IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メトローム・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7507233分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するための方法および装置
<>
  • 特許-分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するための方法および装置 図1
  • 特許-分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するための方法および装置 図2
  • 特許-分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するための方法および装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/38 20060101AFI20240620BHJP
   G01N 30/64 20060101ALI20240620BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20240620BHJP
   G01N 27/49 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01N27/38
G01N30/64 C
G01N27/28 321F
G01N27/49
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022513327
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2020074014
(87)【国際公開番号】W WO2021038004
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】19194395.0
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515090684
【氏名又は名称】メトローム・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】METROHM AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エスピノーサ,ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア・デ・ラ・フエンテ,ヘスス
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-534875(JP,A)
【文献】特開昭58-079155(JP,A)
【文献】特開平11-083821(JP,A)
【文献】特表2009-533690(JP,A)
【文献】特開平07-209250(JP,A)
【文献】特開平11-271276(JP,A)
【文献】特開昭63-122942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
G01N 30/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するための方法であって、
a)前記分析物溶液のクロマトグラフィ分離を行うステップと、
b)前記クロマトグラフィ分離から、作用電極(10)と対電極(11)と参照電極(13)とを有する電気化学フロースルーセル(8)を通って、溶離液を伝達するステップと、
c)直流(DC)モードで実行されるアンペロメトリ検出によって、前記溶離液中の前記少なくとも1つの分析物種の量および/または濃度を決定するステップであって、検出電位が前記クロマトグラフィ分離の全時間にわたって印加されるステップと、
d)前記作用電極に少なくとも1つの周期電位を印加することによってオンラインで前記作用電極(10)を洗浄するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、第1の分析物溶液と、合計で最大n個の分析物溶液とを備える、一連の分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するためのものであり、前記ステップa)~d)が連続して前記分析物溶液の各々について実行され、合計n個の実行になる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が自動化される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの分析物種は、イオンある、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記作用電極(10)は金電極である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記参照電極(13)はAg/AgCl電極である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
DCモードでの定電位は、-1.5~1.3Vである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
DCモードでの定電位は、0.1~0.6Vである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記周期電位における前記作用電極に印加される最小電位は、-1.1V以上、1.1V以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記周期電位の掃引速度は±1V/s以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶離液が脱気される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1の分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するための装置であって、イオンクロマトグラフィ分離ユニット(2)と、電気化学フロースルーセル(8)と、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法のステップを実施するように適合された手段と、を備える、装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置に、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法の前記ステップを実施させるための命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムが保存されている、コンピュータ読取可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィ分離およびその後の電気化学検出の使用による溶液分析の技術分野に関する。このような分析は、たとえば食品の品質制御を行うのに極めてふさわしい。
【背景技術】
【0002】
1つまたは複数の測定電極を備える電気化学分析セルは、クロマトグラフィ分離を受けた分析物溶液中の分析物種を分析するために現在用いられている。しかしながら、試料溶液中の表面活物質の存在は、電極表面上における表面残留層の形成をもたらし、電極の不動態化または電極表面状態の変化につながる。これは、このような測定電極が延長された期間にわたって使用された後、特に、一連の試料溶離液における測定のために測定電極が連続して使用されるとき、かなりの信号損失またはさらには測定誤差を生じさせる。したがって、清浄で再現性のある電極表面のメンテナンスは、意義ある電気分析測定を行う上で非常に重要である。
【0003】
従来、表面残留層の除去および電極の再活性のために様々な電極洗浄技術が用いられており、とりわけ、ex situの電極表面の機械的研磨が最も簡単な方法であることがわかっている。しかしながら、研磨中の電極表面の有害な擦傷および劈開は、電気分析測定結果にかなりの影響を及ぼし、測定誤差をもたらす。さらに、電極の機械的研磨は、このような電極を分析セルから取り外すことを必要とし、長期にわたるシステムの停止につながり、測定効率を低下させる。
【0004】
また、電解分析セルを洗浄するために測定電極と補助電極との間に電位を印加することが提案されている。たとえば、Kotnikらは、炭水化物のパルス電気化学検出における金電極の陰極再活性について議論している(J.Electroanalyt.Chem.、(2011)、doi:10.1016/j.jelechem.2011.09.026)。筆者は、20ms未満に及ぶ、+0.2V対Ag/AgClの電位および-1.4~-2.0Vの間の短い洗浄/再活性電位における検出ステップからなる、二段階電位波形(two-step potential waveform;2PAD)を開発した。しかしながら、矩形波形として印加されるこのような陰極電位は、電極の摩耗を加速させ、高精度測定における安定した結果を保証できなくなり、典型的には様々なマトリックスおよび濃度を有する分析物溶液のその後のクロマトグラフィ分離が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、先行技術に存在する不都合を克服することが、本発明の目的である。特に、各検出段階の後に最小限のシステム停止時間でin situの電極の洗浄および脱不動態化を実現する、アンペロメトリ検出によって、溶液中の少なくとも1つの分析物種を検出することが、本発明の目的である。さらに、延長された期間にわたって繰り返し行われる場合であっても、このような測定の結果の正確性を向上させることが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項の構成を有する、分析物溶液中の、好ましくは連続的に分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するための方法および装置、コンピュータプログラム、ならびにこのようなコンピュータプログラムが保存されたコンピュータ読取可能媒体によって達成される。
【0007】
本発明に係る、分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するための方法は、
a)分析物溶液のクロマトグラフィ分離を行うステップと、
b)クロマトグラフィ分離から、作用電極と補助電極と参照電極とを有する電気化学フロースルーセルを通って、溶離液を伝達するステップと、
c)アンペロメトリ検出によって、好ましくはクロノアンペロメトリ検出によって、溶離液中の少なくとも1つの分析物種の量および/または濃度を決定するステップと、
d)作用電極に周期電位を印加することによって作用電極を洗浄するステップとを含む。
【0008】
HPLCまたはイオンクロマトグラフィなどのクロマトグラフィ分離によって、溶離液中の分析物の分析可能なマトリックスが得られる。異なる分析物は、異なる時間で溶出される。たとえば、食品試料中に存在する糖、アルコールまたはイオンは、分離され、溶離液中で適当な濃度で溶解され得る。溶離液は、たとえばポンプまたはフローインジェクタによって、電気化学フロースルーセルを通って伝達される。溶離液がたとえばフローインジェクタによって、連続的に電気化学フロースルーセルを通って伝達されるとともに、決定ステップc)が以下に説明されるように行われることが好ましい。
【0009】
アンペロメトリ検出による分析物種の決定は、溶離液を伝達する間における電解電流を時間の関数として測定するステップと、電解電流と決定されることとなる少なくとも1つの分析物種について予め生成された校正関数とを比較することによって、分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種の量および/または濃度を決定するステップと、を含む。
【0010】
続く洗浄は、作用電極に周期電位を印加することによって実行される。「周期電位」(サイクリックボルタンメトリ(cyclic voltammetry)、CVとも呼ばれる)という用語は、本明細書において、動電位電気化学処理の一種を意味する。サイクリックボルタンメトリ実験において、作用電極電位は、時間に対して直線的に傾斜する。サイクリックボルタンメトリが設定電位に到達するとき、作用電極の電位の傾斜は逆転する。逆転は、単一実験の間に多数回起こり得る。作用電極における電流は、印加された電圧に対してプロットされて、サイクリックボルタモグラムトレースを与え得る。溶媒、電解質および特定の作用電極材料の組み合わせが電位の範囲を決定する。電極は、典型的には、サイクリックボルタンメトリの間、攪拌されない溶液中で静止しており、動かない。
【0011】
電気化学フロースルーセルをたとえば溶離液でリンスする間に、周期電位がオンラインで印加される。そのため、機械的研磨または定電位洗浄のために装置から電極を取り外すことは不要になる。次の測定までの間の長い待ち時間を回避することができ、スループット効率を向上させることができる。
【0012】
繰り返し段階的に増加/減少される電位による洗浄は、他の洗浄手順、たとえば矩形波電位のパルス印加の適用と比較して、より温和である。周期電位を用いることによって、ある量の水素が生成され、電極の電気二重層を通過し得るため、金属酸化物、たとえば酸化金を形成する。しかしながら、金属酸化物のその後の還元によって、金属は均質に、したがって好ましく、電極表面を再コーティングし得る。その結果、連続的な実行、効率および金電極の寿命が改善される。
【0013】
洗浄目的のCV技術の使用の別の好影響は、電極表面の状態を必要に応じてステップの各シーケンス後に確認し、経時的に監視することができるということである。
【0014】
上記方法が、第1の分析物溶液と、合計で最大n個の分析物溶液とを含む、一連の分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するのに好適であり、ステップa)~d)が連続して分析物溶液の各々について実行され、合計n回の実行になることが好ましい。「n」によって、我々は、任意の自然数≧2を意味する。
【0015】
多数の試料が処理されることとなるとき、提示された方法の利点が最も顕著になることは言うまでもない。この場合、時間の節約がより重要になる。上述されたように、洗浄目的のために作用電極を取り外すことは必要とされない。測定ステップ間の再校正が実行されないことも好ましい。このような再校正は、連続的にメンテナンスされた(洗浄および再活性された)電極表面によって、不必要になる。また、処理時間が短くされ、スループット効率を改善することができる一方、測定結果の正確性は損なわれない。上述された方法が自動化される場合、有利である。
【0016】
アンペロメトリ検出が直流(DC)またはパルスアンペロメトリ(PAD)モードで実行されることがさらに好ましい。
【0017】
パルスアンペロメトリ検出(PAD)は、炭水化物(糖、アルコール)などの大きな分子の分析に特に好適である。このような分子は電極表面上で分解されるとき、好ましくはパルス電圧によって除去される、重い沈着物をもたらす。一方で、直流(DC)測定または定電位アンペロメトリは、小さいイオンなどの不安定な化合物を検出するのに好適である。両方の測定モードが本願の範囲内にある。しかしながら、提案された決定シーケンスがDCモード測定を含み、検出電位が好ましくはクロマトグラフィ分離の全時間にわたって印加されることがより好ましく、好ましくは、検出電位は、1分より長く、特に1分~1時間の期間の間、好ましくは3分~50分間、より好ましくは5分~40分間印加される。DCモードで小さいイオンの量/濃度を分析するとき、測定電位(DCモード)および各洗浄サイクルにおける電位窓(周期電位)が決定シーケンスのすべての繰り返しについて全く同じであることが特に理に適っている。したがって、作用電極が徹底的に洗浄されることは十分ではない。その金属表面は、高度の均質性を維持するべきである。
【0018】
本発明の有利な実施形態において、少なくとも1つの分析物種は、イオン、好ましくは非金属イオン、特に、亜硫酸塩(SO3 2-)、シアン化物(CN-)、硫化物(S2-)およびヨウ化物(I-)の群から選択されるイオンである。上記に概説されたように、任意選択的に(DC)測定と組み合わせられる電極表面の温和な洗浄は、小さいイオンの分析に特に好適である。挙げられた、亜硫酸塩(SO3 2-)、シアン化物(CN-)、硫化物(S2-)およびヨウ化物(I-)は、しばしば、たとえば食品に関する、規制条項および品質努力の対象になる。したがって、優れた再現性を有する高スループット分析のための高度に自動化された手順が必要とされる。これらの要求は、本方法、装置およびソフトウェアによって満たされることができる。
【0019】
分析結果をさらに改善するために、クロマトグラフィ分離に先立って、試料を処理および/または精製することが有利であり得る。好ましい技術は、限界濾過または透析を含む。したがって、本発明の局面は、上述された方法であって、ステップa)に先立って、好ましくは限界濾過および/または透析によって、分析物溶液を処理および/または精製する準備ステップが実行される方法に関する。
【0020】
作用電極は、幅広い分子の酸化に優れた電解触媒である、金電極であり得る。参照電極は、Ag/AgCl電極であり得る。代替例として、Pd電極などの参照電極が試された。本明細書に記載されるような実験において、それらの性能は全体的に安定していないことが示された。Pd系参照電極を用いたとき、作用電極の再活性は、徹底したリンスの下でより多くの再活性サイクルを必要とし、結果(サイクロボルタモグラム)の再現性が乏しくなることが指摘され得る。
【0021】
上述された方法において、DCモードでの定電位は、-1.5~1.3V、好ましくは0.1~0.6V、より好ましくは0.2~0.4Vの範囲であり得る。この範囲内での、DC測定、すなわち定電位の印加は、イオン、たとえば上記に示されたもの、標準溶離液(典型的には、100~500mM NaOH/100~500mM 酢酸ナトリウム)および関連する電極のセットに非常に好適であることがわかっている。
【0022】
上述された方法において、電位サイクルにおける作用電極に印加される最小電位は、好ましくは-1.1V以上、1.1V以下であり、より好ましくは、周期電位は-0.8V~0.8Vの範囲にあり、さらにより好ましくは、最小電位は-0.6Vであり、最大電位は0.7Vである。適度な洗浄電位は、電極の劣化を遅くし、電極の長寿命を保証する。
【0023】
印加される周期電位の掃引速度が±1V/s以下、好ましくは±0.5V/s以下、より好ましくは±0.2V/s以下であるとき、有利である。どちらかといえば遅い掃引速度は、電極の劣化を防ぎ、表面の温和な再活性および均質化を助ける。同じ理由で、陰極および陽極の掃引速度は同一の絶対値を有することが好ましい。掃引速度が一定に保たれる場合、印加される電圧は対称面を有する三角形関数によって表されることができる。
【0024】
クロマトグラフィ分離のための溶離液は、特にクロマトグラフィカラムに送液されるのに先立って、脱気されることが好ましい。これは、金属酸化物、特に酸化金の形成を低減するのに有益である。このような酸化物の形成は、溶離液中の酸素の存在に起因し、電極劣化を加速させ得る。
【0025】
本発明は、さらに、イオンクロマトグラフィ分離ユニットと、電気化学フロースルーセルと、上述の方法のステップを実施するように適合された手段とを備える、第1の分析物溶液中の、好ましくはn個の分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するための装置に関する。
【0026】
任意選択的に、装置は、分析物溶液を処理または精製するための処理または精製ユニットを含んでもよい。このような処理または精製ユニットは、クロマトグラフィ分離ユニットの上流に設けられ得る。例として、処理または精製ユニットは、精密濾過装置または透析セルであり得る。
【0027】
特に、クロマトグラフィ分離ユニットはイオンクロマトグラフィのために設計されてもよく、電気化学フロースルーセルは好ましい上述の電極のセットを備える。溶離液は、クロマトグラフィ分離ユニットの上流に位置決めされた溶離液脱気装置によって脱気されてもよい。
【0028】
方法のステップを実施するように適合された手段に関して、このような手段は、装置に方法のステップを実施させるための命令を含む、コンピュータプログラムを含んでもよい。したがって、本発明の局面は、上記装置に上記方法のステップを実施させるための命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0029】
コンピュータプログラムは、コンピュータ読取可能媒体に保存され得る。本発明は、このような媒体にも関する。
【0030】
本発明は、以下の実施例および図によってよりよく理解されるであろう。本発明は、これらの実施例および図によって説明されるような特定の実施形態に限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係る、n個の分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するための装置の概略図である。
図2】本発明に係る電気化学フロースルーセルにおける電極配置の概略図である。
図3】本発明に係る方法または装置によって得ることができる例示のクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明に係る、n個の分析物溶液中の少なくとも1つの分析物種を決定するための装置の概略図を示す。亜硫酸塩(SO3 2-)を含む複数の試料が、1mM ホルムアルデヒド/0.02mM NaOHの溶媒中で安定化され、6℃の温度に保たれ、試料交換器1によって提供された。装置は、イオンクロマトグラフィカラム2をさらに有する。本実施例においては、Metrohmから商業的に入手可能である「Metrosep Carb 2-150/4.0」というカラムが用いられた。クロマトグラフィ分離のために用いられた溶離液は、容器3に提供された。本実施例においては、300mM NaOH/300mM 酢酸ナトリウムが用いられた。溶離液は、脱気装置4で脱気された。溶離液は、高圧ポンプ6によって注入バルブ5に伝達された。リンスモードにおいて、溶離液および/または任意の標準液を、クロマトグラフィカラム2に、および検出器7上に直接送ることができる。検出器7は、目的のイオンのアンペロメトリ検出のための電気化学フロースルーセルを備える。
【0033】
図2は、本発明に係る電気化学フロースルーセル8における電極配置の概略図を示す。電気化学フロースルーセル8は、金の作用電極10と、ステンレス鋼の対電極11と、Ag/AgClの参照電極13(ウォールジェット電極(wall-jet electrodes))とを有する。試料溶液のクロマトグラフィ分離を行うとき、試料溶液は、分離カラム上へ注入されて(3μL注入体積)、クロマトグラフィが実行され(0.5mL/分)、分離された分析物種9が電気化学セル内へ連続的に注入された。設定された電気化学セルの電位は、直流測定モードで、0.3Vであった。クロマトグラフィおよびアンペロメトリ検出は、いずれも35℃の温度で実行された。クロマトグラムを得るために、電解電流が測定され、時間の関数としてプロットされた。
【0034】
図3は、例示の方法および装置によって得ることができるクロマトグラムを示す。x軸は時間を(分で)示し、y軸は電流を(μAで)示す。電流のピークは予め生成された校正関数と比較され、ピーク14は亜硫酸塩に関連するものと特定された。
【0035】
図1に示された装置は、完全に自動化された方法で、上述の一連のシーケンスを実行するように構成される。装置は、本発明に係る方法のステップをn回実施するように適合される手段(図示せず)を備える。特に、手段は、装置に異なるクロマトグラフィ段階およびアンペロメトリモードを適用させるための命令を有するコンピュータプログラムを走らせるコンピュータを含む。このようなコンピュータプログラムによって、周期電位を印加することによって、作用電極がオンラインで、すなわち検出の後すぐに洗浄されるように、測定ステップに次ぐ洗浄ステップが進められる。本実施例において、各周期電位は、-0.6Vの最小値から始まって、0.1V/sの掃引速度で0.7Vの最大電圧まで増加され、ここで傾斜が逆転する。電位は、-0.1V/sの掃引速度で減少した。
【0036】
説明された電位サイクルは、各決定シーケンス後に5回繰り返された。最後の洗浄サイクルの後、第2の分析種溶液のために、次の決定シーケンスが自動的に始まった。シーケンスの合間における電極の研磨または再校正は必要とされない。
図1
図2
図3