(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】バルクコンポーネント解析の為のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240620BHJP
【FI】
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2021569079
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(86)【国際出願番号】 US2020033773
(87)【国際公開番号】W WO2020236915
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-05-27
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520069604
【氏名又は名称】アプリオリ テクノロジーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】APRIORI TECHNOLOGIES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】メドウズ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ブライ,アマンダ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ゴールド,カレン,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】フィニー,バートン,クリストファー
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-225771(JP,A)
【文献】特開平10-171875(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0254374(US,A1)
【文献】特開2001-331210(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0172008(US,A1)
【文献】特開2001-101284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリケーションコンピュータサーバを介して具現化されるバルク原価計算システムであって、
(a)複数のコンポーネントについての推定生産原価を提供する複数の原価データ要素を表す電子記録を内含する原価計算データストアと、
(b)複数のシミュレーション生産環境(VPE)を表す電子記録を内含する仮想生産環境データストアと、
(c)前記アプリケーションコンピュータサーバに連結されて、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)及び分散型通信ネットワークを介して遠隔ユーザデバイスとのデータの送信を容易にする通信ポートと、
を具備し、
(d)前記原価計算及びVPEデータストアに連結された前記アプリケーションコンピュータサーバが、
前記通信ポートを介してバルク原価計算リクエストを遠隔ユーザデバイスから受理し、前記バルク原価計算リクエストが、少なくとも1つのCAD(コンピュータ支援設計)ファイルと、原価計算されるアイテムのリストと、入力変数の集合とを含み、
バルク原価計算エンジンにより、入力変数の各組み合わせについて原価計算される各アイテムのシナリオを含むコンポーネント及びアセンブリの最終リストを生成し、前記最終リストの前記生成は、
入力変数の各組み合わせについて原価計算される各アイテムの各シナリオについてコンポーネント及びアセンブリの初期リストを生成し、
前記初期リストを再配列して第1再配列リストを作成し、処理の為に前記初期リストを最適化して前記最終リストを作成し、
前記初期リストと前記第1再配列リストのうち少なくとも一方を解析して、前記少なくとも1つのCADファイルに基づいて2モデルコンポーネントであるいずれかのコンポーネントを特定し、前記2モデルコンポーネントは、少なくとも1つのソースモデルと少なくとも1つのマシンモデルとを含み、
前記第1再配列リストを再配列して、各2モデルコンポーネントについて、前記少なくとも1つのソースモデルが前記少なくとも1つのマシンモデルよりも上位に配置されたソースモデルである第2再配列リストを作成する、
ための前記バルク原価計算エンジンを含み、
原価エンジンにより、前記最終リストの綿密な原価計算解析を実施して、
前記最終リスト内の次のアイテムを反復的に選択し、
複数のプロセッサのうちの1つを使用して前記次のアイテムが原価計算される新たな処理スレッドを開始し、
前記次のアイテムと関連する原価データを計算して前記処理スレッドを終了し、前記最終リストの前記綿密な原価計算解析により、前記入力変数の各々について前記アイテムの各々の推定原価を結果的に得て、
前記綿密な原価計算解析に基づいて、前記少なくとも1つのCADファイルを修正し、
前記API及び前記通信ポートを介して、前記入力変数の各々についての前記アイテムの各々の前記推定原価を前記遠隔ユーザデバイスに送信し、前記推定原価に基づいて前記アイテムの各々を製造するための製造アプローチを選択する、
ようにプログラムされる、
バルク原価計算システム。
【請求項2】
前記入力変数の集合が、VPE、生産量、生産バッチサイズ、原料、キャビティの数、そして在庫形態のうち一以上を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アプリケーションコンピュータサーバが更に、
前記バルク原価計算エンジンにより、前記シナリオのうち一以上の原価計算の結果を内含する第1ロールアップを少なくとも作成する、
ようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記初期リストの再配列が更に、
前記初期リストを解析して、アセンブリのコンポーネントを特定すると共に各アセンブリの低レベルコンポーネントを特定し、
前記リストを再配列して、各アセンブリの低レベルコンポーネントが前記アセンブリの高レベルコンポーネントより前記リストで上位に配置された第1再配列リストを作成する、
ように前記バルク原価計算エンジンを作動させることを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記初期リストの前記再配列が更に、
前記初期リストと前記第1再配列リストと前記第2再配列リストのうち少なくとも一つを修正して、別のコンポーネントに従属する各コンポーネントにフラグを立てて更新済みリストを作成する、
ように前記バルク原価計算エンジンを作動させることを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記初期リストの前記再配列が更に、
迅速な原価再計算が実施されるかを判断し、
前記更新済みリストを修正して、迅速な原価再計算に必要なアイテムのみを含む最終リストを作成する、
ように前記バルク原価計算エンジンを作動させることを有する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記初期リストの前記再配列が更に、
前記更新済みリストから前記最終リストを作成する、
ように前記バルク原価計算エンジンを作動させることを有する、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記綿密な原価計算解析が更に、
前記次のアイテムが原価計算されなかった別のアイテムに従属しないかを確認する、
ように前記原価エンジンを作動させることを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記綿密な原価計算解析が更に、
前記最終リストの前記アイテムの各々についての推定原価データを内含する出力ファイルを作成する、
ように前記原価エンジンを作動させることを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記推定原価データがレポートシステムへ入力として提供される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
コンピュータサーバを介して具現化されるコンピュータ制御バルク原価計算方法であって、
API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を介して遠隔ユーザデバイスからバルク原価計算リクエストを受理することであり、前記バルク原価計算リクエストが、少なくとも1つのCAD(コンピュータ支援設計)ファイルと、原価計算されるアイテムのリストと、入力変数の集合とを含むことと、
バルク原価計算エンジンにより、入力変数の各組み合わせについて原価計算される各アイテムのシナリオを含むコンポーネント及びアセンブリの最終リストを生成することであって、前記最終リストは、
入力変数の各組み合わせについて原価計算される各アイテムの各シナリオについてコンポーネント及びアセンブリの初期リストを生成することと、
前記初期リストを解析してアセンブリ内のコンポーネントを特定し、各アセンブリの低レベルのコンポーネントを特定することと、
前記初期リストを再配列して、各アセンブリの前記低レベルのコンポーネントが前記アセンブリの高レベルのコンポーネントより上位に配置された第1再配列リストを作成することであって、前記初期リストの再配列は、
前記初期リスト及び前記第1再配列リストのうちの少なくとも一方を解析して、前記少なくとも1つのCADファイルに基づいて2つのモデルコンポーネントであるコンポーネントを特定することであって、前記2つのモデルコンポーネントは、少なくとも1つのソースモデルと少なくとも1つのマシンモデルとを含む、当該特定することと、
前記第1再配列リストを再配列して、各2モデルコンポーネントについて、前記少なくとも1つのソースモデルが前記少なくとも1つのマシンモデルよりも上位に配置されたソースモデルである第2再配列リストを作成することと、
を含む、当該作成することと、
によって生成される、当該生成することと、
原価エンジンにより、前記最終リストの綿密な原価計算解析を実施して、前記入力変数の各々について前記アイテムの各々の推定原価を結果的に得ることと、
前記綿密な原価計算解析に基づいて、前記少なくとも1つのCADファイルを修正することと、
前記APIを介して、前記入力変数の各々についての前記アイテムの各々の前記推定原価を前記遠隔ユーザデバイスに送信し、前記推定原価に基づいて前記アイテムの各々を製造するための製造アプローチを選択することと、
を有する方法。
【請求項12】
前記初期リストの前記再配列が更に、
前記初期リストと前記第1再配列リストと前記第2再配列リストのうち少なくとも一つを修正して、別のコンポーネントに従属する各コンポーネントにフラグを立てて更新済みリストを作成すること、
を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記初期リストの前記再配列が更に、
迅速な原価再計算が実施されるかを判断することと、
前記更新済みリストを修正して、迅速な原価再計算に必要とされるアイテムのみを含む最終リストを作成することと、
を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記初期リストの前記再配列が更に、
前記更新済みリストから前記最終リストを作成すること、
を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
プロセッサによる実行時に前記プロセッサにバルク原価計算方法を実施させる命令を記憶する
コンピュータ可読媒体であって、
前記方法が、
API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を介して遠隔ユーザデバイスからバルク原価計算リクエストを受理することであって、前記バルク原価計算リクエストが、少なくとも1つのCAD(コンピュータ支援設計)ファイルと、原価計算されるアイテムのリストと、入力変数の集合とを含むことと、
バルク原価計算エンジンにより、入力変数の各組み合わせについて原価計算される各アイテムのシナリオを含むコンポーネント及びアセンブリの最終リストを生成することであって、前記最終リストは、
入力変数の各組み合わせについて原価計算される各アイテムの各シナリオについてコンポーネント及びアセンブリの初期リストを生成することと、
前記初期リストを解析してアセンブリ内のコンポーネントを特定し、各アセンブリの低レベルのコンポーネントを特定することと、
前記初期リストを再配列して、各アセンブリの前記低レベルのコンポーネントが前記アセンブリの高レベルのコンポーネントより上位に配置された第1再配列リストを作成することであって、前記初期リストの再配列は、
前記初期リスト及び前記第1再配列リストのうちの少なくとも一方を解析して、前記少なくとも1つのCADファイルに基づいて2つのモデルコンポーネントであるコンポーネントを特定することであって、前記2つのモデルコンポーネントは、少なくとも1つのソースモデルと少なくとも1つのマシンモデルとを含む、当該特定することと、
前記第1再配列リストを再配列して、各2モデルコンポーネントについて、前記少なくとも1つのソースモデルが前記少なくとも1つのマシンモデルよりも上位に配置されたソースモデルである第2再配列リストを作成することと、
を含む、当該作成することと、
原価エンジンにより、前記最終リストの綿密な原価計算解析を実施して、前記入力変数の各々について前記アイテムの各々の推定原価を結果的に得ることと、
前記綿密な原価計算解析に基づいて、前記少なくとも1つのCADファイルを修正することと、
前記APIを介して、前記入力変数の各々についての前記アイテムの各々の前記推定原価を前記遠隔ユーザデバイスに送信し、前記推定原価に基づいて前記アイテムの各々を製造するための製造アプローチを選択することと、
を有する
コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年5月20日出願の米国仮特許出願第62/850,083号に基づいてその利益及び優先権を主張し、同出願の内容はあらゆる目的でその全体が本願に援用される。
【0002】
本出願は概ねコンピュータシステムに、より詳しくはバルクコンポーネント解析を実施するのに適応したコンピュータシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
製品を設計及び製造するプロセスの一部は原価管理である。製品を設計及び製造する企業は、製品又はそのパーツを製造する原価を判断する必要がある(「原価計算」と一般に呼ばれるプロセス)。大抵は、複雑なシナリオが評価される必要がある。例えば、企業は、多様なバッチサイズ、年間生産量、地域での製造原価を評価しようとすることがある。残念なことに、こうして多数の順列が原価計算される必要があり、これが原価計算の複雑度及び難度を高める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
幾つかの実施形態によれば、遠隔ユーザデバイスからバルク原価計算リクエストを受理するアプリケーションサーバを使用するバルク原価計算の為のシステム、方法、装置、コンピュータプログラムコード及び手段が設けられ、バルク原価計算リクエストは、原価計算されるアイテムのリストと入力変数の集合とを含む。入力変数の各組み合わせについて原価計算される各アイテムのシナリオを含むコンポーネント及びアセンブリの最終リストが生成される。(個々のパーツ及びコンポーネントの推定原価が求められる)綿密な原価計算解析が最終リストについて実施され、入力変数の各々について原価計算されるアイテムの各々の推定原価が結果的に得られる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、製造される一以上のパーツ又はアセンブリと関連する情報を受理して、多様な入力組み合わせのリスト又はマトリクスを自動的に生成し、それからこのリスト又はマトリクスの原価計算を実施するのに適応したシステム及び方法に関する。幾つかの実施形態によると、膨大な入力組み合わせが効率的に原価計算され、ユーザが多様なシナリオを効率的に解析して最良の製造アプローチを特定することが可能である。
【0006】
幾つかの実施形態において、アプリケーションコンピュータサーバと関連する通信デバイスは、選択された入力と(コンピュータ支援設計又は「CAD」ソフトウェアからの情報を含む)パーツ又はアセンブリ情報とを提供する遠隔デバイスと情報を交換する。例えば、公衆及び/又は専用通信ネットワークを介して情報が交換され得る。
【発明の効果】
【0007】
本発明の幾つかの実施形態の技術的効果は、多様な入力に基づいて原価計算マトリクス又はリストを生成してからリストを再配列することにより効率的な原価計算アプローチを自動的に判断して原価計算システムの性能を向上させる改良型のコンピュータ制御による手法である。以上の、そして以下で明白となる他の利点及び特徴により、以下の詳細な説明と添付図面とを参照することで本発明の性質のより完全な理解が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】幾つかの実施形態によるシステムのハイレベルブロック図である。
【
図2】本発明の幾つかの実施形態による方法を図示している。
【
図3】本発明の幾つかの実施形態による方法を図示している。
【
図4】本発明の幾つかの実施形態による方法を図示している。
【
図5】幾つかの実施形態によるグラフィカルユーザインタフェースの図である。
【
図6】幾つかの実施形態によるグラフィカルユーザインタフェースの図である。
【
図7】幾つかの実施形態によるグラフィカルユーザインタフェースの図である。
【
図8】本発明の幾つかの実施形態による装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
様々な例示的実施形態が更に詳しく記載される前に、記載される特定の実施形態に本発明が限定されないことが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は特定の実施形態の記載のみを目的とし、本発明の請求項の範囲を限定する意図はないことも理解されるべきである。
【0010】
図面において、同様の参照番号は本発明のシステム及び方法の同様の特徴を指している。従って、或る記載では或る図及び参照番号のみに言及しているが、このような記載は他の図の同様の参照番号にも等しく適用可能であることが理解されるべきである。
【0011】
本発明は、バルク原価計算を容易にする重大な技術的改良を提供する。本発明は、多様な生産環境、多様な生産量、そして多様なバッチサイズのシナリオを含む多くのシナリオ組み合わせの原価計算を可能にするマトリクス原価計算の改良を提供することにより、製品製造解析の分野における明確な前進となるので、業界で既に周知のルーチン又は従来活動の単なるコンピュータ具現化を超えるものに関する。本発明は、原価計算の結果得られるパーツの大きなリストが効率的に原価計算されて成果の向上をもたらすことを保証する技術的解決法を提供する。本発明は、システム要素及びプロセスによる新たな配列組み合わせを伴って、パーツのバルク原価計算のようなバルクコンポーネント解析の改良を提供するので、単なる一般的なコンピュータ具現化を超える改良を提供する。
【0012】
加えて、本発明では、(例えば、効率を向上させて、複雑な原価計算プロセスを実施するのに必要とされる時間を短縮するように設計された処理スレッドを使用して、アプリケーションサーバにバルク原価計算を実施させることにより)情報の交換を改良することでシステムの全体効率を向上させるアプリケーションサーバを介して、バルク原価計算が開始又はアクセス、更新、そして解析され得る。幾つかの実施形態において、ユーザデバイスを操作するユーザは、アプリケーションプログラミングインタフェース(「API」)を使用してアプリケーションサーバと対話し得る。
【0013】
本出願の文脈において、「パーツ」又は「コンポーネント」の語は、製造されるアイテム又はコンポーネントを指す。例えば、「パーツ」は、機械加工パーツ、板金パーツ、鋳造パーツ、その他であり得る。多数のパーツが「アセンブリ」を構成し得る。幾つかの実施形態によれば、本発明による原価計算の為に提示された時に、名称、(「板金」、「鋳造」、「機械加工」のような)プロセスグループなどの製造情報、(パーツを製作する原料のタイプを特定する情報を含む)原料情報、一以上のCADファイル、そして本明細書で更に記載されるようにパーツの特定及び原価計算を補助し得る他の情報を含む情報で、パーツ又はコンポーネントが特定され得る。
【0014】
本出願の文脈において、「ロールアップ」は、パーツ及びアセンブリをユーザにとって有意のグループ分類に整理するのに使用されるパーツ、アセンブリ、又は他のロールアップの集合体を指す。本明細書で使用される際に、「仮想生産環境(又は「VPE」)は、実際の生産環境の条件をシミュレーションするパーツ原価計算に使用する為のアルゴリズム、ロジック、及びルールを含むデジタル的表現での工場を指すのに使用される。例えば、ブラジル、中国、そして米国での生産原価を解析しようとするユーザは、ブラジルVPE、中国VPE、米国VPEと対話し得る。
【0015】
本明細書で使用される際に、「シナリオ」の語は、多様な製造シミュレーションを表現するのに使用される独自の形のパーツ又はアセンブリを指す。例えば、多様な生産量及びバッチサイズの想定によりブラジルVPE、米国VPE、そして中国VPEでパーツ又はアセンブリの集合を原価計算するようにシナリオが作成され得る。幾つかの実施形態において、シナリオ命名の慣行は、各シナリオが記述的に命名されるように使用され得る。例示的な例として、1000ユニットの年間生産量と100ユニットのバッチサイズでのブラジルにおけるパーツの原価計算を行うシナリオは、“[part‐name]_Brazil_1000_100_[date]”その他と命名され得る。
【0016】
幾つかの実施形態の特徴により、複雑なシナリオが容易に原価計算され得る。例示的な例として、本発明により、最終見積書の為に仕入先へ送られるパーツ及びアセンブリのグループを内含する入札パッケージを評価するように構成されるシステムをユーザが操作しようとする。ユーザは、二つの異なる地域、二つの異なる年間生産量、三つのバッチサイズでの入札パッケージの原価計算がどうなるかを推定する原価計算を実施しようとする。先行システムであれば、ユーザは12(2×2×3)の異なるロールアップを作成して、コンポーネント(そしてアセンブリの子)の各々についての独自の各入力組み合わせを取得する必要があるだろう。これらのロールアップの各々は、手作業プロセスでは別々に原価計算されるだろう。このような先行プロセスは時間を要し、かなりの労力を必要とし、非一貫性及び不正確性につながる。幾つかの実施形態によれば、バルク原価計算システムは手作業介入をかなり削減して迅速かつ正確に原価出力を提供する。
【0017】
実施形態は、幾つかの異なるユーザケースについてかなりの長所を提供する。例えば、最終見積の為の入札パッケージを作成し、仕入先の見積生産量に合致させ、パーツを調達する最安価地域を判断してバッチ原価を最適化するのに実施形態が使用され得る。更に、実施形態は、原価対能力の計画を立て、業務上の入札を行う仕入先についてブレークポイントを判断するのに使用可能なデータを提供する。
【0018】
図1を参照することにより幾つかの実施形態の特徴がこれから記載される。
図1は、本発明の幾つかの実施形態によるシステム100のハイレベルブロック図である。詳しく記すと、システム100は、本明細書で更に記載されるバルク原価計算アプリケーション132とスレッドマネージャ134と原価エンジン136とを含む、一以上のアプリケーションを実行するアプリケーションサーバ130を含む。アプリケーションサーバ130は、例えば、原価計算データ110と、一以上の仮想生産環境120に関連するデータとを記憶する一以上のデータ記憶デバイスと対話する。アプリケーションサーバ130は、(例えばAPI140を介して)ユーザデバイス152及びユーザデバイス150のような一以上のユーザデバイスとも情報を交換し得る。アプリケーションサーバ130は、(本明細書に記載のバルク原価計算リクエストに加えて)幾つかの手法でユーザデバイス150,152と対話し得る。例えば、アプリケーションサーバ130とユーザデバイス150,152とは概して、原価計算データ及び原価計算リクエストデータを提出、受理、要求、或いは送信するように対話し得る。更に、デバイスは、例えば原価情報をユーザデバイス150,152に提供して、原価をファクタとして設計が最適化されるようにデバイスが製造実験又は最適化を設計することを可能にする対話のような、他の対話をサポートし得る。このような実施形態において、アプリケーションサーバ130はデバイス150,152と対話し、原価計算と、例えば応力又は流体流動実験のようにパーツ又はコンポーネントに対して行われる他の解析とに基づいてCADモデルを修正し得る。
【0019】
別の例示的な例として、アプリケーションサーバ130はユーザデバイス150,152と対話して、製品ライフサイクル管理(「PLM」)システム又は企業資源計画(「EPR」)システムへ、属性の形で又はこれらのシステムに記憶されたオブジェクトに添付されるレポートとして、原価データを送信する。別の例示的な例として、アプリケーションサーバ130はユーザデバイス150,152と対話して、PLM、ERP、又は他のシステムから属性データを検索又は引き出して、原価計算入力を処理する(例えば、VPEモデル、製造ルーティング、又は他の製造上の想定に影響する、これらを変更又は修正する)。別の例として、アプリケーションサーバ130はPLM又はERPシステムから周知の原価データを検索して、VPE精度を調整する為にパーツ毎の比較を行う。これらの対話の各々はAPI140又は他のインタフェースを使用して実施され得る。
【0020】
幾つかの実施形態によれば、サーバ130(そして幾つかのケースでは、サードパーティデータ)の対話型グラフィカルユーザインタフェースプラットフォームが、ユーザデバイスとサーバ130との間の対話を容易にし得る。例えば、ユーザデバイス150は、バルク原価計算リクエストと関連の情報とをサーバ130へ送信し得る。幾つかの実施形態では、本明細書で更に記載されるように、バルク原価計算リクエストは、CADシステム又はCADファイル160からの情報と共に、幾つかの原価計算シナリオを生成するのにサーバ130により使用される入力情報を含み得る。CADシステム又はCADファイル160は、PLMシステムのような別のシステムにより提供される入力ファイルであってもよい。概して、コンポーネント明細についての何らかのソースが使用され得る。
【0021】
幾つかの実施形態において、ユーザデバイス150のようなユーザデバイスとサーバ130との間の対話はAPI140を介したものである。幾つかの実施形態によれば、API140により、例えば、特にサーバ130と機能するように設計されるクライアントアプリケーションと共に、(スプレッドシートアプリケーション、ウェブアプリケーション、その他のような)他のクライアントアプリケーションなど、API140と対話するように構成されるソフトウェアを作動させるユーザデバイス150から、バルク原価計算リクエストが開始され得る。
【0022】
幾つかの実施形態において、ユーザデバイス152のようなユーザデバイスは、アプリケーションサーバ130と直接通信し得る。例えば、ユーザデバイス152は、(例えば、インターネット接続を介して)ユーザがアプリケーションサーバ130と対話することを可能にするクライアントソフトウェアを作動させ得る。アプリケーションサーバ130及び/又は他のデバイスのいずれか、そして本明細書に記載される方法は、企業の為にサービスを実施する販売店のようなサードパーティと関連し得る。
【0023】
アプリケーションサーバ130及び/又はシステム100の他の要素は、例えば、パーソナルコンピュータ(「PC」)、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、企業サーバ、サーバファーム、及び/又は、データベース又は類似の記憶デバイスと関連し得る。幾つかの実施形態によれば、「自動」アプリケーションサーバ130(及び/又はシステム100の他の要素)は、本明細書に記載のバルク原価計算結果の生成を容易にし得る。本明細書に使用される際に、「自動」の語は、例えば、人による介入をほとんど(又は全く)伴わずに実施され得る動作を指し得る。
【0024】
本明細書で使用される際に、アプリケーションサーバ130と本明細書に記載の他のいずれかのデバイスとに関連するものを含むデバイスは、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、メトロポリタンエリアネットワーク(「MAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、固有ネットワーク、公衆交換電話網(「PSTN」)、ワイヤレスアプリケーションプロトコル(「WAP」)ネットワーク、ブルートゥース(登録商標)ネットワーク、ワイヤレスLANネットワーク、及び/又は、インターネットやイントラネットやエクストラネットのようなインターネットプロトコル(「IP」)ネットワークのうちの一以上であり得る何らかの通信ネットワークを介して、情報を交換し得る。本明細書に記載のいかなるデバイスも、一以上のこのような通信ネットワークを介して通信し得ることに注意していただきたい。
【0025】
アプリケーションサーバ130は、本明細書に更に記載される原価計算を実施する為に原価計算データストア110及び/又はVPEデータストア120に情報を記憶し得る、及び/又は、これらから情報を検索し得る。
図1には示されていないが、アプリケーションサーバ130はまた、一以上のCADファイル又はシステム、及び/又は、一以上のPLMファイル又はシステムからデータを受理してこれらへデータを書き込み得る。例えば、ユーザデバイス150,152から処理の為に提出されたリストと併せてCADファイルが受理され得る。アプリケーションサーバ130は、本明細書に更に記載される処理の間にこれらのファイルにアクセスし得る。データストア110,120は局所的に記憶されるか、アプリケーションサーバ130から遠隔位置にあり得る。
図1には単一のアプリケーションサーバ130が示されているが、このようなデバイスはいかなる数が含まれてもよい。また、本発明の実施形態により、本明細書に記載の様々なデバイスが組み合わされ得る。
【0026】
図1のシステム100が一例としてのみ提供されて、追加の要素又はコンポーネントと実施形態が関連し得ることに注意していただきたい。幾つかの実施形態によれば、システム100の要素は、分散型通信ネットワークを経由して、対話型ユーザインタフェースディスプレイと関連する情報を自動的に送信する。
図2は、本発明の幾つかの実施形態による、
図1に関して記載されたシステム100又は他の何らかのシステムの要素の幾つか又は全てにより実施され得る方法200を例示している。本明細書に記載のフローチャートはステップの固定順序を含意しているのではなく、本発明の実施形態は、実践可能ないかなる順序でも実践され得る。本明細書に記載の方法のいずれかが、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらのアプローチの何らかの組み合わせにより実施され得ることに注意していただきたい。例えば、コンピュータ可読記憶媒体は、マシンによる実行時に、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる実施が結果的に生じる命令を記憶し得る。
【0027】
方法200は、ユーザデバイス150,152からのバルク原価計算リクエストの受理時に実施され得る。210で受理されたバルク原価計算リクエストは、一以上の入力変数を指定する情報と共に、原価計算される一以上のパーツ又はコンポーネントを特定する情報を含み得る。210で受理されるリクエストは、API140を介して、又は別の形の通信を介して(例えば、アプリケーションサーバ130へのファイルアップロードその他などを介して)、受理され得る。説明を目的として、本開示が幾つかの実施形態の特徴を例示している場合の例が、残りの記載を通して紹介及び記載される。例示的な例において、ユーザデバイス150を操作するユーザは、原価計算される幾つかのパーツ又はコンポーネントを特定している。パーツの各々は、これらと関連する一以上のCADモデルを有する。パーツは一以上のアセンブリを形成する。ユーザは、幾つかの異なるVPE(ブラジル、中国、インド、そして米国)を使用して、二つの異なる年間生産量(1000及び5000)と二つの異なるバッチサイズ(100及び500)とでパーツの原価計算をしようとする。こうして、16の異なる原価計算シナリオ―先行のシステム及び方法を使用すると扱いにくい数のシナリオ―が得られる。本発明の実施形態によれば、パーツ及びアセンブリを特定する情報と共に入力変数を特定する(VPE、生産量、そしてバッチサイズの特定)情報を提出するバルク原価計算リクエスト210を開始するだけでよく、アプリケーションサーバ130がこの処理を扱う。
【0028】
幾つかの入力変数(VPE、生産量、そしてバッチサイズ)が本明細書に記載されるが、他の幾つかの入力変数が使用されてもよい。例えば、原料タイプ、キャビティの数、在庫形態等のような入力が、綿密な原価計算の為のマトリクスを作成するのに使用されるべきである変数タイプを指定するのに使用され得る。本明細書で更に記載されるように、多数の変数が指定される(そしてその結果、非常に大きなパーツ組み合わせマトリクスが原価計算される)場合でも、実施形態ではこれらの組み合わせの効率的な自動原価計算が可能である。
【0029】
処理は220へ続き、ここでアプリケーションサーバ130のバルク原価計算モジュール132は、リクエストメッセージで受理した情報を処理して、入力変数の各組み合わせについての各コンポーネントのシナリオを含むマトリクスを作成する。結果的に得られるマトリクスは、サーバ130と関連するメモリに、アイテムリストの形で記憶され得る。例えば、例示的な例で、アイテムリストの各アイテムは、(例えばCADシステムからの)パーツファイル、(例えば、“[request‐name]_[VPE]_[Volume]_[Batch]_date)”、つまり“demo_Brazil_1000_100_5‐1‐2020”のような記述形式などの)シナリオ名、(ファイル又は画像ファイルへのパスを指定する情報、ファイルの属性、後続の処理ルールを示すフラグ、コンポーネントタイプ、プロセスグループ、VPE、パーツの原料を特定する情報のような)ファイル情報を含む情報を含み得る。パーツ及びその取扱いと関連する他の情報も提供され得る。
【0030】
処理は任意で230に続き、ここでマトリクスの結果を内含するように一以上のロールアップが作成され得る。例えば、各VPEその他についてロールアップが作成され得る。処理は240に続き、
図3~4と併せて更に以下で記載されるように、ここでリストが原価エンジン136に提供されて綿密な原価計算が実施される。綿密な原価計算が実施されてその結果がバルク原価計算モジュール132へ戻されると、その結果が250で出力され得る。幾つかの実施形態では、下記の
図8に示されているようなユーザインタフェースのディスプレイとして、結果が出力され得る。幾つかの実施形態では、結果がJSONオブジェクトその他のようなフォーマットで提供され、更なる処理の為にユーザデバイス150,152に提供される。更に、幾つかの実施形態では、出力データがレポート又は解析システムに提供され、ユーザデバイス150,152を操作するユーザはデータについてレポート及び解析を行い、その必要性に最も適した製造アプローチを選択する。
【0031】
幾つかの実施形態によれば、
図2のプロセス200は、幾つかの異なるユーザデバイス150,152からのリクエストに基づいて頻繁に実施され得る。以下で更に記載されるように、実施形態は、性能及び処理量の上昇と平行して多数の原価計算作業を可能にする。
【0032】
さて
図3を参照すると、原価計算されるコンポーネント及びアセンブリの初期リストを310で受理する際に原価エンジン136により実施されるプロセス300が示されている。処理は320へ続き、ここで原価エンジン136が作動して、アセンブリの各コンポーネントを解析して低レベルコンポーネントを最初に配置することによりリストを再配列する。例えば、ブラケットと、ブラケットを別のコンポーネントに装着する締結具とをアセンブリが含む場合に、ブラケットは締結具よりも低レベルのコンポーネントである。アセンブリの各低レベルコンポーネントがアセンブリの他のコンポーネントより下位に配置される再配列リストが作られるまで、320での処理がリスト全体で反復される。
【0033】
処理は330へ続き、ここで再配列リストが評価されて、リスト内のコンポーネントが2モデルコンポーネント(つまり二つのCADモデル―ソースモデルとマシンモデル―を含むコンポーネント)であるかどうかを判断する。そうである場合に、処理は340へ続き、ここで両方のモデルを含むコンポーネントについてソースモデルをマシンモデルの前に配置するようにリストがまた再配列される。
【0034】
処理は350へ続き、ここで原価エンジン136が別の再配列リストについて作動して、他のコンポーネントに従属するコンポーネントを特定する。幾つかの実施形態では、このような従属性についてのフラグでリストが更新される。例えば
図4のステップ440では原価計算中に従属性フラグが使用されるだろう。
【0035】
迅速な原価再計算プロセスが実施されるべきであるかどうかを判断する任意の処理ステップである360で処理が続く。前に原価計算されたパーツ又はシナリオについて迅速な原価再計算が実施され得る。幾つかの実施形態において、迅速な原価再計算は、前の原価計算イベントで必要であると指摘された或るファイル及びパーツを再評価するのみである。360での処理は、前に使用された解析と共に、リスト上の各パーツ又はアイテムと関連するCADモデルを解析することを含み得る。CADモデルが変更された場合には、迅速な原価再計算は実行可能でなく、そのパーツ又はコンポーネントについての完全な原価再計算が実施されるだろう。現在選択されている入力(例えば選択されたVPE、生産量、そしてバッチサイズ)では前に使用された解析が利用可能でない場合には、迅速な原価再計算は利用可能でなく、処理は380に続く。迅速な原価再計算が利用可能である場合には、処理は370に続き、原価計算される必要のあるコンポーネントのみにフラグを立てるようにリストが更新される。幾つかの実施形態によれば、本発明の迅速な原価再計算では、或るアイテム(例えばプロセス及び操作実現可能性ファイル、マシン選択ファイル、原料在庫選択ファイル、原価タクソノミーファイル、その他)が評価されるのに対して、(例えば形状抽出、多数のルーティングの中での評価、多数の操作オプションの中での評価、多数の原料在庫オプションの中での評価のような)他のアイテムはスキップされる。例えば、迅速な原価再計算では、原料在庫のケースで、在庫選択ロジックからの在庫候補集合が得られる。前の原価計算で使用されたものと合致する在庫が発見された場合に、他の候補は削除され、この一つの在庫のみが原価計算される。概して、幾つかの実施形態によれば、迅速な原価再計算は、前の原価計算からの情報に基づいて必要とされる原価計算の労力の量を削減する簡易又は最小の原価計算であり得る。
【0036】
幾つかの実施形態において、迅速な原価再計算プロセスが実施されるべきであるかどうかの判断は、後の処理の間に実行され得る。例えば、迅速な原価再計算プロセスは、(
図4と併せて記載されたプロセス400でのように)パーツが原価計算される時に実施され得る。例えば、迅速な原価再計算判断はプロセス400のスレッド処理中に実施され得る―原価再計算を必要とするパーツが原価再計算されるのに対して、そうではないパーツはスキップされる。
【0037】
原価計算される必要のあるアイテムを特定するようにリストが更新されると、処理は380に続き、結果的に得られたリストが最終リストとして、原価エンジンへの入力として提供される。幾つかの実施形態において、処理は
図4のプロセス400に続く。
【0038】
プロセス400は最終リストの受理で始まり、リストは、(残っているアイテムがなく、420でプロセスが終了するまで)リスト上の次のアイテムを選択するように、410で反復的に処理される。次のリストアイテム又はコンポーネントが430で解析されて、(例えば、
図3のステップ350でフラグが立てられるように)コンポーネントが従属コンポーネントであるかどうかが判断される。その場合に、処理は450に続き、ここでは従属パーツが原価計算されたかどうかの判断が行われる。その場合に、処理は470に進み、スレッドが作成又は生成され、プロセスがそのスレッドで開始されてコンポーネントの原価計算を行う。従属パーツが原価計算されていない場合に、処理は460に続き、ここで従属コンポーネントがリストに戻されて410で更なる処理を待つ(つまり従属コンポーネントが原価計算されるまで処理を待つ)。幾つかの実施形態では、従属コンポーネントが原価計算された時に、従属コンポーネントが次の利用可能スレッドに差し込まれる。スレッドの使用により、原価計算作業が(原価計算解析の為に構成されたCPUのような)リソース全体に拡大され得る。このようにして、多くのコンポーネントが、順に原価計算されることを必要とするのではなく、同時に原価計算され得る。その結果、ブロッキングエラーがほとんどない遥かに迅速な作業が行われる。
【0039】
処理は480に続き、原価データが受理されて出力ファイルが原価データで更新されると、スレッドが中断される。プロセス400は、最終リストの全てのコンポーネントが原価計算されてしまうまで続く。本明細書に記載のロジックを使用してリストが配列されると、原価計算の性能及び精度が最高になる。
【0040】
さて、幾つかの実施形態によるグラフィカルユーザインタフェースが示されている
図5~7を参照する。例えば、
図5は、バルク原価計算リクエストがアプリケーションサーバ100へ提出される前にユーザデバイス150,152を操作するユーザに提示され得るユーザインタフェース500を示している。ユーザはモーダルウィンドウと対話して、ファイル内のパーツ及びコンポーネント情報と共に提出されるバルク原価計算リクエストについての一以上の入力値を指定する。アプリケーションサーバ100に提出されると、本発明のバルク原価計算が開始する。
【0041】
図6は、(原価計算に先立って)バルク原価計算モジュール132により生成されるマトリクスをユーザに示すユーザデバイス150,152を操作するユーザに提示され得るユーザインタフェース600を示す。ユーザインタフェース600は、入力に基づいて作成されたシナリオの全てを示し、入力の全てが集合として適切に示されている。更なる処理の為にマトリクスを提出するのに、ユーザは「原価」ボタンを選択するだけでよい。ユーザはまた、マトリクスと対話して、原価計算の前に何らかの設定を修正し得る。
【0042】
図7は、原価計算の後でユーザデバイス150,152を操作するユーザに提示され得るユーザインタフェース700を示す。ユーザインタフェース700は、原価計算されたマトリクスオプションを全てユーザに示し、ユーザは原価情報をロールアップで視認することができる。ユーザはインタフェース700と対話して、例えば見積書の為の入札パッケージを作成する、どこからのパーツであるかを判断する等のような、幾つかの動作を開始できる。
【0043】
本明細書に記載の実施形態は、幾つかの異なるハードウェア構成を使用して具現化され得る。例えば、
図8は、例えば
図1に関して記載されたシステム100と関連し得るアプリケーションサーバ又は装置800を図示している。装置800は、通信ネットワーク(
図8には不図示)を介して通信するように構成される通信デバイス820に連結される、ワンチップ又はマルチチップマイクロプロセッサの形の一以上の市販の中央処理ユニット(「CPU」)のようなプロセッサ810を具備する。通信デバイス820は、例えば、一以上の遠隔ユーザコンピュータ及び又は通信デバイス(例えばPCやスマートフォン)と通信するのに使用され得る。通信デバイス820を介して交換される通信が、公衆インターネットユーザと、保険会社及び/又は企業の内部ネットワークとの間のもののようなセキュリティ特徴を利用し得ることに注意していただきたい。セキュリティ特徴は、例えば、ウェブサーバ、ファイアウォール、及び/又は、PCIインフラストラクチャと関連し得る。装置800は更に、入力デバイス840(例えば、パーツ又はコンポーネントについての情報を入力する為のマウス及び/又はキーボード等)と、(例えばバルク原価計算結果等のようなレポートを出力する為の)出力デバイス850とを含む。
【0044】
プロセッサ810は記憶デバイス830とも通信する。記憶デバイス830は、磁気記憶デバイス(例えばハードディスクドライブ)、光学記憶デバイス、及び/又は、半導体メモリデバイスの組み合わせを含む適切な情報記憶デバイスを具備し得る。記憶デバイス830は、例えば、プロセッサ810を制御するように構成されるバルク原価計算プログラム815とスレッドマネージャプログラム817と原価エンジン819とを含むプログラムコードを記憶する。プロセッサ810はプログラム815~819の命令を実施し、これにより本明細書に記載の実施形態のいずれかにより作動する。例えば、プロセッサ810はバルク原価計算リクエストを受理して、バルク原価計算の為のリストを作成する作業を実施し得る。そしてプロセッサ810はスレッドマネージャ817及び原価エンジン819コードを実行し、一以上のスレッドを使用してリストのバルク原価計算を行わせ得る。
【0045】
プログラム815~819は、圧縮、未コンパイル、及び/又は、暗号化形式で記憶され得る。プログラム815~819は更に、プロセッサ810により使用されて周辺デバイスとインタフェース接続されるオペレーティングシステム、データベース管理システム、及び/又は、デバイスドライバのような他のプログラム要素を含み得る。
【0046】
本明細書に記載のアプリケーションサーバ100又はサーバ800の機能は、コンピュータプロセッサにより実行される非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されるコンピュータプログラムコードを有するコンピュータアプリケーションを使用して具現化され得る。本明細書に記載のアプリケーションサーバ100又はサーバ800の機能は、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルアレイロジック、プログラマブルロジックデバイスその他のようなプログラマブルハードウェアデバイスでも具現化され得る。更に、本明細書に記載の機能は、コンピュータプロセッサ及びプログラマブルハードウェアデバイスにより実行されるコンピュータプログラムの幾つかの組み合わせを使用して具現化され得る。故に、本出願のサーバは、所望の機能を実施するのに適したコンピュータハードウェア及びソフトウェアを具備し、ハードウェア及びソフトウェアによる特定の組み合わせには限定されない。
【0047】
実行可能なコンピュータプログラムコードは、オブジェクト、手順、プロセス、又は機能として整理され得るコンピュータ命令の一以上の物理的又は論理的なブロックを有し得る。例えば、実行可能なコンピュータプログラムコードは、幾つかの異なるコードパーティション又はセグメントにわたって、異なるプログラムの中で、そして幾つかのデバイスの間で分散され得る。従って、実行可能なコンピュータプログラムは物理的に一緒に配置される必要はなく、異なる場所に記憶されて、論理的に結合された時にコンピュータアプリケーションとなる別々の命令を有し、コンピュータアプリケーションについて記された目的を達成し得る。
【0048】
本明細書で使用される際に、情報は、例えば、(i)別のデバイスからアプリケーションサーバ800に、(ii)別のソフトウェアアプリケーション、モジュール、又は他のソースから、アプリケーションサーバ800内のソフトウェアアプリケーション又はモジュールに、「受理」されるか、これらに「送信」され得る。
【0049】
(
図8に示されているような)幾つかの実施形態において、記憶デバイス830は更に、プログラム815~819に使用されて本明細書に記載の処理を実施する例えばリストデータ832及びスレッドデータ834のような情報を記憶する。
【0050】
故に、多様な入力及びシナリオを含むパーツ及びコンポーネントのマトリクスの原価計算を含む、パーツ及びコンポーネントのバルク原価計算を実施する自動的かつ効率的な手法が、実施形態により提供され得る。一部にはパーツ又はコンポーネントが効率的に原価計算される処理の間にリスト管理機能を実施することによって、迅速かつ正確にこのような原価計算が実施形態により実施され得る。
【0051】
以下では、本発明の様々な追加実施形態を例示する。これらは、全ての可能な実施形態の定義を構成せず、他の多くの実施形態に本発明が適用可能であることを当業者は理解するだろう。更に、明瞭性の為に以下の実施形態は簡潔に記載されるが、必要であれば、以上及び他の実施形態及び応用に対応するように上に記載の装置及び方法に何らかの変更をどのように加えるかを当業者は理解するだろう。
【0052】
特定のハードウェア及びデータ構成が本明細書に記載されたが、本発明の実施形態により幾つかの他の構成が設けられ得ることに注意していただきたい(例えば、本明細書に記載のディスプレイと関連する情報の幾つかが、ファイル又はスプレッドシートを介するなど他の態様で伝送される、及び/又は、本明細書に記載のデータベースが組み合わされるか外部システムに記憶され得る)。また、特定タイプのコンポーネント又はパーツに関して実施形態が記載されたが、代わりに、他の製造プロセスの原価計算又は解析と実施形態が関連していてもよい。同様に、本明細書の幾つかの実施形態に関係して或る属性が記載されたが、代わりに他の属性が使用されてもよい。また更に、本明細書に例示されるディスプレイ及びデバイスは例として提示されたものに過ぎず、他のタイプのユーザインタフェースと関連する実施形態であってもよい。
【0053】
例示のみを目的として幾つかの実施形態について本発明が記載された。本発明は記載の実施形態に限定されず、添付請求項の趣旨及び範囲にのみ限定される修正及び変更を伴って実践されてもよいことを、当業者は本明細書から認識するだろう。
〔付記1〕
アプリケーションコンピュータサーバを介して具現化されるバルク原価計算システムであって、
(a)複数のコンポーネントについての推定生産原価を提供する複数の原価データ要素を表す電子記録を内含する原価計算データストアと、
(b)複数のシミュレーション生産環境(VPE)を表す電子記録を内含する仮想生産環境データストアと、
(c)前記アプリケーションコンピュータサーバに連結されて、分散型通信ネットワークを介して遠隔ユーザデバイスとのデータの送信を容易にする通信ポートと、
を具備し、
(d)前記原価計算及びVPEデータストアに連結された前記アプリケーションコンピュータサーバが、
前記通信ポートを介してバルク原価計算リクエストを遠隔ユーザデバイスから受理し、前記バルク原価計算リクエストが、原価計算されるアイテムのリストと入力変数の集合とを含み、
バルク原価計算エンジンにより、入力変数の各組み合わせについて原価計算される各アイテムのシナリオを含むコンポーネント及びアセンブリの最終リストを生成し、
原価エンジンにより、前記最終リストの綿密な原価計算解析を実施して、前記入力変数の各々について原価計算される前記アイテムの各々の推定原価を結果的に得る、
ようにプログラムされる、
バルク原価計算システム。
〔付記2〕
前記入力変数の集合が、VPE、生産量、生産バッチサイズ、原料、キャビティの数、そして在庫形態のうち一以上を含む、付記1に記載のシステム。
〔付記3〕
前記アプリケーションコンピュータサーバが更に、
前記バルク原価計算エンジンにより、前記シナリオのうち一以上の原価計算の結果を内含する第1ロールアップを少なくとも作成する、
ようにプログラムされる、付記1に記載のシステム。
〔付記4〕
最終リストの生成が更に、
入力変数の各組み合わせについて原価計算される各アイテムの各シナリオについてコンポーネント及びアセンブリの初期リストを生成し、
前記初期リストを再配列して処理の為に前記初期リストを最適化し、前記最終リスト作成する、
ように前記バルク原価計算エンジンを作動させることを有する、付記1に記載のシステム。
〔付記5〕
前記初期リストの再配列が更に、
前記初期リストを解析して、アセンブリのコンポーネントを特定すると共に各アセンブリの低レベルコンポーネントを特定し、
前記リストを再配列して、各アセンブリの低レベルコンポーネントが前記アセンブリの高レベルコンポーネントより前記リストで上位に配置された第1再配列リストを作成する、
ように前記バルク原価計算エンジンを作動させることを有する、付記4に記載のシステム。
〔付記6〕
前記初期リストの再配列が更に、
前記初期リストと前記第1再配列リストのうち少なくとも一方を解析して、2モデルコンポーネントであるいずれかのコンポーネントを特定し、
前記リストを再配列して、各2モデルコンポーネントについてソースモデルがマシンモデルよりも前記リストで上位に配置された第2再配列リストを作成する、
ように前記バルク原価計算エンジンを作動させることを有する、付記5に記載のシステム。
〔付記7〕
前記初期リストの前記再配列が更に、
前記初期リストと前記第1再配列リストと前記第2再配列リストのうち少なくとも一つを修正して、別のコンポーネントに従属する各コンポーネントにフラグを立てて更新済みリストを作成する、
ように前記バルク原価計算エンジンを作動させることを有する、付記6に記載のシステム。
〔付記8〕
前記初期リストの前記再配列が更に、
迅速な原価再計算が実施されるかを判断し、
前記更新済みリストを修正して、迅速な原価再計算に必要なアイテムのみを含む最終リストを作成する、
ように前記バルク原価計算エンジンを作動させることを有する、付記7に記載のシステム。
〔付記9〕
前記初期リストの前記再配列が更に、
前記更新済みリストから前記最終リストを作成する、
ように前記バルク原価計算エンジンを作動させることを有する、付記7に記載のシステム。
〔付記10〕
前記綿密な原価計算解析が更に、
前記最終リストで次のアイテムを選択し、
前記次のアイテムが原価計算されなかった別のアイテムに従属しないかを確認し、
複数のプロセッサのうち一つを使用して前記次のアイテムが原価計算される新たな処理スレッドを開始し、
前記次のアイテムと関連する原価データを受理して前記処理スレッドを終了する、
ように前記原価エンジンを作動させることを有する、付記1に記載のシステム。
〔付記11〕
前記綿密な原価計算解析が更に、
前記最終リストの前記アイテムの各々についての推定原価データを内含する出力ファイルを作成する、
ように前記原価エンジンを作動させることを有する、付記10に記載のシステム。
〔付記12〕
前記推定原価データがレポートシステムへ入力として提供される、付記11に記載のシステム。
〔付記13〕
コンピュータサーバを介して具現化されるコンピュータ制御バルク原価計算方法であって、
遠隔ユーザインタフェースからバルク原価計算リクエストを受理することであり、前記バルク原価計算リクエストが、原価計算されるアイテムのリストと入力変数の集合とを含むことと、
バルク原価計算エンジンにより、入力変数の各組み合わせについて原価計算される各アイテムのシナリオを含むコンポーネント及びアセンブリの最終リストを生成することと、 原価エンジンにより、前記最終リストの綿密な原価計算解析を実施して、前記入力変数の各々について原価計算される前記アイテムの各々の推定原価が結果的に得られることと、
を有する方法。
〔付記14〕
最終リストの生成が更に、
入力変数の各組み合わせについて原価計算される各アイテムの各シナリオについてコンポーネント及びアセンブリの初期リストを生成することと、
前記初期リストを再配列して処理の為に前記初期リストを最適化し、前記最終リストを作成することと、
を有する、付記13に記載の方法。
〔付記15〕
前記初期リストの前記再配列が更に、
前記初期リストを解析して、アセンブリのコンポーネントを特定するとともに、各アセンブリの低レベルコンポーネントを特定することと、
前記リストを再配列して、各アセンブリの低レベルコンポーネントが前記アセンブリの高レベルコンポーネントより上位に配置された第1再配列リストを作成することと、
を有する、付記14に記載の方法。
〔付記16〕
前記初期リストの前記再配列が更に、
前記初期リストと前記第1再配列リストのうち少なくとも一方を解析して、2モデルコンポーネントであるコンポーネントを特定することと、
各2モデルコンポーネントについて、ソースモデルがマシンモデルより前記リストで上位に配置された第2再配列リストを作成することと、
を有する、付記15に記載の方法。
〔付記17〕
前記初期リストの前記再配列が更に、
前記初期リストと前記第1再配列リストと前記第2再配列リストのうち少なくとも一つを修正して、別のコンポーネントに従属する各コンポーネントにフラグを立てて更新済みリストを作成すること、
を有する、付記16に記載の方法。
〔付記18〕
前記初期リストの前記再配列が更に、
迅速な原価再計算が実施されるかを判断することと、
前記更新済みリストを修正して、迅速な原価再計算に必要とされるアイテムのみを含む最終リストを作成することと、
を有する、付記17に記載の方法。
〔付記19〕
前記初期リストの前記再配列が更に、
前記更新済みリストから前記最終リストを作成すること、
を有する、付記17に記載の方法。
〔付記20〕
プロセッサによる実行時に前記プロセッサにバルク原価計算方法を実施させる命令を記憶する非有形のコンピュータ可読媒体であって、
前記方法が、
遠隔ユーザデバイスからバルク原価計算リクエストを受理することであって、前記バルク原価計算リクエストが、原価計算されるアイテムのリストと入力変数の集合とを含むことと、
バルク原価計算エンジンにより、入力変数の各組み合わせについて原価計算される各アイテムのシナリオを含むコンポーネント及びアセンブリの最終リストを生成することと、
原価エンジンにより、前記最終リストの綿密な原価計算解析を実施して、前記入力変数の各々について原価計算される前記アイテムの各々の推定原価が結果的に得られることと、
を有する、
非有形のコンピュータ可読媒体。
【符号の説明】
【0054】
100 システム
110 原価計算データ
120 仮想生産環境
130 アプリケーションサーバ
132 バルク原価計算アプリケーション
134 スレッドマネージャ
136 原価エンジン
140 API
150 ユーザデバイス
152 ユーザデバイス
160 CADシステム/ファイル
200 方法
300 プロセス
400 プロセス
500 ユーザインタフェース
600 ユーザインタフェース
700 ユーザインタフェース
800 アプリケーションサーバ
810 プロセッサ
815 バルク原価計算プログラム
817 スレッドマネージャプログラム
819 原価エンジン
820 通信デバイス
830 記憶デバイス
832 リストデータ
834 スレッドデータ
840 入力デバイス
850 出力デバイス