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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】断熱材料及びその方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20240620BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240620BHJP
【FI】
B32B5/26
H01M10/658
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022525144
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 CN2019114753
(87)【国際公開番号】W WO2021081901
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ミンジュ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ピンファン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヅァオガン
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/090659(WO,A1)
【文献】特開平05-321150(JP,A)
【文献】実開平03-048195(JP,U)
【文献】特表2021-524404(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031005(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0307670(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0157648(US,A1)
【文献】特表2007-503335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0203552(US,A1)
【文献】国際公開第2014/192733(WO,A1)
【文献】特表2014-526985(JP,A)
【文献】特表2020-514098(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188276(WO,A1)
【文献】特開2015-151100(JP,A)
【文献】特表2013-507735(JP,A)
【文献】特開2010-101234(JP,A)
【文献】特開2003-183964(JP,A)
【文献】特開2003-183961(JP,A)
【文献】特開2003-183960(JP,A)
【文献】国際公開第2009/081760(WO,A1)
【文献】特開2014-224648(JP,A)
【文献】特開2008-005901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
D01F 9/08 - 9/32
D04H 1/00 - 18/04
F16L 59/00 - 59/22
H01M 10/52 - 10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱物品であって、
酸化ポリアクリロニトリル繊維を含む複数の非溶融性繊維を含有するコア層と、
前記コア層上に配置された補強層であって、複数の酸化ポリアクリロニトリル繊維とポリフェニレンスルフィドまたはポリエチレンテレフタレートを有する繊維との組み合わせを含む補強層と、を含み、
前記断熱物品が、ASTM D822による少なくとも0.75ニュートン/ミリメートルの引張強度、及びASTM D1938下での少なくとも2ニュートンの引裂強度を有し、
前記断熱物品が、85%の相対湿度及び30℃の温度において少なくとも15M-オームの表面電気抵抗率を有し、
前記断熱物品が、ASTM C522による、最大2000MKS Raylsの通気抵抗を有し、
前記断熱物品が、UL94-V0の燃焼性評価を示す、断熱物品。
【請求項2】
前記補強層が、複数の酸化ポリアクリロニトリル繊維と前記酸化ポリアクリロニトリル繊維と網目状に絡み合ったポリフェニレンスルフィドを有する繊維とを含む、請求項1に記載の断熱物品。
【請求項3】
前記補強層が、前記酸化ポリアクリロニトリル繊維と網目状に絡み合ったポリエチレンテレフタレートを有する繊維を更に含む、請求項1に記載の断熱物品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の断熱物品によって少なくとも部分的に包囲されたバッテリーを含む、バッテリーアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
断熱物品が提供される。断熱物品は、電動ビークル(electric vehicles)のためのバッテリーコンパートメントなど、自動車用途及び航空宇宙用途において使用され得る。
【背景技術】
【0002】
極端な温度は、バッテリーの性能及び寿命を実質的に劣化させ得る。これは、屋外で使用及び保管される電動ビークルで使用されるバッテリーにとって特に関心事である。凍結温度は、ビークルの加速性能及び航続距離の両方を損なう可能性があり、高温は、パワーフェード及びバッテリー寿命の低下をもたらし得る。製造業者は、消費者がこれらのバッテリーが長年にわたって一貫して機能することを期待するようになったため、これらの技術的課題を軽減する負担を背負っている。
【0003】
リチウムイオンバッテリーは、競合するバッテリー技術と比較して高い電力密度を提供することができるが、それらの性能は、それらの比較的狭い作動温度範囲によって制限され得る。熱管理システムは、バッテリー温度が作動温度範囲外にあるときにオンに切り替わるチラー又はヒータと併せてサーモスタットを使用することによって作動温度を制御することができる。これらのデバイスは、バッテリー自体によって、又は二次バッテリーによって給電されてもよく、エネルギー集約的である傾向があり、バッテリー内の充電を枯渇させることを回避するために注意深く管理する必要がある。
【0004】
受動的な断熱材は、熱が外部環境に失われる速度を遅らせることによって、このエネルギー消費を低減するのに役立ち得る。これは、バッテリーの加熱又は冷却に関連する電力消費を低減するという補助的な利点を有し、バッテリー内のセル全体により均一な温度分布を提供し、制御されていない温度に関連する危険を低減する。
【発明の概要】
【0005】
断熱材は多くの技術的要件を有し、そのいくつかは驚くべきものである。第1に、効果的であるために、これらの材料は、十分に高いR値(その断熱特性の尺度)を必要とするだけでなく、十分な機械的強度も必要とする。この断熱材の引裂強度及び/又は引張強度を特徴とすることができるこの特性は、取り扱い及び設置されたときに断熱材がその完全性を維持することを可能にし、使用中に発生するバッテリー周辺の空間における小さな撓み及び変形に対する抵抗を提供する。
【0006】
第2に、断熱材は耐火性(fire resistant)であるべきである。最近のバッテリーは、高い電力密度を有し得、これがバッテリー構成要素が発火するリスクを増大させる。結果として、自動車製造業者は一般に、バッテリーの構成要素及びバッテリーの周りのコンパートメントがUL94-V0の燃焼試験に合格することを必要とする。
【0007】
第3に、断熱材は高い電気抵抗率を表示することが一般的に望ましい。電動ビークルのためのバッテリーパックは、使用中及び再充電中に高い電圧及び温度に供され得る。測定された電力漏れは、全システムの電気抵抗で割った電圧の二乗である。電力漏れを最小限に抑えるために、断熱材料が本質的に可能な限り電気抵抗を有することが有利である。
【0008】
第4に、十分な透過性を備えた断熱材を有することは、閉じ込められた水分を通気するために有益でもある。多くの材料は、高温から冷却されると、凝縮水を捕捉し、表面電気抵抗率の低下をもたらす。例えば、特定の断熱材料の電気抵抗率が、乾燥(25℃で20%のRH)したときの950M-オームから25℃で65%の相対湿度で調整したときの30M-オームに低下し得ることが見出されている。更に、多くの高電圧バッテリーシステムは、環境とシステム内部との間の圧力差の結果として、ハウジングの変形又は更に破裂を引き起こす可能性があるため、気密封止することができない。これらのバッテリーシステムは、気体に対して透過性であるが、液体水がバッテリーに入るのを防ぐ半透膜を使用する場合がある。
【0009】
1つの領域を改善することが別領域の性能を劣化させる可能性があるため、これらの要件のすべてに同時に対処することは困難であり得る。例えば、ホスフェート系難燃剤を用いたドーピングポリエステルは、耐火性を改善することができるが、これらの材料における水分取り込みを増加させ、それによってそれらの電気抵抗率を低下させる。ポリイミドフィルムなどの特定の材料は、湿度レベルの変化として高い電気抵抗率を保持することができる。しかしながら、これらのフィルムは通気性ではなく、断熱材料内に凝縮された水分を封じ込める場合がある。
【0010】
要するに、湿潤環境で高い電気抵抗率を保持しながら、十分な断熱性能及び機械的強度を有する受動的断熱材料が耐火性である必要性が残っている。
【0011】
第1の態様では、断熱物品が提供される。断熱物品は、複数の非溶融性(non-meltable)繊維を含有するコア層と、任意に、コア層上に配置された少なくとも1つの補強層と、を含み、断熱物品が、ASTM D822による少なくとも0.75ニュートン/ミリメートルの引張強度、及びASTM D1938下での少なくとも2ニュートンの引裂強度を有し、断熱物品が、85%の相対湿度及び30℃の温度において少なくとも15M-オームの表面電気抵抗率を有し、断熱物品がASTM C522による、最大2000MKS Raylsの通気抵抗を有し、断熱物品がUL94-V0の燃焼性評価を示す。
【0012】
第2の態様では、断熱物品によって少なくとも部分的に包囲されたバッテリーを含むバッテリーアセンブリが提供される。
【0013】
第3の態様では、電動ビークルバッテリーを断熱する方法であって、電動ビークルバッテリーを、断熱物品で少なくとも部分的に包囲することを含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】1つの例示的な実施形態による、断熱材の側面断面図である。
図2】別の例示的な実施形態による、熱封止された断熱材の側面断面図である。
図3】断熱材アセンブリの側面断面図である。
【0015】
明細書及び図面中の参照文字が繰り返して使用されている場合、本開示の同じ又は類似の特徴又は要素を表すことを意図している。当業者は多くの他の修正形態及び実施形態を考案することができ、それらは本開示の原理の範囲及び趣旨に含まれることを理解されたい。図は、縮尺通りに描かれていないことがある。
【0016】
定義
本明細書で使用するとき、
「周囲条件」は、23℃かつ101.3kPaの圧力を意味する。
「平均」は、特に指定しない限り、数平均を意味する。
「コポリマー」は、2つ以上の異なるポリマーの繰り返し単位から作られるポリマーを指し、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、及び星型(例えば樹状)コポリマーを含む。
不織布コア層の繊維の「平均繊維径」は、例えば走査型電子顕微鏡を使用して、繊維構造の1枚以上の画像を作製し、当該1枚以上の画像で明確に見える繊維の横方向の寸法を測定して、繊維径の総数を求め、その繊維径の総数に基づいて、平均繊維径を計算することにより測定される。
「不織布コア層」とは、個々の繊維又はフィラメントが相互に重なり合っているが、編布におけるような識別可能な状態ではない構造を呈するシート又はマットを形成する、繊維の絡まり又は点結合を特徴とする複数の繊維を意味する。
「ポリマー」は、少なくとも10,000g/molの分子量を有する、比較的高い分子量の材料を意味する。
「サイズ」は、所与の物体又は表面の最長寸法を指す。
「実質的に」は、少なくとも、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.999%、又は100%の量のように有意な程度を意味する。
「表面電気抵抗率」とは、実施例における表面電気抵抗率試験によって特徴付けられるように、その表面に沿った電流の流れにどの程度強く抵抗するかを定量化する材料の基本的特性を指す。
「厚さ」は、単層物品又は多層物品の両面の間の距離を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用する場合、「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、一定の状況下で一定の利点をもたらすことができる、本明細書に記載の実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下で好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記述は、他の実施形態が有用ではないことを含意するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から排除することを意図するものでもない。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、文脈上別段の明記がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。したがって、例えば、「a」又は「the」が付いた構成要素への言及には、構成要素及び当業者に公知のその等価物のうちの1つ以上を含んでもよい。更に、「及び/又は」という用語は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0019】
「含む」という用語及びそのバリエーションは、これらの用語が添付の記載に現れた場合、限定的意味を有しないことに注意されたい。また更に、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、本明細書では互換的に使用される。左、右、前方、後方、上部、底部、側、上方、下方、水平、垂直などの相対語が、本明細書において使用される場合があり、その場合、特定の図面において見られる視点からのものである。しかしながら、これらの用語は、記載を簡単にするために使用されるに過ぎず、決して本発明の範囲を制限するものではない。
【0020】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「実施形態」に対する言及は、その実施形態に関して記載される特定の機能部、構造、材料又は特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」又は「実施形態では」などの句の出現は、必ずしも本発明の同一の実施形態に言及しているわけではない。該当する場合、商品名は、全て大文字で記載する。
【0021】
断熱物品、アセンブリ、及び製造方法
広くは、提供される断熱物品は、断熱材を有する。図1に、一実施形態による断熱材を示し、以降では参照数字100で示される。断熱材100は、一対の補強層102、102の間に配置されたコア層101を含む。図示の実施形態では、コア層101は、不織繊維ウェブである。図示のように、補強層102、102は直径方向に対向しており、各補強層102は、コア層101にわたって延びており、コア層101に直接接触している。
【0022】
補強層102は、コア層101のみのものと比較して、全体的な断熱材100に改善された強度、靭性、及び/又は破砕性を提供することができる。後述するように、補強層102はまた、防火遮断特性などの代替機能を提供し得る。
【0023】
耐炎性を高めるために、コア層及び/又は補強層が非溶融性材料から作製されることが有利であり得る。例えば、コア層及び補強層のうちの1つ以上は、炭素質繊維を有する不織繊維ウェブから作製され得る。任意に、1つ以上のバインダーが、これらの層を互いに接着するのを助けるために、コア層及び/又は補強層内に配置される。別の例として、コア層は、炭素質繊維を有する不織繊維ウェブから作製され得るが、一方補強層は、熱可塑性フルオロポリマーフィルムである。
【0024】
コア層101及び補強層102、102は広い範囲に指定されており、これらの層の変形及び並び替えが可能であることを理解されたい。例えば、コア層101の主表面のうちの1つが露出されるように、補強層102のいずれか1つが省かれてもよい。更なる選択肢として、補強層102、102が2つの異なる組成又は構成を有することも可能である。
【0025】
図示の実施形態では、2つの補強層102、102は、コア層101によって分離され、互いに接触していない。代替実施形態では、補強層102、102を、未封止の断熱材100の1つ以上の周縁部に沿って互いに接合し、内部に不織布コア層101が存在する包被(envelope)又はパウチを形成することができる。同様に、補強層102、102が、1つの補強層の2つの半体であり得、この1つの補強層は、これらの2つの半体の間に不織布コア層101が配置された状態で、未封止の断熱材100の1つの周縁部に沿って折り返されたものである。
【0026】
図2は、図1の断熱材100と特定の類似点を持っている断熱材200を示す。断熱材100と同様に、断熱材200は、3層サンドイッチ構成において一対の補強層202の間に閉じ込められたコア層201を含む。図示されるように、断熱材200の周縁部204、204は、恒久的に圧縮されて、それぞれの縁部シールを形成する。
【0027】
好ましい実施形態では、縁部シールは、断熱材200の周囲全体に沿って延びる。あるいは、縁部シールは、断熱材200の周囲の一部分に沿ってのみ延びることができる。前者の場合、縁部シールは一対の補強層202の間に、その内部の弛緩した繊維と共に、不織布コア層201を、効果的に封入する。一般に、縁部封止領域は、断熱材200の大きな領域を圧縮することによって生じ得る断熱性能の低下を回避するために比較的狭い。
【0028】
補強層202は、固体又は多孔質であるかにかかわらず、弛緩した繊維を効果的に捕捉し、繊維が断熱材200から脱落するのを防ぐ。繊維の脱落は、製造業者及びエンドユーザの両方に汚染問題を導入するため、一般に望ましくない。コア層201の繊維が導電性である場合、脱落する繊維はまた、電流の意図しない経路を作り出す場合があり、この構成によって問題が回避される。
【0029】
補強層202、202の周縁部は、任意の既知の方法を使用して封止することができる。1つの方法は熱封止によるものであり、補強層202、202の外側に向く面に熱及び圧力を加えて、補強層202、202、及び不織布コア層201の両方における空隙を圧縮して押し出し、シールを形成するプロセスである。補強層202、202及び/又はコア層201は、いくつかの実施形態では、溶融時に縁部シール内の層の全てを相互貫入することができ、冷却されたときにシールを維持することができる、熱可塑性樹脂などの溶融性材料を含むか、又は含有することができる。
【0030】
他の縁部封止プロセスも可能である。例えば、縁部封止は、接合部において液相又は溶融相が存在することなく2つの表面が原子レベルで接合するプロセスである冷間溶接によって実現することができる。縁部シールはまた、接着剤で行うことができ、液体接着剤が、縁部シールに沿って補強層202、202及び不織布コア層201内の隙間を充填する。最後に、縁部封止はまた、超音波溶接によって、又はステッチング若しくは締結具の使用などによる機械的手段によって達成することができる。これらの方法のいずれも、コア層201から担持される弛緩した繊維の脱落を効果的に防止することができる。
【0031】
不織布コア層及び補強層は、同一の広がりを持つ必要はない。例えば、補強層202、202の周縁部が不織布コア層201の周縁部と重ならないように、補強層202、202は、不織布コア層201よりも面積を大きく作製することができる。周縁部は、断熱材200の外周部全体に沿って延びていてもよく、補強層202、202を含んでもよいが、不織布コア層201は含まなくてもよい。この構成は、コア層201の圧縮を低減し、コア層201からの繊維が完成品の外面上に露出するのを防ぐことができる。
【0032】
提供された断熱材は、バッテリーコンパートメント用途に有利である技術的特徴の組み合わせを示す。従来の解決策は、これらの特徴のいくつかを示し得るが、提供される断熱材は、それらのすべてを達成することができる。これは、これらの少なくともいくつかが互いに反比例する傾向がある材料特性であることが注目に値する。
【0033】
第1に、これらの断熱材は、取り扱い中及び使用中のそれらの構造的完全性を確保する特性を示す。従来の断熱材、特に、微細繊維を含有するものは、取り扱い及び設置されるときに摩耗若しくは引き裂かれる場合があり、望ましくない繊維脱落をもたらす。これは、熱可塑性繊維よりも一般的に脆い炭素質繊維に関して特に問題となる。
【0034】
断熱コア層を1つ以上の補強層と対にすることによって、ASTM D822に従って、少なくとも0.75ニュートン/ミリメートル、少なくとも2ニュートン/ミリメートル、少なくとも5ニュートン/ミリメートルの全体的な引張強度を有する断熱材を提供するか、あるいはいくつかの実施形態では、0.1ニュートン/ミリメートル、0.2、0.5、0.75、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5ニュートン/ミリメートル未満、それと等しい、若しくはそれを超える全体的な引張強度を有する断熱材を提供することが可能である。いくつかの実施形態では、提供される断熱材は、ASTM D1938-14に従って、少なくとも0.1ニュートン、少なくとも2ニュートン、少なくとも5ニュートンの全体的な引裂強度を有するか、あるいはいくつかの実施形態では、0.1ニュートン、0.2、0.5、0.7、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5ニュートン未満、それと等しい、若しくはそれを超える全体的な引裂強度を有する。
【0035】
提供される断熱材の構造的完全性を保存することに関連する別の特性は、可撓性である。所与の断熱物品の可撓性は、以下の実施例のセクションに記載されている可撓性試験を含む、いくつかの方法のいずれかを使用して測定することができる。試験は、ハンドル-O-メータと呼ばれる器具を使用し、これは、試料を所定の幅のスロットに機械的に圧縮するのに必要な力の量を測定する。好ましい実施形態では、断熱物品は、可撓性試験に従って測定されるとき、最大30グラム、最大40グラム、最大50グラムの可撓性を有するか、あるいはいくつかの実施形態では、10グラム、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60グラム未満、それと等しい、若しくはそれを超える可撓性を有する。
【0036】
第2に、提供される断熱材は、特に空気及び水蒸気に対して透過性である。好ましい実施形態では、断熱物品内のコア層及び各補強層は、透過性である。水分は、イオン性不純物の存在下でリチウムイオンバッテリー中の低レベルの腐食電流を誘導することが知られている。蒸気を逃がすために経路を作り出すことによって、これらの物品は、バッテリーコンパートメント内の水分の取り込み及びそのような水分の結果として生じ得る腐食電流を回避する。透過性構造はまた、バッテリーコンパートメント内で発火又は有害化学反応が生ずることになる加圧の危険性を低減する。これを反映すると、断熱物品は、ASTM C522に従って、最大100MKS Rayls、最大2000MKS Rayls、最大10,000MKS Raylsの通気抵抗を有するか、あるいはいくつかの実施形態では、10Rayls、20、50、70、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1200、1500、1700、2000、3000、4000、5000、7000、又は10000MKS Rayls未満、それと等しい、若しくはそれを超える通気抵抗を有することができる。
【0037】
第3に、提供される断熱材は、水分を本質的にはじく、又は水分の吸着に抵抗する材料から作製される。いくつかの実施形態では、この特性は、低い表面エネルギー、又は疎水性表面を有する材料若しくはサイジングを使用することによって増強され得る。水分の回避は、断熱物品の電気抵抗率を最大化する(すなわち、電気伝導度を最小化する)のに役立ち得る。この目的のために、断熱物品が、それらの乾燥状態で高い電気抵抗率を本質的に有する材料から作製されることも好ましい。
【0038】
いくつかの実施形態では、断熱物品は、85%の相対湿度及び30℃の温度において、少なくとも15M-オーム、少なくとも20M-オーム、少なくとも30M-オームの表面電気抵抗率を有するか、あるいはいくつかの実施形態では、10M-オーム、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、500、又は900M-オーム未満、それと等しい、若しくはそれを超える表面電気抵抗率を有する。
【0039】
最後に、本明細書に記載の断熱材は、難燃性(flame-resistant)及び/又は難燃剤(flame retardant)である。この特徴は、UL94-V0の燃焼性評価を示す断熱物品によって明らかになる。UL-94-V0の規格を達成するために、断熱物品の試料が以下の5つの基準:1)制御された火炎を適用後に、残炎時間が10秒以下であること、2)5つの試料についての合計残炎時間が、50秒以下であること、3)残炎又は赤熱燃焼のいずれかによって、取り付けクランプまで試料が燃焼しなかったこと、4)試料の落下した火の粉が、それらの下にある外科用綿の点火をもたらさなかったこと、5)試料が第2の制御された火炎を除去した後、30秒を超えて赤熱燃焼を示さなかったこと、のそれぞれを満たすことが必要である。
【0040】
UL-94-V0の評価は、その構成層が単独で、UL-94-V0の評価を達成しない場合でも、多層物品について達成されることが可能であり得る。更に、全体的な断熱物品の厚さは、物品がUL-94-V0の燃焼性評価を達成するかどうかにかなりの影響を及ぼし得る。例えば、比較的高密度のコア層を使用する物品が、UL-94-V0の評価を達成しない場合があり、一方比較的膨張したコア層を含有する物品がUL-94-V0の評価を達成する場合もあり、これは両方の場合において原材料が同一であってもそうである。
【0041】
図3は、断熱材300を組み込んだ断熱材アセンブリ350を示す。断熱材300、アセンブリ350内の層は、前述の断熱材100、200の構造及び特性を有することができる。また、断熱材アセンブリ350の断熱材300が電動ビークルバッテリーなどのバッテリーを少なくとも部分的に取り囲むバッテリーアセンブリも企図される。
【0042】
この例示的な断熱材300は、電動ビークルバッテリーコンパートメントで使用することができる。図3に示すように、断熱材300は、アルミニウム又は銅から作製され得るコンパートメント壁310によって上方から境界付けされている。任意に、及び示されるように、複数の埋め込まれたチャネル312は、コンパートメント壁310を通って延びている(図3のページの平面に垂直に)。チャネル312は、水などの液体冷却剤を循環させるために使用され得、これは、コンパートメント壁310の温度を制御するのに役立つ。
【0043】
示された構成では、コンパートメント壁310と断熱材300との間の界面は非平面である。好ましくは、図示されているように、断熱材は弾性的に圧縮可能であり、それが他の方法で不規則な輪郭を有する層と接触して配置されている平面層から空隙を作り出す可能性がある空洞内に拡張して、それを充填することができる。
【0044】
対向する側では、断熱材300は、熱シールド314によって下方から境界付けられ、熱シールド314は、断熱材300にわたって延び、かつ断熱材300に平坦に接触する。熱シールド314及びコンパートメント壁310のいずれか又は両方は、いくつかの既知の熱伝導性材料のうちのいずれかから作製することができる。好適な材料としては、アルミニウム及び銅などの金属を挙げることができ、これらの両方は、バッテリーコンパートメント上のホットスポットを非局在化するのを助けることができる。
【0045】
バッテリー用途が本明細書に例示及び説明されているが、提供される断熱材は、そのように限定される必要はないことを理解されたい。これらの断熱材はまた、内燃機関及び電気モータなどの他の用途における熱管理に使用され得る。
【0046】
本明細書に記載の断熱材を製造するために、任意の既知の組み立て方法を使用することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、コア層及び補強層は、ラミネート(lamination)プロセスによって互いに接着される。そのようなラミネートは、これらの層を一緒に結合するために、バインダー(下記のセクションに記載されるように)又は接着フィルムを使用してもよい。以下のセクションに記載されている1つ以上のバインダーは、粒子状バインダー又はバインダー繊維の形態で存在することができ、それらのいずれかをコア層又は補強層に組み込むことができる。別の可能性として、少なくとも1つのコア層又は補強層は、その構成成分において、すでにバインダーに似た特性を有してもよく、その場合、別個の接着剤又はバインダーが必要とされない。
【0048】
ラミネートは、熱及び/又は圧力の適用によって達成することができる。これは、コア層及び補強層を一対の加熱ローラーに通すことによって、又は油圧プレスの加熱プラテン間で層状構造を押圧することによって達成することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、熱は必要とされない。例えば、コア層と補強層は、2剤型接着剤を混合し、それをコア層又は補強層の主表面に沿って広げ、及び接着剤を周囲温度で硬化させることによって、互いにラミネート(laminated)させることができる。あるいは、化学線への曝露によって硬化される1剤型接着剤を使用してもよい。
【0050】
上記のラミネート方法の代わりに、又はそれに加えて、断熱物品内の層は、機械的相互作用によって互いに接着され得る。コア層及び補強層が、両方とも繊維状である場合、水流交絡又はニードルタックを使用して、これらの層の繊維をz軸方向に沿って(層の主表面に垂直に)相互に絡み合わせることができる。
【0051】
更に別の可能性は、これらのそれぞれの層内の繊維が作製される時点で相互に絡み合っている(又は網目状に絡み合っている)ように、同時に又は連続的にコア層及び補強層を製造することである。任意に、ウェブ内の繊維は、自己結合部などの繊維交点で一緒に結合されて、圧縮抵抗性マトリックスを提供することができる。そのような製造方法の例は、米国特許第5,298,694号(Thompsonら)、同第5,773,375号(Swanら)、及び同第7,476,732号(Olsonら)に記載されている。
【0052】
コア層
コア層は、耐火性であり、不織繊維ウェブに加工される複数の繊維を含有する。好ましい実施形態では、繊維は非溶融性繊維である。非溶融性繊維は、どんな温度でも液体にならない材料から作製される。場合によっては、これらのポリマーは、空気の存在下で加熱されると、最初に酸化するか又は別の方法で劣化するので、溶融しない。非溶融性繊維としては、炭素質繊維が挙げられる。炭素質繊維としては、炭素繊維、炭素繊維前駆体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
炭素繊維前駆体としては、酸化ポリアクリロニトリルなどの酸化アクリル前駆体が挙げられる。ポリアクリロニトリルは、炭素繊維を製造するために広く使用することができる有用なアクリル前駆体である。いくつかの実施形態では、ポリアクリロニトリルは、70重量パーセント(重量%)超、75重量%超、80重量%超、又は85重量%超のアクリロニトリル繰り返し単位を含有する。
【0054】
酸化ポリアクリロニトリル繊維以外の非溶融性ポリマー繊維もまた使用することもできる。このような繊維としては、レーヨンなどの脱水セルロース前駆体が挙げられる。非溶融性ポリマー繊維は、リグニン繊維を更に含む。リグニンは、モノリグノールとして知られる芳香族アルコールの複合ポリマーであり、植物由来である。モノリグノールモノマーとしては、p-クマリルアルコール、コニフェリルアルコール、及びシナピルアルコールが挙げられ、これらは様々に異なる程度にメトキシ化される。
【0055】
非溶融性ポリマー繊維としては、エポキシ、ポリイミド、メラミン、及びシリコーンなどの特定の熱硬化性材料を挙げることができる。綿、亜麻、麻、絹、及び獣毛などの天然繊維は、溶融することなく燃焼する。レーヨンは、セルロースから作製された人工絹である。セルロースが燃焼すると、二酸化炭素及び水が生成され、チャー(char)も形成され得る。
【0056】
炭素繊維前駆体は、ピッチ系前駆体もまた含む。ピッチは、多環芳香族分子及び複素環式化合物の複雑なブレンドであり、炭素複合体中の炭素繊維の前駆体又は炭素充填剤として使用することができる。いくつかの実施形態では、塩化ビニリデン樹脂及びフェノール樹脂を、炭素繊維の製造のための前駆体とすることができる。
【0057】
好ましい実施形態では、非溶融性繊維は、酸化ポリアクリロニトリル繊維を有する。酸化ポリアクリロニトリル繊維としては、例えば、商品名PYRON(Zoltek Corporation(Bridgeton,MO))及びPANOX(SGL Group(Meitingen,GERMANY))で入手可能なものが挙げられる。
【0058】
酸化ポリアクリロニトリル繊維は、アクリロニトリルと1種以上のコモノマーとのコポリマーを含有する前駆体繊維から誘導され得る。有用なコモノマーとして、例えば、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ビニルアセテート、及び塩化ビニルが挙げられる。コモノマーは、共重合前のモノマー混合物の全重量に対して、最大15重量%、14重量%、13重量%、12重量%、11重量%、10重量%、9重量%、又は8重量%の量で存在することができるか、あるいはいくつかの実施形態では、1重量%、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20重量%未満、それと等しい、若しくはそれを超える量で存在することができる。
【0059】
前駆体繊維の酸化は、最初に、前駆体繊維を高温で安定化させて繊維の溶解又は溶融を防止し、安定化された繊維を炭化して非炭素元素を除去し、最後に、更に高温で黒鉛化処理を行って不織繊維の機械的特性を向上させることによって達成することができる。本明細書で言及される酸化ポリアクリロニトリル繊維としては、部分的に酸化されたポリアクリロニトリル繊維又は完全に酸化されたポリアクリロニトリル繊維のいずれかが挙げられる。いくつかの実施形態では、国際特許公開第WO2019/090659号(Caiら)及び同時係属の国際特許出願第PCT/CN2018/096648(Liら)に記載されているように、複数の非溶融性ポリマー繊維は安定化される。
【0060】
コア層の非溶融性繊維は、繊維が相互に絡み合うことを可能にする繊維直径及び長さを有することができる。更に、繊維は、許容可能な程度の引張又は引裂強度を保つために、好ましくは十分な厚さ(又は直径)を有する。用途に応じて、繊維は、1マイクロメートル~100マイクロメートル、2マイクロメートル~50マイクロメートル、5マイクロメートル~20マイクロメートルの範囲の平均繊維直径を有することができるか、あるいはいくつかの実施形態では、1マイクロメートル、2、3、5、7、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、又は100マイクロメートル未満、それと等しい、若しくはそれを超える平均繊維直径を有することができる。
【0061】
比較的長い繊維を使用することは、繊維の脱落を低減させ、横断方向に沿ったコア層の強度を更に高めることができる。非溶融性ポリマー繊維は、10ミリメートル~100ミリメートル、15ミリメートル~100ミリメートル、25ミリメートル~75ミリメートルの範囲の平均繊維長さを有することができるか、あるいはいくつかの実施形態では、10ミリメートル、12ミリメートル、15ミリメートル、17ミリメートル、20ミリメートル、25ミリメートル、30ミリメートル、35ミリメートル、40ミリメートル、45ミリメートル、50ミリメートル、55ミリメートル、60ミリメートル、65ミリメートル、70ミリメートル、又は75ミリメートル未満、それと等しい、若しくはそれを超える平均繊維長さを有することができる。
【0062】
コア層を形成するために使用される非溶融性繊維は、典型的には圧縮されたバールの形態で提供されるバルク繊維から調製することができる。バルク繊維を、開放/混合機械の入口コンベヤーベルト上に置いて、開放/混合機械の中で、バルク繊維を引き裂いて離し、コームを回転させることによって混合することができる。次いで、繊維をウェブ形成機器にブローイングして、ドライレイドコア層を形成する。
【0063】
代替として、スパイクローラーを使用するエアレイ式形成装置(FormFiber NV,Denmarkから市販されているものなど)を使用して、これらのバルク繊維を含有する不織繊維ウェブを調製することができる。装置及びエアレイドウェブを形成する際の装置の使用方法の詳細は、米国特許第7,491,354号(Andersen)及び同第6,808,664号(Falkら)に記載されている。更なる代替として、コア層の不織布材料を、エアレイド機械で形成することができる。ウェブ形成機器は、例えば、Rando Machine Co.(Macedon,NY)から市販されているRANDO-WEBBERデバイスであってもよい。更に別の可能性は、エアレイ式ではなく、カーディング及びクロスラッピングによってドライレイドウェブを生成することである。カーディングは、バルク繊維が回転する鋸歯状ワイヤを覆うロールによってコーティングされ、結合されて布を形成するプロセスである。クロスラッピングは、クロスウェブ強度を改善するために使用され、水平型(例えば、Elbeuf sur Seine,76504 FranceのASSELIN-THIBEAUから市販されているPROFILE SERIESクロスラッパーを使用する)又は垂直型(例えば、Santex AG,Tobel,SwitzerlandからのWAVE-MAKERシステムを使用する)であり得る。
【0064】
非溶融性繊維は、所望の耐火特性及び断熱特性を有する断熱材を提供するのに十分な量で存在することができる。非溶融性繊維は、60重量%~100重量%、70重量%~100重量%、81重量%~100重量%の範囲内の量で存在することができるか、あるいはいくつかの実施形態では、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、又は95重量%未満、それと等しい、若しくはそれを超える量で存在することができるか、あるいは、100重量%以下の量で存在することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、コア層は、2つ以上の個別の繊維が結び付けられる、又は一緒に撚られるとき生じる、実質的な繊維交絡を含む。これらの交絡内の繊維は互いに物理的に付着されてはいないが、絡み合った繊維が反対方向に引っ張られたときに分離に抵抗するように、十分に撚り合わされ得る。
【0066】
繊維交絡は、一般に、それらが作製されるときにほとんどの不織布ウェブの平面に作り出されるが、厚さ寸法に沿った交絡は、特に複数の不織布層にわたってあまり一般的ではない。有利には、そのような交絡は、後続のニードルタック又は水流交絡プロセスによって誘発され得る。これらのプロセスは、コア層内の繊維がコア層の主表面に垂直な方向に沿って実質的に絡み合う交絡をもたらし、それによって、これらの方向に沿ってコア層の嵩高さを増強し強度を増大させることができる。
【0067】
コア層は、有刺ニードル(例えば、Foster Needle Company,Inc.(Manitowoc,WI)から市販されている)と共に、例えば、ドイツのDiloから商品名DILOで市販されているニードルタッカーを使用して交絡させることができ、それによって、上述の実質的に交絡した繊維が、ニードルタックされた繊維となる。ニードルパンチとも呼ばれるニードルタックは、ウェブを通して有刺ニードルのアレイを繰り返し通過させ、ウェブの繊維に沿って引っ張りながら有刺ニードルを引っ込めることによって、コア層の主表面に対して垂直な繊維を交絡させる。
【0068】
典型的には、コア層は、少なくとも5ニードルタック/cmの平均を提供するようにニードルタックされている。マットは、平均で、5ニードルタック/cm~60ニードルタック/cm、10ニードルタック/cm~約20ニードルタック/cmを提供するか、あるいはいくつかの実施形態では、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60未満、それと等しい、若しくはそれを超えるニードルタック/cmを提供するように、ニードルタック処理することができる。
【0069】
ニードルタックの更なる詳細は、米国特許公開第2006/0141918号(Rienke)、同第2011/0111163号(Bozouklianら)、及び同時係属の国際特許公開第2019/090659号(Caiら)に記載されている。
【0070】
コア層の不織布材料は、水交絡ユニット(Honeycomb Systems Inc.,Bidderford,MEから市販されており、米国特許第4,880,168号(Randall,Jr.)も参照されたい)を使用して水流交絡させることもできる。水流交絡は、水の微細な高圧ジェットをウェブに導くことを伴い、かつ不織布繊維の交絡を誘発するためにバッキングから再結合された、カーディング、エアレイイング、又はウェットレイイングによって作製された繊維ウェブの変換プロセスである。得られた結合布は、一般にスパンレース不織布と呼ばれる。
【0071】
任意に、コア層は、溶融性の二次繊維を更に含む。そのような二次繊維は、コア層の後続の溶融処理を可能にするのに十分に低い溶融温度を有するバインダー繊維を含む。バインダー繊維は一般に、ポリマーであり、均一な組成を有してもよく、又は2種以上の成分を含有してもよい。いくつかのバインダー繊維は、繊維の軸に沿って延び、かつ、円筒状シェルポリマーによって取り囲まれている、コアポリマーを有する二成分繊維である。シェルポリマーは、コアポリマーの溶融温度よりも低い溶解温度を有することができる。バインダー繊維は、あるいは単一のポリマーから作製されたモノフィラメント繊維であり得る。
【0072】
しかしながら、本明細書で使用するとき、「溶融(melting)」は、ポリエステルが接触することになる他の繊維と接合するのに十分に柔らかく、かつ粘着性になる高い温度における、繊維の、又は二成分シェル/コア繊維の場合には繊維の外面の漸進的な変換を指し、これらの繊維は、非溶融性繊維及び同じ特性を有する任意の他のバインダー繊維を含み、上記のように、より高い又はより低い溶融温度を有し得る。
【0073】
有用なバインダー繊維は、100℃~300℃の範囲内の溶融温度を有するポリマーを有する外面を有するか、あるいはいくつかの実施形態では、100℃、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は300℃未満、それと等しい、若しくはそれを超える溶解温度を有するポリマーを有する外面を有する。
【0074】
例示的な好適な二成分繊維は、低融点ポリオレフィンシースを有するポリエステル又はナイロンコアを有し得る。更なる例として、二成分繊維は、Invista North America S.A.R.L.,Wichita,KSによって提供されるType 254 CELBOND繊維などのポリエステル-ポリオレフィンコポリマーシースを有するポリエステルコアを有することができる。この繊維は、約230°F(110℃)の溶融温度を有するシース成分を有する。
【0075】
好適なバインダー繊維はまた、モノフィラメント構造のホモポリマー又はコポリマーを含むことができる。これらは、150℃未満の軟化温度を有する熱可塑性繊維(ポリオレフィン又はナイロンなど)を含む。他の好適な単成分繊維としては、260℃未満の軟化温度を有する熱可塑性繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維などの特定のポリエステル繊維など)が挙げられ、-例えば、Trevira GmbH,Hattersheim,Germanyによって提供されたTREVIRA276繊維である。
【0076】
バインダー繊維は、構成繊維が互いに物理的に付着されているノードから構成される3次元アレイを生成することによって、断熱材内の構造的完全性を増大させる。これらのノードは、巨視的な繊維ネットワークを提供し、それによって引裂強度、引張弾性率が増大し、最終製品の寸法安定性が維持され、繊維の脱落が低減される。好都合には、バインダー繊維を組み込むことにより、コア層の構造的完全性を維持しながら、嵩密度を低減することが可能になり、その結果、重量及び熱伝導率の両方が減少する。
【0077】
コア層における嵩高さ、圧縮性、及び/又は引裂抵抗を向上させるために、他の二次繊維が含まれてもよい。これらの二次繊維は、任意の好適な直径を有することができる。平均繊維径は、10マイクロメートル~1000マイクロメートル、15マイクロメートル~300マイクロメートル、20マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲であり得るか、あるいはいくつかの実施形態では、10マイクロメートル、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、150、170、200、250、300、400、500、750、又は1000マイクロメートル未満、それと等しい、若しくはそれを超えることができる。
【0078】
二次繊維は、それぞれの場合、コア層の全重量に対して、1重量%~40重量%、3重量%~30重量%、3重量%~19重量%の範囲の量で存在することができるか、あるいはいくつかの実施形態では、0重量%に等しいか若しくはそれを超えるか、又は1重量%、2、3、4、5、7、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50重量%未満、それと等しい、若しくはそれを超える量で存在することができる。いくつかの実施形態では、コア層は、二次繊維を含まない。
【0079】
酸化ポリアクリロニトリル繊維と二次繊維との好ましい重量比は、断熱材に、高い引張強度と引裂抵抗の両方、並びに、許容可能な難燃性、例えば、UL-94V0の火炎試験に合格する能力を与える。酸化ポリアクリロニトリル繊維と二次繊維との重量比は、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1であることができるか、あるいはいくつかの実施形態では、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、又は10:1未満、それと等しい、若しくはそれを超えることができる。
【0080】
熱伝導及び対流の全体的な効果を低減することにより、提供される断熱物品は、驚くほど低い熱伝導率係数を達成することができる。提供される断熱材のコア層は、ASTM D1518-85(再承認2003)に従って周囲条件において、0.035W/K-m未満、0.033W/K-m未満、0.032W/K-m未満の熱伝導率係数を示すことができるか、あるいはいくつかの実施形態では、0.031W/K-m、0.032W/K-m、0.033W/K-m、0.034W/K-m、又は0.035W/K-m未満、それと等しい、若しくはそれを超える熱伝導率係数を示すことができる。これらの範囲の熱伝導率係数は、コア層がその弛緩構成(すなわち、圧縮されていない)の状態で得ることができ、あるいは、ASTM D5736-95(再承認2001)に基づいて元の厚さの20%まで圧縮された状態で得ることができる。
【0081】
コア層の難燃性を最大化するために、酸化ポリアクリロニトリル繊維が、85体積%超、90体積%超、若しくは95体積%超を表すか、あるいはいくつかの実施形態では、85体積%、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100体積%未満、それと等しい、若しくはそれを超える複数の繊維がコア層に存在する、不織布材料を使用することが有利であり得る。
【0082】
好ましい実施形態では、酸化ポリアクリロニトリル繊維及び/又は二次繊維は捲縮されて、捲縮構成(例えば、ジグザグ形状、正弦波形状、又は螺旋形状)がもたらされる。あるいは、酸化ポリアクリロニトリル繊維及び二次繊維の一部又は全ては、直線的な構成を有する。捲縮される酸化ポリアクリロニトリル繊維及び/又は二次繊維の画分は、5%、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、又は100%未満、それと等しい、若しくはそれを超えることができる。捲縮は、欧州特許第0714248号(Allenら)に記載されているように、コア層の単位重量当たりの嵩又は体積を著しく増加させることができる。
【0083】
誘導された繊維交絡及び繊維捲縮の両方が、コア層の嵩高さの程度を著しく増加させることができる。例示的な実施形態では、コア層は、15kg/m~50kg/m、15kg/m~40kg/m、20kg/m~30kg/mの範囲の平均嵩密度を有するか、あるいはいくつかの実施形態では、15kg/m、16、17、18、19、20、22、24、25、26、28、30、32、35、37、40、42、45、47又は50kg/m未満、それと等しい、若しくはそれを超える平均嵩密度を有する。
【0084】
いくつかの実施形態では、コア層は、10gsm~2000gsm、15gsm~100gsm、20gsm~45gsmの範囲の坪量を有するか、あるいはいくつかの実施形態では、10gsm、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、又は2000gsm未満、それと等しい、若しくはそれを超える坪量を有する。
【0085】
コア層の寸法は特に限定されないが、一般に、用途に依存する。例示的な用途では、コア層は、1ミリメートル~100ミリメートル、2ミリメートル~50ミリメートル、3ミリメートル~20ミリメートルの全厚を有することができるか、あるいはいくつかの実施形態では、1ミリメートル、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、又は100ミリメートル未満、それと等しい、若しくはそれを超える全厚を有することができる。
【0086】
嵩高くされた不織繊維ウェブに基づくコア層は、場合によっては非常に圧縮性であり得る。圧縮性もまた、本発明のウェブが、断熱されている空間の中に押し込まれ、空間を完全に占有することを可能にするために有用であり得る。これらの材料はまた、圧縮時に良好な回復率を呈し得る。提供されるコア層は、米国特許第7,476,632号(Olsonら)で記載されているウェブ回復試験に基づくと、圧縮されたときにその元の厚さの60%超、70%超、80%超を回復することができるか、あるいはいくつかの実施形態では、50%、60、65、70、75、80、85、又は90%未満、それと等しい、若しくはそれを超えて回復することができる。
【0087】
補強層
様々な実施形態では、提供される断熱材は、コア層の一方又は両方の主表面にラミネートされるか、コーティングされるか、又は他の方法で取り付けられる少なくとも1つの個別の補強層を含む。この層は、断熱材の強度及び/又は靭性を向上させるように機能し、耐火性を改善し、コア層内の任意の弛緩した繊維における封止などの複数の目的を果たすことができる。補強層は、典型的には、コア層よりも薄く、より高い密度を有し、より高い引張強度を有する。
【0088】
固体又は多孔質フィルム、並びに繊維構造に由来するものを含む、様々な種類の補強層が企図される。繊維構造から誘導された層は、織布又は不織布ウェブのいずれかから作製することができ、任意に1つ以上のバインダーを含む。
【0089】
織布補強層は、織布及び編布を作製するために知られている方法を使用して作製することができ、不織布補強層は、メルトブロー、スパンレース、及びスパンボンド技術を含む任意の既知の技術を使用して製造することができる。
【0090】
不織布補強層は、絡まった、化学的に結合された、又は熱的に結合された繊維構造を有し、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンとポリプロピレン繊維の混合物、ナイロン繊維、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリアクリロニトリル繊維及びアクリロニトリルと塩化ビニルとのコポリマー繊維などのアクリル及びモダクリル繊維、ポリスチレン繊維、ポリビニルアセテート繊維、ポリ塩化ビニル繊維、レーヨン、セルロースアセテート繊維、ガラス繊維、ビスコース繊維、ポリアミド繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、及び「コア層」と題された前のサブセクションで記載された酸化ポリアクリロニトリルに基づく炭素質繊維のいずれかを含む多種多様な繊維のいずれかから製造することができる。
【0091】
上記の繊維の組み合わせも使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ポリフェニレンスルフィドの繊維は、酸化ポリアクリロニトリル繊維とラミネートされるか、網目状に絡み合わされる、又は絡まされて、頑丈で透過性で耐熱性の補強層を提供することができる。このブレンド構成では、補強層は、それぞれの場合、補強層の全重量に対して、1重量%~99重量%、30重量%~70重量%、又は45重量%~55重量%の酸化ポリアクリロニトリル繊維と1重量%~99重量%、30重量%~70重量%、又は45重量%~55重量%のポリフェニレンスルフィド繊維を有することができる。これらの組み合わせのいくつかは、他の箇所、例えば、米国特許公開第2018/0187351号(Tsuchikuraら)に記載されている。
【0092】
他の実施形態では、ポリエチレンテレフタレートの繊維は、酸化ポリアクリロニトリル繊維とラミネートされるか、網目状に絡み合わされるか、又は絡まされて、補強層を提供することができる。このブレンド構成では、補強層は、それぞれの場合、補強層の全重量に対して、1重量%~99重量%、30重量%~70重量%、又は30重量%~70重量%の酸化ポリアクリロニトリル繊維と1重量%~99重量%、30重量%~70重量%、又は30重量%~70重量%のポリエチレンテレフタレート繊維を有することができる。
【0093】
様々な実施形態では、補強層のそれぞれは、耐炎性繊維から構成される。繊維ガラスの繊維は前述のポリマーよりも良好な固有の耐火性を有するが、十分な量の難燃性添加剤とブレンドすることにより、可燃性ポリマーにもかなりの耐火性をもたらすことができる。例えば、これらの補強層は、耐炎性ポリエステル繊維から作製することができる。
【0094】
難燃性添加剤は、ホストポリマーと混和性又は不混和性のいずれかとすることができる。混和性添加剤としては、フェノール性末端基を含有するリン系難燃剤などのポリマー溶融添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、ポリホスホネートホモポリマー及びコポリマーを含むホスフィネート及びポリホスホネートを含み、これらはポリエステルと混和するようにブレンドして、耐炎性繊維を形成することができる。有用な添加剤は、FRX Polymers,Inc.(Chelmsford,MA)から商品名NOFIAで市販されている。混和性塩及び不混和性塩の両方を含めることは、耐火性を高めるのに有効であり得る。
【0095】
ホスフィネート、ポリマーホスホネート、及びそれらの誘導体に由来するものなどの混和性難燃性添加剤は、同時係属中の米国仮特許出願第62/746,386号(Renら)に記載されるように、微細繊維直径を有する補強層を作製するのに好ましい場合がある。ポリマー難燃剤は、その揮発性が低く、浸出傾向を減少させ、ベースポリマーとの改善された相容性のため、非ポリマー代替物よりも有利であり得る。
【0096】
好適な耐炎性繊維は、いくつかの実施形態では、このような繊維から100%作製され、250gsm未満の基本重量及び6ミリメートル未満のウェブ厚さを有する不織布ウェブに形成されたときに、UL94-V0の燃焼性規格に合格可能である。
【0097】
好適な補強層は繊維状である必要はない。補強層は、例えば、それらを通る空気透過を可能にするために穿孔された連続フィルム又はコーティングであり得る。本質的に耐炎性の材料に基づくフィルム及びコーティングが好ましい場合がある。例えば、不織布繊維コア層は、ポリイミド、ポリビニル(ポリ塩化ビニルなど)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、又は熱可塑性フルオロポリマー、例えば、3M Company,St.Paul,MNによって商品名「THV」で提供される、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンのコポリマー、から作製されたフィルム又はコーティングで補強され得る。
【0098】
他の有用な補強層は、米国特許第6,617,002号(Wood)、同第6,977,109号(Wood)、及び同第7,731,878号(Wood)に記載されている穿孔フィルムから作製することができる。補強層を使用するのに好適な穿孔フィルムとしては、ポリ塩化ビニル又はある程度の耐火性を示す他のポリマーから作製されたフィルムが挙げられる。
【0099】
穿孔フィルムは、1マイクロメートル~2ミリメートル、30マイクロメートル~1.5ミリメートル、50マイクロメートル~1ミリメートルの全厚を有してもよく、あるいはいくつかの実施形態では、1マイクロメートル、2、5、10、20、30、40、50、100、200、500、700マイクロメートル、1ミリメートル、1.1、1.2、1.5、1.7、又は2ミリメートル未満、これに等しい、若しくはこれを超える全厚を有してもよい。
【0100】
穿孔は、広範な形状及びサイズを有することができ、多様な成形、カッティング又は打ち抜き操作のいずれかによって生成することができる。穿孔の断面は、例えば、円形、正方形又は六角形であり得る。いくつかの実施形態では、穿孔は細長いスリットのアレイを有する。
【0101】
同時係属中の国際特許出願PCT/US18/56671号(Leeら、例えば図15a~c及び関連する記載を参照されたい)に記載されているように、穿孔は、長さに沿って一様な直径を有してもよいが、円錐台形状、切頭角錐形状、又は長さのうちの少なくともいくつかに沿って先細になった側壁を有するそれ以外の形状を有する穿孔を使用することが可能である。側壁が先細となる程度は、穿孔内に不均一な充填剤を収容するように選択され得る。穿孔が先細であることで、開口の一方の側、不均一な充填剤が穿孔フィルムを通って漏れるのを防止するのに役立ち得る特徴部も狭くなる。
【0102】
任意に、穿孔は互いに対して、一般に一様な間隔を有する。その場合、穿孔は、二次元格子パターン又は千鳥状パターンで配列してもよい。穿孔はまた、穿孔の位置が不規則であるが、それでもなお巨視的スケールでは、穿孔が壁全体にわたって均等に分布しているランダム化構成で、壁に配置することもできる。
【0103】
いくつかの実施形態では、穿孔は、壁全体にわたって本質的に一様な直径のものである。あるいは、穿孔は、直径のいくらかの分布を有し得る。いずれの場合でも、穿孔の平均最小直径は、10マイクロメートル、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、150、170、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、4000、又は5000マイクロメートルという値について、これら未満であっても、これらに等しくても、又はこれらより大きくてもよい。明確にするために記すと、非円形の孔の直径は、本明細書では、平面図で非円形の孔と同等の面積を有する円の直径として定義される。
【0104】
穿孔は、1cm当たり1~1cm当たり100、1cm当たり2~1cm当たり50、1cm当たり5~1cm当たり20の面密度を有することができるか、あるいはいくつかの実施形態では、1cm当たり1、2、3、4、5、7、10、12、15、17、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、又は100/cm未満、それと等しい、若しくはそれを超える面密度を有することができる。
【0105】
穿孔フィルムの多孔率は、フィルムが占めていない所与の体積の割合を表す無次元の数量である。簡略化された表現では、穿孔は円筒形であるとみなすことができ、その場合、多孔率は、平面図において穿孔によって置き換えられた壁の表面積の百分率によってよく近似される。例示的実施形態では、壁は、0.1%~80%、0.5%~70%、又は0.5%~60%の多孔率を有し得る。いくつかの実施形態では、壁は、0.1%、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80%未満、これに等しい、若しくはこれを超える多孔率を有する。
【0106】
補強層は、コア層よりも著しく薄くすることができる。断熱材の重量を最小限に抑えるために、補強層は、強度及び強靱性に関するいかなる技術的要件をも満足させながら、弛緩した繊維を受動的断熱材中に封入しておく目的を果たすのに必要なだけ厚く作製することができる。
【0107】
個々の補強層、又は組み合わせて使用される2つ以上の補強層は、0.01ミリメートル~2ミリメートル、0.1ミリメートル~1ミリメートル、0.5ミリメートル~1ミリメートルの全厚を有することができるか、あるいはいくつかの実施形態では、0.01ミリメートル、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1、1.2、1.5、1.7、又は2ミリメートル未満、それと等しい、若しくはそれを超える全厚を有することができる。
【0108】
個々の補強層、又は組み合わせて使用される2つ以上の補強層は、10gsm~100gsm、20gsm~80gsm、30gsm~70gsmの範囲内の坪量を有することができるか、あるいはいくつかの実施形態では、10gsm、12、15、17、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100gsm未満、それと等しい、若しくはそれを超える坪量を有することができる。
【0109】
バインダー
コア層及び/又は補強層は、任意に、補強層及びコア層を互いに結合することを補助するか、又は補強層若しくはコア層のいずれかを他の隣接する層又は基材に結合する少なくとも1つのバインダーを含む。バインダーは、微粒子で若しくは乳化形態で、又は場合によっては連続フィルムとして提供されてもよい。場合によっては、繊維脱落の問題を緩和させるために、バインダーは、断熱物品の、又はその構成層のいずれかの周縁部を縁部封止することを可能にすることができる。バインダーは、補強層、コア層、複数の補強層、及び/又は存在する任意の他の層若しくは基材の一方又は両方の主表面上に配置することができ、次いで、バインダーを溶融させるか、又は別の方法で活性化して、対向する層の表面を互いに結合させることができる。
【0110】
例示的なバインダーとしては、ポリマーバインダーが挙げられる。ポリマーバインダーとしては、フルオロポリマー、パーフルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレンポリマーなどの熱可塑性フルオロポリマー、ビニル、ゴム(Viton、ブチル、及びフルオロエラストマーを含むがこれらに限定されない)、ポリ塩化ビニル、及びウレタン、アクリル、又はシリコーンのポリマーが挙げられる。バインダーは、いくつかの実施形態では、フルオロポリマーとポリイミドとのブレンド、ポリアミドイミド、又はポリフェニレンスルフィドを含むことができる。
【0111】
コア層は多孔質であるため、バインダーは、コア層及び/又は補強層の細孔内に著しく浸透して、バージンコア層に対して増加した密度の混合したハイブリッド層を形成し得る。あるいは、コア層及び/又は補強層の細孔構造及び表面エネルギーは、バインダーがそれらを互いに結合するときに、これらの層に最小限に透過するようなものであり得る。
【0112】
熱可塑性バインダーなどの一部のポリマーバインダーは容易に溶融して流動性組成物になり、接合される表面をコーティングし、次いで冷却されて接合を終えることができる。これらの材料は、手動プロセス又は連続プロセスのいずれかで互いに熱ラミネート(heat laminated)され得る。
【0113】
他のポリマーバインダーは、加熱されるか、化学線に曝露されるか、ないしは別の方法で化学的に活性化されると架橋する硬化性ポリマーバインダーである。硬化性ポリマーバインダーとしては、ポリウレタン又は(メタ)アクリレートポリマーのラテックスなどの水系ラテックスが挙げられる。他の硬化性バインダーとしては、限定するものではないが、エポキシ、エポキシ硬化剤、フェノール樹脂、フェノール、シアン酸エステル、ポリイミド(例えば、ビスマレイミド及びポリエーテルイミド)、ポリエステル、ベンゾオキサジン、ポリベンゾオキサジン、ポリベンゾオキサゾン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、シアネート、シアン酸エステル、ポリエーテルケトン(例えば、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン)、これらの組み合わせ、及びこれらの前駆体が挙げられる。
【0114】
バインダーは、シリカ、アルミナ、ジルコニア、カオリン粘土、ベントナイト粘土、ケイ酸塩、雲母質粒子、これらの前駆体、及びこれらの任意の組み合わせなどの無機組成物を含むこともまた可能である。無機バインダーは粉末として提供され、セメント質物質で広く使用されている。粉末は、適用後に水で活性化することができ、水を除去して層間接合を形成することができる。セラミック多結晶繊維不織布ウェブを結合させる場合、シリコーンオイル(シロキサン、ポリジメチルシロキサンなど)などの前駆体無機バインダーの焼成によって、セラミック繊維間に無機接合を形成することができる。これらの無機バインダーを組み込んだ不織布マットは、同時係属の米国仮特許出願第62/670,011号(De Rovere)に記載されている。
【0115】
バインダーは、多くの異なる形態のいずれかをとることができる。いくつかの実施形態では、ポリマーバインダーは、上記のようなバインダー繊維を含めることによって、不織布繊維層(コア層など)に直接組み込まれる。
【0116】
他の実施形態では、バインダーはコーティングの形態で提供される。コーティングは、コア層、補強層、複数の補強層、又はこれらの任意の組み合わせ上に液体形態で配置され、次いでその後に固化され得る。コーティングは、溶媒キャスト又はホットメルトコーティングなどの任意の既知の方法を使用して適用することができる。溶媒キャスト法は、ブラシ技法、バー技法、ロール技法、ワイピング技法、カーテン技法、輪転グラビア技法、スプレー技法、又はディップコーティング技術を含む。いくつかの実施形態では、バインダーはコア層上にコーティングされ、コア層を通って浸透し、それによりバインダーは材料のバルク内に少なくとも部分的に配置される。次いで、コーティングされたバインダー溶液から溶媒を除去することによって、バインダー層を得ることができる。溶媒除去は、一般に、オーブン内で乾燥することによって、熱によって引き起こされる。
【0117】
例示的なバインダーコーティングとしては、アクリル系ポリマーラテックス又はポリウレタン系ラテックスから作製されるコーティングが挙げられる。例示的なポリマーバインダーとしては、Dow Chemical Company(Midland,MI)によって商品名POLYCO3103(アクリル/ビニルアセテートコポリマー)、RHOPLEX HA-8、及びDSM NEWREZ R-966(ポリウレタン系ラテックス)で提供されるものが挙げられる。他の有用なバインダー材料としては、フッ素化熱可塑性樹脂が挙げられ、これは、任意選択で、商品名THVで3M Company(St.Paul,MN)によって提供されるものなど、水性エマルジョンの形態である。
【0118】
ラテックスバインダーは、水性エマルジョンから所与の層又は基材上に溶媒キャストすることができる。ラテックスバインダーは、水性エマルジョンの固形分含有量に対して任意の好適な量で存在することができる。ラテックスバインダーは、水性エマルジョンの全固形分重量に基づいて、1重量%~70重量%、3重量%~50重量%、5重量%~20重量%の範囲内の量で存在することができるか、あるいはいくつかの実施形態では、1重量%、2、3、4、5、7、10、12、15、17、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70重量%未満、それと等しい、若しくはそれを超える量で存在することができる。
【0119】
上記のものと同様の範囲は、ラテックスバインダー以外のバインダーに適用することができる。例えば、コア層又は補強層は、コア層又は補強層全重量に基づいて、1重量%~70重量%、3重量%~50重量%、5重量%~20重量%の量で存在するバインダーを含むことができるか、あるいは、いくつかの実施形態では、1重量%、2、3、4、5、7、10、12、15、17、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、又は70重量%未満、それと等しい、又はそれを超える量で存在するバインダーを含むことができる。
【0120】
任意に、バインダーはまた、補強層とコア層との間の改善された接着性を提供することができる。これは、補強層をコア層と接触させて配置する前に、バインダーを補強層又はコア層の結合面上にコーティングすることによって達成することができる。任意に、バインダーは、溶液又はエマルジョンからこれらの内面上にスプレーコーティング又はディップコーティングされ得る。
【0121】
バインダーが縁部シールを形成するために使用される場合、補強層、及び任意にコア層が熱及び/又は圧力に供されるときに、コーティングは、一般的に均一及びボイドフリーのシールを提供するのに十分に厚くなければならない。所与の適用のための最小コーティング重量は、他の要因の中でも、補強層及びコア層の多孔率及び厚さに依存することになる。例示的な実施形態では、コーティングは、2gsm~100gsm、5gsm~50gsm、10gsm~20gsmの範囲内の坪量を有するか、あるいは、いくつかの実施形態では、2gsm、3、4、5、7、10、12、15、17、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100gsm未満、それと等しい、又はそれを超える坪量を有する。
【0122】
コーティングは、バインダーに加えて他の成分を含有することが有利になることもある。例えば、バインダーが耐炎性でない場合には、コーティングは、難燃性添加剤及び膨張剤を更に含むことができる。
【0123】
有用な難燃剤添加剤としては、ポリリン酸アンモニウムなどのリン酸塩系添加剤が挙げられる。ポリリン酸アンモニウムは、ポリリン酸及びアンモニアである無機塩であり、直鎖又は分枝鎖ポリマーのいずれかであり得る。その一般的な化学式は[NHPO(OH)であり、ここで、各モノマーは、3つの酸素を有するリン原子のオルトリン酸基からなり、1つの負電荷がアンモニウムカチオンによって中和され、2つの結合が自由に重合することを示す。分枝状の場合、一部のモノマーは、アンモニウムアニオンが欠けており、代わりに他のモノマーに結合する。ポリリン酸アンモニウムの水性エマルジョンは、例えば、Clariant International Ltd.(Muttenz,Switzerland)から商品名EXOLITで市販されている。ポリリン酸アンモニウム以外の有機リン酸塩もまた使用できる。リン酸塩は、水分を吸収し、コア層及び/又は補強層の電気抵抗率を低下させることができるため、難燃性及び電気抵抗率の両方の要件を満たすために必要に応じてわずかに使用することが一般的に好ましいことが認識される。
【0124】
膨張剤は、熱に曝露されると膨潤し、ギャップに拡張することによって火災伝播を妨げることができる。提供される断熱材において、膨張性添加剤は、(1)例えばポリリン酸アンモニウムによって提供されるリン含有部分、(2)スクロース、カテコール、ペンタエリスリトール、及び没食子酸などの、火災の場合にチャーを増加させるヒドロキシル含有部分、及び(3)メラミン又はアンモニウムなどの膨張剤として作用することができる窒素含有部分のうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態では、成分(1)~(3)を組み合わせて使用する。膨張剤は、膨張黒鉛などの黒鉛充填剤を含むこともできる。膨張黒鉛は、加熱されたときに膨張する黒鉛の合成インターカレーション化合物である。
【0125】
いくつかの実施形態では、難燃性添加剤は、一般的な溶媒中でバインダーと共に溶解又は分散させることができ、両方の成分が補強層及び/又はコア層上に集合的に溶媒キャストされる。例えば、ポリリン酸アンモニウムは、簡便にはポリマーラテックスも含有する水性エマルジョンからキャストすることができる。
【0126】
難燃性添加剤は、コーティングの全固形分重量に基づいて、5重量%~95重量%、10重量%~90重量%、20重量%~60重量%の範囲内の量で存在することができるか、あるいはいくつかの実施形態では、5重量%、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95重量%未満、それと等しい、若しくはそれを超える量で存在することができる。
【0127】
コーティングエマルジョン又は溶液は、補強層及び/又はコア層の繊維上に均一なコーティングを提供するために適切な粘度を提供するために任意の好適な濃度を有し得る。スプレーコーティングの場合、1重量%~50重量%、2.5重量%~25重量%、5重量%~15重量%の範囲内の固形分含有量を使用すること、あるいはいくつかの実施形態では、1重量%、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、25、30、35、40、45、又は50重量%未満、それと等しい、又はそれを超える固形分含有量を使用することが典型的である。
【実施例
【0128】
本開示の目的及び利点は以下の非限定的な実施例によって更に例証されるが、これらの実施例に引用される具体的な材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を過度に制限するものと解釈されるべきではない。別段の記載がない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量によるものである。
【0129】
【表1】
【0130】
試験方法:
不織布ウェブの厚さ測定:嵩高の不織布の厚さについての試験方法に従って、ASTM D5736-95の方法を行った。プレート圧力を13.79パスカル(0.002psi)で較正した。
【0131】
UL94-V0の火炎試験:UL94-V0の規格を参照して、火炎の高さが20ミリメートル(mm)、試料の下縁部が火炎の中に10mm入った状態で、2回それぞれ10秒間燃焼した。125mm(5インチ)未満の火炎伝播高さを、合格と見なした。
【0132】
機械的試験:ASTM D882-18及びASTM D1938-19の方法に従った。
【0133】
可撓性試験:ポリマーフィルムについてはASTM D2923-06の方法に従い、又は布地についてはASTM D6828-02の方法に従った。West Berlin,NJ,United StatesのThwing-Albert Instrument Companyから得たHandle-O-Meter 211(AN-7-315)を試験に使用した。試料を20mm幅のギャップに嵌合するようにピン留めして、ピン留めの力をグラム単位で記録した。各試料をx方向とy方向のそれぞれに沿って4回試験し、平均値を記録した。
【0134】
表面電気抵抗率試験:修正を加えた、ASTM D325-31の方法に従った。試料を、Holland,MI,United StatesのThermotron Environmental Chamberの内部に吊るした。抵抗率は、Everett,WA,United StatesのFlukeから得たFluke1507絶縁抵抗試験機の2つの電極(25mm離隔した)を試料に接続することによって測定した。電極ワイヤをチャンバの外部に誘導し、Thermotronを密閉した。温度及び湿度パラメータを30℃及び85%のRHに設定し、システムを12時間アイドリングして、試料を調整した。各実施例又は比較例について2つの試料を測定し、抵抗率の平均値をM-オームで記録した。
【0135】
通気抵抗試験:ISO9053-91及びASTM C522-03の方法に従った。Sherbrooke,CanadaのMecanumからのSigma静的通気メータを使用して、平均通気抵抗(Pa・s/m又はMKS Raylsで測定)を記録した。
【0136】
全ての組み立てられた試料は、300mm×300mm(12インチ×12インチ)であった。
【0137】
実施例1(EX1):
80重量%のOPAN及び20重量%のT276でブレンドされたウェブを、同一所有者のPCT特許公開第WO 2015/080913号(Zilligら)に記載されるように製造した。このウェブを折り畳み(坪量を150gsmに変更させ)、次いで、75ニードル/列の23列(これらの列は、パターンをランダム化するためにわずかにオフセットされている)のニードルボードアレイを有するDilo Needle Loom,Model DI-Loom OD-1 6(Eberbach,Germany)によって搬送した。ニードルは、Foster 20 3-22-1.5Bのニードルであった。アレイは、機械方向において深さが約17.8cm(7インチ)、幅が公称61cm(24インチ)であり、ニードルの間隔は、約7.6mm(0.30インチ)であった。ニードルボードを91ストローク/分で動作させてウェブを交絡させ、約5.1mm(0.20インチ)の厚さまで圧縮した。ウェブの坪量は、150gsm±10%であった。
【0138】
55gsmのGULFENG不織布を、シリコーン剥離側が布と接触している状態でPETライナーの上部に配置した。150gsmのTHV340Zバインダー溶液(4部の水を1部の溶液に添加することによって、50重量%から10重量%の固形分に希釈した)を、サイズ22のMayerロッドを使用してGULFENG不織布にコーティングした。THV340ZコーティングされたGULFENG不織布を周囲条件で乾燥させた。PET剥離ライナーを備えた別のTHV340ZコーティングされたGULFENG不織布を、別のスクリムを作製するように組み立てた。2つの100マイクロメートル厚の70gsmTHV処理GULFENG不織布スクリムの一方を、OPANとT276がブレンドされたウェブの上部に置き、他方を底部に置き、試料を150℃で5分間加熱した。試料は、UL94-V0の火炎試験、機械的試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び通気試験を受けた。結果を、表2及び表3に示す。
【0139】
実施例2(EX2)
実施例1に記載されるように、OPAN及びT276がブレンドされたウェブを製造した。OPAN及びT276がブレンドされたウェブをTHV340z溶液(5%固形分に希釈)に浸した。過剰な水を除去した。次いで、THVコーティングされたOPAN及びT276がブレンドされたウェブを、PETライナーの上部に置き、150℃のオーブンに30分間入れた。乾燥坪量は、200gsm±10%であった。オーブン処理後、試料の厚さを測定したところ、4mmであった。試料は、UL94-V0の火炎試験、機械的試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び空気流動試験を受けた。結果を、表2及び表3に示す。
【0140】
比較例1(CE1)
実施例1に記載されるように、OPAN及びT276がブレンドされたウェブを製造した。
【0141】
コーティングを適用せずに、実施例1に記載されるように、100重量%のOPANを用いて40gsmのウェブを製造した。100重量%のOPANウェブを、Cincinnati,OH,United StatesのMidwest Filtration LLCから得た25gsmのUniPoly75MRFPETシートの上部に配置して、ニードルタックし(実施例1に記載されるように)、二層ウェブを形成した(PETウェブの上に位置付けられたOPANウェブを有する)。ウェブの坪量は、65gsm±10%であった。
【0142】
二層OPAN-PETウェブを、シリコーン剥離側がウェブと接触している状態でPETライナー上に配置した。150gsmのTHV340Zバインダー溶液(4.0部の水を1部の溶液に添加することによって、50重量%から10重量%の固形分に希釈した)を、サイズ22のMayerロッドを使用して二層OPAN-PETウェブ上にコーティングした。THV340Zコーティングされた二重層OPAN-PET不織布ウェブを周囲条件で乾燥させた。PETライナーを備えた別のTHV340OZコーティングされた二層OPAN-PET不織布を組み立てて別のスクリムを作成した。2つの100マイクロメートル厚の80gsmTHV340zで処理された二重層OPAN-PET不織布スクリムをPET層がコアと接触している状態で、OPAN及びT276でブレンドされたウェブの上部及び底部に配置し、試料を150℃で5分間加熱した。試料は、UL94-V0の火炎試験、機械的試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び空気流動試験を受けた。結果を、表2及び表3に示す。
【0143】
比較例2(CE2)
実施例1に記載されるように、OPAN及びT276がブレンドされたウェブを製造した。
【0144】
OPAN及びT276がブレンドされたウェブを、穿孔CA421フィルムで封入した。フィルムを、3ミリメートル離隔した直径270マイクロメートルの穴をレーザードリルによって穿孔した。CA421剥離ライナーを取り外し、フィルムの一方を150gsmのブレンドされたウェブの上部、他方を底部に配置した。試料の坪量は、750gsm±10%であった。試料は、UL94-V0の火炎試験、機械的試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び通気試験を受けた。結果を、表2及び表3に示す。
【0145】
比較例3(CE3)
実施例1に記載されるように、OPAN及びT276がブレンドされたウェブを製造した。BC765スクリムの一方を、OPAN及びT276をブレンドしたウェブの上部に、他方を底部に配置した。試料を、ハンドカレンダーローラーによって140℃で6mm厚に均一に圧縮した。試料の坪量は、290gsm±10%であった。この試料は、同時係属中のPCT特許出願第CN2018/096648号(Liら)において実施例1及び2に従って作製された物品と同一である。試料は、UL94-V0の火炎試験、機械的試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び通気試験を受けた。結果を、表2及び表3に示す。
【0146】
比較例4(CE4)
実施例1に記載されるように、OPAN及びT276がブレンドされたウェブを製造した。25マイクロメートルの厚さのKAPTON MTポリイミドフィルムの一方を、OPAN及びT276ブレンドされたウェブの上部に、他方を底部に配置した。試料を、ハンドカレンダーローラーによって150℃で6mm厚に均一に圧縮した。試料の坪量は、190gsm±10%であった。試料は、UL94-V0の火炎試験、機械的試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び通気試験を受けた。結果を、表2及び表3に示す。
【0147】
比較例5(CE5)
実施例1に記載されるように、OPAN及びT276がブレンドされたウェブを製造した。300マイクロメートル厚の55gsmのGULFENG不織布の一方を、OPAN及びT276ブレンドされたウェブの上部に、他方を底部に配置した。試料をハンドローラによって、厚さ6mmに均一に圧縮した。試料の坪量は、260gsm±10%であった。試料は、UL94-V0の火炎試験、機械的試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び通気試験を受けた。結果を、表2及び表3に示す。
【0148】
比較例6(CE6)
実施例1に記載されるように、OPAN及びT276がブレンドされたウェブを製造した。
【0149】
GULFENG不織布を、シリコーン剥離側が布と接触している状態でPETライナーの上部に配置した。1部のLATEX及び0.5部のAP420の配合物を、サイズ22のMayerロッドを使用してGULFENG不織布上にコーティングした。LATEX及びAP420がコーティングされたGULFENG不織布を周囲条件で乾燥させた。PETライナーを備えた別のLATEX及びAP420がコーティングされたGULFENG不織布を組み立てて別の布スクリムを作成した。2つの100マイクロメートル厚の70gsmのLATEX及びAP420で処理されたGULFENG不織布スクリムの一方を、OPAN及びT276がブレンドされたウェブの上部に、他方を底部に配置し、試料を150℃で5分間加熱した。試料をハンドローラによって、厚さ6mmに均一に圧縮した。試料の坪量は、290gsm±10%であった。試料は、UL94-V0の火炎試験、機械的試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び通気試験を受けた。結果を、表2及び表3に示す。
【0150】
比較例7(CE7)
実施例1に記載されるように、OPAN及びT276がブレンドされたウェブを製造した。
【0151】
別のウェブを実施例1に記載されるように、100重量%のOPANを用いて製造した。坪量は、15gsm±10%であった。100重量%のOPANウェブを、シリコーン剥離側が100重量%のOPANウェブと接触した状態で第1のPETライナー上に配置した。100gsmのTHV340Zバインダー溶液(2部の水を1部の溶液に添加することによって50重量%から15重量%の固形分まで希釈した)を、100重量%のOPANウェブ上に噴霧コーティングした。厚さ3mmのバインダーを有する100重量%のOPANウェブを、ハンドローラによって0.5mm厚に均一に圧縮した。次いで、PETライナーによって支持された、バインダーを含む100重量%のOPANウェブを、160℃(320°F)のオーブンのWaltham,MA,United StatesのFisher Scientific製のISOTEMP Oven中に2分~4分間入れて、THV340Zバインダーの15gsm±10%乾燥コーティングを乾燥生成した。次いで、試料を152℃(305°F)の上限温度設定及び154℃(310°F)の下限温度設定を有するオーブン内で1.5ミルのギャップ及び0.3048m/分(1ft/分)の速度でカレンダー処理した。試料の坪量は、30gsm±10%であった。
【0152】
THV処理された100%のOPANスクリムをOPAN及びT276がブレンドされたウェブにラミネートした。ブランケット坪量は、210gsmであった。試料は、UL94-V0の火炎試験、機械的試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び通気試験を受けた。結果を、表2及び表3に示す。
【0153】
比較例8(CE8)
150gsmのOPAN及びT276がブレンドされたウェブを実施例1に記載されるように製造した。OPAN及びT276がブレンドされたウェブを、共通に所有された米国特許第6,598,701号(Woodら)に記載された技術に従って、組み立てられた2つの300gsmの耐炎性ナイロン微細穿孔フィルムの間に位置付けた(一方を上部に配置し、他方を底部に配置した)。ナイロンフィルム上の穿孔穴直径は、1mm離隔した穴を有する100ミクロンであった。ウェブの坪量は、750gsm±10%であった。試料は、UL94-V0の火炎試験、機械的試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び通気試験を受けた。結果を、表2及び表3に示す。
【0154】
比較例9(CE9)
Plaisir,FranceのZodiac Aerospace(Safranの子会社)から得られた12.7mmのCDM050-40パネルを、300マイクロメートルの直径の穴を3mm離隔してレーザー穿孔し、UL94-V0の火炎試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び通気試験を受けた。結果を、表2及び表3に示す。
【0155】
比較例10(CE10)
実施例1に記載されるように、OPAN及びT276がブレンドされたウェブを製造した。2つのフルオロプラスチックPVDFベースの膜フィルムを、米国特許第8,182,908号(Mrozinski)の実施例1に記載されるように組み立てた。PVDF多孔性膜の坪量は300gsmであった。PVDF膜をOPAN及びT276がブレンドされたウェブの上部及び低部に配置した。ウェブの坪量は、750gsm±10%であった。試料は、UL94-V0の火炎試験、機械的試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び通気試験を受けた。結果を、表2及び表3に示す。
【0156】
比較例11(CE11)
Ludwigshafen,GermanyのBASFから得た25ミリメートル厚のBASOTECT連続気泡メラミン樹脂フォーム試料は、UL94-V0の火炎試験、機械的試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び通気試験を受けた。結果を、表2及び表3に示す。
【0157】
比較例12(CE12)
一方の0.1ミリメートルの厚さの雲母ボードを10ミリメートル厚のNOMEX994プレスボードの上部に配置し、別の0.1mmの厚さの雲母ボードをその底部に配置した(それぞれWilmington,DE,UnitedStatesのDuPontから得られた)。試料は、UL94-V0の火炎試験、機械的試験、可撓性試験、電気抵抗率試験、及び通気試験を受け、結果を表2及び表3に示す。
【0158】
【表2】
【0159】
【表3】
【0160】
上記の特許出願において引用された全ての参考文献、特許文献及び特許出願は、一貫した形でその全文が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参考文献の部分と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先される。前述の記載は、当業者が、特許請求の範囲に記載の開示を実践することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって定義される。以下に、例示的実施形態を示す。
[項目1]
断熱物品であって、
複数の非溶融性繊維を含有するコア層と、
任意に、前記コア層上に配置された補強層と、を含み、
前記断熱物品が、ASTM D822による少なくとも0.75ニュートン/ミリメートルの引張強度、及びASTM D1938下での少なくとも2ニュートンの引裂強度を有し、
前記断熱物品が、85%の相対湿度及び30℃の温度において少なくとも15M-オームの表面電気抵抗率を有し、
前記断熱物品が、ASTM C522による、最大2000MKS Raylsの通気抵抗を有し、
前記断熱物品が、UL94-V0の燃焼性評価を示す、断熱物品。
[項目2]
前記断熱物品が、可撓性試験に従って測定されるとき、最大50グラムの平均可撓性を有する、項目1に記載の断熱物品。
[項目3]
非溶融性繊維が、酸化ポリアクリロニトリル繊維を含む、項目1又は2に記載の断熱物品。
[項目4]
前記補強層が、熱可塑性フルオロポリマーを含む、項目1~3のいずれか一項に記載の断熱物品。
[項目5]
前記熱可塑性フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンのコポリマーを含む、項目4に記載の断熱物品。
[項目6]
前記補強層が、複数の酸化ポリアクリロニトリル繊維を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の断熱物品。
[項目7]
前記補強層が、前記酸化ポリアクリロニトリル繊維と網目状に絡み合ったポリフェニレンスルフィドを有する繊維を更に含む、項目6に記載の断熱物品。
[項目8]
前記補強層が、前記酸化ポリアクリロニトリル繊維と網目状に絡み合ったポリエチレンテレフタレートを有する繊維を更に含む、項目6に記載の断熱物品。
[項目9]
前記補強層が、前記網目状に絡み合った繊維の少なくともいくつかの上に配置された熱可塑性フルオロポリマーを更に含む、項目6~8のいずれか一項に記載の断熱物品。
[項目10]
前記熱可塑性フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンのコポリマーを含む、項目9に記載の断熱物品。
[項目11]
前記補強層が、穿孔フィルムを含む、項目1~3のいずれか一項に記載の断熱物品。
[項目12]
前記穿孔フィルムが、ポリ塩化ビニル又はポリイミドを含む、項目11に記載の断熱物品。
[項目13]
項目1~12のいずれか一項に記載の断熱物品によって少なくとも部分的に包囲されたバッテリーを含む、バッテリーアセンブリ。
[項目14]
前記バッテリーが、電動ビークルバッテリーである、項目13に記載のバッテリーアセンブリ。
[項目15]
電動ビークルバッテリーを断熱する方法であって、前記電動ビークルバッテリーを、項目1~12のいずれか一項に記載の断熱物品で少なくとも部分的に包囲することを含む、方法。
図1
図2
図3