(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ガードレール用支柱の補修方法及び補修部材
(51)【国際特許分類】
E01F 15/04 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
E01F15/04 A
(21)【出願番号】P 2022027934
(22)【出願日】2022-02-25
【審査請求日】2024-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596053585
【氏名又は名称】西日本高速道路エンジニアリング中国株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【氏名又は名称】信末 孝之
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】菊澤 朋已
(72)【発明者】
【氏名】大田 一成
(72)【発明者】
【氏名】南谷 直希
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100551(JP,A)
【文献】特開2019-218757(JP,A)
【文献】特開2013-124471(JP,A)
【文献】特開2013-124473(JP,A)
【文献】特開2006-28820(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2077319(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部が地中に埋設され上部に水平方向のボルトが貫通してなるガードレール用支柱の補修方法であって、
前記ガードレール用支柱の内部に、下端部から上部に向けて形成された縦スリット及び該縦スリットの中間部に連通するように形成されたボルト退避用の横スリットを有する補強管を、前記ボルトが前記縦スリットを通過して前記ボルト退避用の横スリットに到達するまで挿入する第1挿入工程と、
前記ボルトが前記ボルト退避用の横スリットに入るように、前記補強管を水平方向に回転する第1回転工程と、
前記縦スリットの隙間を埋める補強部材を装着する補強部材装着工程と、
前記ボルトが前記ボルト退避用の横スリットから出るように、前記補強管を水平方向に回転する第2回転工程と、
前記ガードレール用支柱の内部に、前記補強管を、前記ボルトが前記縦スリットを通過して前記縦スリットの上端部に到達するまで挿入する第2挿入工程と、
を含むことを特徴とするガードレール用支柱の補修方法。
【請求項2】
前記補強部材が、前記ガードレール用支柱の地際部に配置されることを特徴とする請求項1に記載のガードレール用支柱の補修方法。
【請求項3】
前記補強部材が、前記縦スリットより幅広の板状部と該板状部から突出する前記縦スリットに嵌合する嵌合部とから構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガードレール用支柱の補修方法。
【請求項4】
前記補強管が、前記縦スリットの上端部に連通するように形成された抜け防止用の横スリットを有し、前記ボルトが前記抜け防止用の横スリットに入るように前記補強管を水平方向に回転する第3回転工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1つに記載のガードレール用支柱の補修方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちいずれか1つに記載のガードレール用支柱の補修方法に使用する補強管及び補強部材からなるガードレール用支柱の補修部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガードレール用支柱の補修方法及び補修部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の路肩や歩道との境界、中央分離帯などには、車両の逸脱の防止等を目的としてガードレールが設置されている。
図15は、ガードレールの設置状態の例を示す図である。道路3の路肩2にはガードレール用支柱10の下部が埋設されており、ガードレール用支柱10の上部にガードレール1が取り付けられている。
【0003】
ガードレール用支柱10の設置年数が経過すると、経年劣化により特に地際部GL付近の腐食が進み、車両の衝突等に対して十分な強度が得られなくなる。そのため、最終的には既設のガードレール用支柱10を引き抜いて交換する必要があるが、交通規制を行ってガードレール1をいったん撤去し、さらに埋設のための専用機械が必要になるなど、作業負担が大きい。
【0004】
これに対して、既設のガードレール用支柱を利用して補修する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、古い支柱をコンクリート基礎面で切断除去し、コンクリート基礎面以下に埋め込まれている支柱の脚部の円筒状空間に、新たな円筒状支柱を挿入固定するようにしたガードレール用円筒状支柱の補修方法に関する発明が記載されている。
【0005】
また、特許文献2及び特許文献3には、内部に圧力を加えることにより膨張する膨張部を備えた補強材を支柱の円筒状内部空間に挿入し、膨張部の内部に圧力を加えて支柱の円筒内面に圧着するまで膨張させて支柱を補強するようにしたガードレール用支柱の補修方法に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-28820号公報
【文献】特開2013-124471号公報
【文献】特開2013-124473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された補修方法においては、支柱の地上部分を切断除去する必要があるため、地上部分が無駄になり作業負担も大きい。
【0008】
また、特許文献2及び特許文献3に記載された補修方法においては、補強材を支柱の円筒状内部に挿入する際に、支柱上部を貫通する水平方向のボルト(ガードレールの取付板を支柱に固定するためのボルト)が邪魔になるため、このボルトを一時的に取り外す必要があり作業負担が大きい。
【0009】
また、ボルトを取り外さずに補修する方法として、2本の補強鉄筋を連結してU字型にして、連結部分でボルトを跨ぐようにして支柱内部に挿入し、支柱内部にコンクリートを流し込んで固めるものがあるが、作業負担が大きい。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、既設の支柱を有効利用するとともに、作業負担の小さいガードレール用支柱の補修方法及び補修部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のガードレール用支柱の補修方法は、下部が地中に埋設され上部に水平方向のボルトが貫通してなるガードレール用支柱の補修方法であって、前記ガードレール用支柱の内部に、下端部から上部に向けて形成された縦スリット及び該縦スリットの中間部に連通するように形成されたボルト退避用の横スリットを有する補強管を、前記ボルトが前記縦スリットを通過して前記ボルト退避用の横スリットに到達するまで挿入する第1挿入工程と、前記ボルトが前記ボルト退避用の横スリットに入るように、前記補強管を水平方向に回転する第1回転工程と、前記縦スリットの隙間を埋める補強部材を装着する補強部材装着工程と、前記ボルトが前記ボルト退避用の横スリットから出るように、前記補強管を水平方向に回転する第2回転工程と、前記ガードレール用支柱の内部に、前記補強管を、前記ボルトが前記縦スリットを通過して前記縦スリットの上端部に到達するまで挿入する第2挿入工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
また好ましくは、前記補強部材が、前記ガードレール用支柱の地際部に配置されることを特徴とする。
【0013】
また好ましくは、前記補強部材が、前記縦スリットより幅広の板状部と該板状部から突出する前記縦スリットに嵌合する嵌合部とから構成されることを特徴とする。
【0014】
また好ましくは、前記補強管が、前記縦スリットの上端部に連通するように形成された抜け防止用の横スリットを有し、前記ボルトが前記抜け防止用の横スリットに入るように前記補強管を水平方向に回転する第3回転工程を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のガードレール用支柱の補修部材は、上記ガードレール用支柱の補修方法に使用する補強管及び補強部材からなるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガードレール用支柱の補修方法は、下部が地中に埋設され上部に水平方向のボルトが貫通してなるガードレール用支柱を補修する方法であって、第1挿入工程、第1回転工程、補強部材装着工程、第2回転工程及び第2挿入工程を含んでいる。そして、補強管及び補強部材を使用するようになっている。補強管は、下端部から上部に向けて形成された縦スリット及び縦スリットの中間部に連通するように形成されたボルト退避用の横スリットを有している。また、補強部材は補強管の縦スリットの隙間を埋めるものであり、縦スリットによる補強管の強度低下を防ぐことができる。
【0017】
第1挿入工程では、ガードレール用支柱の内部に、補強管をボルトが縦スリットを通過してボルト退避用の横スリットに到達するまで挿入する。このとき、補強管の挿入に際してボルトは縦スリット内を通過するので邪魔にならず、ボルトを取り外す必要はない。
【0018】
第1回転工程では、ボルトがボルト退避用の横スリットに入るように補強管を水平方向に回転するので、ボルトを縦スリット内から出すことができる。その結果、補強部材装着工程で縦スリットに補強部材を装着する際に、ボルトが縦スリット内に存在しないため邪魔にならない。
【0019】
第2回転工程では、ボルトがボルト退避用の横スリットから出るように補強管を水平方向に回転するので、ボルトを縦スリット内に入れることができる。その結果、第2挿入工程でガードレール用支柱の内部に再び補強管を挿入する際に、ボルトが縦スリットの上端部に到達するまで縦スリット内を通過するので邪魔にならない。
【0020】
また、補強部材がガードレール用支柱の地際部に配置される場合には、経年劣化による腐食の影響が大きい地際部の強度を特に高めることができる。
【0021】
また、補強部材が縦スリットより幅広の板状部と板状部から突出する縦スリットに嵌合する嵌合部とから構成される場合には、嵌合部により縦スリットの隙間を適切に埋めることができるとともに、板状部により補強管との位置決めを行うことができる。
【0022】
また、補強管が縦スリットの上端部に連通するように形成された抜け防止用の横スリットを有し、ボルトが抜け防止用の横スリットに入るように補強管を水平方向に回転する第3回転工程を含む場合には、車両衝突時等にガードレール支柱から補強管が抜けてしまうのを防止することができる。
【0023】
また、本発明のガードレール用支柱の補修部材は、補強管及び補強部材からなり、上記ガードレール用支柱の補修方法に使用することができる。
【0024】
このように、本発明によれば、既設の支柱を有効利用するとともに、既存のボルトを取り外す必要がなく作業負担の小さいガードレール用支柱の補修方法及び補修部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ガードレール用支柱を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)左側面図、(D)背面図である。
【
図2】補強管を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)左側面図、(D)背面図、(E)底面図、(F)a部拡大図である。
【
図3】補強部材を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)右側面図である。
【
図4】上蓋を示す(A)正面図、(B)底面図である。
【
図5】ガードレール用支柱の補修方法を示す工程図である。
【
図6】ガードレール用支柱の補修方法の詳細説明図である。
【
図7】ガードレール用支柱の補修方法の詳細説明図である。
【
図8】ガードレール用支柱の補修方法の詳細説明図である。
【
図9】ガードレール用支柱の補修方法の詳細説明図である。
【
図10】ガードレール用支柱の補修方法の詳細説明図である。
【
図11】ガードレール用支柱の補修方法の詳細説明図である。
【
図12】ガードレール用支柱の補修方法の詳細説明図である。
【
図13】ガードレール用支柱の補修方法の詳細説明図である。
【
図14】他の実施形態に係る補強管を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)左側面図、(D)背面図、(E)底面図、(F)a部拡大図である。
【
図15】ガードレールの設置状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、
図1乃至
図15を参照して、本発明の実施形態に係るガードレール用支柱の補修方法及び補修部材について説明する。本実施形態に係るガードレール用支柱の補修方法は、
図15示すガードレール用支柱10を補修するものである。まず、ガードレール用支柱の補修方法における各部材について説明する。各部材は、鉄鋼材料等の金属により構成されている。
【0027】
(ガードレール用支柱)
図1は、ガードレール用支柱10を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)左側面図、(D)背面図である。ガードレール用支柱10は既設された支柱であり、内部が空洞の支柱筒状部11から構成されている。支柱筒状部11の下部は地中に埋設されており、
図15に示すように地際部GLより上の部分が地上に直立している。
【0028】
支柱筒状部11の上部には、取付板12がボルト14及びナット15により固定されている。取付板12は、ガードレール1をガードレール用支柱10に取り付けるためのものであり、取付孔13,13にボルトを挿通させてガードレール1を固定するようになっている。このように、既設のガードレール用支柱10の上部には、水平方向にボルト14が貫通した状態になっている。
【0029】
(補強管)
図2は、補強管20を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)左側面図、(D)背面図、(E)底面図、(F)a部拡大図である。補強管20はガードレール用支柱10の内部に挿入されるものであり、ガードレール用支柱10より小径で内部が空洞の補強管筒状部21から構成されている。補強管筒状部21の長さはガードレール用支柱10の地上部分よりも長くなっており、ガードレール用支柱10に挿入された状態で、補強管筒状部21の下部が地際部GLの上下に跨って配置されるようになっている。
【0030】
補強管筒状部21には、下端部から上部に向けて2本の縦スリット22,22が形成されている。2本の縦スリット22,22は、補強管筒状部21の対向する位置に同一の長さで形成されている。縦スリット22,22の幅は、ボルト14がスムーズに通過可能な範囲でできるだけ狭くすることが好ましい。また、補強管筒状部21の上端部と縦スリット22の上端部との距離は、支柱筒状部11の上端部とボルト14との距離と略等しくなるように設定するとよい。
【0031】
また、補強管筒状部21には、各々の縦スリット22の中間部に連通するようにボルト退避用の横スリット23,23が形成されている。横スリット23,23は、各々が補強管筒状部21の中心軸を基準に点対称となる向き(円周上の同一回転方向)に、同一の長さで形成されている。本実施形態における横スリット23,23は、上から見たときに縦スリット22,22から反時計回りとなる向きに形成されている。横スリット23の長さは特に限定されないが、例えば円周の1/5~1/4とすることができる。また、縦スリット22の中間部とは縦方向の真ん中を意味するものではなく、横スリット23の縦方向の位置は、後述する補強部材30がスムーズに装着できるように、縦スリット22の上端部と横スリット23との距離が確保されるような位置に設定されている。
【0032】
また、補強管筒状部21には、各々の縦スリット22の上端部に連通するように抜け防止用の横スリット24,24が形成されている。横スリット24,24は、各々が補強管筒状部21の中心軸を基準に点対称となる向き(円周上の同一回転方向)に、同一の長さで形成されている。本実施形態における横スリット24,24は、上から見たときに縦スリット22,22から時計回りとなる向きに形成されている。横スリット24の長さは特に限定されないが、例えば円周の1/5~1/4とすることができる。また、抜け防止用の横スリット24は、ボルト退避用の横スリット23とは逆方向に形成されているが、同一方向とすることもできる。
【0033】
縦スリット22の下端部には、突起部25,25が設けられている。突起部25,25は、後述する補強部材30の下端部に当接して下から支持するためのものである。
【0034】
また、補強管筒状部21にリブを設けて強度を向上させることもできる。例えば、補強管筒状部21の下部(設置時に地際部GLの上下に跨って配置される部分)に、上下方向のリブを間隔を空けて複数本設けることにより、経年劣化による腐食の影響が大きい地際部の強度を特に高めることができる。同様に、筒状部材を縦に2分割した断面半円弧状部材を、縦スリット22,22を回避しながら補強管筒状部21の下部に取り付けることにより、地際部の強度を高めることもできる。
【0035】
(補強部材)
図3は、補強部材30を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)右側面図である。補強部材30は補強管20の縦スリット22の隙間を埋めるものであり、縦スリット22による補強管20の強度低下を防ぐようになっている。補強部材30は、板状部31と嵌合部32,32,32とから構成されている。
【0036】
板状部31は長尺状の板材であり、補強管20の縦スリット22より幅広に形成されている。また、嵌合部32,32,32は、板状部31から突出するように長手方向に沿って間隔を空けて配置されており、補強管20の縦スリット22に嵌合するような幅に形成されている。
【0037】
(上蓋)
図4は、上蓋40を示す(A)正面図、(B)底面図である。上蓋40は円筒状の縁部41及び円錐状の傘部42から構成されており、既設のガードレール用支柱10の上端に取り付けられて支柱内への雨水等の浸入を防止している。
【0038】
次に、本実施形態に係るガードレール用支柱の補修方法について詳細に説明する。
図5は、ガードレール用支柱の補修方法を示す工程図である。また、
図6~
図13は、ガードレール用支柱の補修方法の詳細説明図であり、各図の括弧付き数字は
図5の括弧付き数字に対応している。なお、各図にはガードレール1の記載を省略しているが、ガードレール1は支柱から取り外す必要はなく、そのままの状態で補修する。
【0039】
本実施形態に係るガードレール用支柱の補修方法は、第1挿入工程、第1回転工程、補強部材装着工程、第2回転工程、第2挿入工程及び第3回転工程を含むものである。事前に、既設のガードレール用支柱10から上蓋40を取り外しておく。
【0040】
(第1挿入工程)
まず、
図5~
図7に示すように、ガードレール用支柱10の内部に、補強管20を挿入する。このとき、ボルト14が補強管20の縦スリット22,22を通過するようにすれば、ボルト14が邪魔にならず取り外す必要はない。ボルト14がボルト退避用の横スリット23,23に到達したら、挿入を中断する。
【0041】
(第1回転工程)
次に、
図5及び
図8に示すように、ボルト14がボルト回避用の横スリット23,23に入るように、補強管20を右回転させる。これにより、ボルト14を縦スリット22,22内から出すことができる。
【0042】
(補強部材装着工程)
次に、
図5及び
図8に示すように、縦スリット22,22の隙間を埋める補強部材30,30を装着する。このとき、補強部材30の嵌合部32を縦スリット22に嵌合させるとともに、板状部31を補強管20の外面に当接させながら、縦スリット22の上部から落下させる。なお、補強部材30を容易に装着するために、縦スリット22のガードレール用支柱10上端より上方部分の長さが、補強部材30の長さよりも長くなるように、縦スリット22の上端部と横スリット23との距離が設定されている。
【0043】
落下した補強部材30は、縦スリット22の下端部に設けられた突起部25,25により支持される。補強部材30を落下させる際に、ボルト14は縦スリット22内に存在しないため邪魔にならない。
【0044】
(第2回転工程)
次に、
図5及び
図9に示すように、ボルト14がボルト回避用の横スリット23,23から出るように、補強管20を左回転させる。これにより、ボルト14を再び縦スリット22,22内に入れることができる。
【0045】
(第2挿入工程)
次に、
図5及び
図10に示すように、ガードレール用支柱10の内部に、再び補強管20を挿入する。このとき、ボルト14は補強管20の縦スリット22,22を通過するので邪魔にならない。ボルト14が縦スリット22,22の上端部に到達すると挿入が完了する。
【0046】
図11は、第2挿入工程が完了した状態を示す(A)縦断面図、(B)a-a断面図、(C)b-b断面図である。
図11に示すように、補強管20の下部に装着された補強部材30,30は、埋設されたガードレール用支柱10の地際部GLに配置されている。すなわち、補強部材30,30は、地際部GLの上下に跨って配置されている。例えば、補強部材30の長さを30cmとし、地際部GLの上下15cmに配置するようにすればよい。これにより、経年劣化による腐食の影響が大きい地際部GLの強度を特に高めることができる。
【0047】
(第3回転工程)
次に、
図5及び
図12に示すように、ボルト14が抜け防止用の横スリット24,24に入るように、補強管20を左回転させる。これにより、補強管20の上下方向の移動を規制し、車両衝突時等にガードレール支柱10から補強管20が抜けてしまうのを防止することができる。
【0048】
図13は、第3回転工程が完了した状態を示す(A)縦断面図、(B)a-a断面図、(C)b-b断面図(上部)及びc-c断面図(下部)である。
図13に示すように、ボルト14が縦スリット22内ではなく横スリット24内に位置しているので、補強管20はガードレール用支柱10に対して上下方向に移動することができない。
【0049】
最後に、上蓋40を被せてガードレール用支柱の補修方法が完了する。
【0050】
本実施形態に係るガードレール用支柱の補修方法は、下部が地中に埋設され上部に水平方向のボルト14が貫通してなるガードレール用支柱10を補修する方法であって、第1挿入工程、第1回転工程、補強部材装着工程、第2回転工程及び第2挿入工程を含んでいる。そして、補強管20及び補強部材30を使用するようになっている。補強管20は、下端部から上部に向けて形成された縦スリット22,22及び縦スリット22,22の中間部に連通するように形成されたボルト退避用の横スリット23,23を有している。また、補強部材30は補強管20の縦スリット22,22の隙間を埋めるものであり、縦スリット22,22による補強管20の強度低下を防ぐことができる。
【0051】
第1挿入工程では、ガードレール用支柱10の内部に、補強管20をボルト14が縦スリット22,22を通過してボルト退避用の横スリット23,23に到達するまで挿入する。このとき、補強管20の挿入に際してボルト14は縦スリット22,22内を通過するので邪魔にならず、ボルト14を取り外す必要はない。
【0052】
第1回転工程では、ボルト14がボルト退避用の横スリット23,23に入るように補強管20を水平方向に回転するので、ボルト14を縦スリット22,22内から出すことができる。その結果、補強部材装着工程で縦スリット22,22に補強部材30,30を装着する際に、ボルト14が縦スリット22,22内に存在しないため邪魔にならない。
【0053】
第2回転工程では、ボルト14がボルト退避用の横スリット23,23から出るように補強管20を水平方向に回転するので、ボルト14を縦スリット22,22内に入れることができる。その結果、第2挿入工程でガードレール用支柱10の内部に再び補強管20を挿入する際に、ボルト14が縦スリット22,22の上端部に到達するまで縦スリット22,22内を通過するので邪魔にならない。
【0054】
また、補強部材30,30がガードレール用支柱10の地際部GLに配置されるので、経年劣化による腐食の影響が大きい地際部GLの強度を特に高めることができる。
【0055】
また、補強部材30が縦スリット22より幅広の板状部31と板状部31から突出する縦スリット22に嵌合する嵌合部32,32,32とから構成されるので、嵌合部32,32,32により縦スリット22の隙間を適切に埋めることができるとともに、板状部31により補強管20との位置決めを行うことができる。
【0056】
また、補強管20が縦スリット22,22の上端部に連通するように形成された抜け防止用の横スリット24,24を有し、ボルト14が抜け防止用の横スリット24,24に入るように補強管20を水平方向に回転する第3回転工程を含むので、車両衝突時等にガードレール支柱10から補強管20が抜けてしまうのを防止することができる。
【0057】
また、本実施形態に係るガードレール用支柱の補修部材は、補強管20及び補強部材30からなり、上記ガードレール用支柱の補修方法に使用することができる。
【0058】
このように、本実施形態に係るガードレール用支柱の補修方法及び補修部材は、既設の支柱を有効利用するとともに、既存のボルトを取り外す必要がなく作業負担を小さくすることができるものである。
【0059】
図14は、他の実施形態に係る補強管50を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)左側面図、(D)背面図、(E)底面図、(F)a部拡大図である。補強管50は、上記補強管20とほぼ同一の構成であるが、ボルト退避用の横スリット53が上下方向に2本形成されており、抜け防止用の横スリット54が上下方向に2本形成されている点が異なっている。これは、既設のガードレール用支柱の上部に水平方向のボルトが垂直方向に2本存在する場合を想定したものである。補強管50も上記補強管20と同様に使用することができる。なお、ボルトが2本存在する場合には、横スリットを2本設けるほかに、上下方向に幅広の横スリットを設けるようにしてもよい。
【0060】
以上、本実施形態に係るガードレール用支柱の補修方法及び補修部材について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、縦スリットに装着する補強部材の形や長さは、縦スリットの隙間を埋めることができるものであれば、特に限定されない。
【0062】
また、上記実施形態では、補強管の回転方向を、第1回転工程(右回転)、第2回転工程(左回転)、第3回転工程(左回転)としたが、第1回転工程(左回転)、第2回転工程(右回転)、第3回転工程(右回転)のように、上記実施形態と反対方向にすることもできる。そのためには、ボルト退避用の横スリット及び抜け防止用の横スリットの各々の形成方向を上記実施形態と反対方向とする。また、ボルト退避用の横スリットの形成方向と抜け防止用の横スリットの形成方向とを同一方向とした場合には、第1回転工程と第3回転工程の回転方向が同一方向となる。
【0063】
また、抜け防止用の横スリット24,24は必ずしも設ける必要はなく、第3回転工程を省略して第2挿入工程で完了するようにしてもよい。その場合、補修完了後にボルト14が縦スリット22内を移動しないように、別途規制手段を設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0064】
1 ガードレール
2 路肩
3 道路
10 ガードレール用支柱
11 支柱筒状部
12 取付板
13 取付孔
14 ボルト
15 ナット
20 補強管
21 補強管筒状部
22 縦スリット
23 ボルト退避用の横スリット
24 抜け防止用の横スリット
25 突起部
30 補強部材
31 板状部
32 嵌合部
40 上蓋
41 縁部
42 傘部
50 補強管
51 筒状部
52 縦スリット
53 ボルト退避用の横スリット
54 抜け防止用の横スリット
55 突起部
GL 地際部