(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】建築見積システム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20240620BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20240620BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20240620BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240620BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/10
G06F30/20
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2022029060
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2023-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505419198
【氏名又は名称】スターツCAM株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【氏名又は名称】渡部 温
(74)【代理人】
【識別番号】100112520
【氏名又は名称】林 茂則
(72)【発明者】
【氏名】秋田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】野々村 嘉洋
(72)【発明者】
【氏名】堀口 裕之
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-034645(JP,A)
【文献】特開2011-065683(JP,A)
【文献】特開2008-204255(JP,A)
【文献】特開2002-140569(JP,A)
【文献】特開2006-244351(JP,A)
【文献】国際公開第2021/221793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/28
G06Q 50/08
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の建物部材モデルを作成するモデル作成部または前記建物の建築管理情報を作成する情報作成部から、前記建物の見積要素ごとの見積要素データを取得し、前記見積要素データに基づいて見積計算を実行する見積計算部を有する建物見積システムであって、
前記見積計算部が、
前記見積要素の数量データを含む見積要素データを受信するデータ受信部と、
前記建物の建物部材または建築管理情報に対応する品目ごとの価格データを含む価格情報を記憶する記憶部と、
前記データ受信部が受信した前記見積要素データで特定される見積要素の要素コードと、前記記憶部から読み出した前記価格情報に含まれる品目ごとの品目コードとを連携するデータマッチング部と、
前記データマッチング部でコード連携された前記見積要素の前記数量データおよび前記価格データに基づき、前記建物の価格を積算する積算部と、を有する
建物見積システム。
【請求項2】
前記見積要素データに、
前記建物の鉄筋モデル作成部から取得する鉄筋部材・数量データ、
前記建物の鉄骨モデル作成部から取得する鉄骨部材・数量データ、
前記建物の構造躯体モデル作成部から取得するコンクリート・型枠部材・数量データ、
前記建物の外構モデル作成部から取得する外構部材・数量データ、
前記建物の意匠モデル作成部から取得する意匠部材・数量データ、
前記建物の設備モデル作成部から取得する設備部材・数量データ、および、
前記建物の仮設情報・工事工程表・基本情報作成部から取得する仮設情報・工事工程表・基本情報データ、
から選択された1以上のデータを含む
請求項1に記載の建物見積システム。
【請求項3】
前記記憶部が、前記価格情報として、
前記品目を科目に区分し、前記品目を前記科目ごとの科目コードに関連付けて記憶する科目情報マスタと、
前記科目ごとに、当該科目に属する品目の価格を品目コードに関連付けて記憶する価格情報マスタと、を有する
請求項1または請求項2に記載の建物見積システム。
【請求項4】
前記データマッチング部が、
前記見積要素データで特定される見積要素の要素コードと、前記科目情報マスタに記憶されている前記科目コードとをマッチングする科目区分マッチング部と、
前記科目ごとに、前記見積要素の前記要素コードと、前記価格情報マスタに記憶されている品目コードとをマッチングし、前記要素コードで特定される見積要素の数量と前記品目コードで特定される品目の価格とを関連付ける数量・価格マッチング部と、を有し、
前記積算部が、前記数量・価格マッチング部でマッチングされた前記見積要素ごとの数量と価格に基づき前記建物の価格を積算する
請求項3に記載の建物見積システム。
【請求項5】
前記記憶部が、前記品目ごとの価格を調整するための地域情報および時間情報を記憶する地域情報・時間情報マスタをさらに有し、
前記データマッチング部が、前記見積要素の前記要素コードと、前記地域情報・時間情報マスタから取得した前記地域情報および前記時間情報とをマッチングする地域・時間区分マッチング部をさらに有し、
前記積算部が、前記地域・時間区分マッチング部でマッチングした前記地域情報および前記時間情報に基づいて、前記見積要素の価格を調整する
請求項4に記載の建物見積システム。
【請求項6】
建物の建物部材モデルを作成するモデル作成部または前記建物の建築管理情報を作成する情報作成部から、前記建物の見積要素ごとの見積要素データを取得し、前記見積要素データに基づいて見積計算を実行する見積計算部を有する建物見積システムで稼働するコンピュータに実行可能なプログラムであって、
前記見積計算部において、
前記見積要素の数量データを含む見積要素データを受信するデータ受信機能と、
前記建物の建物部材または建築管理情報に対応する品目ごとの価格データを含む価格情報を記憶する記憶機能と、
前記データ受信機能で受信した前記見積要素データで特定される見積要素の要素コードと、前記記憶機能で読み出した前記価格情報に含まれる品目ごとの品目コードとを連携するデータマッチング機能と、
前記データマッチング機能でコード連携された前記見積要素の前記数量データおよび前記価格データに基づき、前記建物の価格を積算する積算機能と、
をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築見積システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1は、発注情報の精度を高め、合理的な発注システムにより最適なタイミングで発注書を発行することを目的とする建物の部材発注システムを開示する。当該建物の部材発注システムでは、マスターシステムと設計システムと複数の発注元システムとをネットワークを通じて接続し、マスターシステムには、注文書を作成するための注文書情報と、建物の各部材の価格算出用情報を含む部材情報と、発注先に注文書を送信するために必要な発注先情報を記憶し、設計システムには、建物の仕様書情報とCAD積算データを記憶して、注文書基礎データを生成する注文書基礎データ生成手段を備え、発注元システムには、建物の建設工事の工事日程を記憶して、発注先に対する注文書を自動生成する注文書生成手段を設ける、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の建物の部材発注システムによれば、マスターシステム、設計システムおよび複数の発注元システムをネットワーク接続し、マスターシステムに含まれる部材情報(価格算出用情報を含む)と、設計システムに含まれるCAD積算データとから、当該建物に係る価格見積を計算することは可能である。
【0005】
しかし、当該価格見積は、設計システムで扱われる部材に対応できる範囲に限られ、たとえば、建物構造における構造・躯体設計、建物内装の意匠設計、建物設備の設計等が、別個のシステムによって設計される場合、設計システム毎の個別の見積は可能であっても、建物全体を統一した全体見積を正確かつ迅速に計算することはできない。
【0006】
また、上記した部材発注システムは、設計完了を前提に、工事部材等の発注を省力化するシステムであり、たとえば意匠設計の途中において、施主と協議しつつ建物内装の仕様を決定するような場合、迅速な価格見積を行うことは困難であった。
【0007】
本願発明の目的は、単一または複数の設計システムによって建物各部が設計される建物の見積において、建物全体の見積を正確かつ迅速に計算することができる建築見積システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、建物の建物部材モデルを作成するモデル作成部または前記建物の建築管理情報を作成する情報作成部から、前記建物の見積要素ごとの見積要素データを取得し、前記見積要素データに基づいて見積計算を実行する見積計算部を有する建物見積システムであって、前記見積計算部が、前記見積要素の数量データを含む見積要素データを受信するデータ受信部と、前記建物の建物部材または建築管理情報に対応する品目ごとの価格データを含む価格情報を記憶する記憶部と、前記データ受信部が受信した前記見積要素データで特定される見積要素の要素コードと前記記憶部から読み出した前記価格情報に含まれる品目ごとの品目コードとを連携するデータマッチング部と、前記データマッチング部でコード連携された前記見積要素の前記数量データおよび前記価格データに基づき前記建物の価格を積算する積算部と、を有する建物見積システムを提供する。
【0009】
前記見積要素データにおいて、前記建物の鉄筋モデル作成部から取得する鉄筋部材・数量データ、前記建物の鉄骨モデル作成部から取得する鉄骨部材・数量データ、前記建物の構造躯体モデル作成部から取得するコンクリート・型枠部材・数量データ、前記建物の外構モデル作成部から取得する外構部材・数量データ、前記建物の意匠モデル作成部から取得する意匠部材・数量データ、前記建物の設備モデル作成部から取得する設備部材・数量データ、および、前記建物の仮設情報・工事工程表・基本情報作成部から取得する仮設情報・工事工程表・基本情報データ、から選択された1以上のデータを含んでもよい。また、前記記憶部は、前記価格情報として、前記品目を科目に区分し、前記品目を前記科目ごとの科目コードに関連付けて記憶する科目情報マスタと、前記科目ごとに、当該科目に属する品目の価格を品目コードに関連付けて記憶する価格情報マスタと、を有してもよい。
【0010】
上記した建物見積システムにおいて、前記データマッチング部は、前記見積要素データで特定される見積要素の要素コードと、前記科目情報マスタに記憶されている前記科目コードとをマッチングする科目区分マッチング部と、前記科目ごとに、前記見積要素の前記要素コードと、前記価格情報マスタに記憶されている品目コードとをマッチングし、前記要素コードで特定される見積要素の数量と前記品目コードで特定される品目の価格とを関連付ける数量・価格マッチング部と、を有してもよく、前記積算部は、前記数量・価格マッチング部でマッチングされた前記見積要素ごとの数量と価格に基づき前記建物の価格を積算してもよい。この場合、前記記憶部は、前記品目ごとの価格を調整するための地域情報および時間情報を記憶する地域情報・時間情報マスタをさらに有してもよく、前記データマッチング部は、前記見積要素の前記要素コードと、前記地域情報・時間情報マスタから取得した前記地域情報および前記時間情報とをマッチングする地域・時間区分マッチング部をさらに有してもよく、前記積算部は、前記地域・時間区分マッチング部でマッチングした前記地域情報および前記時間情報に基づいて、前記見積要素の価格を調整してもよい。
【0011】
本発明の第2の態様においては、建物の建物部材モデルを作成するモデル作成部または前記建物の建築管理情報を作成する情報作成部から、前記建物の見積要素ごとの見積要素データを取得し、前記見積要素データに基づいて見積計算を実行する見積計算部を有する建物見積システムで稼働するコンピュータに実行可能なプログラムであって、前記見積計算部において、前記見積要素の数量データを含む見積要素データを受信するデータ受信機能と、前記建物の建物部材または建築管理情報に対応する品目ごとの価格データを含む価格情報を記憶する記憶機能と、前記データ受信機能で受信した前記見積要素データで特定される見積要素の要素コードと前記記憶機能で読み出した前記価格情報に含まれる品目ごとの品目コードとを連携するデータマッチング機能と、前記データマッチング機能でコード連携された前記見積要素の前記数量データおよび前記価格データに基づき前記建物の価格を積算する積算機能と、をコンピュータに実現させるためのプログラムを提供する。
【0012】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】建物見積システム100の一例を示す機能ブロック図である。
【
図2】建物見積システム100で用いるハードウェア200の一例を示した構成図である。
【
図3】見積計算部190の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】データ受信部192が受信する見積要素データの一例を示すデータ構造図である。
【
図5】記憶部194に記憶される科目情報マスタ194aおよび価格情報マスタ194bの一例を示すデータ構造図である。
【
図6】データマッチング部193におけるマッチングの一例を示すデータ構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
図1は、本実施の形態の一例である建物見積システム100の機能を示す機能ブロック図である。建物見積システム100は、建築構造設計部10、建築意匠設計部20、建築設備設計部30、建築管理部40および見積計算部190を有し、見積計算部190における計算に基づき見積書198を出力する。なお、本実施の形態の建物見積システム100は、特定の規格や標準に準拠して稼働するものに限定されないが、例えばBIM(Building Information Modeling)のデータを使用するシステムであっても良い。
【0016】
建築構造設計部10は、構造計算部110、鉄筋モデル作成部120、鉄骨モデル作成部130および構造躯体モデル作成部140を有し、建築意匠設計部20は、意匠モデル作成部150および外構モデル作成部160を有する。建築設備設計部30は、設備モデル作成部170を有し、建築管理部40は、仮設情報・工事工程表・基本情報作成部180を有する。なお、鉄筋モデル作成部120、鉄骨モデル作成部130、構造躯体モデル作成部140、意匠モデル作成部150、外構モデル作成部160、設備モデル作成部170、仮設情報・工事工程表・基本情報作成部180を総称して「モデル等作成部」と称する場合がある。
【0017】
構造計算部110は、建物の構造計算を実行し、建物の構造計算データを出力する。鉄筋モデル作成部120は、構造計算データに基づいて建物の鉄筋モデルを作成し、鉄筋部材・数量データを出力する。鉄骨モデル作成部130は、構造計算データに基づいて建物の鉄骨モデルを作成し、鉄骨部材・数量データを出力する。構造躯体モデル作成部140は、構造計算データに基づいて建物の構造躯体モデルを作成し、コンクリート・型枠部材・数量データを出力する。意匠モデル作成部150は、構造計算データおよび他のモデル等作成部が出力するデータに基づいて建物の内外装意匠を設計し、意匠部材・数量データを出力する。外構モデル作成部160は、建物の外構モデルを作成し、外構部材・数量データを出力する。設備モデル作成部170は、建物の機械設備、電気設備等の設備を設計し、設備部材・数量データを出力する。仮設情報・工事工程表・基本情報作成部180は、建物の仮設情報、工事工程表、基本情報等の建築情報を作成および管理し、仮設情報・工事工程表・基本情報データを出力する。
【0018】
前記した鉄筋部材・数量データ、鉄骨部材・数量データ、コンクリート・型枠部材・数量データ、意匠部材・数量データ、外構部材・数量データ、設備部材・数量データは、建物部材の要素名称、数量等を含むデータであり、建物部材要素データの一例である。また、前記した仮設情報・工事工程表・基本情報データは、建物の管理要素を含むデータであり、建築管理要素データの一例である。建物部材要素データおよび建築管理要素データは、見積要素データと総称する。なお、見積要素データには、前記した鉄筋部材・数量データ、鉄骨部材・数量データ、コンクリート・型枠部材・数量データ、外構部材・数量データ、意匠部材・数量データ、設備部材・数量データ、仮設情報・工事工程表・基本情報データ、から選択された1以上のデータを含んでいればよく、前記した全てのデータを含む必要はない。
【0019】
見積計算部190は、建物の建物部材モデルを作成するモデル作成部または建物の建築管理情報を作成する情報作成部(モデル等作成部)から、建物の見積要素ごとの見積要素データを取得し、当該見積要素データに基づいて見積計算を実行する。なお、見積計算部190は、見積計算を実行するコンピュータシステムとして把握することも可能である。
【0020】
図2は、建物見積システム100で用いるハードウェア200の一例を示した構成図である。
図2に示すハードウェア構成は、一般的なコンピュータシステムと同様であり、構造計算部110、鉄筋モデル作成部120、鉄骨モデル作成部130、構造躯体モデル作成部140、意匠モデル作成部150、外構モデル作成部160、設備モデル作成部170、仮設情報・工事工程表・基本情報作成部180および見積計算部190のそれぞれに適用できる。当該ハードウェア構成は、データバス202に、CPU(Central Processing Unit)204、入力装置206、出力装置208、入出力装置210、記憶装置212が接続される。記憶装置212には、RAM(Random access memory)212a、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)212bが含まれる。なお、例示したハードウェア構成は一例であり、他の構成であってもよい。
【0021】
図3は、見積計算部190の一例を示した機能ブロック図である。見積計算部190は、データ受信部192、データマッチング部193、記憶部194、積算部195および見積出力部196を有する。
【0022】
データ受信部192は、前記したモデル等作成部の夫々が出力した鉄筋部材・数量データ等の見積要素データを受信する。
【0023】
図4は、データ受信部192が受信した見積要素データの一例を示したデータ構造図である。見積要素データは、要素コードで特定される複数のレコードを含み、各レコードには、要素コード、要素名称、数量、その他の情報を含む。
図4の例の場合、要素コード「001」、「002」、「003」のそれぞれで特定される3つのレコードを含み、要素コード「001」のレコードには、当該要素コード「001」の他、要素名称「モルタルヌリ」、数量「aaa」が記録されている。同様に、要素コード「002」のレコードには、要素コード「002」の他、要素名称「防水モルタル仕上」、数量「bbb」が記録され、要素コード「003」のレコードには、要素コード「003」の他、要素名称「アスファルトシングル葺」、数量「ccc」が記録されている。なお、各レコードには、前記した要素コード、要素名称、数量の他、たとえば、当該要素の仕様や適用場所等の属性情報を含んでいてもよい。
【0024】
データマッチング部193は、データ受信部192が受信した見積要素データで特定される見積要素の要素コードと、記憶部194から読み出した価格情報に含まれる品目ごとの品目コードとを連携する。データマッチング部193は、科目区分マッチング部193a、数量・価格マッチング部193b、地域・時間区分マッチング部193cを有する。
【0025】
科目区分マッチング部193aは、見積要素データで特定される見積要素の要素コードと、科目情報マスタに記憶されている科目コードとをマッチングする。数量・価格マッチング部193bは、科目ごとに、見積要素の要素コードと、価格情報マスタに記憶されている品目コードとをマッチングし、要素コードで特定される見積要素の数量と品目コードで特定される品目の価格とを関連付ける。地域・時間区分マッチング部193cは、見積要素の要素コードと、地域情報・時間情報マスタ194cから取得した地域情報および時間情報とをマッチングする。
【0026】
記憶部194は、建物の建物部材または建築管理情報に対応する品目ごとの価格データを含む価格情報を記憶する。記憶部194は、価格情報として、科目情報マスタ194a、価格情報マスタ194b、地域情報・時間情報マスタ194cを有する。
【0027】
科目情報マスタ194aは、品目を科目に区分し、品目を科目ごとの科目コードに関連付けて記憶する。価格情報マスタ194bは、科目ごとに、当該科目に属する品目の価格を品目コードに関連付けて記憶する。地域情報・時間情報マスタ194cは、品目ごとの価格を調整するための地域情報および時間情報を記憶する。
【0028】
積算部195は、データマッチング部193でコード連携された見積要素の数量データおよび価格データに基づき、建物の価格を積算する。また、積算部195は、地域・時間区分マッチング部193cでマッチングした地域情報および時間情報に基づいて、見積要素の価格を調整する。見積出力部196は、積算部195で積算した建物の価格を出力する。
【0029】
図5は、記憶部194に記憶される科目情報マスタ194aおよび価格情報マスタ194bの一例を示すデータ構造図である。
図5の左側は、科目情報マスタ194aの一例であり、
図5の右側は価格情報マスタ194bの一例である。
【0030】
科目情報マスタ194aには、科目コードで特定される複数のレコードを含み、各レコードには、科目コードおよび科目名称を含む。各科目のレコードは、当該科目に内包される単一または複数の品目に関連付けられている。
図5の科目情報マスタ194aの場合、科目コード「39」、「40」、「41」のそれぞれで特定される3つのレコードを含み、科目コード「39」のレコードには、当該科目コード「39」の他、科目名称「防水工事」が記録されている。同様に、科目コード「40」のレコードには、科目コード「40」および科目名称「石工事」が記録され、科目コード「41」のレコードには、科目コード「41」および科目名称「タイル工事」が記録されている。なお、各レコードには、前記した科目コード、科目名称の他、適当な属性情報を含んでもよい。
【0031】
価格情報マスタ194bには、品目コードで特定される複数のレコードを含み、各レコードには、品目コード、品目名称、単位、換算率、単価、その他の情報を含む。
図5の価格情報マスタ194bの場合、科目コード「39」の「防水工事」に属する品目として、品目コード「01」、「04」、「13」のそれぞれで特定される3つのレコードを含み、品目コード「01」のレコードには、当該品目コード「01」の他、品目名称「改質アスファルト露出防水(外断熱仕様)」、単位「m
2」、換算率「1.000」、単価「¥xxx,xxx」が記録されている。同様に、品目コード「04」のレコードには、品目コードの他、品目名称「改質アスファルト防水立上り補強」、単位「m
2」、換算率「1.000」、単価「¥yyy,yyy」が記録され、品目コード「13」のレコードには、品目コードの他、品目名称「脱気筒」、単位「カ所」、換算率「0.013」、単価「¥zzz,zzz」が記録されている。なお、各レコードには、前記した品目コード、品目名称、単位、換算率、単価の他、適当な属性情報を含んでもよい。
【0032】
図6は、データマッチング部193におけるマッチングの一例を示すデータ構造図である。たとえば、データ受信部192が
図4に示す見積要素データを受信した場合、データマッチング部193の科目区分マッチング部193aは、要素コード「001」の「モルタルヌリ」に対応する科目として、科目コード「47」の「左官工事」をマッチングし、要素コード「002」の「防水モルタル仕上」に対応する科目として、科目コード「47」の「左官工事」をマッチングし、要素コード「003」の「アスファルトシングル葺」に対応する科目として、科目コード「47」の「左官工事」および科目コード「39」の「防水工事」をマッチングする。
【0033】
そして、データマッチング部193の数量・価格マッチング部193bは、要素コード「001」の「モルタルヌリ」に対応する品目として、科目コード「47」の「左官工事」に区分されている品目コード「41」の「床モルタル金鏝」をマッチングする。同様に、数量・価格マッチング部193bは、要素コード「002」の「防水モルタル仕上」に対応する品目として、科目コード「47」の「左官工事」に区分されている品目コード「61」の「床防水モルタル金鏝A」、または、品目コード「62」の「床防水モルタル金鏝B」をマッチングする。なお、品目コード「61」の「床防水モルタル金鏝A」と、品目コード「62」の「床防水モルタル金鏝B」とは、同種工事の品目であることから何れか一方を採用することになるが、採否の欄を参照して「採用」とされている品目コード「61」の「床防水モルタル金鏝A」を採用しマッチングする。
【0034】
同様に、数量・価格マッチング部193bは、要素コード「003」の「アスファルトシングル葺」に対応する品目として、科目コード「47」の「左官工事」に区分されている品目コード「261」の「金鏝1回」、品目コード「263」の「斜壁コンクリート打放補修」、および、品目コード「262」の「斜壁パーライトモルタル塗り」をマッチングする。さらに、科目コード「39」の「防水工事」に区分されている品目のうち、前記同様に採否欄を参照して、品目コード「43」の「アスファルトシングル葺きA」を採用し、要素コード「003」の「アスファルトシングル葺」とマッチングさせる。
【0035】
なお、
図6に示すマッチングにおいて、単一の要素コードに対し単一の品目コードをマッチングする場合と、単一の要素コードに対し、複数の品目コードをマッチングする場合を説明したが、複数の要素コードに対して単一の品目コードをマッチングする場合もある。
【0036】
以上のように、建物見積システム100によれば、データマッチング部193において、データ受信部192が受信した見積要素データの要素コードと、記憶部194の価格情報マスタ194bに記録された品目コードとをコード連携することで、見積要素ごとの数量と単価とを対応付け(マッチング)、見積要素ごとの見積額を算出することができる。見積要素ごとの見積額は、積算部195において見積対象全体の見積要素について積算され、全見積額が計算される。積算部195で積算された見積額は、見積出力部196によって見積書198として出力される。これにより、建物全体の見積を正確かつ迅速に計算することができる
【0037】
なお、見積要素ごとの見積額は、上記したコード連携によって対応付けられた数量と単価を単純に掛け合わせて計算するほか、地域情報・時間情報マスタ194cに記憶した地域情報、時間情報を参照して、見積対象品目の単価を調整することができる。これにより、たとえば地域差や季節要因による部材価格の変動があったとしても迅速かつ正確な見積額を計算することができる。
【0038】
また、上記した建物見積システム100では、見積要素ごとの価格を積算するので、見積要素データを任意の見積対象、たとえば建物のエントランスや共用部に係る見積要素に容易に絞り込むことができる。これにより、たとえば関係者との建物仕様の協議等の場で、特定領域に対する見積額を迅速かつ正確に提示することができ、協議検討などの議事をスムーズに進める助けとすることができる。
【0039】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0040】
なお、上記した実施の形態は、コンピュータを稼働させるプログラムとして把握することも可能である。すなわち、建物の建物部材モデルを作成するモデル作成部または前記建物の建築管理情報を作成する情報作成部から、前記建物の見積要素ごとの見積要素データを取得し、前記見積要素データに基づいて見積計算を実行する見積計算部を有する建物見積システムで稼働するコンピュータに実行可能なプログラムであって、前記見積計算部において、前記見積要素の数量データを含む見積要素データを受信するデータ受信機能と、前記建物の建物部材または建築管理情報に対応する品目ごとの価格データを含む価格情報を記憶する記憶機能と、前記データ受信機能で受信した前記見積要素データで特定される見積要素の要素コードと前記記憶機能で読み出した前記価格情報に含まれる品目ごとの品目コードとを連携するデータマッチング機能と、前記データマッチング機能でコード連携された前記見積要素の前記数量データおよび前記価格データに基づき前記建物の価格を積算する積算機能と、をコンピュータに実現させるためのプログラムとして把握することも可能である。
【0041】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラムおよび方法における動作、手順、ステップおよび段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書および図面中の動作フローに関して便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0042】
10…建築構造設計部、20…建築意匠設計部、30…建築設備設計部、40…建築管理部、100…建物見積システム、110…構造計算部、120…鉄筋モデル作成部、130…鉄骨モデル作成部、140…構造躯体モデル作成部、150…意匠モデル作成部、160…外構モデル作成部、170…設備モデル作成部、170…外構モデル作成部、180…仮設情報・工事工程表・基本情報作成部、190…見積計算部、192…データ受信部、193…データマッチング部、193a…科目区分マッチング部、193b…数量・価格マッチング部、193c…地域・時間区分マッチング部、194…記憶部、194a…科目情報マスタ、194b…価格情報マスタ、194c…地域情報・時間情報マスタ、195…積算部、196…見積出力部、198…見積書、200…ハードウェア、202…データバス、204…CPU、206…入力装置、208…出力装置、210…入出力装置、212…記憶装置、212a…RAM、212b…EEPROM。