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特許7507141リジェネバーナ装置、蓄熱体、及び、蓄熱体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】リジェネバーナ装置、蓄熱体、及び、蓄熱体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F23L 15/02 20060101AFI20240620BHJP
   F23C 7/06 20060101ALI20240620BHJP
   F23D 14/66 20060101ALI20240620BHJP
   F23L 15/00 20060101ALI20240620BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
F23L15/02
F23C7/06
F23D14/66 C
F23L15/00 A
F28D20/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021213157
(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公開番号】P2023097033
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】高木 修
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-211370(JP,A)
【文献】実開昭62-908(JP,U)
【文献】特開2021-179264(JP,A)
【文献】特開平08-233251(JP,A)
【文献】特開2016-160103(JP,A)
【文献】特開2002-267379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0128121(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 15/00-15/04
F23D 14/66
F23C 7/06-7/08
F28D 20/00-20/02
C09K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体外郭を貫通するバーナと、
該バーナによる燃料ガスの燃焼のための燃焼用空気を前記本体外郭の内部に供給するための給気口と、
前記燃料ガスの燃焼により高温となった排ガスを前記本体外郭から排出するための排気口と、
セラミックス製で、単一の方向に延びて列設された隔壁により区画された複数のセルを備えるハニカム構造を有するハニカムセグメントの複数が、それぞれの前記セルの軸方向が一致するように接着材で接着された蓄熱体であり、前記バーナを挿通させた状態で前記本体外郭に収容されている蓄熱体と、
前記蓄熱体に対して前記セルの軸方向に平行な軸周りに回転することにより、それぞれの前記ハニカムセグメントに流通させるガスを前記燃焼用空気と前記排ガスとの間で切り換える回転切り換え盤とを具備し、
それぞれの前記ハニカムセグメントの側周面では前記セルが開口することなく、前記隔壁の壁面によって前記側周面が形成されていると共に、
前記側周面のうち、少なくとも隣接している前記ハニカムセグメントとの境界面にケイ酸系ガラスがコーティングされていることにより、
隣接している前記ハニカムセグメントの境界部では、前記接着材の層を挟んで前記ケイ酸系ガラスの層が積層された前記隔壁が二重となっている
ことを特徴とするシングル型リジェネバーナ装置。
【請求項2】
セラミックス製で、単一の方向に延びて列設された隔壁により区画された複数のセルを備えるハニカム構造を有するハニカムセグメントの複数が、それぞれの前記セルの軸方向が一致するように接着材で接着された蓄熱体であり、
該蓄熱体は、中心に前記セルより大きく前記セルの軸方向に貫通しているバーナ用貫通孔を備えていると共に、
それぞれの前記ハニカムセグメントの側周面では前記セルが開口することなく、前記隔壁の壁面によって前記側周面が形成されていると共に、
前記側周面のうち、少なくとも隣接している前記ハニカムセグメントとの境界面にケイ酸系ガラスがコーティングされていることにより、
隣接している前記ハニカムセグメントの境界部では、前記接着材の層を挟んで前記ケイ酸系ガラスの層が積層された前記隔壁が二重となっている
ことを特徴とする蓄熱体。
【請求項3】
押出成形により、セラミックス製で、単一の方向に延びて列設された隔壁により区画された複数のセルを備えるハニカム構造を有するハニカムセグメントであって、前記セルが側周面に開口することなく前記隔壁の壁面によって前記側周面が形成されているハニカムセグメントを成形し、
前記ハニカムセグメントの複数を焼成した後、それぞれの前記セルの軸方向が一致するように接着材で接着することにより、中心に前記セルより大きく前記セルの軸方向に貫通しているバーナ用貫通孔を備える蓄熱体を製造するに当たり、
前記ハニカムセグメントの接着の前に、前記側周面のうち少なくとも隣接させる前記ハニカムセグメントとの境界面となる面をケイ酸系ガラスの層でコーティングすることにより、
隣接する前記ハニカムセグメントの境界部では、前記接着材の層を挟んで前記ケイ酸系ガラスの層で積層された前記隔壁が二重となっている蓄熱体を製造する
ことを特徴とする蓄熱体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シングル型のリジェネバーナ装置、これに使用される蓄熱体、及び、蓄熱体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鍛造炉、熱処理炉、溶解炉、焼成炉、圧延加熱炉などの工業炉で使用されるリジェネバーナは、バーナの燃焼により高温となった排ガスと、バーナの燃焼のために供給される空気(燃焼用空気)とを、交互に蓄熱体に流通させるべく、ガスの流通方向が切り換えられるバーナである。排ガスの熱は蓄熱体で回収され、新たに供給される燃焼用空気を予熱するために利用される。このようなリジェネバーナは、一対のバーナを備えるバーナシステム(ツインリジェネバーナ)と、一つのバーナでガスの流通方向を切り換えるシングル型リジェネバーナ(セルフリジェネバーナ)とに大別される。
【0003】
一対のバーナを備えるバーナシステムでは、一方のバーナに新たな燃焼用空気を供給して燃焼させている間、他方のバーナから高温の排ガスを排出して蓄熱体で排熱を回収する動作を、数十秒間隔で交互に繰り返す。蓄熱体で排熱を回収したバーナを次に燃焼させる際、高温となっている蓄熱体によって燃焼用空気が加熱される。一対のバーナ間で切り換えを行うたびにメインバーナの消火及び再点火を行う必要があるため、ロスタイムが不可避に生じ、ガスの流通方向を切り換える時間間隔を短縮することが難しい。
【0004】
一方、シングル型リジェネバーナは、バーナと蓄熱体とが組み込まれたバーナ装置が一つで足りるため、設置のために要するスペースが小さい利点がある。また、メインバーナの消火及び再点火を行う必要がなく、蓄熱体における燃焼用空気及び排ガスの流通を切り換える時間間隔を短くすることが可能であるため、熱効率を高めることができる利点がある。
【0005】
このようなシングル型リジェネバーナとして、蓄熱体における燃焼用空気及び排ガスの流通を切り換えるために、回転する部材を使用したものが提案されている(例えば、特許文献1、及び、特許文献2参照)。特許文献1のバーナ装置では、複数に区画したケースに蓄熱体を充填すると共に、蓄熱体の区画に合わせて複数の流通路からなる分流管を設けている。そして、回転によって複数の流通路の何れかと連通する孔部が穿設された回転仕切板を使用して、各流通路への燃焼用空気と排ガスとの流通を切り換えている。しかしながら、特許文献1のバーナ装置では、蓄熱体としてアルミナのボールを使用している。蓄熱体がボール状である場合、ガスはボール間の空隙を流通するため、圧力損失が大きいというデメリットがある。また、ボール状の蓄熱体では、中心部分が熱交換に寄与しないため、熱効率が低い。
【0006】
一方、特許文献2のバーナ装置では、蓄熱体としてセラミックス製のハニカム構造体を使用している。ハニカム構造体は、多数の隔壁により区画されたセルを備え、セルは単一の方向に延びているため、ガスの流通に伴う圧力損失が小さいというメリットがある。また、ハニカム構造体は比表面積が非常に大きく、流通するガスに接触する面積が非常に大きいため、熱効率が高い。また、ハニカム構造体では隔壁も薄いために、蓄熱体の全容積が熱交換に寄与しやすいという利点がある。
【0007】
特許文献2のバーナ装置では、ハニカム構造の蓄熱体に円筒体が接続されており、円筒体の内部は仕切壁によって等分に仕切られることによって、周方向に複数の小通路が形成されている。一方、燃焼用空気を蓄熱体に供給するための空気ダクトの先端には空気ノズルが設けられており、この空気ノズルには円筒体における小通路の一つおきに対応する位置に開口部が形成されている。つまり、燃焼用空気は、空気ノズルの開口部と連通する小通路を介して空気ダクトから蓄熱体に供給され、開口部のない部分では小通路を介して蓄熱体から排気ダクトに排気ガスが流通する。従って、空気ダクトを間欠的に回転させることにより、燃焼用空気を蓄熱体に供給する小通路と、蓄熱体から排出される排気ガスを流通させる小通路が切り換えられる。
【0008】
ここで、特許文献2のバーナ装置では、円筒体を複数の小通路に区画している仕切壁と対応する位置で区画されている仕切板を、ハニカム構造の蓄熱体の端面に当てることが望ましいとされている。その理由は、仕切板を蓄熱体に当てることにより、蓄熱体が機械的に補強されると共に、円筒体の小通路を介して空気ノズルから蓄熱体に至るガスの通路が確実に形成されるため、と説明されている。
【0009】
しかしながら、特許文献2のバーナ装置では、蓄熱体の端面に仕切板を当てたとしても、“ハニカム構造の蓄熱体自体は一体もの”である。そのため、ハニカム構造の蓄熱体において、燃焼用空気を流通させる小通路と連通しているセルと、そのセルと隣接しているセルであって、排気ガスを流通させる小通路と連通しているセルとの間の隔壁に亀裂などの損傷が生じると、燃焼用空気と排気ガスとが混合してしまうという問題があった。上記のように、ハニカム構造体においてセルとセルとを区画している隔壁は非常に薄く、セラミックスは脆性材料であるため、亀裂などの損傷が生じるおそれをゼロとすることは現実的ではない。そのため、蓄熱体としてセラミックス製のハニカム構造体を使用していても、燃焼用空気と排気ガスとが混合してしまうおそれが低減されているシングル型リジェネバーナが要請されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実開昭62-908号公報
【文献】特開平8-233251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、蓄熱体としてセラミックス製のハニカム構造体を使用していても、ハニカム構造体の隔壁の損傷に起因して燃焼用空気と排気ガスとが混合するおそれが低減されているシングル型リジェネバーナ装置、これに使用される蓄熱体、及び、該蓄熱体の製造方法の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるシングル型リジェネバーナ装置は、
「本体外郭を貫通するバーナと、
該バーナによる燃料ガスの燃焼のための燃焼用空気を前記本体外郭の内部に供給するための給気口と、
前記燃料ガスの燃焼により高温となった排ガスを前記本体外郭から排出するための排気口と、
セラミックス製で、単一の方向に延びて列設された隔壁により区画された複数のセルを備えるハニカム構造を有するハニカムセグメントの複数が、それぞれの前記セルの軸方向が一致するように接着材で接着された蓄熱体であり、前記バーナを挿通させた状態で前記本体外郭に収容されている蓄熱体と、
前記蓄熱体に対して前記セルの軸方向に平行な軸周りに回転することにより、それぞれの前記ハニカムセグメントに流通させるガスを前記燃焼用空気と前記排ガスとの間で切り換える回転切り換え盤とを具備し、
それぞれの前記ハニカムセグメントの側周面では前記セルが開口することなく、前記隔壁の壁面によって前記側周面が形成されていると共に、
前記側周面のうち、少なくとも隣接している前記ハニカムセグメントとの境界面にケイ酸系ガラスがコーティングされていることにより、
隣接している前記ハニカムセグメントの境界部では、前記接着材の層を挟んで前記ケイ酸系ガラスの層が積層された前記隔壁が二重となっている」ものである。
【0013】
ハニカムセグメントを構成する「セラミックス」の材質は特に限定されるものではなく、例えば、炭化ケイ素質セラミックス、アルミナ質セラミックス、コージェライト質セラミックス、ムライト質セラミックス、チタン酸アルミニウム質セラミックスとすることができる。
【0014】
本構成では、回転切り換え盤が回転することにより、一つの蓄熱体を構成する複数のハニカムセグメントのそれぞれを流通するガスが、排ガスと燃焼用空気との間で切り換えられる。従って、それぞれのハニカムセグメントにおいて、排ガスを流通させた際に高温の排ガスから回収した熱で、次に流通させる燃焼用空気を予熱することができる。
【0015】
本構成では、複数のハニカムセグメントによって蓄熱体が構成されており、隣接しているハニカムセグメントの境界部では、接着材の層を挟んで隔壁が二重となっている。そのため、燃焼用空気を流通させるハニカムセグメントと排気ガスとを流通させるハニカムセグメントが隣接しており、仮に、何れかのハニカムセグメントにおいて境界面を構成する隔壁に損傷が生じたとしても、他方のハニカムセグメントにおいて境界面を構成する隔壁が残存しているため、燃焼用空気と排ガスとが混合することが有効に防止されている。
【0016】
また、仮に、ハニカムセグメントが押出成形されたハニカム構造体を複数に分割したものである場合、それぞれのハニカムセグメントにおいて側周面にセルが開口している。そのため、隣接しているハニカムセグメントの間に存在させた接着材の層がハニカムセグメントから剥離すると、その部分を介して隣接しているハニカムセグメント間で燃焼用空気と排ガスとが混合してしまう。これに対して、本構成のシングル型リジェネバーナ装置では、仮に、接着材の層がハニカムセグメントから剥離したとしても、隣接しているハニカムセグメントそれぞれが外周に隔壁を有しているため、燃焼用空気と排ガスとが混合することが有効に防止されている。
【0017】
加えて、ハニカムセグメントの側周面において、少なくとも隣接するハニカムセグメントとの境界面を構成している隔壁には、ケイ酸系ガラスがコーティングされている。これにより、隣接するハニカムセグメントの境界部は、隔壁-ケイ酸系ガラスの層-接着材の層-ケイ酸系ガラスの層-隔壁の五層構造となっている。そのため、燃焼用空気を流通させるハニカムセグメントと排気ガスを流通させるハニカムセグメントが隣接している場合に、万一、隣接するハニカムセグメントそれぞれにおいて境界面を構成している隔壁の双方に損傷が生じたとしても、隔壁間に三つの層が存在するため、燃焼用空気と排ガスとが混合することが、有効に防止されている。更に、この状態で万一、接着材の層がハニカムセグメントから剥離したとしても、隣接しているハニカムセグメントそれぞれにおいて境界面を構成する隔壁にはケイ酸系ガラスの層が積層されている。ケイ酸系ガラスの層は緻密で気密性の高い層であるため、それぞれのハニカムセグメントの隔壁に損傷が生じたとしても、損傷を介してガスが流出することがケイ酸系ガラスの層によって防止され、燃焼用空気と排ガスとが混合することが防止される。
【0018】
更に、ケイ酸系ガラスは、高温下で軟化し塑性変形する性質を有しているため、隔壁に損傷が生じたとしても、その伸展が抑制されると共に、セラミックス製であるハニカムセグメントの脆性的な破壊が抑制される。そのため、吸熱と放熱を繰り返す蓄熱体を構成するハニカムセグメントの耐熱衝撃性を、ケイ酸系ガラスの層によって高めることができる。
【0019】
ここで、ケイ酸系ガラスは、ハニカムセグメントの側周面において、少なくとも隣接するハニカムセグメントとの境界面を構成している隔壁にコーティングされるが、側周面の全面にわたりコーティングすることもできる。これにより、ハニカムセグメントの側周面を構成する隔壁に何れかの部分で損傷が生じたとしても、ハニカムセグメントのセル内を流通させるガスが漏れ出ることが防止される。また、ケイ酸系ガラスの層は緻密で気密性の高い層であるため、このような層が全側周面に積層されていることにより、ハニカムセグメントを構成するセラミックスが、炭化ケイ素など非酸化物セラミックスである場合であっても、その酸化が有効に防止される。
【0020】
本発明にかかる蓄熱体は、
「セラミックス製で、単一の方向に延びて列設された隔壁により区画された複数のセルを備えるハニカム構造を有するハニカムセグメントの複数が、それぞれの前記セルの軸方向が一致するように接着材で接着された蓄熱体であり、
該蓄熱体は、中心に前記セルより大きく前記セルの軸方向に貫通しているバーナ用貫通孔を備えていると共に、
それぞれの前記ハニカムセグメントの側周面では前記セルが開口することなく、前記隔壁の壁面によって前記側周面が形成されていると共に、
前記側周面のうち、少なくとも隣接している前記ハニカムセグメントとの境界面にケイ酸系ガラスがコーティングされていることにより、
隣接している前記ハニカムセグメントの境界部では、前記接着材の層を挟んで前記ケイ酸系ガラスの層が積層された前記隔壁が二重となっている」ものである。
【0021】
これは、上記のシングル型リジェネバーナ装置に使用される蓄熱体の構成である。
【0022】
本発明にかかる蓄熱体の製造方法は、
「押出成形により、セラミックス製で、単一の方向に延びて列設された隔壁により区画された複数のセルを備えるハニカム構造を有するハニカムセグメントであって、前記セルが側周面に開口することなく前記隔壁の壁面によって前記側周面が形成されているハニカムセグメントを成形し、
前記ハニカムセグメントの複数を焼成した後、それぞれの前記セルの軸方向が一致するように接着材で接着することにより、中心に前記セルより大きく前記セルの軸方向に貫通しているバーナ用貫通孔を備える蓄熱体を製造するに当たり、
前記ハニカムセグメントの接着の前に、前記側周面のうち少なくとも隣接させる前記ハニカムセグメントとの境界面となる面をケイ酸系ガラスの層でコーティングすることにより、
隣接する前記ハニカムセグメントの境界部では、前記接着材の層を挟んで前記ケイ酸系ガラスの層で積層された前記隔壁が二重となっている蓄熱体を製造する」ものである。
【0023】
これは、上記のシングル型リジェネバーナ装置に使用される蓄熱体の製造方法である。複数のハニカムセグメントは、それぞれ押出型を使用して押出成形することにより、セルが側周面に開口することなく隔壁の壁面によって全側周面が形成されているハニカムセグメントが成形される。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、蓄熱体としてセラミックス製のハニカム構造体を使用していても、ハニカム構造体の隔壁の損傷に起因して燃焼用空気と排気ガスとが混合するおそれが低減されているシングル型のリジェネバーナ装置、これに使用される蓄熱体、及び、該蓄熱体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1(a)はハニカムセグメントの斜視図であり、図1(b)は蓄熱体の斜視図であり、図1(c)は蓄熱体をセルの軸方向に直交する方向に切断した断面図であり、図1(d)はA-A間及びB-B間における拡大断面図である。
図2図2(a)~(c)は図1の蓄熱体の製造方法の説明図である。
図3図3(a)は本発明の一実施形態であるシングル型リジェネバーナ装置を内端側から見た斜視図であり、図3(b)は外端側から見た斜視図である。
図4図4(a)は図3のシングル型リジェネバーナ装置を本体外郭の中心軸を含む平面で切断した断面図であり、図4(b)は回転切り換え盤を回転させた状態で図4(a)と同じ平面で切断した断面図である。
図5図5は複数のハニカムセグメントに流通させるガスの切り換えを説明する図である。
図6図6は形状の異なるハニカムセグメントを使用した蓄熱体の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態であるシングル型リジェネバーナ装置1(以下、「バーナ装置1」と称する)、及び、これに使用される蓄熱体50について、図面を用いて具体的に説明する。
【0027】
バーナ装置1は、本体外郭10と、バーナ20と、給気口11と、排気口12と、蓄熱体50と、回転切り換え盤60と、回転機構と、バーナタイル80とを、主な構成とする。このバーナ装置1は、工業炉の内部雰囲気を加熱するために炉壁を貫通するように取り付けられるものである。ここでは、バーナ装置1及びその構成について、工業炉の内部側となる端部を内端E1、外部側となる端部を外端E2と称して説明する。
【0028】
まず、蓄熱体50について説明する。蓄熱体50は、同一構成のハニカムセグメント30の複数から形成されている。それぞれのハニカムセグメント30は、セラミックス製で、ハニカム構造を有している。ハニカム構造は、単一の方向に延びて列設された隔壁31により区画された複数のセル32を備える構造である。本実施形態では、ハニカムセグメント30を構成するセラミックスは、炭化ケイ素質セラミックスである。
【0029】
それぞれのハニカムセグメント30は、セル32の軸方向に直交する断面(以下、「横断面」と称する)の外形が扇形の柱状であり、複数のハニカムセグメント30を接着により一体化することにより、図1(b),(c)に示すように、中央にバーナ用貫通孔55を有し、複数のハニカムセグメント30が放射状に接着された円柱状の蓄熱体50、すなわち、横断面の外形が円形である蓄熱体50が製造される。バーナ用貫通孔55は、セル32より開口が大きく、円形孔である。
【0030】
従って、それぞれのハニカムセグメント30の側周面は、隣接させるハニカムセグメント30の境界面となる平面35(隣接させるハニカムセグメント30と対面する平面35)と、蓄熱体50におけるバーナ用貫通孔55の内周面を構成する曲面36と、蓄熱体50外周面を構成する曲面37によって構成されている。
【0031】
それぞれのハニカムセグメント30は、側周面を構成する何れの面(平面35、曲面36、曲面37)にもセル32が開口することなく、隔壁31の壁面によって側周面が形成されているものである。すなわち、セル32の横断面は、扇形をなす隔壁31によって外周が囲まれており、その内部で交差する隔壁31によってセル32が区画されている形状である。本実施形態では、扇形の中心角は60度である。セル32は、横断面における形状が正方形であるが、ハニカムセグメント30の横断面の外形が扇形であることから、外周に沿う部分のセル32の形状は台形や三角形である。ここでは、セル密度が100セル/平方インチである場合を例として図示している。なお、セルの形状及びセル密度は、ここで例示しているものに限定されるものではない。
【0032】
このようなハニカムセグメント30は、セラミックス材料に水及びバインダを添加し混練した混練物を、押出成形した後で、焼成することにより形成される。押出成形では、上記のようなハニカムセグメント30の横断面形状に対応した押出型を使用する。つまり、押出成形体を分割してハニカムセグメント30とするのではなく、ハニカムセグメント30を個々に押出成形により成形する。ハニカムセグメント30の成形体は、焼成によりハニカムセグメント30の焼結体とする。
【0033】
ハニカムセグメント30の焼結体について、側周面のうち少なくとも平面35に、ケイ酸系ガラスの層41を積層する。ケイ酸系ガラスの層41は、二酸化ケイ素を含有するコーティング剤を使用して形成する。
【0034】
コーティング剤は、二酸化ケイ素の供給源を、水などの液媒体やバインダと混合したスラリーである。二酸化ケイ素の供給源としては、シリカ粉末、ガラス粉末(ガラスフリット)、粘土を単独で使用し、或いは、複数を併用することができる。また、コーティング剤の原料には、上記の成分に加えて、他の成分を含有させることができる。酸化ホウ素(B)の添加により、ガラスの粘性(流動性)や耐久性を調整することができる。アルカリ金属の酸化物(NaO、KO、LiOなど)は、ガラスの粘性を低下させると共に、ガラス転移点を低下させる。アルカリ土類金属の酸化物(CaO、MgO、BaO、SrOなど)は、ガラスの化学的耐久性を高めると共に、ガラスの非結晶化・結晶化に影響を及ぼす。酸化アルミニウムは、ガラスの化学的耐久性を高める効果がある。
【0035】
ハニカムセグメント30の焼結体の側周面のうち少なくとも平面35にコーティング剤を塗布、スプレーすることによりコーティングした後、1000℃~1200℃の所定温度で所定時間加熱して二酸化ケイ素を溶融させ、その後、ガラス転移点より低い温度まで冷却する。これにより、緻密で気密性の高いケイ酸系ガラスの層41が形成される。
【0036】
少なくとも平面35にケイ酸系ガラスの層41が積層されたハニカムセグメント30(焼結体)の複数を、接着材で接着することにより、蓄熱体50が形成される。接着により隣接するセグメント30は、それぞれのセル32の方向が一致するように接着されるため、それぞれの平面35が対面する。接着されるハニカムセグメント30の個数は、蓄熱体50の横断面の外形が円形となるように設定され、ここでは六個である。
【0037】
接着材としては、セラミックス粉末に結合剤(可塑剤)としての粘土や水ガラスを配合し、水と混練した耐火モルタルを使用することができる。また、接着材の層42の弾性を高めるために、接着材にセラミックス繊維を混合してもよい。
【0038】
複数のハニカムセグメント30の接着により製造された蓄熱体50において、隣接しているハニカムセグメント30の境界部40では、図1(d)に拡大断面図を示すように、接着材の層42を挟んで、ケイ酸系ガラスの層41が積層された隔壁31が二重となっている。つまり、境界部40は、隔壁31-ケイ酸系ガラスの層41-接着材の層42-ケイ酸系ガラスの層41-隔壁31の五層構造である。
【0039】
蓄熱体50は、側周面の全面にわたりケイ酸系ガラスの層41が積層されたハニカムセグメント30を接着することにより、製造されるものとすることができる。この場合は、図2(a),(b)に示すように、各ハニカムセグメント30において、平面35、曲面36、及び曲面37から構成される側周面の全面にケイ酸系ガラスの層41を積層してから、図2(c)に示すように、ハニカムセグメント30同士を接着剤で接着して接着材の層42を形成する。なお、図2では、三つのセグメント30を接着する場合の二つの境界部40の構成のみを図示し、他は省略しているが、六個のセグメント30を接着する場合の五つの境界部40は何れも同じ構成である。
【0040】
次に、蓄熱体50以外のバーナ装置1の構成について説明する。本体外郭10は略円筒状であり、中途の位置でフランジ部13が外方に張り出している。このフランジ部13は、工業炉の炉壁に貫設されている孔部にバーナ装置1を挿通した状態で、バーナ装置1を炉壁に固定する際に使用される。本体外郭10には、蓄熱体50とバーナ20とが、蓄熱体50のバーナ用貫通孔55をバーナ20が挿通している状態で収容されている。略円筒状の本体外郭10の軸心を「中心軸X」と称すると、蓄熱体50は、セル32の軸方向が中心軸Xと平行となる向きで、本体外郭10に収容されている。
【0041】
フランジ部13より内端E1側で、本体外郭10には二重円筒状のバーナタイル80が嵌め込まれており、バーナタイル80の内端E1側は本体外郭10から露出している。バーナタイル80の内端E1は、中心孔部85及び複数の通気口83を除き閉じている。中心孔部85は中心軸Xの延長上でバーナタイル80及び本体外郭10を貫通しており、この中心孔部85の内端E1側の開口にバーナ20の内端E1側の端部が臨んでいる。複数の通気口83は、中心軸X周りに等角度間隔で設けられており、この角度は360度をハニカムセグメント30の数で除した角度である(本実施形態では、60度)。また、これらの通気口83の位置は、蓄熱体50を構成する複数のハニカムセグメント30それぞれの中心を、延長した線上となるように設定されている。
【0042】
フランジ部13より外端E2側で、本体外郭10からは中心軸Xに直交する方向に枝分かれするように、二つの排気口12が設けられている。二つの排気口12は、中心軸Xに対して線対称に設けられている。本体外郭10の外端E2は、バーナ20を挿入するための孔部15、給気口11、及び、後述の回転機構のために必要な孔部を除いて閉じている。バーナ20の外端E2は孔部15より外方に露出しており、この部分に燃料ガスを導入するための燃料導入口25が開口している。給気口11は、中心軸Xに平行な線上に設けられている。
【0043】
回転切り換え盤60は、本体外郭10の外端E2と蓄熱体50との間に配置されており、回転切り換え盤60の内端E1側の端部は、蓄熱体50の外端E2側の端部と対面している。回転切り換え盤60は、蓄熱体50を構成する複数のハニカムセグメント30それぞれに対応して区画壁61を有している。区画壁61は、回転切り換え盤60が中心軸X周りに一方向に回転することにより、二つの排気口12及び一つの給気口11が、複数のハニカムセグメント30のうちの一つにおけるセル内空間と連通するように、傾斜・屈曲させた壁体である。
【0044】
回転機構は、回転切り換え盤60の回転を駆動する機構であり、モータ71の出力軸71pの回転が伝達される軸72と、軸72と一体回転する歯車73と、歯車73に従動して回転する歯車74を主な構成とし、歯車74の回転軸と回転切り換え盤60は一体回転する。回転切り換え盤60は、中心孔部85の近傍で、軸受け79を介して本体外郭10に支持されている。
【0045】
次に、上記構成のバーナ装置1における動作を説明する。バーナ装置1を工業炉の炉壁に取り付け、燃料導入口25から燃料ガスを導入すると、給気口11から供給される燃焼用空気に含まれる酸素を支援性ガスとして燃料ガスが燃焼し、バーナ20の内端E1から火炎が放出される。このような燃料ガスの燃焼により、炉内の雰囲気は高温となる。
【0046】
回転切り換え盤60を、中心軸X周りに一方向に連続回転せると、二つの排気口12及び一つの給気口11のうちの何れかが、複数のハニカムセグメント30のうちの一つにおけるセル内空間と連通する。図4(a)は、排気口12の一つがハニカムセグメント30のうちの一つと連通しており、給気口11が閉じている場合を示している。この状態では、炉内で高温となった排ガスが、このハニカムセグメント30のセル内空間を流通して、排気口12から排出される。その際、ハニカムセグメント30の中心の延長上にある通気口83を介して、炉内雰囲気から排ガスが取り込まれる。そして、排ガスがハニカムセグメントのセル内空間を流通する過程で、このハニカムセグメント30は高温の排ガスから熱を回収し、高温となる。
【0047】
図4(b)は、回転切り換え盤60の回転により、給気口11が複数のハニカムセグメント30のうちの一つにおけるセル内空間と連通しており、排気口12が閉じている状態を示している。この状態では、給気口11を介して新たに供給される燃焼用空気が、このハニカムセグメント30のセル内空間を流通する。ハニカムセグメント30内を流通した燃焼用空気は、このハニカムセグメント30の中心の延長上にある通気口83から炉内雰囲気に供給され、バーナ20における燃料ガスの燃焼を支援する。このハニカムセグメント30は、先に排ガスを流通させた際に排熱を回収して高温となっているため、燃焼用空気を流通させる際に燃焼用空気を予熱する。
【0048】
このように回転切り換え盤60が回転することにより、一つの蓄熱体50を構成する複数のハニカムセグメント30のそれぞれを流通するガスは、排ガスと燃焼用空気との間で切り換えられ、排ガスから回収した熱で燃焼用空気が予熱される。具体的には、炉内で高温となった排ガスの温度が1000℃のとき、排熱をハニカムセグメント30に与えることにより、排気口12から排出される排ガスの温度は250℃となり、その分だけ燃焼用空気が予熱される。
【0049】
本実施形態のバーナ装置1では、回転切り換え盤60が12秒間で一回転する。そのため、蓄熱体50を流通するガスを排ガスと燃焼用空気との間で切り換える時間間隔は、一対のバーナを使用する従来のリジェネバーナシステムに比べて極めて短い。そのため、排ガスから回収した熱を、直後に燃焼用空気に与えることができる。
【0050】
本実施形態では、蓄熱体50が六個のハニカムセグメント30からなるが、回転切り換え盤60の回転による流通ガスの切り換えは、次のように行うことができる。すなわち、燃焼用空気を流通させる状態を「In」、排ガスを流通させる状態を「Out」、燃焼用空気及び排ガスの何れも流通させない状態を「N」で表すと、図5に示すように、六個のハニカムセグメント30が、In-In-Out-Out-Out-Nの順番で切り換えられるように、回転切り換え盤60における区画壁61の形状を設定することができる。切り換えをこのようにすると、回転切り換え盤60の回転一回あたり、蓄熱体50を介して供給される燃焼用空気と、蓄熱体50を介して排出される排ガスの体積は2対3となる。気体の圧力は体積と反比例するため、炉内雰囲気において燃焼用空気の供給により増加する圧力より、排ガスの排出により減じる圧力の方が大きく、一見するとアンバランスである。しかしながら、炉内の気体の圧力は、バーナ20への燃料ガスの供給によっても増加する。そのため、蓄熱体50に流通させる燃焼用空気の体積より排気ガスの体積を大きくすることにより、炉内に供給される気体と炉内から排出される気体の圧力とをバランスさせることができる。
【0051】
なお、上記のように燃焼用空気及び排ガスの何れも流通させない状態を介するとしても、それぞれのハニカムセグメント30には燃焼用空気と排ガスとを交互に流通させるため、本実施形態の回転切り換え盤60は「それぞれのハニカムセグメントに流通させるガスを燃焼用空気と排ガスとの間で切り換える」という本発明の要件を満たしている。
【0052】
以上のように、本実施形態のバーナ装置1では、複数のハニカムセグメント30によって蓄熱体50が構成されており、隣接しているハニカムセグメント30の境界部40では、接着材の層42を挟んで隔壁31が二重となっている。そのため、燃焼用空気を流通させるハニカムセグメント30と排気ガスを流通させるハニカムセグメント30が隣接しており、仮に、何れかのハニカムセグメント30において境界面(平面35)を構成する隔壁31に損傷が生じたとしても、他方のハニカムセグメント30においては境界面(平面35)を構成する隔壁31が残存しているため、燃焼用空気と排ガスとが混合することが有効に防止される。
【0053】
従来、円柱状のハニカム構造体を製造する場合、円形の押出型を使用して円柱状に押出成形していた。そのため、従来の当業者は、扇形の押出型でハニカムセグメントを成形してから、その複数を接着して円柱状のハニカム構造体を製造することを想到しなかった。この点で、扇形の押出型で個々のハニカムセグメント30を成形する本実施形態の製造方法は、非常に斬新である。
【0054】
また、仮に、個々のハニカムセグメントが、押出成形されたひとつのハニカム構造体を複数に分割したものである場合、それぞれのハニカムセグメントにおいては側周面にセルが開口している。そのため、隣接しているハニカムセグメントの間に存在している接着材の層がハニカムセグメントから剥離すると、その部分を介して隣接しているハニカムセグメント間で、燃焼用空気と排ガスとが混合してしまう。これに対して、本実施形態のバーナ装置1では、仮に、接着材の層42がハニカムセグメント30から剥離したとしても、隣接しているハニカムセグメント30それぞれが境界面に隔壁31を有しているため、燃焼用空気と排ガスとが混合することがない。
【0055】
加えて、ハニカムセグメント30の側周面において、少なくとも隣接するハニカムセグメントとの境界面である平面35には、ケイ酸系ガラスの層41が積層されている。これにより、隣接するハニカムセグメント30の境界部40は、隔壁31-ケイ酸系ガラスの層41-接着材の層42-ケイ酸系ガラスの層41-隔壁31の五層構造となっている。そのため、燃焼用空気を流通させるハニカムセグメント30と排気ガスを流通させるハニカムセグメント30が隣接している場合に、万一、隣接するハニカムセグメント30それぞれにおいて境界面である平面35を構成している隔壁の双方に損傷が生じたとしても、隔壁31間に三つの層が存在するため、燃焼用空気と排ガスとが混合することが、有効に防止されている。
【0056】
更に、この状態で万一、接着材の層42がハニカムセグメント30から剥離したとしても、隣接しているハニカムセグメント30それぞれにおいて境界面を構成する隔壁31である平面35にはケイ酸系ガラスの層41が積層されている。ケイ酸系ガラスの層41は緻密で気密性の高い層であるため、それぞれのハニカムセグメント30の隔壁31に生じた損傷を介してガスが流出することによって、燃焼用空気と排ガスとが混合することが、ケイ酸系ガラスの層42によって有効に防止される。
【0057】
更に、ケイ酸系ガラスは、高温下で軟化し塑性変形する性質を有しているため、隔壁31に損傷が生じたとしても、その伸展が抑制されると共に、セラミックス製であるハニカムセグメント30の脆性的な破壊が抑制される。そのため、吸熱と放熱を繰り返す蓄熱体50を構成するハニカムセグメント30の耐熱衝撃性を、ケイ酸系ガラスの層41によって高めることができる。
【0058】
また、本実施形態では、ハニカムセグメント30を構成するセラミックスは炭化ケイ素質セラミックスである。炭化ケイ素は熱伝導率が高いため、流通させるガスとの間の熱交換が速やかに行われる利点がある。すなわち、排ガスから速やかに熱を回収できると共に、新たに供給される燃焼用空気に速やかに熱を与えることができる。特に、本実施形態のバーナ装置1では、回転切り換え盤60の回転による流通ガスの切り換えが極めて短い時間間隔で行われるため、熱伝導率が高いことによるメリットは大きい。加えて、炭化ケイ素は熱膨張率が小さいため、吸熱と放熱との繰り返しを行う蓄熱体に不可避に作用する熱衝撃に対して、耐性が高い利点がある。
【0059】
炭化ケイ素は、上記のような利点を有する一方で、酸素を含む雰囲気で加熱されると酸化してしまう問題がある。図2を用いて説明したように、ケイ酸系ガラスの層41が各ハニカムセグメント30の全側周面に積層されている場合は、緻密で気密性の高いケイ酸系ガラスの層41の層によって、炭化ケイ素質セラミックスであるハニカムセグメント30の酸化を有効に防止することができる。また、ケイ酸系ガラスの層41が各ハニカムセグメント30の全側周面に積層されていることにより、ハニカムセグメント30の側周面を構成する隔壁31に損傷が生じたとしても、ハニカムセグメント30のセル32内を流通させるガスが、本体外郭10の内部に漏れ出ることが防止される。
【0060】
また、本実施形態では、ハニカムセグメント30の横断面の外形が扇形であり、その複数を放射状に接着した蓄熱体50横断面の外形が円形である。つまり、蓄熱体50は、中心に円形のバーナ用貫通孔55を有する円柱状である。これにより、ハニカムセグメント30の横断面と同方向の断面の外形が円形であるバーナ20をバーナ用貫通孔55に通した状態で、円筒状の本体外郭10に収容しやすい。本体外郭10の形状が円筒状であると製造がしやすいことに加え、円柱状の蓄熱体50との隙間を一定としやすく、その隙間に断熱材などを充填しやすい。また、蓄熱体50が円柱状であると、温度分布が生じにくい利点がある。
【0061】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0062】
例えば、上記では、一つの蓄熱体50が六個のハニカムセグメント30の接着により形成される場合を例示したが、一つの蓄熱体を構成するハニカムセグメントの数は、複数(二以上)であれば限定されない。一つの蓄熱体を構成するハニカムセグメントの数が奇数の場合、上述した理由により、回転切り換え盤の回転一回あたり、燃焼用空気を流通させるハニカムセグメントの数より排ガスを流通させるハニカムセグメントの数が多くなるように、回転切り換え盤における区画壁の形状を設定する。
【0063】
また、上記では、横断面の外形が扇形であるハニカムセグメント30の接着によって、横断面の外形が円形である蓄熱体50を形成する場合を例示した。蓄熱体及びハニカムセグメントの形状はこれに限定されず、例えば、図6に示すように、ハニカムセグメント30bの横断面の外形を、二等辺三角形の頂角が円弧状に切り欠かれた形状とし、これらの側周面のうち少なくとも隣接するハニカムセグメント30bの境界面にケイ酸系ガラスの層を積層した上で、これらを接着材の層を介して接着することによって、中心に円形のバーナ用貫通孔を有する多角柱状の蓄熱体を形成することもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 バーナ装置(シングル型リジェネバーナ装置)
10 本体外郭
11 給気口
12 排気口
20 バーナ
30,30b ハニカムセグメント
31 隔壁
32 セル
35 平面(境界面)
40 境界部
41 ケイ酸系ガラスの層
42 接着材の層
50 蓄熱体
55 バーナ用貫通孔
60 回転切り換え盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6