(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】分散型台帳ベースの日中取引のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20230101AFI20240620BHJP
【FI】
G06Q40/02
(21)【出願番号】P 2021525251
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 US2019060576
(87)【国際公開番号】W WO2020097535
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-11-02
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519022104
【氏名又は名称】ジェイピーモルガン・チェース・バンク,ナショナル・アソシエーション
【氏名又は名称原語表記】JPMorgan Chase Bank,N.A.
【住所又は居所原語表記】383 Madison Avenue,New York,NY 10179,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス,スコット・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】モイ,クリスティーン
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/178956(WO,A1)
【文献】特表2018-515833(JP,A)
【文献】特表2018-507501(JP,A)
【文献】特表2018-521437(JP,A)
【文献】特開2018-045540(JP,A)
【文献】特開2005-085133(JP,A)
【文献】特表2019-521450(JP,A)
【文献】特表2020-517135(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2018-0021048(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのコンピュータプロセッサを含む情報処理装置における、分散型台帳ベースの日中取引のための
前記コンピュータプロセッサによって実行される方法であって、
第1の分散型台帳において
、および第2の分散型台帳のキャッシュ借り手のデジタルウォレットから、キャッシュ借り手の担
保のデジタル表示を受け取るステップ
であって、前記第2の分散型台帳は、前記第1の分散型台帳のサイド分散型台帳である、受け取るステップと、
前記
第1の分散型台帳において、
前記第2の分散型台帳のキャッシュ提供者のデジタルウォレットから、キャッシュ提供者のキャッシ
ュのデジタル表示を受け取るステップと、
前記
第1の分散型台帳において、前記キャッシュ借り手および前記キャッシュ提供者から、前記日中取引の
満了、前記担保の
前記デジタル表示の担保取引額、および
前記キャッシュの
前記デジタル表示のキャッシュ取引額を含む日中取引の条件に関する合意を受け取るステップと、
前記第1の分散型台帳上で実行されるスマートコントラクトが、
前記担
保取引額を前記キャッシュ提供者
のデジタルウォレットに、
および前記キャッシュ取引額を前記キャッシュ借り手
のデジタルウォレットに提供
し、
前記キャッシュ取引額と前記担保取引額の所有権の第1の変更を前記第1の分散型台帳に書き込みし、
前記日中取引の
満了時に、前
記担保取引額を前記キャッシュ借り手
のデジタルウォレットに、
および前
記キャッシ
ュ取引額を前記キャッシュ提供者
のデジタルウォレットに返
し、および
前記キャッシュ取引額と前記担保取引額の所有権の第2の変更を前記第1の分散型台帳に書き込む
ことにより前記日中取引を調整するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の分散型台帳にデジタル表示される前記担保は、担保保管人によって制限されるか、またはロックされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記
第1の分散型台帳にデジタル表示される前記キャッシ
ュは、キャッシュ銀行によって他のキャッシュから分割される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記担
保の前記デジタル表示は、前記キャッシュ借り手のデジタルウォレットに書き込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記キャッシ
ュの前記デジタル表示は、前記キャッシュ提供者のデジタルウォレットに書き込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記
第1の分散型台帳にデジタル表示される前記担
保は、前記担保取引額と同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記
第1の分散型台帳にデジタル表示される前記キャッシ
ュの額は、前記キャッシュ取引額と同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記日中取引の前記
満了は、数分または数時間のうちのいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記担保は、証券を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記担
保の前記デジタル表示が、前記担保取引額に対して十分であることを検証するステップと、
前記キャッシ
ュの前記デジタル表示が、前記キャッシュ取引額に対して十分であることを検証するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのコンピュータプロセッサを含む情報処理装置における、分散型台帳ベースの日中取引のための
前記コンピュータプロセッサによって実行される方法であって、
第1の分散型台帳において、キャッシュ借り手およびキャッシュ提供者から、前記日中取引の
満了、担保の担保取引額、およびキャッシュのキャッシュ取引額を含む日中取引の条件に関する合意を受け取るステップと、
前記
第1の分散型台帳において、
第2の分散型台帳のキャッシュ借り手の
デジタルウォレットからキャッシュ借り手の前記担保取引額のデジタル表示を受け取るステップ
であって、前記第2の分散型台帳は、前記第1の分散型台帳のサイド分散型台帳である、ステップと、
前記
第1の分散型台帳において、
およびキャッシュ提供者の
デジタルウォレットから、前記キャッシュ提供者のキャッシュのデジタル表示を受け取るステップと、
前記第1の分散型台帳で実行されるスマートコントラクトが、
担
保取引額を前記キャッシュ提供者
のデジタルウォレットに
、および前記キャッシュ取引額を前記キャッシュ借り手
のデジタルウォレットに提供
し、
前記キャッシュ取引額と前記担保取引額の所有権の第1の変更を第1の分散型台帳に書き込みし、
前記日中取引の
満了時に、前
記担保取引額を前記キャッシュ借り手
のデジタルウォレットに
、前記キャッシュ取引額を前記キャッシュ提供者
のデジタルウォレットに返
し、および
前記キャッシュ取引額と前記担保取引額の所有権の第2の変更を前記第1の分散型台帳に書き込む、
ことにより日中取引を調整するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
担保の前記担保取引額は、担保保管人によって制限またはロックされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
キャッシュの前記キャッシュ取引額は、キャッシュ銀行によって他のキャッシュから分割される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記担
保の前記デジタル表示は、前記キャッシュ借り手のデジタルウォレットに書き込まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記デジタルウォレットは、第2の分散型台帳にある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記キャッシ
ュの前記デジタル表示は、前記キャッシュ提供者のデジタルウォレットに書き込まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記デジタルウォレットは、第2の分散型台帳にある、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記日中取引の前記
満了は、数分または数時間のうちのいずれかである、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記担保は、証券を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は2018年11月8日に出願された米国仮特許出願第62/757,614号の優先権および利益を主張し、その開示は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]実施形態は、一般に、分散型台帳ベースの日中取引(distributed ledger-based intraday trading)、決済(settlement)、および記録管理(recordkeeping)のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]流動性のコスト(cost of liquidity)は、日中流動性の利用可能性の低下とともに増加しており、これは、金融市場における支払い、清算、および決済活動におけるストレスにつながる可能性がある。それに加えて、日中流動性を現在もたらすことは、通常、信用/相手方のリスクが増加する無保証の、不確定な信用によって制限される。レポ市場(repo market)における既存の運用プロセスは、日中の流動性を積極的に管理するための日中レポ取引の有意義な使用を妨げ、その結果、資本の展開が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]分散型台帳ベースの日中取引、決済、および記録管理のためのシステムおよび方法が開示される。1つの実施形態では、少なくとも1つのコンピュータプロセッサを含む情報処理装置における、分散型台帳ベースの日中取引のための方法は、(1)分散型台帳において、キャッシュ借り手の担保額(amount of collateral)のデジタル表示を受け取るステップと、(2)分散型台帳において、キャッシュ提供者のキャッシュ額(amount of cash)のデジタル表示を受け取るステップと、(3)分散型台帳において、キャッシュ借り手およびキャッシュ提供者から、日中取引の期間、担保の担保取引額、およびキャッシュのキャッシュ取引額を含む日中取引の条件に関する合意を受け取るステップと、(4)スマートコントラクトが、デジタル担保の取引額をキャッシュ提供者に、デジタルキャッシュのキャッシュ取引額をキャッシュ借り手に提供することにより、日中取引を実行するステップと、(5)スマートコントラクトが、日中取引の完了時に、デジタル担保の取引額をキャッシュ借り手に、デジタルキャッシュのキャッシュ取引額をキャッシュ提供者に返すステップとを含むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]1つの実施形態では、分散型台帳にデジタル表示される担保額は、担保保管人によって制限される(be ringfenced)か、またはロックされる場合がある。
[0006]1つの実施形態では、分散型台帳にデジタル表示されるキャッシュ額は、キャッシュ銀行によって他のキャッシュから分割または分離することができる。
【0006】
[0007]1つの実施形態では、担保額のデジタル表示は、キャッシュ借り手のデジタルウォレットに書き込まれる。キャッシュ額のデジタル表示は、キャッシュ提供者のデジタルウォレットに書き込まれる。
【0007】
[0008]1つの実施形態では、分散型台帳にデジタル表示される担保額は、担保取引額と同じとすることができる。分散型台帳にデジタル表示されるキャッシュ額は、キャッシュ取引額と同じとすることができる。
【0008】
[0009]1つの実施形態では、日中取引の期間は、数分または数時間である場合がある。
[0010]1つの実施形態では、担保は、証券とすることができる。
[0011]1つの実施形態では、この方法は、担保額のデジタル表示が、担保取引額に対して十分であることを検証するステップと、キャッシュ額のデジタル表示が、キャッシュ取引額に対して十分であることを検証するステップとをさらに含むことができる。
【0009】
[0012]別の実施形態によれば、少なくとも1つのコンピュータプロセッサを含む情報処理装置における、分散型台帳ベースの日中取引のための方法は、(1)分散型台帳において、キャッシュ借り手およびキャッシュ提供者から、日中取引の期間、担保の担保取引額、およびキャッシュのキャッシュ取引額を含む日中取引の条件に関する合意を受け取るステップと、(2)分散型台帳において、キャッシュ借り手の担保取引額のデジタル表示を受け取るステップと、(3)分散型台帳において、キャッシュ提供者のキャッシュ取引額のデジタル表示を受け取るステップと、(4)スマートコントラクトが、デジタル担保の取引額をキャッシュ提供者に、デジタルキャッシュのキャッシュ取引額をキャッシュ借り手に提供することにより、日中取引を実行するステップと、(5)スマートコントラクトが、日中取引の完了時に、デジタル担保の取引額をキャッシュ借り手に、デジタルキャッシュのキャッシュ取引額をキャッシュ提供者に返すステップとを含むことができる。
【0010】
[0013]1つの実施形態では、担保の担保取引額は、担保保管人によって制限またはロックされる。キャッシュのキャッシュ取引額は、キャッシュ銀行によって他のキャッシュから分割または分離することができる。
【0011】
[0014]1つの実施形態では、担保取引額のデジタル表示は、キャッシュ借り手のデジタルウォレットに書き込まれる。デジタルウォレットは、第2の分散型台帳にある場合がある。
【0012】
[0015]1つの実施形態では、キャッシュ取引額のデジタル表示は、キャッシュ提供者のデジタルウォレットに書き込まれる。デジタルウォレットは、第2の分散型台帳にある場合がある。
【0013】
[0016]1つの実施形態では、日中取引の期間は、数分または数時間である場合がある。
[0017]1つの実施形態では、担保は、証券とすることができる。
[0018]本発明のより完全な理解を容易にするために、次に、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】[0019]
図1は、1つの実施形態による日中取引のためのシステムを開示する図である。
【
図2】[0020]
図2は、1つの実施形態による日中取引のための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0021]実施形態は、日中取引、決済、および記録管理のためのシステムおよび方法に関する。実施形態は、複数参加者の日中買戻しプラットフォームにおいて分散型台帳(例えば、ブロックチェーンベースの台帳)を使用することができる。
【0016】
[0022]実施形態は、資産の即時またはほぼ即時の決済および記録、ならびに満期時にキャッシュ/証券のリターンのないリスクを最小化するための満了メカニズムを使用することができる。
【0017】
[0023]実施形態では、取引フローは、以下の要素またはフェーズ、すなわち、(1)デジタル資産の発行、(2)取引実行、(3)取引決済、(4)取引満期、および(5)デジタル資産償還を含むことができる。例えば、デジタル資産残高が発行されると、キャッシュと、担保における担保権をそれぞれ表し、キャッシュ提供者および借り手は、取引条件に合意し、取引を実行し、デジタル資産残高所有権の交換を介して決済することができる。デジタル資産残高の所有権は、原代表資産(underlying, represented asset)(例えば、キャッシュ、証券、または担保付きの資産など)を、一方の当事者から他方の当事者に譲渡する法的権利を提供することができる。
【0018】
[0024]
図1を参照すると、1つの実施形態による日中取引のためのシステムが開示されている。システム100は、キャッシュ提供者110、キャッシュ借り手120、担保保管人エージェント130、担保保管人140、キャッシュ銀行エージェント150、キャッシュ銀行160、および日中取引エンジン170を含むことができる。
【0019】
[0025]1つの実施形態では、キャッシュ提供者110はキャッシュの提供者であり、キャッシュ借り手120はキャッシュの借り手である。キャッシュ提供者110およびキャッシュ借り手120は、個人、法人などとすることができる。キャッシュ借り手は、資産を有している可能性がある。
【0020】
[0026]担保保管人140は、キャッシュ借り手110の担保を管理および保持することができる。担保保管人エージェント140は、日中取引エンジン170を用いて、担保保管人140を代表するか、またはその代理として活動することができる。
【0021】
[0027]キャッシュ銀行160は、キャッシュ提供者110の口座を保有することができる任意の適切な金融機関とすることができる。キャッシュ銀行エージェント150は、日中取引エンジン170を用いて、キャッシュ銀行160を代表するか、またはその代理として活動することができる。
【0022】
[0028]日中取引エンジン170は、日中取引の実行、決済、および所有権ポジションの満期および記録保持を容易にすることができるサーバや、クラウドなどにおいて実行される、コンピュータプログラムまたはアプリケーションとすることができる。日中取引エンジン170は、特定の機能のための実行および記録保持メカニズムのための分散型台帳を提供することができる。
【0023】
[0029]1つの実施形態では、キャッシュ提供者110およびキャッシュ借り手120は、例えば台帳115、125、135、および155それぞれを介して、担保保管人エージェント130およびキャッシュ銀行エージェント150とともに、分散型台帳ネットワーク内のノードによって表すことができる。
【0024】
[0030]
図2を参照すると、1つの実施形態による分散型台帳ベースの日中取引のための方法が開示される。
[0031]ステップ205において、キャッシュ借り手およびキャッシュ提供者は、例えば、日中取引エンジンを介して、デジタル資産残高(それぞれ、担保およびキャッシュ)の発行を要求することができる。例えば、キャッシュ借り手およびキャッシュ提供者は、それぞれの保管人(例えば、担保保管人およびキャッシュ銀行)に、保管人が保有する資産の一般的なプールから原資産を分離するように指示できる。
【0025】
[0032]1つの実施形態では、日中取引エンジンは、この要求を担保エージェントおよびキャッシュ銀行エージェントに通信することができる。
[0033]ステップ210において、担保保管人は、キャッシュ借り手のデジタル担保残高によって表される担保を、制限、ロック、または別の方法で分離し、デジタル化された担保の表示を分散型台帳に書き込むことによって、担保をデジタル化することができる。これにより、キャッシュ借り手は、デジタル残高が表す原担保を使って他のアクションを起こすことを効果的に阻止する。1つの実施形態では、デジタル担保残高によって表される証券の法的権原は、キャッシュ提供者の利益のために口座に譲渡できる。
【0026】
[0034]1つの実施形態では、担保エージェントは、原担保が、日中取引エンジンにおけるキャッシュ借り手の要求担保残高の評価および適格性要件(valuation and eligibility requirements)を満たすことを保証する責任を負う場合がある。
【0027】
[0035]1つの実施形態では、権原の制限および/または譲渡は、デジタル担保の発行として分散型台帳に書き込むことができる。例えば、デジタル担保の発行は、キャッシュ借り手のデジタルウォレットに書き込まれる場合がある。1つの実施形態では、デジタルウォレットは、サイド分散型台帳にあってよい。
【0028】
[0036]ステップ215において、キャッシュ銀行は、キャッシュプロバイダのデジタルキャッシュ残高によって表されるキャッシュを分割し、デジタルキャッシュの表示を分散型台帳に書き込むことにより、キャッシュをデジタル化することができる。これにより、キャッシュ提供者は、デジタルキャッシュが表す原キャッシュを使って他のアクションを起こすことを効果的に阻止する。1つの実施形態では、キャッシュ銀行エージェントは、原キャッシュが、日中取引エンジンで、キャッシュ貸し手が要求したキャッシュ残高を満たすことを保証する責任を負う場合がある。
【0029】
[0037]1つの実施形態では、分割は、デジタルキャッシュの発行として分散型台帳に書き込むことができる。例えば、デジタルキャッシュの発行は、キャッシュ提供者のデジタルウォレットに書き込まれる。1つの実施形態では、デジタルウォレットは、サイド分散型台帳にあってよい。
【0030】
[0038]日中取引エンジンは、担保保管人とのキャッシュ借り手の担保口座と、キャッシュ提供者の銀行とのキャッシュ提供者のキャッシュ口座とに、データ透明性を持たせることができる。その代わりに、または、それに加えて、日中取引エンジンは、キャッシュ借り手およびキャッシュ提供者のデジタルウォレットへのデータ透明性も有することができる。
【0031】
[0039]ステップ205、210、および215は、任意の適切な順序で行うことができ、同時に行うなどもできることに留意されたい。
[0040]1つの実施形態では、担保がデジタル担保である場合、担保をデジタル化する必要がない場合もある。
【0032】
[0041]ステップ220において、キャッシュ借り手およびキャッシュ提供者は、日中取引の条件に合意することができる。1つの実施形態では、キャッシュ借り手およびキャッシュ提供者は、双方で(bilaterally)対話することができる。別の実施形態では、キャッシュ借り手およびキャッシュ提供者は、活発な取引が提供され、入札が提供される市場で対話することができる。取引条件は、期間(例えば、分、時間など)、担保の種類(例えば、証券)、担保額、キャッシュ額、資格スケジュール、通貨、価格、利息、および、必要なおよび/または所望される他の任意の情報を含むことができる。取引条件に関する合意は、日中取引の合法的な執行を構成することができる。
【0033】
[0042]1つの実施形態では、日中取引エンジンは、取引条件に合意して取引を実行できる前に、取引の各当事者が、必要なデジタル資産残高を有していることを検証することができる。合意された取引は分散型台帳に書き込まれ、これは、その後、取引の決済と満期を実行するために必要な調整(orchestration)を提供できる。例えば、スマートコントラクトが、取引を調整できる。
【0034】
[0043]取引条件への合意(例えば、ステップ220)は、担保のデジタル化および/またはキャッシュのデジタル化(例えば、ステップ210および215)に先行する場合があることに留意されたい。例えば、取引が合意されると、日中取引エンジンは、担保保管人とキャッシュ銀行に、取引に必要な担保とキャッシュをデジタル化させることができる。
【0035】
[0044]ステップ225において、キャッシュ提供者のデジタルキャッシュがキャッシュ借り手(例えば、キャッシュ借り手のデジタルウォレット)に転送され、その返報に、キャッシュ借り手のデジタル担保が、キャッシュ提供者へ(例えば、キャッシュ提供者のデジタルウォレットへ)転送される。これは、同時に、実質的に同時に、または任意の所望の順序で生じる場合がある。所有権の交換は、分散型台帳によって容易化され、分散型台帳に書き込まれる。
【0036】
[0045]ステップ230において、キャッシュ借り手は、デジタルキャッシュをフィアットキャッシュ(fiat cash)に換える(redeem)ことができる。例えば、キャッシュ銀行エージェントおよび/または銀行は、分散型台帳によって保持された記録を用いてキャッシュ借り手の所有権を有効化し、キャッシュ借り手にキャッシュを提供することができる。1つの実施形態では、キャッシュ借り手は、満期前にキャッシュ残高を再デジタル化する必要がある場合がある。
【0037】
[0046]ステップ235において、日中取引の終わりに、デジタルキャッシュが、キャッシュ提供者に返却され、デジタル担保が、キャッシュ借り手に返却される。例えば、デジタル担保は、キャッシュ借り手のデジタルウォレットに返却され、デジタルキャッシュは、キャッシュ提供者のデジタルウォレットに返却される。1つの実施形態では、スマートコントラクトは、デジタル資産の、それぞれの当事者への返却を調整することができる。
【0038】
[0047]キャッシュ借り手はさらに、合意された利息および手数料をキャッシュ提供者に支払うことができる。
[0048]1つの実施形態では、当事者のデジタルウォレットへの返金または更新された残高は、分散型台帳に書き込まれる。
【0039】
[0049]ステップ240において、キャッシュ借り手とキャッシュ貸し手は、それぞれのデジタル資産残高を償還することを選択することができる。担保エージェントとキャッシュ銀行エージェントは、分散型台帳を介してデジタル資産残高におけるキャッシュ借り手とキャッシュ貸し手の所有権を有効化することができる。担保保管人とキャッシュ銀行は、その後、担保資産およびキャッシュ資産それぞれに対する分割、制限、またはロックを解放することができる。
【0040】
[0050]米国特許出願第16/653,369号、米国特許出願第16/558,415号、米国特許出願第15/869,421号、米国仮特許出願第62/725,331号、および米国仮特許出願第62/446,185号の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0041】
[0051]いくつかの実施形態が開示されているが、これらの実施形態は互いに排他的ではなく、ある実施形態からの特定の要素または特徴を別の実施形態とともに使用することができることを認識されたい。
【0042】
[0052]以下、本発明のシステムおよび方法の実施態様の一般的な態様が記載される。
[0053]本発明のシステムまたは本発明のシステムの一部は、例えば、汎用コンピュータなどの「処理機械」の形態のものとすることができる。本明細書で使用される「処理機械」という用語は、少なくとも1つのメモリを使用する少なくとも1つのプロセッサを含むと理解されるべきである。少なくとも1つのメモリは、命令のセットを格納する。命令は、処理機械の1つまたは複数のメモリに永久的にまたは一時的に格納することができる。プロセッサは、データを処理するために1つまたは複数のメモリに格納されている命令を実行する。命令のセットは、上述のタスクなどの特定の1つまたは複数のタスクを実行する様々な命令を含むことができる。特定のタスクを実行するためのそのような命令のセットは、プログラム、ソフトウェアプログラム、または単にソフトウェアとして特徴づけることができる。
【0043】
[0054]1つの実施形態では、処理機械は、専用プロセッサとすることができる。
[0055]上記のように、処理機械は、データを処理するために1つまたは複数のメモリに格納されている命令を実行する。データのこの処理は、例えば、処理機械の1人または複数のユーザによるコマンドに応じる、前の処理に応じる、別の処理機械による要求および/または他の入力に応じることができる。
【0044】
[0056]上記のように、本発明を実施するために使用される処理機械は、汎用コンピュータとすることができる。しかしながら、上述の処理機械は、多種多様な他の技術のうちの任意の技術を利用することもできる。多種多様な他の技術には、専用コンピュータ、例えば、マイクロコンピュータ、ミニコンピュータ、またはメインフレームを含むコンピュータシステム、プログラム式マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、周辺集積回路要素、CSIC(特定顧客向け集積回路)またはASIC(特定用途向け集積回路)もしくは他の集積回路、ロジック回路、デジタル信号プロセッサ、FPGA、PLD、PLA、またはPALなどのプログラマブルロジックデバイス、または本発明のプロセスのステップを実施することができる他のデバイスもしくはデバイスの構成が含まれる。
【0045】
[0057]本発明を実施するために使用される処理機械は、適切なオペレーティングシステムを利用することができる。したがって、本発明の実施形態は、iOSオペレーティングシステム、OS Xオペレーティングシステム、Androidオペレーティングシステム、Microsoft Windows(商標)オペレーティングシステム、Unixオペレーティングシステム、Linux(登録商標)オペレーティングシステム、Xenixオペレーティングシステム、IBM AIX(商標)オペレーティングシステム、Hewlett-Packard UX(商標)オペレーティングシステム、Novell Netware(商標)オペレーティングシステム、Sun Microsystems Solaris(商標)オペレーティングシステム、OS/2(商標)オペレーティングシステム、BeOSオペレーティングシステム、Macintoshオペレーティングシステム、Apacheオペレーティングシステム、OpenStep(商標)オペレーティングシステム、または別のオペレーティングシステムもしくはプラットフォームを実行する処理機械を含むことができる。
【0046】
[0058]上述のような本発明の方法を実施するために、処理機械のプロセッサおよび/またはメモリは同じ地理的ロケーションに物理的に配置されることは必要でないことが理解される。すなわち、処理機械によって使用されるプロセッサおよびメモリの各々は、地理的に別個のロケーションに配置され、任意の適切な方法で通信するように接続されてもよい。加えて、プロセッサおよび/またはメモリの各々は、異なる物理的な機器で構成されてもよいことが理解される。したがって、プロセッサが1つのロケーションにおける単一の機器であること、およびメモリが別のロケーションにおける別の単一の機器であることは必要ではない。すなわち、プロセッサが2つの異なる物理的ロケーションにおける2つの機器であってもよいことが企図される。2つの別個の機器は、適切な方法で接続することができる。加えて、メモリは、2つ以上の物理的ロケーションにおけるメモリの2つ以上の部分を含むことができる。
【0047】
[0059]さらに説明すると、上述のような処理は、様々な構成要素および様々なメモリによって実行される。しかしながら、上述のように2つの別個の構成要素によって実行される処理は、本発明のさらなる実施形態によれば、単一の構成要素によって実行されうることが理解される。さらに、上述のように1つの別個の構成要素によって実行される処理は、2つの別個の構成要素によって実行されてもよい。同様に、上述のように2つの別個のメモリ部分によって実行されるメモリ記憶は、本発明のさらなる実施形態によれば、単一のメモリ部分によって実行されてもよい。さらに、上述のように1つの別個のメモリ部分によって実行されるメモリ記憶は、2つのメモリ部分によって実行されてもよい。
【0048】
[0060]さらに、様々なプロセッサおよび/またはメモリの間の通信を提供するために、ならびに本発明のプロセッサおよび/またはメモリが任意の他のエンティティと通信することを可能にするために、すなわち、例えば、さらなる命令を得るためにもしくはリモートメモリストアにアクセスし使用するために、様々な技術が使用されてもよい。そのような通信を提供するために使用されるそのような技術は、例えば、ネットワーク、インターネット、イントラネット、エクストラネット、LAN、イーサネット、セルタワーもしくは衛星を介した無線通信、または通信を提供する任意のクライアントサーバシステムを含むことができる。そのような通信技術は、例えば、TCP/IP、UDP、またはOSIなどの任意の適切なプロトコルを使用することができる。
【0049】
[0061]上述のように、命令のセットが、本発明の処理で使用されてもよい。命令のセットは、プログラムまたはソフトウェアの形態のものであってもよい。ソフトウェアは、例えば、システムソフトウェアまたはアプリケーションソフトウェアの形態のものであってもよい。ソフトウェアはまた、例えば、別個のプログラムの集合、より大きいプログラム内のプログラムモジュール、またはプログラムモジュールの一部分の形態のものであってもよい。使用されるソフトウェアはまた、オブジェクト指向プログラミングの形態のモジュール式プログラミングを含むことができる。ソフトウェアは、処理されるデータをどう扱うかを処理機械に伝える。
【0050】
[0062]さらに、本発明の実施態様および運用において使用される命令または命令のセットは、処理機械が命令を読み取ることができるような適切な形態のものでありうることが理解される。例えば、プログラムを形成する命令は、1つまたは複数のプロセッサが命令を読み取ることを可能にするために機械語またはオブジェクトコードに変換される適切なプログラミング言語の形態のものとすることができる。すなわち、特定のプログラミング言語におけるプログラミングコードまたはソースコードの書かれたラインは、コンパイラー、アセンブラー、またはインタープリターを使用して機械語に変換される。機械語は、例えば、特定のタイプの処理機械、すなわち、特定のタイプのコンピュータに特有である2値符号化機械命令である。コンピュータは機械語を理解する。
【0051】
[0063]任意の適切なプログラミング言語が、本発明の様々な実施形態に従って使用されてもよい。例証として、使用されるプログラミング言語は、例えば、アセンブリ言語、Ada、APL、Basic、C、C++、COBOL、dBase、Forth、Fortran、Java、Modula-2、Pascal、Prolog、REXX、Visual Basic、および/またはJavaScriptを含むことができる。さらに、単一のタイプの命令または単一のプログラミング言語が本発明のシステムおよび方法の運用に関連して利用されることは必要ではない。むしろ、任意の数の異なるプログラミング言語が、必要および/または所望に応じて利用されてもよい。
【0052】
[0064]同様に、本発明の実施において使用される命令および/またはデータは、所望されうるように、任意の圧縮または暗号化技法またはアルゴリズムを利用することができる。暗号化モジュールが、データを暗号化するために使用されてもよい。さらに、ファイルまたは他のデータが、例えば、適切な解読モジュールを使用して解読されてもよい。
【0053】
[0065]上述のように、本発明は、例証として、例えば、少なくとも1つのメモリを含むコンピュータまたはコンピュータシステムを含む処理機械の形態で具現化することができる。コンピュータオペレーティングシステムが上述の運用を実行することを可能にする命令のセット、すなわち、例えば、ソフトウェアが、所望に応じて、多種多様な1つまたは複数の媒体のうちの任意の媒体に含まれてもよいことを理解されたい。さらに、命令のセットによって処理されるデータはまた、多種多様な1つまたは複数の媒体のうちの任意の媒体に含まれてもよい。すなわち、本発明で使用される命令のセットおよび/またはデータを保持するために利用される処理機械内の特定の媒体、すなわち、メモリは、例えば、様々な物理的形態または伝送媒体のうちの任意のものをとることができる。例証として、媒体は、紙、透明紙、コンパクトディスク、DVD、集積回路、ハードディスク、フロッピーディスク、光ディスク、磁気テープ、RAM、ROM、PROM、EPROM、ワイヤ、ケーブル、ファイバ、通信チャネル、衛星伝送、メモリカード、SIMカード、または他の遠隔伝送、ならびに本発明のプロセッサが読み取ることができる任意の他のデータの媒体またはソースの形態のものとすることができる。
【0054】
[0066]さらに、本発明を実施する処理機械で使用される1つまたは複数のメモリは、所望に応じて、メモリが命令、データ、または他の情報を保持することを可能にする多種多様な形態のうちの任意の形態とすることができる。したがって、メモリは、データを保持するためのデータベースの形態のものであってもよい。データベースは、例えば、フラットファイル構成またはリレーショナルデータベース構成などの任意の所望のファイルの構成を使用することができる。
【0055】
[0067]本発明のシステムおよび方法において、様々な「ユーザインターフェース」を利用して、ユーザは、本発明を実施するために使用される1つまたは複数の処理機械とインターフェースすることが可能になる。本明細書で使用するとき、ユーザインターフェースは、ユーザが処理機械と対話することを可能にする、処理機械によって使用される任意のハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組合せを含む。ユーザインターフェースは、例えば、ダイアログスクリーンの形態のものであってもよい。ユーザインターフェースは、マウス、タッチスクリーン、キーボード、キーパッド、音声リーダ、音声認識器、ダイアログスクリーン、メニューボックス、リスト、チェックボックス、トグルスイッチ、プッシュボタン、または、任意の他のデバイスであって、任意の他のデバイスが命令のセットを処理するおよび/または処理機械に情報を提供するときに、処理機械の運用に関する情報をユーザが受け取ることを可能にする、任意の他のデバイスのうちの任意のものをさらに含むことができる。したがって、ユーザインターフェースは、ユーザと処理機械との間の通信を提供する任意のデバイスである。ユーザインターフェースを通してユーザによって処理機械に提供される情報は、例えば、コマンド、データの選択、または何らかの他の入力の形態のものであってもよい。
【0056】
[0068]上述で論じたように、ユーザインターフェースは、命令のセットを実行する処理機械によって利用され、その結果、処理機械は、ユーザのためにデータを処理する。ユーザインターフェースは、一般に、情報を伝達するかまたはユーザからの情報を受け取るためにユーザと対話するための処理機械によって使用される。しかしながら、本発明のシステムおよび方法のいくつかの実施形態によれば、人間のユーザが本発明の処理機械によって使用されるユーザインターフェースと実際に対話することは必要でないことが理解されるべきである。むしろ、本発明のユーザインターフェースは、人間のユーザではなく別の処理機械と対話する、すなわち、情報を伝達し情報を受け取ることができることも企図される。したがって、他の処理機械は、ユーザと見なされてもよい。さらに、本発明のシステムおよび方法で利用されるユーザインターフェースは、別の1つまたは複数の処理機械と部分的に対話するとともに、人間のユーザとも部分的に対話することができることが企図される。
【0057】
[0069]本発明が広範囲の実用性および用途を受け入れることができることが当業者によって容易に理解されるであろう。本明細書に記載されたもの以外の本発明の多くの実施形態および適応形態、ならびに多くの変形形態、修正形態、および等価形態が、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、本発明および本発明の前述の説明から明らかになるか、またはそれによって合理的に示唆されるであろう。
【0058】
[0070]したがって、本発明が、例示的な実施形態に関連してここで詳細に記載されたが、本開示は、単なる本発明の例証および例示であり、本発明の実施可能な程度の開示を提供するために行われていることを理解されたい。したがって、前述の開示は、本発明を限定する、または別の方法で任意の他のそのような実施形態、適応形態、変形形態、修正形態、もしくは等価形態を排除すると解釈されるように意図されていない。