IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特許7507148太陽電池の製造方法、仕掛太陽電池基板、及び太陽電池
<>
  • 特許-太陽電池の製造方法、仕掛太陽電池基板、及び太陽電池 図1
  • 特許-太陽電池の製造方法、仕掛太陽電池基板、及び太陽電池 図2
  • 特許-太陽電池の製造方法、仕掛太陽電池基板、及び太陽電池 図3
  • 特許-太陽電池の製造方法、仕掛太陽電池基板、及び太陽電池 図4
  • 特許-太陽電池の製造方法、仕掛太陽電池基板、及び太陽電池 図5
  • 特許-太陽電池の製造方法、仕掛太陽電池基板、及び太陽電池 図6
  • 特許-太陽電池の製造方法、仕掛太陽電池基板、及び太陽電池 図7
  • 特許-太陽電池の製造方法、仕掛太陽電池基板、及び太陽電池 図8
  • 特許-太陽電池の製造方法、仕掛太陽電池基板、及び太陽電池 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法、仕掛太陽電池基板、及び太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0747 20120101AFI20240620BHJP
【FI】
H01L31/06 455
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021511381
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020011484
(87)【国際公開番号】W WO2020203227
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2019068106
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】阿部 祐介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 航
(72)【発明者】
【氏名】日野 将志
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-010916(JP,A)
【文献】特開2017-005253(JP,A)
【文献】特開2018-163988(JP,A)
【文献】国際公開第2015/060432(WO,A1)
【文献】特開2008-010866(JP,A)
【文献】特開2002-200599(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0358495(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の第1主面側に、一導電型半導体層、逆導電型半導体層、第1電極層、及び第2電極層を備え、前記半導体基板と前記第1電極層の間に前記一導電型半導体層が介在し、さらに前記半導体基板と前記第2電極層の間に前記逆導電型半導体層が介在する太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の第1主面側に前記逆導電型半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、
前記逆導電型半導体層上に酸化シリコン又は窒化シリコンを主成分とするリフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、
前記半導体基板を平面視したときに、一部が前記リフトオフ層と重なり部分をもつように前記一導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、
リフトオフ液で前記リフトオフ層を溶解することで、前記一導電型半導体層の前記重なり部分を除去するリフトオフ工程を含み、
前記リフトオフ層形成工程では、150℃以下の製膜温度で第1反応ガスを吹き付けて前記リフトオフ層を製膜する、太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記リフトオフ層上に保護層を製膜する保護層形成工程を含み、
前記保護層は、酸化シリコン又は窒化シリコンを主成分とし、前記リフトオフ層よりも密度が高い、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記半導体基板を基準として前記逆導電型半導体層の外側に所定の形状のレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、
エッチング液で前記逆導電型半導体層の一部を除去するエッチング工程と、
前記レジスト層を除去するレジスト層除去工程を含み、
前記レジスト層形成工程では、前記半導体基板を平面視したときに、前記逆導電型半導体層に前記レジスト層と重ならない非重畳部分があり、
前記エッチング工程では、前記逆導電型半導体層の前記非重畳部分の一部又は全部を除去する、請求項1又は2に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記リフトオフ層上に、酸化シリコンを主成分とする保護層を形成する保護層形成工程を含み、
前記保護層形成工程では、150℃以下の温度で第2反応ガスを吹き付けて前記保護層を製膜するものであり、
前記第2反応ガスは、シランガスと、二酸化炭素と、水素ガスを含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記第2反応ガスは、シランガスに対する水素ガスの流量比が50以上である、請求項4に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記保護層形成工程での前記保護層の製膜温度は、実質的に前記リフトオフ層形成工程での前記リフトオフ層の製膜温度以上であって、前記リフトオフ層形成工程での前記リフトオフ層の製膜温度との温度差が50℃以下である、請求項4又は5に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項7】
半導体基板の第1主面側に、一導電型半導体層、逆導電型半導体層、第1電極層、及び第2電極層を備え、前記半導体基板と前記第1電極層の間に前記一導電型半導体層が介在し、さらに前記半導体基板と前記第2電極層の間に前記逆導電型半導体層が介在する太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の第1主面側に前記逆導電型半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、
前記逆導電型半導体層上に酸化シリコン又は窒化シリコンを主成分とするリフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、
前記リフトオフ層上に、酸化シリコン又は窒化シリコンを主成分とし前記リフトオフ層よりも密度が高い保護層を製膜する保護層形成工程と、
前記半導体基板を平面視したときに、前記リフトオフ層と重なり部分をもつように前記一導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、
リフトオフ液で前記リフトオフ層を溶解することで、前記一導電型半導体層の前記重なり部分を除去するリフトオフ工程を含み、
前記リフトオフ工程は、前記保護層形成工程の以後に行うものであり、
前記保護層形成工程では、150℃以下の温度で第2反応ガスを吹き付けて前記保護層を製膜するものであり、
前記第2反応ガスは、シランガスと、二酸化炭素と、水素ガスとを含むものであって、シランガスに対する水素ガスの流量比が50以上である、太陽電池の製造方法。
【請求項8】
半導体基板の第1主面側に、一導電型半導体層と、逆導電型半導体層を備えた仕掛太陽電池基板であって、
前記半導体基板を基準として、前記逆導電型半導体層の外側にリフトオフ層を有し、
前記リフトオフ層は、前記半導体基板を基準として、外側に前記一導電型半導体層が積層されており、
前記一導電型半導体層は、前記半導体基板を平面視したときに前記リフトオフ層と重なり部分があり、
前記リフトオフ層は、リフトオフ液に浸すことで、溶解して前記一導電型半導体層の前記重なり部分を除去可能であり、
前記リフトオフ層は、酸化シリコンを主成分とし、2重量%のフッ化水素酸に浸したときのエッチング速度が5nm/s以上である、仕掛太陽電池基板。
【請求項9】
前記リフトオフ層上に保護層を有し、
前記保護層は、酸化シリコン又は窒化シリコンを主成分とし、前記リフトオフ層よりも密度が高い、請求項8に記載の仕掛太陽電池基板。
【請求項10】
前記リフトオフ層上に保護層を有し、
前記保護層は、酸化シリコンを主成分とし、屈折率が前記リフトオフ層の屈折率よりも高い、請求項8又は9に記載の仕掛太陽電池基板。
【請求項11】
半導体基板の第1主面側に、導電型半導体層を備えた仕掛太陽電池基板であって、
前記半導体基板を基準として、前記導電型半導体層の外側にリフトオフ層と保護層がこの順に積層されており、
前記リフトオフ層は、酸化シリコンを主成分とし、2重量%のフッ化水素酸に浸したときのエッチング速度が5nm/s以上であり、
前記保護層は、酸化シリコン又は窒化シリコンを主成分とし、前記リフトオフ層よりも密度が高い、仕掛太陽電池基板。
【請求項12】
前記半導体基板の第2主面側の最表面に前記リフトオフ層よりも2重量%のフッ化水素酸に浸したときのエッチング速度が遅い第2保護層が被覆されている、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の仕掛太陽電池基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の製造方法、仕掛太陽電池基板、及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板の裏面側にのみ電極層を設けたバックコンタクト型の太陽電池が開発されている(特許文献1)。
このバックコンタクト型の太陽電池は、一対の電極層間や異なる導電型の半導体層同士が近い位置に配されるため、高精度で一対の電極層や異なる導電型の半導体層をパターニングしなければならない。
【0003】
そこで、高精度にパターニングする方法として、特許文献1には、リフトオフを利用して半導体層をパターニングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-120863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、太陽電池の製造コストを下げるためには、大量の太陽電池を同時に形成する必要がある。そこで、本発明者は、特許文献1のリフトオフの方法を参考に、大面積(縦1200mm×横1000mm)のプラズマCVD装置で複数の基板に対して同時に酸化シリコン層でリフトオフ層を製膜し、バックコンタクト型の太陽電池を試作した。
しかしながら、試作したリフトオフの方法では、小面積で製膜する際には良好な品質の太陽電池が得られるものの、大面積で製膜する際に、基板間での膜厚分布が大きくなり、品質に偏りが発生し、歩留まりが悪いという問題が生じていた。
【0006】
そこで、本発明は、従来に比べて大量生産が容易で、歩留まりが良好な太陽電池の製造方法及び太陽電池を提供することを目的とする。
本発明は、太陽電池を製造するにあたって、従来に比べて、効率良くリフトオフでき、製造効率を向上できる仕掛太陽電池基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、半導体基板の第1主面側に、一導電型半導体層、逆導電型半導体層、第1電極層、及び第2電極層を備え、前記半導体基板と前記第1電極層の間に前記一導電型半導体層が介在し、さらに前記半導体基板と前記第2電極層の間に前記逆導電型半導体層が介在する太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の第1主面側に前記逆導電型半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、前記逆導電型半導体層上に酸化シリコン又は窒化シリコンを主成分とするリフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、前記半導体基板を平面視したときに、一部が前記リフトオフ層と重なり部分をもつように前記一導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、リフトオフ液で前記リフトオフ層を溶解することで、前記一導電型半導体層の前記重なり部分を除去するリフトオフ工程を含み、前記リフトオフ層形成工程では、150℃以下の製膜温度で第1反応ガスを吹き付けて前記リフトオフ層を製膜する、太陽電池の製造方法である。
【0008】
ここでいう「一導電型」とはn型又はp型であることをいい、「逆導電型」とは一導電型とは逆の導電型、すなわち、一導電型がn型の場合にはp型をいい、一導電型がp型の場合にはn型をいう。
ここでいう「主成分」とは、全成分の50%以上を占める成分をいう。
【0009】
本様相によれば、リフトオフ層をリフトオフ液で溶解することで一導電型半導体層のパターニングが可能であるため、フォトレジストでパターニングする従来の方法に比べて、低コストで製造できる。
本様相によれば、150℃以下の製膜温度で酸化シリコン又は窒化シリコンを主成分とするリフトオフ層を形成するので、たとえ大面積の製膜装置であっても面内の膜厚分布が均一で密度が粗いリフトオフ層を形成できる。そのため、大量生産が可能であるとともに、リフトオフ液によるエッチング速度が大きいリフトオフ層を容易に製膜できる。
【0010】
好ましい様相は、前記リフトオフ層上に保護層を製膜する保護層形成工程を含み、前記保護層は、酸化シリコン又は窒化シリコンを主成分とし、前記リフトオフ層よりも密度が高いことである。
【0011】
好ましい様相は、前記半導体基板を基準として前記逆導電型半導体層の外側に所定の形状のレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、エッチング液で前記逆導電型半導体層の一部を除去するエッチング工程と、前記レジスト層を除去するレジスト層除去工程を含み、前記レジスト層形成工程では、前記半導体基板を平面視したときに、前記逆導電型半導体層に前記レジスト層と重ならない非重畳部分があり、前記エッチング工程では、前記逆導電型半導体層の前記非重畳部分の一部又は全部を除去することである。
【0012】
ところで、通常、高温(例えば、180℃以上)で酸化シリコン層を製膜する場合、原料ガスを水素希釈すると、膜中に取り込まれる水素原子が増加する。そのため、本発明者は、低温(150℃以下)で製膜した場合にも、原料ガスを水素希釈すると、疎な膜が形成されると考えていた。しかしながら、実際に、水素希釈した原料ガスで酸化シリコン層を低温製膜すると、予想に反して緻密な膜が形成されていた。
【0013】
この結果から導き出される好ましい様相は、前記リフトオフ層上に、酸化シリコンを主成分とする保護層を形成する保護層形成工程を含み、前記保護層形成工程では、150℃以下の温度で第2反応ガスを吹き付けて前記保護層を製膜するものであり、前記第2反応ガスは、シランガスと、二酸化炭素と、水素ガスを含むことである。
【0014】
本様相によれば、水素ガスで希釈された第2反応ガスを用いて低温で保護層を製膜するため、容易に緻密な保護層を形成できる。
【0015】
好ましい様相は、前記第2反応ガスは、シランガスに対する水素ガスの流量比が50以上である。
【0016】
ところで、同一の製膜室で複数の層を連続的に製膜する場合、高温条件(例えば、180℃以上)で製膜した後に、低温条件(例えば、150℃以下)で製膜すると、製膜室の温度が低温条件に達するまで、冷却する必要がある。低温条件で製膜した後に高温条件で製膜する場合も同様に、製膜室の温度が高温条件に達するまで加熱する必要がある。
ここで、製膜装置は、一般的に、高温条件から低温条件まで降温する時間に比べて、低温条件から高温条件に昇温する時間は短い。
【0017】
そこで、好ましい様相は、前記保護層形成工程での前記保護層の製膜温度は、実質的に前記リフトオフ層形成工程での前記リフトオフ層の製膜温度以上であって、前記リフトオフ層形成工程での前記リフトオフ層の製膜温度との温度差が50℃以下である。
【0018】
ここでいう「保護層の製膜温度が実質的にリフトオフ層の製膜温度以上である」とは、外気や装置の性能等による製膜時の製膜温度の僅かな温度変動(例えば、3℃)を許容するものである。例えば、保護層の製膜温度が(リフトオフ層の製膜温度-3℃)以上となる場合も含む。
【0019】
本様相によれば、効率良く連続的に製膜できる。
【0020】
本発明の一つの様相は、半導体基板の第1主面側に、一導電型半導体層、逆導電型半導体層、第1電極層、及び第2電極層を備え、前記半導体基板と前記第1電極層の間に前記一導電型半導体層が介在し、さらに前記半導体基板と前記第2電極層の間に前記逆導電型半導体層が介在する太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の第1主面側に前記逆導電型半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、前記逆導電型半導体層上に酸化シリコン又は窒化シリコンを主成分とするリフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、前記リフトオフ層上に、酸化シリコン又は窒化シリコンを主成分とし前記リフトオフ層よりも密度が高い保護層を製膜する保護層形成工程と、前記半導体基板を平面視したときに、前記リフトオフ層と重なり部分をもつように前記一導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、リフトオフ液で前記リフトオフ層を溶解することで、前記一導電型半導体層の前記重なり部分を除去するリフトオフ工程を含み、前記リフトオフ工程は、前記保護層形成工程の以後に行うものであり、前記保護層形成工程では、150℃以下の温度で第2反応ガスを吹き付けて前記保護層を製膜するものであり、前記第2反応ガスは、シランガスと、二酸化炭素と、水素ガスとを含むものであって、シランガスに対する水素ガスの流量比が50以上である、太陽電池の製造方法である。
【0021】
本様相によれば、リフトオフ層をリフトオフ液で溶解することで一導電型半導体層のパターニングが可能であるため、フォトレジストでパターニングする従来の方法に比べて、製造工程を簡略化でき、低コストで製造できる。
本様相によれば、保護層形成工程において、150℃以下でかつ水素ガスでシランガスが希釈された第2反応ガスで保護層を製膜するため、緻密な保護層を形成できる。
【0022】
ここで、近年の太陽電池の製造工程では、一拠点のみで製造されるのではなく、多拠点で製造されることがある。すなわち、一の拠点で太陽電池の仕掛品たる仕掛太陽電池基板を製造し、他の拠点で当該仕掛太陽電池基板を用いて太陽電池を製造する場合がある。そのため、完成品の構造だけではなく、仕掛品たる仕掛太陽電池基板の構造も太陽電池の量産化には重要である。
【0023】
本発明の一つの様相は、半導体基板の第1主面側に、一導電型半導体層と、逆導電型半導体層を備えた仕掛太陽電池基板であって、前記半導体基板を基準として、前記逆導電型半導体層の外側にリフトオフ層を有し、前記リフトオフ層は、前記半導体基板を基準として、外側に前記一導電型半導体層が積層されており、前記一導電型半導体層は、前記半導体基板を平面視したときに前記リフトオフ層と重なり部分があり、前記リフトオフ層は、リフトオフ液に浸すことで、溶解して前記一導電型半導体層の前記重なり部分を除去可能であり、前記リフトオフ層は、酸化シリコンを主成分とし、2重量%のフッ化水素酸に浸したときのエッチング速度が5nm/s以上である、仕掛太陽電池基板である。
【0024】
本様相によれば、効率良くリフトオフでき、製造効率を向上できる。
【0025】
好ましい様相は、前記リフトオフ層上に保護層を有し、前記保護層は、酸化シリコン又は窒化シリコンを主成分とし、前記リフトオフ層よりも密度が高いことである。
【0026】
ところで、本発明者が検討を重ねた結果、以下のことを発見した。すなわち、酸化シリコンは、密度が大きくなると屈折率が大きくなり、密度が小さくなると屈折率が小さくなる傾向がある。また、酸化シリコンは、密度が大きくなると、フッ化水素酸におけるエッチング速度が大きくなり、密度が小さくなると、フッ化水素酸におけるエッチング速度が小さくなる傾向がある。
そこで、本発明者は、酸化シリコンにおいて、屈折率とフッ化水素酸におけるエッチング速度の相関関係を検討したところ、屈折率とフッ化水素酸におけるエッチング速度の間に一定の相関がみられ、ある範囲の屈折率にすることで良好にエッチングされ、効率良くリフトオフできることを発見した。
【0027】
好ましい様相は、前記リフトオフ層上に保護層を有し、前記保護層は、酸化シリコンを主成分とし、屈折率が前記リフトオフ層の屈折率よりも高いことである。
【0028】
本様相によれば、保護層のエッチング速度をリフトオフ層のエッチング速度よりも遅くできる。
【0029】
本発明の一つの様相は、半導体基板の第1主面側に、導電型半導体層を備えた仕掛太陽電池基板であって、前記半導体基板を基準として、前記導電型半導体層の外側にリフトオフ層と保護層がこの順に積層されており、前記リフトオフ層は、酸化シリコンを主成分とし、2重量%のフッ化水素酸に浸したときのエッチング速度が5nm/s以上であり、前記保護層は、酸化シリコン又は窒化シリコンを主成分とし、前記リフトオフ層よりも密度が高い、仕掛太陽電池基板である。
【0030】
本様相によれば、効率良くリフトオフでき、製造効率を向上できる。
【0031】
好ましい様相は、前記半導体基板の第2主面側の最表面に前記リフトオフ層よりも2重量%のフッ化水素酸に浸したときのエッチング速度が遅い第2保護層が被覆されていることである。
【0032】
また、上記様相は、前記半導体基板の第2主面側の最表面に前記リフトオフ層よりも前記リフトオフ液に対する耐性を有する第2保護層が被覆されていてもよい。
【0033】
本発明の一つの様相は、半導体基板の第1主面側に、一導電型半導体層、逆導電型半導体層、第1電極層、及び第2電極層を備え、前記半導体基板と前記第1電極層の間に前記一導電型半導体層が介在し、さらに前記半導体基板と前記第2電極層の間に前記逆導電型半導体層が介在する太陽電池であって、真性半導体層を有し、前記真性半導体層は、前記半導体基板と、前記一導電型半導体層及び前記逆導電型半導体層とのそれぞれの間に介在し、さらに前記半導体基板の前記第1主面の広がり方向において、前記一導電型半導体層と前記逆導電型半導体層の間にも介在しており、前記真性半導体層は、前記一導電型半導体層と前記逆導電型半導体層の間から前記第1主面に対する直交方向に露出している、太陽電池である。
【0034】
本様相によれば、電極層間や導電型が異なる半導体層の接触を真性半導体層で防止できるため、安全性に優れた太陽電池となる。
本様相によれば、上記した様相の製造方法で形成できるため、大量生産が容易である。
【0035】
好ましい様相は、前記真性半導体層は、第1真性層と、第2真性層で構成されており、前記第1真性層は、前記半導体基板と前記逆導電型半導体層の間に介在しており、前記第2真性層は、前記半導体基板と前記一導電型半導体層の間に介在しており、前記第2真性層は、前記半導体基板を基準として、前記逆導電型半導体層の外側を覆っていないことである。
【0036】
より好ましい様相は、前記第2真性層は、前記半導体基板を基準として、前記逆導電型半導体層の外側面と面一又は外側面よりも内側に位置していることである。
【発明の効果】
【0037】
本発明の太陽電池の製造方法及び太陽電池によれば、従来に比べて大量生産が容易で歩留まりが良好となる。
本発明の仕掛太陽電池基板によれば、太陽電池を製造するにあたって、従来に比べて、効率良くリフトオフでき、製造効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1実施形態の太陽電池を模式的に示した斜視図である。
図2図1の太陽電池のA-A断面図であり、理解を容易にするためにハッチングを省略している。
図3図1の太陽電池の説明図であり、太陽電池から第1電極層と第2電極層を分解した分解斜視図である。
図4図1の太陽電池の製造方法の説明図であり、(a)は第1真性半導体層形成工程における断面図を表し、(b)は第1半導体層形成工程における断面図を表す。なお、各工程において製膜した層のみをハッチングで示し、残りのハッチングを省略している。
図5図1の太陽電池の製造方法の図4の各工程に続く工程の説明図であり、(a)はリフトオフ層形成工程における断面図を表し、(b)は第1保護層形成工程における断面図を表し、(c)は第2保護層形成工程における断面図を表す。なお、各工程において製膜した層のみをハッチングで示し、残りのハッチングを省略している。
図6図1の太陽電池の製造方法の図5の各工程に続く工程の説明図であり、(a)はレジスト層形成工程における断面図を表し、(b)はエッチング工程における断面図を表し、(c)はレジスト層除去工程における断面図を表す。なお、各工程において製膜した層のみをハッチングで示し、残りのハッチングを省略している。
図7図1の太陽電池の製造方法の図6の各工程に続く工程の説明図であり、(a)は第2真性半導体層形成工程における断面図を表し、(b)は第2半導体層形成工程における断面図を表し、(c)はリフトオフ工程における断面図を表す。なお、各工程において製膜した層のみをハッチングで示し、残りのハッチングを省略している。
図8図1の太陽電池の製造方法の図7の各工程に続く工程の説明図であり、(a)は反射防止層形成工程における断面図を表し、(b)は透明電極層形成工程における断面図を表し、(c)は金属電極層形成工程における断面図を表す。なお、各工程において製膜した層のみをハッチングで示し、残りのハッチングを省略している。
図9】本発明の実施例及び比較例の測定に使用するトレーの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、表裏については、受光面側を表、その反対側を裏とする。
【0040】
本発明の第1実施形態の太陽電池1は、バックコンタクト型の太陽電池であり、図1のように、支持基板となる半導体基板5の裏側主面26(第1主面)側に一対の電極層2,3が形成され、表側主面25(第2主面)側には電極層2,3が形成されていないものである。本実施形態の太陽電池1は、ヘテロ接合型の太陽電池でもある。
【0041】
太陽電池1は、図1のように、半導体基板5の表側主面25側に第1真性半導体層6及び反射防止層7がこの順に積層されている。
太陽電池1は、半導体基板5の裏側主面26側の一部分に、第2真性半導体層10(第2真性層)、一導電型半導体層11、第1電極層2が積層されており、半導体基板5の裏側主面26側の他の部分に、第3真性半導体層15(第1真性層)、逆導電型半導体層16、第2電極層3が積層されている。
太陽電池1は、図2のように、縦方向Yにおいて、一導電型半導体層11と逆導電型半導体層16の間に第2真性半導体層10が介在している。
【0042】
太陽電池1は、図1のように、略四角形状であり、互いに直交する四辺を有している。すなわち、太陽電池1は、横方向Xに延びる横辺と、縦方向Yに延びる縦辺を備えている。
【0043】
電極層2,3は、図3のように、半導体層11,16から電気を取り出す集電極であり、裏面視したときに、ともに櫛状であり、互いに入り組んだ形状となっている。
すなわち、第1電極層2は、第1バスバー電極部40と第1フィンガー電極部41を備えており、第1フィンガー電極部41は、第1バスバー電極部40から第1バスバー電極部40に対して直交する方向に延びている。
同様に第2電極層3は、第2バスバー電極部45と第2フィンガー電極部46を備えており、第2フィンガー電極部46は、第2バスバー電極部45から第2バスバー電極部45に対して直交する方向に延びている。
【0044】
バスバー電極部40,45は、裏面視したときに、縦辺に沿って縦方向Yに延び、横方向Xに互いに平行となっている。
フィンガー電極部41,46は、横方向Xに互いに入り組んで延びている。
すなわち、第1フィンガー電極部41は、第1バスバー電極部40から第2バスバー電極部45に向かって横方向Xに直線状に延び、第2フィンガー電極部46は、第2バスバー電極部45から第1バスバー電極部40に向かって横方向Xに直線状に延びている。フィンガー電極部41,46は、縦方向Yに交互に並んでいる。
【0045】
電極層2,3は、図2のように、半導体基板5側から順に透明電極層20,21と、金属電極層22,23が積層した多層構造となっている。なお、電極層2,3は、金属電極層22,23のみの単層構造であってもよいし、透明電極層20,21のみの単層構造であってもよい。
【0046】
半導体層11,16は、図3のように、電極層2,3の下地をなし、裏面視したときに、電極層2,3と同様、ともに櫛状であって、互いに入り組んだ形状となっている。
裏面視したときに、一導電型半導体層11と逆導電型半導体層16の間には、蛇行した分離溝35が形成されており、一導電型半導体層11の下地となる第2真性半導体層10が分離溝35に充填されている。すなわち、一導電型半導体層11と逆導電型半導体層16は、半導体基板5の広がり方向において第2真性半導体層10によって電気的に絶縁されている。
第2真性半導体層10は、一導電型半導体層11と逆導電型半導体層16の間から厚み方向(半導体基板5の裏側主面26に対する直交方向)に露出している。すなわち、一導電型半導体層11は、半導体基板5の厚み方向において逆導電型半導体層16と重なっておらず、逆導電型半導体層16も一導電型半導体層11と重なっていない。
【0047】
続いて、本実施形態の太陽電池1の製造方法について説明する。なお、従来と同様のものについては、説明を省略する。
【0048】
本実施形態の太陽電池1は、一又は複数の製造拠点で製造するものである。
本実施形態の太陽電池1は、第1仕掛太陽電池基板99及び第2仕掛太陽電池基板100を経て、製造されるものである。
【0049】
まず、図4(a)のように、プラズマCVD装置によって、半導体基板5の表側主面25上に第1真性半導体層6を製膜し、裏側主面26上に第3真性半導体層15を製膜する(第1真性半導体形成工程)。
【0050】
続いて、図4(b)のように、上記工程と同一又は異なるプラズマCVD装置によって、第3真性半導体層15上に逆導電型半導体層16を製膜する(第1半導体層形成工程)。
【0051】
続いて、図5(a)のように、上記工程と同一又は異なるプラズマCVD装置によって、逆導電型半導体層16上に第1反応ガスを吹き付けてリフトオフ層50を製膜する(リフトオフ層形成工程)。
【0052】
リフトオフ層形成工程において製膜されるリフトオフ層50の膜厚は、10nm以上150nm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、後述するリフトオフ用エッチング液が含浸しやすく、リフトオフしやすい。
また、このときの製膜条件としては、以下の条件を満たすことが好ましい。
基板温度(製膜温度)は、150℃以下であり、100℃以上140℃以下であることが好ましい。
圧力は、180Pa以上220Pa以下であることが好ましい。
パワー密度は、0.01W/cm2以上1.00W/cm2以下であることが好ましい。
第1反応ガスの成分は、シランガス(SiH4)と、二酸化炭素(CO2)を含み、SiH4に対するCO2の流量比(SiH4の流量を1としたときのCO2の流量比)が10以上400以下である好ましい。
リフトオフ層50は、半導体基板5を平面視したときに、逆導電型半導体層16の全体と重なるように製膜されていることが好ましい。
リフトオフ層50は、半導体基板5を平面視したときに、半導体基板5の面積の90%以上の範囲で製膜されていることが好ましい。
【0053】
続いて、図5(b)のように、リフトオフ層形成工程から連続して同じプラズマCVD装置の製膜室内において、リフトオフ層50上に第2反応ガスを吹き付けて第1保護層51を製膜する(第1保護層形成工程)。
【0054】
第1保護層形成工程で製膜される第1保護層51の膜厚は、リフトオフ層50の膜厚よりも厚く、200nm以上400nm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、後述するレジスト除去溶液でリフトオフ層50が溶解することを防止できる。
また、このときの製膜条件としては、以下の条件を満たすことが好ましい。
基板温度(製膜温度)は、150℃以下であり、100℃以上140℃以下であることが好ましい。
第1保護層51の製膜時の製膜温度は、実質的にリフトオフ層50の製膜温度以上であることが好ましい。
また、第1保護層51の製膜時の製膜温度は、リフトオフ層50の製膜時の製膜温度との温度差が50℃以下であることが好ましく、20℃以下であることがより好ましく、5℃以下であることが特に好ましい。
この範囲であれば、速やかに昇温できるため、同一のプラズマCVD装置の製膜室内で連続的に製膜できる。
圧力は、180Pa以上220Pa以下であることが好ましい。
パワー密度は、0.01W/cm2以上1.00W/cm2以下であることが好ましい。
第2反応ガスは、シランガス(SiH4)と、二酸化炭素(CO2)と、水素ガス(H2)を含み、SiH4に対するCO2の流量比(SiH4を1としたときのCO2の流量比)が1以上100以下であり、SiH4に対するH2の流量比(SiH4を1としたときのH2の流量比)が50以上300以下であること好ましい。
この範囲であれば、緻密な第1保護層51を形成できる。
第1保護層51は、半導体基板5を平面視したときに、リフトオフ層50の全体と重なるように製膜されていることが好ましい。
第1保護層51は、半導体基板5を平面視したときに、半導体基板5の面積の90%以上の範囲で製膜されていることが好ましい。
【0055】
続いて、図5(c)のように、リフトオフ層形成工程から連続して同じプラズマCVD装置の製膜室内において、第1真性半導体層6上に第3反応ガスを吹き付けて第2保護層52を製膜する(第2保護層形成工程)。
すなわち、第2保護層形成工程では、表側の最表面に第2保護層52を製膜し、第1仕掛太陽電池基板99が形成される。
【0056】
第2保護層形成工程で製膜される第2保護層52の膜厚は、リフトオフ層50の膜厚よりも厚く、10nm以上200nm以下であることが好ましい。
また、このときの製膜条件としては、以下の条件を満たすことが好ましい。
基板温度(製膜温度)は、150℃以下であり、100℃以上140℃以下であることが好ましい。
第2保護層52の製膜時の製膜温度は、実質的にリフトオフ層50の製膜温度以上であることが好ましい。
第2保護層52の製膜時の製膜温度は、第1保護層51の製膜時の製膜温度との温度差が50℃以下であることが好ましく、20℃以下であることがより好ましく、5℃以下であることが特に好ましい。
この範囲であれば、速やかに温度調節ができるため、同一のプラズマCVD装置の製膜室内で連続的に製膜できる。
圧力は、180Pa以上220Pa以下であることが好ましい。
パワー密度は、0.01W/cm2以上1.00W/cm2以下であることが好ましい。
第3反応ガスは、シランガス(SiH4)と、二酸化炭素(CO2)と、水素ガス(H2)を含み、SiH4に対するCO2の流量比(SiH4を1としたときのCO2の流量比)が1以上400以下であり、SiH4に対するH2の流量比(SiH4を1としたときのH2の流量比)が0超過300以下であること好ましい。
第2保護層52は、半導体基板5を平面視したときに、半導体基板5の面積の90%以上の範囲で製膜されていることが好ましい。
【0057】
そして、必要に応じて第1仕掛太陽電池基板99を別の拠点(例えば、別の建物や別の部屋)に移し、図6(a)のように、スクリーン印刷等により、第1仕掛太陽電池基板99の第1保護層51上に櫛状にパターニングされた液体状のレジスト材料を塗布し、さらに第2保護層52上に液体状のレジスト材料を塗布し、両面にレジスト材料が塗布された基板に熱処理を施し、乾燥させてレジスト層55,56を形成する(レジスト層形成工程)。
【0058】
このとき、第1保護層51上には、レジスト材料が塗布されレジスト層55が形成された部分(レジスト形成領域60)と、レジスト材料が塗布されずレジスト層55が形成されていない部分(レジスト非形成領域61)が存在している。すなわち、レジスト層形成工程後の基板には、厚み方向において、逆導電型半導体層16上にレジスト層55が重畳した重畳部分(レジスト形成領域60)と、レジスト層55が重畳していない非重畳部分(レジスト非形成領域61)がある。
【0059】
図6(b)のように、レジスト層55,56が形成された基板をレジスト用エッチング液(エッチング液)に浸し、レジスト層55が形成されていない非重畳部分(レジスト非形成領域61)の一部又は全部において、第3真性半導体層15、逆導電型半導体層16、リフトオフ層50、及び第1保護層51を除去する(エッチング工程)。
【0060】
このとき使用されるレジスト用エッチング液としては、例えば、フッ化水素酸と硝酸との混合溶液(フッ硝酸)やオゾンとフッ化水素酸を含む溶液などが使用できる。
このとき、半導体基板5は、レジスト非形成領域61において、裏側主面26側の層が剥離した剥離領域62が形成されている。
【0061】
図6(c)のように、レジスト除去溶液により、レジスト層55,56を除去し、必要に応じて基板をフッ化水素酸で洗浄する(レジスト層除去工程)。
【0062】
このとき、リフトオフ層50は、第1保護層51によって保護されているため、実質的に溶解せず、レジスト層55,56のみが剥離される。また、基材をフッ化水素酸で洗浄してもリフトオフ層50が実質的に溶解しない。
【0063】
続いて、図7(a)のように、プラズマCVD装置によって、裏側主面全面に第2真性半導体層10を製膜する(第2真性半導体層形成工程)。
すなわち、第2真性半導体層形成工程では、半導体基板5を基準としてリフトオフ層50の外側であって、かつ、半導体基板5を平面視したときに、リフトオフ層50と重なり部分をもつように第2真性半導体層10を製膜する。
【0064】
このとき、第2真性半導体層10は、図7(a)のように、一部が第1保護層51a(51)上から隣接する半導体基板5の剥離領域62a(62)に跨って形成されており、剥離領域62aから隣接する第1保護層51b上に跨って形成されている。
【0065】
図7(b)のように、同一又は異なるプラズマCVD装置によって第2真性半導体層10上に一導電型半導体層11を製膜し、第2仕掛太陽電池基板100を形成する(第2半導体層形成工程)。
すなわち、第2半導体層形成工程では、半導体基板5を基準として第2真性半導体層10の外側であって、かつ、半導体基板5を平面視したときに、リフトオフ層50と重なり部分をもつように一導電型半導体層11を製膜する。
【0066】
必要に応じて第2仕掛太陽電池基板100を別の拠点(例えば、別の建物や別の部屋)に移し、第2仕掛太陽電池基板100をリフトオフ用エッチング液(リフトオフ液)に浸し、図7(c)のように、リフトオフ層50を溶解してリフトオフし、リフトオフ層50上の層を除去する(リフトオフ工程)。
【0067】
リフトオフ工程で使用されるリフトオフ用エッチング液としては、例えば、フッ化水素酸などが使用できる。
このとき、第2仕掛太陽電池基板100は、半導体基板5の裏側主面26側では、リフトオフ層50と接する層全てが溶解又は剥離し、半導体基板5の表側主面25側では第2保護層52も溶解又は第1真性半導体層6から剥離する。
また、このとき、第2真性半導体層10は、リフトオフ層50の被覆部分よりも内側部分のみが残り、半導体基板5を基準として、逆導電型半導体層16の外側を覆っていない。
第2真性半導体層10は、半導体基板5を基準として、逆導電型半導体層16の外側面と面一又は外側面よりも内側に位置している。
このとき、リフトオフ用エッチング液によるリフトオフ層50のエッチング速度は、一導電型半導体層11のエッチング速度よりも速い。
また、第2保護層52のエッチング速度は、第1真性半導体層6のエッチング速度よりも速い。
【0068】
図8(a)のように、プラズマCVD装置によって、第1真性半導体層6上に反射防止層7を形成する(反射防止層形成工程)。
【0069】
反射防止層形成工程で使用する反応ガスは、シランガス(SiH4)と、アンモニア(NH3)を含むことが好ましい。
【0070】
続いて、一導電型半導体層11及び逆導電型半導体層16上に電極層2,3を形成する。
【0071】
具体的には、まず、図8(b)のように、一導電型半導体層11及び逆導電型半導体層16上に透明電極層20,21を形成する(透明電極層形成工程)。
透明電極層形成工程では、透明電極層20,21は、フォトレジスト法やマスク法等によって、パターニングされており、透明電極層20は、一導電型半導体層11上のみに形成され、透明電極層21は、逆導電型半導体層16上のみに形成される。すなわち、透明電極層20は、逆導電型半導体層16上に跨っておらず、透明電極層21は、一導電型半導体層11上に跨っていない。
【0072】
次に、図8(c)のように、スクリーン印刷等により、透明電極層20,21上に金属電極層22,23を形成する(金属電極層形成工程)。
金属電極層形成工程では、金属電極層22は、フォトレジスト法やマスク法等によって、透明電極層20上のみに形成され、金属電極層23は、透明電極層21上のみに形成される。なお、透明電極層21と金属電極層22は、同時にパターニングされてもよい。
【0073】
そして、必要に応じてインターコネクタ等の配線部材を電極層2,3に取り付けて太陽電池1が完成する。
【0074】
続いて、太陽電池1を構成する各部位の詳細な構成について説明する。
【0075】
半導体基板5は、n型又はp型の一方の導電型をもつ半導体基板である。
本実施形態の半導体基板5は、一導電型半導体層11と同様の導電型をもつ一導電型半導体基板であり、具体的にはn型の単結晶シリコン基板である。
半導体基板5の平均厚みは、120μm以上250μm以下であることが好ましく、160μm以上200μm以下であることがより好ましい。
半導体基板5は、必要に応じて表側主面25及び/又は裏側主面26にテクスチャ構造を備えていてもよい。
【0076】
真性半導体層6,10,15は、半導体基板5への不純物の拡散を抑制し、表面の不動態化処理する層である。真性半導体層6,10,15は、i型半導体層であり、実質的に導電性不純物を含まないものである。
ここでいう「実質的に導電性不純物を含まないもの」とは、完全にn型不純物やp型不純物などの導電性不純物を含まないものだけではなく、真性層として機能を維持し得る範囲で微量の導電性不純物を含むものも含む。
【0077】
真性半導体層6,10,15は、半導体基板5への不純物の拡散を抑制し、表面の不動態化処理する機能を有すれば、特に限定されない。真性半導体層6,10,15としては、例えば、非晶質シリコン系半導体層であってもよいし、水素化非晶質シリコン系半導体層であってもよい。
【0078】
真性半導体層6,10,15の平均厚みは、2nm以上20nm以下であることが好ましく、5nm以上10nm以下であることがより好ましい。この範囲であれば、半導体基板5に対するパッシベ―ション層として良好に機能しつつ、抵抗を低く抑えることができる。
【0079】
一導電型半導体層11は、n型又はp型の導電型をもつ半導体層であり、半導体基板5と同じ導電型をもつ半導体層である。
本実施形態の一導電型半導体層11は、真性半導体層6,10,15と同様の半導体にn型のドーパント(リン等)を添加したn型の半導体層であり、具体的には、n型非晶質シリコン層である。
一導電型半導体層11の平均厚みは、2nm以上20nm以下であることが好ましく、5nm以上15nm以下であることがより好ましい。
【0080】
逆導電型半導体層16は、n型又はp型の導電型をもつ半導体層であり、半導体基板5及び一導電型半導体層11とは異なる導電型の半導体層である。
本実施形態の逆導電型半導体層16は、真性半導体層6,10,15と同様の半導体にp型のドーパント(ホウ素等)を添加したp型半導体層であり、具体的には、p型非晶質シリコン層である。
逆導電型半導体層16の平均厚みは、2nm以上20nm以下であることが好ましく、5nm以上15nm以下であることがより好ましい。
【0081】
反射防止層7は、透光性をもち、且つ光の反射を抑制する低反射層である。
反射防止層7は、例えば、酸化シリコン、酸化亜鉛、酸化チタンなどの金属酸化物や窒化シリコン等の金属窒化物などで形成できる。
反射防止層7は、入射光の光閉じ込め効果の観点から窒化シリコンで形成されていることが好ましい。
【0082】
透明電極層20,21は、例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム錫(ITO)、酸化チタン、酸化錫、酸化タングステン、酸化モリブデンなどの透明導電性酸化物で形成できる。
透明電極層20,21の平均厚みは、20nm以上200nm以下であることが好ましく、50nm以上150nm以下であることがより好ましい。
【0083】
金属電極層22,23は、抵抗率が透明電極層20,21の抵抗率に比べて小さく、透明電極層20,21の補助電極層として機能する層である。
金属電極層22,23は、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル、パラジウム等の金属又はこれらの金属を含む合金で形成できる。
金属電極層22,23の平均厚みは、1μm以上80μm以下であることが好ましい。
【0084】
続いて、仕掛太陽電池基板99,100を構成する各部位の詳細な構成について説明する。なお、太陽電池1と重複する構成については、説明を省略する。
【0085】
リフトオフ層50は、リフトオフ用エッチング液で溶解する層である。
リフトオフ層50は、窒化シリコン又は酸化シリコンを主成分とすることが好ましく、全成分のうち窒化シリコン又は酸化シリコンが90%以上占めることが好ましい。本実施形態のリフトオフ層50は、酸化シリコンを主成分とする酸化シリコン層である。
リフトオフ層50として酸化シリコン層を使用した場合の屈折率は、1.42以上1.50以下であることが好ましい。
ここでいう「屈折率」とは、550nmの光を照射したときの屈折率をいう。
この範囲であれば、リフトオフ用エッチング液でのエッチング速度が大きく、リフトオフしやすい。
リフトオフ層50として酸化シリコン層を使用した場合の2重量%のフッ化水素酸に浸したときのエッチング速度は、3nm/s以上であることが好ましく、5nm/s以上であることがより好ましく、7nm/s以上であることがさらに好ましい。
【0086】
第1保護層51は、レジスト用エッチング液、第2真性半導体層形成工程前の洗浄に使用するフッ化水素酸からリフトオフ層50を保護する層である。第1保護層51は、窒化シリコン又は酸化シリコンを主成分とすることが好ましく、全成分のうち窒化シリコン又は酸化シリコンが90%以上占めることが好ましい。
本実施形態の第1保護層51は、リフトオフ層50と同様、酸化シリコンを主成分とする酸化シリコン層である。
第1保護層51として酸化シリコン層を使用した場合の屈折率は、リフトオフ層50よりも高い屈折率であり、1.50超過であることが好ましい。
この範囲であれば、レジスト用エッチング液、フッ化水素酸でのエッチング速度が低く、溶解しにくい。
【0087】
第2保護層52は、リフトオフ層50に比べてレジスト用エッチング液及びリフトオフ用エッチング液に対する耐性を有し、レジスト用エッチング液及びリフトオフ用エッチング液から第1真性半導体層6を保護する層である。
第2保護層52は、窒化シリコン又は酸化シリコンを主成分とすることが好ましく、全成分のうち窒化シリコン又は酸化シリコンが90%以上占めることが好ましい。
本実施形態の第2保護層52は、リフトオフ層50や第1保護層51と同様、酸化シリコンを主成分とする酸化シリコン層である。
第2保護層52として酸化シリコン層を使用した場合の屈折率は、リフトオフ層50よりも高い屈折率であり、1.50超過であることが好ましい。
【0088】
本実施形態の太陽電池1の製造方法によれば、一部がリフトオフ層50と重なるように一導電型半導体層11を形成し、リフトオフ層50をリフトオフ液で溶解することでリフトオフ層50上の一導電型半導体層11を除去でき、一導電型半導体層11のパターニングが可能である。そのため、フォトレジストでパターニングする従来の方法に比べて、低コストで製造できる。
本実施形態の太陽電池1の製造方法によれば、150℃以下の製膜温度でリフトオフ層50を形成するので、たとえ大面積の製膜装置であっても、面内の膜厚分布が均一なリフトオフ層50を形成できる。そのため、大量生産が可能である。
【0089】
本実施形態の太陽電池1の製造方法によれば、第1保護層51がリフトオフ層50よりも高密度であり、レジスト用エッチング液に対する耐性が高い。そのため、エッチング工程においてレジスト用エッチング液に浸したときに、リフトオフ層50が直接レジスト用エッチング液に浸される場合に比べて、リフトオフ層50が溶解しにくく、レジスト用エッチング液によってリフトオフ層50が溶解し、当該溶解によりリフトオフ層50よりも外側の層が剥離することを防止できる。
【0090】
本実施形態の太陽電池1の製造方法によれば、櫛型にパターニングされたレジスト層55を第1保護層51上に形成し、半導体基板5を平面視したときに、逆導電型半導体層16のレジスト層55が重ならない部分をレジスト用エッチング液で溶解して除去してパターニングする。そのため、逆導電型半導体層16の製膜時にマスク等を設けなくても、逆導電型半導体層16のパターニングが可能である。
【0091】
本実施形態の太陽電池1の製造方法によれば、保護層形成工程において、150℃以下の温度で、シランガスと二酸化炭素と水素ガスを含む第2反応ガスを吹き付けて酸化シリコンを主成分とする第1保護層51を製膜する。すなわち、水素希釈した低濃度の第2反応ガスを吹き付けて低温で製膜するため、緻密な第1保護層51を形成できる。
【0092】
本実施形態の太陽電池1の製造方法によれば、リフトオフ層形成工程でのリフトオフ層50の製膜温度と、第1保護層形成工程での第1保護層51の製膜温度は、温度差が50℃以下である。そのため、速やかな温度調節が可能であり、リフトオフ層50と、第1保護層51の製膜を連続的に行うことができる。
また、第1保護層形成工程での第1保護層51の製膜温度と、第2保護層形成工程での第2保護層52の製膜温度は、温度差が50℃以下であるため、速やかな温度調節が可能であり、第1保護層51と、第2保護層52の製膜を連続的に行うことができる。
【0093】
本実施形態の仕掛太陽電池基板99,100によれば、リフトオフ層50は、酸化シリコンを主成分とし、2重量%のフッ化水素酸に浸したときのエッチング速度が5nm/s以上であるため、リフトオフ層50を速やかに剥離できる。
【0094】
本実施形態の第2仕掛太陽電池基板100によれば、リフトオフ層50は、リフトオフ除去溶液に浸すことで溶解し、半導体基板5を平面視したときに一導電型半導体層11のリフトオフ層50との重なり部分を除去可能であり、リフトオフ層50が酸化シリコンを主成分とし、屈折率が1.42以上1.50以下である。そのため、リフトオフする際に、エッチング速度を大きくすることができ、容易に一導電型半導体層11をパターニングできる。
【0095】
本実施形態の第2仕掛太陽電池基板100によれば、半導体基板5の表側主面25側の最表面にリフトオフ層50よりもリフトオフ液に対する耐性を有する第2保護層52が被覆されている。そのため、エッチング工程においてリフトオフ液による半導体基板5の第2主面側の各層の損傷を抑制できる。
【0096】
本実施形態の太陽電池1によれば、一導電型半導体層11と逆導電型半導体層16が厚み方向に重ならず、電極層2,3間や導電型が異なる半導体層11,16の接触を真性半導体層10,15で防止できるため、安全性に優れた太陽電池となる。
【0097】
上記した実施形態では、逆導電型半導体層16がp型の半導体層であり、一導電型半導体層11がn型の半導体層であったが、本発明はこれに限定されるものではない。逆導電型半導体層16がn型の半導体層であり、一導電型半導体層11がp型の半導体層であってもよい。
【0098】
上記した実施形態では、半導体基板5は、n型の半導体基板であったが、本発明はこれに限定されるものではない。半導体基板5は、p型の半導体基板であってもよい。
【0099】
上記した実施形態では、リフトオフ層50と、第1保護層51と、第2保護層52を同一のプラズマCVD装置の製膜室で製膜したが、本発明はこれに限定されるものではない。異なる製膜室で製膜してもよい。
【0100】
上記した実施形態では、第1保護層51と第2保護層52を別途工程にて製膜したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1保護層51と第2保護層52を同時に成膜してもよい。
【0101】
上記した実施形態では、リフトオフ層50と第1保護層51を同様の材料で形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。リフトオフ層50と第1保護層51は異なる材料で形成されていてもよい。
【0102】
上記した実施形態では、リフトオフ層50と、第1保護層51と、第2保護層52をいずれも酸化シリコン層で形成していたが、本発明はこれに限定されるものではない。リフトオフ層50と、第1保護層51と、第2保護層52を、窒化シリコンを主成分とする窒化シリコン層で形成してもよい。
【0103】
上記した実施形態では、リフトオフ層50を一層で形成していたが、本発明はこれに限定されるものではない。リフトオフ層50を複数の層で構成された積層体で形成してもよい。
【0104】
上記した実施形態では、第1保護層51や第2保護層52を一層で形成していたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1保護層51や第2保護層52を複数の層で構成された積層体で形成してもよい。
【0105】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【実施例
【0106】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0107】
(実施例1)
まず、図9のように縦998mm横1200mmの四角形状のトレーに縦5枚、横6枚の計30枚(図9に示される1番から30番)の鏡面研磨されたシリコンウェハ(縦横156.75mm)を縦横碁盤状に配置し、これらのシリコンウェハに対してプラズマCVD装置によって酸化シリコン層を形成した。これを実施例1とした。
実施例1の酸化シリコン層の製膜条件は、基板温度100℃、電極から基板までの距離10mm、圧力200Pa、ガス流量比SiH4:CO2を25:4900、及びパワー密度を0.22W/cm2とした。
【0108】
(実施例2)
実施例1において、基板温度を140℃としたこと以外は同様にし、これを実施例2とした。
【0109】
(比較例1)
実施例1において、基板温度を180℃としたこと以外は同様にし、これを比較例1とした。
【0110】
(実施例3)
実施例1と同様のトレーに設置された鏡面研磨されたシリコンウェハに対し、プラズマCVD装置によって酸化シリコン層を形成し、これを実施例3とした。
実施例3の酸化シリコン層の製膜条件は、基板温度140℃、電極から基板までの距離10mm、圧力200Pa、ガス流量比SiH4:CO2:H2を150:4900:9800、及びパワー密度を0.37W/cm2とした。すなわち、水素ガスで希釈して製膜を行った。
【0111】
(比較例2)
実施例3において、水素で希釈しなかったこと以外は同様にし、これを比較例2とした。すなわち、比較例2では、ガス流量比SiH4:CO2を150:4900として製膜を行った。
【0112】
実施例1~3及び比較例1,2に対してジェー・エー・ウーラム(J.A. Woollam)社製のエリプソンメーターによってシリコンウェハ上の酸化シリコンの550nmの光を照射したときの屈折率を測定した。その後、2重量%のフッ化水素酸によって酸化シリコン層を溶解させ、再度エリプソンメーターによって550nmの光を照射したときの屈折率を測定し、エッチング速度を算出した。また、トレーに設置された各1番から30番のシリコンウェハにおいて、シリコンウェハ上の酸化シリコン層の最も厚い膜厚(最大膜厚Max)と、最も薄い膜厚(最小膜厚Min)の差から、下記式(1)を用いて面内分布を算出した。
{(Max-Min)/Min}×100・・・(1)
【0113】
また、リフトオフ性の評価として、エッチング溶液に15分間浸漬し、リンス液でリンスを行った際の酸化シリコン層の剥離の程度で評価した。具体的には、剥離の程度が、目視観察で50%以上90%未満の剥離ではB、90%以上の剥離ではAとした。
【0114】
実施例1,2,3及び比較例1,2の測定結果を表1及び表2に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
表1のように、低温で製膜した実施例1、2と、高温で製膜した比較例1の酸化シリコン層を比較すると、低温になる程エッチング速度が大きくなることがわかった。
このとき、実施例1、2の酸化シリコン層は、トレー内の面内分布が10%以内と大面積のトレーで製膜しても膜厚が均一な層を形成できた。
また、実施例1,2のリフトオフ特性は、50%以上であって良好であり、特に実施例1のリフトオフ特性は実施例2と比べても良好であることがわかった。
【0118】
表2のように、水素希釈した実施例3の酸化シリコン層は、水素希釈しなかった比較例2に比べてエッチング速度が小さく、フッ化水素酸に溶解しにくいことがわかった。
【0119】
実施例1の酸化シリコン層のエッチング速度は、表1,2のように、実施例3の酸化シリコン層のエッチング速度の約9倍程度であり、実施例2の酸化シリコン層のエッチング速度は、実施例3の酸化シリコン層のエッチング速度の約6倍程度であった。
このことから、実施例1,2の酸化シリコン層のエッチング速度は、フッ化水素酸によって実施例3の酸化シリコン層に比べて極めて溶解しやすいことがわかった。
【0120】
上記の結果から、基板温度を140℃以下で製膜することで、大面積製膜装置でも面内分布が均一に所望のエッチング速度に制御した酸化シリコン層を製膜できることが示唆された。
基板温度以外を同一の製膜条件にしたときに、基板温度を140℃以下で製膜することで屈折率が低く、エッチング速度が高い酸化シリコン層を製膜できることが示唆された。
また、原料ガスを水素で希釈することで、基板温度を140℃以下であっても緻密な酸化シリコン層を製膜できることが示唆された。
以上のことから、実施例1又は実施例2の酸化シリコン層をリフトオフ層に使用し、実施例3の酸化シリコン層を保護層として使用することで、同一のプラズマCVD装置を使用して連続的に製膜できることが示唆された。
【符号の説明】
【0121】
1 太陽電池
2 第1電極層
3 第2電極層
5 半導体基板
6 第1真性半導体層
10 第2真性半導体層(真性半導体層,第2真性層)
11 一導電型半導体層
15 第3真性半導体層(真性半導体層,第1真性層)
16 逆導電型半導体層
25 表側主面(第2主面)
26 裏側主面(第1主面)
50 リフトオフ層
51 第1保護層
52 第2保護層
55,56 レジスト層
60 レジスト形成領域
61 レジスト非形成領域
62 剥離領域
99 第1仕掛太陽電池基板
100 第2仕掛太陽電池基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9