(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】自動運転再開システム及びその端末装置と工作機械
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4067 20060101AFI20240620BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G05B19/4067
B23Q15/00 D
(21)【出願番号】P 2022164215
(22)【出願日】2022-10-12
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】荒 和正
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200654(JP,A)
【文献】特開2002-312011(JP,A)
【文献】特開2008-217608(JP,A)
【文献】特開2001-236115(JP,A)
【文献】特開平05-182093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4067
B23Q 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラームの発生によって停止した工作機械の自動運転を、オペレータが遠隔から端末装置で再開させる
自動運転再開処理を実行する自動運転再開システムであって、
前記工作機械は、
前記工作機械の加工領域を撮像する撮像部と、
前記工作機械の自動運転を遠隔から再開できるか否かを前記アラーム毎に記録した再開可否情報
と前記アラームの発生時刻と前記撮像部で撮像された画像とを記憶する記憶部とを備え、
前記自動運転が停止すると、前記自動運転が停止した理由を示したアラームメッセージを出力し、
前記アラームメッセージと前記再開可否情報とを前記端末装置に送信し、
前記端末装置は、
前記アラームメッセージと前記撮像部で撮像された画像を前記端末装置の表示画面に表示し、
前記アラームの発生時刻に基づいて、前記アラームが発生した前後に前記撮像部で撮像された画像を前記表示画面に表示し、
前記工作機械から送信された前記再開可否情報に基づいて前記工作機械の自動運転を遠隔から再開できる場合には、
前記工作機械の自動運転を再開させるためのスタートボタンを前記表示画面に表示し、
前記オペレータが前記スタートボタンを押下すると、前記工作機械の自動運転の再開を指令する運転再開指令を送信し、
前記工作機械は、前記運転再開指令を受信すると、前記工作機械の自動運転を再開
し、
前記端末装置は、前記工作機械から送信された前記再開可否情報に基づいて前記工作機械の自動運転を遠隔から再開できない場合には、前記スタートボタンを表示せずに前記自動運転再開処理を終了する自動運転再開システム。
【請求項2】
前記端末装置は、
前記工作機械が前記オペレータの作業を必要とするときに通知を表示し、通知を表示するタイミングは、少なくとも運転終了時、運転の残り時間が設定時間以下になった時、運転停止時、運転再開時のいずれかである請求項1に記載の自動運転再開システム。
【請求項3】
前記端末装置は、前記工作機械の自動運転を停止させるためのストップボタンを前記表示画面に表示する請求項1または2に記載の自動運転再開システム。
【請求項4】
前記端末装置は、
前記工作機械から送信された前記再開可否情報に基づいて前記工作機械の自動運転を遠隔から再開できない場合には、自動運転を遠隔から再開できない理由を前記表示画面に表示する請求項1または2に記載の自動運転再開システム。
【請求項5】
前記端末装置は、前記アラームメッセージに基づいて、前記アラームの解決方法を前記表示画面に表示する請求項1または2に記載の自動運転再開システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転再開システム及びその端末装置と工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、主電源をスイッチオンまたはスイッチオフする工作機械の運転機能制御装置が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された運転機能制御装置では、操作可能な状態の十分なワークピース及び工具を使用できることが確かである場合のみ、工作機械の次に来るプログラムを、無線を介して開始することが可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の運転機能制御装置では、工作機械でアラームが発生して自動運転が停止した場合には、操作可能な状態の十分なワークピース及び工具を使用できることが確かではないので、遠隔から自動運転を再開することはできなかった。また、遠隔から自動運転を再開するためには、自動運転が停止した理由を把握する必要があるので、オペレータは、目視で直接工作機械の状況を確認しなければならなかった。そのため、従来では、アラームの発生によって工作機械の自動運転が停止した場合には、遠隔から工作機械の自動運転を再開することができないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る自動運転再開システムは、アラームの発生によって停止した工作機械の自動運転を、オペレータが遠隔から端末装置で再開させる自動運転再開システムであって、前記工作機械は、前記工作機械の加工領域を撮像する撮像部と、前記工作機械の自動運転を遠隔から再開できるか否かを前記アラーム毎に記録した再開可否情報を記憶する記憶部とを備え、前記自動運転が停止すると、前記自動運転が停止した理由を示したアラームメッセージを出力し、前記端末装置は、前記アラームメッセージと前記撮像部で撮像された画像を前記端末装置の表示画面に表示し、前記再開可否情報に基づいて前記工作機械の自動運転を遠隔から再開できる場合には、前記オペレータが前記工作機械の自動運転を再開させる操作を行うと、前記工作機械の自動運転の再開を指令する運転再開指令を送信し、前記工作機械は、前記運転再開指令を受信すると、前記工作機械の自動運転を再開する。
【0006】
本発明の一態様に係る自動運転再開システムの端末装置は、アラームの発生によって停止した工作機械の自動運転を、オペレータが遠隔から端末装置で再開させる自動運転再開システムの端末装置であって、前記工作機械の自動運転が停止した理由を示したアラームメッセージと、前記工作機械の自動運転を遠隔から再開できるか否かを前記アラーム毎に記録した再開可否情報とを前記工作機械から受信すると、前記工作機械の加工領域を撮像した画像を前記工作機械の撮像部から取得し、前記アラームメッセージと前記撮像された画像を前記端末装置の表示画面に表示し、前記再開可否情報に基づいて前記工作機械の自動運転を遠隔から再開できる場合には、前記オペレータが前記工作機械の自動運転を再開させる操作を行うと、前記工作機械の自動運転の再開を指令する運転再開指令を前記工作機械へ送信する。
【0007】
本発明の一態様に係る自動運転再開システムの工作機械は、アラームの発生によって停止した工作機械の自動運転を、オペレータが遠隔から端末装置で再開させる自動運転再開システムの工作機械であって、前記工作機械の加工領域を撮像する撮像部と、前記工作機械の自動運転を遠隔から再開できるか否かを前記アラーム毎に記録した再開可否情報を記憶する記憶部とを備え、前記自動運転が停止すると、前記自動運転が停止した理由を示したアラームメッセージを出力し、前記アラームメッセージと前記再開可否情報を前記端末装置に送信し、前記アラームメッセージと前記再開可否情報を受信した前記端末装置に、前記工作機械の加工領域を撮像した画像を送信し、前記工作機械の自動運転の再開を指令する運転再開指令を前記端末装置から受信すると、前記工作機械の自動運転を再開する。
【0008】
上述した構成の自動運転再開システムでは、工作機械の加工領域を撮像した画像と、自動運転が停止した理由を端末装置で確認できるので、オペレータは目視で工作機械の状況を直接確認する必要がなくなり、遠隔から工作機械の自動運転を再開することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る自動運転再開システムによれば、アラームの発生によって工作機械の自動運転が停止した場合であっても、遠隔から工作機械の自動運転を再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る自動運転再開システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る自動運転再開システムによる自動運転再開処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る自動運転再開システムにおける携帯端末の表示画面の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る自動運転再開システムにおける携帯端末の表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した一実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0012】
[自動運転再開システムの構成]
図1は、本実施形態に係る自動運転再開システムの構成を示す図である。
図1に示すように、自動運転再開システム1は、工作機械3と、携帯端末5と、通信装置7から構成されている。自動運転再開システム1は、アラームの発生によって停止した工作機械3の自動運転を、オペレータが遠隔から携帯端末5で再開させるシステムである。
【0013】
工作機械3は、工具を使って材料を加工する装置であり、例えばレーザ加工機やパンチング機である。また、工作機械3は、自動運転で材料を加工できる装置であり、通常運転時にはオペレータなしで作業が行われている。工作機械3でアラームが発生すると、工作機械3は自動運転を停止して、自動運転が停止した理由を示したアラームメッセージを出力し、オペレータからの指示にしたがって自動運転を再開する。尚、
図1では、工作機械3が1台の場合を例示しているが、工作機械3が複数であってもよい。この場合には、複数の工作機械3を1台の携帯端末5で制御することができる。
【0014】
工作機械3は、カメラ11と、記憶部13と、コントローラ15を備えている。カメラ11は、工作機械3の加工領域17を撮像する撮像部であり、工具が稼働する稼働範囲の全体を撮像することができる。カメラ11は、撮像された画像を一定期間記憶しており、通信装置7を介して携帯端末5に接続されているので、撮像した画像を携帯端末5に送信する。また、カメラ11は、記憶部13に記憶されているアラームの発生時刻を取得し、同時刻の画像を携帯端末5に送信することで、アラームの発生時刻の画像を携帯端末5に表示することができる。尚、カメラ11は1台である必要はなく、複数台設置されていてもよい。この場合、カメラ11は、加工領域17を撮像するだけではなく、工作機械3の操作盤画面や材料搬入出部などを撮像してもよく、自動運転の再開に必要な情報を取得できる場所を撮像できるようにする。
【0015】
記憶部13は、工作機械3の自動運転を再開するための処理に必要な情報を記憶するためのメモリやデータベースである。記憶部13は、例えば、工作機械3の接続情報、照合情報、識別情報を記憶している。接続情報は、カメラ11とコントローラ15をネットワークに接続するためのIPアドレスやポート番号である。照合情報は、携帯端末5が工作機械3を特定するための機械名称やシリアル番号であり、例えば「MAC3015AJ」などが使用される。識別情報は、オペレータが工作機械3を識別するための任意の画像や名称であり、例えば「MACHINE#1」などが使用される。同様に、記憶部13は、携帯端末5の接続情報、照合情報、識別情報も記憶している。
【0016】
また、記憶部13は、再開可否情報を記憶している。再開可否情報は、自動運転を遠隔から再開できるか否かをアラーム毎に記録した情報である。工作機械3で発生するアラームには、オペレータが遠隔から自動運転を再開できるアラームと、再開できないアラームがある。そこで、工作機械3で発生する複数のアラームを遠隔から再開できるアラームと再開できないアラームに予め分類し、アラーム毎に遠隔で再開できるか否かを記録して再開可否情報を作成し、記憶部13に記憶している。
【0017】
さらに、記憶部13は、カメラ11で撮像された画像を記憶してもよい。携帯端末5では、カメラ11で撮像された画像をリアルタイムで表示しているが、アラームが発生した前後の画像を表示することもできる。そこで、記憶部13は、現時点から所定期間内の画像を常に記録しておき、アラームが発生した場合には、発生したアラームとアラームの発生時刻を記憶しておくことによって、その前後の画像を携帯端末5に表示できるようにしている。また、記憶部13は、各アラームについてそれぞれアラームの解決方法を記憶し、自動運転を遠隔から再開できないアラームについてはその理由を記憶している。
【0018】
コントローラ15は、通信装置7を介して携帯端末5に接続されており、工作機械3の自動運転を再開させる制御を実行する。具体的に、コントローラ15は、工作機械3の自動運転が停止すると、アラームメッセージと再開可否情報を携帯端末5に送信し、携帯端末5から自動運転の再開を指令する運転再開指令を受信すると、工作機械3の自動運転を再開させる。また、コントローラ15は、携帯端末5から自動運転の停止を指令する運転停止指令を受信すると、工作機械3の自動運転を停止させる。
【0019】
なお、コントローラ15は、CPU(中央処理装置)、及びメモリを備える汎用のマイクロコンピュータである。コントローラ15には、自動運転再開システム1の処理を実行するめに必要なコンピュータプログラムがインストールされている。このコンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ15は、工作機械3の自動運転を再開させる制御を実行する。
【0020】
携帯端末5は、ネットワークを介して通信装置7にアクセスすることができる通信部を備えた端末装置であり、例えば、オペレータが操作するスマートフォンやタブレット端末等である。携帯端末5には、自動運転再開システム1の処理を実行するめに必要なアプリケーションがインストールされている。したがって、携帯端末5は、カメラ11及びコントローラ15に対して必要な情報を送信することができ、カメラ11及びコントローラ15から送信された情報を受信して表示することができる。
【0021】
具体的に、携帯端末5は、工作機械3の自動運転を再開させる処理を実行し、コントローラ15からアラームメッセージと再開可否情報を受信すると、カメラ11で撮像された画像を取得して、表示画面上にアラームメッセージと撮像された画像を表示する。そして、携帯端末5は、再開可否情報に基づいて自動運転を遠隔から再開できる場合には、オペレータが自動運転を再開させる操作を行うと、自動運転の再開を指令する運転再開指令をコントローラ15へ送信する。
図1では、工作機械3が1台の場合を例示しているが、携帯端末5は、複数の工作機械3と接続することが可能であり、複数の工作機械3の自動運転を再開させることができる。
【0022】
尚、携帯端末5は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、CPUを含む汎用の電子回路とメモリ等の周辺機器から構成されたコントローラを備えており、工作機械3の自動運転を再開させる機能を有する。コントローラの各機能は、1または複数の処理回路によって実装することができる。処理回路は、例えば電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含み、また実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置も含んでいる。
【0023】
通信装置7は、ネットワークを介して携帯端末5と情報を送受信する機能を備えており、カメラ11とコントローラ15に有線または無線で接続されている。そのため、通信装置7は、携帯端末5と、カメラ11及びコントローラ15との間で情報を送受信することができる。例えば、通信装置7は、インターネットと接続できる4G/5Gなどのモバイル通信機能を備えたルータや、携帯端末5と直接無線通信できるアクセスポイントなどのデバイスであればよい。
【0024】
[自動運転再開処理]
次に、本実施形態に係る自動運転再開システム1によって実行される自動運転再開処理を説明する。
図2は、本実施形態に係る自動運転再開システム1による自動運転再開処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0025】
図2に示すように、ステップS101において、工作機械3で自動運転を停止する必要があるアラームが発生すると、ステップS103において、工作機械3は自動運転を停止する。このとき、工作機械3は、オペレータに自動運転が停止したことを知らせるためにアラームメッセージを出力して操作盤画面などに表示する。
【0026】
ステップS105において、コントローラ15は、工作機械3で出力されたアラームメッセージを取得し、再開可否情報とともに携帯端末5に送信する。工作機械3から出力されるアラームメッセージとしては、例えば、「アシストガス圧低下」、「空圧低下(ストップ)」、「ならい変位異常(+)」、「ピアス位置材料なし」等がある。この他にも「防護装置作動」、「サイドドア開」、「ワークズレ」、「ワーク反り」、「軸移動前OT(+)」等のアラームメッセージもある。このとき、コントローラ15は、カメラ11及びコントローラ15の接続情報や照合情報、識別情報を携帯端末5に送信してもよい。
【0027】
上記のようなアラームメッセージのうち、「アシストガス圧低下」、「空圧低下(ストップ)」のアラームメッセージは、ガスまたはエアーが不足して自動運転が停止した場合に表示される。ガスまたはエアーが発生装置から供給されている場合には、自動で再充填されるので、充填が完了すれば遠隔から自動運転を再開することができる。ただし、オペレータが携帯端末5から運転を再開するか否かを判断する必要がある。
【0028】
「ならい変位異常(+)」のアラームメッセージは、材料とレーザヘッドの距離を一定に保つセンサが誤検知して自動運転が停止した場合に表示される。例えば、加工点でプラズマの発生などによって一時的に停止閾値を超えた場合が考えられる。センサが誤検知しているので、オペレータがカメラ11の映像で問題がないことを確認できれば、遠隔から自動運転を再開することができる。
【0029】
「ピアス位置材料なし」のアラームメッセージは、材料の存在を検出するときの誤検知で自動運転が停止した場合に表示される。例えば、同一の場所を2回切断しようとして、切断溝を材料なしと判断した場合が考えられる。この場合もセンサの誤検知なので、オペレータがカメラ11の映像で問題がないことを確認できれば、遠隔から自動運転を再開することができる。
【0030】
「防護装置作動」、「サイドドア開」のアラームメッセージは、防護装置の作動または遮断を検知して自動運転が停止した場合に表示される。この場合には、オペレータが工作機械3の前で安全確認を行う必要があるので、遠隔から自動運転を再開することはできない。
【0031】
「ワークズレ」、「ワーク反り」のアラームメッセージは、ワークの把持失敗を検知した場合や装置動作の異常を検知して自動運転が停止した場合に表示される。この場合には人手による復旧を行う必要があるので、遠隔から自動運転を再開することはできない。
【0032】
「軸移動前OT(+)」のアラームメッセージは、オーバートラベル(プログラム指令が加工範囲をはみ出す)などのプログラム修正が必要になって自動運転が停止した場合に表示される。プログラムの修正が必要なので、遠隔から自動運転を再開することはできないが、携帯端末5からプログラムを修正できるようにしてもよい。
【0033】
このように、上記のアラームメッセージは、それぞれオペレータが遠隔から自動運転を再開できるか否かによって予め分類されている。例えば、「アシストガス圧低下」、「空圧低下(ストップ)」、「ならい変位異常(+)」、「ピアス位置材料なし」の各アラームメッセージは、オペレータが遠隔から自動運転を再開できるアラームのアラームメッセージである。一方、「防護装置作動」、「サイドドア開」、「ワークズレ」、「ワーク反り」、「軸移動前OT(+)」の各アラームメッセージは、オペレータが遠隔から自動運転を再開できないアラームのアラームメッセージである。再開可否情報には、これらのアラーム毎に、遠隔から自動運転を再開できるか否かが記録されている。
【0034】
ステップS107において、コントローラ15は、携帯端末5から送信されてくる運転再開指令を受信できるように待ち状態で待機する。
【0035】
ステップS109において、携帯端末5は、アラームメッセージと再開可否情報を受信すると、
図3に示すように停止通知を表示画面に表示する。表示画面には、オペレータが工作機械3を識別するための識別情報である「MACHINE#1」と、運転状態を示す「停止中」と、停止理由を示すアラームメッセージの「アシストガス圧低下」が表示される。
【0036】
停止通知の他にも、携帯端末5は、工作機械3がオペレータの作業を必要とするときに通知を表示する。通知を表示するタイミングは、運転終了時、運転の残り時間が設定時間以下になった時、運転停止時、運転再開時などである。また、運転状態としては、「停止中」の他に「運転中」、「待機中」などがある。このような通知は、携帯端末5が画面オフの状態であっても表示される。
【0037】
ステップS111において、携帯端末5は、カメラ11で撮像されているリアルタイムの映像を、通信装置7を介して取得する。また、携帯端末5は、記憶部13に記憶されているカメラ11の映像のうち、アラームが発生した前後の映像も取得する。携帯端末5は、取得したリアルタイムの映像を直ちに表示画面に表示してもよいし、後述するステップS115でスタートボタン等とともに表示するようにしてもよい。
【0038】
ステップS113において、携帯端末5は、再開可否情報に基づいて、工作機械3の自動運転を遠隔から再開できるか否かを判断する。例えば、
図3に示すように、アラームメッセージが「アシストガス圧低下」の場合には、遠隔から自動運転を再開できるアラームのアラームメッセージであることが再開可否情報に記録されている。そこで、携帯端末5は、遠隔から自動運転を再開できると判断して、ステップS115に進む。
【0039】
一方、アラームメッセージが遠隔から自動運転を再開できないアラームのアラームメッセージである場合には、携帯端末5は、遠隔から自動運転を再開できないと判断して、本実施形態に係る自動運転再開処理を終了する。このとき、自動運転を遠隔から再開できない理由を携帯端末5の表示画面に表示してもよい。このように自動運転再開処理を終了した場合には、オペレータが工作機械3の設置場所へ行ってアラームを解消するための復旧作業を行った上で、工作機械3に設けられたスタートボタンを押すことで自動運転を再開することができる。
【0040】
ステップS115において、携帯端末5は、
図4に示すように、カメラ11で撮像されたカメラ画像41と、スタートボタン43と、ストップボタン45を表示画面上に表示する。カメラ画像41は、カメラ11で撮像されているリアルタイムの映像であるが、オペレータが操作することによって、アラームが発生した前後の映像を表示することもできる。
【0041】
スタートボタン43は、工作機械3の自動運転を再開させる場合に押下されるボタンであり、オペレータがスタートボタン43をタップすると、工作機械3の自動運転の再開を指令する運転再開指令が送信される。スタートボタン43は、ステップS113で自動運転を遠隔から再開できると判断された場合のみ表示されるので、遠隔から自動運転を再開できない場合には表示されない。
【0042】
ストップボタン45は、工作機械3の自動運転を停止させる場合に押下されるボタンであり、オペレータがストップボタン45をタップすると、工作機械3の自動運転の停止を指令する運転停止指令が送信される。
【0043】
また、携帯端末5は、アラームメッセージに基づいて、アラームの解決方法を表示画面に表示してもよい。例えば、アラームメッセージが「空圧低下(ストップ)」の場合には、以下のような解決方法を表示する。
「エアー元の圧力確認(残圧排出弁)、圧力メータの確認(緑のマーク内)、圧力スイッチの動作確認後、スタートボタンを押して下さい。アラームが解除されます」
【0044】
また、アラームメッセージが「ならい変位異常(+)」の場合には、以下のような解決方法を表示する。
「加工開始後、加工ヘッドが材料に乗り上げて+方向に上がりました。原因を取り除き、NCリセットボタンかスタートボタンを押すとアラームは解除されます」
このようなアラームの解決方法は記憶部13に記憶されているので、携帯端末5は、記憶部13から解決方法を取得して表示する。
【0045】
ステップS117において、携帯端末5は、スタートボタン43が押下されたか否かを判定し、スタートボタン43が押下された場合にはステップS119へ進む。一方、スタートボタン43が押下されず、工作機械3に設けられたスタートボタンを押すことで自動運転を再開した場合やリセットボタンで自動運転を終了した場合には、本実施形態に係る自動運転再開処理を終了する。
【0046】
ステップS119において、コントローラ15は、携帯端末5から運転再開指令を受信したか否かを判断し、受信していない場合には継続して運転再開指令を受信したか否かを判断する。そして、運転再開指令を受信すると、コントローラ15はステップS121へ進み、工作機械3の自動運転を再開して本実施形態に係る自動運転再開処理を終了する。
【0047】
[実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る自動運転再開システム1では、携帯端末5が、自動運転の停止理由を示したアラームメッセージと、カメラ11で撮像された画像を携帯端末5の表示画面に表示する。そして、自動運転を遠隔から再開できるか否かをアラーム毎に記録した再開可否情報に基づいて、自動運転を遠隔から再開できる場合には、オペレータが工作機械3の自動運転を再開させる操作を行う。この操作が行われると、携帯端末5は、自動運転の再開を指令する運転再開指令を送信し、工作機械3は運転再開指令を受信すると、自動運転を再開する。これにより、工作機械3の加工領域を撮像した画像と自動運転が停止した理由を携帯端末5で確認できるので、オペレータは目視で工作機械3の状況を直接確認する必要がなくなり、遠隔から工作機械3の自動運転を再開することができる。したがって、アラームの発生によって工作機械3の自動運転が停止した場合であっても、遠隔から自動運転を再開することができる。また、製品を破損する恐れがあるような自動運転を遠隔から再開することが好ましくないアラームの場合には、再開可否情報を参照することによって、遠隔から自動運転を再開することが防止されるので、製品の破損を未然に防止することがきる。
【0048】
また、本実施形態に係る自動運転再開システム1では、再開可否情報に基づいて工作機械3の自動運転を遠隔から再開できる場合には、自動運転を再開させるためのスタートボタン43を携帯端末5の表示画面に表示する。そして、オペレータがスタートボタン43を押下すると、運転再開指令をコントローラ15へ送信する。これにより、オペレータがスタートボタン43をタップするだけで、容易に工作機械3の自動運転を再開させることができる。また、自動運転を遠隔から再開できる場合のみ、スタートボタン43が表示されるので、工作機械3の自動運転が誤って再開することを防止できる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る自動運転再開システム1では、自動運転を停止させるためのストップボタン45を携帯端末5の表示画面に表示する。これにより、オペレータがストップボタン45をタップするだけで、容易に工作機械3の自動運転を停止させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る自動運転再開システム1では、アラームが発生した前後にカメラ11で撮像された画像を携帯端末5の表示画面に表示する。これにより、オペレータは、アラームが発生した前後の加工領域の状態を確認することができるので、アラームが発生した理由をより確実に把握することができる。
【0051】
さらに、本実施形態に係る自動運転再開システム1では、アラームメッセージに基づいて、アラームの解決方法を携帯端末5の表示画面に表示する。これにより、オペレータは表示された解決方法を利用して迅速にアラームを解決することができる。
【0052】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
1 自動運転再開システム
3 工作機械
5 携帯端末
7 通信装置
11 カメラ
13 記憶部
15 コントローラ
17 加工領域
41 カメラ画像
43 スタートボタン
45 ストップボタン