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特許7507163テトラチオモリブデン酸アンモニウムの調製方法
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  • 特許-テトラチオモリブデン酸アンモニウムの調製方法 図1
  • 特許-テトラチオモリブデン酸アンモニウムの調製方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】テトラチオモリブデン酸アンモニウムの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 39/06 20060101AFI20240620BHJP
   C07C 213/08 20060101ALI20240620BHJP
   C07C 215/40 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C01G39/06
C07C213/08
C07C215/40
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021540510
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 IB2020050276
(87)【国際公開番号】W WO2020148654
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】62/792,292
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】オルトナー, ヴィヴェカ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァールストレーム, ニクラス
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1557697(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105668628(CN,A)
【文献】特表2006-506466(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107469837(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102126756(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103553134(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1631527(CN,A)
【文献】特開昭60-071688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 39/06
C07C 213/08
C07C 215/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性テトラチオモリブデン酸アンモニウム(ATTM)の製造プロセスであって、前記プロセスが、
ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、酸化モリブデン、及びこれらの水和物から選択されるモリブデン化合物を、撹拌下で反応槽内で水及びアンモニアと接触させて、モリブデン化合物溶液を得ることと、
反応混合物を得るための時間にわたり、4.5:1~6.5:1の範囲のS:Moのモル比に対応する量で、硫化アンモニウムを前記モリブデン化合物溶液に供給することと、
少なくとも4時間の反応時間の間、反応混合物を35℃~55℃の範囲の温度で維持してスラリーを生成することと
記スラリーから液体を取り除き、結晶性ATTMを得ることと、を含
前記結晶性ATTMが、9%(w/w)未満の[MoOS 2- 不純物を含む、前記プロセス。
【請求項2】
結晶化溶媒を前記スラリーに提供することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記スラリーを、少なくとも2時間、10℃~30℃の範囲の温度で維持することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記モリブデン化合物が、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、及びこれらの水和物から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記モリブデン化合物がヘプタモリブデン酸アンモニウムまたはヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記モリブデン化合物がジモリブデン酸アンモニウムである、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
硫化アンモニウムが、4.5:1~6.2:1の範囲のS:Moモル比に対応する量で提供される、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記反応混合物を得るための時間が少なくとも15分である、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記反応混合物が40℃~55℃の範囲の温度で維持される、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記反応時間が4時間~8時間の範囲である、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記結晶化溶媒が前記スラリーに供給され、前記結晶化溶媒がメタノール、エタノール、エチレングリコール、石油エーテル、n-ヘキサン、テトラヒドロフラン、トルエン、水、及びこれらの混合物から選択される、請求項2~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記溶媒が15分~30分の範囲の時間にわたり供給される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記スラリーが、10℃~30℃の範囲の温度で少なくとも3時間維持される、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
スラリーを10℃~30℃の範囲の温度まで徐々に冷却し、その後、0.2~1℃/分の冷却速度を維持することをさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記結晶性ATTMを、アルコール、水、またはこれらの混合物のうちの少なくとも1つで洗浄することをさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記結晶性ATTMを、エタノールと水との混合液、またはエタノールで洗浄することをさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
硫化水素が副生物として得られ、さらに、次亜塩素酸ナトリウムまたは過酸化水素溶液を含む第2の反応槽に排出される、請求項1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記結晶性ATTMが、10%(w/w)未満の全モリブデン不純物を含み、前記モリブデン不純物が、[MoO 2- 、[MoO S] 2- 、[MoO 2- 、及び[MoOS 2- のうちの1つ以上から選択される、請求項1~17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の製造プロセスであって、前記プロセスが、
ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、酸化モリブデン、及びこれらの水和物から選択されるモリブデン化合物を、撹拌下で反応槽内で水及びアンモニアと接触させてモリブデン化合物溶液を得ることと、
4.5:1~6.5:1の範囲のS:Moモル比に対応する量で、硫化アンモニウムをモリブデン化合物溶液に対して時間にわたって供給して、反応混合物を得ることと、
少なくとも4時間の反応時間で、35℃~55℃の範囲の温度で前記反応混合物を維持してスラリーを生成することと、
前記スラリーから液体を取り除き、結晶性ATTMを得ることであって、前記結晶性ATTMが9%(w/w)未満の[MoOS 2- 不純物を含むことと、
水酸化コリンの水溶液を、前記結晶性ATTM及び水と接触させて、反応混合物を得ることと、
前記反応混合物を、粗ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩を得るための反応時間の間、10℃~40℃の範囲の温度で維持することと、
エタノールを前記反応混合物に、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩を得るための時間にわたり、35℃~55℃の範囲の温度で供給することと、を含み、
得られた前記ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩が、0.1%(w/w)未満の[MoOS 2- 不純物を含む、前記プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月14日に出願された、米国特許仮出願番号第62/792,292号の利益を主張し、その全てが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、医薬グレードの純度を有する結晶性テトラチオモリブデン酸アンモニウム、及び、結晶性テトラチオモリブデン酸アンモニウムの製造プロセスに関する。本開示は、医薬グレードの純度を有するビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の製造プロセスにもまた関する。
【背景技術】
【0003】
テトラチオモリブデン酸アンモニウム((NHMoS;ATTM)は、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩(BC-TTM)を製造するための、規制のある出発物質の1つである。BC-TTMを調製するための一反応の例を、スキーム1に示す。
【0004】
スキーム1
【化1】
BC-TTMの品質は、ATTMの質(即ち、ATTMの純度)に著しく影響を受けることが測定された。
【0005】
ATTMは市販されている。しかし、市販されているATTMは、比較的多量の不純物を含有している。とりわけ、市販されているATTMの不純物のプロファイルは、バッチ間で、及び、商業用供給業者の間でも非常に異なっている。さらに、市販されているATTMのバッチサイズは比較的小さく、このことは、ATTMの商業的製造がラボスケールで実施されることを示している。スケールの小さい、現在の名目上「商業的」製造は、供給、及び、BC-TTM反応の実施能力に影響を与え、多くのATTMのバッチを用いることで、潜在的に、規制上及び安全性の問題をもたらし得る。
【0006】
さらに、商業的なATTMの製造には、硫化水素(HS)との反応においてモリブデン酸塩(MoO 2-)を使用して、ATTMを得る:
【化2】
【0007】
硫化水素は非常に有害であり、腐食性、有毒性、かつ引火性の気体である。したがって、HSを用いることで、製造がラボスケール、または、かかる試薬を取り扱うことができる専用装置のセットアップにまで制限がかかるだけでなく、HSを使用することは、健康、安全性、及び環境の観点からも非常に問題がある。
【0008】
したがって、毒性のHSガスの使用及び/または放出を最小限に抑えることによる、大型製造スケールで、高純度及び収率でATTMを調製するプロセスが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、不純物の少ないATTMを得るための効率的なプロセスを提供する。具体的には、本開示は、結晶性ATTMの製造プロセスを提供する。かかるプロセスは、
ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、酸化モリブデン、及びこれらの水和物から選択されるモリブデン化合物を、撹拌下で反応槽内で水及びアンモニアと接触させて、モリブデン化合物溶液を得ることと、
反応混合物を得るのに十分な時間にわたり、4.5:1~6.5:1の範囲のS:Moのモル比に対応する量で、硫化アンモニウムをモリブデン化合物溶液に供給することと、
少なくとも4時間の反応時間の間、反応混合物を35℃~55℃の範囲の温度で維持してスラリーを生成することと、
任意に、結晶化溶媒を当該スラリーに供給することと、
任意に、当該スラリーを、少なくとも2時間、10℃~30℃の範囲の温度で維持することと、
当該スラリーから液体を取り除き、結晶性ATTMを得ることと、を含む。
【0010】
本開示の別の態様は、医薬グレードの純度を有する、本明細書に記載するプロセスにより得た結晶性ATTMを提供する。
【0011】
特定の実施形態では、かかるプロセスにより得た結晶性ATTMは、重量/重量(w/w)基準で、少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%純粋である。
【0012】
特定の実施形態では、かかるプロセスにより得た結晶性ATTMは、5%未満、または4%未満、または3%未満、または2.5%未満、または約2%(w/w)の[MoOS2-(TM3)純度を有する。
【0013】
本開示の別の態様は、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩が医薬グレードの純度を有する、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の製造プロセスを提供する。かかるプロセスは、
水酸化コリンの水溶液を、本明細書に記載するプロセスにより得た結晶性テトラチオモリブデン酸アンモニウム及び水と接触させて、反応混合物を得ることと、
当該反応混合物を、粗ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩を得るのに十分な反応時間の間、10℃~40℃の範囲の温度で維持することと、
エタノールを当該反応混合物に、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩を得るのに十分な時間にわたり、35℃~55℃の範囲の温度で提供することと、を含む。
【0014】
特定の実施形態では、かかるプロセスにより得たビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩は、0.5%未満、または0.25%未満、または0.2%未満(w/w)のTM3不純物を有する。
【0015】
添付の図面は、本開示の方法及び材料のさらなる理解を提供するために含められ、本明細書に組み込まれてその一部を構成する。図面は、本開示の1つ以上の実施形態(複数可)を示しており、詳細な説明とともに本開示の原理及び動作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示のプロセスで使用するのに好適な反応器系を示す。
図2】本開示のプロセスで使用するのに好適な反応器系を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
開示された方法及び材料を記載する前に、本明細書で記載される態様は、特定の実施形態に限定されず、またそのために当然、変化し得ることと理解されるべきである。また、本明細書で使用する用語は特定の態様を記述することのみを目的としており、本明細書で具体的に定義されない限り、限定を意図するものではないことも理解されなければならない。
【0018】
本開示の観点において、本明細書に記載するプロセスは、所望の必要性を満たすために、当業者により構成することができる。一般に、開示したプロセスは、大きな規模で、優れた純度及び収率でテトラチオモリブデン酸アンモニウムを製造するためのプロセスを提供する。例えば、現在のプロセスは、キログラム規模でのATTMの製造が可能となる。特定の実施形態では、結晶性ATTMは、本開示のプロセスを使用して、少なくとも75%、及び多くの場合、80%または83%を上回る収率で得られる。さらに、特定の実施形態では、かかる結晶性ATTMは、少なくとも96%(w/w)純粋、及び多くの場合、98%(w/w)純粋な優れた純度を有し、最も望ましくない不純物であるTM3は、4%(w/w)をはるかに下回る濃度、例えば3%未満、または2.5%未満、またはさらに2%(w/w)未満である。
【0019】
さらに、本開示のプロセスは、以下の実施例における化学反応において示すように、硫化アンモニウムを使用してATTMを得る。したがって、本開示のプロセスは、硫化水素を用いることで関連する、深刻な健康上、安全性上、及び環境上の懸念を回避する。特定の実施形態では、本開示のプロセスは、良好な製造プロセス基準を遵守する(cGMP)ように構成される。
【0020】
【化3】
したがって、本開示の一態様は、結晶性ATTMの製造プロセスを提供する。かかるプロセスは、モリブデン化合物を、撹拌下で反応槽内で水及びアンモニアと接触させて、モリブデン化合物溶液を得ることを含む。本開示のプロセスで使用するのに好適なモリブデン化合物としては、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、酸化モリブデン、及びこれらの水和物が挙げられる。特定の実施形態では、本開示のモリブデン化合物は、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、及びこれらの水和物から選択される。特定の実施形態では、本開示のモリブデン化合物は、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、及びこれらの水和物から選択される。本開示のいくつかの実施形態では、モリブデン化合物はヘプタモリブデン酸アンモニウムまたはヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物である。本開示のいくつかの実施形態では、モリブデン化合物はヘプタモリブデン酸アンモニウムである。本開示のいくつかの実施形態では、モリブデン化合物はヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物である。本開示のいくつかの実施形態では、モリブデン化合物はジモリブデン酸アンモニウムである。
【0021】
特定の実施形態では、モリブデン化合物に対して提供されるアンモニアは、反応中に、気相への硫化水素の放出を最小限にするのに十分な量で供給される。特定の実施形態では、アンモニアは、モリブデン化合物溶液を約pH10とするのに十分な量で提供される。
【0022】
本開示のプロセスは、硫化アンモニウムをモリブデン化合物溶液に供給して反応混合物を得ることを含む。特定の実施形態では、硫化アンモニウムはモリブデン化合物溶液に、反応混合物を得るのに十分な時間、例えば少なくとも15分、または少なくとも20分、または少なくとも30分供給される。硫化アンモニウムは水溶液として供給されてよい。硫化アンモニウムは、少なくとも10%の水溶液、または少なくとも15%の水溶液、または少なくとも20%の水溶液、または約20~48%の水溶液、または約20~24%の水溶液、または約40~48%の水溶液であってよい。
【0023】
本プロセスで使用するのに好適な硫化アンモニウムの量は、良好な収率及びロバストなプロセスを提供するのに十分なものでなくてはならないが、本プロセスで産生される毒性硫化水素の量を最小限に抑えるために、過剰であってもならない。したがって、本開示のプロセスにおいて、モリブデン化合物溶液に対して供給される硫化アンモニウムの量は、4.5:1~6.5:1の範囲のS:Moモル比に対応する量である。
【0024】
本開示のプロセスの特定の実施形態では、硫化アンモニウムは、4.5:1~6.2:1;または4.5:1~6:1;または4.5:1~5.8:1;または4.5:1~5.5:1;または4.5:1~5.3:1;または4.5:1~5:1;または4.8:1~6.5:1;または4.8:1~6.2:1;または4.8:1~6:1;または4.8:1~5.8:1;または4.8:1~5.5:1;または4.8:1~5.3:1;または4.8:1~5:1;または5:1~6.5:1;または5:1~6.2:1;または5:1~6:1;または5:1~5.8:1;または5:1~5.5:1;または5:1~5.3:1;または5.2:1~6.5:1;または5.2:1~6.2:1;または5.2:1~6:1;または5.2:1~5.8:1;または5.2:1~5.5:1;または5.5:1~6.5:1;または5.5:1~6.2:1;または5.5:1~6:1;または5.5:1~5.8:1;または5.3:1~5.7:1;または5.4:1~5.6:1;または5.45:1~5.55:1の範囲のS:Moモル比に対応する量で、モリブデン化合物溶液に対して供給される。本開示のプロセスの特定の実施形態では、硫化アンモニウムはモリブデン化合物溶液に対して、約5.5:1;または約6:1;約5:1;約4.5:1のS:Moモル比に対応する量で供給される。
【0025】
反応時間は、望ましくない不純物を最小限に抑えながら、合理的な期間にわたり良好な収率をもたらすのに十分でなければならない。したがって、反応混合物は35℃~55℃の範囲の温度で維持される。本開示のプロセスの特定の実施形態では、反応混合物は、40℃~55℃;または45℃~55℃;または50℃~55℃;または35℃~50℃;または40℃~50℃;または45℃~50℃;または35℃~45℃;または40℃~45℃;または45℃~50℃;または37℃~53℃;または38℃~52℃;または41℃~49℃;または42℃~48℃;または43℃~47℃;または44℃~46℃の範囲の温度で維持される。本開示のプロセスの特定の実施形態では、反応混合物は約45℃の温度で維持される。
【0026】
反応混合物は、少なくとも4時間の反応時間維持される。本開示のプロセスの特定の実施形態では、反応時間は、少なくとも4.5時間;または少なくとも5時間;または4時間~8時間の範囲;または4時間~7時間の範囲;または4時間~6時間の範囲;または4時間~5時間の範囲;または4.5時間~8時間の範囲;または4.5時間~7時間の範囲;または4.5時間~6時間の範囲;または4.5時間~5時間の範囲;または5時間~8時間の範囲;または5時間~7時間の範囲;または5時間~6時間の範囲;または5.5時間~6時間の範囲;または4.5時間~5.5時間の範囲;または4.6時間~5.4時間の範囲;または4.7時間~5.3時間の範囲;または4.8時間~5.2時間の範囲;または4.9時間~5.1時間の範囲である。本開示のプロセスの特定の実施形態では、反応時間は約5時間である。反応時間の終了時に、ATTMのスラリーが形成される。
【0027】
本開示のプロセスにおいて、結晶化溶媒を任意にスラリーに付与し、元の反応スラリーからの収率を増加させる。好適な結晶化溶媒が当該技術分野において公知であり、アルコール(例えばメタノール、エタノールなど)、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、水、及びこれらの混合物から選択され得る。特定の実施形態では、結晶化溶媒はエタノールである。エタノールは、約30~60体積%;または約30~50vol%;または約30~40vol%;または約30~35vol%;または約35~40vol%;または約35~45vol%;または約33~37vol%;または約34~36vol%の量で供給され得る。
【0028】
特定の実施形態では、結晶化溶媒は、少なくとも15分;または少なくとも20分;または少なくとも25分;または15分~30分の範囲の時間にわたり;または15分~25分;または15分~20分;または20分~30分;または20分~25分;または18分~22分;または約20分供給される。結晶化溶媒はまた、35℃~55℃の範囲の温度で供給される。特定の実施形態では、結晶化溶媒は、40℃~55℃;または45℃~55℃;または50℃~55℃;または35℃~50℃;または40℃~50℃;または45℃~50℃;または35℃~45℃;または40℃~45℃;または45℃~50℃;または37℃~53℃;または38℃~52℃;または41℃~49℃;または42℃~48℃;または43℃~47℃;または44℃~46℃の範囲の温度で提供される。特定の実施形態では、結晶化溶媒は約45℃の温度で供給される。
【0029】
本明細書に記載するスラリーを次に、任意に、10℃~30℃の範囲の温度まで冷却する。特定の実施形態では、冷却は徐々であってよく、例えば0.1~2℃/分;または0.2~2℃/分;または0.1~1℃/分;または0.2~1℃/分;または約0.6℃/分;または約0.5℃/分の冷却速度であってよい。特定の実施形態では、徐々の冷却は、少なくとも30分;または少なくとも45分;または少なくとも1時間;または30分~1時間にわたる。
【0030】
スラリーは、任意に撹拌しながら、任意に、10℃~30℃の範囲の温度で少なくとも2時間維持される。特定の実施形態では、スラリーは、任意に撹拌しながら、10℃~30℃の範囲の温度で少なくとも3時間;または少なくとも5時間;または少なくとも6時間;または少なくとも7時間;または少なくとも8時間;または少なくとも9時間;または少なくとも10時間;または少なくとも11時間;または少なくとも12時間;または8時間~16時間の範囲の時間;または10時間~16時間;または8時間~14時間;または10時間~14時間;または8時間~12時間;または10時間~12時間維持される。特定の実施形態では、スラリーは、任意に撹拌しながら、10℃~25℃;もしくは10℃~20℃;もしくは10℃~15℃;もしくは15℃~30℃;もしくは15℃~25℃;もしくは15℃~20℃;もしくは20℃~30℃;もしくは18℃~22℃;もしくは19℃~21℃の範囲の温度で;または約15℃;もしくは約20℃;もしくは約25℃の温度で維持される。
【0031】
本開示のプロセスにおいて、結晶性ATTMは液体(本明細書においては、「母液(mother liquid/mother liquor)」とも標識される。)を取り除くことにより得られる。液体を取り除くことには、当該技術分野において公知の好適な方法により実施され得る。特定の実施形態では、液体は、nutscheフィルター、Buechnerフィルター、焼結ガラスフィルター、紙フィルター、または同様のフィルターなどによる濾過により取り除かれる。特定の実施形態では、液体は遠心分離により取り除かれる。
【0032】
特定の実施形態では、本開示のプロセスは、結晶性ATTMを、エタノール、水、またはエタノール:水混合物のうちの少なくとも1つで洗浄することをさらに含む。特定の実施形態では、本プロセスは、結晶性ATTMを2:1のエタノール:水で洗浄することをさらに含む。特定の実施形態では、本プロセスは、結晶性ATTMを2:1のエタノール:水で洗浄し、続いてエタノールで洗浄することをさらに含む。特定の実施形態では、本プロセスは、結晶性ATTMをエタノールで洗浄することをさらに含む。
【0033】
特定の実施形態では、本開示のプロセスは、結晶性ATTMを減圧下にて(例えば真空オーブン中で)約25℃にて乾燥させることをさらに含む。
【0034】
特定の実施形態では、本開示のプロセスは、アルゴン下で結晶性ATTMを保管することをさらに含む。特定の実施形態では、保管は低温(例えば-20℃~0℃;または約-15℃;または約-18℃;または約-20℃)にてなされる。
【0035】
本開示のプロセスは、硫化水素副生物もまた産生する。特定の実施形態では、副生物として得られた硫化水素は、次亜塩素酸ナトリウムまたは過酸化水素溶液を含む第2の反応槽に排出される。次亜塩素酸ナトリウムまたは過酸化水素溶液は、硫化水素をクエンチするのに十分な量で、第2の反応槽に存在する。特定の実施形態では、次亜塩素酸ナトリウムまたは過酸化水素溶液は、少なくとも50モル当量、または少なくとも60モル当量、または少なくとも61モル当量、または少なくとも70モル当量の量で存在する。特定の実施形態では、第2の反応槽は過酸化水素溶液を含む。過酸化水素は、水溶液、例えば少なくとも20%の水溶液、または少なくとも30%の水溶液、または少なくとも35%の水溶液、または約30~40%の水溶液、または約35%の水溶液として提供されてよい。
【0036】
本開示のプロセスは、大規模製造に好適である。したがって、特定の実施形態では、本プロセスによりキログラム規模の反応が可能になる。例えば、モリブデン化合物は、少なくとも1kg;または少なくとも2kg;または少なくとも5kg;または少なくとも10kgの量で提供される。
【0037】
本明細書に記載するプロセスにより得られる結晶性ATTMは、医薬グレードの純度を有する。例えば、特定の実施形態では、結晶性ATTMは、少なくとも88%、または少なくとも89%、または少なくとも90%、または少なくとも91%、または少なくとも92%、または少なくとも93%、または少なくとも94%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%、または少なくとも100%(w/w)純粋である。
【0038】
本明細書に記載するプロセスにより得られる結晶性ATTMは、低濃度のTM3不純物を有する。特定の実施形態では、結晶性ATTMは、9%未満、または8%未満、または7%未満、または6%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満、または2.5%未満、または2%未満、または1%未満、または約2%(w/w)のTM3不純物を含む。
【0039】
他のモリブデン不純物、例えば[MoO2-(TM0)、[MoOS]2-(TM1)、[MoO2-(TM2)、及び[MoOS2-(TM3)もまた、少量である。
【0040】
【化4】
特定の実施形態では、結晶性ATTMは、10%未満、または9%未満、または8%未満、または7%未満、または6%未満、または5%未満、または4%未満、または3%(w/w)未満の全モリブデン不純物を含み、モリブデン不純物は、TM0、TM1、TM2、及びTM3のうちの1または2以上から選択される。
【0041】
高分子モリブデン不純物、例えば以下に示す二量体S6及び二量体S7もまた、少量である。
【0042】
【化5】
特定の実施形態では、結晶性ATTMは、1%以下、または0.8%以下、または0.6%以下、または0.5%以下、または0.1%以下、または0.05%以下、または0.01%(w/w)以下の高分子モリブデン不純物を含む。
【0043】
本開示の別の態様は、医薬グレードの純度を有するビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の製造プロセスを提供する。かかるプロセスでは、本明細書に記載するプロセスに従い調製した結晶性ATTMを用いる。上記のとおり、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の純度は、ATTMの純度に非常に依存する。
【0044】
特定の実施形態では、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の製造プロセスは、
水酸化コリンの水溶液を、本明細書に記載する本プロセスに従い調製した結晶性ATTM及び水と反応させて、反応混合物を得ることと、
当該反応混合物を、粗ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩を得るのに十分な反応時間の間、10℃~40℃の範囲の温度で維持することと、
エタノールを当該反応混合物に、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩を得るのに十分な時間にわたり、35℃~55℃の範囲の温度で供給することと、を含む。
【0045】
特定の実施形態では、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の製造プロセスは、その全体が本明細書に参照により組み込まれている、米国特許第7,189,865 B2(Robert J.Ternansky et al.)において提供されているとおりである。
【0046】
特定の実施形態では、本明細書に記載するプロセスで得られるビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩は、非常に低濃度のTM3不純物を有する。特定の実施形態では、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩は、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、0.09%未満、または0.05%(w/w)未満のTM3不純物を含む。
【0047】
定義
本明細書を通して、文脈において別様に必要とされない限り、語句「を含む(comprise)」及び「を含む(include)」、ならびに変形(例えば「を含む(comprises/comprising/includes/including)」)は、記述した構成要素、特徴、要素、もしくは工程、または構成要素、特徴、要素、もしくは工程の群の含有を示唆し、任意の他の整数もしくは工程、または整数もしくは工程の群を除外するものではないと理解されよう。
【0048】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈によりそうでないことが明確に示されない限り、複数形の指示対象を含む。
【0049】
本明細書中及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「アルコール」は、ヒドロキシ官能基(-OH)が炭素分子に結合した、1または2以上の有機化合物の部類であると理解される。例としては、直鎖または分枝鎖にかかわらず、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールが挙げられるが、これらに限定されない。エタノールが特に興味深い。
【実施例
【0050】
本開示の特定の態様が、以下の実施例により更に示される。これらは、本開示の範囲及び精神を、それらの中で記載される特定のプロセス及び材料に限定するものと解釈されてはならない。
【0051】
実施例1:本開示に従ったプロセス
本プロセスで使用する反応器系を図1に示す。手短かに言えば、ヘプタモリブデン酸アンモニウム(10kg)、続いて水(20L)及びアンモニア(5.5kg、6L)を反応器R14に添加し、撹拌した。硫化アンモニウム(97kg)を少なくとも30分の期間にわたり添加した。温度を次に、約45℃に調節した。約5時間後、エタノール(54kg、66L)を、少なくとも20分の期間にわたり約45℃で添加した。エタノールの添加後、スラリーを徐々に約20℃まで、少なくとも1時間の期間にわたり冷却し、の後、少なくとも12時間約20℃で撹拌した。生成物をnutscheフィルターで単離し、母液をR11で収集した。母液は、部分的にR14に、ポンプにより戻すことができ、必要な場合、これを使用して、反応器R14中で残留物を洗い流すことができる。nutscheフィルター上の生成物を、エタノール:水の混合物(2:1、22L)で洗浄した。母液及び洗浄液を、R11からR14に移した。濾塊をさらに、エタノール(3×25L)で洗浄した。洗浄液をR11からR14に移した。生成物を収集し、約25℃で真空オーブン中で乾燥させた。減圧下にて恒量まで乾燥を行った。その後、生成物をアルゴン下で充填し、冷凍機内で保管した。母液及び洗浄液を、R14中で過酸化水素と反応させた。クエンチした溶液を使用して、nutscheフィルター及びR11もまた洗浄した。
【0052】
実施例2:市販されているATTMとの比較
ATTMを、本明細書に記載するプロセスに従い製造し、粗生成物の純度を評価した。3つの異なる実験である2-1、2-2、及び2-3の結果を、表1に示す。市販されているATTMと比較して、本開示のプロセスにより得た粗生成物は、低濃度のTM3及び全不純物を有した。
【表1】
【0053】
実施例3:モリブデン化合物の評価
ジモリブデン酸アンモニウム((NHMo)、ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物((NHMo24 4HO)、及びモリブデン酸ナトリウム二水和物(NaMoO 2HO)を、本開示のプロセスで使用した。これらのモリブデン化合物を、同一バッチの硫化アンモニウム、及び同一手順を用いて、約5~10グラム規模で試験した。表2に示すように、3つのモリブデン化合物では全て、95.7~96.6%(w/w)の純度範囲を有する、87~89%の収率で、ATTMが得られた。
【表2】
【0054】
さらに重要なことに、異なるモリブデン化合物から調製したATTMは、BC-TTMの調製で使用する場合においても、低い不純物濃度を有する生成物をもたらした。表3に示すように、BC-TTMはATTMから調製し、これは、上記実施例3-1、3-9、及び3-10から調製した。3つのBC-TTMの調製物は全て、約78%の収率をもたらし、優れた分析特性を備え、良好な余地を持ってBC-TTMの規格を通過した。
【表3】
【0055】
実施例4:溶解度及び結晶化溶媒の評価
ATTMの溶解度を、サンプル溶液(HPLC)、メタノール、エタノール、及び精製水中で測定した。ATTMの溶解度はアルコール、特にエタノールで低く、水ではより高かったことを、測定は示した。
【0056】
反応の完了後、エタノール35体積%を添加し、生成物をさらに沈殿させた。同様の規模及び約35℃にて実施する反応において、35体積%、及び45体積%のエタノールを添加しての収率の差は、18%であった。結晶化溶媒の添加を省いて、約45℃で反応を実施することにより、単離収率が63%まで低下した。反応の完了後に、57体積%のエタノールを添加して、さらなる沈殿を誘発することによって、ある程度不純物が遅く溶出する生成物が得られた。
【0057】
実施例5:本開示のいくつかの実施形態に従ったプロセス
反応結果(収率及び純度)に大きな影響を有することが見いだされた2つの因子は、反応温度と、硫化アンモニウムの当量数(即ち、S:Moモル比)である。いくつかの実験を表4に示す。実験は、実施例1に示すプロセスを用いて実施し、反応時間は5時間で一定に維持した。
【表4-1】
【表4-2】
【0058】
実施例6:出口気体のクエンチ、清浄化、及びスクラビング
毒性試薬の廃棄物と取扱いを減らすため、ロバストな製造プロセスを得るのにちょうど十分な硫化アンモニウムを用いて、ATTMの反応を進めた。過剰な試薬の使用は避けた。室内実験での廃液により、少なくとも部分的に硫化水素を含んだ圧力を生じたことが最初に観察された。このことは、廃液がクエンチ前に灰化することができなかったことを意味する。
【0059】
母液中の過剰の硫化アンモニウム(遊離した毒性硫化水素)を、酸化剤、次亜塩素酸ナトリウム、または過酸化水素を添加することでクエンチし、HS検出器を使用してクエンチを制御した。
【0060】
過酸化水素(35%水溶液)を、安全上の理由、及び取扱いの容易さから、反応器中でのクエンチの間の、硫黄残留物の主要酸化剤として選択した。本プロセスで予想されるATTMの単離収率に基づき、クエンチに必要な過酸化水素の量を計算することができる。理論上、硫化水素を完全に酸化して、対応する硫化物酸化状態にするには、4当量の過酸化水素が必要である。過剰の未反応の硫化アンモニウムは、83%の保存サンプル反応収率に基づき、及び、各モリブデンが4つの硫黄原子を有するという事実に基づき、計算した。したがって、過剰の硫化水素を全て安全にクエンチするには、およそ61モル当量の過酸化水素が必要であった。計算のために本手法を用いて、クエンチは、硫化水素を含まず、安全に処分できる溶液を繰返し生成した。
【0061】
クエンチに関連する安全上の懸念は、クエンチは非常に発熱性であるということであるが、発熱反応は追加制御される。およそ75%の過酸化水素が添加されたとき、クエンチ溶液の色が変化したが、より重要なことには、気体の放出の増加が始まった。気体放出もまた、追加制御とみなした。クエンチ溶液は、約10のpHを有し、過酸化水素を添加することにより反応器内での酸素含有量が増加したことが観察された。このことは、過酸化水素がアルカリ性pHにて酸素を遊離させ得るということを述べる初期の報告と調和する。窒素でのフラッシングを増加させることによる放出酸素の希釈を、次に用いた。
【0062】
過酸化水素によるクエンチの後、クエンチ溶液を排出して、溶解した気体を処分の前に取り除いた。反応を実施した反応器の清浄化の最も効率的な方法は、初期の水洗浄によりあらゆる残留過酸化物を取り除き、その後、水を上から充填して塩を取り除くことを含んだ。水を取り除いた後、反応器を2回、還流エタノールで洗い流し、冷却管内に昇華した残留物を取り除いた。冷却管からの残留物を分析することで、単離固体の一部が、測定されない酸化状態の硫黄を含有したことが確認された。
【0063】
スクラバー培地として、水中での次亜塩素酸ナトリウムの希釈塩基性溶液を選択した。この試薬は、塩基性pHにおいて安定し、硫化水素よりも高い溶解性が確実となり、また、効率的に毒性硫黄気体を取り除いた。
【0064】
実施例7:長期間安定度の研究
基本的には、12kgのヘプタモリブデン酸アンモニウムから開始する実施例1の手順に従い、ATTMサンプル1及び2を調製した。単離した生成物を充填し、直ちに保管した。具体的に、サンプルを、透明の帯電防止ポリエチレンプラスチックバッグ(90 10 10、110mm×170mm)中でアルゴン下にて、バルク物質の包装に対応して包装し、サンプルを含有するバッグをプラスチック製タイで封止した後、溶接したアルミニウムバッグ中に充填した。これら2つのバッグの間には乾燥剤を備えた。さらなるサンプルを、透明の帯電防止ポリエチレンプラスチックバッグ(90 10 10、110mm×170mm)に、周囲環境で包装した。サンプルを含有するバッグをプラスチック製タイで封止した後、溶接したアルミニウムバッグ中に充填した。これら2つのバッグの間には乾燥剤を備えた。HPLCにより測定した安定性評価の結果は表5にて以下に示し、6ヶ月後には、ATTMの著しい分解は示されていない。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【0065】
実施例8:本開示に従ったプロセス
本プロセスで使用する反応器系を図2に示す。手短かに言えば、次亜塩素酸ナトリウムの溶液を含有する、スクラバー、反応器R11を、反応器R14、及び中間バルク容器(IBC)に接続した。IBCは、母液の一時保管のために使用した。ヘプタモリブデン酸アンモニウム(13.3kg)、続いて水(27L)及びアンモニア(7.2kg、8L)を反応器R14に添加し、撹拌して溶液を形成した。硫化アンモニウム(128kg)を少なくとも30分にわたり添加し、その後、温度を45±5℃に調節した。5時間後に、エタノール(69kg、88L)を少なくとも20分、45±5℃で添加した。次に、溶液を少なくとも1時間、20±5℃まで冷却し、その後、少なくとも12時間撹拌した。生成物をnutscheフィルターで単離し、母液をIBC容器内で収集した。nutscheフィルター上の生成物を、エタノール/水2:1の混合物(29L)で洗浄し、母液及び洗浄液をIBC容器からR14に移した。濾塊をさらに、エタノール(3×33L)で洗浄した。洗浄液をIBC容器からR14に移した。生成物を収集し、トレー乾燥器内で25℃で乾燥した。減圧下にて乾燥を行い、一定重量にした。その後、生成物をアルゴン下で充填し、冷凍機内で保管した。
【0066】
本発明を実施するための、発明者らに知られた最良の形態を含む、本発明のいくつかの実施形態を本明細書で記載する。もちろん、これらの記載した実施形態の変形が、前述の説明を読み取る際には、当業者に明らかとなるであろう。発明者は、当業者がかかる変形を適切なように用いることを予期し、発明者は、本発明が本明細書に具体的に記載されるのとは別様で実践されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許可されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲で列挙される主題の全ての修正及び等価物を含む。さらに、それらの全ての可能な変形における、上記の要素の任意の組合せは、本明細書に別様が示されない限り、または文脈によって別様が明らかに矛盾しない限り、本発明によって包括される。
【0067】
本開示の様々な例示的実施形態としては、以下に記載する列挙された実施形態が挙げられるが、これらに限定されず、これらは、技術的または論理的に不一致でない任意数、及び、任意の組合せで合わせることができる。
【0068】
実施形態1は、結晶性テトラチオモリブデン酸アンモニウム(ATTM)の製造プロセスであって、当該プロセスが、
ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、酸化モリブデン、及びこれらの水和物から選択されるモリブデン化合物を、撹拌下で反応槽内で水及びアンモニアと接触させて、モリブデン化合物溶液を得ることと、
反応混合物を得るのに十分な時間にわたり、4.5:1~6.5:1の範囲のS:Moのモル比に対応する量で、硫化アンモニウムをモリブデン化合物溶液に供給することと、
少なくとも4時間の反応時間の間、反応混合物を35℃~55℃の範囲の温度で維持してスラリーを生成することと、
任意に、結晶化溶媒を当該スラリーに供給することと、
任意に、当該スラリーを、少なくとも2時間、10℃~30℃の範囲の温度で維持することと、
当該スラリーから液体を取り除き、結晶性ATTMを得ることと、を含む、当該プロセスを提供する。
【0069】
実施形態2は、モリブデン化合物が、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、及びこれらの水和物から選択される、実施形態1に記載のプロセスを提供する。
【0070】
実施形態3は、モリブデン化合物がヘプタモリブデン酸アンモニウムもしくはヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物である、または、モリブデン化合物がヘプタモリブデン酸アンモニウムである、または、モリブデン化合物がヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物である、実施形態1に記載のプロセスを提供する。
【0071】
実施形態4は、モリブデン化合物がジモリブデン酸アンモニウムである、実施形態1に記載のプロセスを提供する。
【0072】
実施形態5は、硫化アンモニウムが、4.5:1~6.2:1;または4.5:1~6:1;または4.5:1~5.8:1;または4.5:1~5.5:1;または4.5:1~5.3:1;または4.5:1~5:1;または4.8:1~6.5:1;または4.8:1~6.2:1;または4.8:1~6:1;または4.8:1~5.8:1;または4.8:1~5.5:1;または4.8:1~5.3:1;または4.8:1~5:1;または5:1~6.5:1;または5:1~6.2:1;または5:1~6:1;または5:1~5.8:1;または5:1~5.5:1;または5:1~5.3:1;または5.2:1~6.5:1;または5.2:1~6.2:1;または5.2:1~6:1;または5.2:1~5.8:1;または5.2:1~5.5:1;または5.5:1~6.5:1;または5.5:1~6.2:1;または5.5:1~6:1;または5.5:1~5.8:1;または5.3:1~5.7:1;または5.4:1~5.6:1;または5.45:1~5.55:1の範囲のS:Moモル比に対応する量で提供される、実施形態1~4のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0073】
実施形態6は、硫化アンモニウムが約5.5:1;または約6:1;約5:1;約4.5:1のS:Moモル比に対応する量で提供される、実施形態1~4のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0074】
実施形態7は、反応混合物を得るのに十分な時間が少なくとも15分、または少なくとも20分、または少なくとも30分である、実施形態1~6のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0075】
実施形態8は、反応混合物が、40℃~55℃;または45℃~55℃;または50℃~55℃;または35℃~50℃;または40℃~50℃;または45℃~50℃;または35℃~45℃;または40℃~45℃;または45℃~50℃;または37℃~53℃;または38℃~52℃;または41℃~49℃;または42℃~48℃;または43℃~47℃;または44℃~46℃の範囲の温度で維持される、実施形態1~7のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0076】
実施形態9は、反応混合物が約45℃の温度で維持される、実施形態1~7のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0077】
実施形態10は、反応時間が、少なくとも4.5時間;または少なくとも5時間;または4時間~8時間の範囲;または4時間~7時間の範囲;または4時間~6時間の範囲;または4時間~5時間の範囲;または4.5時間~8時間の範囲;または4.5時間~7時間の範囲;または4.5時間~6時間の範囲;または4.5時間~5時間の範囲;または5時間~8時間の範囲;または5時間~7時間の範囲;または5時間~6時間の範囲;または5.5時間~6時間の範囲;または4.5時間~5.5時間の範囲;または4.6時間~5.4時間の範囲;または4.7時間~5.3時間の範囲;または4.8時間~5.2時間の範囲;または4.9時間~5.1時間の範囲である、実施形態1~9のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0078】
実施形態11は、反応時間が約5時間である、実施形態1~9のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0079】
実施形態12は、結晶化溶媒がスラリーに供給される、実施形態1~11のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0080】
実施形態13は、結晶化溶媒がメタノール、エタノール、エチレングリコール、石油エーテル、n-ヘキサン、テトラヒドロフラン、トルエン、水、及びこれらの混合物から選択されるか、または結晶化溶媒がエタノールである、実施形態12に記載のプロセスを提供する。
【0081】
実施形態14は、溶媒が、少なくとも15分;または少なくとも20分;または少なくとも25分;または15分~30分の範囲の時間にわたり;または15分~25分;または15分~20分;または20分~30分;または20分~25分;または18分~22分;または約20分供給される、実施形態12または13に記載のプロセスを提供する。
【0082】
実施形態15は、溶媒が、40℃~55℃;または45℃~55℃;または50℃~55℃;または35℃~50℃;または40℃~50℃;または45℃~50℃;または35℃~45℃;または40℃~45℃;または45℃~50℃;または37℃~53℃;または38℃~52℃;または41℃~49℃;または42℃~48℃;または43℃~47℃;または44℃~46℃の範囲の温度で供給される、実施形態12~14のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0083】
実施形態16は、溶媒が約45℃の温度で供給される、実施形態12~14のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0084】
実施形態17は、スラリーが、10℃~30℃の範囲の温度で少なくとも3時間;または少なくとも5時間;または少なくとも6時間;または少なくとも7時間;または少なくとも8時間;または少なくとも9時間;または少なくとも10時間;または少なくとも11時間;または少なくとも12時間;または8時間~16時間の範囲の時間;または10時間~16時間;または8時間~14時間;または10時間~14時間;または8時間~12時間;または10時間~12時間維持される、実施形態1~16のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0085】
実施形態18は、スラリーが、10℃~25℃;もしくは10℃~20℃;もしくは10℃~15℃;もしくは15℃~30℃;もしくは15℃~25℃;もしくは15℃~20℃;もしくは20℃~30℃;もしくは18℃~22℃;もしくは19℃~21℃の範囲の温度で;または約15℃;もしくは約20℃;もしくは約25℃の温度で維持される、実施形態1~17のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0086】
実施形態19は、スラリーを10℃~30℃の範囲の温度まで徐々に冷却し、その後、0.2~1℃/分、または約0.6℃/分、または約0.5℃/分の冷却速度を維持することをさらに含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0087】
実施形態20は、徐々に冷却することが、少なくとも30分、または少なくとも45分、または少なくとも1時間;または30分~1時間の期間にわたる、実施形態19に記載のプロセスを提供する。
【0088】
実施形態21は、液体が、濾過または遠心分離によりスラリーから取り除かれる、実施形態1~20のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0089】
実施形態22は、濾過がnutscheフィルター、Buechnerフィルター、焼結ガラスフィルター、または紙フィルターによるものである、実施形態21に記載のプロセスを提供する。
【0090】
実施形態23は、結晶性ATTMを、アルコール、特にエタノール、水、またはエタノール:水混合物のうちの少なくとも1つで洗浄することをさらに含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0091】
実施形態24は、結晶性ATTMを2:1のエタノール:水で洗浄することをさらに含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0092】
実施形態25は、結晶性ATTMをアルコール、特にエタノールで洗浄することをさらに含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0093】
実施形態26は、結晶性ATTMを減圧下にて(例えば真空オーブン中で)約25℃にて乾燥させることをさらに含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0094】
実施形態27は、アルゴン下で結晶性ATTMを保管することをさらに含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0095】
実施形態28は、保管が低温(例えば-20℃~0℃;または約-15℃;または約-18℃;または約-20℃)にてなされる、実施形態27に記載のプロセスを提供する。
【0096】
実施形態29は、硫化水素は副生物として得られ、さらに、次亜塩素酸ナトリウムまたは過酸化水素溶液を含む第2の反応槽に排出される、実施形態1~28のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0097】
実施形態30は、モリブデン化合物が、少なくとも1kg;または少なくとも2kg;または少なくとも5kg;または少なくとも10kgの量で提供される、実施形態1~29のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0098】
実施形態31は、結晶性ATTMが少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%の収率で得られる、実施形態1~30のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0099】
実施形態32は、良好な製造プロセス基準を遵守する(cGMP)ように構成される、実施形態1~31のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0100】
実施形態33は、結晶性ATTMが、少なくとも88%、または少なくとも89%、または少なくとも90%、または少なくとも91%、または少なくとも92%、または少なくとも93%、または少なくとも94%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%、または少なくとも100%(w/w)純粋である、実施形態1~32のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0101】
実施形態34は、結晶性ATTMが、9%未満、または8%未満、または7%未満、または6%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満、または2.5%未満、または2%未満、または1%未満、または約2%(w/w)の[MoOS2-不純物を含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0102】
実施形態35は、結晶性ATTMが10%未満、または9%未満、または8%未満、または7%未満、または6%未満、または5%未満、または4%(w/w)未満の、[MoO2-、[MoOS]2-、[MoO2-、及び[MoOS2-のうちの1または2以上から選択される不純物を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0103】
実施形態36は、結晶性ATTMが、1%以下、または0.8%以下、または0.6%以下、または0.5%以下、または0.1%以下、または0.05%以下、または0.01%(w/w)以下の高分子モリブデン不純物を含む、実施形態1~35のいずれか1つに記載のプロセスを提供する。
【0104】
実施形態37. 医薬グレードの純度を有し、実施形態1~32のいずれか1つに記載のプロセスにより得られる、結晶性テトラチオモリブデン酸アンモニウム(ATTM)。
【0105】
実施形態38は、少なくとも88%、または少なくとも89%、または少なくとも90%、または少なくとも91%、または少なくとも92%、または少なくとも93%、または少なくとも94%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%、または少なくとも100%(w/w)純粋である、実施形態37に記載の結晶性ATTMを提供する。
【0106】
実施形態39は、9%未満、または8%未満、または7%未満、または6%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満、または2.5%未満、または2%未満、または1%未満、または約2%(w/w)の[MoOS2-不純物を含む、実施形態37または38に記載の結晶性ATTMを提供する。
【0107】
実施形態40は、10%未満、または9%未満、または8%未満、または7%未満、または6%未満、または5%未満、または4%(w/w)未満の全モリブデン不純物を含み、モリブデン不純物が、[MoO2-、[MoOS]2-、[MoO2-、及び[MoOS2-のうちの1または2以上から選択される、実施形態37~39のいずれか1つに記載の結晶性ATTMを提供する。
【0108】
実施形態41は、1%以下、または0.8%以下、または0.6%以下、または0.5%以下、または0.1%以下、または0.05%以下、または0.01%(w/w)以下の高分子モリブデン不純物を含む、実施形態37~40のいずれか1つに記載の結晶性ATTMを提供する。
【0109】
実施形態42は、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の製造プロセスであって、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩が医薬グレードの純度を有し、当該プロセスが、
水酸化コリンの水溶液を、実施形態37~41のいずれか1つに記載の結晶性テトラチオモリブデン酸アンモニウム及び水と接触させて、反応混合物を得ることと、
当該反応混合物を、粗ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩を得るのに十分な反応時間の間、10℃~40℃の範囲の温度で維持することと、
エタノールを当該反応混合物に、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩を得るのに十分な時間にわたり、35℃~55℃の範囲の温度で供給することと、を含む、当該プロセスを提供する。
【0110】
実施形態43は、得られるビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩が、0.1%未満、または0.09%未満、または0.05%(w/w)未満の[MoOS2-不純物を含む、実施形態42に記載のプロセスを提供する。
【0111】
本明細書に記載の実施例及び実施形態が例証のみを目的とするものであり、それを考慮した様々な修正または変更が当業者に提案され、本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に組み込まれるべきであることが理解される。本明細書で引用された全ての公報、特許、及び特許出願は、あらゆる目的のために参照として本明細書に組み込まれる。
本願発明は、下記態様をさらに提供する。
[項目1]
結晶性テトラチオモリブデン酸アンモニウム(ATTM)の製造プロセスであって、前記プロセスが、
ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、酸化モリブデン、及びこれらの水和物から選択されるモリブデン化合物を、撹拌下で反応槽内で水及びアンモニアと接触させて、モリブデン化合物溶液を得ることと、
反応混合物を得るのに十分な時間にわたり、4.5:1~6.5:1の範囲のS:Moのモル比に対応する量で、硫化アンモニウムを前記モリブデン化合物溶液に供給することと、
少なくとも4時間の反応時間の間、反応混合物を35℃~55℃の範囲の温度で維持してスラリーを生成することと、
任意に、結晶化溶媒を前記スラリーに供給することと、
任意に、前記スラリーを、少なくとも2時間、10℃~30℃の範囲の温度で維持することと、
前記スラリーから液体を取り除き、結晶性ATTMを得ることと、を含む、前記プロセス。
[項目2]
前記モリブデン化合物が、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、及びこれらの水和物から選択される、項目1に記載のプロセス。
[項目3]
前記モリブデン化合物がヘプタモリブデン酸アンモニウムまたはヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物である、項目1に記載のプロセス。
[項目4]
前記モリブデン化合物がジモリブデン酸アンモニウムである、項目1に記載のプロセス。
[項目5]
硫化アンモニウムが、4.5:1~6.2:1の範囲のS:Moモル比に対応する量で提供される、項目1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
[項目6]
反応混合物を得るのに十分な時間が少なくとも15分である、項目1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
[項目7]
前記反応混合物が40℃~55℃の範囲の温度で維持される、項目1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
[項目8]
前記反応時間が4時間~8時間の範囲である、項目1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
[項目9]
前記結晶化溶媒が前記スラリーに供給され、前記結晶化溶媒がメタノール、エタノール、エチレングリコール、石油エーテル、n-ヘキサン、テトラヒドロフラン、トルエン、水、及びこれらの混合物から選択される、項目1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
[項目10]
前記溶媒が15分~30分の範囲の時間にわたり供給される、項目9に記載のプロセス。
[項目11]
前記スラリーが、10℃~30℃の範囲の温度で少なくとも3時間維持される、項目1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
[項目12]
スラリーを10℃~30℃の範囲の温度まで徐々に冷却し、その後、0.2~1℃/分の冷却速度を維持することをさらに含む、項目1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
[項目13]
前記結晶性ATTMを、アルコール、水、またはこれらの混合物のうちの少なくとも1つで洗浄することをさらに含む、項目1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
[項目14]
前記結晶性ATTMを、2:1のエタノール:水、またはエタノールで洗浄することをさらに含む、項目1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
[項目15]
硫化水素が副生物として得られ、さらに、次亜塩素酸ナトリウムまたは過酸化水素溶液を含む第2の反応槽に排出される、項目1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
[項目16]
医薬グレードの純度を有し、項目1~15のいずれか1項に記載のプロセスにより得られる、結晶性テトラチオモリブデン酸アンモニウム(ATTM)。
[項目17]
9%(w/w)未満の[MoOS 2- 不純物を含む、項目16に記載の結晶性ATTM。
[項目18]
10%(w/w)未満の全モリブデン不純物を含み、前記モリブデン不純物が、[MoO 2- 、[MoO S] 2- 、[MoO 2- 、及び[MoOS 2- のうちの1または2以上から選択される、項目16または17に記載の結晶性ATTM。
[項目19]
ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の製造プロセスであって、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩が医薬グレードの純度を有し、前記プロセスが、
水酸化コリンの水溶液を、項目16~18のいずれか1つに記載の結晶性テトラチオモリブデン酸アンモニウム及び水と接触させて、反応混合物を得ることと、
前記反応混合物を、粗ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩を得るのに十分な反応時間の間、10℃~40℃の範囲の温度で維持することと、
エタノールを前記反応混合物に、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩を得るのに十分な時間にわたり、35℃~55℃の範囲の温度で供給することと、を含む、前記プロセス。
[項目20]
得られる前記ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩が、0.1%(w/w)未満の[MoOS 2- 不純物を含む、項目19に記載のプロセス。
図1
図2