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特許7507241風力タービン用のブレードピッチ制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】風力タービン用のブレードピッチ制御装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/04 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
F03D7/04 H
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022535522
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 NO2020050284
(87)【国際公開番号】W WO2021118361
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】1918423.3
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515339653
【氏名又は名称】エクイノール・エナジー・アーエス
【氏名又は名称原語表記】EQUINOR ENERGY AS
【住所又は居所原語表記】Torusbeen 50,4035 Stavanger,Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】スカーレ、ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】スミルデン、エミール
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-094886(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0204636(US,A1)
【文献】特許第5443629(JP,B1)
【文献】特開2017-053275(JP,A)
【文献】国際公開第2018/210390(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力タービン用のブレードピッチ制御装置であって、
前記風力タービンは、ナセルを有する細長いタワーと、タワーの上端に取り付けられ、複数のブレードを含むロータとを含み、
前記ブレードピッチ制御装置は、発電を最適化するために、前記風力タービンのブレードピッチを制御するために構成される公称制御システム及びタワーフィードバックループを備え、
前記タワーフィードバックループが、フィルタリングシステムとフィードバック制御装置とを備え、
前記フィルタリングシステムは、前記風力タービンの前記タワーの位置及び/又は速度の測定値又は推定値を入力として受信し、
前記風力タービンの前記タワーのフィルタリングされた位置及び/又は速度の測定値又は推定値を出力するように構成され、
前記フィードバック制御装置は、前記フィルタリングシステムから、出力された、前記風力タービンの前記タワーのフィルタリングされた位置及び/又は速度の測定値又は推定値を受信し、
前記風力タービンの前記タワーのフィルタリングされた位置及び/又は速度の測定値又は推定値から決定されたブレードピッチ参照信号を前記公称制御システムに出力し、
前記タワーフィードバックループが、前記フィルタリングシステムのフィルタ振動数よりも高い周波数の前記風力タービンの前記タワーの波誘発運動と風誘発運動との両方に応答して前記風力タービンの前記タワーに追加の実効剛性を提供するように風力タービンブレードピッチを制御するように構成される、ブレードピッチ制御装置。
【請求項2】
前記フィルタリングシステムが、ハイパスフィルタを備える、請求項1に記載のブレードピッチ制御装置。
【請求項3】
前記フィルタリングシステムの前記フィルタ振動数が、前記ハイパスフィルタの前記フィルタ振動数である、請求項2に記載のブレードピッチ制御装置。
【請求項4】
前記フィルタリングシステムが、ローパスフィルタ及びノッチフィルタのうちの1つ又は複数を備える、請求項2又は3に記載のブレードピッチ制御装置。
【請求項5】
前記タワーフィードバックループが、ブレードピッチアクチュエータの帯域幅内にある前記風力タービンの前記タワーの運動に応答して前記風力タービンの前記タワーに追加の実効剛性を提供するように風力タービンブレードピッチを制御するように構成される、請求項1~のいずれか一項に記載のブレードピッチ制御装置。
【請求項6】
前記位置及び/又は速度の測定値及び/又は推定値が、前記風力タービンの前記タワー又は基礎台に位置する1つ又は複数のセンサから提供される、請求項1~のいずれか一項に記載のブレードピッチ制御装置。
【請求項7】
記1つ又は複数のセンサが、前記風力タービンの喫水線に又は喫水線付近に位置する、請求項に記載のブレードピッチ制御装置。
【請求項8】
前記フィルタリングシステムが、前記風力タービンの前記タワーの位置と速度との測定値及び/又は推定値を異なるフィルタでフィルタリングするように構成される、請求項1~のいずれか一項に記載のブレードピッチ制御装置。
【請求項9】
前記フィルタリングシステムが、静的及び/又は準静的な運動をフィルタ除去するように構成される、請求項1~のいずれか一項に記載のブレードピッチ制御装置。
【請求項10】
前記フィルタリングシステムが、ブレード通過振動数での運動をフィルタ除去するように構成される、請求項1~のいずれか一項に記載のブレードピッチ制御装置。
【請求項11】
洋上風力タービンのブレードピッチを制御する方法であって、
前記風力タービンは、ナセルを有する細長いタワーと、タワーの上端に取り付けられ、複数のブレードを含むロータとを含み、
前記方法は、請求項1~10のいずれか一項に記載されたブレードピッチ制御装置を使用して、前記フィルタリングシステムのフィルタ振動数よりも高い周波数の前記風力タービンの前記タワーの波誘発運動と風誘発運動との両方に応答して前記風力タービンに追加の実効剛性を提供するように前記ブレードピッチを制御することを含む方法。
【請求項12】
ブレードピッチアクチュエータの帯域幅内にある前記風力タービンの前記タワーの運動に応答して前記風力タービンの前記タワーに追加の実効剛性を提供するように風力タービンブレードピッチを制御することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フィルタリングシステムを使用して、前記風力タービンの前記タワーの位置及び/又は速度の測定値及び/又は推定値をフィルタリングすることを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記風力タービンの前記タワーの位置と速度との測定値及び/若しくは推定値を異なるフィルタでフィルタリングすること、
静的及び/若しくは準静的な運動をフィルタ除去すること、並びに/又は
ブレード通過振動数での運動をフィルタ除去すること
を含む請求項1113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記風力タービンの前記タワーのフィルタリングされた位置及び/又は速度の測定値及び/又は推定値からブレードピッチ参照信号を決定することを含む、請求項1114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか一項に記載のブレードピッチ制御装置を備える風力タービン。
【請求項17】
洋上風力タービン用のブレードピッチ制御装置のためのタワーフィードバック制御装置であって、
前記風力タービンは、ナセルを有する細長いタワーと、タワーの上端に取り付けられ、複数のブレードを含むロータとを含み、
前記タワーフィードバック制御装置は、フィルタリングシステムを備え、
前記フィルタリングシステムは、前記風力タービンの前記タワーの位置及び/又は速度の測定値又は推定値を入力として受信し、
前記風力タービンの前記タワーのフィルタリングされた位置及び/又は速度の測定値又は推定値を出力するように構成され、
前記タワーフィードバック制御装置は、前記フィルタリングシステムから、出力された、前記風力タービンの前記タワーのフィルタリングされた位置及び/又は速度の測定値又は推定値を受信し、
前記風力タービンの前記タワーのフィルタリングされた位置及び/又は速度の測定値又は推定値から決定されたブレードピッチ参照信号を、発電を最適化するために、風力タービンのブレードピッチを制御するために構成された公称制御システムに出力し、
前記フィルタリングシステムが、前記フィルタリングシステムのフィルタ振動数よりも高い周波数の前記風力タービンの前記タワーの波誘発運動と風誘発運動との両方に応答して前記風力タービンの前記タワーに追加の実効剛性を提供するように風力タービンブレードピッチを制御するように構成される、タワーフィードバック制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービン用のロータブレードピッチ制御の分野に関する。より具体的には、本発明は、着床式洋上風力タービン用のロータブレードピッチ制御に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な着床式洋上風力タービンの例を示す概略図が図1に示されている。この図に示されているように、着床式洋上風力タービン1は、典型的には細長いタワー5を含み、ナセル4及びロータ2がタワー5の上端に取り付けられている。発電機及びその関連の電子機器は通常、ナセル4に位置する。ロータ2は、複数の(例えば2つ又は3つの)ブレード3を備える。風力タービン1は、タワー5の下端に接続された基礎台6によって、沖合での海底7に固定される。
【0003】
これに関連して、「沖合」とは、単に風力タービンの基礎台が水によって取り囲まれていることを意味すると理解すべきである。これは、例えば海水でよく、典型的には海水である。
【0004】
風力タービンの性能を向上させるために、ロータブレードのピッチを制御することが知られている。例えば、ブレードピッチを制御して電力出力を最適化することができる。しかし、振動の低減など他の理由からブレードピッチを制御することもできる。
【0005】
風力エネルギー産業では、コレクティブブレードピッチ制御(すなわち、全てのロータブレードを同量で一緒に制御する)を使用して、着床式洋上風力タービンの前後曲げモードの空力減衰を高める方法がよく知られている。空力減衰の増加により、着床式洋上風力タービンに関してタワーと基礎台との両方で疲労損傷が低減される。そのような制御方法は、Van der Hooft,2003及びBossanyi,2003(下記の参考文献のリストを参照)で論じられている。しかし、これらの方法は、1次の前後モード振動数付近の狭い振動数範囲のみでしか効率的でない。
【0006】
より最近では、コレクティブブレードピッチ制御を使用して、着床式洋上風力タービンの前後振動モードの剛性及び空力減衰を向上させることも知られている。そのような方法は、Smilden,2018で論じられている。
【0007】
この方法は、どちらも風力タービンシステムの低忠実度モデルを使用する、状態推定器と参照モデルとからなるタワーフィードバックループを備えるブレードピッチ制御装置に基づき、風誘発運動と波誘発運動とを分割又は分離し、運動の波誘発部分に基づいて剛性を提供し、タワーの全体速度に基づいて減衰を提供する。
【0008】
剛性の向上の主な利点は、1次の曲げ振動数が波励起振動数からさらに離されること、及び減衰の増加のみを提供するよりも広い振動数範囲の効果を実現することである。これは、疲労下での利用の観点から波荷重が主となることが多い、大型洋上風力タービン(例えば6~10MW以上)にとって、より重要であると考えられる。減衰の増加のみを提供する制御装置と比較した最大の改良は、海が荒れた状態で見られた。
【0009】
Smilden,2018に開示されている制御方法は、疲労に対して優れた性能を示す。しかし、これは、状態推定器及び参照モデルにいくつかの低忠実度のモデルが実装された、比較的複雑な制御システムである。この方法は平均風速測定にも依存し、平均風速測定は、十分に正確に実現するのが難しいことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、着床式洋上風力タービン用の改良されたブレードピッチ制御方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、風力タービン用のブレードピッチ制御装置であって、公称制御システム及びタワーフィードバックループを備え、タワーフィードバックループが、フィルタリングシステムを備え、タワーフィードバックループが、フィルタリングシステムのフィルタ振動数よりも高い風力タービンの運動に応答して風力タービンに追加の実効剛性を提供するように風力タービンブレードピッチを制御するように構成される、ブレードピッチ制御装置が提供される。
【0012】
したがって、本発明は、フィルタリングシステムのフィルタ振動数よりも高い風力タービンの運動に応答して、風力タービンに実効剛性を提供するようにブレードピッチを調整する、ブレードピッチ制御装置を提供する。例えばフィルタ振動数よりも高い、タワーの全ての測定された動的運動に応答して、風力タービンに追加の実効剛性を提供することは、そのような減衰が波誘発運動と風誘発運動との両方に応答して適用されることがあることを意味する。
【0013】
「実効剛性」という用語は、風力タービンタワーの機械的剛性は当然変えないが、ブレードピッチを調整することによって風力タービンの動的剛性特性が変えられ、それにより風力タービンが実質的に、より剛性を増したかのように機能することを表す。
【0014】
風力タービンは、減衰調和運動のための以下の式に従って振動する。
質量×加速度+減衰定数×速度+剛性定数×変位=0
【0015】
ブレードピッチの調整により、この式での減衰定数や剛性定数を調整することができる。
【0016】
フィルタリングシステムの使用により、比較的単純に、フィルタリングシステムのフィルタ振動数よりも高い風力タービンの運動にのみ応答して、風力タービンの実効剛性を増加させることができる。言い換えると、剛性の増加を提供するこのメカニズムは、特定の振動数よりも高い風力タービン運動のみに応答して、選択的に適用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、フィルタ振動数は、2π/25ラジアン/秒(又はその前後)であり得る。フィルタ振動数は、好ましくは、通常は約0.2~0.05Hzである波振動数範囲よりも低い。
【0017】
本発明の少なくともいくつかの好ましい実施形態の目的は、例えば着床式洋上風力タービン用の、前後曲げモードの減衰及び剛性を増加させるための単純化されたコレクティブブレードピッチ制御スキームを提供することである。
【0018】
本発明は、Smilden,2018に提示されているシステムを大幅に単純化する。本発明者らは、Smilden,2018のシステムで必要とされる、状態推定器(及びその関連の複雑なモデリング)、参照モデル、及び平均風速の測定の代わりに、例えば(以下でより詳細に述べるような)利用可能な位置及び/又は速度の測定値/推定値の単純なフィルタリングによって、風力タービンへの追加の実効剛性の提供を実現することができることを達成することによって、これを実現した。したがって、Smilden,2018システムとは異なり、本発明は、状態推定器、参照モデル、及び平均風の測定の使用又は存在を(必ずしも)必要としない。
【0019】
本発明における単純なフィルタリングシステムの使用は、(Smilden,2018システムでは状態推定器及び参照モデルを使用して実現される)ロータ速度制御ループでの定常状態誤差がないことを保証することができる。さらに、本発明は、フィルタリングシステムのフィルタ振動数よりも高い、好ましくはまたブレードピッチアクチュエータの帯域幅内の風力タービンの全ての動的運動に実効剛性を提供することができる。これとは対照的に、Smilden,2018のシステムは、動的運動の波誘発部分にのみ剛性を提供した。
【0020】
タワーフィードバックループは、フィルタリングシステムのフィルタ振動数よりも高く、ブレードピッチメカニズムの帯域幅よりも低いタワーの全ての測定された動的運動に追加の実効剛性を提供するように動作するので、これは例えば、定常風又は風の穏やかな変化(ゼロ又は低振動数)による風力タービンタワーの湾曲による影響を排除することができるが、タワーに当たる比較的高い振動数の波によって引き起こされる運動に作用する可能性がある。
【0021】
タワーフィードバックループは、好ましくは、風力タービンの波誘発運動と風誘発運動との両方に応答して風力タービンに追加の実効剛性及び減衰を提供するように風力タービンブレードピッチを制御するように構成される。
【0022】
したがって、この制御装置は、風力タービンの波誘発運動と風誘発運動との両方がある場合に特に有用であり得る。したがって、風力タービンは、好ましくは洋上風力タービンである。
【0023】
風力タービンは、着床式風力タービンでよい。
【0024】
タワーフィードバックループは、好ましくは、タワー振動を低減若しくは最小化するために風力タービンのブレードピッチを制御するように構成される。
【0025】
これとは対照的に、公称制御システムは、好ましくは、発電を最適化するために風力タービンのブレードピッチを制御するように構成される。
【0026】
フィルタリングシステムは、例えば以下に述べるように1つ又は複数のフィルタを備えることができる。いくつかの場合には、フィルタリングシステムは、2つ又は3つのフィルタを備えることがある。1つ又は複数のフィルタは、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、及びノッチフィルタのうちの1つ又は複数を備えることがある。これらについては以下でより詳細に述べる。
【0027】
フィルタリングシステムは、好ましくはハイパスフィルタを備える。これは、ハイパスフィルタのフィルタ振動数よりも低い風力タービン運動をフィルタ除去するために使用することができる。したがって、上で参照したフィルタリングシステムのフィルタ振動数は、ハイパスフィルタのフィルタ振動数に対応し得る(好ましくは対応する)。
【0028】
タワーフィードバックループは、好ましくは、ブレードピッチアクチュエータの帯域幅内にある風力タービンの運動に応答して風力タービンに追加の実効剛性及び減衰を提供するために風力タービンブレードピッチを制御するように構成される。ブレードピッチアクチュエータに関する時定数は、タービンモデル及びサイズによって異なることがある。しかし、典型的な範囲は、約0.2~2秒であり得る。
【0029】
風力タービンの位置及び/又は速度の測定値及び/又は推定値は、フィルタリングシステムへの入力として提供される。いくつかの場合には、位置と速度との両方の測定値又は推定値が入力として提供されることがある。他の場合には、1種、例えば位置の測定値又は推定値のみが入力として提供されることがある。例えば、速度の測定値又は推定値をフィルタリングする必要がないか又は望まれないことがある。これは、ブレードピッチアクチュエータが静的な値を含まないので、速度測定に関連する減衰効果が、基本的にはブレードピッチアクチュエータの帯域幅内の全ての運動に反応する可能性があるからである。典型的には、速度信号には定常状態の成分がない(又はごくわずかである)ので、ハイパスフィルタは必要ないことがある。高振動数ノイズをフィルタ除去するためにローパスフィルタを使用することが好ましいが、必須ではない。
【0030】
位置及び/又は速度の測定値又は推定値は、直接の測定値から提供されることがあり、又は位置、速度、及び/若しくは加速度の測定値に基づいて計算することができる。
【0031】
位置及び/又は速度の測定値又は推定値は、風力タービンに位置する、好ましくは風力タービンのタワー、プラットフォームデッキ、又は基礎台に位置する1つ又は複数の(モーション)センサから提供されることがある。好ましくは、1つ又は複数のセンサは、風力タービンの喫水線に又は喫水線付近に位置する。
【0032】
そのようなセンサが、(例えばナセルの近くにではなく/ナセルにではなく)喫水線付近又は喫水線に位置することが有利であり得る。これは、センサがこのとき、波誘発運動をより良く捕捉することができ、ブレード通過振動数効果などの風誘発ノイズをあまり捕捉しないからである。洋上風力タービンのプラットフォームデッキは、そのようなモーションセンサにとって実用的であり有利な位置であり得る。このとき、センサ位置のそのような選択は、有利には、(以下でさらに述べる)ブレード通過振動数のフィルタリングを提供する必要性をなくすことができる。
【0033】
フィルタリングシステムは、好ましくは、風力タービンのフィルタリングされた位置及び/又は速度の測定値を出力するように構成される。次いで、そのような測定値を(例えばタワーフィードバックループで)使用して、ブレードピッチ調整を決定することができる。
【0034】
フィルタリングされた位置と速度との両方の測定値がフィルタリングシステムから出力されるいくつかの場合には、フィルタリングシステムは、例えば異なるフィルタを使用して、風力タービンの位置と速度との測定値を異なる方法でフィルタリングするように構成される。
【0035】
フィルタリングシステムは、好ましくは、静的及び/又は準静的な(例えば非常に遅い)運動をフィルタ除去するように構成される。これは、風の一定の及び/又はゆっくりとした変化によって引き起こされることがあり、例えば低振動数の風誘発運動をもたらす。
【0036】
そのような静的及び/又は準静的な運動のフィルタ除去は、2次バターワースハイパスフィルタなどのハイパスフィルタを用いて行われることがある。これは、
【数1】
などのラプラス変換を使用することができる。ここで、hfaはラプラス変換関数であり、ωfaはラジアン/秒単位のハイパスフィルタ振動数であり、sはラプラス変数である。
【0037】
いくつかの実施形態では、フィルタリングシステムは、ブレード通過振動数での運動をフィルタ除去するように構成される。例えば、3枚翼の風力タービンの場合、フィルタリングシステムは、3P振動数での運動をフィルタ除去するように構成されることがある。同様に、2枚翼の風力タービンの場合、フィルタリングシステムは、2P振動数での運動をフィルタ除去するように構成されることがある。例えば、3P振動数は0.2~0.6Hzの範囲でよく、及び/又は2P振動数は0.15~0.5Hzの範囲でよい。
【0038】
上述したように、フィルタリングシステムは、ノッチフィルタを備えることがある。例えば、ノッチフィルタは、ブレード通過振動数での運動をフィルタ除去するために使用することができる。したがって、ノッチフィルタは、ブレード通過振動数に対応するノッチフィルタ振動数を有することがある。ブレード通過振動数は、ロータ速度と共に変化することがあり得る。しかし、実際には、本発明の風力タービン制御装置機能は、典型的には、ロータ速度(したがってブレード通過振動数)が(ほぼ)一定である風力タービンの定格風速よりも上でのみ作動される。
【0039】
フィルタリングシステムは、高周波ノイズや応答などのノイズをフィルタ除去するように構成されることがある。これは、(好ましくは0.5Hzなどの十分に高いフィルタ振動数で)例えばローパスフィルタを用いて行うことができる。ローパスフィルタは、2次バターワースローパスフィルタでよい。
【0040】
タワーフィードバックループは、好ましくはフィードバック制御装置をさらに備える。フィードバック制御装置は、好ましくは、フィルタリングシステムからの出力を受信し、信号を公称制御システムに出力するように構成される。例えば、フィードバック制御装置は、好ましくは、フィルタリングシステムからの出力(例えば、風力タービンのフィルタリングされた位置及び/又は速度測定値)からブレードピッチ参照信号(ブレードピッチ調整)を決定及び出力するように構成される。ブレードピッチ参照信号は、公称制御システムの基本制御装置から提供される公称ブレードピッチ参照信号に追加される調整(例えば角度調整)でよい。
【0041】
フィードバック制御装置から出力されるブレードピッチ参照信号βTFCは、以下のように表すことができる。
【数2】
ここで、
【数3】
は比例利得、
【数4】
は微分利得である。
【数5】
は、ピッチ角から空力推力への導関数の推定値として実装されることがある。
【数6】
ここで、ωはロータ速度であり、βはブレードピッチ角である。
【数7】
は、典型的には、ブレードピッチ角及び/又は測定されたロータ速度の関数として、定数値又はゲインスケジューリング値として実装することができる。
【0042】
χf1は、位置の測定値/推定値χをフィルタリングしたものであり、
【数8】
は、位置の測定値/推定値
【数9】
をフィルタリングしたものであり、風力タービンに対するx方向は図1に示されるようになる。
【0043】
本発明のさらなる態様によれば、風力タービンのブレードピッチを制御する方法であって、フィルタリングシステムを備えるブレードピッチ制御装置を使用して、フィルタリングシステムのフィルタ振動数よりも高い風力タービンの運動に応答して風力タービンに追加の実効剛性を提供するようにブレードピッチを制御することを含む方法が提供される。
【0044】
この方法は、好ましくは、上述したようなブレードピッチ制御装置を(その任意選択的な又は好ましい機能の任意のものを伴って)使用することを含む。
【0045】
この方法は、風力タービンの波誘発運動と風誘発運動との両方に応答して風力タービンに追加の実効剛性を提供するように風力タービンブレードピッチを制御することを含むことがある。
【0046】
この方法は、ブレードピッチアクチュエータの帯域幅内にある風力タービンの運動に応答して風力タービンに追加の実効剛性を提供するように風力タービンブレードピッチを制御することを含むことがある。
【0047】
この方法は、好ましくは、フィルタリングシステムを使用して、風力タービンの位置及び/又は速度の測定値及び/又は推定値をフィルタリングすることを含む。
【0048】
この方法は、風力タービンの位置と速度との測定値及び/若しくは推定値を異なる方法でフィルタリングすること、静的及び/若しくは準静的な運動をフィルタ除去すること、並びに/又はブレード通過振動数での運動をフィルタ除去することを含むことがある。
【0049】
この方法は、好ましくは、風力タービンのフィルタリングされた位置及び/又は速度の測定値及び/又は推定値からブレードピッチ参照信号を決定することを含む。
【0050】
本発明のさらなる態様によれば、上述したようなブレードピッチ制御装置を備える風力タービンが提供される。
【0051】
風力タービンは、好ましくは、上述したような1つ又は複数のモーションセンサを備える。
【0052】
本発明のさらなる態様によれば、風力タービン用のブレードピッチ制御装置のためのタワーフィードバック制御装置であって、タワーフィードバック制御装置がフィルタリングシステムを備え、フィルタリングシステムが、フィルタリングシステムのフィルタ振動数よりも高い風力タービンの運動に応答して風力タービンに追加の実効剛性を提供するように風力タービンブレードピッチを制御するように構成される、タワーフィードバック制御装置が提供される。タワーフィードバック制御装置、及び好ましくはそのフィルタリングシステムも、好ましくは上述したものと同様である。
【0053】
次に、本発明の好ましい実施形態を、単に例として添付図面を参照して述べる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】典型的な着床式洋上風力タービンの概略図である。
図2】既知のブレードピッチ制御システムの概略図である。
図3】本発明によるブレードピッチ制御システムの実施形態の概略図である。
図4】本発明の一実施形態による、フィルタリングされていない信号とフィルタリングされた信号とを比較するグラフである。
図5】風力タービン基礎台における疲労損傷の蓄積のライフタイム比較プロットである。
図6a】従来の減衰制御と比較した本発明によるブレードピッチ制御装置の有効性を示すシミュレーションの結果を示すプロットである。
図6b】従来の減衰制御と比較した本発明によるブレードピッチ制御装置の有効性を示すシミュレーションの結果を示すプロットである。
図6c】従来の減衰制御と比較した本発明によるブレードピッチ制御装置の有効性を示すシミュレーションの結果を示すプロットである。
図6d】従来の減衰制御と比較した本発明によるブレードピッチ制御装置の有効性を示すシミュレーションの結果を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、着床式洋上風力タービン1用のブレードピッチ制御装置20に関し、風力タービン1は図1に概略的に示され、ブレードピッチ制御装置20は図3に概略的に示されている。
【0056】
本発明のブレードピッチ制御装置20をより良く理解するために、まず、図2に概略的に示されているような従来技術のブレードピッチ制御装置10を考察することが有益である。
【0057】
Smilden,2018でより詳細に述べられているブレードピッチ制御装置10は、公称制御システム11とタワーフィードバックループ12との2つの部品からなる。
【0058】
公称制御システム11は、洋上風力タービン14から信号を受信し、洋上風力タービン14に信号を送信する基本制御装置13を備える。公称制御システム11の基本制御装置13は、発電を最適化するために風力タービンのブレードピッチを調整する。
【0059】
公称制御システム11は、タワーフィードバックループ12と組み合わされ、タワーフィードバックループ12は、タワー運動を低減又は最小化するために風力タービンのブレードピッチを調整する。
【0060】
タワーフィードバックループ12は、洋上風力タービン14から測定値(信号)を直接受信する。タワーフィードバックループ12の主目的は、タワー5における波誘発疲労荷重を低減することである。前後方向での追加の減衰及び剛性をタワー5に提供するために、比例微分コレクティブピッチ制御が採用される。ゼロ参照入力でのタワー変位に対する比例作用は、定常状態ロータ速度誤差をもたらす。したがって、参照モデル16を採用して、風誘発タワー変位を表す非ゼロの参照軌道を生成する。実際、タワーフィードバックループ12は、有意な乱流風変動の振動数付近の振動数範囲内での波誘発タワー変位に対してのみ剛性を提供する。通常、タワー変位に関する情報は、標準的な風力タービン測定では利用可能でない。さらに、参照モデルは、直接測定することができないロータ全体の実効風速に関する情報を必要とする。したがって、これらの変数を決定(又は推定)するために、タワーフィードバックルック12に状態推定器15が必要である。所要の状態推定値を計算するために、離散時間拡張カルマンフィルタが定式化される。
【0061】
フィードバック制御装置17は、状態推定器15及び参照モデル16からの出力を受信し、これを、基本制御装置13からの出力と組み合わせて風力タービン14にフィードバックする。
【0062】
したがって、タワーフィードバックループ12は、(風誘発運動ではなく)波誘発運動のみに応答して剛性が増加されるように動作する。これは、通常は、ある程度の風誘発タワー変位があるためである。すなわち、タワーは風で曲がる(風が変わらない限り、ある程度曲がったままである)。状態推定器15は、タワー運動を推定するのに役立ち、参照モデル16は、(直接測定されない又は直接測定することができない)タワー変位値を提供し、このタワー変位値は、通常の風誘発変位が誤差を引き起こさないように差し引くことができる。簡単に言うと、タワーフィードバックループ12は、直立位置(タワーが必ずしもそこにあるとは限らない)ではなく、(風によって引き起こされる)実際の湾曲位置に対する風力タービンの動きを決定する。
【0063】
しかし、この制御装置10は比較的複雑であり、上述したように様々な欠点を有する。
【0064】
図3に示されるような本発明のブレードピッチ制御装置20は、図2に示されるものと比較して、単純化されて改良されたブレードピッチ制御装置を提供する。
【0065】
ブレードピッチ制御装置20では、公称制御システム11は図2のものと同じである。しかし、制御装置10のタワーフィードバックループ12の代わりに、新たなタワーフィードバックループ22が提供される。
【0066】
タワーフィードバックループ22は、状態推定器15及び参照モデル16の代わりにフィルタリングシステム25を含む。フィルタリングシステム25は、ハイパスフィルタを備え、ブレードピッチアクチュエータの帯域幅内にあるハイパスフィルタのフィルタ振動数よりも高い全ての測定されたタワー動的運動に応答して、すなわち波誘発運動と風誘発運動との両方に応答して、風力タービンに追加の実効剛性を提供するように動作する。これとは対照的に、タワーフィードバックループ12は、タワー5の動的運動の波誘発部分にのみ剛性を提供する。
【0067】
フィルタリングシステム25は、ブレードピッチアクチュエータの帯域幅内にあるハイパスフィルタのフィルタ振動数よりも高い全ての測定されたタワー動的運動に追加の実効剛性を提供するように動作するので、これは、定常風又は風の穏やかな変化(ゼロ又は低振動数)によるタワー5の湾曲による影響を排除するが、タワー5に当たる比較的高い振動数の波によって引き起こされる運動に作用する。
【0068】
タワーフィードバックループ22は、フィードバック制御装置17’を含む。このフィードバック制御装置17’の構造は、図2のフィードバック制御装置17の構造と同じである。それらのパラメータも同じであり得る。しかし、典型的には、フィードバック制御装置17’ではフィードバック制御装置17の場合よりも喫水線の近くにモーションセンサが位置するので(位置するとき)、それらのパラメータは同じではない。
【0069】
フィードバック制御装置17’は信号βTFCを出力し、この信号は、基本制御装置13からの公称ブレードピッチ参照信号uに追加される追加のブレードピッチ参照信号である。
【0070】
フィードバック制御装置17からの出力βTFCは、以下のように表すことができる。
【数10】
ここで、
【数11】
は比例利得、
【数12】
は微分利得である。
【数13】
は、ピッチ角から空力推力への微分の推定値として実装される。
【数14】
ここで、ωはロータ速度であり、βはブレードピッチ角である。
【0071】
さらに、
- χf1は、フィルタリングされた位置測定/推定値χであり、ナセル方向での並進(サージ)又は角運動(ピッチ)のいずれかに関連することがある。これは、直接測定することができ、又は位置、速度、及び/若しくは加速度の測定値に基づいて計算することもできる。

【数15】
は、フィルタリングされた速度測定/推定値
【数16】
であり、ナセル方向での並進速度又は角速度のいずれかに関連することがある。これは、直接測定することができ、又は位置、速度、及び/若しくは加速度の測定値に基づいて計算することもできる。
【0072】
風力タービンに対するx方向は、図1に示されるような方向である。
【0073】
フィルタリングは、フィルタリングシステム25によって提供される。位置及び速度の測定には異なるフィルタリングを使用することができるが、
【数17】
の測定では、フィルタリングはまったく必要ないことがある。
【0074】
測定値χ及び
【数18】
に適用されるフィルタリングは、典型的には以下のようである。
- 静的及び準静的な運動のフィルタリング(これは、典型的には、低振動数の風誘発運動になる)。これは、ラプラス変換を用いた2次バターワースハイパスフィルタで実現することができる。
【数19】
ここで、hfaはラプラス変換関数であり、ωfaはラジアン/秒単位のハイパスフィルタ振動数であり、sはラプラス変数である。
- 3枚翼の風力タービンのブレード通過振動数に対応する3P振動数(2枚翼の風力タービンの場合には2P振動数)のフィルタリング。これは、以下の形式の2次ノッチフィルタで実現することができる。
【数20】
ここで、hfbはラプラス変換関数、sはラプラス変数である。ωfbは、ラジアン/秒単位のノッチフィルタ振動数であり、ζ及びζは、それぞれノミネータ及び分母の相対減衰である。
- 例えば2次バターワースローパスフィルタを使用することによって、生じ得る高周波ノイズ/応答の従来のローパスフィルタ処理(十分に高いフィルタ振動数を用いる)が必要となり得る。
【0075】
風力タービン1には、位置χ及び速度
【数21】
を測定するためのモーションセンサ(図示せず)が提供される。これらのセンサは、波誘発運動をより良く捕捉し、ブレード通過振動数効果などの風誘発ノイズをあまり捕捉しないように、有利には(例えばナセル4の近く/ナセル4にではなく)喫水線8付近又は喫水線8に位置する。洋上風力タービン1のプラットフォームデッキ(図示せず)は、そのようなモーションセンサにとって、実用的であり有利な位置であり得る。
【0076】
センサ位置のそのような選択は、有利には3P(又は2P)振動数のフィルタリングを必要としないことがあり、式(1)からの1つの可能な制御構成は以下のようになる。
【数22】
【数23】
ここで、hfa(s)のハイパスフィルタ振動数は、例えば以下のように選択することができる。
【数24】
【0077】
図4は、フィルタリングされていない信号χ(青、上の線)及びフィルタリングされた信号χf1(赤、下の線)について時間に対してプロットされたタワー変位を示す、シミュレートされたデータのグラフである。フィルタリングされていない信号は、波振動数励起と、静的及び準静的な風振動数励起とを含む。フィルタリングされた信号は、
【数25】
を用いた上式(5)に基づく。
【0078】
見てわかるように、フィルタリングされた信号は、ゼロを中心とする平均変位を示し、フィルタリングされていない信号は、時間と共に増加する変位を示す。
【0079】
ブレードピッチ制御装置20は、図2の従来技術の制御装置10と比較して実装がかなり単純であるが、非常に似た結果を提供する。
【0080】
下の表は、「基本」制御装置(すなわち公称制御システム11)と、図2のブレードピッチ制御装置10(表では「高度」と表されている)及び図3に示されている本発明のブレードピッチ制御装置20(表では「単純化」と表されている)とのライフタイムの比較を示す。11の異なる制御装置性能比較パラメータが比較される。
【表1】
【0081】
全ての性能比較パラメータにおいて、単純化された制御装置(本発明のブレードピッチ制御装置20)が、高度な制御装置(図2の従来技術のブレードピッチ制御装置10)と同様の性能をもたらすことが示されている。青で網掛けされた結果(最初の5つの結果の列)は、タワーフィードバック制御の望ましい効果である。赤で網掛けされた結果(第6、第7、及び第9の結果の列)は、タワーフィードバック制御の望ましくない効果である。
【0082】
評価される制御装置性能比較パラメータは以下のように定義される。
【表2】
【0083】
図5は、図2の従来技術のブレードピッチ制御装置10(「高度な制御装置」と表記されている)及び公称制御システム11(「負荷減少なしの基本制御」と表記されている)と比較した、本発明のブレードピッチ制御装置20(「提案される単純化された制御装置」と表記されている)を備えた風力タービン基礎台における疲労損傷の蓄積のライフタイム比較を示す。見てわかるように、本発明のブレードピッチ制御装置20は、疲労軽減に関して、図2の従来技術のブレードピッチ制御装置10と同様の性能を提供する。
【0084】
従来の減衰制御と比較した本発明のブレードピッチ制御装置20の有効性を示すシミュレーションの結果を図6a~dに示す。これらのグラフにおいて、黒線は、本発明のブレードピッチ制御装置20(「提案される減衰+剛性制御装置」と表記されている)を表し、青線は先行技術の従来の減衰制御装置(「従来の減衰制御装置」と表記されている)を表し、赤線は、公称制御システム11のみ(「負荷減少なしの基本制御装置」と表記されている)の使用を表す。
【0085】
図6(a)は、振動数の関数としてm/Hz単位で測定された電力密度のプロットであり、タワー上部の変位の電力スペクトル密度を示す。
【0086】
図6(b)は、振動数の関数としてdeg/Hz単位で測定された電力密度のプロットであり、ブレードのピッチ角の電力スペクトル密度を示す。
【0087】
図6(c)は、時間の関数としてのタワー上部の変位のプロットである。
【0088】
図6(d)は、時間の関数としてのブレードのコレクティブピッチ角のプロットである。
【0089】
これらのプロットから、先行技術の従来の減衰制御装置を使用すると、タワー運動とブレードのピッチ活動との両方が0.1Hz付近の振動数範囲で大幅に増加されることがわかる。しかし、本発明のブレードピッチ制御装置20(提案される減衰+剛性制御装置)は、この望ましくない挙動をなくす。
【0090】
本発明のブレードピッチ制御装置20(提案される減衰+剛性制御装置)は、選択されたハイパスフィルタ振動数よりも励起振動数が高く、ブレードピッチアクチュエータの帯域幅内(ノッチフィルタ振動数領域が適用される場合にはその外側)にある場合、波以外の誘発メカニズムに追加の剛性を提供することもできる。
【0091】
参考文献:
1.Van derHooft E,Schaak P,Van Engelen T.Wind turbine control algorithms.DOWEC project-DOWEC-F1W1-EH-03-094/0,Task-3 report 2003.(Van derHooft,2003)
2.Bossanyi E.Wind turbine control for load reduction.Wind Energy 2003;6(3):229-244.(Bossanyi,2003)
3.Smilden E,Bachynski E E,Soerensen A J,Amdahl J.Wave disturbance rejection for monopile offshore wind turbines. Wind Energy 2018.Https://doi.org/10.1002/we.2273.(Smilden,2018).
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d