(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】スクリューロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
F04C 18/16 20060101AFI20240620BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
F04C18/16 B
F04C29/00 B
(21)【出願番号】P 2021052248
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】森田 謙次
(72)【発明者】
【氏名】頼金 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】梶江 雄太
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-037194(JP,A)
【文献】特開平04-228220(JP,A)
【文献】実開昭57-105418(JP,U)
【文献】特開平10-089270(JP,A)
【文献】実開昭63-010274(JP,U)
【文献】特開昭50-156013(JP,A)
【文献】特開平08-284856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯部材及びその両側端部に接続された軸部材からなるスクリューロータの製造方法において、
鋳造により、複数の螺旋状の歯を有する素材
を作成し、
前記素材を回転すると共に軸方向に移動することにより、前記素材における砥石工具の加工位置を移動させて、前記砥石工具による前記歯の表面加工を行い、
前記歯の表面加工が行われた前記素材の両側端部
であってリード誤差が大きい部分を切断し削除して1つの前記歯部材を作成するか、若しくは、更に分割して複数の前記歯部材を作成し、
前記歯部材の両側端部に前記軸部材を接続することを特徴とするスクリューロータの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリューロータの製造方法において、
前記歯部材の少なくとも一方側の端部に、摩擦圧接によって前記軸部材を接続することを特徴とするスクリューロータの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のスクリューロータの製造方法において、
前記歯部材の少なくとも一方側の端部に溝部を形成し、前記軸部材を前記溝部に圧入することを特徴とするスクリューロータの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のスクリューロータの製造方法において、
前記歯部材の少なくとも一方側の端部にネジ穴を形成し、前記軸部材のネジ部を前記ネジ穴に螺合することを特徴とするスクリューロータの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のスクリューロータの製造方法において、
前記歯部材の少なくとも一方側の端部にネジ穴を形成し、前記軸部材の貫通穴に挿通して前記ネジ穴に螺合するネジ部材を用いて、前記歯部材の少なくとも一方側の端部に前記軸部材を接続することを特徴とするスクリューロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯部材及びその両側端部に接続された軸部材からなるスクリューロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュー圧縮機は、例えば、互いに噛み合う螺旋状の歯を有する雄ロータ及び雌ロータと、雄ロータ及び雌ロータを収納するケーシングとを備えており、雄ロータ及び雌ロータの歯溝とケーシングの内壁により、気体を圧縮する作動室が形成されている。雄ロータ及び雌ロータ(以降、これらを総称してスクリューロータという)は、気体の断熱圧縮によって温度上昇して熱膨張する。スクリューロータ同士の隙間やスクリューロータとケーシングの隙間は、スクリューロータの熱膨張のぶんだけ余裕をみる必要があるものの、気体の漏れが少なくなるように(言い換えれば、圧縮効率が高くなるように)小さくすることが好ましい。
【0003】
特許文献1は、スクリューロータの製造方法を開示する。この製造方法では、螺旋状の歯を有する歯部材と軸部材を作成し、歯部材の歯面加工(詳細には、砥石等の工具による歯の表面加工)を行い、歯部材の両側端部に軸部材を接続する。歯部材の歯面加工は、上述したスクリューロータ同士の隙間やスクリューロータとケーシングの隙間に影響を及ぼす重要な工程である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歯部材の歯面加工では、例えば、歯部材を回転すると共に、歯部材若しくは工具を軸方向に移動することにより、歯部材における工具の加工位置を移動させる。そのため、歯部材の両側端部では、他の部分と比べて工具との接触面積が小さくなり、加工力のバランスが崩れて、リード誤差が大きくなりやすい(
図11参照)。このリード誤差は、歯の前進面及び後進面の同時接触を招く。この同時接触を回避するために、スクリューロータ同士の隙間を大きくすることが考えられるものの、圧縮効率の低下を招く。
【0006】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、スクリューロータのリード誤差を低減することを課題の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、特許請求の範囲に記載の構成を適用する。本発明は、上記課題を解決するための手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、歯部材及びその両側端部に接続された軸部材からなるスクリューロータの製造方法において、鋳造により、複数の螺旋状の歯を有する素材を作成し、前記素材を回転すると共に軸方向に移動することにより、前記素材における砥石工具の加工位置を移動させて、前記砥石工具による前記歯の表面加工を行い、前記歯の表面加工が行われた前記素材の両側端部であってリード誤差が大きい部分を切断し削除して1つの前記歯部材を作成するか、若しくは、更に分割して複数の前記歯部材を作成し、前記歯部材の両側端部に前記軸部材を接続する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スクリューロータのリード誤差を低減することができる。
【0009】
なお、上記以外の課題、構成及び効果は、以下の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態におけるスクリューロータの製造方法の手順を表すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態における素材の歯面加工を表す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態における素材の切断を表す側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態における歯部材と軸部材の接続を表す側面図である。
【
図5】本発明の第1の変形例における歯部材と軸部材の接続を表す断面図である。
【
図6】本発明の第2の変形例における歯部材と軸部材の接続を表す断面図である。
【
図7】本発明の第3の変形例における歯部材と軸部材の接続を表す側面図である。
【
図8】本発明の第4の変形例における歯部材と軸部材の接続を表す側面図である。
【
図9】本発明の第5の変形例における素材の切断を表す側面図である。
【
図10】本発明の第6の変形例における素材の切断を表す側面図である。
【
図11】従来技術における歯部材のリード誤差の分布を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の適用対象のスクリューロータとして、スクリュー圧縮機に用いられる雄ロータを例にとり、本発明の一実施形態を、
図1~
図4を用いて説明する。
【0012】
図1は、本実施形態におけるスクリューロータの製造方法の手順を表すフローチャートである。
図2は、本実施形態における素材の歯面加工を表す側面図である(但し、便宜上、工具が素材に接触していない状態を示すものの、加工中、工具が素材に接触している状態である)。
図3は、本実施形態における素材の切断を表す側面図である。
図4は、本実施形態における歯部材と軸部材の接続を表す側面図である。
【0013】
本実施形態のスクリューロータの製造方法では、まず、例えば鋳造により、複数の螺旋状の歯を有する素材1と軸部材2A,2Bを作成する(ステップS1)。
【0014】
次に、素材1の歯面加工を行う(ステップS2)。詳細には、
図2で示すように、砥石等の工具3による歯の表面加工を行う。このとき、例えば、素材1を回転すると共に、素材1を軸方向(
図2の左右方向)に移動することにより、素材1における工具3の加工位置を移動させる。そのため、素材1の両側端部では、他の部分と比べて工具3との接触面積が小さくなり、加工力のバランスが崩れて、リード誤差が大きくなりやすい。
【0015】
そこで、本実施形態の最も大きな特徴として、
図3で示すように、歯面加工が行われた素材1の両側端部(図示の一点鎖線で囲まれた部分)を切断し削除して、1つの歯部材4を作成する(ステップS3)。その後、
図4で示すように、歯部材4の両側端部に、例えば摩擦圧接によって軸部材2A,2Bを接続する(ステップS4)。これにより、歯部材4及びその両側端部に接続された軸部材2A,2Bからなるスクリューロータ5を製造する。
【0016】
以上のように本実施形態においては、歯面加工が行われた素材1の両側端部、すなわち、リード誤差が大きい部分を切断し削除して、歯部材4を作成する。これにより、スクリューロータ5のリード誤差を低減することができる。
【0017】
なお、上記一実施形態においては、歯部材4の両側端部に、摩擦圧接によって軸部材2A,2Bを接続する場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば
図5で示す変形例のように、歯部材4の一方側端部に溝部6Aを形成し、軸部材2Aを溝部6Aに圧入し、歯部材4の他方側端部に溝部6Bを形成し、軸部材2Bを溝部6Bに圧入してもよい。
【0018】
また、例えば
図6で示す変形例のように、歯部材4の一方側端部にネジ穴7Aを形成し、軸部材2Aのネジ部8Aをネジ穴7Aに螺合し、歯部材4の他方側端部にネジ穴7Bを形成し、軸部材2Bのネジ部8Bをネジ穴7Bに螺合してもよい。
【0019】
また、例えば
図7で示す変形例のように、歯部材4の一方側端部にネジ穴7Aを形成し、軸部材2Aの貫通穴9Aに挿通してネジ穴7Aに螺合するネジ部材10Aを用いて、歯部材4の一方側端部に軸部材2Aを接続し、歯部材4の他方側端部にネジ穴7Bを形成し、軸部材2Bの貫通穴9Bに挿通してネジ穴7Bに螺合するネジ部材10Bを用いて、歯部材4の他方側端部に軸部材2Bを接続してもよい。
【0020】
また、例えば
図8で示す変形例のように、歯部材4の一方側端部に複数のネジ穴11Aを形成し、軸部材2Aのフランジの複数の貫通穴12Aにそれぞれ挿通して複数のネジ穴11Aにそれぞれ螺合する複数のネジ部材13Aを用いて、歯部材4の一方側端部に軸部材2Aを接続し、歯部材4の他方側端部に複数のネジ穴11Bを形成し、軸部材2Bのフランジの複数の貫通穴12Bにそれぞれ挿通して複数のネジ穴11Bにそれぞれ螺合する複数のネジ部材13Bを用いて、歯部材4の他方側端部に軸部材2Bを接続してもよい。
【0021】
上述した変形例においても、上記一実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、上記一実施形態及び変形例では、歯部材4の一方側端部と軸部材2Aを接続する方法と、歯部材4の他方側端部と軸部材2Bを接続する方法が同じである場合を例にとって説明したが、これに限られず、異ならせてもよい。また、歯部材4の一方側端部又は他方側端部にて軸部材を接続する複数の方法が混在していてもよい。
【0022】
また、上記一実施形態においては、1つの素材1から1つの歯部材4を作成する場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば
図9で示すように、歯面加工が行われた素材1の両側端部を削除し、更に分割して、長さが同じである複数の歯部材4を作成してもよい。あるいは、例えば
図10で示すように、長さが異なる複数の歯部材4を作成してもよい。これらの変形例では、上記一実施形態と比べ、製造時間の短縮を図ることができる。
【0023】
なお、以上においては、本発明の適用対象のスクリューロータとして、スクリュー圧縮機に用いられる雄ロータを例にとって説明したが、これに限られない。例えば、スクリュー圧縮機に用いられる雌ロータであってもよい。
【符号の説明】
【0024】
1…素材、2A,2B…軸部材、3…工具、4…歯部材、5…スクリューロータ、6A,6B…溝部、7A,7B…ネジ穴、8A,8B…ネジ部、9A,9B…貫通穴、10A,10B…ネジ部材、11A,11B…ネジ穴、12A,12B…貫通穴、13A,13B…ネジ部材