(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】近似画像を提供するための方法、コンピュータプログラム製品、およびコンピュータシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/46 20240101AFI20240620BHJP
A61N 5/10 20060101ALN20240620BHJP
A61B 34/10 20160101ALN20240620BHJP
【FI】
A61B6/46 536Q
A61N5/10 P
A61B34/10
(21)【出願番号】P 2021573435
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2020065119
(87)【国際公開番号】W WO2020249415
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-26
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522454806
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン,キール
(72)【発明者】
【氏名】ウェイストランド,オラ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】スヴェンソン,スティナ
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0213646(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0200526(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0158879(US,A1)
【文献】特開2017-093516(JP,A)
【文献】特開2017-192808(JP,A)
【文献】特開2009-148495(JP,A)
【文献】特開2009-160308(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0184238(US,A1)
【文献】特開2017-109099(JP,A)
【文献】特表2017-508561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58 、
A61M36/10 -36/14 、
A61N 5/00 - 5/10 、
G06T 1/00 - 1/40 、 3/00 - 7/90 、
G06V10/00 -20/90 、30/418、40/16 、
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の近似3D画像を提供するコンピュータベースの方法であって、
前記患者の表面スキャンに基づいて、前記患者の身体または前記患者の身体の一部の輪郭モデルを取得するステップと、
前記患者の内部の密度の近似値を提供するために、
輪郭の内部の少なくとも一部に関する密度および/または画像強度値であってよい少なくとも1つの内部値を設定するステップと、
少なくとも1つの内部密度値とは異なる、前記輪郭の外部の領域に関する密度および/または画像強度値であってよい外部値を設定するステップと、
前記輪郭モデル、前記少なくとも1つの内部値、および前記外部値に基づいて近似画像を生成するステップと
を備える方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの内部値が前記輪郭の前記内部全体に関して設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記輪郭の前記内部の第1の部分に関して第1の内部値を設定し、前記輪郭の前記内部の第2の部分に関して第2の内部値を設定するステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記輪郭において、前記患者の前記内部における少なくとも第1の関心領域の形状および位置を近似し、前記第1の関心領域に関する前記第1の内部値を前記第1の内部値に設定するステップを更に備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者の骨格の位置に関する骨情報を提供し、前記骨情報に基づいて前記輪郭の前記内部における骨領域の位置および形状を推定し、前記骨領域に対応する領域内の前記第1または第2の内部値を、骨を表す密度に設定するステップを更に備える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも第1の領域の形状および位置を近似する前記ステップは、患者の内部のCT画像またはMR画像であってよい3D画像を提供することと、前記
3D画像内の対応する関心領域の前記形状および位置に基づいて前記第1の関心領域の前記形状および位置を近似することとを備える、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記近似するステップは、変形可能レジストレーションによって前記3D画像を前記輪郭にレジストすることを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記3D画像は、複数の患者画像、または前記患者について撮影された過去画像に基づく、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記外部値は、空気を表す値に設定される、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
たとえば放射線治療または手術などの医療処置を計画する方法であって、患者の近似3D画像を提供するために請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の方法を行うことと、前記近似3D画像に基づいて前記医療処置を計画することとを含む方法。
【請求項11】
前記医療処置は、前記近似3D画像の不確実性に関して計画される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記患者の少なくとも2つの近似3D画像を提供し、前記少なくとも2つの近似3D画像を前記
医療処置の計画作成に用いて、前記
医療処置が前記少なくとも2つの近似3D画像の各々について満足な結果を出すことを確実にするために、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の方法を少なくとも2回行うことを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータで実行されるときに、前記コンピュータに、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の方法および/または請求項10~請求項12のいずれかに記載の計画作成方法を行わせる、好適には非一時的記憶手段(55)に格納されたコンピュータプログラム製品。
【請求項14】
患者の近似画像を提供するためのコンピュータシステム(21)であって、
プロセッサ(23)を備え、実行されると、線量計画作成を行うように前記
プロセッサ(23)を制御する、請求項10に記載のコンピュータプログラム製品が格納されたプログラムメモリ(25)を有する、コンピュータシステム。
【請求項15】
前記患者の身体の前記輪郭を表す輪郭データを提供するように構成された輪郭走査デバイスを更に備え、前記プロセッサは、前記輪郭データに基づいて輪郭モデルを計算するように構成される、請求項14に記載のコンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用途で用いるための患者の推定画像を提供するための方法、コンピュータプログラム製品、およびコンピュータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば手術、または放射線治療などの他の種類の治療を計画するために、様々な種類の医療用撮像が幅広く用いられている。いくつかの医療用途において、患者の身体の大部分の画像が必要である。撮像方法に依存して、これには時間がかかり、患者は、多少なりとも快適な姿勢で静止している必要がある。
【0003】
高品質データを提供するための既知の方法の1つは、コンピュータトモグラフィ、CTである。全身CTスキャンの取得は既知であるが、これは時間を要し、撮像される人間がある程度の放射線に晒されることも伴い、一般的に望ましくない。CT画像は多くの場合、順方向または逆方向の計画作成手法を含む、線量計算を含む放射線治療計画作成に用いられる。
【0004】
正確な線量分布を計算する必要がある場合に画像を必要とする、そのような医療用途の1つは、骨髄移植および血移植の準備に用いられる全身照射(TBI)の治療計画作成である。そのような治療に関して、多くの場合、線量の近似的計画作成で事足りるので、従来、たとえば患者の身体における1つの箇所の位置および/または身体サイズなどの非常に限られたデータに基づいて計画が作成されてきた。たとえば、Int.J. of Rd onc Bio Phys、第84巻、第3版、付録、S864頁には、「従来の全身照射(TBI)計画作成では、全身が処方線量の+/-10%以内を受けることを必要とし、ここで線量計算は、へその正中点について行われる」と記載されている。Kochら、Total Body Irradiation using dynamic arc delivery、Int J Radiat Oncol Biol Phys、2016年、96:E640は、計算が、追加の解剖学的情報を伴わずに身体サイズに基づく方法を開示する。そのような入力データに基づく計画作成の結果は、場合によっては不十分である。Kochらによって開示された計画作成方法は、患者のサイズの測定値を用いてスケーリングされる、事前委任された線量動的フィールド、またはアークのライブラリに基づいている。
【0005】
今日、TBIは、全身をカバーするために患者から長く距離をとって、一般に4メートル以上離れて行われる。距離が長くなるほど、各ビームが患者のより大きな面積をカバーすることになるので、より少ないビーム、場合によっては1本のビームしか必要でないことを意味する。これにより、大きなフィールドおよび著しい不確実性が生じる。あるいは、可動カウチが用いられ、その際体の一部分に放射線が提供される。提案される方法は、たとえばテンプレートのビーム構成に基づく。全身CTが得られなければ、そのような方法は、治療計画が患者の3D画像に基づくものではないため、線量計算の多大な不確実性に悩まされることになる。特に、ビームジオメトリに対する患者位置の不確実性により、(多くの場合、フィールド結合点と呼ばれる)ビーム結合点、すなわち隣接する患者体積をカバーする2本のビームの結合点における線量に不確実性が存在することになる。
【0006】
他の応用分野は、手術計画作成である。いくつかの種類の手術に関して、患者は仰向けに横たわり、その後、横向きに寝かせられ、傾けられ、または曲げられて撮像される。治療位置は、撮像位置により非常に様々であり得る。この場合、内臓の位置は予測することが難しく、この位置でフルCTスキャンを取得することは実現不可能である。そのような例において、治療位置にある内臓の信頼できる近似を取得可能であることが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、患者のたとえばCT画像などの詳細画像を必要とすることなく、過去の近似よりも高い精度を有する患者の近似画像の提供を可能にすることである。上述したように、そのような近似画像は、たとえば放射線治療または手術などの様々な医療処置の計画作成のために用いられ得る。
【0008】
この目的は、本発明に従って、患者の近似3D画像を提供するコンピュータ実装方法によって実現され、方法は、
患者の表面スキャンに基づいて、患者の身体または患者の身体の一部の輪郭モデルを取得するステップと、
患者の内部の密度の近似値を提供するために、輪郭の内部の少なくとも一部に関する密度および/または画像強度値であってよい少なくとも1つの内部値を設定するステップと、
少なくとも1つの内部密度値とは異なる、輪郭の外部の領域に関する密度および/または画像強度値であってよい外部値を設定するステップと、
輪郭モデル、少なくとも1つの内部値、および外部値に基づいて近似画像を生成するステップと
を備える。
【0009】
密度値または画像強度値の使用は、画像モダリティに依存して選択される。本明細書の一部において、説明は、密度値に基づく。理解すべき点として、いくつかの画像モダリティに関しては代わりに画像強度値が用いられてよく、または用いられるべきである。その結果生じる画像は、患者の外形輪郭に、場合によっては患者の内部に関する他のデータに適合される、患者の内部の近似である。近似画像は、放射線治療計画作成または手術計画作成を含む様々な医療用途で用いられ得る。
【0010】
最も単純な実施形態において、輪郭の内部全体に関して、たとえば水を表す内部密度値など、1つの内部強度または密度値が用いられる。全ての実施形態において、輪郭の外部の密度は、好適には、たとえば空気の密度などの適当な密度に設定される。
【0011】
他の実施形態において、輪郭の内部の第1の部分に関して第1の内部密度値が設定され、輪郭の内部の第2の部分に関して第2の内部密度値が設定され得る。そうすることで、より正確な画像を生成するために、異なる密度値を有する領域が画像内で区別され得る。たとえば方法は、たとえば腫瘍やリスク臓器などの標的であり得る特定の関心領域または何らかの理由で識別すべき他の領域を指示するために、輪郭において、患者の内部における少なくとも第1の関心領域の形状および位置を近似し、第1の関心領域に関する密度値を第1の内部密度値に設定するステップを備えてよい。
【0012】
たとえばX線透視法などのX線撮像によって取得された患者内部の骨構造の位置および範囲に関するデータに単一の密度値を結合することも可能である。骨構造情報は、好適には3Dであるが、有用なデータは2D画像からも取得され得る。2D X線または2D MR画像により、変形の方向の決定に役立ち得る骨構造の輪郭が得られ得る。好適には互いに直交する2つ以上のそのような画像が提供される場合、精度が向上する。そうすることで、CT画像が提供される場合よりも、短時間かつ患者へのより少ない放射線量で追加のデータが提供され得る。2D画像において、たとえば肺組織などの他の種類の組織を識別することも可能であり、これはその後、近似画像において用いられ得る。骨構造に関する情報を含むことは、患者における全ての臓器および組織に関する完全な情報セットよりも詳細度が低く、ゆえに複雑性が低いが、同時に、たとえば脊髄の位置などの重要なデータを提供することから、適切である。また、骨の密度は患者内部の他の組織および臓器の密度と著しく異なるので、この種のデータは、治療計画作成に大きな影響を及ぼす。
【0013】
いくつかの好適な実施形態において、上記少なくとも第1の領域の形状および位置を近似するステップは、患者の内部のCT画像を提供することと、画像内の対応する関心領域の形状および位置に基づいて第1の関心領域の形状および位置を近似することとを備える。近似するステップは一般に、変形可能レジストレーションによってCT画像を輪郭にレジストすることを備えるが、これはたとえば機械学習に基づいてもよい。これにより、いくつかの用途には有用であるが、低い詳細度しか必要としない他の用途には不必要であり得る、輪郭内部の非常に詳細な内部情報が提供される。
【0014】
CT画像は、患者の画像であってよく、または複数の他の患者の画像、または患者について撮影された過去画像に基づいてよい。
【0015】
したがって、本発明に係る方法は、たとえばより小さな設定値内で行われ得るTBIと共に用いるために適した近似手法を提供する。これは、近似画像データが、画像を伴わない計画作成よりも正確な計画作成を可能にするためである。また、フィールド結合点に関してより正確な計画作成を行うことも可能となる。同時に、近似画像データは、患者の全身CT画像なしで取得され得るので、時間およびリソースが節減され、患者への不必要な放射線が回避される。
【0016】
表面走査装置の使用は、放射線治療ユニットにおいて幅広く普及しつつあり、その装置は治療分割線量の照射のため患者の正確な位置決めを確実にするために用いられる。本発明によると、そのような装置は、患者の内部の近似画像データで満たされ得る、患者のアウトラインの表面画像を3Dで提供するために用いられ得る。近似画像データは、様々なレベルの精度で、様々な方法で提供され得る。精度レベルは、近似画像の意図された用途に基づいて決定され得る。これは特に、全身画像または患者の身体の大部分の画像を近似内部と共に提供するために有用である。
【0017】
この方法の結果生じる画像は、緩和的放射線治療の計画作成、または近似的な線量が望まれるまたは少なくとも十分に良好である、および/または短い時間フレーム内に結果を得ることが重要である他の状況など、他の目的にも用いられ得る。特に、緩和療法の場合、CTスキャンを取得するために患者を動かす必要がないことにより、患者の快適性が著しく向上し得る。たとえば以前に患者について撮影された計画画像などの適当なCT画像、または患者を表すアトラス画像が、内部データを提供するために用いられ得る。CT画像は、患者の内部を新たな輪郭に調整するために、好適には変形可能レジストレーションによって輪郭にレジストされる。
【0018】
方法は、たとえば光子、陽子、電子、またはイオンなどの任意の治療モダリティに適している。これは、VMAT、SMLC、DMLC、3DCRT、コンフォーマルアーク、静的アーク、PBSを含む任意の治療技術に適用され得る。またこれは、順方向計画作成、逆方向計画作成、MCO、知識ベースの計画作成、および自動計画作成を含む任意の治療計画作成手法にも用いられ得る。この方法は、手術を含む他の種類の医療処置の計画作成にも用いられ得る。
【0019】
本発明に係る方法は、たとえばフィールド結合点などの不確実性および/または推定画像の使用によって生じる不確実性を考慮に入れるためにロバスト最適化と組み合わせられ得る。臓器の位置の近似、または合成CT画像が含まれる場合、ロバスト最適化は、患者内部形態における不確実性および/または計画画像が撮影された後に生じた変化を考慮に入れるためにも用いられ得る。ロバスト最適化は、たとえば患者の姿勢、密度、および/または臓器の動きなどの他の任意の不確実性に対して用いられてもよい。
【0020】
本発明は、患者の近似3D画像を提供するために上述した実施形態のいずれか1つに係る方法を行うこと、および近似3D画像に基づいて治療を計画することを含む、医療処置を計画する方法にも関する。医療処置は、たとえば放射線治療または外科手術など、任意の種類の医療処置であってよく、治療の計画作成は、任意の適当な方法で3D画像に基づいてよい。複数のそのような画像ベースの計画作成方法が当技術分野において知られている。放射線治療計画作成の場合、画像は、当技術分野において知られている任意の方法でコンピュータベースの治療計画作成のために用いられ得る。たとえば手術などの他の処置の場合、計画作成は、患者内部の重要組織または臓器の位置に基づいて医師が手術工程を決定することを含んでよい。
【0021】
好適には、3D画像は患者の近似表現であるため、治療計画作成は、近似3D画像の不確実性に関するロバストな治療計画作成である。たとえば、放射線治療計画作成方法は、上述した方法を用いて患者の少なくとも2つの異なる近似3D画像を提供することと、少なくとも2つの近似3D画像の各々に関して治療計画が満足な結果を出すことを確実にするために少なくとも2つの近似3D画像を用いることとを備えてよい。これは、たとえば骨構造および周囲組織に関して少なくとも第1および第2の内部値が用いられる実施形態に有用である。これは特に、上記少なくとも第1の領域の形状および位置を近似するステップが、患者の内部のCT画像を提供すること、および画像内の対応する関心領域の形状および位置に基づいて第1の関心領域の形状および位置を近似することを備える場合に適切である。
【0022】
ロバストな計画作成を実現するために、少なくとも2つの近似画像の相違が様々な方法で実現され得る。たとえば、1または複数の関心領域の位置および/または形状は、2つの内部画像で異なり得る。これらの関心領域は、たとえば内部値を割り当てられ、または、同じ患者表面であるが異なる内部構造を有する変形が得られるように変形を導くための制御構造として用いられてよい。他の可能性は、様々な内部形態を有する履歴患者の画像を用いることである。
【0023】
この方法は、近似患者画像を提供するためのコンピュータプログラム製品およびコンピュータシステムにも関する。
【0024】
本発明は、例として添付図面を参照して以下で詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る方法の第1の実施形態のフローチャートである。
【
図2】本発明に係る方法の第2の実施形態のフローチャートである。
【
図3】外形輪郭を計算する方法のフローチャートである。
【
図6】治療計画作成にも用いられ得る一般的な線量照射システムの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の第1の実施形態のフローチャートである。この方法は、実装が簡単であり、低レベルの精度で事足りる場合に有用である。
【0027】
第1のステップS11において、患者の表面スキャンが提供される。表面スキャンは、患者を走査することから直接得られるか、またはメモリから検索した過去の走査結果であってよく、全身または身体の一部をカバーしてよい。
【0028】
第2のステップS12において、たとえば
図3に関して説明するように、表面スキャンに基づいて、患者の輪郭の3D表現が提供される。第3のステップS13において、輪郭の内部の密度が第1の適当な値、たとえば水の密度に設定され、輪郭の外部の密度が第2の適当な値、たとえば空気の密度に設定される。これに基づいて、ステップS14において、均質な物質で埋められ空気に包囲された、患者と同じアウトラインを有する身体の合成画像が生成される。密度が身体の平均密度と近いという理由から、水が適当である。これにより、患者の内部に関する細部が重要ではない用途、たとえば組織または臓器の位置などに用いられ得る、患者の身体の簡易画像を取得する高速かつ単純な方法が提供される。
【0029】
第5のステップS15において、合成画像は、たとえば放射線治療計画作成または手術計画作成などの医療処置を計画するために用いられる。
【0030】
表面スキャンを提供するために適した2つの表面スキャナは、それぞれC-RADおよびVisionRTから入手可能である。これらのスキャナは、放射線の計画作成および照射のために患者の位置を監視するためのツールを提供する。また、たとえば特定の種類の手術中に患者の位置を監視するため、および呼吸活性を監視するためなど、他の用途への使用も予測される。
【0031】
図2は、患者の骨構造に関するデータが含まれる、本発明の第2の実施形態のフローチャートである。
【0032】
第1のステップS21において、患者の表面スキャンが提供され、第2のステップS22において、
図1に関して説明したのと同じように患者の輪郭の3D表現が提供される。
【0033】
第3のステップS23において、患者の骨構造に関する情報が取得される。これは、上述したように、X線透視法または他の適当なX線撮像法を用いて取得され得る。
【0034】
第4のステップS24において、ステップS23において取得された骨構造情報は、患者の骨格の実際の位置に対応する正しい位置において身体の画像に重ね合わせられる。第5のステップS25において、輪郭の内部の密度が設定される。ただしこの例では、このステップは、患者の骨構造に関する情報も用いる。骨構造に対応する領域の密度は、骨の密度に対応する値に設定され、その他の輪郭内部の密度は、
図1と同様に、たとえば水など、一般的な組織を表す適当な値に設定される。輪郭の外部の密度は、好適には、たとえば空気の密度などの適当な値に設定される。このようにして、患者と同じアウトラインを有する身体の合成画像が生成されるが、この例において、内部は骨格のサイズおよび位置に関して近似される。
【0035】
第6のステップS26において、合成画像が生成され、たとえば放射線治療または手術などの医療処置を計画するために用いられ得る。この例において、合成画像は、異なるように設定された密度値によって患者の内部のその他の部分と区別される患者の骨構造の全部または一部を含む。
【0036】
表面走査デバイスからの出力データは、様々なフォーマットを有してよく、通常、データに基づいて完全な外形輪郭を取得するために何らかの処理が必要とされ得る。
【0037】
外形輪郭は、前段階で取得された患者自身の表面または他の適当な身体表面モデルであってよい患者の表面の一般モデルに当該患者の表面スキャンを適用することによって、当該患者の表面スキャンから計算され得る。
図3は、表面スキャンから完全な外形輪郭を計算する可能な方法の1つを開示する。
【0038】
第1のステップS31において、表面スキャン内の点は、走査デバイスによってまだ提供されていない場合、3D表面再構成によって三角形メッシュMに変換される。
【0039】
表面スキャンが全身をカバーしていない場合、スキャンによってカバーされた領域の外側の近似表面データを提供するために、ステップS31において取得された三角形メッシュと共に、入力データI31として点分布モデル(PDM)が好適に用いられる。本発明の方法は、好適には全身スキャンを用いる。PDMは、患者の個体群から得た表面から訓練されること、または形状成分を有さない1つの三角形メッシュのみで構成されることを含む、任意の適当な方法で取得され得る。現在の処置に用いるために適したそのような三角形メッシュは、CTスキャンまたはMRスキャンから計算された現在の患者の外形輪郭であってよい。
【0040】
メッシュMおよびPDMを入力データとして用いると、以下のような反復手順を用いてPDMがMに適合される。
【0041】
ステップS32において、PDM上で頂点が識別される。ステップS33において、ステップS32においてPDM上で識別された各頂点に関して、Mとの交点を見つけるためにPDMの法線方向に有限区間に沿って探索が行われる。
【0042】
ステップS34において、ステップS33において識別された各交点に関して、交点におけるPDMの法線とMの法線との間の角度に基づいて重みが計算される。
【0043】
ステップS35は反復的に行われ、PDMをMに適合させるためにPDMの移動、回転、および形状パラメータを調整することを含む。このステップにおいて、PDMにおいて定義された形状モデルからの逸脱を可能にするPDMの変形もまた可能にされ得る。この例において、変形のための正則化基準が用いられる。
【0044】
ステップS35においてなされた調整は、一般に中断基準が満たされるまで、実行可能であると認められる限り何度も繰り返されるべきである。中断基準は、調整が特定の回数行われるべきであること、または特定の品質基準が満たされることであってよい。ステップS36において、ステップS35の更なる反復を行うべきかが決定される。更なる反復を行うべきでないことが決定されると、調整された輪郭O31は、計画作成に用いるためにステップS37において出力される。
【0045】
輪郭全体または輪郭の一部の内部の推定画像は、
図4、
図5a、および
図5bに関して説明するように、変形可能レジストレーションまたは機械学習によって、様々な方法で取得され得る。これらの手順は、CTスキャンを提供するよりも少ない時間、不快感、および線量で、
図1および
図2における手順の結果生じる画像よりも患者の実際の画像に近い画像をもたらす。
【0046】
図4を参照すると、合成CT画像は、現在の患者の外形輪郭I41および過去に取得したCTスキャンI42を入力データとして用いて、以下の方法で生成され得る。外形輪郭は、表面スキャナを用いて、必要であれば、たとえば
図3に関して説明したようにデータを後処理して取得され得る。CTスキャンI42は全身スキャンであり、または患者の検査すべき部分を少なくともカバーしており、任意の適当な方法で取得され得る。これは好適にはこの患者の以前のCTスキャンであるが、代替として他の代表画像、たとえば他の患者の全身スキャン、または何人かの患者の平均画像であってもよい。そのような平均画像は、画像を変形させ、結果を融合することによって、様々な患者の複数の画像から取得され得る。そのための方法は、当技術分野において周知である。様々な種類の患者に関する適当なCT画像のライブラリが提供され、形状、サイズ、性別、年齢、または他のパラメータによって分類されてよく、処置における使用に最も適したCT画像が手動または自動で選択され得る。
【0047】
ステップS41において、CTスキャンI42を外形輪郭I41に変形するために、変形可能レジストレーションアルゴリズムが適用される。骨構造は、制御関心領域ROIとして用いられ得る。変形の結果が、現在の患者の内部の近似である合成CT画像O41である。この合成画像は、治療計画作成のため、たとえば放射線治療計画を提供するために用いられ得る。計画作成に適切である場合、カウチの密度も画像に追加される。CT画像の代わりにMR画像が用いられてよい。この例において、MR画像は外形輪郭に変形され、その後CTフォーマットに変換されてよく、または最初にCTフォーマットに変換され、その結果生じるCT画像が外形輪郭に変形されてよい。密度情報が必要ではない用途の場合、MR画像は、CTフォーマットに変換せずに用いられ得る。
【0048】
輪郭の内部全体がこのように近似されてよく、または、患者の一部または1または複数の特定の臓器または関心領域のみが含まれ、その他は、たとえば水の密度などの適当な均一近似密度値で埋められてよい。
【0049】
全体CT画像ではなく、たとえば臓器などのセグメント化領域を有する患者の近似画像を取得するために、
図4の手順と同様の手順が用いられ得る。この例において、セグメント化画像は、過去に取得した画像I42として用いられる。全体CT画像と基本的に同じ方法でレジストレーションが行われる。
【0050】
図4に関して説明した実施形態への代替実施形態において、外形輪郭の内部の合成CT画像、合成MR画像、または合成セグメント化画像を予測するために機械学習が用いられる。この例において、内部にセグメント化領域を有する画像または全体合成CT画像のいずれかを計算するために深層学習方法が用いられる。
図5aに示すようにネットワークが訓練される。入力データとして、同じ患者の内部に関する情報と共に複数の患者の輪郭データを提供する複数のデータセットI51が提供される。
図4と同様に、情報は、サイズ、形状、年齢、および/または性別に従ってグループ分けされ得る。輪郭データは、表面スキャンから、または内部の情報を提供するたとえばCT画像などの画像から取得され得る。ステップS51において、深層学習方法は、輪郭の形状と輪郭内部のそれぞれの臓器の位置との相関性を求めるため、および所与の患者輪郭の内部における臓器の位置を予測するようにネットワークを訓練するために用いられ得る。出力は、患者の外形輪郭に依存してどのように患者の内部を推定するかに関する関数である。
【0051】
図5bは、患者から取得した特定の輪郭の内部に関するデータを提供するためにどのように機械学習モデルを用いるかのフローチャートである。たとえば
図3に関して説明したように、入力データI52として輪郭が提供される。その後、セグメント化を計算するために輪郭に深層学習モデルが適用され、またはその後、患者の内部の近似である全体CT画像が計算される。
【0052】
各患者の内部に関する情報は、全体CT画像、または1または複数の臓器または他の関心領域の位置および形状のみを示すセグメント化画像であってよい。したがって、その結果は、1または複数の臓器の近似セグメント化を内部に有する輪郭、または全体合成CTスキャンであってよい。
図4に関して説明したように、これは、輪郭全体に行われてよく、または患者の領域または一部のみがセグメント化され、またはCT画像データを提供され得る。
【0053】
図6は、放射線治療および/または治療計画作成のためのシステム10の概観である。理解されるように、そのようなシステムは任意の適当な方法で設計されてよく、
図6に示す設計は単なる一例である。患者1は治療用カウチ3の上に載置される。システムは、カウチ3上に載置された患者に向けて放射線を照射するためのガントリ7に取り付けられた放射線源5を有する撮像/治療ユニットを備える。一般に、カウチ3およびガントリ7は、可能な限り柔軟かつ正確に患者に放射線を提供するために、互いに対しいくつかの次元に可動である。これらの部品およびその機能は、当業者には周知である。ビームを横方向および深さ方向に成形するために提供される複数の受動デバイスが一般に存在するが、ここでは詳しく説明しない。この例において、システムは、患者の外形輪郭に関するデータを提供し、患者の身体の全部または一部の輪郭画像の生成を可能にするための光学スキャナも備える。またシステムは、放射線治療計画作成のためおよび/または放射線治療を制御するために用いられ得るコンピュータ21も備える。理解されるように、コンピュータ21は、撮像/治療ユニットに接続されていない独立ユニットであってよい。
【0054】
コンピュータ21は、プロセッサ23、データメモリ24、およびプログラムメモリ25を備える。好適には、キーボード、マウス、ジョイスティック、音声認識手段、または他の任意の利用可能なユーザ入力手段の形式で1または複数のユーザ入力手段28、29も存在する。ユーザ入力手段は、外部メモリユニットからのデータを受信するように構成されてもよい。
【0055】
データメモリ24は、輪郭スキャナによって提供された輪郭データを含む、治療計画を得るために用いられる臨床データおよび/または他の情報を備える。データメモリ24は、本発明の実施形態に係る治療計画作成に用いられる1または複数の患者画像も備える。これらの患者画像の特質、およびそれらがどのように取得され得るかは上述された。プログラムメモリ25は、プロセッサに、
図1~
図4、
図5a、および/または
図5bのいずれかに係る方法を行わせるために構成された少なくとも1つのコンピュータプログラムを保持する。またプログラムメモリ25は、
図4または
図5に関して説明した方法ステップをコンピュータに行わせるように構成されたコンピュータプログラム、および/または、コンピュータに患者の放射線治療を制御させるように構成されたコンピュータプログラムも保持する。
【0056】
理解されるように、データメモリ24およびプログラムメモリ25は、概略的にしか図示および説明されていない。各々が1または複数の異なる種類のデータを保持するいくつかのデータメモリユニット、または適当に構成された方法で全てのデータを保持する1つのデータメモリが存在してよく、プログラムメモリについても同様である。1または複数のメモリが他のコンピュータに格納されてもよい。たとえば、コンピュータは、方法の1つのみを行うように構成され、最適化を行うための他のコンピュータが存在してよい。