(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】検査装置用情報処理装置、検査装置用情報処理方法、及び検査装置システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20240620BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01N21/90 D
G01N21/88 J
(21)【出願番号】P 2021095433
(22)【出願日】2021-06-07
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】日下 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】三沢 博章
(72)【発明者】
【氏名】古川 博基
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/071035(WO,A1)
【文献】特開2012-049503(JP,A)
【文献】特開2007-303992(JP,A)
【文献】特開2015-028438(JP,A)
【文献】特表2009-514191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元画像の画像データと、距離画像の画像データとを取得する入力部と、
取得した前記2次元画像の画像データに対して、検査感度が高く、
過去に設定した検査領域から第1の検査領域を算出する高感度領域算出部と、
取得した前記距離画像の画像データから検査対象物の3次元形状を推定し、推定した前記3次元形状に対して、検査感度が前記第1の検査領域よりも低く、
当該検査対象物の縁を囲んだ領域、または当該検査対象物の表面の凹凸を囲んだ領域を検出する第2の検査領域を算出する低感度領域算出部と、
前記高感度領域算出部で算出した第1の検査領域と、前記低感度領域算出部で算出した第2の検査領域とを結合して、検査領域と検査感度とを決定する検査領域決定部と、
を備えることを特徴とする検査装置用情報処理装置。
【請求項2】
前記2次元画像の画像データと、前記距離画像の画像データは、
容器に充填された医薬品の画像データであって、異物検査に用いられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置用情報処理装置。
【請求項3】
前記検査領域決定部は、
前記第1の検査領域と前記第2の検査領域とを結合する際、重複する検査領域に対して、前記低感度領域算出部で算出した第2の検査領域を優先する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の検査装置用情報処理装置。
【請求項4】
過去の検査対象物の2次元画像の画像データに、
前記過去に設定した検査領域と検査感度とを用いて、機械学習により識別器モデルを生成する学習済み識別器を、更に備え、
前記高感度領域算出部は、
取得した前記2次元画像の画像データに前記識別器モデルを使用して、前記第1の検査領域を算出する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の検査装置用情報処理装置。
【請求項5】
前記検査領域決定部で決定した、前記検査領域と前記検査感度とを格納する記憶部を、更に備え、
前記学習済み識別器は、
前記記憶部に格納された検査領域と検査感度とを用いて、
前記検査対象物の2次元画像の画像データに適用し、前記識別器モデルを生成する、
ことを特徴とする請求項4に記載の検査装置用情報処理装置。
【請求項6】
2次元画像の画像データと、距離画像の画像データとを取得するステップと、
取得した前記2次元画像の画像データに対して、検査感度が高く、
過去に設定した検査領域から第1の検査領域を算出するステップと、
取得した前記距離画像の画像データから検査対象物の3次元形状を推定し、推定した前記3次元形状に対して、検査感度が前記第1の検査領域よりも低く、
当該検査対象物の縁を囲んだ領域、または当該検査対象物の表面の凹凸を囲んだ領域を検出する第2の検査領域を算出するステップと、
前記第1の検査領域と前記第2の検査領域とを結合して、検査領域と検査感度とを決定するステップと、
を含むことを特徴とする検査装置用情報処理方法。
【請求項7】
2次元画像と距離画像とを撮像する撮像部と、
前記2次元画像の画像データと、前記距離画像の画像データとを取得する入力部と、
取得した前記2次元画像の画像データに対して、検査感度が高く、
過去に設定した検査領域から第1の検査領域を算出する高感度領域算出部と、
取得した前記距離画像の画像データから検査対象物の3次元形状を推定し、推定した前記3次元形状に対して、検査感度が前記第1の検査領域よりも低く、
当該検査対象物の縁を囲んだ領域、または当該検査対象物の表面の凹凸を囲んだ領域を検出する第2の検査領域を算出する低感度領域算出部と、
前記高感度領域算出部で算出した第1の検査領域と、前記低感度領域算出部で算出した第2の検査領域とを結合して、検査領域と検査感度とを決定する検査領域決定部と、
を備えることを特徴とする検査装置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置用情報処理装置、検査装置用情報処理方法、及び検査装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品や製品の表面にある異物、傷、及び欠陥を確認する外観検査では、目視による検査を行っていた。しかしながら、目視による検査では限界があるため、検査対象物をカメラで撮影し、画像処理により異常(異物、傷、及び欠陥)を検出する手法が一般的に行われるようになった。
【0003】
また、従来の画像処理による外観検査では、検査対象物ごとに細かな検査領域の設定している。具体的には、撮像された画像の中において、検査プログラムにより外観検査する領域を設定する。特に、アンプルやバイアル等に充填された医薬品の異物検査では、検査での誤判定を減少させるため、検査領域の設定に加えて検査領域ごとに検査プログラムで異常と判定する閾値(以下、これを検査感度という。)の設定も行っている。
【0004】
例えば、検査対象物の縁や表面の凹凸等は、陰影が深いことやカメラのピントが合わせづらく不鮮明であることから、従来の画像処理では誤判定が生じやすい。そのため、検査対象物の縁や表面の凹凸等には、検査感度を低く設定する。
【0005】
これにより、異物判定を行う画像処理の判定条件を厳しくすることで、異物の検出率と縁や表面の凹凸等の異物に近い特徴をもつ領域の誤判定とを減少させている。また、これらの設定は、画像処理に精通した作業員が、過去の経験や蓄積されたノウハウに基づいて手作業で設定していたため、大きな工数と作業の属人化が問題となっている。
【0006】
この問題に対して、特許文献1の要約書には、「第一の閾値を用いた第一の二値化処理を実行して得られた第一の閉領域の数よりも、第一の閾値と異なる第二の閾値に基づく第二の二値化処理を実行して得られた第二の閉領域の数のほうが多い場合に、当該第二の閉領域を新たな欠陥候補として更新した欠陥候補情報から、画像データにおける欠陥候補を特定する欠陥候補特定部21を備える」欠陥候補特定装置が開示されている(特許文献1の要約書参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された欠陥候補特定装置は、欠陥候補特定部を備えて構成されている。欠陥候補特定部では、対象領域毎に、第一の閉領域の個数と、第二の閉領域の個数とを比較し、第二の閉領域の個数のほうが多い場合に、当該第二の閉領域を新たな欠陥候補とし、欠陥候補情報を、新たな欠陥候補を特定するための情報を含んだ欠陥候補情報に更新する。これにより、欠陥候補特定部は、更新された欠陥候補情報から画像データにおける欠陥候補を特定できる。
【0009】
特に、特許文献1に記載の欠陥候補特定装置は、液晶ディスプレイの製造工程におけるパネルの外観を検査する装置であり、他にも、シリコン基板や印刷物に形成された図形や文字等の欠陥を検査対象としている。
【0010】
ここで、特許文献1に開示された技術では、欠陥候補情報を更新することによって検査対象である欠陥候補を特定して検査領域を設定しており、検査対象物において、検査領域のみを設定する。そのため、検査領域の設定についてのみ、工数を削減できる。
【0011】
しかしながら、検査領域を設定できても、検査対象物によっては検査領域ごとに検査感度を設定する必要があるため、別途、検査感度を手動で設定しなくてはならない、という課題が存在する。
【0012】
そこで、本発明は、検査領域の設定に要する工数だけでなく、検査感度の設定に要する工数も削減し、作業の属人化を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の検査装置用情報処理装置は、2次元画像の画像データと、距離画像の画像データとを取得する入力部と、取得した前記2次元画像の画像データに対して、検査感度が高く、過去に設定した検査領域から第1の検査領域を算出する高感度領域算出部と、取得した前記距離画像の画像データから検査対象物の3次元形状を推定し、推定した前記3次元形状に対して、検査感度が前記第1の検査領域よりも低く、当該検査対象物の縁を囲んだ領域、または当該検査対象物の表面の凹凸を囲んだ領域を検出する第2の検査領域を算出する低感度領域算出部と、前記高感度領域算出部で算出した第1の検査領域と、前記低感度領域算出部で算出した第2の検査領域とを結合して、検査領域と検査感度とを決定する検査領域決定部と、を備えることを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検査装置用情報処理装置、検査装置用情報処理方法、及び検査装置システムにおいて、検査領域の設定に要する工数だけでなく、検査感度の設定に要する工数も削減し、作業の属人化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る検査装置用情報処理装置の機能ブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る検査装置用情報処理装置の主なハードウエアの構成例を示す説明図である。
【
図3】本実施形態に係る検査装置システムの実施例を示す説明図である。
【
図4】本実施形態に係る検査装置用情報処理装置のCPUが実行する、検査領域および検査感度の設定処理を示すフローチャートである。
【
図5】検査装置用情報処理装置が算出する領域のイメージを示す説明図である。
【
図6】高感度領域と低感度領域とが重複しない場合において、そのまま検査領域を結合するイメージを示す説明図である。
【
図7】本実施例の検査装置システムのハードウエアの構成例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以降、本発明を実施するための形態(「本実施形態」という)を、図面を参照しながら説明する。なお、本説明において、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を適宜、省略する。
【0017】
<本実施形態>
[検査装置用情報処理装置の機能]
図1は、本実施形態に係る検査装置用情報処理装置1の機能ブロック図である。検査装置用情報処理装置1は、検査装置システムに用いられる情報処理装置である。すなわち、検査装置用情報処理装置1は、パーソナルコンピュータやサーバなどの情報処理装置により構成される。また、検査装置用情報処理装置1は、カメラ2と共に用いられることにより、後述する検査装置システムを構成する。
【0018】
図1に示すように、検査装置用情報処理装置1は、入力部3、高感度領域算出部4、低感度領域6、及び検査領域決定部7を備えて構成されている。なお、入力部3、高感度領域算出部4、低感度領域6、及び検査領域決定部7は、
図2において後述するCPU110が、記憶部120の制御プログラム121を実行することにより、具現化される。
【0019】
入力部3は、
図3において後述するカメラ2から、2次元画像の画像データと、距離画像の画像データとを取得する。入力部3は、取得した2次元画像の画像データを、高感度領域算出部4に送出する。また、入力部3は、取得した距離画像の画像データを、低感度領域6に送出する。
【0020】
本実施形態では、2次元画像の画像データと、距離画像の画像データは、例えば、容器に充填された医薬品の画像データであって、異物検査に用いられる画像データを対象とする。また、医薬品は、アンブルやバイアルなどの容器に充填されている。
【0021】
高感度領域算出部4は、入力部3から2次元画像の画像データを取得する。高感度領域算出部4は、取得した2次元画像の画像データに対して、検査感度が高く、微小な特徴を検出する第1の検査領域を算出する。
【0022】
ここで、高感度領域算出部4は、例えば、取得した2次元画像の画像データから、画像処理により検査感度を相対的に高い検査領域を算出する。画像処理には、ディープラーニング(Deep Learning)の機械学習を用いた物体検出手法を使用することができる。また、高感度領域算出部4は、HOG(Histogram Of oriented Gradients)特徴量を用いた勾配強度を抽出して、SVM(Support Vector Machine)により分類する手法を使用してもよい。
【0023】
低感度領域6は、入力部3から距離画像の画像データを取得する。低感度領域6は、取得した距離画像の画像データから検査対象物の3次元形状を推定し、推定した3次元形状に対して、検査感度が第1の検査領域よりも低く、異物に近似した特徴を検出する第2の検査領域を算出する。
【0024】
検査領域決定部7は、高感度領域算出部4で算出した第1の検査領域と、低感度領域6で算出した第2の検査領域とを結合して、検査領域と検査感度とを決定する。これにより、検査領域決定部7は、最終的な検査領域と検査領域ごとの検査感度とを決定できる。特に、検査領域決定部7は、検査対象物の全体に対して、検査領域を決定することができるとともに、検査領域ごとに検査感度を決定できる。
【0025】
また、検査領域決定部7は、第1の検査領域と第2の検査領域とを結合する際、重複する検査領域に対して、低感度領域算出部6で算出した第2の検査領域を優先してもよい。これにより、検査領域決定部7は、重複する検査領域に対して、検査対象物の縁や表面の凹凸を優先することができる。
【0026】
なお、2次元画像と距離画像について、本実施形態では、検査感度を閾値によって設定することができるので、2次元画像は距離画像よりも閾値が高く、距離画像は2次元画像よりも閾値が低く設定される。これにより、2次元画像から検査感度が高く、微小な特徴を検出する第1の検査領域を算出し、一方、距離画像から検査感度が低く、異物に近似した特徴を検出する第2の検査領域を算出する。
【0027】
次に、本実施形態に係る検査装置用情報処理装置1のハードウエアの構成について説明する。
【0028】
[検査装置用情報処理装置のハードウエアの構成]
図2は、本実施形態に係る検査装置用情報処理装置1の主なハードウエアの構成例を示す説明図である。本実施形態に係る検査装置用情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)110、記憶部120、ROM(Read Only Memory)130、RAM(Random Access Memory)140、入力部150、表示部160、及び通信部170を備えて構成されている。
【0029】
CPU110は、検査装置用情報処理装置1を制御する中央処理装置であり、記憶部120又はROM130に格納されたOS(Operating System)や制御プログラム121をRAM140に展開して実行することにより、
図1に示す各機能を具現化する。
【0030】
記憶部120は、大容量の記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、不揮発性メモリなどで構成される。記憶部120は、制御プログラム121を格納する。
【0031】
ROM130は、CPU110によって実行されるプログラムや、このプログラムの実行に使用されるデータ、パラメータなどを記憶する。
【0032】
RAM140は、OSや各種プログラムの展開先である。更にRAM140は、CPU110により実行制御される各種処理において、ROM130から読み出され、CPU110で実行可能な各種プログラムや、CPU110の処理により生じた入力データ、出力データ、及びパラメータ等を一時的に記憶するワークエリアとして機能する。
【0033】
入力部150は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キーなどを備えたキーボードと、マウスなどのポインティングデバイスを備えて構成される。入力部150は、キーボードで押下操作されたキーの押下信号やマウスによる操作信号を、入力信号としてCPU110に出力する。CPU110は、入力部150からの操作信号に基づいて、各種処理を実行する。
【0034】
表示部160は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニタを備えて構成される。表示部160は、CPU110から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。表示部160および入力部150として、タッチパネルディスプレイを採用することもできる。
【0035】
通信部170は、通信インタフェースを備え、ネットワーク上の外部装置と通信する。通信部170は、例えば、後述する
図3のカメラ2と通信する。この場合、CPU110は、通信部170を介して、カメラ2から、2次元画像の画像データ及び距離画像の画像データを取得できる。
【0036】
内部バス190は、検査装置用情報処理装置1における各構成要素を相互に接続する。
【0037】
[検査装置用情報処理装置の実施例]
次に、本実施形態に係る検査装置用情報処理装置1の実施例について説明する。
図3は、本実施形態に係る検査装置用情報処理装置1の実施例を示す説明図である。
図3では、
図1に示す検査装置用情報処理装置1を具体的に示したものであり、同一の構成については同一の符号を付し、説明を適宜、省略する。また、
図3では、検査装置用情報処理装置1とカメラ2を備えた検査装置システム100により説明する。
【0038】
図3に示すように、検査装置システム100は、検査装置用情報処理装置1、カメラ2、DL学習部5(学習済み識別器)、高感度領域算出モデル51(識別器モデル)、及び検査領域DB8(記憶部)を備えて構成されている。
【0039】
カメラ2は、2次元(2D(Dimension))画像と、距離画像とを取得する。カメラ2は、例えば、RGB-D(Depth)カメラやステレオカメラなどにより被写体との距離を測定できるカメラにより構成される。カメラ2は、検査対象物を撮像して、2D画像31(2次元画像)の画像データと、距離画像32の画像データとを検査装置用情報処理装置1に送出する。
【0040】
検査装置用情報処理装置1の入力部3は、カメラ2から、2D画像31の画像データと、距離画像32の画像データとを取得できる。
【0041】
検査装置用情報処理装置1の高感度領域算出部4は、高感度領域算出処理部41を備えて構成されている。高感度領域算出処理部41は、取得した2D画像31の画像データに対して、検査感度が高く、微小な特徴を検出する第1の検査領域を算出する処理を行う。
【0042】
DL学習部5は、過去の検査対象物の2D画像の画像データに、過去に設定した検査領域と検査感度とを用いて、機械学習により高感度領域算出モデル51を生成する。これにより、高感度領域算出部4の高感度領域算出処理部41は、取得した2D画像31の画像データに、高感度領域算出モデル51を使用して、第1の検査領域を算出できる。
【0043】
具体的には、DL学習部5は、学習済みのニューラルネットワークで構成される。DL学習部5は、教師データを使用して機械学習を実行する。DL学習部5は、2D画像31の画像データにおいて第1の検査領域を算出できるように、高感度領域算出モデル51を生成する。また、DL学習部5は、過去の検査対象物の2D画像の画像データに、過去に設定した検査領域と検査感度とを用いることにより、高感度領域算出モデル51を最適化する。
【0044】
検査装置用情報処理装置1の低感度領域算出部6は、3次元形状推定処理部61と、低感度領域算出処理部62とを備えて構成されている。3次元形状推定処理部61は、取得した距離画像32の画像データから検査対象物の3次元形状を推定する処理を行う。低感度領域算出処理部62は、推定した検査対象物の3次元形状に対して、検査感度が第1の検査領域よりも低く、異物に近似した特徴を検出する第2の検査領域を算出する処理を行う。
【0045】
検査装置用情報処理装置1の検査領域決定部7は、検査領域結合処理部71を備えて構成されている。検査領域結合処理部71は、高感度領域算出処理部41で算出した第1の検査領域と、低感度領域算出処理部62で算出した第2の検査領域とを結合して、検査領域と検査感度とを決定する。
【0046】
検査領域DB8は、検査装置用情報処理装置1の検査領域決定部7の検査領域結合処理部71で決定した、検査領域と検査感度(すなわち、閾値)とを格納する。これにより、DL学習部5は、検査領域DB8に格納された検査領域と検査感度とを用いて、検査対象物の2次元画像の画像データに適用し、高感度領域算出モデル51を生成できる。なお、検査領域DB8は、RAM140(
図2参照)で構成されていてもよい。
【0047】
なお、DL学習部5、及び高感度領域算出モデル51は、本実施例に限定されず、検査装置用情報処理装置1のCPU110が制御プログラム121を実行することにより具現化されるものとして、検査装置用情報処理装置1に含まれていてもよい。
【0048】
[検査装置システムの動作]
次に、本実施形態に係る検査装置用情報処理装置1が実行する検査領域および検査感度の設定処理について、
図1から
図3を参照しながら、
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0049】
図4は、本実施形態に係る検査装置用情報処理装置1のCPU110が実行する、検査領域および検査感度の設定処理を示すフローチャートである。CPU110は、記憶部120から制御プログラム121を読み出して、
図1に示す検査装置用情報処理装置1の機能を具現化する。
【0050】
容器に医薬品が充填された検査対象をカメラ2で撮像すると、
図4に示すように、検査装置用情報処理装置1のCPU110は、入力部3により、カメラ2から、2D画像31の画像データと、距離画像32の画像データとを取得する(ステップS101)。入力部3は、取得した2D画像31の画像データを、高感度領域算出部4に送出する。また、入力部3は、取得した距離画像32の画像データを、低感度領域6に送出する。
【0051】
本実施例では、カメラ2で撮像された、2D画像31と距離画像32の画像データは、容器に充填された医薬品の画像データであって、異物検査に用いられる画像データとする。また、医薬品は、アンブルやバイアルなどの容器に充填されている。
【0052】
CPU110は、高感度領域算出部4において、入力部3から2D画像31の画像データを取得する。高感度領域算出部4の高感度領域算出処理部41は、取得した2D画像31の画像データに対して、検査感度が高く、微小な特徴を検出する第1の検査領域を算出する(ステップS102)。
【0053】
具体的には、DL学習部5が、過去の検査対象物の2D画像の画像データに、過去に設定した検査領域および検査感度を用いて事前にディープラーニングによる機械学習を行い、高感度領域算出モデル51を生成する。高感度領域算出部4は、高感度領域算出処理部41により、取得した2D画像31の画像データに、高感度領域算出モデル51を適用し、検査感度が高い、第1の検査領域を算出する。
【0054】
図5は、検査装置用情報処理装置1が算出する領域のイメージを示す説明図である。
【0055】
例えば、
図5に示す画像I101が、高感度領域算出部4に入力されると、高感度領域算出処理部41は、高感度領域算出モデル51を適用し、一例として、画像I102において、高感度領域として領域I1021を算出する。領域I1021は、多角形の領域が算出されている。領域I1021は、第1の検査領域に対応する。
【0056】
図4のフローチャートに戻り、CPU110は、低感度領域算出部6において、入力部3から距離画像32の画像データを取得する。CPU110は、低感度領域算出部6の3次元形状推定処理部61により、取得した距離画像32の画像データから検査対象物の3次元形状を推定する(ステップS103)。
【0057】
例えば、
図5に示す画像I103が、低感度領域算出部6に入力されると、低感度領域算出部6の3次元形状推定処理部61は、画像処理で検査対象物以外の台座や容器などを除外し、色の変化や濃淡などの情報から検査対象物の3次元形状を推定する。
【0058】
図5に示す画像I104は、一例として、3次元形状推定処理部61により3次元形状が推定された画像を示している。
図5に示す画像I104のように、3次元形状推定処理部61は、検査対象物以外を除外した画像を推定する。
【0059】
図4のフローチャートに戻り、CPU110は、低感度領域算出部6の低感度領域算出処理部62により、推定した3次元形状に対して、検査感度が第1の検査領域よりも低く、異物に近似した特徴を検出する第2の検査領域を算出する(ステップS104)。
【0060】
例えば、
図5に示す画像I104が、低感度領域算出部6の低感度領域算出処理部62に入力されると、低感度領域算出処理部62は、検査対象物の縁を多角形で囲んだ領域や表面の凹凸を多角形で囲んだ領域を算出する。
【0061】
図5に示す画像I105は、低感度領域算出処理部62によって、一例として、縁を多角形で囲んだ領域I1051と、表面の凹凸を多角形で囲んだ領域I1052が算出されている。領域I1051および領域I1052は、第2の検査領域に対応する。
【0062】
図4のフローチャートに戻り、CPU110は、検査領域決定部7の検査領域結合処理部71により、高感度領域算出部4で算出した領域I1021(第1の検査領域)と、低感度領域6で算出した領域I1051,領域I1052(第2の検査領域)とを結合して、検査領域と検査感度とを決定する。
【0063】
ここで、領域I1021(第1の検査領域)と、領域I1051,領域I1052(第2の検査領域)と結合する際、高感度領域(第1の検査領域)と低感度領域(第2の検査領域)とが重複する場合(ステップS105のYes)、CPU110の検査領域決定部7は、誤判定が生じないように、低感度領域(第2の検査領域)を優先して結合する(ステップS106)
【0064】
一方、高感度領域と低感度領域とが重複しない場合(ステップS105のNo)、CPU110の検査領域決定部7は、各領域を1つに結合する(ステップS107)。
【0065】
図5に示す画像I106は、低感度領域(第2の検査領域)を優先して結合した画像を示している。画像I106において、領域I1061は、高感度領域を示し、領域I1051,領域I1052は、低感度領域を示している。
【0066】
画像I105の領域I1051,領域I1052(第2の検査領域)は、画像I102の領域I1021(第1の検査領域)よりも優先されているため、画像I106の領域I1051,領域I1052(第2の検査領域)は、結合前と同一の領域を示している。一方、画像I106の領域I1061(第1の検査領域)は、領域の重複を考慮し、画像I102の領域I1021が変形されて、高感度領域が形成されている。
【0067】
これに対し、
図6は、高感度領域と低感度領域とが重複しない場合において、そのまま検査領域を結合するイメージを示している。
【0068】
図6に示す画像I202は、高感度領域算出処理部41により、一例として、高感度領域として領域I2061が算出されている。領域I2061は、多角形の領域が算出されている。領域I2061は、第1の検査領域に対応する。
【0069】
図6に示す画像I205は、低感度領域算出処理部62によって、一例として、縁を多角形で囲んだ領域I2051と、表面の凹凸を多角形で囲んだ領域I2052が算出されている。領域I2051および領域I2052は、第2の検査領域に対応する。
【0070】
図6に示す画像I206は、高感度領域(第1の検査領域)と低感度領域(第2の検査領域)とが重複しないため、検査領域決定部7の検査領域結合処理部71により、画像I202の領域I2061(第1の検査領域)と、画像I205の領域I2051,I2052(第2の検査領域)とが、そのまま結合されている。
【0071】
本実施例では、高感度領域と低感度領域とを結合すると、CPU110は、検査領域および検査感度の設定処理を終了する。
【0072】
<本実施例の効果>
以上説明したように、本実施例の検査装置用情報処理装置1は、CPU110が、制御プログラム121を実行することにより、入力部3、高感度領域算出部4、低感度領域算出部6、及び検査領域決定部7を具現化する。そして、検査領域決定部7は、高感度領域算出部4で算出した第1の検査領域と、低感度領域算出部6で算出した第2の検査領域とを結合して、検査領域と検査感度とを決定する。
【0073】
これにより、本実施例の検査装置用情報処理装置1は、検査領域の設定に要する工数だけでなく、検査感度の設定に要する工数も削減し、作業の属人化を防止できる。
【0074】
また、本実施例の検査装置用情報処理装置1は、DL学習部5、及び検査領域DB8を備えることができる。検査領域DB8は、検査装置用情報処理装置1の検査領域決定部7の検査領域結合処理部71で決定した、検査領域と検査感度とを格納する。
【0075】
これにより、DL学習部5は、検査領域DB8に格納された検査領域と検査感度とを用いて、検査対象物の2次元画像の画像データに適用し、高感度領域算出モデル51を生成できる。この場合、DL学習部5は、検査対象物の2次元画像の画像データに設定された検査領域と検査感度を教師データとして学習することにより、高感度領域算出モデル51を最適化することができる。
【0076】
<検査装置システムの構成>
本実施例では、検査装置用情報処理装置1の構成を中心に説明したが、上述したように、検査装置用情報処理装置1とカメラ2を備えることにより、検査装置システム100を構成することができる。
【0077】
図7は、本実施例の検査装置システム100のハードウエアの構成例を示した説明図である。
【0078】
図7に示すように、
図2に示した検査装置用情報処理装置1に、通信部170を介してカメラ2が接続される構成を採用することにより、本実施例の検査装置システム100を構成することができる。
【0079】
検査装置システム100は、
図2に示したように、2D画像31と距離画像32とを撮像するカメラ2(撮像部)と、2D画像31の画像データと、距離画像32の画像データとを取得する入力部3と、取得した2D画像31の画像データに対して、検査感度が高く、微小な特徴を検出する第1の検査領域を算出する高感度領域算出部4と、取得した距離画像32の画像データから検査対象物の3次元形状を推定し、推定した3次元形状に対して、検査感度が第1の検査領域よりも低く、異物に近似した特徴を検出する第2の検査領域を算出する低感度領域算出部6と、高感度領域算出部4で算出した第1の検査領域と、低感度領域算出部6で算出した第2の検査領域とを結合して、検査領域と検査感度とを決定する検査領域決定部7と、を備えて構成される。
【0080】
これにより、本実施例の検査装置システム100は、検査領域の設定に要する工数だけでなく、検査感度の設定に要する工数も削減し、作業の属人化を防止できる。
【0081】
<変形例>
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0082】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウエアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0083】
1 検査装置用情報処理装置
2 カメラ(撮像部)
3 入力部
31 2D画像
32 距離画像
4 高感度領域算出部
41 高感度領域算出処理部
5 DL学習部(学習済み識別器)
51 高感度領域算出モデル(識別器モデル)
6 低感度領域算出部
61 3次元形状推定処理部
62 低感度領域算出処理部
7 検査領域決定部
71 検査領域結合処理部
100 検査装置システム
110 CPU
120 記憶部
121 制御プログラム
130 ROM
140 RAM
150 入力部
160 表示部
170 通信部