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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】温度槽、環境形成装置及び試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
G01N17/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021005636
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110317
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】岡 哲也
(72)【発明者】
【氏名】菊池 郁織
(72)【発明者】
【氏名】湊 遥
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-037529(JP,A)
【文献】実開昭61-027093(JP,U)
【文献】特開2010-181221(JP,A)
【文献】特開2020-165671(JP,A)
【文献】特開2016-090482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00 - 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に物品を配置可能であり、正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、
前記空間形成部材の開放面の下部側を覆う遮風部材と、を有し、
前記空間形成部材は、温度調節した気体が導入されるものであり、
前記遮風部材は姿勢変更部材又は脱着部材を有し、
前記姿勢変更部材又は前記脱着部材は、前記遮風部材が前記下部側を覆わない状態とすることが可能であることを特徴とする温度槽。
【請求項2】
内部に物品を配置可能であり、正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、
前記空間形成部材の開放面の下部側を覆う遮風部材と、を有し、
前記空間形成部材は、温度調節した気体が導入されるものであり、
左右方向に開く引き戸を有し、当該引き戸を開いて前記開放面の少なくとも一部を開放可能であることを特徴とする温度槽。
【請求項3】
内部に物品を配置可能であり、正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、
前記空間形成部材の開放面の下部側を覆う遮風部材と、を有し、
前記空間形成部材は、温度調節した気体が導入されるものであり、
前記空間形成部材は、内部筐体、外部筐体、前記内部筐体の開口を開閉可能な扉体、および、受け部材を有し、
前記内部筐体は、前記外部筐体に覆われた状態で前記受け部材の上に配置され、
前記外部筐体の正面、背面、側面の内の少なくとも一面に開く開口から前記内部筐体の内部を観察することが可能であることを特徴とする温度槽。
【請求項4】
内部に物品を配置可能であり、正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、
前記空間形成部材の外部の空気を前記空間形成部材の開放面の下側及び/又は横から対向する側に向かって送風する送風手段と、を有し、
前記空間形成部材は、温度調節した気体が導入されるものであり、
左右方向に開く引き戸を有し、当該引き戸を開いて前記開放面の少なくとも一部を開放可能であることを特徴とする温度槽。
【請求項5】
内部に物品を配置可能であり、正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、
前記空間形成部材の外部の空気を前記空間形成部材の開放面の下側及び/又は横から対向する側に向かって送風する送風手段と、を有し、
前記空間形成部材は、温度調節した気体が導入されるものであり、
前記空間形成部材は、内部筐体、外部筐体、前記内部筐体の開口を開閉可能な扉体、および、受け部材を有し、
前記内部筐体は、前記外部筐体に覆われた状態で前記受け部材の上に配置され、
前記外部筐体の正面、背面、側面の内の少なくとも一面に開く開口から前記内部筐体の内部を観察することが可能であることを特徴とする温度槽。
【請求項6】
内部に物品を配置可能であり、正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、
前記空間形成部材の開放面の下部側を覆う遮風部材と、を有し、
前記空間形成部材は、温度調節した気体が導入されるものであり、
上部が開放された外側槽を有し、前記外側槽内に前記空間形成部材が載置されることを特徴とする温度槽。
【請求項7】
前記空間形成部材は、当該空間形成部材の上方に空気導入口を有するものであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の温度槽。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の温度槽と、温度調節した気体を供給する気体供給部とを有し、前記気体供給部から前記空間形成部材に前記気体を供給して、前記空間形成部材内の環境を調節することが可能であることを特徴とする環境形成装置。
【請求項9】
空間形成部材の内部に物品を配置し、
遮風部材の姿勢を変更するか装着して前記空間形成部材の開放面の下部側を当該遮風部材で覆い、
前記空間形成部材内に温度調節した気体を導入し、
前記開放面の下側及び/又は横側から対向する側に向かって送風し、
前記空間形成部材の正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放した状態で、前記物品を観察することを特徴とする試験方法。
【請求項10】
空間形成部材の内部に物品を配置し、
引き戸を左右方向に動かして前記空間形成部材の開放面を閉じると共に当該開放面の下部側を遮風部材で覆い、
前記空間形成部材内に温度調節した気体を導入し、
前記開放面の下側及び/又は横側から対向する側に向かって送風し、
前記引き戸を左右方向に動かして、前記開放面の少なくとも一部を開放した状態で、前記物品を観察することを特徴とする試験方法。
【請求項11】
空間形成部材の内部に物品を配置し、
遮風部材の姿勢を変更するか装着して前記空間形成部材の開放面の下部側を当該遮風部材で覆い、
前記空間形成部材内に温度調節した気体を導入し、
前記開放面の上側から対向する側に向かって送風し、前記空間形成部材の正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放した状態で、前記物品を観察することを特徴とする試験方法。
【請求項12】
空間形成部材の内部に物品を配置し、
引き戸を左右方向に動かして前記空間形成部材の開放面を閉じると共に当該開放面の下部側を遮風部材で覆い、
前記空間形成部材内に温度調節した気体を導入し、
前記開放面の上側から対向する側に向かって送風し、
前記引き戸を左右方向に動かして、前記空間形成部材の正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放した状態で、前記物品を観察することを特徴とする試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験物や被処理物等の物品を特定の環境下に置くことができる温度槽に関するものであり、その状態で、物品を外部から観察することが可能な温度槽に係るものである。
また本発明は、物品を特定の環境下に置いて外部から観察することが可能な環境形成装置に関するものである。
また本発明は、物品を特定の環境下に置いて外部から観察する試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品や部品等の性能や耐久性を調べる試験として、環境試験が知られている。環境試験は、例えば環境試験装置(環境形成装置)を使用して行われる。
公知の環境試験装置は、試験対象たる被試験物が載置される試験室を備え、試験室の温度や湿度を所望の試験環境に調整することができるものである。
環境試験装置には、試験室内の様子を外部から覗き見るための窓が設けられたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭62-25844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境試験の最中に、被試験物の撮影が望まれる場合がある。従来技術においては、例えば窓の近傍に撮影機材を配置し、窓越しに内部の物品を撮影する。
しかしながら、窓越しに内部の物品を撮影すると、窓ガラスの反射が映像に映り込むことがある。また、窓ガラスよって光が屈折してしまい物品の伸び縮みを正確に計測できない恐れがある。さらに、物品の色の変化を正確に観察しにくい場合もある。窓越しに内部の物品を赤外線カメラで撮影する際には、誤って窓ガラスの温度を検知してしまうこともある。
そのため、試験中に試験室の扉を開いて試験室の一面を開放し、直接的に物品を観察する場合がある。
しかしながら、従来技術においては、試験の最中に扉を開くと試験室内に外気が侵入し、試験室内の環境を乱す恐れがある。例えば低温試験の最中に扉を開くと、試験室内に外気が侵入し、試験室内等が結露したり、霜が発生したりする場合がある。
【0005】
本発明は、従来技術の上記した課題に注目し、物品を直接的に観察することができ、その際に物品を配置する空間内の環境の乱れが少ない温度槽及び環境形成装置を開発することを課題とする。
また本発明は、物品を直接的に観察することができ、その際に物品を配置する空間内の環境の乱れが少ない試験方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための本発明に関連する態様は、内部に物品を配置可能であり、少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、前記空間形成部材の開放面の下部側を覆う遮風部材と、前記開放面の下側及び/又は横側から対向する側に向かって送風する送風手段と、を有することを特徴とする温度槽である。
【0007】
ここで「少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能」の概念には、「少なくとも一面の少なくとも一部を開閉可能」なもののみならず、「少なくとも一面の少なくとも一部が常に開いた状態にある」ものも含まれる。
また、「下部側を覆う」の概念には、「下部側全体を覆う」もののみならず、「下部側の一部を覆う」もの、例えば温度槽が扉を有するものである場合、扉が開かれて現れた開口部分の下部側のみを覆うものも含まれる。
本態様の温度槽は、遮風部材を有しており、当該遮風部材によって空間形成部材の開放面の下部側が覆われる。そのため、空間形成部材内の空気と外気が置換されにくい。
また本態様の温度槽は、開放面の下側及び/又は横側から対向する側に向かって送風する送風手段を有している。そのため、送風によって空間形成部材の内外が遮蔽され、空間形成部材内の空気と外気が置換されにくい。
【0008】
同様の課題を解決するためのもう一つの本発明に関連する態様は、内部に物品を配置可能であり、少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、前記空間形成部材の開放面の下部側を覆う遮風部材と、前記開放面の上側から対向する側に向かって送風する送風手段と、を有することを特徴とする温度槽である。
【0009】
本態様の温度槽は、遮風部材を有しており、当該遮風部材によって空間形成部材の開放面の下部側が覆われる。そのため、空間形成部材内の空気と外気が置換されにくい。
また本態様の温度槽は、開放面の上側から対向する側に向かって送風する送風手段を有している。そのため、送風によって空間形成部材の内外が遮蔽され、空間形成部材内の空気と外気が置換されにくい。
【0010】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、内部に物品を配置可能であり、少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、前記空間形成部材の開放面の下部側を覆う遮風部材と、を有することを特徴とする温度槽である。
【0011】
本態様の温度槽は、空間形成部材の開放面の下部側を覆う遮風部材を有している。そのため、空間形成部材内の空気と外気が置換されにくい。
上記した課題を解決するための態様は、内部に物品を配置可能であり、正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、前記空間形成部材の開放面の下部側を覆う遮風部材と、を有し、前記空間形成部材は、温度調節した気体が導入されるものであり、前記遮風部材は姿勢変更部材又は脱着部材を有し、前記姿勢変更部材又は前記脱着部材は、前記遮風部材が前記下部側を覆わない状態とすることが可能であることを特徴とする温度槽である。
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、内部に物品を配置可能であり、正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、前記空間形成部材の開放面の下部側を覆う遮風部材と、を有し、前記空間形成部材は、温度調節した気体が導入されるものであり、左右方向に開く引き戸を有し、当該引き戸を開いて前記開放面の少なくとも一部を開放可能であることを特徴とする温度槽である。
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、内部に物品を配置可能であり、正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、前記空間形成部材の開放面の下部側を覆う遮風部材と、を有し、前記空間形成部材は、温度調節した気体が導入されるものであり、前記空間形成部材は、内部筐体、外部筐体、前記内部筐体の開口を開閉可能な扉体、および、受け部材を有し、前記内部筐体は、前記外部筐体に覆われた状態で前記受け部材の上に配置され、前記外部筐体の正面、背面、側面の内の少なくとも一面に開く開口から前記内部筐体の内部を観察することが可能であることを特徴とする温度槽である。
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、内部に物品を配置可能であり、正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、前記空間形成部材の開放面の下部側を覆う遮風部材と、を有し、前記空間形成部材は、温度調節した気体が導入されるものであり、上部が開放された外側槽を有し、前記外側槽内に前記空間形成部材が載置されることを特徴とする温度槽である。
【0012】
上記した各態様において、前記遮風部材は姿勢変更部材又は脱着部材を有し、前記姿勢変更部材又は前記脱着部材は、前記遮風部材が前記下部側を覆わない状態とすることが可能であることが望ましい。
【0013】
本態様によると、空間形成部材内に物品を出し入れする際に遮風部材が邪魔にならない。
【0014】
上記した各態様において、前記空間形成部材は、当該空間形成部材の上方に空気導入口を有するものであることが望ましい。
本態様によると、空間形成部材に流れ込んだ空気が外部に流出しないようにする効果を、遮風部材がより発揮することができる。
【0015】
同様の課題を解決するためのもう一つの本発明に関連する態様は、内部に物品を配置可能であり、少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、前記空間形成部材の外部の空気を前記空間形成部材の開放面の下側及び/又は横から対向する側に向かって送風する送風手段と、を有することを特徴とする温度槽である。
【0016】
本態様の温度槽は、空間形成部材の外部の空気を開放面の下側及び/又は横側から対向する側に向かって送風する送風手段を有している。そのため、送風によって空間形成部材の内外が遮蔽され、空間形成部材内の空気と外気が置換されにくい。
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、内部に物品を配置可能であり、正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、前記空間形成部材の外部の空気を前記空間形成部材の開放面の下側及び/又は横から対向する側に向かって送風する送風手段と、を有し、前記空間形成部材は、温度調節した気体が導入されるものであり、左右方向に開く引き戸を有し、当該引き戸を開いて前記開放面の少なくとも一部を開放可能であることを特徴とする温度槽である。
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、内部に物品を配置可能であり、正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放可能な空間形成部材と、前記空間形成部材の外部の空気を前記空間形成部材の開放面の下側及び/又は横から対向する側に向かって送風する送風手段と、を有し、前記空間形成部材は、温度調節した気体が導入されるものであり、前記空間形成部材は、内部筐体、外部筐体、前記内部筐体の開口を開閉可能な扉体、および、受け部材を有し、前記内部筐体は、前記外部筐体に覆われた状態で前記受け部材の上に配置され、前記外部筐体の正面、背面、側面の内の少なくとも一面に開く開口から前記内部筐体の内部を観察することが可能であることを特徴とする温度槽である。
【0017】
上記した各態様において、前記空間形成部材は引き戸を有し、当該引き戸を開いて前記開放面の少なくとも一部を開放可能であることが望ましい。
【0018】
本態様によると、空間形成部材の内部を観察したり、撮影したりする際に、扉が視界を遮りにくい。
【0019】
環境形成装置に関する態様は、上記したいずれかの温度槽と、温度調節した気体を供給する気体供給部を有し、前記気体供給部から前記空間形成部材に前記気体を供給して、前記空間形成部材内の環境を調節することが可能であることを特徴とする。
【0020】
本態様の環境形成装置は、空間形成部材内に所望の環境を創出することができる。
【0021】
試験方法に関する本発明に関連する態様は、空間形成部材の内部に物品を配置し、前記空間形成部材の開放面の下部側を遮風部材で覆い、前記開放面の下側及び/又は横側から対向する側に向かって送風し、前記空間形成部材の少なくとも一面の少なくとも一部を開放した状態で、前記物品を観察することを特徴とする。
【0022】
本態様の試験方法によると、空間形成部材内の空気と外気が置換されにくい。
試験方法に関する態様は、空間形成部材の内部に物品を配置し、遮風部材の姿勢を変更するか装着して前記空間形成部材の開放面の下部側を当該遮風部材で覆い、前記空間形成部材内に温度調節した気体を導入し、前記開放面の下側及び/又は横側から対向する側に向かって送風し、前記空間形成部材の正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放した状態で、前記物品を観察することを特徴とする。
試験方法に関するもう一つの態様は、空間形成部材の内部に物品を配置し、引き戸を左右方向に動かして前記空間形成部材の開放面を閉じると共に当該開放面の下部側を遮風部材で覆い、前記空間形成部材内に温度調節した気体を導入し、前記開放面の下側及び/又は横側から対向する側に向かって送風し、前記引き戸を左右方向に動かして、前記開放面の少なくとも一部を開放した状態で、前記物品を観察することを特徴とする。
【0023】
試験方法に関するもう一つの本発明に関連する態様は、空間形成部材の内部に物品を配置し、前記空間形成部材の開放面の下部側を遮風部材で覆い、前記開放面の上側から対向する側に向かって送風し、前記空間形成部材の少なくとも一面の少なくとも一部を開放した状態で、前記物品を観察することを特徴とする。
【0024】
本態様の試験方法によると、空間形成部材内の空気と外気が置換されにくい。
試験方法に関するもう一つの態様は、空間形成部材の内部に物品を配置し、遮風部材の姿勢を変更するか装着して前記空間形成部材の開放面の下部側を当該遮風部材で覆い、前記空間形成部材内に温度調節した気体を導入し、前記開放面の上側から対向する側に向かって送風し、前記空間形成部材の正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放した状態で、前記物品を観察することを特徴とする。
試験方法に関するもう一つの態様は、空間形成部材の内部に物品を配置し、引き戸を左右方向に動かして前記空間形成部材の開放面を閉じると共に当該開放面の下部側を当該遮風部材で覆い、前記空間形成部材内に温度調節した気体を導入し、前記開放面の上側から対向する側に向かって送風し、前記引き戸を左右方向に動かして、前記空間形成部材の正面、背面、側面の内の少なくとも一面の少なくとも一部を開放した状態で、前記物品を観察することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の温度槽、環境形成装置及び試験方法は、空間形成部材を開放状態にしても空間形成部材内の空気と外気が置換されにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態の環境形成装置の斜視図であり、温度槽の引き戸を閉じた状態を示す。
図2図1の環境形成装置の斜視図であり、温度槽の引き戸を開いた状態を示す。
図3図1の温度槽の断面図であり、(a)は、引き戸を閉じた際の状態を示し、(b)は、引き戸を開いた際の状態を示す。
図4図1の温度槽の断面図であり、物品を出し入れする際の状態を示す。
図5】本発明の他の実施形態の環境形成装置の斜視図である。
図6図5の温度槽の断面図であり、(a)は、引き戸を閉じた際の状態を示し、(b)は、引き戸を開いた際の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の環境形成装置1は、環境試験装置として使用されるものである。
環境形成装置1は、図1図2の様に、空調部(気体供給装置)2と、温度槽3によって構成されている。
空調部(気体供給装置)2は、内部に図示しない空調機器が内蔵されており、所望の温度に調整された空気を温度槽3に供給するものである。なお、空調部(気体供給装置)2は温度に加えて湿度を調整するものであってもよい。
本実施形態で採用する空調部2は、空調機器として、冷却器と加熱ヒータを備えている。また図示しない送風機を備えている。
空調部2は、任意の温度に調節された空気を排出することができるが、本実施形態では、低温の気体を供給する気体供給装置として活用される。
【0028】
温度槽3は、空間形成部材10と、遮風部材11と、送風手段12を有している。
空間形成部材10は、図3図4の様に、内部筐体20と、外部筐体21と、引き戸23と、受け皿部材25を有している。
内部筐体20は、概ね直方体の筐体であり、正面が開口し、他の5面が壁面で覆われている。
内部筐体20の底部には脚部26が設けられている。外部筐体21は、内部筐体20の天面と、背面と、左右の側面を覆う筐体である。内部筐体20と外部筐体21は、図示しない接続部材で結合されている。
【0029】
空間形成部材10の天面には、接続管28が取り付けられている。接続管28は、内部筐体20の天面に開いており、内部筐体20と外部とを連通するものである。接続管28の開口が、内部筐体20に空気を導入する空気導入口13となっている。本実施形態では、空気導入口13が、空間形成部材10の上方に設けられている。
【0030】
受け皿部材25は、結露を受けるトレイである。内部筐体20と外部筐体21は、一体的に結合されて受け皿部材25に載置されている。
【0031】
引き戸23は、内部筐体20の開口部27を開閉するものである。
引き戸23は、図1図2の様に、上レール30と、下レール31と、扉体33、35を有している。
上レール30は、内部筐体20の開口部27の近傍であって、開口部27の上辺に沿って配置されている。上レール30の全長は、内部筐体20の開口部27の開口幅よりも長く、両端は、内部筐体20の左右に突出している。
下レール31は、内部筐体20の開口部27の近傍であって、開口部27の下辺に沿って配置されている。下レール31は、上レール30に対して平行であり、全長についても上レール30と同じである。
【0032】
扉体33、35は板状であり、それらの板面の合計面積が、内部筐体20の開口部27の面積に匹敵する大きさに構成されている。扉体33、35は、いずれも上下のレール30、31と係合し、レール30、31に沿って直線的に移動する。
図1の様に、扉体33、35がレール30、31の中央にあって、両者の縦辺が突き合わされた状態の際には、扉体33、35によって内部筐体20の開口部27が遮蔽される。
逆に、図2の様に、扉体33、35を左右に開くと、内部筐体20の一面が開放される。本実施形態では、引き戸23は、二枚の扉体33、35を有し、これを左右に開くものであるが、扉体の数は任意であり、1枚であってもよく、3枚以上であってもよい。
【0033】
遮風部材11は、細長い板状の遮蔽板部38を有している。遮蔽板部38は、蝶番40を介して空間形成部材10(内部筐体20)に取り付けられている。そのため、遮風部材11の遮蔽板部38は、蝶番40の軸41を中心として揺動可能である。
遮風部材11は、図3の様な立姿勢と、図4の様な傾斜姿勢をとることができる。
図3の様な立姿勢の際には、内部筐体20の開口部27の下部側に遮蔽板部38が立ち上がる状態となり、開口部27の下部側を覆って開口部27の下部側から漏れ出ようとする気体を遮る。
遮風部材11が傾斜姿勢をとる場合は、遮蔽板部38が内部筐体20の開口部27から離れ、開口部27を覆わない状態となる。
遮風部材11には、図示しない固定手段があり、図3の様な、立姿勢を維持することができる。遮風部材11が立姿勢である際は、図3の様に、遮蔽板部38の少なくとも一部が、内部筐体20において物品100を配置する床面よりも上の位置に突出する。
【0034】
遮風部材11が立姿勢の状態のとき、遮蔽板部38は、開口部27の下部側を覆う。即ち、遮蔽板部38は、幅方向には開口部27の全体を覆い、高さ方向には開口部27の一部だけを覆う。
遮蔽板部38は、内部筐体20の開口部27の近傍の少し離れた位置にあり、開口部27の一部を覆うが開口部27の下部側を密閉してはいない。
【0035】
遮蔽部材11が立姿勢となっているときの遮蔽板部38の最高部の高さは、開口部27の高さの10分の1以上、3分の1以下であることが望ましい。より望ましい遮蔽板部38の最高部の高さは、開口部27の高さの1/8以上、1/4以下である。
【0036】
送風手段12は、公知のクロスフローファンであり、送風口42を有している。送風手段12は、筐体43内に遠心羽根45が内蔵されたものであり、モータ46によって筐体43内で遠心羽根45が回転し、送風口42から風が吹き出されるものである。
【0037】
送風手段12は、空間形成部材10の開口部27の近傍であって、開口部27の下端以下の位置に送風口42が位置するように配置されている。具体的には、送風手段12の送風口42は、開口部27の下辺に沿う位置にあり、開口部27の下辺に沿ってのびている。
【0038】
空間形成部材10の正面には、図1図2の様に、ビデオカメラ60等の撮影機材が設置されている。
【0039】
本実施形態では、空調部2と、温度槽3の接続管28がダクト52によって接続され、空調部2から温度調節された空気が空気導入口13から空間形成部材10の内部筐体20に供給され、余剰の気体は温度槽3から外部に放出される。すなわち、空調部2から内部筐体20に供給された気体は、空調部2に戻されることなく外部に放出される。
本実施形態では、例えば氷点下20度程度の低温の空気が内部筐体20に供給される。
本実施形態の環境形成装置1では、内部筐体20が試験室として機能する。
【0040】
次に、環境形成装置1を用いた試験方法について説明する。
環境試験の準備段階として、図2図4の様に引き戸23が開かれ、試験室たる内部筐体20に物品100が配される。ここで、物品100を入れる際には、図4の様に、遮風部材11が倒されて傾斜姿勢とされる。そのため、物品100を内部筐体20に入れる際に、遮風部材11が邪魔にならない。
【0041】
物品100が内部筐体20に配置されると、図1図3の様に、引き戸23を閉じ、開口部27を遮蔽する。
続いて空調部2を起動し、図3(a)の矢印の様に、低温の気体を空気導入口13から試験室たる内部筐体20に供給する。その結果、内部筐体20内が低温環境となり、物品100が低温環境にさらされる。
物品100の様子を観察する場合や、撮影する場合は、図3(b)の様に、遮風部材11を立姿勢にすると共に、送風手段12を起動する。
そして、図2の様に引き戸23を開いて、内部筐体20の正面側を開放する。
【0042】
遮風部材11を立姿勢とすることによって、開口部27の下部側が覆われる。
低温の空気は比重が大きいので下部側に集まる傾向がある。そのため、開口部27の下部側を遮風部材11で覆うことによって、下部側から低温の空気が漏出することを防ぐことができる。
送風手段12を起動することによって、開口部27の下辺側に位置する送風口42から、対向する上辺側に向かって、槽外の空気が送風される。その結果、下から上に向かうエアカーテンが形成される。
【0043】
本実施形態の環境形成装置1では、遮風部材11による開口部27の下部側の遮蔽と、送風手段12が発生させるエアカーテンとが相まって、内部筐体20内への外気の進入が阻止される。
具体的には、空調部2から供給される冷気は、内部筐体20の天面側から底面側に向かって放出される。供給された空気は、底面に当たり、さらに遮風部材11によって向きを変え、矢印の様に、下から上に向かう気流となる。即ち、遮風部材11が風向板としても機能し、下から上に向かう空気流が発生する。
一方、開口部27の外側には、送風手段12によって生じた、下から上に向かう空気の流れがある。
そのため、内部筐体20の開口近傍における冷気の流れと、外気の流れが平行状態となり、内部筐体20の空気が逃げにくく、外気も進入しにくい状態となる。
この結果、内部筐体20への外気の進入による結露や霜の発生が抑制される。
本実施形態の環境形成装置1によると、物品100に結露や霜が付きにくく、物品100の状態を正確に観察したり、撮影したりすることができる。
【0044】
次に、本発明の効果を確認するために行った実験について説明する。
本発明の実施例1として図1に示す環境形成装置1を使用した。比較例として、図1に示す環境形成装置1から送風手段12及び遮風部材11を外した。
比較例の温度槽では、引き戸23を開くと内部筐体20内があたかも積雪状態となり、撮影に支障をきたした。
これに対して、実施形態の環境形成装置1は、引き戸23を開いても霜の発生は少なく、支障なく物品100を撮影することができた。
【0045】
本発明の実施例2として、図1に示す環境形成装置1から送風手段12を外した。
実施例2でも、実質的に支障なく物品100を撮影することができた。
【0046】
本発明の実施例3として、図1に示す環境形成装置1から遮風部材11を外した。
実施例3でも、実質的に支障なく、物品100を撮影することができた。
【0047】
送風手段12の送風方向は、下から上に向かう方向が望ましいが、送風方向は横方向でもよいし上から下に向かう方向であってもよい。
開口部の一方の側方から他方の側方に風を流したり、上方から下方に流したりしたところ、遮蔽効果が認められ、霜の発生が抑制された。
【0048】
次に本発明のさらに他の実施形態について、図5図6を参照しつつ説明する。
本実施形態の環境形成装置50は、前記した空間形成部材10と、遮風部材11を有している。さらに環境形成装置50は、外側槽51を有している。
外側槽51は、空間形成部材10よりも容積が大きく、上部が開放された筐体である。環境形成装置50では、外側槽51の中に、空間形成部材10の全体が収容されている。環境形成装置50は、送風手段12を持たない。
【0049】
本実施形態の環境形成装置50においても先の実施形態と同様、引き戸23を開いても霜の発生は少なく、支障なく物品100を撮影することができた。
即ち、本実施形態の環境形成装置50では、図6(b)の波線で示す様に、外側槽51内に冷気が滞留し、空間形成部材10の周囲が冷気雰囲気となる。そのため引き戸23を開いても、霜の発生は少なく、支障なく物品100を撮影することができる。
なお環境形成装置50を使用して空間形成部材10の内部を撮影する場合には、図6の様に、外側槽51よりも上にビデオカメラ60等の撮影機材を設置し、斜め上方から物品100を直接的に撮影することが望ましい。
【0050】
第1実施形態の環境形成装置1及び第2実施形態の環境形成装置50によると、物品100を直接的に観察したり撮影したりすることができる。そのため、例えば赤外線カメラで撮影する際に、誤って窓ガラスの温度を検知してしまうというような事態が生じない。
また物品100に直接触れることもできるので、物品100の変化を視覚以外で検知することもできる。
【0051】
以上説明した実施形態では、空間形成部材10は、内部筐体20と外部筐体21からなる二重構造であるが、本発明はこの構成に限定されるものでなく、単層構造であってもよい。
【0052】
本実施形態の温度槽3は、引き戸23によって、空間形成部材10の一面を開閉する。引き戸23を採用することにより、空間形成部材10を半開き状態とすることもできる。引き戸23を半開き状態としても、扉体33、35が観察の邪魔になりにくい。
引き戸23を採用する場合は、試験室となる空間の容積が、一辺35センチメートル相当以下の小型のものであることが推奨される。
本発明は、開口部27を遮蔽する構造として引き戸構造に限定するものではなく、ウイング状の扉であってもよい。ただしウイング状の扉は、全開にしなければ扉が視界を遮ることとなる。またウイング状の開き戸は、扉がヒンジを中心として外側に扇形軌跡を描いて揺動する。そのため揺動軌跡内に撮影機材を置くことができず、扉を開いて内部を撮影するのには適さない。
【0053】
以上説明した実施形態では、遮風部材11の姿勢を立姿勢と傾斜姿勢に変更して、開口部の下部側を遮る状態と遮らない状態を切り替えた。
例えば、遮蔽部材を衝立の様に一時的に置くことができるものとし、必要に応じて付け外しする構成としてもよい。即ち遮蔽部材は、脱着可能な脱着部材であってもよい。
また、遮蔽部材を動くことのない固定構造とし、常に開口部27の下部側を覆っている構成としてもよい。
【0054】
上記した実施形態の遮風部材11は、内部筐体20の外側にあって、内部筐体20の開放面たる開口部27の下部側を覆うものであるが、開放面と遮風部材11との間には下レール31があり、開放面と遮風部材11の間には各図で示されるように隙間がある。この隙間はわずかである。
遮風部材11は、内部筐体20内であって開口部27の近傍に設置されるものであってもよい。
遮風部材11は、開放面の下部側から外部に流れる気流を邪魔する邪魔板の機能を有していれば足り、開口部27の下部側を密閉しなくてもよい。
【0055】
以上説明した実施形態では、空間形成部材10の上部に設けられた空気導入口13から温度調節した気体を導入した。しかしながら、空間形成部材10に対する気体の導入方向は任意であり、空間形成部材10の側面側から気体を導入してもよい。この場合、送風手段を空間形成部材10の側方に位置させて、開口部27の一方の側方から他方の側方に向かうエアカーテンを形成する様に構成することが望ましい。
【0056】
以上説明した実施形態では、空調部(気体供給装置)2から温度槽3に対して一方的に温度調節した気体が供給され、余剰の気体は温度槽3から外部に放出される。
これに対して、空調部2と温度槽3との間で気体を循環させてもよい。
また空調部2と温度槽3とを一体化させ、例えば内部筐体内を仕切り、一方の部屋を空調部2として機能させ、他方の部屋を観察対象の物品を配置する空間として機能させる構成としてもよい。
これらの構成を採用する場合であっても、空調部2から温度槽3に気体を導入する吹出口(空気導入口13)は、温度槽3の上方に設けることが望ましい。より望ましくは、空調部2から温度槽3に気体を導入する吹出口(空気導入口13)は、温度槽3の天面に設けることが推奨される。この場合、以上説明した実施形態と同様に、温度槽3の上面の吹出口から送風された空気の一部が底面に当たり、さらに遮風部材11によって向きを変え、図3(b)の矢印と同様に、下から上に向かう気流が生じる。
【0057】
以上説明した実施形態では、開口部27は、空間形成部材10の一面が全面的に開放されたものであるが、一面の一部が開放されるものであってもよい。また複数の面に開口部27があってもよい。
また、以上説明した実施形態では、引き戸23などの扉を有していたが、扉を有せず常に開口部27が開口する構成のものであってもよい。
【0058】
以上説明した実施形態では、引き戸23を閉じた状態で、内部筐体20の内部に低温の気体を導入し、当該気体の導入を維持した状態で引き戸23を開いて物品100を観察する。本発明は、この手順にこだわるものではなく、気体の導入を停止して引き戸23を開き、物品100を観察してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1、50 環境形成装置
2 空調部(気体供給装置)
3 温度槽
10 空間形成部材
11 遮風部材
12 送風手段
23 引き戸
25 受け皿部材
27 開口部
28 接続管
30 上レール
31 下レール
38 遮蔽板部
40 蝶番
42 送風口
51 外側槽
100 物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6