(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】錠剤収納容器
(51)【国際特許分類】
B65D 85/30 20060101AFI20240620BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B65D85/30
B65D77/00 B
(21)【出願番号】P 2022015873
(22)【出願日】2022-02-03
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】722010585
【氏名又は名称】セトラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】村尾 敦生
(72)【発明者】
【氏名】上村 庄平
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-218756(JP,A)
【文献】特開昭64-058661(JP,A)
【文献】特開2016-137946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0305114(US,A1)
【文献】国際公開第2011/030659(WO,A1)
【文献】特開2017-119546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/30
B65D 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤収納用の口部を上端部に有する容器本体と、前記容器本体の本体底部に着脱自在に取り付けられた有底筒状の緩衝用ベースカップと、を備えた寸胴状の錠剤収納容器であって、
前記容器本体は、
前記口部の下方側の外形形状が有底筒状の外形形状を有し、且つ前記本体底部の側の外側部に沿って形成された係合部を備え、
前記緩衝用ベースカップは、前記容器本体に取り付けられる側の開口部と、前記緩衝用ベースカップが前記容器本体に取り付けられたときに前記錠剤収納容器の容器底部を形成する底面部と、前記開口部の側の内周面に沿って形成され、前記係合部に係合可能な係合縁と、を備え、
前記係合部は、前記容器本体の側部に沿って径方向の環状に形成され、
前記係合縁は、前記開口部の側の内周面に沿って所定の間隔で複数形成され 、
前記緩衝用ベースカップの前記係合縁を前記本体底部の前記係合部に係合させることによって、前記緩衝用ベースカップは、前記容器本体に取り付けられ、
前記緩衝用ベースカップは、
前記容器本体と異なる材料で構成され、且つ前記容器本体よりも高い弾性を有し、
前記緩衝用ベースカップが前記容器本体に取り付けられたときの前記錠剤収納容器の前記容器底部と前記容器本体の前記本体底部との間の前記錠剤収納容器の長さ方向に沿った空隙距離が、前記緩衝用ベースカップが取り付けられた前記錠剤収納容器の全長の10%以上とされていることを特徴とする
酸化マグネシウム用の錠剤収納容器。
【請求項2】
前記容器本体は、前記本体底部が前記容器本体の下方側へ向けて突出した突出部を有し、
前記底面部は、外周縁から前記容器本体の内部に突出した平らな二段底を有し、
前記空隙距離は、前記緩衝用ベースカップが取り付けられた前記錠剤収納容器の全長の20%以下とされている、請求項1に記載の
酸化マグネシウム用の錠剤収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤を収納する錠剤収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、容器本体の上端部の錠剤収納用の口部と底部とを除く、高さ方向の一部又は全部の周側壁部に、水平方向の蛇腹状部を形成した錠剤収納容器が開示されている。蛇腹状部の各襞のたわみ作用によって、容器本体に対する縦方向及び横方向からの衝撃が吸収され、容器本体内に収納した錠剤の欠け、割れの破損を防止できるように構成されている。また、蛇腹状部は、その高さ方向の一方又は両方から中心方向に押圧した際に蛇腹状部分が重なり合って潰された状態を保てるように構成されている。このため、容器本体の形状を縮小し、コンパクト化した形態を保つことができ、効率的に保管搬送することができる。さらに、容器本体の底部には、緩衝用ベースカップが着脱自在に取り付けられ、この緩衝作用と容器本体の蛇腹状部の各襞のたわみ作用との相乗作用によって、容器本体内に収納される錠剤の欠け、割れの破損を防止することができる。しかしながら、輸送等の移動時や底面落下時などより厳しい条件下においても、錠剤の欠け、割れの破損の低減が求められる現在においては、特許文献1の構成だけでは十分ではなく、更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情を鑑み、移動時及び使用時において容器に作用する衝撃による錠剤の割れ欠けを抑制又は防止する錠剤収納容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、錠剤収納用の口部を上端部に有する容器本体と、容器本体の本体底部に着脱自在に取り付けられた有底筒状の緩衝用ベースカップと、を備えた寸胴状の錠剤収納容器が提供される。さらに、緩衝用ベースカップが容器本体に取り付けられたときの錠剤収納容器の容器底部と容器本体の本体底部との間の容器の長さ方向に沿った空隙距離が、緩衝用ベースカップが取り付けられた錠剤収納容器の全長の10%以上とされていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明によれば、容器本体は、本体底部の側の外側部に沿って形成された係合部を備えてもよく、緩衝用ベースカップは、容器本体に取り付けられる側の開口部と、緩衝用ベースカップが容器本体に取り付けられたときに錠剤収納容器の容器底部を形成する底面部と、開口部の側の内周面に沿って形成され、係合部に係合可能な係合縁と、を備えてもよく、緩衝用ベースカップの係合縁を本体底部の係合部に係合させることによって、緩衝用ベースカップは、容器本体に取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、移動時及び使用時において容器に作用する衝撃による錠剤の割れ欠けを抑制又は防止する錠剤収納容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る錠剤収納容器の正面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る容器本体の正面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る緩衝用ベースカップの正面図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る緩衝用ベースカップの斜視図を示す。
【
図5】
図5は、比較例に係る蛇腹状部を有する錠剤収納容器の正面図を示す。
【
図6】
図6は、比較例に係る蛇腹状部を有する錠剤収納容器における錠剤の割れ欠けのメカニズムを示す説明図であり、(A)は蛇腹状部が伸長している状態、(B)は蛇腹状部が収縮している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る錠剤収納容器10を説明する。但し、本発明は以下の実施形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。なお、同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺を変更して説明する場合がある。
【0010】
本実施形態に係る錠剤収納容器10は、
図1に示すように、容器本体12とキャップ16と、を備える。なお、
図1中の両矢印は、錠剤収納容器10を水平面上に配置したときの容器上下方向を示す。容器上下方向とは、容器の長さ方向であり、Z軸方向を例示している。容器本体12は、容器本体12の内部へ内容物を収納するために形成された口部14を、上端部に有している。内容物としては、例えば、
図6に示す薬品や健康補助食品等の錠剤TBが挙げられる。容器本体12には、口部14の外周に螺着部14aが形成されている。キャップ16は、口部14に封をするために、螺着部14aに着脱自在に螺着される。また、錠剤収納容器10の容器下方側には、外周形状が有底円筒状に形成され、容器本体12の底部とされた本体底部18に着脱自在に取り付けられた緩衝用ベースカップ20を備える。言い換えれば、錠剤収納容器10は、内容物収納容器とも言える。
【0011】
本実施形態に係る錠剤収納容器10の内容物は特に限定されないが、引っ張り強度が1MPa以下の錠剤を収納する際に特に有用である。例えば、酸化マグネシウム錠剤は、服用性を向上させるために、錠剤硬度が低く、脆く成型される場合もあり、本願の構成が特に大きな効果を有する。
【0012】
容器本体12は、
図2に示すように、口部14の容器下方側の外周形状が寸胴状(ここでは、有底円筒状)とされ、その内部には錠剤TB(
図6参照)を収納可能な空間が形成されている。有底円筒状に形成された容器本体12の側部22(外側部)は、その外周面に錠剤内容等の表示及びラベル(何れも図示省略)が貼り付け可能に構成されている。また、本体底部18の外径は容器本体12の側部22の外径よりも小さく形成されており、本体底部18は、側部22よりも容器本体12の径方向内側に位置している。さらに、容器本体12は、本体底部18側の側部22に沿って環状の溝部24が形成された係合部26を備える。係合部26の溝部24は、容器本体12の外側へ向けた凹状に形成されている。また、本体底部18は、側面視で中心部へ向かうにつれて弧を描くように湾曲して形成されている。言い換えれば、本体底部18は、容器本体12の内側に窪んで形成されている。さらに、本体底部18は、底面視でその中心を通る線状に形成され、本体底部18の外側、すなわち、容器下方側へ向けて突出した突出部を有している。
【0013】
図3及び
図4は、緩衝用ベースカップ20の正面図及び容器本体12側(容器上方側)から見た斜視図を示す。
図3は、緩衝用ベースカップ20の一部(図の右半分)を縦断した正面図を示す。緩衝用ベースカップ20は、容器本体12に取り付けられたときに錠剤収納容器10の容器底部10aを形成する底面部28を備える。また、緩衝用ベースカップ20は、その上端部に、有底円筒状の外側部に沿って形成された開口部21を備える。緩衝用ベースカップ20の開口部21は、容器本体12の本体底部18を収容できる大きさに形成されている。さらに、底面部28は、外周縁から内部に突出した平らな二段底を有している。突出部を有する本体底部18と底面部28とは、その形状が異なっており、このような形状の差異によって、緩衝用ベースカップ20に衝撃荷重が作用したときにベースカップ内部の空気の対流が均一とならないため衝撃荷重を分散させ得る。さらに、緩衝用ベースカップ20に衝撃荷重が作用したときに、空隙32内を伝播する衝撃波を減衰させ、クッションのような効果を生じさせ得る。このため、本体底部18に作用する衝撃荷重を緩和させることができる。
【0014】
緩衝用ベースカップ20は、開口部21の側の内周面に沿って所定の間隔で形成された複数の係合縁30を備える。具体的には、4個の係合縁30が等間隔に設けられている。ここでは、係合縁30は、開口部21の内周の約30%の部分に形成されている。係合縁30は、緩衝用ベースカップ20において、開口部21の中心側(径方向内側)へ向けて突出した三角柱状に形成されている。このため、係合縁30は、その容器上下方向の厚さが、径方向外側において係合部26の溝部24を塞ぐ程度に溝部24の(容器上下方向の)幅とほぼ同一寸法に形成されているが、径方向内側へ向かうにつれて先細になるように形成されている。また、係合縁30の径方向内側に突出する寸法は、係合部26の溝部24の(径方向に沿った)深さよりも短く設定されており、係合縁30の先端部(径方向内側部分)と本体底部18(溝部24の径方向内側部分)との間には、隙間が形成されている。ここでは、係合縁30の径方向に沿った長さは、溝部24の深さよりも約0.7mm短く設定されている。このため、例えば、底面落下によって容器底部10a(緩衝用ベースカップ20)に衝撃荷重が作用した場合に、係合縁30は、容器本体12の係合部26で塞き止められるため、緩衝用ベースカップ20は、容器本体12から外れにくくなる。一方、本体底部18は、側部22よりも容器本体12の径方向内側に位置しているため、例えば、人手によって緩衝用ベースカップ20を容器下方側(容器底部10a側)へ引っ張る又は回す(捩じる)ことによって緩衝用ベースカップ20を容器本体12から簡便に外すことができる。
【0015】
なお、ここでは、4個の係合縁30が形成されているとして説明するが、これに限らず、係合縁は、3個以下、又は、5個以上形成されてもよい。また、係合縁30は、開口部21の内周の約30%の部分に形成されているとして説明したが、これに限らず、開口部の内周の30%未満、又は、30%以上の部分に形成されてもよい。さらに、ここでは係合縁30は、三角柱状に形成されているとして説明するが、これに限らず、係合縁は半円柱状、直方体状等他の形状に形成されてもよい。
【0016】
緩衝用ベースカップ20は、容器本体12よりも高い弾性を有するように構成されている。このため、容器本体12が、例えば、ガラス、セラミック、金属等の材料で構成されているのに対して、緩衝用ベースカップ20は、樹脂等の容器本体12とは異なる材料で構成されている。このため、底面落下によって容器底部10aに衝撃荷重が作用した場合に、緩衝用ベースカップ20を変形させて荷重を吸収(減衰)させることができ、容器本体12の変形又は損傷を防止又は抑制することができる。また、錠剤収納容器10を使用するユーザーが、例えば、緩衝用ベースカップ20を押圧する(把持する)ことによって、緩衝用ベースカップ20を容易に弾性変形させることができる。このため、緩衝用ベースカップ20の中心側(径方向内側)へ向けて突出して形成された係合縁30を係合部26の溝部24に係合させることができる。さらに、緩衝用ベースカップ20を押圧することによって係合部26の溝部24に係合させた係合縁30を取り外すことができる。このように、緩衝用ベースカップ20を本体底部18に着脱自在に取り付けることができる。緩衝用ベースカップ20は、本体底部18に取り付けた緩衝用ベースカップ20の側面が、容器本体12の側部22と面一となる外周形状とされている。なお、ここでは、緩衝用ベースカップ20は、樹脂製として説明するが、これに限らず、容器本体よりも高い弾性を有するように他の材料で構成されてもよい。
【0017】
緩衝用ベースカップ20は、
図1に示すように、容器本体12の本体底部18を、内部に収容できる。緩衝用ベースカップ20が容器本体12に取り付けられたときの錠剤収納容器10の容器底部10aと容器本体12の本体底部18との間には、空隙32が形成される。言い換えれば、錠剤収納容器10は、容器本体12の本体底部18と緩衝用ベースカップ20とで空隙32が形成される。ここで空隙32の容器上下方向の距離、即ち本体底部18と緩衝用ベースカップ20の底面部28との距離を空隙距離VDとする。緩衝用ベースカップ20は、空隙距離VDが、緩衝用ベースカップ20が取り付けられた錠剤収納容器10の全長TLの10%以上となるように、その寸法(高さ)が設定されている。錠剤収納容器10の全長TLが増加(増長)すると、錠剤収納容器10の携帯性、可搬性及び収納性が悪化、資材コスト(製造コスト)も増加する。このため、空隙距離VDは、錠剤収納容器10の全長TLの20%以下とすることが好ましい。
【0018】
以上説明したように、本実施形態に係る錠剤収納容器10は、容器本体12の本体底部18に着脱自在に取り付けられた緩衝用ベースカップ20を備えるため、例えば、錠剤収納容器10を保管、管理するための倉庫等への搬入及び商品販売するための店舗等への搬出といった移動の際や錠剤収納容器10を使用する際に、底面落下によって生じる衝撃荷重を緩衝用ベースカップ20によって吸収することができる。これによって、容器本体12に作用する衝撃荷重を緩和すると共に容器本体12の内部に収納された錠剤の割れ欠けを抑制又は防止することができる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
以下の実施例では、本実施形態に係る錠剤収納容器10の作用及び効果を、落下試験結果に基づいて説明する。
【0021】
(落下実験に使用した容器)
本実施形態に係る錠剤収納容器10の衝撃吸収の効果を確認するため、実施例1から実施例3として、3種類の錠剤収納容器10を、所定の高さからそれぞれを底面落下させる落下試験を実施した。また、比較のために、容器本体12及び緩衝用ベースカップ20からなる容器であって、比較例1から比較例3として、空隙距離VDが容器の全長TLの10%未満となるように寸法が設定された3種類の比較容器Aについても同様の落下試験を行った。さらに、比較例4及び比較例5として、容器本体上下方向に沿って伸長及び圧縮可能な蛇腹部分を有する蛇腹式容器50に緩衝用ベースカップ20を取り付けた比較容器B、及び、比較例6から比較例8として、緩衝用ベースカップ20を取り付けない蛇腹式容器50又は容器本体12だけで構成された比較容器Cについても、同様に落下試験を行った。
【0022】
落下試験に使用した実施例1から実施例3の3種類の錠剤収納容器10は、以下の様に構成されている。
【0023】
(実施例1)
実施例1として、高さ135mmの容器本体12に高さ26.5mmの緩衝用ベースカップ20を取り付けた錠剤収納容器10を構成した。錠剤収納容器10の高さ(全長TL)は、151.5mmとされている。ここでは、口部14の上端から緩衝用ベースカップ20の底面部28(錠剤収納容器10の容器底部10a)までの高さ(長さ)を全長TLとした。実施例1の錠剤収納容器10では、緩衝用ベースカップ20の底面部28と容器本体12の本体底部18との容器上下方向に沿った距離(間隔)である空隙距離VDは、16.5mmとされており、空隙距離VDの錠剤収納容器10の全長TLに対する百分率である空隙比率(%)は、10.9%(=100×16.5/151.5)とされている。
【0024】
(実施例2)
実施例2として、高さ140mmの容器本体12に高さ26.5mmの実施例1と同じ緩衝用ベースカップ20を取り付けた錠剤収納容器10を構成した。錠剤収納容器10の全長TLは、156.5mmとされている。実施例2の錠剤収納容器10では、空隙距離VDは、16.5mmとされ、空隙比率(%)は、10.5%(=100×16.5/156.5)とされている。
【0025】
(実施例3)
実施例3として、高さ132mmの容器本体12に高さ26.5mmの実施例1と同じ緩衝用ベースカップ20を取り付けた錠剤収納容器10を構成した。錠剤収納容器10の全長TLは、148.5mmとされている。実施例3の錠剤収納容器10では、空隙距離VDは、16.5mmとされ、空隙比率(%)は、11.1%(=100×16.5/148.5)とされている。
【0026】
また、比較例1から比較例3において、空隙距離VDが容器の全長TLの10%未満となるように比較容器Aは構成されており、容器本体12及び緩衝用ベースカップ20の寸法は、以下の通りである。
【0027】
(比較例1)
比較例1として、実施例1の容器本体12に高さ23.5mmの緩衝用ベースカップ20を取り付け、全長TLが148.5mmの容器を構成した。比較例1の容器の空隙距離VDは、13.5mmとされ、空隙比率(%)は、9.1%(=100×13.5/148.5)とされている。
【0028】
(比較例2)
比較例2として、実施例2の容器本体12に高さ23.5mmの比較例1と同じ緩衝用ベースカップ20を取り付け、全長TLが153.5mmの容器を構成した。比較例2の容器の空隙距離VDは、13.5mmとされ、空隙比率(%)は、8.8%(=100×13.5/153.5)とされている。
【0029】
(比較例3)
比較例3として、実施例3の容器本体12に高さ23.5mmの比較例1と同じ緩衝用ベースカップ20を取り付け、全長TLが145.5mmの容器を構成した。比較例3の容器の空隙距離VDは、13.5mmとされ、空隙比率(%)は、9.3%(=100×13.5/145.5)とされている。
【0030】
さらに、比較例4及び比較例5において、蛇腹式容器50に緩衝用ベースカップ20を取り付けた比較容器Bは、以下の様に構成されている。
【0031】
(比較例4)
図5に、蛇腹式容器50の正面図を示す。蛇腹式容器50の容器本体12は、キャップ16の容器下方側に、その外周面に錠剤内容等の表示及びラベル(何れも図示省略)を貼り付け可能な周側壁部52と、周側壁部52と底部54との間に形成された水平方向の蛇腹状部56と、を備える。蛇腹式容器50は、キャップ16側及び底部54側の両側から容器上下方向に沿って押圧する(押し潰す)ことによって、蛇腹状部56の襞56aが重なり合い、押し潰された状態に変形させることができる。比較例4として、高さ137.5mmの蛇腹式容器50に高さ26.5mmの緩衝用ベースカップ20を取り付け、全長TLが154.0mmの容器を構成した。比較例4の容器の空隙距離VDは、16.5mmとされ、空隙比率(%)は、10.7%(=100×16.5/154.0)とされている。
【0032】
(比較例5)
比較例5として、高さ135.0mmの蛇腹式容器50に高さ23.5mmの緩衝用ベースカップ20を取り付け、全長TLが151.0mmの容器を構成した。比較例5の容器の空隙距離VDは、13.5mmとされ、空隙比率(%)は、8.9%(=100×13.5/151.0)とされている。
【0033】
(比較例6、比較例7、比較例8)
また、比較例6から比較例8として、緩衝用ベースカップ20を取り付けない蛇腹式容器50又は容器本体12単体の比較容器Cを構成した。高さ137.5mmの蛇腹式容器50、高さ135.0mmの容器本体12及び高さ140.0mmの容器本体12を、それぞれ比較例6、比較例7及び比較例8の容器として使用した。
【0034】
(試験方法)
(1)実施例1から実施例3及び比較例1から比較例8の各容器に1000錠の錠剤を収納し、同じ所定の高さから鉛直方向に沿って容器10、12、50を底面落下させる落下試験を実施した。本試験にはマグミット錠(酸化マグネシウム錠剤、協和化学工業社製)を使用した。試験結果のばらつきを抑制するために、同じ容器をそれぞれ10個ずつ用意し、その全てについて落下試験を行った。底面落下させる回数は、各容器について1回又は3回とした。これによって、容器及び落下回数(1回又は3回)毎に10回分(容器10個分)の試験結果が得られた。なお、本試験には、マグミット錠を使用したが、これに限らず他の種類の錠剤が落下試験に使用されてもよく、落下試験の定性的な結果には影響はない。
(2)落下後、各容器から全錠剤・粉末を取り出して割れ錠及び欠け錠を計数し、割れ欠けの評価を行った。具体的には、10回分の試験結果を平均して、錠剤の平均割れ欠け数及び平均割れ欠け率を算出した。
【0035】
実施例1から実施例3及び比較例1から比較例8の各容器の落下試験結果を以下の表1から表4に示す。表1には、実施例1から実施例3の錠剤収納容器10についての試験結果を示す。実施例1から実施例3の試験結果は、表4に示されている緩衝用ベースカップ20を取り付けていない比較例7及び比較例8の試験結果と比較して、割れ欠け数及び割れ欠け率が大きく減少していることが分かる。3回落下させた試験では、比較例7及び比較例8の容器本体12単体では、錠剤TB全体の20%から25%が割れ欠けを生じているのに比べて、実施例1から実施例3の錠剤収納容器10では、割れ欠けを生じた錠剤TBは、全体の1%以下となっている。
【0036】
表2には、比較例1から比較例3の空隙比率(%)が10%未満に設定された容器についての試験結果を示す。表1に示された実施例1から実施例3の試験結果から、空隙比率が10%を上回れば空隙比率に多少の違いがあっても割れ欠けの発生にあまり有意な差は見受けられないことが分かる。一方で、表2に示された比較例1から比較例3の試験結果からは、空隙比率が10%を下回ると割れ欠けを生じさせる錠剤TBの数が大きく増加していることが分かる。
【0037】
【0038】
【0039】
表3及び表4には、比較例4から比較例6の蛇腹式容器50についての試験結果を示す。表3に示された比較例4及び比較例5の結果と表4に示された比較例6の結果とを比較すると、緩衝用ベースカップ20を取り付けることによって、割れ欠けの発生を大きく抑制できることが分かる。しかしながら、比較例4の結果と比較例5の結果との比較からわかるように、空隙比率が10%以上の場合(比較例4)と10%未満の場合(比較例5)との間に有意な差は見受けられず、いずれの場合も一定程度の割れ欠けを生じさせていることが分かる。
【0040】
【0041】
【0042】
次に、空隙比率の異なる比較例4の結果と比較例5の結果との間に有意な差が生じないこと及び比較例4のように空隙比率が10%以上であっても、実施例1から実施例3に係る錠剤収納容器10と比較して割れ欠けを生じさせやすい原因を検討した。実施例4として、容器本体12内部の錠剤TBの個数を1000錠から951錠に減らした錠剤収納容器10を構成した。即ち、錠剤収納後の錠剤収納容器10の重量と比較例4の蛇腹式容器50の錠剤収納後重量とが同じになるように設定し、落下試験を実施した。この結果、実施例4の試験結果は、実施例1から実施例3についての試験結果と有意な差は無かった。このため、錠剤収納容器10内の錠剤TBを減少させ錠剤収納後重量を軽量にすることが、底面落下時に容器本体12内部の錠剤TBに及ぼす影響は小さいことが分かった。また、錠剤TBを収納した錠剤収納容器10の重量を実施例4に係る容器と同一にしたとしても、寸胴状の錠剤収納容器10と蛇腹式容器50との間には、錠剤TBの割れ欠けには有意な差があることがわかった。
【0043】
上記の有意な差を明確にするために、比較例4の蛇腹式容器50及び実施例4の錠剤収納容器10が床面に落下して衝撃を受ける際の映像を比較した。この結果、
図6(A)に示されるように、錠剤TBを収納するために伸長されている蛇腹式容器50の蛇腹状部56は、
図6(B)に示されるように、着床時に衝撃を受けて圧縮されていることがわかった。圧縮された蛇腹状部56周辺の錠剤TBは、蛇腹状部56の襞56aに衝突する(圧迫される)と共に襞56aに押されることによって互いに接近した錠剤TB同士がぶつかり合う。さらに、蛇腹状部56の節部56b(図中の一点鎖線)に錠剤TBが衝突することによって錠剤TBに荷重が作用する。これらのことによって、弾性変形可能な緩衝用ベースカップ20が底面落下時の衝撃を吸収したとしても、蛇腹式容器50内部における錠剤TBの割れ欠けが生じ得る。これに対して、寸胴状の錠剤収納容器10は、容器本体12が伸縮しないため容器の変形がなく、緩衝用ベースカップ20が吸収する衝撃荷重以外の荷重が生じにくいため、錠剤TBの割れ欠けを抑制又は防止することができる。
【0044】
上記のように、本実施形態に係る錠剤収納容器10によれば、寸胴状の容器本体12の本体底部18に緩衝用ベースカップ20を取り付けることによって、底面落下によって生じる衝撃荷重を緩衝用ベースカップ20によって吸収することができる。これによって、容器本体12に作用する衝撃荷重を緩和すると共に容器本体12の内部に収納された錠剤TBの割れ欠けを抑制又は防止することができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る錠剤収納容器10は、緩衝用ベースカップが容器本体に取り付けられたときの錠剤収納容器10の容器底部10aと容器本体12の本体底部18との間の容器上下方向の空隙距離VDが、緩衝用ベースカップ20が取り付けられた錠剤収納容器10の全長TLの10%以上とされている。また、本体底部18は、内側に窪んで形成されているため、底面を平坦に形成した場合と比較してその窪んだ部分に空気を留める(抱え込む)ことができる。このため、緩衝用ベースカップ20に衝撃荷重が作用したときに内部の空気にクッション効果を生じさせることができる。さらに、係合縁30は、開口部21の内周の約30%の部分にだけ形成されているため、開口部21の係合縁30が形成されていない部分から緩衝用ベースカップ20内部の空気を逃がすことができる。このため、緩衝用ベースカップ20内部の空気の圧力が高くなることを抑制することができる。これらの作用効果によって、容器本体12に作用する衝撃荷重を低減し、錠剤TBの割れ欠けを大きく抑制又は防止することができる。
【0046】
緩衝用ベースカップ20は、開口部21の径方向内側へ向けて突出した三角柱状に形成された係合縁30を備える。係合縁30の径方向内側に突出する寸法は、係合部26の溝部24の深さよりも短く設定されており、係合縁30の先端部と本体底部18との間には隙間が形成されている。このため、底面落下によって容器底部10aに衝撃荷重が作用した場合に、係合縁30は、容器本体12の係合部26で塞き止められるため、緩衝用ベースカップ20は、容器本体12から外れにくくなっている。また、本体底部18は、側部22よりも容器本体12の径方向内側に位置しているため、例えば、人手によって緩衝用ベースカップ20を容器下方側へ引っ張る又は回す(捩じる)ことによって緩衝用ベースカップ20を容器本体12から簡便に外すことができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、錠剤収納容器10の容器本体12は、本体底部18側の側部22に沿って形成された係合部26を備え、緩衝用ベースカップ20は、開口部21側の内周面に沿って形成された係合縁30を備える。このため、緩衝用ベースカップ20の係合縁30を容器本体12の係合部26に係合させることによって、容器本体12に緩衝用ベースカップ20を簡便に取り付けることができる。このように錠剤収納容器10を構成することによって、錠剤収納容器10を簡便に製造できるため、製造工数を低減し、かつ、製造コスト増加を抑制することができる。
【0048】
さらに、本実施形態によれば、先に述べたように人手によって緩衝用ベースカップ20を容器下方側へ引っ張ることによって緩衝用ベースカップ20を容器本体12から簡便に外すことができるため、錠剤収納容器10の収納スペースをコンパクトにすることができる。また、緩衝用ベースカップ20の内部の空洞に添付文書、緩衝材等を収納することができ、かつ、これらを収納した緩衝用ベースカップ20を容器本体12に簡便に取り付けることができる。
【0049】
以上のことから、本実施形態に係る錠剤収納容器10は、移動時及び使用時において錠剤収納容器10に作用する衝撃による割れ欠けを抑制又は防止することができる。
【0050】
以上、錠剤収納容器10について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者が想到する範囲において、上記の実施形態の様々な変形が本発明の実施形態に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10 錠剤収納容器
10a 容器底部
12 容器本体
14 口部
18 本体底部
20 緩衝用ベースカップ
21 開口部
22 側部(外側部)
24 溝部
26 係合部
28 底面部
30 係合縁
32 空隙
VD 空隙距離
TL 全長