(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】輝度レベル間の遷移のデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
G09G 5/10 20060101AFI20240620BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240620BHJP
G09G 5/37 20060101ALI20240620BHJP
H04N 19/85 20140101ALI20240620BHJP
H04N 19/46 20140101ALI20240620BHJP
H04N 5/57 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G09G5/10 B
G09G5/00 555D
G09G5/00 550X
G09G5/37 100
H04N19/85
H04N19/46
H04N5/57
(21)【出願番号】P 2021567900
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2020063941
(87)【国際公開番号】W WO2020239534
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-15
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518341334
【氏名又は名称】インターディジタル・シーイー・パテント・ホールディングス・ソシエテ・パ・アクシオンス・シンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト,エリック
(72)【発明者】
【氏名】アンドリヴォン,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】トゥゼ,デイビッド
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-046040(JP,A)
【文献】特表2018-536898(JP,A)
【文献】特開2018-097196(JP,A)
【文献】特開2018-017795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0249009(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0052833(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00-5/42
G02B 27/00-30/60
H04N 5/57
H04N 7/12
H04N 19/00-19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイに表示するためにビデオコンテンツを出力するデバイスにおける方法であって、
表示する手段により、第1のビデオコンテンツを前記ディスプレイに表示することと、
受信する手段により、表示する第2のビデオコンテンツを受信することと、
調整する手段により、第1の輝度値及び第2の輝度値間の比率を使用して計算された乗算係数を前記第2のビデオコンテンツのフレームの輝度に乗算することによって前記輝度を調整することであって、前記第1の輝度値は、前記第1のビデオコンテンツの
現在フレーム及び先行フレームを含む少なくとも複数のL個
のフレームの平均フレーム光度に等しく、前記第2の輝度値は前記第2のビデオコンテンツのメタデータから抽出され、前記第2の輝度値は、前記第2のビデオコンテンツの
現在フレーム及び先行フレームを含む少なくとも複数のL個
のフレームの平均フレーム光度に等しい、ことと、
出力する手段により、前記ディスプレイに表示するために、前記第2のビデオコンテンツの前記フレームを出力することと、
を含む方法。
【請求項2】
ビデオコンテンツはフレームを含み、前記第1の輝度値は、前記第1のビデオコンテンツの前記L個
のフレームの平均フレーム光度に等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の輝度値および前記第2の輝度値の少なくとも1つが入手不可能な場合、前記第1の輝度値の代わりに前記第1のビデオコンテンツの
コンテンツ全体の最大フレーム平均光度(MaxFALL)が使用され、前記第2の輝度値の代わりに前記第2のビデオコンテンツの
コンテンツ全体のMaxFALLが使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のビデオコンテンツは輝度値を含み、各輝度値は前記第1のビデオコンテンツのフレームと関連付けられ、前記第1の輝度値は、
前記現在フレームと関連付けられ
ている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の輝度値は、抽出する手段により、前記第2のビデオコンテンツの前記フレームと関連付けられたメタデータから抽出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のビデオコンテンツの前記フレームは、前記第2のビデオコンテンツにおいて時系的に最初である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記輝度は、トーンマッピングすることであって、トーンマッパは、前記輝度値間の比率を使用して特定されるパラメータで構成されている、トーンマッピングすることにより、又は逆トーンマッピングすることであって、逆トーンマッパは、前記輝度値間の比率を使用して特定されるパラメータで構成されている、逆トーンマッピングすることにより、調整する手段により調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記比率が所与の最大比率より大きい場合、前記所与の最大比率が前記比率の代わりに使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記乗算係数は、更新する手段により、
【数1】
として前記第2のビデオコンテンツの後続フレームについて反復更新され、式中、mは前記乗算係数であり、t
0及びt
0+1はインデックスであり、fは前記第2のビデオコンテンツのフレームレートに関連し、aは定数であり、τ
mはレートである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記レートτ
mは、前記ビデオコンテンツの秒数又はフレーム数として与えられる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抽出する手段により、前記第1の輝度値を前記第1のビデオコンテンツのメタデータから又は記憶装置から抽出することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ディスプレイに表示するためにビデオコンテンツを処理するデバイスであって、前記デバイスは、
表示する第2のビデオコンテンツを受信するように構成された入力インターフェースと、
少なくとも1つのプロセッサと、
を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
第1のビデオコンテンツを前記ディスプレイに表示することと、
前記第1のビデオコンテンツの
現在フレーム及び先行フレームを含む少なくとも複数のL個
のフレームの平均フレーム光度に等しい第1の輝度値と、前記第2のビデオコンテンツのメタデータから抽出され、前記第2のビデオコンテンツの
現在フレーム及び先行フレームを含む少なくとも複数のL個
のフレームの平均フレーム光度に等しい第2の輝度値間の比率を使用して計算された乗算係数を前記第2のビデオコンテンツのフレームの輝度に乗算することによって前記輝度を調整することと、
前記ディスプレイに表示するために、前記第2のビデオコンテンツの前記フレームを出力することと、
を行うように構成されている、デバイス。
【請求項13】
プロセッサにより実行されると、請求項1~11の少なくとも1項に記載の方法のステップを実施するプログラムコード命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、高ダイナミックレンジ(HDR)コンテンツ等の高輝度レンジを有するコンテンツの輝度管理に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
この項は、以下説明且つ/又は請求項に記載される本開示の種々の態様に関連し得る種々の態様を読み手に紹介することを目的とする。この論考は、本開示の種々の態様のよりよい理解を促進するために背景情報を読み手に提供するに当たり有用であると考えられる。したがって、これらの文がこれに鑑みて読まれるべきであり、先行技術の認可として読まれるべきではないことを理解されたい。
【0003】
高ダイナミックレンジ(HDR)ビデオコンテンツと標準ダイナミックレンジ(SDR)ビデオコンテンツとの顕著な違いは、HDRがより広い輝度範囲を提供すること、すなわち、HDRビデオコンテンツがより深い黒及びより明るい白を有することができることである。一例として、幾つかの現在のHDRディスプレイは輝度1000cd/m2を達成することができ、一方、典型的なSDRディスプレイは300cd/m2を達成することができる。
【0004】
これは、HDRディスプレイに表示されたとき、HDRビデオコンテンツが、輝度に関して言えば、通常、SDRディスプレイに表示されるSDRビデオコンテンツよりも均一性が低いことを意味する。
【0005】
当然ながら、HDRビデオコンテンツに許されるより広い輝度範囲は、それを知った上でコンテンツディレクタ及びコンテンツプロデューサによって輝度差に基づいて視覚的効果を生み出すのに使用することができる。しかしながら、この一方で、ブロードキャストビデオコンテンツとオーバーザトップ(OTT)ビデオコンテンツとの間の切り替えは、(輝度)ジャンプ(jump)とも呼ばれる望ましくない輝度変化を生じさせることがある。
【0006】
ジャンプは、HDRビデオコンテンツとSDRビデオコンテンツとの間の切り替え時又は異なるHDRビデオコンテンツ間の切り替え時に生じ得る(一方、異なるSDRビデオコンテンツ間での切り替え時にこれが生じることは、あったとしても希である)。したがって、例えば、1つのHDRチャネルにおける異なるビデオコンテンツ間での切り替え時(ジャンプアップ又はジャンプダウン)、SDRチャネルからHDRチャネルへの切り替え時(通常、ジャンプアップ)、HDRチャネルからSDRチャネルへの切り替え時(通常、ジャンプダウン)、又はHDRチャネルから別のHDRチャネルへの切り替え時(ジャンプアップ又はジャンプダウン)に生じ得る。
【0007】
そのようなジャンプが、閲覧者にとって驚き、さらには不快を生じさせ得るが、特に輝度が大幅に低下した場合、目が順応するのに時間が必要であることにより、ジャンプがユーザにとって不可視の特定の特徴をレンダリングすることもあることが理解されよう。
【0008】
日本国特許第2017-46040号は、SDRビデオコンテンツ表示時の100%輝度設定(例えば、300cd/m2に対応する)が、HDRビデオコンテンツ表示時(100%輝度設定は6000cd/m2に対応する)、50%(例えば、これも300cd/m2に対応する)に徐々に下げられるようなSDRビデオコンテンツとHDRビデオコンテンツとの切り替え時の漸次的な輝度適合を記載しているように見える。しかしながら、この解決策は、HDRビデオコンテンツがSDRビデオコンテンツ後に続く状況又はこの逆の状況に制限されるように見える。
【0009】
米国特許出願第2019/0052833号は、第1のHDRビデオコンテンツを表示し、第2のHDRビデオコンテンツに切り替えるユーザ指示を受信するデバイスが、輝度は第1のコンテンツに関連付けられた(例えば、第1のコンテンツに組み込まれた)輝度値から第2のコンテンツに関連付けられた輝度値に徐々に変わるミュート(及びモノクロ)遷移ビデオを表示するシステムを開示しているように見える。輝度値の所与の例は最大フレーム平均光度(MaxFALL)である。この解決策の一欠点は、値がコンテンツ項目内で静的(すなわち、ストリーム全体で同じ)であり、又は少なくとも所与のシーン内で静的であり、コンテンツ項目の短い部分が高輝度であり、残りの部分は高輝度ではない場合、値が高くなり得、コンテンツ項目の暗い部分を表さないため、MaxFALLが必ずしも切り替え時での使用に適さないことである。
【0010】
したがって、HDRビデオコンテンツへの切り替え時又はHDRビデオコンテンツからの切り替え時の輝度レベルの欠点の少なくとも幾つかに対処する解決策が望まれることが理解されよう。本原理はそのような解決策を提供する。
【発明の概要】
【0011】
開示の概要
第1の態様では、本原理は、ディスプレイに表示するためにビデオを出力するデバイスにおける方法に関する。デバイスの少なくとも1つのプロセッサは、第1のビデオコンテンツを前記ディスプレイに表示することと、表示する第2のビデオコンテンツを受信することと、第1の輝度値及び第2の輝度値に基づいて第2のビデオコンテンツのフレームの輝度を調整することであって、第1の輝度値は、第1のビデオコンテンツの少なくとも複数のL個の最新フレームの平均フレーム光度に等しく、第2の輝度値は第2のビデオコンテンツのメタデータから抽出される、調整することと、ディスプレイに表示するために、第2のビデオコンテンツのフレームを出力することとを行う。
【0012】
第2の態様では、本原理は、ディスプレイに表示するためにビデオコンテンツを処理するデバイスに関し、本デバイスは、表示する第2のビデオコンテンツを受信するように構成された入力インターフェースと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、少なくとも1つのプロセッサは、第1のビデオコンテンツをディスプレイに表示することと、第1のビデオコンテンツの少なくとも複数のL個の最新フレームの平均フレーム光度に等しい第1の輝度値と、第2のビデオコンテンツのメタデータから抽出される第2の輝度値とに基づいて第2のビデオコンテンツのフレームの輝度を調整することと、ディスプレイに表示するために、第2のビデオコンテンツのフレームを出力することとを行うように構成される。
【0013】
第3の態様では、本原理は、第1の部分及び第2の部分を含むビデオコンテンツを処理する方法に関する。デバイスの少なくとも1つのプロセッサは、第1の部分を取得し、第2の部分を取得し、第1の部分の第1の輝度値を取得し、第2の部分の第2の輝度値を取得し、第1の輝度値及び第2の輝度値に基づいて第2の部分のフレームの輝度を調整し、第2の部分の輝度調整されたフレームを記憶する。
【0014】
第4の態様では、本原理は、第1の部分及び第2の部分を含むビデオコンテンツを処理するデバイスに関し、本デバイスは、少なくとも1つのプロセッサであって、第1の部分を取得し、第2の部分を取得し、第1の部分の第1の輝度値を取得し、第2の部分の第2の輝度値を取得し、第1の輝度値及び第2の輝度値に基づいて第2の部分のフレームの輝度を調整するように構成される、少なくとも1つのプロセッサと、第2の部分の輝度調整されたフレームを記憶のために出力するように構成されたインターフェースとを備える。
【0015】
第5の態様では、本原理は、非一時的コンピュータ可読媒体に記憶され、プロセッサにより実行可能であり、第2の態様の任意の実施形態による方法のステップを実施するプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0016】
図面の簡単な説明
本原理の特徴について、添付図面を参照して非限定的な例としてこれより説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】代表的な映画セグメントのジオメトリック平均フレーム平均L
α(t)及び適合の時間状態L
T(t)の第1の例を示す。
【
図3】代表的な映画セグメントのジオメトリック平均フレーム平均L
α(t)及び適合の時間状態L
T(t)の第2の例を示す。
【
図4】代表的な映画セグメントのジオメトリック平均フレーム平均L
α(t)及び適合の時間状態L
T(t)の第3の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態の説明
図1は本原理の一実施形態によるシステム100を示す。システム100は、提示デバイス110及びコンテンツソース120を示し、プロセッサによって実行されると、本原理による方法のステップを実施するプログラムコード命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体130も示される。システムはディスプレイ140をさらに含むことができる。
【0019】
提示デバイス110は、コンテンツを少なくとも1つのコンテンツソース120、例えばブロードキャスタ、OTTプロバイダ、及びインターネット上のビデオサーバから受信するように構成された少なくとも1つの入力インターフェース111を含む。少なくとも1つの入力インターフェース111がコンテンツソース120に応じて任意の適した形態、例えばケーブルインターフェース又は有線若しくは無線電波インターフェース(例えば、Wi-Fi又は5G通信用に構成)をとることができることが理解されよう。
【0020】
提示デバイス110は、特に、提示デバイス110を制御し、受信したコンテンツを表示のために処理し、本原理の方法を実行するプログラムコード命令を実行するように構成された少なくとも1つのハードウェアプロセッサ112をさらに含む。提示デバイス110は、プログラムコード命令、実行パラメータ、受信したコンテンツ-受信された処理された-等を記憶するように構成されたメモリ113も含む。
【0021】
提示デバイス110は、処理されたコンテンツを表示する外部ディスプレイ140及び/又はディスプレイ115に出力するように構成されたディスプレイインターフェース114をさらに含むことができる。
【0022】
提示デバイス110が、HDRコンテンツ等の高輝度範囲を有するコンテンツを処理するように構成されることが理解される。通常、そのようなデバイスは、SDRコンテンツ等の低輝度範囲を有するコンテンツ(のみならず、限られた輝度範囲を有するHDRコンテンツも)を処理するようにも構成される。外部ディスプレイ140及びディスプレイ115は通常、高輝度範囲(限られた輝度範囲を含む)を有する処理済みコンテンツを表示するように構成される。
【0023】
加えて、提示デバイス110は通常、命令をユーザから直接又は間接的に(リモート制御等を介して)受信するように構成された制御インターフェース(図示せず)を含む。
【0024】
一実施形態では、提示デバイス110は、例えば複数のブロードキャストチャネルとして複数のコンテンツ項目を同時に受信するように構成される。
【0025】
提示デバイス110は、例えば、テレビジョン、セットトップボックス、デコーダ、スマートフォン、又はタブレットとして実施することができる。
【0026】
本原理は、あるコンテンツ項目から別のコンテンツ項目に切り替える際、例えば、チャネルを切り替える際、明度の見え方を管理する方法を提供する。このために、所与のコンテンツの明度の尺度が使用される。MaxFALL及びその欠点については既に本明細書において論じた。明度の別の従来の尺度は、コンテンツ項目の最大輝度、すなわち、コンテンツ項目の最も明るいピクセルの輝度値を提供する最大コンテンツ光度(MaxCLL)である。MaxCLLの欠点は、例えば、暗いコンテンツの中に1つの明るいピクセルを有するコンテンツで高くなることである。MaxCLL及びMaxFALLはCTA-861.3及びHEVCコンテンツ光度情報SEIメッセージで指定されている。述べたように、これらの輝度値は、コンテンツの過程で変わらないという点で静的である。
【0027】
従来の輝度値の欠点を克服するために、本原理は、対応するコンテンツをメタデータとして付随することが目的の新しい輝度値:最新フレーム平均光度(RecentFALL)を提供する。
【0028】
RecentFALLは、可能な場合にはMaxFALLと同じ計算を使用して平均フレーム平均光度として計算されるが、MaxFALLがコンテンツ全体の最大値に設定されている場合、RecentFALLは最新のL個のフレーム(又は同等にK秒)の平均フレーム光度に対応する。Kの値は数秒、例えば5秒であることができる。Lはフレームレートに依存するため、K=5sを所与として、30fpsの場合、150であり、24fpsの場合、120である。これらは当然ながら例示的な値であり、他の値も可能である。
【0029】
RecentFALLは、例えば、あらゆるブロードキャストチャネルに挿入されることが意図され、すなわち、各ブロードキャストチャネルは現在のRecentFALLを搬送することができる。このメタデータは例えば、コンテンツ作成者又はブロードキャスタにより挿入することができる。RecentFALLは、OTTコンテンツ又はインターネット上のサーバにより提供される他のコンテンツによって搬送することもできるが、コンテンツ記憶時、ビデオカメラ等の任意のデバイスによって計算することもできる。
【0030】
RecentFALLは、各フレームにより、Nフレーム毎に1つ(Nは必ずしも静的な値である必要はない)、又はこのメタデータでアノテーションされた各コンテンツ項目の各ランダムアクセスポイントにより搬送することができる。RecentFALLは、先に提供された値からの変化を示すことによって提供することもできるが、実際の値が定期的に提供されるべきであることに留意する。
【0031】
詳細に後述するように、コンテンツが変わる場合、例えば、閲覧者がチャネルを変えた場合、新しいコンテンツに使用すべき輝度値は、第1のコンテンツの最新フレームに関連付けられた(例えば搬送された)RecentFALL及び2番目のコンテンツの最初のフレームに関連付けられたRecentFALL等の第1のコンテンツ及び2番目のコンテンツのフレームのRecentFALL値に基づいて決定される。次に、ある時間期間にわたり、もはや調整されなくなるまで輝度の調整が漸次、弱められる。これにより、閲覧者の視覚系が、輝度レベルの驚くべきジャンプなしで新しいコンテンツに徐々に順応できるようにする。
【0032】
心理学では、一定の輝度で一定の持続時間にわたって提示される刺激の場合、観測者の順応レベルが、提示される輝度とその持続時間との積(すなわち、観測者が露出された総エネルギー)に関連することが長い間知られてきた;例えば、F. A. Mote and A. J. Riopelle. The Effect of Varying the Intensity and the Duration of Preexposure Upon Foveal Dark Adaptation in the Human Eye. J. Comp. Physiol. Psychol., 46(1):49-55, 1953参照。
【0033】
そのような一定の輝度レベルへの完全順応後、刺激がなくなる場合、暗順応が続き、完全暗順応に約30分かかる。時間の関数としての暗順応曲線は、Pirenne M. H., Dark Adaptation and Night Vision. Chapter 5. In: Davson, H. (ed), The Eye, vol 2. London, Academic Press, 1962に示されている。
【0034】
桿体及び錐体の順応は同様の曲線に沿うが、異なる光レジームにあることを見て取ることができる。眼窩には錐体のみが存在するので、桿体によって決まる曲線の部分は存在しない。述べたように、暗順応曲線は、Bartlett N. R., Dark and Light Adaptation. Chapter 8. In: Graham, C. H. (ed), Vision and Visual Perception. New York: John Wiley and Sons, Inc., 1965に示されるように、前順応輝度に依存する。
【0035】
さらに、Bartlettの記事にも示されているように、前順応輝度の持続時間が暗順応に及ぼす影響がある。
【0036】
前順応輝度の持続時間が短いほど、順応が速くなることを見て取ることができる。これらの実験は、輝度への露出から経過した時間が長くなるほど、順応の現在状態への影響が小さくなることを示唆する。したがって、前に表示されたフレームほど新しいフレームよりも小さい重みが与えられるように加重して過去のビデオフレームの輝度を積分することにより、ビデオコンテンツに露出された観測者の順応の現在状態を近似することができると仮定することができる。さらに、述べた例示で観測された挙動は、個々の錐体に対して有効である。画像処理に関する同等のことは、特定の数の先行フレームにわたり各ピクセルロケーションを個々に積分することである。しかしながら、この積分は、時間ローパスフィルタを各ピクセルロケーションに適用することに等しい。したがって、原理上、ローパスフィルタをビデオ自体に適用することにより、ビデオに露出された観測者の視覚系の順応状態を特定することが可能である。
【0037】
しかしながら、(ヒトの)脳のニューロンの応答が(一般化)リーキー積分発火モデルによりうまくモデリングすることができることも観測される。Wikipedia(https://en.wikipedia.org/wiki/Biological_neuron_model#Leaky_integrate-and-fire)によれば、ニューロンは、入力段階におけるニューロン膜電流と出力段階における膜電圧との関係を示す。ニューロンが膜抵抗に従って電位をリークすることが知られており、したがって、時間tにおいて、駆動電流I(t)は以下のように膜電圧V
mに関連し、式中、R
mは膜抵抗であり、C
mはニューロンのキャパシタンスである:
【数1】
【0038】
これは基本的にリーキー積分器である;リーキー積分器についてのWikipediaのエントリ参照。Rmで乗算し、膜時間定数τ
m=R
mC
mを導入して(Wulfram Gerstner, Werner M. Kistler, Richard Naud and Liam Paninski, Neuronal Dynamics - From single neurons to networks and models of cognition参照)、
【数2】
をもたらすことが可能である。
【0039】
時間t=0において、膜電圧が特定の一定値である、すなわち、V
m(0)=Vであり、且つその後任意の時間に入力が消える、すなわち、I(t)=0(t>0)であると仮定する。これは、入力の不在にニューロンが順応し始めることに等しい。したがって、光受容体の場合、これは、暗順応が始まる場合である。その結果生成される方程式の閉形式解は:
【数3】
である。
【0040】
この式がPirenneに示される暗順応曲線を定性的にモデリングすることを見て取ることができる。この式が基本的に、1947年にCrawfordによって提案されたモデルと同等であることにも留意する。Crawford, B. H. “Visual Adaptation in Relation to Brief Conditioning Stimuli.” Proc. R. Soc. Lond. B 134, no. 875 (1947): 283-302及びPianta, Michael J., and Michael Kalloniatis. “Characterisation of Dark Adaptation in Human Cone Pathways: An Application of the Equivalent Background Hypothesis.” The Journal of physiology 528, no. 3 (2000): 591-608参照。
【0041】
したがって、リーキー積分(光受容体はスパイク列を生成せず、実際にはアナログ性質であるため、発火成分なし)が光受容体の順応挙動の適切なモデルであると仮定することは妥当である。さらに、Pirenne及びBartlettからの述べた例示における曲線の形状を使用して、暗順応をモデリングする際、上記式の時間定数τmを決定することができる。
【0042】
tの値が0に近づく場合、この関数の導関数は
【数4】
である傾向を有し、したがって、変化の初期状態はパラメータτ
mを通して制御することができる。
【0043】
さらに、上記微分式のインパルス及びステップ応答を調べることができる。このために、微分式は、
τm(Vm(t)-Vm(t-1))=-Vm(t)+RmI(t)
と書き換えられ、そしてこれは、
(τm+1)Vm(t)-τmVm(t-1)=RmI(t)
と書き換えることができる。
【0044】
Z変換の適用により、
(τm+1)VZ(z)-τmz-1VZ(z)=RmIZ(z)
がもたらされる。
【0045】
したがって、
【数5】
として定義される伝達関数H(z)は、
【数6】
により与えられる。
【0046】
これから、インパルス応答が以下の式によって与えられることを導出することが可能である。Clay S. Turner, Leaky Integrator参照。
【数7】
【0047】
【0048】
この式は(Gradshteyn, Izrail Solomonovich, and Iosif Moiseevich Ryzhik. Table of Integrals, Series, and Products. Academic press, 2014に基づく)、以下の閉形式解を有する等比行列として書くことができる。
【数9】
【0049】
なお、この閉形式解は、
【数10】
である限り存在する。これは、τ
m≧0の全ての値で保証される。
【0050】
したがって、書き換えられた微分式
(τ
m+1)V
m(t)-τ
mV
m(t-1)=R
mI(t)-は、
【数11】
としてさらに書き換えることが可能である。
【0051】
この式の構造は、時間tにおけるニューロン/光受容体の出力が時間t-1における光受容体の出力及び時間tにおける入力I(t)の関数であることを示唆する。
【0052】
ピクセル値に適用することができるリーキー積分器としてこのモデルを実施するために、膜抵抗R
mは1に設定し得、したがって、
【数12】
であり、式中、t>0である。リーキー積分器は、以下の式:
V
m(0)=I(0)
を使用して時間t=0において開始することができる。
【0053】
次に、光受容体の膜電圧が上記光受容体の順応状態を表すと推測することができる。膜時間定数は、ビデオに関連付けられたフレームレートで乗算することができる。
【0054】
さらに、このモデルをブロードキャスト設定に適用するために、ピクセル毎の順応レベルではなくフレーム当たり1つの順応レベルが好ましい。これは、定常状態順応L
α(t)をフレームの幾何平均輝度で近似し得ることに気づくことによって達成し得る。
【数13】
【0055】
定常状態順応Lα(t)は、算術平均、中央値、又はフレーム平均光度(FALL)等の他のフレーム平均によって近似することもできる。
【0056】
ここで、フレームは、pでインデックス付けられたP個のピクセルからなる。その場合、順応の時間状態L
T(t)は、
【数14】
によって与えられる。
【0057】
0.5fに設定されたτ
mを用いて、ビデオのフレームレートの一般的な例としてf=24である場合、幾何平均フレーム平均L
α(t)及びフレーム数の関数としての代表的な映画セグメントの順応の時間状態L
T(t)を
図2に示し、ここで、L
α(t)は青い点線で示され、L
T(t)は赤で示される。
【0058】
τ
m=fである同様のグラフを
図3に示し、一方、τ
m=2fを
図4に示す。
【0059】
なお、例えば、フレームの平均輝度でLα(t)を置換することにより、Lα(t)以外の値から順応の時間状態LT(t)を計算することが可能である。
【0060】
この方式を適用する効果が、ローパスフィルタ演算に関連付けられた計算複雑性なしではあるが、ローパスフィルタの効果であることにさらに留意する。ダウンサンプリングされた(例えば係数32で)フレームの幾何平均フレーム平均Lα(t)を特定し得ることにも留意する。
【0061】
特定の閲覧環境においてテレビジョンでコンテンツを見ている閲覧者は、環境照明と画面が発する光との組合せに順応する傾向を有する。妥当な仮定は、閲覧者が視野内の最も明るい要素に順応することである。これは、特に高輝度(例えばHDR)コンテンツ表示時、高輝度(例えばHDR)ディスプレイが閲覧者の順応状態に対して従来の(例えばSDR)ディスプレイよりも大きな影響を有することを意味する。ディスプレイのサイズ及びユーザとディスプレイとの間の距離も影響する。
【0062】
上記方法が閲覧環境の要素も考慮に入れる代替の実施形態を考案することができる。例えば、定常状態順応Lα(t)は、閲覧環境に存在する照明を記述する項を含むように変更し得る。この照明は、テレビジョン画面のベゼルに配置された光センサによって特定し得る。閲覧環境がインターネット接続された光源を含む場合、それらの状態を読み取り、Lα(t)の特定に使用し得る。
【0063】
順応の時間状態LT(t)は、マッピングを使用してRecentFALLメタデータR(t)の特定に使用し得る。
R(t)=g(LT(t))
【0064】
最も単純な場合、マッピングは恒等作用素、すなわちg(x)=xとして定義し得る。したがって、RecentFALLメタデータは簡単に計算される。マッピングg(x)は、ディスプレイのピーク輝度が、コンテンツによって暗示されるピーク輝度を上回り得るか、又は下回り得ることの表記をさらに組み込み得る。例えば、コンテンツが公称でピーク輝度1000cd/m2と等級付けられる場合、ディスプレイは、例えば、ピーク輝度600cd/m2にデータをクリッピング又は適合し得る。一例では、関数g(x)は、コンテンツに符号化される光ではなく画面が発する実際の光を考慮するように正規化を適用し得る。
【0065】
さらに、RecentFALLメタデータが送信中に破損又は全く送信されない場合、フォールバック解決策は、代わりにMaxFALL値を使用することであることができる。MaxFALLもない場合、ITU-RリポートBT.2408で論じられるように、拡散白(diffuse white)が203cd/m2に配置されるという粗い仮定を用いて、例えば、SDRコンテンツでは18cd/m2及びHDRコンテンツでは37cd/m2(HDRコンテンツがピーク輝度1000cd/m2に等級付けられるとの仮定に基づく)等の一般輝度値を使用し得る。この場合、HDRコンテンツからSDRコンテンツへの切り替えは、R1=37且つR2=18を意味し、したがって、チャネル変更後の第1のフレームのスケーリング係数は約0.49である。
【0066】
スケーリングは線形化された画像に適用することができ、すなわち、EOTF(電子光学伝達関数)(又は逆OETF)は、テレビジョンが画像を受信した後、適用される。SDRコンテンツの場合、この関数は通常、ITU-R推奨BT.1886で規定されるEOTFであり、一方、HDRコンテンツの場合、関数はITU-R推奨BT.2100で規定されるPQ及びHLG符号化コンテンツのEOTFであり得る。
【0067】
見て取ることができるように、後述するように異なる輝度値を有するコンテンツ間で遷移することが可能である。
【0068】
図5は、本原理による方法500のフローチャートを示す。方法は、提示デバイス110、特にプロセッサ112(
図1)によって実行することができる。
【0069】
ステップS502において、提示デバイス110は、入力インターフェース111を通して第1のコンテンツを受信する。第1のコンテンツは、コンテンツの輝度メタデータ値R1、好ましくはRecentFALLを含む。既に記載のように、メタデータ値は、各フレーム(明示的若しくは間接的に)又は特定の、好ましくは定期的に配信されるフレームと関連付けることができる。
【0070】
提示デバイス110が第1のコンテンツを受信し、内部画面115又はディスプレイインターフェース114を介して外部画面140等の関連付けられた画面に表示すると仮定される。処理は、少なくとも最新の輝度メタデータ値を抽出し記憶することを含む。
【0071】
ステップS504において、提示デバイス110は、時間t0において表示する第2のコンテンツを受信する。既に論じたように、これは、チャネルを切り替えるユーザ指示に応答したもの、異なるソースへの切り替えに応答したもの、又は同じチャネルがコンテンツを変えた(例えばコマーシャルに)結果としてのものであることができる。
【0072】
第2のコンテンツも、好ましくは、第1のコンテンツの輝度メタデータ値のようであるが、第2のコンテンツについて計算された輝度メタデータ値R2を含む。
【0073】
ステップS506において、プロセッサ112は、第1のコンテンツの最新表示フレームの輝度メタデータ値
【数15】
を取得する。このフレームに関連付けられた値がない場合、最新値が取得される。
【0074】
ステップS508において、プロセッサ112は、第2のコンテンツに関連付けられた最初に入手可能な輝度メタデータ値
【数16】
を抽出する。各フレームが明示的に値と関連付けられる場合、最初に入手可能な値が最初のフレームの値であり、その他の場合、見つけることができる最初の値である。
【0075】
なお、生来、第1のコンテンツの最後表示フレームは、第2のコンテンツの最初表示フレームの前に表示されるため、小さな時間差があるが、それにも関わらず、両方を示すのに時間t0を使用することができる。
【0076】
ステップS510において、プロセッサ112は次に、既に記載のように、フレームを表示する際に使用する調整された「出力」輝度を計算する。
【0077】
このために、プロセッサ112は以下の計算を実行することができる。
【0078】
まず、プロセッサ112は比率
【数17】
を計算することができる。
【0079】
比率
【数18】
を使用して、プロセッサ112は次に、第2のコンテンツの最初のフレーム
【数19】
をスケーリングすることができる乗算係数
【数20】
を導出することができる。したがって、
【数21】
は
【数22】
の関数である。一例では、この関数は以下のように特定し得:
【数23】
式中、R
maxは、大きすぎるスケーリングの回避を目的とする所与の最大比率である(例えば、R
max=4であり、これは経験的に適した値であることが分かっている)。なお、
【数24】
及び
【数25】
は両方とも無単位値である。
【0080】
一変形では、チャネルが変更されると、プロセッサはこの計算された乗算係数を、最も新しく使用された乗算係数、すなわち、最新表示フレームの輝度の調整に使用された乗算係数と乗算する。なお、この変形は、完全順応(例えば、乗算係数1に戻る)前にコンテンツが新たに切り替えられる状況に対処することができる。
【0081】
第2のフレーム
【数26】
の公称「入力」輝度
【数27】
は、そのフレームの表示に使用すべき「出力」輝度
【数28】
を生成するように以下のようにスケーリングすることができる。
【数29】
【0082】
ステップS512において、プロセッサ112は乗算係数mtの更新ルールを計算する。
【0083】
プロセッサ112はまず、乗算係数
【数30】
がデフォルト値1に戻るレートτ
mを計算することができる。レートτ
mは、比率
【数31】
の関数として導出することができ、秒単位で指定することができる。
【数32】
とτ
mとの間の変換は異なる方法で行ってもよく、非限定的な一例では、このマッピングは、
【数33】
として計算することができ、式中、c
1及びc
2は適宜選ばれる定数である(例えば、c
1=0.5且つc
2=1.1)。
【0084】
フレームレートfで表示されるコンテンツの場合、乗算係数m
tの更新ルールは、
【数34】
により与えることができる。
【0085】
ステップS514において、プロセッサ112は、特に、現在フレームの乗算係数を使用して次のフレームの乗算係数を計算する。
【0086】
ステップS516において、プロセッサ112は、乗算係数に基づいて輝度を適合させることを含め、次のフレームを処理し出力する。
【0087】
ステップS514及びS516は、乗算係数が1になるまで又は少なくとも1と見なされるのに十分1に近くなるまで繰り返すことができ、その後、方法は終了する。
【0088】
この方法の効果が、コンテンツ変更時、値
【数35】
及びτ
mを輝度メタデータから1回だけ導出するだけでよいことを見て取ることができる。その後、更新ルールを適用し得、この乗数を使用して対応するフレーム輝度を調整し得る。幾つかのフレーム後、fτ
mによって決まるように、乗数m
tは値1に戻る(又は述べたように、1に達したと見なされるのに十分1に近くなる)。
【0089】
一実施形態では、輝度は以下のようにスケーリングすることができる:
【数36】
【0090】
ここでは、コンテンツ変更がフレームt0において発生し、現在フレームがフレームt=t0+Δtであると仮定する。
【0091】
一変形では、完全調整と調整なしとの間の補間は、例えばエルミート補間等を通して非線形になり:
【数37】
式中、H(ν)=2t
2-3t
2+1である。
【0092】
コンテンツ変更後、コンテンツがすぐに、すなわち輝度がまだ、例えばMフレーム内で調整中である間に再び変更される場合、現在輝度メタデータ値R
2を使用する代わりに、導出された値
【数38】
を代わりに使用することができ:
【数39】
式中、t
cは、チャネル変更が発生したフレームである。
【0093】
レートτmがブロードキャスタで一定であり、提示デバイスに既知である場合、提示デバイスは、現在フレーム及び先行フレームのRecentFALL値に基づいて、観測者の以下の定常状態順応レベルLα(t)を使用し得る。
Lα(t)=(τm+1)R(t)-τmR(t-1)
【0094】
これにより、提示デバイスは、フレーム内の全ピクセルの値にアクセスする必要なく、フレームの幾何平均輝度を回復することができる。したがって、RecentFALLは、対数平均輝度を必要とする計算で使用し得る。これは例えば、トーンマッピングを含み得る;例えば、Reinhard, Erik, Michael Stark, Peter Shirley, and James Ferwerda. “Photographic Tone Reproduction for Digital Images.” ACM Transactions on Graphics (TOG) 21, no. 3 (2002): 267-276及びReinhard, Erik, Wolfgang Heidrich, Paul Debevec, Sumanta Pattanaik, Greg Ward, and Karol Myszkowski. “High Dynamic Range Imaging: Acquisition, Display, and Image-based Lighting. Morgan Kaufmann, 2010参照。そのような適用では、RecentFALLを使用することの利点は、多数の計算を回避し得ることであり、メモリフットプリント及び待ち時間の少なくとも一方を低減することができる。
【0095】
本原理は、2つのカット間にコンテンツ適応フェードを生成するためにコンテンツ生成後に使用することもできる。これは、カット後のフレームの適合済み輝度を取得し、リリースのためにカットを符号化する際、次にこの輝度を使用することによって達成することができる。換言すれば、提示デバイスがそのようなコンテンツを受信する場合、コンテンツはカット間で漸次的な輝度遷移を有する用に既に適合されている。このために、少なくとも1つのハードウェアプロセッサは2つのカットを取得し、それらのRecentFALLを計算し、まるで2番目のコンテンツであるかのように2番目のカットの輝度を調整し、記憶インターフェースを介して、調整済み輝度を有する2番目のカットを保存する。
【0096】
既知のように、隙間番組及び隙間コマーシャルは、生成されたコンテンツ又はライブコンテンツよりもかなり明るい傾向を有する。これは、コマーシャルのために番組が中断される場合、平均輝度レベルが高くなる傾向があることを意味する。提示デバイスでは、本方法は、隙間が開始されているか否かを判断する方法にリンクし得る。そのようなとき、コンテンツは、コマーシャルの開始時、輝度レベルの急激な上昇を回避するように適応的にスケーリングし得る。
【0097】
多くの提示デバイスは、ピクチャインピクチャ(PIP)機能を提供しており、それにより、ディスプレイの大部分はあるチャネルの表示に向けられ、その間、第2のチャネルは小さなインセットに表示される。これらの2つのチャネル間の平均輝度の不一致が大きい場合、これらは予期しない様式で相互作用し得る。本明細書に提案される方法を使用して、好ましくはインセットピクチャの各フレームのτ
0及び
【数40】
を設定することにより、画面に表示された資料の平均輝度レベルをよりよく合わせるようにインセットビデオを調整し得る。
【0098】
PIPに関連する変形は、オンスクリーン資料によりよく合うように調整し得る、オンスクリーンディスプレイ(OSD)等のオーバーレイグラフに使用することもできる。RecentFALL動的メタデータは、フィルタ処理でコンテンツの平均光度に従うため、オーバーレイグラフの調整は瞬時ではなく、滑らかに生じる。これは、閲覧者にとってより快適であり、決して判読不能になることはない。
【0099】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD-恐らくはフレームに保持された携帯電話として実施される)の状況では、同じ平均光でディスプレイに近いほど、目が露出される「発光面」がはるかに広く見える(目は「光面」を統合する)ため、人間の視覚系は輝度レベルジャンプによってはるかに大きな影響を受け得る。本原理及びRecentFALLは、目が順応に適切な時間を有するように輝度レベルを適合させることができる。
【0100】
乗算係数
【数41】
を使用して、ターゲットディスプレイの性能にコンテンツを適合させる階調再現演算子又は逆階調再現演算子を駆動し得る。この手法は、乗算係数が1よりも大きい場合、クリッピング量を低減することができるとともに、
【数42】
が1未満の場合に生じ得る細部の欠損を低減することもできる。
【0101】
したがって、本原理を使用して、特にHDRコンテンツへの切り替え時、輝度レベルの予期されない変化及び/又は不快な変化をなくすか、又は低減するコンテンツ間の遷移を提供することができることが理解されよう。
【0102】
図に示される要素が、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組合せで実施し得ることを理解されたい。好ましくは、これらの要素は、プロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェースを含み得る1つ又は複数の適宜プログラムされた汎用デバイス上のハードウェアとソフトウェアとの組合せで実施される。
【0103】
本説明は本開示の原理を示す。したがって、当業者が、本明細書に明示的に記載又は示されていないが、本開示の原理を実施し、本開示の範囲内に含まれる種々の構成を考案可能なことが理解されよう。
【0104】
本明細書に記載の全ての例及び条件語は、本発明者らが当技術分野の促進に寄与する本開示の原理及び概念を読み手が理解するのを支援する教育目的を意図し、そのような具体的に記載された例及び条件に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0105】
さらに、本開示の原理、態様、及び実施形態、並びにその具体例を記載する本明細書における全ての文は、その構造的均等物及び機能的均等物の両方の包含を意図する。さらに、そのような均等物が現在既知の均等物及び将来開発される均等物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する、開発される任意の要素を含むことが意図される。
【0106】
したがって、例えば、本明細書に提示されたブロック図が、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことが当業者には理解されよう。同様に、任意のフローチャート、流れ図等が、コンピュータ可読媒体で実質的に表現し得、したがって、コンピュータ又はプロセッサが明示的に示されているか否かに関係なくコンピュータ又はプロセッサによって実行し得る種々のプロセスを表すことが理解されよう。
【0107】
図に示される種々の要素の機能は、専用ハードウェア及び適切なソフトウェアに関連付けられてソフトウェアを実行可能なハードウェアの使用を通して提供し得る。プロセッサによって提供される場合、機能は1つの専用プロセッサ、1つの共有プロセッサ、又は幾つかが共有であり得る複数の個々のプロセッサによって提供し得る。さらに、用語「プロセッサ」又は「コントローラ」の明示的な使用は、ソフトウェアを実行可能なハードウェアを専ら指すものとして解釈されるべきではなく、暗黙的に、限定ではなく、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ソフトウェアを記憶する読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び不揮発性記憶装置を含み得る。
【0108】
従来且つ/又はカスタムの他のハードウェアを含むこともできる。同様に、図に示される任意の切り替えは概念にすぎない。それらの機能は、プログラム論理の動作、専用論理、プログラム制御と専用論理との対話を通して、又は手動で実行し得、状況からより具体的に理解されるように、特定の技法が実施者により選択可能である。
【0109】
本発明の特許請求の範囲では、指定された機能を実行する手段として表現される任意の要素は、例えば、a)その機能を実行する回路要素の組合せ又はb)ソフトウェアを実行して機能を実行する適切な回路と組み合わせられた、任意の形態、したがって、ファームウェア、マクロコード等を含むソフトウェアを含め、その機能を実行する任意の方法を包含することが意図される。そのような特許請求の範囲によって規定される本開示は、種々の記載の手段によって提供される機能が、請求項が求めるように結合され一緒にされることにある。したがって、それらの機能を提供することができる任意の手段は本明細書に示されるものと均等であると見なされる。
[付記1]
ディスプレイに表示するためにビデオコンテンツを出力するデバイスにおける方法であって、
第1のビデオコンテンツを前記ディスプレイに表示することと、
表示する第2のビデオコンテンツを受信することと、
第1の輝度値及び第2の輝度値に基づいて前記第2のビデオコンテンツのフレームの輝度を調整することであって、前記第1の輝度値は、前記第1のビデオコンテンツの少なくとも複数のL個の最新フレームの平均フレーム光度に等しく、前記第2の輝度値は前記第2のビデオコンテンツのメタデータから抽出される、調整することと、
前記ディスプレイに表示するために、前記第2のビデオコンテンツの前記フレームを出力することと、
を含む方法。
[付記2]
ビデオコンテンツはフレームを含み、前記第1の輝度値は、前記第1のビデオコンテンツの前記L個の最新フレームの平均フレーム光度に等しい、付記1に記載の方法。
[付記3]
輝度値が入手不可能な場合、前記第1のビデオコンテンツ及び前記第2のビデオコンテンツの最大フレーム平均光度MaxFallが代わりに使用される、付記2に記載の方法。
[付記4]
前記第1のビデオコンテンツは輝度値を含み、各輝度値は前記第1のビデオコンテンツのフレームと関連付けられ、前記第1の輝度値は、表示されたフレームと関連付けられた最新輝度値である、付記1に記載の方法。
[付記5]
前記第2の輝度値は、前記第2のビデオコンテンツの前記第1のフレームと関連付けられたメタデータから抽出される、付記1に記載の方法。
[付記6]
前記第2のビデオコンテンツの前記第1のフレームは、前記第2のビデオコンテンツにおいて時系的に最初である、付記1に記載の方法。
[付記7]
前記輝度は、前記輝度値間の比率を使用して計算された乗算係数を前記輝度に乗算することにより、トーンマッピングすることであって、トーンマッパは、前記輝度値間の比率を使用して特定されるパラメータで構成されている、トーンマッピングすることにより、又は逆トーンマッピングすることであって、逆トーンマッパは、前記輝度値間の比率を使用して特定されるパラメータで構成されている、逆トーンマッピングすることにより調整される、付記1に記載の方法。
[付記8]
前記乗算係数は、前記比率及び所与の最大比率のうちの小さい方をとることによって取得される、付記7に記載の方法。
[付記9]
前記乗算係数は、
[数1]
として前記第2のコンテンツの後続フレームについて反復更新され、式中、mは前記乗算係数であり、t
0
及びt
0+1
はインデックスであり、fは前記ビデオコンテンツのフレームレートに関連し、aは定数であり、τ
m
はレートである、付記7に記載の方法。
[付記10]
前記レートτ
m
は、前記ビデオコンテンツの秒数又はフレーム数として与えられる、付記9に記載の方法。
[付記11]
前記第1の輝度値を前記第1のビデオコンテンツのメタデータから又は記憶装置から抽出することをさらに含む、付記1に記載の方法。
[付記12]
ディスプレイに表示するためにビデオコンテンツを処理するデバイスであって、前記デバイスは、
表示する第2のビデオコンテンツを受信するように構成された入力インターフェースと、
少なくとも1つのプロセッサと、
を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
第1のビデオコンテンツを前記ディスプレイに表示することと、
前記第1のビデオコンテンツの少なくとも複数のL個の最新フレームの平均フレーム光度に等しい第1の輝度値と、前記第2のビデオコンテンツのメタデータから抽出される第2の輝度値とに基づいて前記第2のビデオコンテンツのフレームの輝度を調整することと、
前記ディスプレイに表示するために、前記第2のビデオコンテンツの前記フレームを出力することと、
を行うように構成されている、デバイス。
[付記13]
第1の部分及び第2の部分を含むビデオコンテンツを処理する方法であって、デバイスの少なくとも1つのプロセッサにおいて、
前記第1の部分の第1の輝度値を取得することと、
前記第2の部分の第2の輝度値を取得することと、
前記第1の輝度値及び前記第2の輝度値に基づいて前記第2の部分のフレームの輝度を調整することと、
前記第2の部分の前記輝度調整されたフレームを記憶することと、
を含む方法。
[付記14]
第1の部分及び第2の部分を含むビデオコンテンツを処理するデバイスであって、
少なくとも1つのプロセッサであって、
前記第1の部分の第1の輝度値を取得することと、
前記第2の部分の第2の輝度値を取得することと、
前記第1の輝度値及び前記第2の輝度値に基づいて前記第2の部分のフレームの輝度を調整することと、
を行うように構成されている、少なくとも1つのプロセッサと、
前記第2の部分の前記輝度調整されたフレームを記憶のために出力するように構成されたインターフェースと、
を備えるデバイス。
[付記15]
プロセッサにより実行されると、付記1~11の少なくとも1項に記載の方法のステップを実施するプログラムコード命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体。