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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ドライエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240620BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240620BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20240620BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20240620BHJP
   H10B 41/27 20230101ALI20240620BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20240620BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L29/78 371
H10B41/27
H10B43/27
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020553752
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2019040539
(87)【国際公開番号】W WO2020090451
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-07-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2018207309
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大森 啓之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聖唯
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】三浦 みちる
【審判官】中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0114003(US,A1)
【文献】特開2017-050529(JP,A)
【文献】特開2011-124239(JP,A)
【文献】特開2017-092357(JP,A)
【文献】特開平11-330046(JP,A)
【文献】特開2003-298049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H10B 41/27
H10B 43/27
H01L 21/336
H01L 29/788
H01L 29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたシリコン酸化物層とシリコン窒化物層の積層膜に対して、前記積層膜上に形成された所定の開口パターンを有するマスクを介して、ドライエッチング剤をプラズマ化し、絶対値で500V以上の負の直流の自己バイアス電圧を印加したエッチングを行い、前記積層膜に対して垂直方向の貫通孔を形成する方法であって、
前記ドライエッチング剤が、少なくとも、Cと、C(xは1以上4以下の整数、yは1以上2x+1以下の整数、zは2x+2-yで表される整数)で表される含水素飽和フルオロカーボンと、酸化性ガスと、を含み、
前記ドライエッチング剤に含まれる前記含水素飽和フルオロカーボンの体積が、前記ドライエッチング剤に含まれる前記Cの体積の0.1倍以上10倍以下の範囲であることを特徴とするドライエッチング方法。
【請求項2】
前記含水素飽和フルオロカーボンが、CHF、CH、CHF、C、C、CHF、C、C、及びCからなる群より選ばれる少なくともひとつであることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項3】
前記含水素飽和フルオロカーボンが、C HF 、C 、C 、C HF 、C 、C 、及びC からなる群より選ばれる少なくともひとつであることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項4】
前記ドライエッチング剤中のCと前記含水素飽和フルオロカーボンの濃度の合計が、5体積%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のドライエッチング方法。
【請求項5】
前記酸化性ガスが、O、O、CO、CO、COCl、COF、NO及びC(aは1以上3以下の整数、bとcは1以上の整数、b+c≦2a+2、b+cは偶数)からなる群より選ばれる少なくともひとつであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項6】
前記ドライエッチング剤が、さらに不活性ガスを含み、
前記不活性ガスがHe、Ne、Ar、Kr、Xe及びNからなる群より選ばれる少なくともひとつであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項7】
前記ドライエッチング剤が、Cと前記含水素飽和フルオロカーボンと酸化性ガスと不活性ガスのみからなることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項8】
がヘキサフルオロプロペンであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項9】
前記マスクがアモルファスカーボンからなることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項10】
前記積層膜に対して貫通孔を形成する際に、Cと前記含水素飽和フルオロカーボンの体積比を0.1~10の範囲で変化させながらエッチングを行うことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項11】
がヘキサフルオロプロペンであり、
前記含水素飽和フルオロカーボンがCHF、C、C、及びCからなる群より選ばれる少なくともひとつであり、
前記ドライエッチング剤中のCと前記含水素飽和フルオロカーボンの濃度の合計が、5体積%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項12】
前記積層膜が、前記シリコン酸化物層と前記シリコン窒化物層の交互積層膜であって、前記シリコン酸化物層と前記シリコン窒化物層の合計の層数が6層以上であることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項13】
前記交互積層膜が32層以上である、請求項12に記載のドライエッチング方法。
【請求項14】
前記貫通孔の深さが0.5μm以上である、請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項15】
前記負の直流の自己バイアス電圧の絶対値が1000V以上である、請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項16】
前記貫通孔の深さを前記開口パターンの幅で割ったアスペクト比が20以上である、請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項17】
シリコン窒化物のエッチング速度をシリコン酸化物のエッチング速度で割った値であるSiN/SiOxエッチング速度比が、0.9以上1.5未満である、請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項18】
エッチングの際に基板上に形成される、ドライエッチング剤に由来するフルオロカーボン膜の生成速度が、1nm/min以下である、請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項19】
シリコン酸化物のエッチング速度をレジストのエッチング速度で割った値であるSiOx/レジストエッチング速度比が、3以上である請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項20】
前記含水素飽和フルオロカーボンが、CHF、CH、CHF及びCからなる群より選ばれる少なくともひとつであり、
前記不活性ガスがArであり、
前記酸化性ガスがOであることを特徴とする請求項に記載のドライエッチング方法。
【請求項21】
前記ドライエッチング剤が、Cと、前記含水素飽和フルオロカーボンと、前記酸化性ガスと、前記不活性ガスのみからなることを特徴とする請求項20に記載のドライエッチング方法。
【請求項22】
前記含水素飽和フルオロカーボンが、Cであることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含フッ素不飽和炭化水素を含むドライエッチング剤を用いたドライエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、半導体製造においては、微細化が物理的な限界に近づきつつあり、それを補うため、構造物を高さ方向に積層して集積する方法が開発されている。この傾向はNANDフラッシュメモリにおいて特に顕著に見られ、三次元NANDフラッシュメモリの研究開発が活発化している。
【0003】
例えば、三次元NANDフラッシュメモリでは、多結晶シリコン(以下、poly-Siまたはp-Siと呼ぶ)層とシリコン酸化物(以下、SiOxと呼ぶ)層が基板上に交互に多数積層され、積層膜に対して垂直方向に電極となる構造物が埋め込まれた構造がとられている。しかしながら、実際にこのような素子を作製する場合、下地である基板と積層膜に含まれる層のいずれもがSiであることから、積層膜のエッチング工程において、基板にダメージが及んでしまい、p-SiとSiOxからなる積層膜のみをエッチング加工することが困難であった。
【0004】
そこで、p-SiとSiOxからなる積層膜に代えて、窒化シリコン(以下SiNと呼ぶ)とSiOxからなる積層膜を用いたNANDフラッシュメモリも検討されている。その場合の作製方法の一例では、図1(a)のように、基板4の上にSiN層1とSiOx層2からなる交互積層膜を予め作製し、図1(b)のように、積層膜に対して垂直方向に貫通孔5をエッチング加工により作製する。その後、図示していないが、SiN層を除去し、ゲートを形成する工程などを行う。
【0005】
この積層膜の層に対して垂直方向に貫通孔を形成する工程においては、SiNとSiO2の交互積層膜に対して、SiNのエッチングとSiO2のエッチングを、それぞれの独立した工程として交互に繰り返して貫通孔を形成する工程が検討されている。
【0006】
しかしながら、層ごとに独立した工程としてエッチングを行っていたのでは、積層数の増加に伴い、工程数も大幅に増加することになる。また、従来のCF系のガスのみでは、SiNのエッチング速度が遅く、場合によっては、SiN層にデポジションが発生し、所望するエッチング形状が得られない。そこで、特許文献1に示されるように、少なくとも1層のシリコン酸化膜層と少なくとも1層のシリコン窒化膜層とを含む積層膜に対するエッチング方法において、CF系のガスと,CHF系のガスとを含む混合ガスにより1回のプラズマエッチングで異なる種類の層を同時にエッチングする方法が用いられることもある。
【0007】
また、特許文献2には、基板上に形成されたシリコン酸化物層とシリコン窒化物層の積層膜に対して、ドライエッチング剤をプラズマ化し、500V以上のバイアス電圧を印加したエッチングを行い、該層に対して垂直方向の貫通孔を形成するドライエッチング方法において、HFO-1234ze(E)とCxy(x=2~5の整数、y=2、4、6、8、または10、y≦2x)で表される不飽和パーフルオロカーボンと、酸化性ガスと、を含み、前記ドライエッチング剤に含まれる前記不飽和パーフルオロカーボンの体積が、前記ドライエッチング剤に含まれる前記C324の体積の0.1~10倍の範囲であることドライエッチング方法が公開されている。
【0008】
特許文献3では、ヘキサフルオロプロペンとジフルオロメタンの混合ガスをプラズマ化して、シリコン窒化物に対してシリコン酸化物を選択的にエッチングするドライエッチング方法が開示されている。
【0009】
特許文献4には、ヘキサフルオロプロペンと酸素ガスを含むドライエッチングガスをプラズマ化して、シリコン酸化物やシリコン窒化物などのシリコン系材料をエッチングするドライエッチング方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2003-86568号公報
【文献】特開2017-50529号公報
【文献】特表2001-517868号公報
【文献】特開2017-92357号公報
【発明の概要】
【0011】
前述のように、特許文献1には、C48を始めとするCF系のガスと,水素を含むCHF系のガスとを含む混合ガスにより1回のプラズマエッチングで異なる種類の積層膜上部に設けられたレジストをマスクとして同時にエッチングする方法が示されている。しかしながら、これらの方法では、マスクとのエッチング選択性が十分に取れず、積層膜の膜厚が厚い場合には、エッチング完了までマスクが耐えられないという問題があった。また、そのエッチング過程においても側壁保護膜の形成が不十分であり、ボウイング等のエッチング形状の異常が発生するという問題があった。特に、SiN層のエッチング速度がSiOx層のエッチング速度に比べて過剰に大きくなる場合は、異方性エッチングに加えて、SiN層の等方的なエッチングが進行してしまい、エッチング形状の異常を引き起こすことがあった。
【0012】
また、特許文献3では、シリコン酸化物を選択的にエッチングするため、SiNとSiO2の積層膜に貫通孔を形成することができない。また、特許文献4のように、ヘキサフルオロプロペンと酸素ガスのプラズマでは、本願の比較例1にて検討したように、シリコン酸化物のエッチング速度がシリコン窒化物のエッチング速度よりも早くなるため、やはりSiNとSiO2の積層膜に貫通孔を形成する工程には適していない。
【0013】
一方、特許文献2によれば、HFO-1234ze(E)とCxy(x=2~5の整数、y=2、4、6、8、または10、y≦2x)で表される不飽和パーフルオロカーボンと、酸化性ガスと、を含むエッチングガスを用いることにより、SiN層とSiOx層のエッチング速度を有効に制御でき、かつエッチング形状の異常の発生も抑制できることが記載されている。
【0014】
ところで、一般的な半導体素子において、エッチングされたホールの底部に被エッチング層が残存することによるコンタクト(電気伝導)の不良を防ぐため、1.1~2倍程度エッチング時間を延長し必要以上にエッチングを行うことが一般的である。しかし一方で過剰なエッチングの発生を防ぐため、ホール底部にはエッチストップ層を予め形成しておく。これは、多くの3DNANDと呼ばれる素子の構造を形成する際においても同様である。つまり、上記積層膜エッチングにおいても、高アスペクト比かつ深さ数μmにわたるエッチング工程が存在するが、ホール底部、即ち貫通孔の底部に存在する数nmから数十nm程度のエッチストップ層で過剰なエッチングを停止させる必要がある。
【0015】
エッチストップ層に用いられる材質は、前後の工程や素子全体の構造に依存するため、一概には決まらないが、多くの場合、単結晶Si、多結晶Si(以下p―Si)、W、WSi、Ti、TiNまたはTiOxなどが用いられる。
【0016】
本発明者が、特許文献2に記載された方法を用いたところ、確かに高アスペクト比の積層膜のエッチング工程において、形状不良なくエッチングが可能である反面、フルオロカーボン膜がエッチストップ層上に過剰に堆積してエッチング残渣となる結果、ホール底部のコンタクト不良が発生する場合があることがわかった。
【0017】
アスペクト比が10程度と浅いホールであれば、エッチング工程の後のアッシングや加熱によりエッチストップ層上のフルオロカーボン膜も除去されるが、アスペクト比20以上の深いホールの場合には、効果的に除去されず、残存する場合があると考えられる。
【0018】
これらの事情から、アスペクト比20以上の高アスペクト比エッチング工程においても、形状の異常のないエッチングが可能で、かつエッチストップ層上での過剰なデポジションの発生のないエッチング方法が望まれていた。
【0019】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、SiNのエッチング速度をSiOxのエッチング速度で除した値(SiN/SiOxエッチング速度比)を0.90~1.5の間で任意に制御でき、かつエッチング残渣のないエッチング方法を提供するものである。
【0020】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、SiNとSiOxが基板上に交互に多数積層された被エッチング層に対して垂直な貫通孔を形成する工程において、少なくともC36と炭素数が1~4である含水素飽和フルオロカーボンとを所定の割合で含むドライエッチング剤を使用し、プラズマエッチングを行うことで、SiNのエッチング速度をSiOxのエッチング速度で除した値(SiN/SiOxエッチング速度比)を0.90以上1.5以下の間で任意の制御でき、かつ、エッチストップ層との選択性を有しつつも該層上への過剰なデポジションが抑制されること見出し、本開示に至った。
【0021】
すなわち、本開示は、基板上に形成されたシリコン酸化物層とシリコン窒化物層の積層膜に対して、前記積層膜上に形成された所定の開口パターンを有するマスクを介して、ドライエッチング剤をプラズマ化し、絶対値で500V以上の負の直流の自己バイアス電圧を印加したエッチングを行い、積層膜に対して垂直方向の貫通孔を形成するドライエッチング方法であって、前記ドライエッチング剤が、少なくとも、C36と、Cxyz(xは1以上4以下の整数、yは1以上2x+1以下の整数、zは2x+2-yで表される整数)で表される含水素飽和フルオロカーボンと、酸化性ガスと、を含み、前記ドライエッチング剤に含まれる前記含水素飽和フルオロカーボンの体積が、前記ドライエッチング剤に含まれる前記C36の体積の0.1~10倍の範囲であることを特徴とするドライエッチング方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)、(b)貫通孔を形成する前と後の素子の積層構造の概略図である。
図2】実施例・比較例で使用した反応装置の概略図である。
図3】(a)~(c)実施例および比較例のSiN/SiOxエッチング速度比とエッチング選択比(SiOx/レジスト)、金属タングステン(W)膜及びTiN膜上へのCFn膜の堆積量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施方法について以下に説明する。なお、本開示の範囲は、これらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本開示の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し、実施することができる。
【0024】
本開示のドライエッチング方法では、図1(a)のように、基板4の上にSiN層1とSiOx層2からなる交互積層膜と、所定の開口パターンを有するマスク3とを予め作製し、図1(b)のように、マスク3を介して、積層膜に対して垂直方向、即ち基板4に対して垂直方向に貫通孔5をエッチング加工により作製する。ここで、交互積層膜は、実用的には32層や48層の積層膜であるため、貫通孔5は、アスペクト比(貫通孔の深さaをマスク3の開口部の幅bで割った値)が20以上の非常に細長い孔である。なお、SiOxのxは1以上2以下であるが、SiOxは通常はSiO2である。また、SiNは、化学式ではSiNx(xは0.3以上9以下)で表され、通常はSi34である。
【0025】
本開示によるドライエッチング方法では、C36と、Cxyz(xは1以上4以下の整数、yは1以上2x+1以下の整数、zは2x+2-yで表される整数)で表される含水素飽和フルオロカーボンと、酸化性ガスと、を含み、C36と、前記含水素飽和フルオロカーボンの混合比が、体積比で1:0.1~10の範囲であるドライエッチング剤を使用し、プラズマエッチングを行うことで、基板上に形成されたSiOx層とSiN層の積層膜をエッチングする。使用する基板4としては特に限定されないが、シリコンウエハを使用することができる。なお、マスク3を構成する材料としては、アモルファスカーボンや光硬化性樹脂からなるフォトレジストを使用することができる。
【0026】
xyzで表される含水素飽和フルオロカーボンとしては、例えば、CHF3、CH22、CH3F、C2HF5、C224、C233、C242、C25F、C3HF7、C326、C335、C344、C353、C362、C37F、C49F、C482、C473、C464、C455、C446、C437、C428及び、C4HF9が挙げられる。
【0027】
xyz中に含まれるC原子に対するH原子の量が多いとSiN層のエッチング速度が速くなりすぎてしまう傾向にあることから、CHF3、CH22、C2HF5、C224、C233、C3HF7、C326、C335、C344が好ましく、添加量が少なくて済むことから、CH22、C224、C233、C3HF7、C326、C335が特に好ましい。
【0028】
なお、C36で表されるフルオロカーボンには、構造異性体、すなわち直鎖のヘキサフルオロプロペンと環状のシクロヘキサフルオロプロパンが存在する。本開示においては、いずれかの構造を単体もしくは両者の混合物として用いることができる
【0029】
324、即ち1,3,3,3-テトラフルオロプロペンのような含水素不飽和フルオロカーボンは、不飽和結合を分子中に有するため、プラズマ中で重合して高分子化し、貫通孔の側壁に堆積して保護膜を形成する。この保護膜は水素数が増加するに従い、その膜厚が厚くなる傾向にある。一方で、ヘキサフルオロプロペンは、C324と同様に保護膜の形成は生じるものの、その厚みはC324に比べて薄い。このことが、C36を使用する場合に、エッチストップ層との選択性を有しつつも積層膜上への過剰なデポジションが抑制される理由と考えられる。
【0030】
一方、C36の代わりに、広くエッチングガスとして使用されているC46やc-C48を使用する場合に関して検討する。C46を使用する場合は、C46は二重結合が2つ含まれるため、二重結合が1つであるC36やC324に比べてさらに重合が進みやすいため、過剰な保護膜が形成し易い。そのため、効果的なエッチングを行うために、相対的にO2等の酸化性ガス濃度を高めに設定せざるを得ず、結果としてマスクとの十分な選択性が得られない。また、c-C48を使用する場合には、重合性が低いため、保護膜の形成が進みにくいために、同じくマスクとの十分な選択性が得られない。
【0031】
36の濃度は、十分なエッチングレートを得るうえで、C36とCxyzに、後述する酸化性ガス、不活性ガスなども含めたドライエッチング剤の総流量に対して、1体積%以上であることが好ましく、5体積%以上であることが特に好ましい。また、ドライエッチング剤中のC36とCxyzの濃度の合計が総流量の5体積%以上であることが好ましい。一方で、C36とCxyzの濃度の合計が総流量の60体積%を超えると、十分な割合の酸化性ガスの濃度が確保できず、高価な含フッ素不飽和炭化水素を多量に含む割には、エッチングレートが上がらず、費用対効果の点で好ましくない。
【0032】
また、C36とCxyzで表される含水素飽和フルオロカーボンの混合比は、体積比で1:0.1以上10以下が好ましく、1:0.2以上5以下がより好ましく、1:0.4以上3以下が特に好ましい。Cxyzで表される含水素飽和フルオロカーボンが多すぎると、SiOxのエッチング速度が低下するとともに、SiN層の水平方向への等方性エッチング速度が大きく上昇し、貫通孔の側壁に凹凸が生じ、所望するエッチング形状が得られなくなることがある。
【0033】
本開示においては、SiN層とSiOx層のエッチング速度を任意に制御できるため、一つの工程でSiN層とSiOx層の積層膜をエッチングすることができる。さらに、エッチング速度が同等であるため、積層膜に形成された孔の壁(内面)の凹凸が少なく、かつ上部と下部で孔径の均一な孔を積層膜に形成することができる。
【0034】
また、ドライエッチング剤には、酸化性ガスを添加する。酸化性ガスとしては、O2、O3、CO、CO2、COCl2、COF2、NO2、Cabc(aは1以上3以下の整数、bとcは1以上の整数、b+c≦2a+2、b+cは偶数)などを使用することができる。特に、入手・取り扱いの容易さから、酸素を使用することが好ましい。酸化性ガスの添加量は、エッチング剤全体の1体積%以上50体積%以下であることが好ましく、2体積%以上30体積%以下であることがより好ましく、5体積%以上10体積%以下であることが特に好ましい。
【0035】
また、ドライエッチング剤には、コストを下げつつ取り扱いの安全性を増すため、不活性ガスを含むことが好ましい。不活性ガスとしては、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガスの希ガス類や、窒素ガスを用いることができる。中でも、入手の容易さや相互作用の少なさから、アルゴンガスが特に好ましい。
【0036】
また、ドライエッチング剤が、C36と含水素飽和フルオロカーボンと酸化性ガスと不活性ガスのみからなってもよい。
【0037】
発生させる負の直流の自己バイアス電圧は、層に対して垂直方向に直進性の高いエッチングを行うため、絶対値で500V以上であることが求められ、絶対値で1000V以上であることが好ましい。負の直流の自己バイアス電圧の絶対値が高ければ高いほどサイドエッチを減少させることが可能であるが、一方、負の直流の自己バイアス電圧の絶対値が10000Vを超えると、基板へのダメージが大きくなり、好ましくない。
【0038】
エッチングガスに含有されるガス成分についてはそれぞれ独立してチャンバー内に導入してもよく、または予め混合ガスとして調整した上で、チャンバー内に導入しても構わない。反応チャンバーに導入するドライエッチング剤の総流量は、反応チャンバーの容積、及び排気部の排気能力により、前記の濃度条件と圧力条件を考慮して適宜選択できる。
【0039】
エッチングを行う際の圧力は、安定したプラズマを得るため、およびイオンの直進性を高めてサイドエッチを抑制するため、10Pa以下が好ましく、5Pa以下がより好ましく、1Pa以下が特に好ましい。一方で、チャンバー内の圧力が低すぎると、電離イオンが少なくなり十分なプラズマ密度が得られなくなることから、0.05Pa以上であることが好ましい。
【0040】
また、エッチングを行う際の基板温度は50℃以下が好ましく、特に異方性エッチングを行うためには20℃以下とすることが望ましい。50℃を超える高温では、側壁へのフルオロカーボンラジカルを主成分とする保護膜の生成量が減少し、等方的にエッチングが進行する傾向が強まり、必要とする加工精度が得られない。また、レジスト等のマスク材が著しくエッチングされることがある。
【0041】
エッチング時間は素子製造プロセスの効率を考慮すると、60分以内であることが好ましい。ここで、エッチング時間とは、チャンバー内にプラズマを発生させ、ドライエッチング剤と試料とを反応させている時間である。
【0042】
積層膜中の層数や形成する貫通孔の深さは特に限定されないが、積層による集積効果を得る上で、層数は6層以上、貫通孔の深さは0.5μm以上であることが好ましい。
【0043】
また、本開示のドライエッチング剤を用いたエッチング方法は、容量結合型プラズマ(CCP)エッチング、反応性イオンエッチング(RIE)、誘導結合型プラズマ(ICP)エッチング、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマエッチング及びマイクロ波エッチング等の各種エッチング方法に限定されず、行うことができる。
【0044】
また、SiN層とSiOx層からなる交互積層膜に貫通孔を形成する際に、ドライエッチング剤に含まれるC36とCxyzの組成を、エッチング工程中に段階的又は周期的に変化させてもよい。
【0045】
さらに、貫通孔を形成する際に、ドライエッチング剤にCxyzを加えないでエッチングする工程、すなわち、C36と酸化性ガスを含むドライエッチング剤を用いてエッチングする工程を含んでもよい。
【0046】
例えば、一つの例としては、交互積層膜の半分程度(例えば、交互積層膜の厚さの1/2~5/8)までエッチングする際には、Cxyzを加えたドライエッチング剤を用いてエッチングを行い、交互積層膜を半分程度削った後に、Cxyzの量を減らすか加えないドライエッチング剤を用いてエッチングを行うことが考えられる。
この方法により、水平方向のSiNエッチングが起きにくい貫通孔を削り始めた段階では、Cxyzを添加して高速エッチングを行うことができ、水平方向のSiNエッチングが問題となる貫通孔を削り終わる段階では、ドライエッチング剤にCxyzを加えないで、または加える量を減らすことで水平方向のSiNエッチングを抑制しつつ交互積層膜をエッチングすることができる。すなわち、水平方向へのSiNエッチングを防ぎながら、貫通孔を形成するのに必要な時間を短縮することができる。
【0047】
また、他の例としては、交互積層膜のSiN層をエッチングする際には本開示のエッチング方法を適用し、SiOx層をエッチングする際には、Cxyzを添加せずにエッチングすることが考えられる。
この方法により、SiN層のエッチング時には、SiO2エッチング速度に比べてSiNエッチング速度の速い、Cxyzを添加したドライエッチング剤でSiNをエッチングすることができ、SiOx層のエッチング時には、Cxyzを添加しないドライエッチング剤でSiNのエッチング速度を下げることでSiN層の横方向エッチングを抑制できる。
なお、この方法では、SiN層とSiOx層の積層数に応じて、供給するドライエッチング剤を変更する必要があるが、Cxyzの供給の有無を切り替えればドライエッチング剤を変更することができるため、各層のエッチング方法の切り替えに大きな作業が必要なく、工程はそれほど煩雑ではない。
【0048】
本開示のエッチング方法において、SiNのエッチング速度をSiOxのエッチング速度で除した値(SiN/SiOxエッチング速度比)を0.90以上1.5以下であることが好ましく、1以上1.3以下であることがより好ましい。
【0049】
また、本開示のエッチング方法においては、エッチングの際に基板上に形成される、ドライエッチング剤に由来するフルオロカーボン膜の生成速度が、1nm/min以下であることが好ましく、0.5nm/min以下であることがより好ましい。
【0050】
また、本開示のエッチング方法においては、シリコン酸化物のエッチング速度をレジストのエッチング速度で割った値であるSiOx/レジストエッチング速度比が、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、8以上であることが特に好ましい。
【0051】
さらに、本開示のエッチング方法は、マスクに対しても高い選択性を有する。そのため、本開示のエッチング方法を、三次元NANDフラッシュメモリを製造する過程において、SiNとSiOxの交互積層膜に、アスペクト比20を超える貫通孔を形成する工程に使用することができる。その結果、積層膜に形成された貫通孔内に露出したSiN層の過剰な等方性エッチングを抑制し、アスペクト比20を超えるような貫通孔のエッチングにおいてもエッチング形状の異常を防止し、且つ良好な電気特性を実現することができる。
【0052】
なお、本開示のエッチング方法により、SiN層とSiOx層からなる交互積層膜に貫通孔を形成した後に、貫通孔の側壁などに堆積したCxyなどから生成した反応性生成物や、マスクを除去するため、酸素ガスを含む処理ガスから生成されたプラズマでアッシングするアッシング工程を行ってもよい。
【実施例
【0053】
以下に本開示の実施例を比較例とともに挙げるが、本開示は以下の実施例に制限されるものではない。
【0054】
[実施例1]
(エッチング工程)
図2は、実施例・比較例で用いた反応装置10の概略図である。チャンバー11内には、試料18を保持する機能を有しステージとしても機能する下部電極14と、上部電極15と、圧力計12が設置されている。また、チャンバー11上部には、ガス導入口16が接続されている。チャンバー11内は圧力を調整可能であると共に、高周波電源(13.56MHz)13によりドライエッチング剤を励起させることができる。これにより、下部電極14上に設置した試料18に対し励起させたドライエッチング剤を接触させ、試料18をエッチングすることができる。ドライエッチング剤を導入した状態で、高周波電源13から高周波電力を印加すると、プラズマ中のイオンと電子の移動速度の差から、上部電極15と下部電極14の間に自己バイアス電圧と呼ばれる直流電圧が発生させることができるように構成されている。チャンバー11内のガスはガス排出ライン17を経由して排出される。
【0055】
試料18として、SiN層を有するシリコンウエハA、および、SiO2層を有するシリコンウエハB、フォトレジスト膜を有するシリコンウエハC、TiN層を有するシリコンウエハD、W層を有するシリコンウエハEをステージ上に設置した。SiN層やSiO2層およびW層についてはCVD法により作製し、TiN層はスパッタ法により作製した。
【0056】
ここに、エッチング剤として、C36(ヘキサフルオロプロペン)、CHF3、O2およびArをそれぞれ、総流量に対して10体積%、5体積%、15体積%、70体積%で混合し、合計100sccmとして、流通させ高周波電力を400Wで印加してエッチング剤をプラズマ化させることにより、エッチングを行った。なお、圧力は1Paであり、印加電力は1.0W/cm2であり、負の直流の自己バイアス電圧の絶対値は1000Vであり、時間は2分間である。
【0057】
シリコンウエハAのSiN層と、シリコンウエハBのSiO2層と、シリコンウエハCのレジスト膜の、エッチング前後の厚さの変化からエッチング速度を求めた。また、シリコンウエハDのTiN層と、シリコンウエハEのW層に堆積したフルオロカーボン膜(CFn膜)の厚さを測定した。
【0058】
[実施例2~12、比較例1~6]
添加ガスとして、CHF3、CH22、CH3F、C335(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、HFO-245fa)、C324(HFO-1234ze(E))、C46(ヘキサフルオロ1,3ブタジエン)、CF4を用い、表1に記載の割合で混合した以外は実施例1と同じ条件でエッチングを行った。
【0059】
各実施例・比較例の結果を表1に記載した。表1中のエッチング速度比は、SiNのエッチング速度をSiOxのエッチング速度で除した値(SiN/SiOx比)であり、エッチング選択比はSiOxのエッチング速度をレジストのエッチング速度で除した値(SiOx/レジスト比)である。
【表1】
【0060】
少なくともC36と含水素飽和フルオロカーボンとを所定の割合で含むドライエッチング剤を使用し、プラズマエッチングを行った各実施例では、SiN/SiOxエッチング速度比は0.90以上1.5以下であり、レジストとの選択比も未添加の場合に比べて同等以上であった。また、TiN上、およびW上へのCFn膜の生成はほとんど見られなかった。すなわち、このドライエッチング方法により、SiN/SiOxエッチング速度比を0.90以上1.5以下の間で任意に制御でき、マスクとの選択比を悪化させることなく、エッチストップ層との選択性を維持しつつも、エッチストップ膜上へのCFn膜の生成を抑制できる。
【0061】
一方で、比較例1においては、含水素飽和フルオロカーボンを含まないため、SiNエッチング速度が低く、SiNエッチング速度とSiOxエッチング速度の比は0.85であった。また、比較例2、3においては、添加ガスとして二重結合を有する含水素不飽和フルオロカーボンを使用している。その結果SiNエッチング速度とSiOxエッチング速度の比は0.90以上1.5未満であるものの、WやTiN上へのCFn膜の生成が認められた。このような場合には、電気特性に対して悪影響が及ぶと考えられる。
【0062】
比較例4、5においては、水素を含まない飽和あるいは不飽和フルオロカーボンを添加ガスとして用いた。これらの場合、SiNのエッチング速度が不十分であり、SiNエッチング速度とSiOxエッチング速度の比は0.9を下回った。さらに、比較例5では、TiNやWのエッチングが進行していた。このような場合、エッチング時間によってはエッチストップ膜としての役割を果たさない可能性が高い。
【0063】
比較例6においては、含水素飽和フルオロカーボンがC36に対して10を超える比率で添加しており、SiNエッチング速度が上昇しすぎ、SiNエッチング速度とSiOxエッチング速度の比は1.7となっており、TiNやW上にフルオロカーボン膜の生成が確認された。
【0064】
図3(a)、(b)、(c)は、実施例1から12および比較例1から6のSiN/SiOxエッチング速度比とエッチング選択比(SiOx/レジスト)、WおよびTiN上に形成されたCFn膜の膜厚を示す図である。図3(a)に示すように、SiN/SiOxエッチング速度比は、含水素飽和フルオロカーボンであるCHF3(実施例1~3)、CH22(実施例4~6)、CH3F(実施例7~9)、C335(実施例10~12)を添加した場合に、無添加の場合(比較例1)や、水素を含まない飽和パーフルオロカーボンを用いた場合(比較例5)よりも高くすることができる。また、添加量や添加ガスの種類によりコントロールできる。また、図3(b)に示すように、エッチング選択比(SiOx/レジスト)は、分子内水素数の多いガス、炭素数の多いガス、二重結合を有する含水素不飽和フルオロカーボン(比較例2、3のC324)を添加したときに高くなる傾向にある。図3(c)では、二重結合を有する含水素不飽和フルオロカーボン(比較例2、3)や二重結合を2個有するC46を用いた場合(比較例4)に顕著にCFn膜の生成が確認された。また、添加ガス量がC36の10倍を超える量で加えた際(比較例6)もCFn膜の生成が確認された。
【0065】
これらの通り、C36を用いたエッチングにおいて、レジストとの十分な選択比を有し、SiNのエッチング速度をSiOxのエッチング速度で除した値(SiN/SiOx比)が0.9~1.5の範囲に収まり、かつエッチストップ膜上に顕著なCFn膜の生成が生じないといった特徴をもつ添加ガスは含水素飽和フルオロカーボンのみであった。更に、C335を添加する実施例10~12では、エッチング選択比(SiOx/レジスト)が8以上であり、C324を添加する比較例2~3に匹敵する値であった。
【0066】
比較例1においては、C36のみ、すなわち不飽和パーフルオロカーボンのみを用いたため、SiNエッチング速度が遅く、SiNエッチング速度とSiOxエッチング速度の比は0.85となっている。そのため、SiN層とSiOx層の積層膜に比較例1を適用しても、SiN層にガス由来の堆積物が堆積し、SiNのエッチング速度が遅いため、貫通孔を形成できないと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示は、半導体製造プロセスにおいて、三次元的に集積されたNANDフラッシュメモリ等の素子への配線形成に有効である。
【符号の説明】
【0068】
1: SiN層
2: SiOx
3: マスク
4: 基板
5: 貫通孔
10: 反応装置
11: チャンバー
12: 圧力計
13: 高周波電源
14: 下部電極
15: 上部電極
16: ガス導入口
17: 排ガスライン
18: 試料
図1
図2
図3