要または不所望な光を放射するようなものであり得る。かかる光が測定に望ましくない影響を与えるのを防ぐために、センサー302は、第1の光エミッタ320によって分析中のサンプルに放射される光を制限するように構成されたた第1の光フィルター322を含み得る。図4の実施形態は、第1の光エミッタ320と部分反射性光学窓342との間に配置された第1の光フィルター322を示している。第1の光学フィルター322は、例えば、流体サンプルが蛍光を放射するときに、流体サンプルによって放射される蛍光の範囲内の光の実質的にすべての波長をフィルタリングするように構成することができる。かかるフィルター322は、蛍光発光と同じ波長範囲内の光の散乱に起因する、センサーにおける検出器334によって、誤った蛍光検出を排除するのを助けることができる。例えば、第1の光エミッタ320が分析中の流体サンプルによって生成された蛍光発光の波長内で光を放射する場合、光検出器334は、流体サンプルによって生成された蛍光発光と、第1の光エミッタ320によって放射され、かつ光検出器334へと散乱して戻る光の両方を検出し得る。光学フィルター322は、蛍光発光の波長範囲内で第1の光検出器334によって放射された光をフィルタリングすることができる。
【0064】
図4の例におけるセンサー302は、センサーの様々なハードウェア/ソフトウェアコンポーネントを収容し、かつセンサーを通る光の移動を制御するハウジング303も含む。いくつかの実施形態では、ハウジング303は、第1の光エミッタ320および/または第2の光エミッタ324のすべてまたは一部を含み、他の実施形態では、光エミッタは、ハウジング303の外部に配置される。
【0065】
図4に示す例は、光検出器334と、流体サンプルに光を指向し、かつ流体サンプルから光を受け取るための光学窓328(例えば、光学レンズ328)と、光路326と、を含む。図示した例では、光学レンズ328は、光路326から物理的に分離しているが光学的に接続されていることが示されている。他の例では、レンズ328は、光路の末端で物理的に接続される(例えば、取り付けられる)。
【0066】
光センサー302を通る光の移動を制御するために、光センサーは、図示した例では、3つの光路、すなわち第1の光路326、第2の光路336、および第3の光路327として示される少なくとも1つの光路を含む。光路は、センサーを通る光の移動を制御する境界チャネル、チューブ、導管、またはキャビティを画定し得る。光センサー302のエミッタおよび検出器は、光を光路に指向し、かつ/または光路から光を受け取るように、光路の周囲に配列され得る。例えば、図4の第1の光エミッタ320および第2の光エミッタ324は、光学レンズ328に、続いて、分析中の流体サンプルに、光学的に接続されている第1の光路326に光を指向するように構成される。さらに、図4の光検出器334は、分析中の流体サンプルから発出し、光学レンズ328を通って進む第1の光路326からの光を受け取るように構成される。本開示の技術を使用して、1つ以上(例えば、光路のすべて)を光学的に黒化させることができる。例えば、ハウジング303は、金属で形成してもよく、ハウジング全体を光学的に黒化させてもよい。
【0067】
光センサー302は、いくつかの異なる光路構成を有することができ、その構成は、例えば、センサーに含まれる光エミッタおよび光検出器の数に基づいて、変化させることができる。図4の例では、光センサー302は、光学レンズ328と第1の光検出器334との間に配置された第1の光路326を含む。光学レンズ328(例えば、レンズの光学中心)を通って直線的に進む光は、第1の光路326を通って進むことができ、第1の光検出器334(例えば、検出器の光学中心)に当たる。かかる例では、第1の光路326は、経路の長さに沿って延在し、かつ光学レンズ328の中心(例えば、光学中心)および第1の光検出器334(例えば、検出器の光学中心)を通って延在している長軸340を画定することができる。第1の光路326は、ハウジング303内に収容された他の部品への検出器の単一光学窓(例えば、光学レンズ328)に光学的に接続され得る。
【0068】
第1の光エミッタ320および第2の光エミッタ324は、光を第1の光路326に、続いて分析中の流体サンプルに、放射するように構成される。いくつかの例では、第1の光エミッタ320および/または第2の光エミッタ324は、例えば、第1の光路と交差する介在光路に放射することなく、第1の光経路326に直接に光を放射する。他の例では、第1の光エミッタ320および/または第2の光エミッタ324は、第1の光路326に光学的に接続される中間光路に光を放射する。すなわち、第1の光エミッタ320および/または第2の光エミッタ324は、第1の光路326に光を間接的に放射し得る。
【0069】
図4の光センサー302では、第1の光エミッタ320は、第1の光路326まで延在している第2の光路336に光を放射するように配置される。さらに、第2の光エミッタ324は、第2の光路336へと延在し、そして第1の光路326へと延在している第3の光路327に対して光を放射するように配置される。第2の光路336は、第1の光路326と交差し、それにより、第1の光エミッタ320および第2の光エミッタ324から伝播する光の少なくとも一部は、第2の光路を通って、第1の光路に進み、そして光学レンズ328を通ることができる。第3の光路327は、第2の光路と交差し、それにより、第2の光エミッタ324から伝播する光の少なくとも一部は、第3の光路を通って、第2の光路、第1の光路に進むことができ、そして光学レンズ328を通ることができる。
【0070】
その構成は変えることができるが、図4の第2の光路336は、約90度の角度で第1の光路326と交差する。さらに、第3の光路327は、約90度の角度で第2の光路336と交差する。いくつかの例では、第3の光路327は、第1の光路326に対して平行に延在するが、他の例では、第3の光路は、第1の光路に対して平行に延在しない。単一の光学レンズ328に光学的に接続された交差光路の周囲に光センサー302の光エミッタと光検出器とを配列することによって、センサーは、様々な化学および流体プロセスに容易に取り付けられるコンパクトな設計を提供することができる。
【0071】
光センサー302が、光の移動を制御するために交差光路を含む例では、光センサーはまた、交差光路から受け取った光を別の交差光路に指向する光学要素(例えば、反射器、部分反射性光学窓)も含み得る。光学素子は、光学レンズ328および/または光検出器334,338への光の移動の方向を制御するのを助けることができる。
【0072】
図4の図示した例では、センサーは、第1の光路326と第2の光路336との交点に配置される部分反射性光学窓344を含む。部分反射性光学窓344は、第1の光エミッタ320および第2の光エミッタ324によって放射された光の少なくとも一部を、第2の光路336から第1の光路326に反射するように構成される。いくつかの実施形態では、センサー302は、第2の光路336沿いの第1の光エミッタ320および第2の光エミッタ324からの部分反射性光学窓344に対向して配置されたビームダンプ346をさらに含む。ビームダンプ346は、そこに入射されるあらゆる光を吸収またはトラップするように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、部分反射性光学窓344を介して、第2の光路336から伝播される任意の光は、ビームダンプ346に伝播され、そこで吸収され、光検出器334によって検出されないようにする。
【0073】
図4の光センサー302はまた、光センサーのための基準検出器として機能し得る第2の光検出器338も含む。第2の光検出器338は、第1の光エミッタ320および第2の光エミッタ324によって放射された光を受け取るように配置される。位置は変えることはできるが、図示した例では、第2の光検出器338は、第2の光エミッタ324から第2の光路336の反対側に配置される。特に、第2の光検出器338は、第2の光エミッタ324の反対側の、第3の光路327の末端に配置される。
【0074】
光センサー302における光路は、光が光センサーを通って運ばれることを可能にするチャネルまたはダクトであり得る。光路はまた、光センサーのハウジング303中に機械加工または鋳造されてもよい。本明細書に記載の技術を使用して、光路の1つ以上(例えば、すべて)を光学的に黒化させることができる。いくつかの例では、ハウジング303は、機械加工され、鋳造された金属光路から形成され、またはそうでなければハウジングを画定する材料の本体に形成される。本明細書に記載のように、光学的ブラッキングプロセスにハウジング全体を曝すことにより、ハウジング全体を光学的に黒化させ得る。
【0075】
本開示による光センサーは、工業プロセスをモニターすることを含む様々な用途で使用することができる。光センサーは、工業プロセスにおける流体の光学特性を定期的に分析するために使用される携帯可能な手持ち式のデバイスとして実装することができる。あるいは、光センサーをオンラインでインストールして、工業プロセスにおける流体の光学特性を継続的に分析することができる。いずれの場合でも、光センサーは、流体サンプルを光学的に分析し、流体中の1つ以上の化学種の濃度などの流体の異なる特性を測定することができる。
【0076】
一例として、光センサーは、工業用のクリーニング用途および殺菌用途でしばしば使用される。工業用のクリーニングプロセスおよび殺菌プロセス中、水は、典型的には、工業用配管システム中にポンプで送り込まれて、配管内に存在する製品および配管内に蓄積された汚染物質を配管システムから洗い流す。水はまた、配管システムを殺菌および消毒するように機能する殺菌剤を含んでいてもよい。クリーニングプロセスおよび殺菌プロセスでは、配管システムを準備して、新しい製品および/またはシステムで以前に処理されたものとは異なる製品を受け取ることができる。
【0077】
光センサーを使用して、工業用のクリーニングプロセスおよび殺菌プロセス中に配管システムを流れるフラッシング水および/または殺菌水の特性をモニターすることができる。連続的または断続的に、配管システムから水のサンプルを抽出し、光センサーに送ることができる。光センサー内で、光は、水サンプルに放射され、水サンプルの特性を評価するために使用される。光センサーは、例えば、水サンプル中に残留生成物がほとんどないかまたはないことを判定することによって、配管システム内の残留生成物がパイプから十分に洗い流されたかどうかを判定し得る。光センサーはまた、例えば、水サンプル中に放射された光に応答して、殺菌剤によって放射された蛍光信号を測定することによって、水サンプル中の殺菌剤の濃度も判定し得る。配管システムを適切に殺菌するために水サンプルに不十分な量の殺菌剤が存在すると判定される場合、システムの好適な殺菌を確実にするために殺菌剤の量を増やしてもよい。これは、本開示による光センサーの1つの例示的な用途を説明しているが、説明したデバイスおよび技術は、任意の所望の用途のために使用することができ、また本開示は、殺菌剤濃度について水をモニターする例に限定されない、ことを理解すべきである。本明細書に記載されるように、1つ以上の光学的に黒化させた部品を含む光センサーを使用して、他の蛍光測定プロセスを行うことができ、本開示は、この点に限定されない。
【0078】
以下の例は、本開示による光学的黒化に関する追加の詳細を提供し得る。
【実施例
【0079】
図4に図示した光路と一致する光路を画定するアルミニウムブロックから形成された光学ハウジングを、本開示に従う技術に従って光学的に黒化させた。そのアルミニウムブロックを、Electrochemical Products,Inc.から市販されているE-Kleen 154の10体積パーセント溶液中で2分間浸漬し、激しく撹拌して洗浄することにより、清浄にした。E-Kleen 154は、40~60%のリン酸を含有するリン酸洗浄剤である。続いて、アルミニウムブロックを、流れている水道水浴で30秒間すすぎ、過剰の水を部品から振り落とした。
【0080】
クリーニング直後に、湿ったアルミニウムブロックを、Electrochemical Products,Inc.から市販されているInsta-Blak A-385の10体積パーセント溶液に1分間浸漬した。Insta-Blak A-385は、1~4%の亜セレン酸、85~95%の水、および0~3%の銅を含有する亜セレン酸組成物である。アルミニウムブロックを、流れている水道水浴の下で30秒間すすいだ。続いて、アルミニウムブロックを、Insta-Blak A-385の15体積パーセント溶液に10秒間浸漬した。
【0081】
Insta-Blak A-385の第2の処理からアルミニウムブロックを取り出した後、そのアルミニウムブロックを、流れている水道水浴の下で30秒間すすぎ、余分な水を部品から振り落とした。アルミニウムブロックを、5分間風乾し、続いて、アルミニウムブロック上に目に見える水分が存在しなくなるまでヒートガンで1分間乾燥させた。得られた乾燥した表面は、シーラントまたは上重ねコーティングを用いずとも、励起光を当てて蛍光応答を試験する光学的に黒化した光路を形成した。
【0082】
比較の目的で、アルミニウム光学ハウジングを、黒色のアクリル塗料でコーティングし、別個のアルミニウム光学ハウジングは、陽極酸化し、黒色染料でコーティングした。
【0083】
作業サンプルおよび比較サンプルの蛍光応答を評価した。各光学部品の蛍光強度は、270ナノメートルの波長で光を放射し、295ナノメートル~495ナノメートルの波長範囲における光学ハウジングからの蛍光放射線を検出することにより、蛍光光度計で測定した。蛍光光度計は、流体サンプル中の標的トレーサー分子キシレンスルホン酸ナトリウム(SXS)の蛍光強度を測定するためにも使用した。SXSの蛍光信号を、作業サンプルおよび比較サンプルのそれぞれについて、黒化アルミニウム光学ハウジングそれ自体の蛍光信号と比較した。
【0084】
図5は、開示562に従って黒化溶液で処理した光学部品の蛍光に対する標的トレーサー分子(SXS)562の蛍光を図示する例示的なプロットである。光学部品と、SXSを有する流体サンプルとの両方を、270ナノメートルの波長で放射した光に曝し、SXSおよび光学部品によって295ナノメートル~495ナノメートルの波長範囲で放射された蛍光放射線を検出した。図5に示したように、SXSの蛍光強度は、295ナノメートル~330ナノメートルの波長範囲における光学部品の蛍光強度よりも、有意に大きい。図5に示したように、これは、流体サンプル中のSXSの濃度を判定するために、SXSからの蛍光放射線の発光を検出するための重要な波長範囲である。光学部品によって放射された蛍光放射線は、SXSからの信号に有意に干渉しないため、高い信号対バックグラウンド比が得られ、したがって流体サンプル中のSXSの濃度を正確に判定することができる。
【0085】
図6は、黒のアクリル絵の具でコーティングされた光学部品の蛍光に対する標的トレーサー分子(SXS)の蛍光を図示する例示的なプロットである。光学部品と、SXSを有する流体サンプルとの両方を、270ナノメートルの波長で放射した光に曝し、SXSおよび光学部品によって295ナノメートル~495ナノメートルの波長範囲で放射された蛍光放射線を検出した。図6に示したように、SXSの蛍光強度は、全波長範囲において、特に295ナノメートル~330ナノメートルの臨界波長範囲において、光学部品の蛍光強度よりも有意に低い。光学部品によって放射された蛍光放射線は、SXSからの信号に有意に干渉するため、低い信号対バックグラウンド比が得られ、したがって流体サンプル中のSXSの濃度の判定は不正確となる。
【0086】
図7は、黒の陽極酸化されたアルミニウム光学部品の蛍光に対する標的トレーサー分子(SXS)の蛍光を図示する例示的なプロットである。光学部品と、SXSを有する流体サンプルの両方を、270ナノメートルの波長で放射した光に曝し、SXSおよび光学部品によって295ナノメートルから495ナノメートルの波長範囲で放射された蛍光放射線を検出した。図7に示したように、SXSの蛍光強度は、全波長範囲において、特に295ナノメートル~330ナノメートルの臨界波長範囲において、光学部品の蛍光強度よりも有意に低い。光学部品によって放射された蛍光放射線は、SXSからの信号に有意に干渉するため、低い信号対バックグラウンド比が得られ、したがって流体サンプル中のSXSの濃度の判定は不正確となる。以下、本開示の実施形態の例を列記する。
[1]
光学部品を黒化させる方法であって、
表面を光学的に黒化させ、非蛍光性である光学的に黒化された光路をもたらすのに有効な時間、光路を画定する光学部品の表面を、亜セレン酸を含む光学的黒化組成物に曝すことと、
上記光学部品の上記表面から、残留している光学的黒化組成物を除去することと、
上記光学部品を乾燥させることと、を含む、方法。
[2]
上記光学的に黒化させた経路を画定する上記表面が、紫外光に曝されたときに蛍光発光を放射しないように、上記光路が、非蛍光性である、項目1に記載の方法。
[3]
上記光学的に黒化させた経路を画定する上記表面が、250nm~600nmの範囲内の光に曝されたときに蛍光発光を放射しないように、上記光路が、非蛍光性である、項目1または2に記載の方法。
[4]
上記光学的黒化組成物が、有機染料を含まない、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
[5]
亜セレン酸が、上記光学的黒化組成物の0.05体積パーセント~1体積パーセントの範囲であり、水が、80体積パーセント超である、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
[6]
上記光学的黒化組成物が、遷移金属を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
[7]
上記遷移金属が、上記光学的黒化組成物の0.1~3体積パーセントの範囲の銅である、項目6に記載の方法。
[8]
上記光学部品の上記表面を、亜セレン酸を含む上記光学的黒化組成物に曝すことが、
上記光学部品の上記表面を、第1の濃度の亜セレン酸に曝すことと、
上記表面から上記第1の濃度の残留している亜セレン酸を除去することと、
続いて、上記光学部品の上記表面を、上記第1の濃度より高い第2の濃度の亜セレン酸に曝すことと、を含む、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
[9]
上記光学部品の上記表面を、上記第1の濃度の亜セレン酸に曝すことが、上記光学部品の上記表面を、上記第2の濃度の亜セレン酸に曝されるよりも長い時間、上記光学部品の上記表面を、上記第1の濃度の亜セレン酸に曝すことを含む、項目8に記載の方法。
[10]
上記第1の濃度の亜セレン酸が、上記光学的黒化組成物の0.1体積パーセント~0.4体積パーセントの範囲であり、上記第2の濃度の亜セレン酸が、上記光学的黒化組成物の0.15体積パーセント~0.6体積パーセントの範囲である、項目8に記載の方法。
[11]
上記光学部品の上記表面を、上記光学的黒化組成物に曝すことが、上記光学部品を、上記光学的黒化組成物に浸漬することを含み、
上記光学部品の上記表面から、残留している光学的黒化組成物を除去することが、上記光学部品の上記表面を水ですすぐことを含み、
上記光学部品を、乾燥させることが、華氏250度~華氏1350度の範囲の温度で乾燥させることと、を含む、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
[12]
上記時間が、30秒~5分の範囲である、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
[13]
上記光学部品の上記表面を、上記光学的黒化組成物に曝す前に、リン酸で上記表面をクリーニングすることをさらに含む、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
[14]
上記光学部品を、アルミニウムまたはステンレス鋼から製造された、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
[15]
上記光学部品が、光エミッタのための開口部および光検出器のための開口部を画定する光センサーのためのハウジングであり、上記光路が、上記光路に光学的に接続された光学窓を介して上記光エミッタからの光を、分析中の流体サンプル中へと指向し、上記光学窓を介して上記流体サンプルから光を受け取り、上記光を上記光検出器に指向するように構成される、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
[16]
分析中の流体サンプルから光学レンズを介して光を受け取るように構成された光路を画定する金属で形成された表面を含み、
上記表面は、セレン化金属で光学的に黒化されており、紫外光への暴露に対する応答において蛍光発光を放射しない、光学部品。
[17]
上記金属が、銅であり、上記光学部品が、アルミニウムまたはステンレス鋼から製造された、項目16に記載の光学部品。
[18]
上記表面が、陽極酸化されておらず、有機分子を含有するコーティングを含まない、項目16または17に記載の光学部品。
[19]
上記光学部品が、光エミッタのための開口部および光検出器のための開口部を画定する光センサーのためのハウジングであり、上記光路が、上記光路に光学的に接続された光学窓を介して上記光エミッタからの光を、分析中の流体サンプル中へと指向し、上記光学窓を介して上記流体サンプルから光を受け取り、上記光を上記光検出器に指向するように構成される、項目16~18のいずれか一項に記載の光学部品。
[20]
上記光路に光学的に接続された光学窓を介して光を分析中の流体サンプル中へと指向し、上記光学窓を介して上記流体サンプルから光を受け取る、光路を有するハウジングと、
上記光路に光を放射するように配置される光エミッタと、
上記光路から光を受け取るように配置される光検出器と、を含む、光センサーであって、
上記ハウジングが、金属で形成され、上記光路を画定する上記ハウジングの表面が、セレン化金属で光学的に黒化され、紫外光への曝露に対する応答において分析中の上記流体サンプルによって放射される蛍光放射線よりも弱い蛍光放射線を放射する、光センサー。
[21]
上記光路を画定する上記ハウジングの上記表面が、250ナノメートル~600ナノメートルの波長内の光に曝される応答において蛍光発光を放射しない、項目20に記載の光センサー。
[22]
上記金属が、銅であり、上記光学部品が、アルミニウムまたはステンレス鋼から製造された、項目20または21に記載の光センサー。
[23]
上記表面が、陽極酸化されておらず、有機分子を含有するコーティングを含まない、項目20~22のいずれか一項に記載の光センサー。
[24]
項目16~23のいずれか一項に記載の光学部品の使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7