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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ユニット式建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20240620BHJP
   E04H 1/02 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
E04B1/348 E
E04H1/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021064427
(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公開番号】P2022159938
(43)【公開日】2022-10-18
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】田沼 舞
(72)【発明者】
【氏名】向山 孝美
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-315167(JP,A)
【文献】特開2010-133118(JP,A)
【文献】特開2021-046725(JP,A)
【文献】特開2010-090593(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0009422(KR,A)
【文献】米国特許第05934026(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
E04H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物本体と、前記建物本体の上方に設けられた屋根部とを備え、
前記建物本体は、柱、天井大梁及び床大梁を有する複数の建物ユニットを有して構成されているユニット式建物であって、
前記複数の建物ユニットには、所定の階部を構成するとともに、互いに離し置きされた一対の建物ユニットが含まれており、
前記離し置きされた一対の建物ユニットの間には、前記建物ユニットとは異なる構成からなる床構成体が設けられており、
前記床構成体は、前記所定の階部の床面よりも高い位置に設けられる高床部を構成する床枠部と、前記床枠部から下方に延び前記床枠部を下方から支持する耐力壁とを有しており、
前記耐力壁は、その下端部が前記離し置きされた建物ユニットの前記床大梁に連結された支持梁又は基礎の上に載置されており、その載置状態で前記床構成体が設置されており、
前記床構成体は、前記耐力壁として、前記離し置きされた一対の建物ユニットが並ぶ第1方向を幅方向とする第1耐力壁と、前記第1方向と直交する第2方向を幅方向とする第2耐力壁とを有しており、
前記一対の建物ユニットの前記床大梁に架け渡され、前記所定の階部の床面を形成する床面材を下方から支持する複数の床小梁を備え、
前記支持梁として、前記複数の床小梁のうちのいずれかであって上方に前記第1耐力壁が前記床面材を介して載置される第1支持梁と、隣り合う前記床小梁の間に架け渡され上方に前記第2耐力壁が前記床面材を介して載置される第2支持梁とを有する、ユニット式建物。
【請求項2】
前記床構成体は、前記高床部としてのスキップ床部を構成するスキップ床構成体である、請求項1に記載のユニット式建物。
【請求項3】
前記床構成体は、木造軸組構造からなる、請求項1又は2に記載のユニット式建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット式建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、離し置きされた複数の建物ユニットの間にスキップ床が設けられたユニット式住宅が開示されている。この特許文献1の住宅では、離し置きされた各建物ユニットの間に床パネルが架け渡され、その床パネルによりスキップ床が構成されている。この場合、床パネルは、各建物ユニットの中間高さにおいて架け渡される。したがって、床パネルは、各建物ユニットの柱の中間部に架け渡され、それら各柱に固定されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-207047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の住宅では、離し置きされた各建物ユニットが床パネルを介して水平方向に連結される。そのため、住宅の強度計算を行うにあたっては建物ユニットに加え床パネルを加味して強度計算を行う必要がある。
【0005】
ここで、床パネルの高さ位置、すなわちスキップ床の高さ位置は、住宅によって異なることが考えられる。床パネルが建物ユニットの柱に連結される上記特許文献1の構成では、床パネルの高さ位置が変わると、地震等により住宅に水平力が作用した場合に柱のたわみ量等が変わることになる。そのため、上記特許文献1の住宅では、床パネルの高さ位置ごとに住宅の強度計算を行う必要があり、住宅の構造設計が大変になると考えられる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、スキップ床部等の高床部が設けられる構成において、構造設計の容易化を図ることができるユニット式建物を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明では、建物本体と、前記建物本体の上方に設けられた屋根部とを備え、前記建物本体は、柱、天井大梁及び床大梁を有する複数の建物ユニットを有して構成されているユニット式建物であって、前記複数の建物ユニットには、所定の階部を構成するとともに、互いに離し置きされた一対の建物ユニットが含まれており、前記離し置きされた一対の建物ユニットの間には、前記建物ユニットとは異なる構成からなる床構成体が設けられており、前記床構成体は、前記所定の階部の床面よりも高い位置に設けられる高床部を構成する床枠部と、前記床枠部から下方に延び前記床枠部を下方から支持する床支持部とを有しており、前記床支持部は、その下端部が前記離し置きされた建物ユニットの前記床大梁に連結された支持梁又は基礎の上に載置されており、その載置状態で前記床構成体が設置されている、ことを特徴とする。
【0008】
第1の発明によれば、離し置きされた一対の建物ユニットの間に床構成体が設けられ、その床構成体が、高床部を構成する床枠部と、床枠部から下方に延びる床支持部とを有している。床支持部の下端部は、離し置きされた建物ユニットの床大梁に連結された支持梁又は基礎の上に載置され、その載置状態で床構成体が設置されている。かかる構成では、高床部を離し置きされた建物ユニットの柱に連結する必要がないため、高床部の高さ位置が変わっても、建物に作用する水平力に対する当該建物の構造強度がそれほど変わることがない。そのため、高床部の高さ位置ごとに、ひいては建物ごとに構造計算を行う手間を減らすことができ、その結果、構造設計の容易化を図ることができる。
【0009】
なお、床支持部の下端部は、支持梁又は基礎の上に直接載置されていてもよいし、支持梁又は基礎の上に根太等の部材を介して載置されていてもよい。また、支持梁は、床大梁に直接連結されていてもよいし、梁材等の部材を介して連結されていてもよい。
【0010】
第2の発明では、前記床支持部は、耐力壁からなる。
【0011】
第2の発明によれば、高床部を支持する床支持部が耐力壁からなるため、建物ユニットに対して概ね独立して設けられる床構成体の構造強度を好適に高めることができる。
【0012】
第3の発明では、前記床構成体は、前記耐力壁として、前記離し置きされた一対の建物ユニットが並ぶ第1方向を幅方向とする第1耐力壁と、前記第1方向と直交する第2方向を幅方向とする第2耐力壁とを有しており、前記一対の建物ユニットの前記床大梁に架け渡され、前記所定の階部の床面を形成する床面材を下方から支持する複数の床小梁を備え、前記支持梁として、前記複数の床小梁のうちのいずれかであって上方に前記第1耐力壁が前記床面材を介して載置される第1支持梁と、隣り合う前記床小梁の間に架け渡され上方に前記第2耐力壁が前記床面材を介して載置される第2支持梁とを有する。
【0013】
第3の発明によれば、床構成体が、幅方向が互いに直交する第1耐力壁及び第2耐力壁を有しているため、床構成体の強度をより好適に高めることができる。また、第1耐力壁はその幅方向に延びる第1支持梁上に載置され、第2耐力壁はその幅方向に延びる第2支持梁上に載置されているため、床構成体を安定した状態で設置することができる。
【0014】
第4の発明では、建物本体と、前記建物本体の上方に設けられた屋根部とを備え、前記建物本体は、柱、天井大梁及び床大梁を有する複数の建物ユニットを有して構成されているユニット式建物であって、前記複数の建物ユニットのうち所定の階部を構成する建物ユニットの内部には、前記建物ユニットとは異なる構成からなる床構成体が設けられており、前記床構成体は、前記所定の階部の床面よりも高い位置に設けられる高床部を構成する床枠部と、前記床枠部から下方に延び前記床枠部を下方から支持する床支持部とを有しており、前記床支持部の下端部は前記床構成体が内部に設けられる前記建物ユニットの床梁又は基礎の上に載置されており、その載置状態で前記床構成体が設置されている。
【0015】
第4の発明によれば、建物ユニットの内部に床構成体が設けられている。また、床構成体において床支持部の下端部は、建物ユニットの床梁又は基礎の上に載置され、その載置状態で床構成体が設置されている。かかる構成においても、高床部を建物ユニットの柱に連結する必要がないため、高床部の高さ位置が変わっても、建物に作用する水平力に対する当該建物の構造強度がそれほど変わることがない。そのため、高床部の高さ位置ごとに、ひいては建物ごとに構造計算を行う手間を減らすことができ、その結果、構造設計の容易化を図ることができる。
【0016】
第5の発明では、前記床構成体は、前記高床部としてのスキップ床部を構成するスキップ床構成体である。
【0017】
第5の発明によれば、離し置きされた建物ユニットの間又は建物ユニットの内部にスキップ床部を設けるにあたり、構造設計の容易化を図ることができる。
【0018】
第6の発明では、前記床構成体は、木造軸組構造からなる。
【0019】
第6の発明によれば、床構成体を比較的低コストで構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態における建物の概略を示す概略図。
図2】建物ユニットの斜視図。
図3】スキップ床構成体が一階床部上に設置された状態を示す斜視図。
図4】(a)は耐力壁を示す平面図であり、(b)は耐力壁が一階床部上に設置された構成を示す縦断面図である。
図5】(a)は一階床部を構成する小梁を示す平面図であり、(b)は各耐力壁の配置状態を示す平面図である。
図6】第2の実施形態における建物の概略を示す概略図。
図7】スキップ床構成体が一階床部上に設置された状態を示す斜視図。
図8】(a)は一階床部を構成する小梁を示す平面図であり、(b)は各耐力壁の配置状態を示す平面図である。
図9】耐力壁が一階床部上に設置された構成を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は、建物の概略を示す概略図である。
【0022】
図1に示すように、建物10は、平屋建て(一階建て)のユニット式住宅となっている。建物10は、基礎11上に設けられた建物本体12と、建物本体12の上方に配設された屋根部13とを備える。建物本体12は、直方体状をなす複数の建物ユニット20を備え、それら各建物ユニット20が互いに組み合わされることにより構成されている。これらの建物ユニット20はいずれも、建物10の一階部分(所定の階部に相当)を構成している。また、屋根部13は切り妻式となっており、屋根部13と建物本体12との間は屋根裏部分18となっている。
【0023】
図2には、建物ユニット20の斜視図を示す。同図に示すように、建物ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備えている。それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の枠体24(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部を水平方向の内側に向けて配置されている。
【0024】
建物ユニット20の長辺部の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。また、建物ユニット20の長辺部の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。例えば、天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材27が支持され、床小梁26によって床面材28が支持されている。
【0025】
図1の説明に戻って、建物本体12(換言すると一階部分)を構成する複数の建物ユニット20には、互いに離し置きされた一対の建物ユニット20(以下、建物ユニット20A,20Bという)が含まれている。これら一対の建物ユニット20A,20Bは、互いの桁面(長辺側の側面)を向き合わせた状態で配置されている(図3も参照)。これにより、各建物ユニット20A,20Bの間には建物ユニット20が設置されていない非ユニット空間が形成されている。また、各建物ユニット20A,20Bの間の間隔は、建物ユニット20A,20Bの(平面視)短手方向の長さと略同じとされている。また、建物ユニット20A内には玄関ホール14が設けられ、建物ユニット20B内には洋室15が設けられている。
【0026】
なお、以下の説明では、各建物ユニット20A,20Bの(平面視)長手方向を建物ユニット20A,20Bの桁方向ともいい、各建物ユニット20A,20Bの(平面視)短手方向を建物ユニット20A,20Bの妻方向ともいう。建物ユニット20A,20Bの妻方向は各建物ユニット20A,20Bが並ぶ並び方向である第1方向に相当する。また、建物ユニット20A,20Bの桁方向は第1方向と直交する第2方向に相当する。
【0027】
各建物ユニット20A,20Bの間には、一階床面19aを形成する一階床部19が設けられている。一階床部19は、各建物ユニット20A,20Bに跨って設けられている。一階床面19aは、玄関ホール14及び洋室15の床面(一階床面)と同じ高さに位置しており、これら一階床面が所定の階部の床面に相当する。
【0028】
各建物ユニット20A,20Bの間には、一階床部19の上方にスキップ床構成体30が設けられている。スキップ床構成体30は、一階床部19よりも高い位置にスキップ床部31を構成するものであり、一階床部19の上に設置されている。なお、スキップ床構成体30が床構成体に相当し、スキップ床部31が高床部に相当する。
【0029】
スキップ床部31は、一階部分における一階床面と一階天井面との間の高さ位置に配置されている。スキップ床部31の下方には収納室16が設けられ、スキップ床部31の上方には居室17が設けられている。スキップ床部31により収納室16の天井面が形成されかつ居室17の床面が形成されている。収納室16の天井高さは、例えば1.4m以下となっている。収納室16の床面は一階床部19により形成されている。また、居室17の天井高さは、例えば1.4mを超えた高さ寸法になっている。居室17は、建物本体12よりも上方に延びており、建物本体12と屋根裏部分18とに跨って形成されている。
【0030】
続いて、スキップ床構成体30について図3に基づき説明する。図3は、スキップ床構成体30が一階床部19上に設置された状態を示す斜視図である。なお、図3では便宜上、各建物ユニット20A,20Bを二点鎖線で示している。
【0031】
図3に示すように、スキップ床構成体30は、木造軸組工法(木造軸組構造)により構築されている。そのため、本建物10では、建物本体12が、建物ユニット20からなる鉄骨ラーメン構造部に加え、スキップ床構成体30からなる木造軸組構造部を含んで構成されている。スキップ床構成体30は、スキップ床部31を構成する床枠部32と、床枠部32から下方に延びる複数の耐力壁33とを有する。なお、耐力壁33が床支持部に相当する。
【0032】
床枠部32は、矩形枠状に形成され、木製の角材が組まれることにより構成されている。床枠部32は、建物ユニット20A,20Bの桁方向に長い長方形状とされ、その桁方向の長さが建物ユニット20A,20Bの同方向の長さよりも短くなっている。床枠部32は、その外周枠34を構成する一対の桁梁35及び一対の妻梁36を有している。一対の桁梁35は建物ユニット20A,20Bの桁方向に延びており、一対の妻梁36は建物ユニット20A,20Bの妻方向に延びている。一対の妻梁36は一対の桁梁35の両端部にそれぞれ架け渡されている。また、一対の桁梁35には、一対の妻梁36の他に、複数の根太37が架け渡されている。これらの根太37は、一対の妻梁36の間に配置され、一対の妻梁36と同じ方向に延びている。また、床枠部32の上には、床面材38が設けられている。床面材38は、合板を含んで構成され、床枠部32にビス等で固定されている。この床面材38により居室17の床面が形成されている。
【0033】
続いて、耐力壁33について図3に加え、図4を用いながら説明する。図4(a)は耐力壁33を示す平面図であり、(b)は耐力壁33が一階床部19上に設置された構成を示す縦断面図である。なお、図4(b)では、耐力壁33Bが一階床部19上に設置された構成を示している。
【0034】
図3に示すように、耐力壁33は、床枠部32の外周枠34から下方に延びており、本実施形態では4つの耐力壁33が設けられている。各耐力壁33のうち2つの耐力壁33Aは各桁梁35からそれぞれ下方に延びており、残りの2つの耐力壁33Bは各妻梁36からそれぞれ下方に延びている。各耐力壁33Aは、その幅方向(壁幅方向)を桁梁35の長手方向、すなわち建物ユニット20A,20Bの桁方向に向けて配置されている。また、各耐力壁33Bは、その幅方向(壁幅方向)を妻梁36の長手方向、すなわち建物ユニット20A,20Bの妻方向に向けて配置されている。なお、各耐力壁33Aが第2耐力壁に相当し、各耐力壁33Bが第1耐力壁に相当する。
【0035】
図3に加え図4(a)及び(b)に示すように、耐力壁33は、床枠部32の外周枠34から下方に延びる一対の柱部41と、各柱部41の下端部を連結する土台42と、各柱部41にそれぞれ連結して設けられる構造用合板43とを有する。各柱部41と土台42とはいずれも木製の角材からなる。各柱部41は、その上端部が外周枠34に固定され、その下端部が土台42の両端部にそれぞれ固定されている。また、各耐力壁33ではいずれも一方の柱部41が外周枠34の隅部から下方に延びている。したがって、スキップ床構成体30では、外周枠34の四隅からそれぞれ柱部41が延びている。
【0036】
構造用合板43は、耐力壁33の厚み方向における各柱部41及び土台42の内側(換言すると収納室16側)に配置され、それら各柱部41及び土台42にそれぞれ固定されている。また、構造用合板43において各柱部41とは反対側には石膏ボード45が設けられ、各柱部41を挟んで構造用合板43とは反対側には石膏ボード46が設けられている。これらの石膏ボード45,46は各柱部41及び土台42にそれぞれ固定されている。なお、図3では便宜上、構造用合板43及び石膏ボード45,46の図示を省略している。
【0037】
図3及び図4(b)に示すように、各耐力壁33(33A,33B)は、その下端部が一階床部19の上にそれぞれ載置されている。そして、その載置状態でスキップ床構成体30が一階床部19上に設置されている。以下においては、スキップ床構成体30が設置される一階床部19の構成について図4に加え図5を用いながら説明する。なお、図5(a)は一階床部19を構成する小梁を示す平面図であり、(b)は各耐力壁33の配置状態を示す平面図である。
【0038】
図5(a)に示すように、一階床部19は、各建物ユニット20A,20Bにおいて互いに対向する一対の床大梁23(以下、床大梁23A,23Bという)に架け渡された複数の妻小梁51と、隣り合う妻小梁51に架け渡された複数の桁小梁52とを有する。各妻小梁51は、建物ユニット20A,20Bの妻方向に延びる長尺状の鋼材により形成され、建物ユニット20A,20Bの桁方向に所定の間隔(詳しくは等間隔)で並べられている。また、各桁小梁52は、建物ユニット20A,20Bの桁方向に延びる長尺状の鋼材により形成されている。この場合、桁小梁52は、妻小梁51を介して床大梁23A,23Bに連結されている。なお、各妻小梁51が床小梁に相当する。
【0039】
図4(b)に示すように、各妻小梁51の上及び各桁小梁52の上にはそれぞれ根太55が設けられている。それら根太55の上には床面材56が設けられている。床面材56は、パーティクルボードを含んで構成されている。この床面材56により一階床面19aが形成されている。そして、この床面材56の上にスキップ床構成体30の耐力壁33が設置されている。なお、図4(b)では、耐力壁33Bが設置された状態を示している。
【0040】
図5(a)及び(b)に示すように、各妻小梁51のうち一部の妻小梁51(以下、妻小梁51Aという)は、耐力壁33Bの下方に配置されている。妻小梁51Aは、他の妻小梁51Bよりも高い強度を有する鋼材により形成され、例えば床大梁23と同じ溝形鋼により形成されている。なお、図5(b)では説明の便宜上、各妻小梁51の中心線のみ実線にて示している。また、各妻小梁51Aが第1支持梁に相当する。
【0041】
図4(b)に示すように、耐力壁33Bは、妻小梁51Aの上に床面材56を介して載置されている。そして、その載置状態で、耐力壁33Bの土台42がアンカーボルト57により妻小梁51Aに固定されている。アンカーボルト57は、床面材56を貫通して上下に延びている。また、妻小梁51Aの溝部内においてアンカーボルト57を挟んだ両側には補強用のスチフナ58が配設されている。
【0042】
図5(a)及び(b)に示すように、各桁小梁52は、耐力壁33Aの下方に配置されている。桁小梁52は、妻小梁51Aよりも低い強度の鋼材により形成され、例えば妻小梁51Aよりも上下寸法の小さい溝形鋼により形成されている。桁小梁52は、一の耐力壁33Aに対して複数(具体的には2つ)配置され、それら複数の桁小梁52が耐力壁33Aの幅方向に直列に並んでいる。なお、各桁小梁52が第2支持梁に相当する。
【0043】
ちなみに、本実施形態では、各桁小梁52が建物ユニット20のドッキングライン(DL)上に配置されている。ここで、ドッキングラインは、各建物ユニット20A,20Bの間に建物ユニットが設置されていると仮定した場合に、当該建物ユニットと建物ユニット20Aとの境界に沿って延びる境界線、及び当該建物ユニットと建物ユニット20Bとの境界に沿って延びる境界線に相当する。
【0044】
耐力壁33Aは、桁小梁52の上に床面材56を介して載置されている。この場合、耐力壁33Aは、直列に並ぶ複数の桁小梁52に跨る状態で載置されている。また、この載置状態で、耐力壁33Aの各柱部41はいずれも桁小梁52と接続された妻小梁51上に載置されている。耐力壁33Aは、耐力壁33Bと同様、土台42がアンカーボルト57により桁小梁52に固定されている。桁小梁52の溝部内にもアンカーボルト57を挟んだ両側に補強用のスチフナ58が配設されている。
【0045】
以上のように、スキップ床構成体30は、各耐力壁33A,33Bが小梁51A,52の上に載置された状態でそれら小梁51A,52に固定されることにより設置されている。この設置状態において、スキップ床構成体30は、小梁51,52に対してのみ固定され、各建物ユニット20A,20B(詳しくは枠体24)に対しては固定されていない。
【0046】
続いて、建物10を製造する際の流れについて簡単に説明する。
【0047】
まず、ユニット製造工場において、建物10を構成する各建物ユニット20を製造する。製造後、各建物ユニット20をトラックにより施工現場へ搬送する。
【0048】
施工現場ではまず、各建物ユニット20を所定の設置位置に設置する作業を行う。この設置作業により、各建物ユニット20A,20Bが互いに離し置きされる。その後、離し置きされた建物ユニット20A,20Bの間に各妻小梁51及び各桁小梁52を配設し、それら小梁51,52の上に根太55を介して床面材56を設置する作業を行う。
【0049】
次に、床面材56の上にスキップ床構成体30を構築する作業を行う。施工現場には、スキップ床構成体30を構成する各部材が搬送され、施工現場では、それら各部材を組み合わせることによりスキップ床構成体30を構築する。なお、スキップ床構成体30をユニット製造工場にて予め構築しておき、それを施工現場に搬送するようにしてもよい。その後、建物本体12上に屋根部13を設ける等することで建物10が構築される。
【0050】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0051】
離し置きされた一対の建物ユニット20A,20Bの間にスキップ床構成体30が設けられ、そのスキップ床構成体30が、スキップ床部31を構成する床枠部32と、床枠部32から下方に延びスキップ床部31を下方から支持する複数の耐力壁33とを有している。耐力壁33の下端部は、離し置きされた建物ユニット20A,20Bの床大梁23A,23Bに連結された小梁51A,52の上に載置され、その載置状態でスキップ床構成体30が設置されている。かかる構成では、スキップ床部31を離し置きされた建物ユニット20A,20Bの柱21に連結する必要がないため、スキップ床部31の高さ位置が変わっても、建物10に作用する水平力(例えば地震力)に対する当該建物10の構造強度がそれほど変わることがない。そのため、スキップ床部31の高さ位置ごとに、ひいては建物ごとに構造計算を行う手間を減らすことができ、その結果、構造設計の容易化を図ることができる。
【0052】
床枠部32ひいてはスキップ床部31を支持する床支持部が耐力壁33からなるため、建物ユニット20A,20Bに対して概ね独立して設けられるスキップ床構成体30の構造強度を好適に高めることができる。
【0053】
スキップ床構成体30が、幅方向が互いに直交する複数の耐力壁33A,33Bを有しているため、スキップ床構成体30の強度をより好適に高めることができる。また、耐力壁33Aはその幅方向に延びる桁小梁52上に載置され、耐力壁33Bはその幅方向に延びる妻小梁51A上に載置されているため、スキップ床構成体30を安定した状態で設置することができる。
【0054】
[第2の実施形態]
続いて、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、離し置きされた建物ユニット20A,20Bの間にスキップ床構成体30が設けられていたが、本実施形態では、建物ユニット20の内部にスキップ床構成体30が設けられている。以下、かかる本実施形態の構成について図6及び図7に基づいて説明する。なお、図6は、本実施形態における建物60の概略を示す概略図である。図7は、スキップ床構成体30が一階床部59上に設置された状態を示す斜視図である。また、以下では、第1実施形態と同じ構成については第1実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図6及び図7に示すように、本実施形態の建物60には、各建物ユニット20A,20Bの間に建物ユニット20(以下、建物ユニット20Cという)が設けられている。建物ユニット20Cは、各建物ユニット20A,20Bとともに建物60の一階部分(所定の階部に相当)を構成している。建物ユニット20Cは、一階床面59aを形成する一階床部59を有している。一階床部59は、建物ユニット20Cの各床小梁26と、それら各床小梁26上に設けられた床面材28とを有して構成されている(図2も参照)。床面材28は、パーティクルボードを含んで構成され、この床面材28により一階床面59a(所定の階部の床面に相当)が形成されている。
【0056】
建物ユニット20Cの内部には、スキップ床構成体30が設けられている。スキップ床構成体30は、各耐力壁33の下端部が一階床部59の上に載置されることにより設置されている。以下、一階床部59の構成について図8及び図9に基づき説明する。図8(a)は一階床部59を構成する小梁を示す平面図であり、(b)は各耐力壁33の配置状態を示す平面図である。図9は、耐力壁33が一階床部59上に設置された構成を示す縦断面図である。
【0057】
図8(a)及び図9に示すように、一階床部59には、対向する長辺側の一対の床大梁23(以下、床大梁23Cという)に架け渡された複数の床小梁26が設けられている。各床小梁26は、耐力壁33Bの幅方向に延びている。各床小梁26のうち一部の床小梁26(以下、床小梁26Aという)は、耐力壁33Bの下方に配置されている。床小梁26Aは、他の床小梁26Bよりも高い強度を有する鋼材(角形鋼管)により形成されている。なお、図8(b)では説明の便宜上、各床小梁26の中心線のみ実線で示している。
【0058】
一階床部59には、各建物ユニット20A,20Cの隣接する床大梁23A,23Cの間と、各建物ユニット20B,20Cの隣接する床大梁23B,23Cの間とにそれぞれ桁小梁62が設けられている。各桁小梁62は、耐力壁33Aの下方に配置されている。各桁小梁62は、上記隣接する床大梁23と同方向(床小梁26と直交する方向)に延びており、換言すると耐力壁33Aの幅方向に延びている。各桁小梁62は角形鋼管からなり、上記隣接する各床大梁23にそれぞれ固定されている。また、複数の床小梁26の上と各桁小梁62の上とにはそれぞれ根太55が設けられ、それら根太55の上に床面材28が設けられている。なお、この場合、建物ユニット20Cの床大梁23、床小梁26及び桁小梁62が請求項4の「床梁」に相当する。
【0059】
床面材28の上には、スキップ床構成体30の各耐力壁33A,33Bが設置されている。耐力壁33Bは、床面材28を介して床小梁26Aの上に載置され、その載置状態で土台42がアンカーボルト57により床小梁26Aに固定されている。また、耐力壁33Aは、床面材28を介して桁小梁62の上に載置され、その載置状態で土台42がアンカーボルト57により桁小梁62に固定されている。
【0060】
以上のように、スキップ床構成体30は、各耐力壁33A,33Bが小梁26A,62上に載置された状態で、それら小梁26A,62に固定されることにより設置されている。かかる設置状態において、スキップ床構成体30は、小梁26A,62に対してのみ固定され、各建物ユニット20A,20B(詳しくは枠体24)に対しては固定されていない。また、スキップ床構成体30は、建物ユニット20Cの柱21に対しても固定されていない。
【0061】
なお、スキップ床構成体30は、施工現場において建物ユニット20C内に組み込まれてもよいし、ユニット製造工場において建物ユニット20C内に組み込まれてもよい。
【0062】
上述した本実施形態の構成によれば、建物ユニット20Cの内部にスキップ床構成体30が設けられている。スキップ床構成体30において各耐力壁33の下端部は、建物ユニット20Cの小梁26A,62上に載置され、その載置状態でスキップ床構成体30が設置されている。かかる構成では、スキップ床部31を建物ユニット20A,20B,20Cの柱21に連結する必要がないため、スキップ床部31の高さ位置が変わっても、建物10に作用する水平力(例えば地震力)に対する当該建物10の構造強度がそれほど変わることがない。そのため、スキップ床部31の高さ位置ごとに、ひいては建物ごとに構造計算を行う手間を減らすことができ、その結果、構造設計の容易化を図ることができる。
【0063】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0064】
・上記各実施形態では、スキップ床構成体30を木造軸組構造により構築したが、スキップ床構成体を鉄骨構造とする等、他の構造により構築してもよい。
【0065】
・スキップ床構成体30が、耐力壁33を構成する柱部41以外に、柱部を有していてもよい。その場合、この柱部の下端部をいずれかの小梁51,52上に載置するようにすればよい。なお、この場合、当該柱部が床支持部に相当し、当該柱部が載置される小梁が支持梁に相当する。
【0066】
・上記各実施形態では、耐力壁33において、一対の柱部41が構造用合板43を介して連結されていたが、一対の柱部41がブレース等、他の補強材を介して連結されていてもよい。
【0067】
・スキップ床部31の高さ位置は、必ずしも上記実施形態の高さ位置に限る必要はない。例えば、スキップ床部31の高さ位置を上記実施形態より高くすることにより、スキップ床部31の下方空間(床下空間)の天井高さを1.4mを超えた寸法とし、スキップ床部31の上方空間(床上空間)の天井高さを1.4m以下としてもよい。この場合、上記実施形態とは逆に、スキップ床部31の下方空間を居室、上方空間を収納室として用いることが可能となる。
【0068】
・上記各実施形態では、高床部としてのスキップ床部31を一階部分における中間高さに設けたが、例えば、高床部を建物本体12と屋根裏部分18との境界高さに設けたり、屋根裏部分18に設けたりしてもよい。要するに、高床部は、一階床面よりも高い位置であればいずれの高さ位置に設けられてもよい。
【0069】
・上記各実施形態では、平屋建て(一階建て)の建物10に本発明を適用したが、複数階建ての建物に本発明を適用してもよい。例えば、二階建ての建物において、二階部分(所定の階部に相当)を構成する、離し置きされた一対の建物ユニットの間にスキップ床構成体を設けてもよい。この場合、一対の建物ユニットの床大梁に支持梁を連結し、その支持梁上に耐力壁を載置することでスキップ床構成体を設置すればよい。
【0070】
・上記第1の実施形態において、スキップ床部31の下方空間(床下空間)を土間空間としてもよい。この場合、建物ユニット20A,20Bの床大梁23A,23Bに短尺状の支持梁を連結する。支持梁は、一端だけが床大梁23A,23Bに固定された片持ち梁とされる。そして、その支持梁の上に耐力壁33を載置し、その載置状態でスキップ床構成体30を設置するようにすればよい。
【0071】
また、短尺状の支持梁を設けることに代え、土間空間を挟んだ両側に基礎を設けてもよい。その場合、基礎上に根太等を介して耐力壁33を載置し、その載置状態でスキップ床構成体30を設置すればよい。
【0072】
・上記第2の実施形態において、スキップ床構成体30の耐力壁33Aを建物ユニット20Cの桁小梁62上に載置することに代えて、床大梁23C上に載置するようにしてもよい。
【0073】
・上記第2の実施形態において、建物ユニット20Cの各床小梁26を不具備とすることにより、スキップ床部31の下方空間(床下空間)を土間空間としてもよい。この場合、土間空間を挟んだ両側に基礎を設け、それら基礎上に根太等を介して耐力壁33を載置することによりスキップ床構成体30を設置するようにすればよい。
【符号の説明】
【0074】
10…建物、12…建物本体、13…屋根部、20…建物ユニット、21…柱、22…天井大梁、23…床大梁、30…床構成体としてのスキップ床構成体、31…高床部としてのスキップ床部、32…床枠部、33…床支持部としての耐力壁、33A…第2耐力壁としての耐力壁、33B…第1耐力壁としての耐力壁、51…床小梁としての妻小梁、51A…第1支持梁としての妻小梁、52…第2支持梁としての桁小梁、56…床面材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9