(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240620BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240620BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240620BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240620BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240620BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240620BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/36 C
H01M10/052
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M10/0568
(21)【出願番号】P 2022549033
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 CN2022076319
(87)【国際公開番号】W WO2022206196
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】202110350908.5
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐佳
(72)【発明者】
【氏名】▲繆▼▲麗▼▲雲▼
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-506792(JP,A)
【文献】特開2009-104900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/36
H01M 10/052
H01M 10/0569
H01M 10/0567
H01M 10/0568
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及びセパレータを含む電気化学装置であって、
前記負極は、負極集電体、及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含み、前記負極集電体上の前記負極活物質層の表面から垂直に前記負極集電体に向かう方向において、前記負極活物質層の前記表面から前記負極集電体に向かって10μm未満の断面孔隙率をX
10とすると、前記X
10は5%≦X
10≦25%を満たし、
前記負極活物質層の圧縮密度は1.35g/cm
3~1.70g/cm
3であり、
前記負極活物質層の片面の厚さは40μm~
80μmであることを特徴とする、電気化学装置。
【請求項2】
前記表面から垂直に前記負極集電体に向かって10μm~20μmの断面孔隙率をX
10-20とすると、前記X
10-20は10%≦X
10-20≦30%を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記負極活物質層の表面から垂直に前記負極集電体に向かって20μm超から前記負極活物質層の前記負極集電体付近の底面までの断面孔隙率をX
>20とすると、前記X
>20は15%≦X
>20≦40%を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記負極活物質層の表面孔隙率をX
表とすると、前記X
表は2%≦X
表≦15%を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記負極活物質層は負極材料を含み、前記負極材料は、
(d)前記負極材料の表面は欠陥を有すること、
(e)前記負極材料の表面はアモルファスカーボンを含むこと、
(f)前記負極材料の表面はC-X構造を有し、Cは炭素であり、ここで、XはH、N、S、B、P、O、Cl、及びF元素から選択される少なくとも1種であること、
(g)前記負極材料の粒子径Dv50は、12μm≦Dv50≦20μmを満たすこと、
(h)前記負極材料の比表面積は、0.5m
2/g~7.0m
2/gであること、
(i)前記負極材料の粉末圧縮密度は1.85g/cm
3以上であること、
のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項6】
1μLの電解液を前記負極活物質層の表面に滴下し、浸潤時間が5秒であると、測定された電解液滴と負極活物質層との接触角が0°~90°であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記負極活物質層の100μm×100μmの範囲内における粒子に対してラマン測定を行い、測定結果は0.2≦I
d/I
g≦0.8を満たし、ここで、I
dは前記負極活物質層の粒子の1350cm
-1におけるピーク強度であり、I
gは前記負極活物質層の粒子の1580cm
-1におけるピーク強度であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記負極活物質層は負極材料を含み、
前記負極材料は、一次粒子及び二次粒子を含み、
前記一次粒子と前記二次粒子との個数比は、1:9~5:5であり、
前記一次粒子の平均粒子径は5μm~10μmであることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項9】
電解液をさらに含み、
前記電解液は、溶媒、リチウム塩、及び添加剤を含み、前記溶媒は、カルボン酸エステルを含み、前記添加剤は、フルオロエチレンカーボネート、LiBF
4、及びエチレンスルファートのうちの少なくとも1つを含み、
前記リチウム塩はLiPF
6を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電気化学装置を含むことを特徴とする、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[相関出願への相互参照]
本発明は、出願番号が202110350908.5であり、出願日が2021年3月31日であり、発明の名称が「電気化学装置及び電子装置」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、提出され、前記中国特許出願の全体内容を参照とし、本発明に援用する。
【0002】
本発明は、電気化学エネルギー蓄積分野に関し、特に電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近年では、電子製品や電気自動車の急速な発展に伴い、電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)の大電流充放電に対する要求も高まっている。電気化学装置の負極は、ロールプレス後に、表層における孔隙率が低下することにより、イオン伝導が悪くなるとともに、浸潤特性も低下し、電気化学装置のレート特性に不利である。
【0004】
例えばリチウムイオン電池などの電気化学装置は、ノートパソコン、携帯電話などの消費型電子デバイス、及び、ドローン、電気自動車などの電動型デバイスに広く応用されている。ユーザの電気化学装置に対する要求が高まるのにつれて、電気化学装置の充電速度に対する要求がますます高くなる。現在の電気化学装置における負極は、使用前にロールプレスが行われる。ロールプレス後の負極は、孔隙率が低下することにより、イオン伝導が悪くなるとともに、電解液の浸潤も悪くなる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施例には、電気化学装置及び電子装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、正極、負極、及びセパレータを含む電気化学装置であって、前記負極は、負極集電体、及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含み、前記負極集電体上の前記負極活物質層の表面から垂直に前記負極集電体に向かう方向において、前記負極活物質層の前記表面から前記負極集電体に向かって10μmまでの断面孔隙率をX10とすると、前記X10は5%≦X10≦25%を満たす電気化学装置を提供する。
【0007】
いくつかの実施例において、前記表面から垂直に前記負極集電体に向かって10μm~20μmの断面孔隙率をX10-20とすると、前記X10-20は10%≦X10-20≦30%を満たす。
【0008】
いくつかの実施例において、前記負極活物質層の表面から垂直に前記負極集電体に向かって20μm超から前記負極活物質の前記負極集電体付近の底面までの断面孔隙率をX>20とすると、前記X>20は15%≦X>20≦40%を満たす。
【0009】
いくつかの実施例において、下記条件(a)~(c)のうちの少なくとも1つを満たす。(a)負極活物質層の表面孔隙率をX表とすると、前記X表は2%≦X表≦15%を満たすこと、(b)負極活物質層の圧縮密度(Compacted Density)は1.35g/cm3~1.70g/cm3であること、(c)負極活物質層の片面の厚さは40μm~120μmであること。
【0010】
いくつかの実施例において、負極活物質層は負極材料を含み、負極材料は下記条件(d)~(i)のうちの少なくとも1つを満たす。(d)負極材料の表面は欠陥を有すること、(e)負極材料の表面はアモルファスカーボンを含むこと、(f)負極材料の表面はC-X構造を有し、Cは炭素であり、ここで、XはH、N、S、B、P、O、Cl、及びF元素のうちから選択される少なくとも1種であること、(g)負極材料の粒子径Dv50は、12μm≦Dv50≦20μmを満たすこと、(h)負極材料の比表面積は、0.5m2/g~7.0m2/gであること、(i)負極材料の粉末圧縮密度は1.85g/cm3以上であること。
【0011】
いくつかの実施例において、1μL電解液を負極活物質層の表面に滴下し、浸潤時間が5秒である場合、測定された電解液滴と負極活物質層との接触角が0°~90°である。
【0012】
いくつかの実施例において、負極活物質層の100μm×100μmの範囲内における粒子に対してラマン測定を行い、測定結果は0.2≦Id/Ig≦0.8を満たし、ここで、Idは負極活物質層の粒子の1350cm-1におけるピーク強度であり、Igは負極活物質層の粒子の1580cm-1におけるピーク強度である。
【0013】
いくつかの実施例において、負極材料は、一次粒子及び二次粒子を含み、一次粒子と二次粒子との個数比は、1:9~5:5である。
【0014】
いくつかの実施例において、前記一次粒子の平均粒子径は5μm~10μmである。
【0015】
いくつかの実施例において、負極活物質層は、さらにバインダーを含む。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレンとポリヘキサフルオロプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸エステル、及びエポキシ樹脂のうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
いくつかの実施例において、電解液をさらに含み、電解液は、溶媒、リチウム塩、及び添加剤を含み、溶媒は、カルボン酸エステルを含み、添加剤は、フルオロエチレンカーボネート、LiBF4、及びエチレンスルファートのうちの少なくとも1つを含み、リチウム塩はLiPF6を含む。
【0017】
本発明は、前記のいずれか一項の電気化学装置を含む電子装置をさらに提供する。
【0018】
本発明の実施例は電気化学装置と電子装置を提供する。電気化学装置は、正極、負極、及びセパレータを含む電気化学装置であって、前記負極は、負極集電体、及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含み、前記負極集電体上の前記負極活物質層の表面から垂直に前記負極集電体に向かう方向において、前記負極活物質層の前記表面から前記負極集電体に向かって10μmまでの断面孔隙率をX10とすると、前記X10は5%≦X10≦25%を満たす。本発明におけるいくつかの実施例は、電解液及び負極活物質層の浸潤性を向上させ、イオンの伝導経路を提供することにより、抵抗の低下、リチウム析出の減少に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明のいくつかの実施例における負極の負極集電体に垂直な方向に沿って得られる断面図を示す。
【
図3】
図3は、ソフトウェアImage Jにより、
図2の断面図に対して、孔隙率を統計する模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施例は、当業者に本発明をより全面的に理解させることができるが、本発明を何ら制限するものではない。
【0021】
本発明のいくかの実施例は、正極、負極、及びセパレータを含む電気化学装置を提供し、負極は、負極集電体、及び負極集電体上に位置する負極活物質層を含み、負極活物質層は負極集電体の片面又は両面に配置されることができ、前記負極集電体上の前記負極活物質層の表面から垂直に前記負極集電体に向かう方向(すなわち、負極活物質層の表面から負極集電体へ向かう方向)において、表面から負極集電体に向かって10μmまでの断面孔隙率(すなわち、表面から表面以下10μmまでの領域の断面孔隙率)をX10とすると、前記X10は5%≦X10≦25%を満たす。注意すべきことは、負極活物質層の表面は、負極を分解する際に、外側に露出する面が負極活物質層の表面である一方、負極集電体に近い面が底面である。表面から負極集電体への方向に向かって10μmまでの断面孔隙率は、表面から表面に10μm離れるまでの範囲を通す負極集電体に垂直する方向の切断面、即ち断面の孔隙率である。
【0022】
本発明のいくつかの実施例において、負極活物質層の厚さは10μmを超える。断面孔隙率を測定する時、負極を負極集電体に垂直する方向で切断して、負極活物質層の断面を得る(
図1に示された通りである)。そして、測定しようとする断面の位置を選択する。測定面積は、断面に応じて異なる測定面積を選択してもよい。Thermo Fisher Scientific製のApero S電子顕微鏡にインストールされる広範囲画像接合Mapsソフトウェアを採用し、電圧を2KV、ビーム電流を0.2nA、画像の拡大倍率を1000倍とし、後方散乱電子の成分コントラスト像により、負極活物質層の粒子と孔隙の明暗が明らかに区別される画像を得る(
図2に示された通りである)。画像に対して、ソフトウェアImage Jにより、下記のように処理を行う。まず、画像をグレイスケール画像に設置する。そして、ソフトウェアのThresholdオプションを選択し、画像に二値化処理を行い、負極は黒エリアとして表示され、孔隙は白エリアとして表示される。その後、ソフトウェアのrectangle枠を選択し、エリアを選択し、粒子を分析する。ソフトウェアは孔隙が画像全体の面積に占める面積を自動的に統計して、孔隙率を得る(
図3に示された通りである)。電気化学装置の製造過程において、ロールプレスを行う必要がある。ロールプレスの過程中に、負極活物質層の孔隙率が減少する。負極活物質層の孔隙率が大きすぎると、体積エネルギー密度が低くなる。負極活物質層の孔隙率が小さすぎると、電解液の浸潤性に影響し、イオンの伝導経路にも影響する。いくつかの実施例において、負極活物質層の表面以下における異なる深さの断面孔隙率は異なる。負極活物質層の表面から負極活物質層の表面以下10μmまでの断面孔隙率は5%≦X
10≦25%を満たす。体積エネルギー密度をできる限り高めるとともに、ある程度の孔隙率を保証することで、イオンを伝導し、電解液を浸潤することができる。本発明のいくつかの実施例において、体積エネルギー密度を保証するとともに、電解液の浸潤を保証し、イオンの伝導速率を向上させることで、電気化学装置の動力学特性とレート特性に有利であり、さらに電気化学装置の充電速度の向上に有利である。
【0023】
本発明のいくつかの実施例において、負極活物質層の表面から垂直に前記負極集電体に向かって10μm~20μm範囲の断面孔隙率X10-20は、10%≦X10-20≦30%を満たす。負極活物質層の表面から垂直に負極集電体に向かって20μmを超える範囲から負極活物質層の負極集電体付近の底面までの断面孔隙率X>20は、15%≦X>20≦40%を満たす。いくつかの実施例において、負極活物質層の表面から垂直に負極集電体に向かって、負極活物質層の深さが増すに伴い、イオン伝導距離が増し、且つ電解液が浸潤しにくくなる。そのため、負極活物質層から垂直に負極集電体に向かって10μm~20μmにおける断面孔隙率が10%≦X10-20≦30%を満たすように設定し、負極活物質層の表面から垂直に負極集電体に向かって20μmを超える範囲から負極活物質層の負極集電体付近の底面までの断面孔隙率を、15%≦X>20≦40%を満たすように設定することによって、負極活物質層内部の電解液の浸潤特性及びイオン伝導経路が十分であることを保証するとともに、体積エネルギー密度をできるだけ高める。電気化学装置の負極活物質層の孔隙率が合理的に分布することによって、体積エネルギー密度を保証するとともに電解液の浸潤を加速させ、イオンの伝導速度を向上させることができる。そのため、電気化学装置の動力学的特性とレート特性に有利であり、さらに電気化学装置の充電速度の向上に有利である。
【0024】
本発明のいくつかの実施例において、負極活物質層の表面孔隙率X表は、2%≦X表≦15%を満たす。負極活物質層の表面は、負極を負極活物質層から分解する際に、外側に露出する面が表面で、即ち、集電体より遠い方の負極活物質層の表面である。いくつかの実施例において、負極活物質層の表面孔隙率は、電解液の浸潤特性及びイオン拡散特性に直接影響する。従って、浸潤特性とイオン伝導速率に影響しないために、負極活物質層の表面孔隙率は小さすぎてはならない。一方、負極活物質層の孔隙率が大きすぎると、体積エネルギー密度が不足になり、且つ負極活物質層表面の粒子同士の凝集力が不足になることにより、負極活物質層の粒子が剥離するおそれがある。
【0025】
本発明の負極活物質層の圧縮密度は1.35g/cm3~1.70g/cm3である。いくつかの実施例において、負極活物質層の圧縮密度は負極活物質層の孔隙率に関連する。圧縮密度が高いほど孔隙率が小さくなり、圧縮密度が低いほど孔隙率が大きくなる。そのため、圧縮密度を制御する必要がある。圧縮密度が低すぎると、体積エネルギー密度にも不利である。圧縮密度が高すぎると、孔隙率が低すぎるようになるほか、負極活物質層における粒子が破砕され、負極活物質層の構造が破壊されるおそれがある。
【0026】
いくつかの実施例において、負極活物質層の片面の厚さは40μm~120μmである。いくつかの実施例において、負極活物質層の片面の厚さとは、負極集電体の片面に位置する負極活物質層の厚さである。負極活物質層の片面の厚さが小さすぎると、蓄積可能なエネルギーが不足になり、電気化学装置のエネルギーが低下するおそれがある。負極活物質層の片面の厚さが大きすぎると、負極活物質層と負極集電体との接着力に対する要求が高くなり、より多くの接着剤が必要となり、負極活物質層の導電性が低下するおそれがある。
【0027】
本発明のいくつかの実施例において、負極活物質層は負極材料を含み、負極材料の表面は欠陥を有する。いくつかの実施例において、欠陥は、例えば、負極材料の結晶構造にヘテロ原子を導入することによる点欠陥、一部の原子の欠落による空室欠陥、又は格子転位による欠陥のうちの少なくとも1つを含む。負極材料の表面の欠陥は、負極材料と電解液との接触面を増加できるため、電解液の浸潤に有利である。一方、負極材料の表面の欠陥は、イオンの吸蔵又は放出の経路を増加することができ、イオンの伝導に有利である。負極材料の表面の欠陥は、例えばラマン測定により測定されることができる。
【0028】
本発明のいくつかの実施例において、負極材料の表面はアモルファスカーボン構造を有する。いくつかの実施例において、負極材料は例えば炭素材料を含み、又は負極材料の表面は炭素材料を有する。アモルファスカーボン構造とは、sp2構造とsp3構造からなる無秩序な構造が局所的に形成されている。負極材料表面のアモルファスカーボン構造は、以下のように構成されることができる。即ち、負極材料表面にピッチ、樹脂、及びタールのうちの少なくとも1つを被覆した後、一定の条件下、例えば、600℃~1200℃の条件下で熱処理を行い、アモルファスカーボン構造を構成することができる。
【0029】
いくつかの実施例において、前記負極材料の表面はC-X構造を有し、Cは炭素であり、ここで、XはH、N、S、B、P、O、Cl、及びF元素のうちから選択される少なくとも1種である。本発明のいくつかの実施例において、負極材料は炭素材料、例えば黒鉛であってもよい。負極材料の表面に対して光電子分光測定を行うことで、負極材料表面のC-X構造を確定することができる。C-X構造も欠陥の1つである。負極材料の表面が一定量のX元素を有すると、電解液と負極材料表面との界面張力を低減することができ、電解液の浸潤に有利である。
【0030】
本発明のいくつかの実施例において、負極材料の粒子径Dv50は、12μm≦Dv50≦20μmを満たす。いくつかの実施例において、負極材料の粒子径が小さすぎると、電解液の消費が増加し、サイクル特性に不利である。負極材料の粒子径が大きすぎると、レート特性に不利になる可能性がある。
【0031】
いくつかの実施例において、負極材料の比表面積は、0.5m2/g~7.0m2/gである。いくつかの実施例において、負極材料の比表面積が小さすぎると、イオンの伝導に不利であるため、充放電速度の向上に不利である。負極材料の比表面積が大きすぎると、電解液の消費が増加する可能性がある。いくつかの実施例において、負極材料の比表面積が上記範囲内にあると、電気化学装置におけるイオン(例えば、リチウムイオン)の放出に有利である。
【0032】
いくつかの実施例において、負極材料の粉末圧縮密度は1.85g/cm3以上である。いくつかの実施例において、負極材料の粉末圧縮密度が上記範囲内にあると、電気化学装置のエネルギー密度の向上に有利であり、イオンが負極材料から円滑に放出することを確保するのに有利である。
【0033】
いくつかの実施例において、1μLの本発明に提供される組成の電解液を負極活物質層表面に滴下し、浸潤時間が5秒である場合、測定された電解液滴と負極活物質層との接触角が0°~90°である。いくつかの実施例において、電解液と負極活物質層との接触角が上記範囲にあることは、負極活物質層が電解液との親和性が良好であり、電解液が負極活物質層を良好に浸潤することができることを表す。
【0034】
いくつかの実施例において、負極活物質層の100μm×100μmの範囲内における粒子に対してラマン測定を行い、測定結果は0.2≦Id/Ig≦0.8を満たし、ここで、Idは負極活物質層の粒子の1350cm-1におけるピーク強度であり、Igは負極活物質層の粒子の1580cm-1におけるピーク強度である。いくつかの実施例において、負極材料は炭素材料、例えば黒鉛を含む。Id及びIgは、例えば、炭素原子結晶のラマン測定結果におけるDピーク及びGピークの強度である。Dピークは炭素原子格子の欠陥を反映し、Gピークは炭素原子のsp2混成の面内伸縮振動を反映し、Id/Igは欠陥の濃度を反映する。格子に一定の欠陥を有することは、接触面積の増加、浸潤性の向上に有利であるが、欠陥の濃度が高すぎると、負極材料自身の特性に影響するおそれがある。
【0035】
いくつかの実施例において、負極材料は、一次粒子及び二次粒子を含み、一次粒子と二次粒子との個数比は、1:9~5:5である。いくつかの実施例において、二次粒子は複数の一次粒子からなり、二次粒子の粒子径は一般的に一次粒子より大きく、一次粒子と二次粒子とを混合することにより、一次粒子を二次粒子の隙間に充填することができる。両方の割合を制御することで、イオン拡散に有利であるとともに、高いエネルギー密度を保証することができる。一次粒子の平均粒子径は5μm~10μmである。一次粒子の粒子径を上記範囲に制御することで、イオン拡散に有利であるとともに、高いエネルギー密度を保証することができる。
【0036】
いくつかの実施例において、負極活物質層は、さらにバインダーを含む。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレンとポリヘキサフルオロプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸エステル、及びエポキシ樹脂のうちの少なくとも1つを含む。
【0037】
いくつかの実施例において、電解液をさらに含み、電解液は、溶媒、リチウム塩、及び添加剤を含み、溶媒は、カルボン酸エステルを含み、添加剤は、フルオロエチレンカーボネート、LiBF4、及びエチレンスルファートのうちの少なくとも1つを含み、リチウム塩はLiPF6を含む。
【0038】
いくつかの実施例において、正極は正極集電体及び正極活物質層を含み、正極活物質層は正極材料を含む。正極材料は、例えば、チタン酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、及びニッケル酸リチウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0039】
いくつかの実施例において、正極活物質層は、正極材料の以外に、導電剤とバインダーを含んでもよい。導電剤は、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、グラフェン、ケッチェンブラック、及び導電性カーボンブラックのうちの少なくとも1つを含んでもよい。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、及びスチレンブタジエンゴムのうちの少なくとも1つを含んでもよい。いくつかの実施例において、正極集電体は、Al箔を採用してもよく、同様に、当分野で一般的に使用されるその他の正極集電体を採用してもよい。
【0040】
いくつかの実施例において、負極活物質層は負極材料を含む。負極材料はシリコン材料及び黒鉛のうちの少なくとも1つを含む。シリコン材料はシリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素化合物、及びシリコン合金のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施例において、負極の集電体は、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、及び炭素系集電体のうちの少なくとも1つを含んでもよい。いくつかの実施例において、負極活物質層はさらに、導電剤を含んでもよい。いくつかの実施例において、負極活物質層における導電剤は、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、導電性黒鉛、及びグラフェンのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施例において、導電剤が負極活物質層に占める質量分率は0.5~10%である。
【0041】
いくつかの実施例において、セパレータは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、及びアラミドのうちの少なくとも1つを含む。例えば、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び超高分子量ポリエチレンのうちの少なくとも1つを含む。特に、ポリエチレンとポリプロピレンは、短絡の防止に対して良好な効果を有し、シャットダウン効果により電池の安定性を向上させることができる。いくつかの実施例において、セパレータの厚さは約5μm~500μmの範囲にある。
【0042】
本発明のいくつかの実施例において、電気化学装置の電極群は巻取式電極群、又は積層式電極群である。
【0043】
いくつかの実施例において、電気化学装置はリチウムイオン電池を含むが、本発明はこれに限定されない。いくつかの実施例において、リチウム塩はさらに、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiSiF6、LiBOB、及びジフルオロホウ酸リチウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0044】
いくつかの実施例において、電解液の添加剤はさらに、炭酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、その他の有機溶媒、又はこれらの組み合わせを含む。炭酸エステル化合物は、鎖状炭酸エステル化合物、環状炭酸エステル化合物、フッ素化炭酸エステル化合物、及びこれらの組み合わせから選択されてもよい。鎖状炭酸エステル化合物は、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、及びこれらの組み合わせから選択されてもよい。前記環状炭酸エステル化合物は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、及びこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0045】
いくつかの実施例において、電解液の溶媒はさらに、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、デカラクトン、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトン、ギ酸メチル、及びこれらの組み合わせを含む。
【0046】
本発明のいくつかの実施例において、リチウムイオン電池を例とし、正極極片、セパレータ、負極極片をこの順に巻き取り、又は積層し、電極群にする。その後、例えばアルミラミネートフィルムに入れて封止し、電解液を注入し、フォーメーション・封止することで、リチウムイオン電池を調製する。そして、調製したリチウムイオン電池に対して、特性測定を行う。
【0047】
本発明の実施例はさらに、上記電気化学装置を含む電子装置を提供する。本発明の実施例の電子装置は、特に限定されなく、先行技術に使用される既知の任意の電子装置であってもよい。いくつかの実施例において、電子装置は、ノートコンピューター、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子ノートブック、電卓、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、フラッシュライト、カメラ、大型家庭用蓄電池、及びリチウムイオンコンデンサーなどを含むが、それらに限定されない。
【0048】
以下、本発明をよりよく説明するために、いくつかの具体的な実施例を挙げた。ここで、リチウムイオン電池を例示として挙げた。
【0049】
正極の調製:コバルト酸リチウム(分子式LiCoO2)、アセチレンブラック、及びポリフッ化ビニリデン(PVDFと略記)を、重量比96:2:2で適量のN-メチルピロリドン(NMPと略記)である溶媒に、十分に攪拌・混合して、均一な正極スラリーを形成した。正極スラリーをアルミ箔に塗布し、乾燥し、冷間圧延し、裁断し、タブを溶接して、正極を得た。
【0050】
負極の調製:黒鉛、スチレンブタジエンゴム(SBRと略記)、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCと略記)を、重量比95:2:3で脱イオン水である溶媒に、十分に攪拌・混合して、均一な負極スラリーを形成した。負極スラリーを、予め下塗り層(カーボンブラック)が塗布されておいた負極集電体である銅箔に塗布し、下塗り層の厚さが1.5μmであり、乾燥して、異なるロールプレス圧力で塗布された負極を冷間圧延し、裁断し、溶接した。
【0051】
負極材料における一次粒子及び二次粒子の分率は、SEMの統計手段で粒子を統計することができる。SEMで1000μm×1000μm範囲における粒子を取得し、一次粒子及び二次粒子をマークし、2つ以上の粒子が凝集した粒子を二次粒子と定義し、残りのものを一次粒子と定義する。当該手段により一次粒子及び二次粒子が占める比率を統計した。一次粒子の平均粒子径は、SEMによるマークされた粒子に対する統計で得られた粒子粒度によって得られる。十分なサンプル量を統計するために、30枚の画像におけるの粒子の粒子径を統計した。各画像の一次粒子の平均粒子径を算出し、30枚の画像の平均粒子径、即ち、一次粒子の平均粒子径を算出した。負極活物質のDv50は粒子粒度測定器によって測定されることができ、粒子粒度測定方法はGB/T 19077-2016を参照した。具体的なプロセスは、サンプル1gを秤量して脱イオン水20mL及び微量の分散剤と均一に混合し、超音波装置に5min放置した後、溶液をサンプル注入システムHydro 2000SMに投入して測定した。使用された測定設備はMalvern社製Mastersizer 3000であった。測定中には、レーザビームが分散した粒子サンプルを通過する時、散乱光の強度を測定することによって粒度の測定を行った。そして、データを分析・計算に用い、当該散乱スペクトルの粒子粒度分布を形成した。
【0052】
セパレータの調製:厚さ7μmのポリエチレン多孔質ポリマーフィルムをセパレータとした。
【0053】
電解液の調製:乾燥のアルゴンガス雰囲気で、エチレンカーボネート(EC)と、プロピレンカーボネート(PC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、重量比1:1:1で混合した溶媒に、LiPF6の濃度が1.15mol/Lになるように、LiPF6を入れて均一に混合した。そして、フルオロエチレンカーボネート及びアジポニトリルを入れて均一に混合して電解液を得た。ここで、電解液の総重量に対して、フルオロエチレンカーボネートの重量含有量が3%、アジポニトリルの重量含有量が2%であった。下記の電解液による浸潤時間の測定は、当該電解液の組成を採用した。
【0054】
リチウムイオン電池の作製:セパレータが正極と負極の間に位置して隔離作用を果たすように、正極、セパレータ、負極をこの順に積層して、巻き取り、ベアセルを得、タブを溶接した後、ベアセルを外包装であるアルミ箔プラスチックフィルムの中に置き、前記調製した電解液を乾燥したベアセルに注入し、真空パッケージ、静置、フォーメーション、成形、容量測定等の工程を経て、ソフトパックリチウムイオン電池を得た。
【0055】
用語解釈:負極材料一次粒子とは、破砕後に得られた一定の粒子の粒度分布のある粒子が直接黒鉛化されたサンプルである。負極活物質材料二次粒子とは、破砕後に一定の割合のピッチと混合され、造粒装置により一定の温度で熱処理されることで粒子と粒子との間がピッチによって接着され、そして黒鉛化されて得られた二次粒子である。負極活物質における一次粒子の含有量とは、一次粒子と二次粒子との混合割合を制御することによって得られたものである。
【0056】
実施例と比較例の各特性パラメータの測定方法は以下の通りである。
【0057】
1)断面孔隙率の測定方法
負極イオン研磨(CP)サンプルの作製プロセス:負極活物質層を0.5cm×1cmのサイズに裁断し、裁断された負極活物質層を導電性接着剤により1cm×1.5cmのサイズのシリコンウエハキャリアに貼り付け、そして負極シートの一端をアルゴンイオン研磨(パラメータ:加速電圧8KVで、各サンプルに4h)により処理した。アルゴンイオン研磨とは、高圧電場によりアルゴンガスをイオン化してイオン状態にし、生成されたアルゴンイオンは加速電圧の作用により負極シート表面に高速で衝突して、負極シートを一層ずつ削り取り、研磨効果を実現するものである。
【0058】
活物質層CPサンプルの作製が完了した後、走査型電子顕微鏡(SEM)により分析した。本発明は、JEOL社製JSM-6360LV型である走査型電子顕微鏡を使用し、サンプルの形態と構造を分析した。
【0059】
活物質層の異なる厚さの断面孔隙率測定:測定面積1000μm×Aμmを選択し、A=10μm、Aが0μm~10μm、10μm~20μm、及びA>20μmの厚さにおける断面内のすべての粒子及び粒子の間の隙間を統計した。画像の明るさによって、粒子と孔隙とを区別する。ここで、明るさが高いのが粒子であり、明るさが低いのが孔隙である(
図2に示された通りである)、ソフトウェアImage Jを用いて画像を処理し、粒子を黒色の背景に、孔隙を白色に調整し、孔隙が画像全体を占める面積を統計し、断面孔隙率を得た(
図3に示された通りである)。同じ方法で、表面孔隙率を統計した。模式図は
図1に示された。
【0060】
2)活物質層の表面孔隙率の測定方法
活物質層の表面から、測定面積1000μm×100μmを選択した。活物質層表面とは集電体より遠い方の活物質層の表面である。当該表面内のすべての粒子及び粒子の間の隙間を統計した。画像の明るさによって、粒子と孔隙とを区別する。ここで、明るさが高いのが粒子であり、明るさが低いのが孔隙である。ソフトウェアImage Jを用いて画像を処理し、粒子を黒色の背景に、孔隙を白色に調整し、孔隙が画像全体を占める面積を統計し、表面孔隙率を得た。
【0061】
3)接触角の測定方法
一定の温度(通常は室温)で、電解液(電解液は上述した電解液組成である)1μLを活物質層表面に滴下し、CCD(荷電結合素子)により光学イメージングを行い、得られた画像に対してフィッティングを行い、活物質層の表面に対する電解液の接触角を得た。接触角は、特定の表面に対する液体の浸潤性を表すことができる。前記電解液は上述した電解液組成であった。
【0062】
4)負極活物質層の孔隙率の測定方法
負極活物質層サンプルを完全な円板に調製した。各実施例又は比較例ごとに30個のサンプルを測定し、各サンプル体積は約0.35cm3であった。「GB/T 24586-2009鉄鉱石の見掛け密度、真密度及び孔隙率の測定」の標準に基づき、負極活物質層の孔隙率を測定した。測定ガスはヘリウムガスであった。
【0063】
5)負極活物質層の浸潤時間の測定方法
長さ50mm、幅50mmの負極活物質層サンプルを取った。乾燥条件下で、電解液5mLをサンプル表面に滴下し、計時を開始した。サンプル表面の電解液が完全に消失する時点で、計時を終了した。計時した時間を負極活物質層の浸潤時間として記録した。各実施例又は比較例ごとに30個のサンプルを測定し、平均値を算出した。前記電解液は上記した電解液組成であった。
【0064】
6)比表面積測定方法
比表面積の測定方法はGB/T 19587-2017を参照した。具体的なプロセスとして、サンプル1g~8gを秤量し(サンプルの秤量は少なくともボールの体積の1/3を占める)、1/2インチのボール部付きのチューブ(ボール部のチューブ径が12mmである)に置き、200℃で2h前処理した後、測定装置TriStar3030(米国Micromeritics社)に置いて測定した。使用した吸着ガスはN2(純度:99.999%)であり、測定条件77Kで行い、BETの計算法により比表面積を測定した。
【0065】
7)粉末圧縮密度測定方法
粉末圧縮密度の測定はGB/T 24533-2009「リチウムイオン電池の黒鉛系負極材料」を参照した。具体的な方法として、サンプル1.0000±0.0500gを秤量して測定金型(CARVER#3619(13mm))に置き、そしてサンプルを測定装置に置いた。測定装置はSUNS UTM7305であった。測定トン数は0.3t~5.0tであった。本文における粉末圧縮密度はいずれも5t下で測定された粉末圧縮密度である。圧縮密度の計算式は、圧縮密度=負極材料質量/負極材料受力面積/サンプルの厚さである。
【0066】
8)ラマン表面欠陥度測定
負極活物質層からサイズが100m×100mである面積を選択し、顕微レーザーラマン分光測定装置(Raman、HR Evolution、HORIBA Scientific)により当該面積内の粒子をスキャンし、当該面積範囲内のすべての粒子のDピーク及びGピークを得た。ソフトウェアLabSpecによりデータを処理し、各粒子のDピーク及びGピークの強度をそれぞれID及びIGとして得た。ラマン分光光度計のレーザー波長は532nm~785nmの範囲にあってもよい。本文におけるID/IGの値は、当該範囲内に測定されたすべてのIDとIGとの比の平均値である。Dピークは、一般的に、1350±50cm-1付近に出現し、芳香環におけるsp2炭素原子の対称伸縮振動ラジアルブリージングモードによるもの(構造欠陥)である。Gピークは、1580±50cm-1付近に出現し、sp2炭素原子の間の伸縮振動によるものであり、ブリユアンゾーンの中心のE2g光学フォノンの振動(炭素原子の面内振動)に対応する。
【0067】
9)リチウムイオン液相移動抵抗(Rion)の測定方法
リチウムイオン電池を、フランスBio-Logic社製、Bio-Logic VMP3B電気化学ワークステーションに接続し、測定した。周波数範囲は30mHz~50kHzであり、振幅は5mVであった。データを採取した後、インピーダンス複素数平面図を用いてデータを分析し、リチウムイオン液相移動抵抗(Rion)を得た。
【0068】
10)リチウムイオン電池の5C放電容量維持率の測定方法
リチウムイオン電池を25℃で5分間静置した後、0.7Cの電流で4.45Vまで定電流充電し、4.45Vの定電圧で0.05Cまで充電し、5分間静置した後、0.5Cの定電流で3.0Vまで放電し、5分間静置した。上記充放電プロセスを繰り返し、0.1Cで放電し、リチウムイオン電池の0.1C放電容量を記録して、そして、5Cで放電し、リチウムイオン電池の5C放電容量を記録する。下記の式により、リチウムイオン電池の5C放電容量維持率を算出した。
5C放電容量維持率=(5C放電容量/0.1C放電容量)×100%
【0069】
11)リチウムイオン電池の直流抵抗(DCR)の測定方法
25℃で、リチウムイオン電池を1.5Cの定電流で4.45Vまで充電し、そして、4.45Vの定電圧で0.05Cまで充電し、30分間静置した。0.1Cで10秒間放電し、電圧値をU1として記録した。1Cで360秒間放電し、電圧値をU2として記録した。充放電を5回繰り返した。「1C」とは、リチウムイオン電池の容量を1時間で完全放電させる電流値である。
【0070】
下記の式により、リチウムイオン電池の25℃での直流抵抗Rを算出した。
R=(U2-U1)/(1C-0.1C)
【0071】
ほぼ同じ方法でリチウムイオン電池の0℃での直流抵抗を測定した。区別は操作温度が0℃であることのみであった。
【0072】
別に断らない限り、本明細書に記載したDCRは、リチウムイオン電池の10%荷電状態(SOC)における直流抵抗を指す。
【0073】
12)電気化学インピーダンススペクトル(EIS)
a)3極セルの作製及びリチウムめっきとして、上記のリチウムイオン電池の調製方法と同じであった。リチウムイオン電池の調製プロセス中に、銅ワイヤを参照電極として電池に接続した。銅ワイヤの接触位置は負極集電体の活物質層のない空白エリアであって、タブと接触しないようにタブに近づく位置であった。そして、銅ワイヤ及び負極集電体との接触エリアに、20μAの電流でリチウムめっきをそれぞれ6h行った。リチウムめっきが終了した後、EISを測定した。
【0074】
b)EIS測定ステップ:リチウムめっきした3極セルを、フランスBio-Logic社製、Bio-Logic VMP3B電気化学ワークステーションに接続し、測定した。周波数範囲は30mHz~50kHzであり、振幅は5mVであった。データを採取した後、インピーダンス複素数平面図を用いてデータを分析し、Rctのデータを得た。
【0075】
13)負極リチウム析出状態の測定方法
測定用リチウムイオン電池を取り、測定温度である0℃で5分間静置した後、0.8Cの電流で4.45Vまで定電流充電し、4.45Vの電圧で0.05Cまで定電圧充電し、5分間静置した後、さらに0.5Cの電流で3.0Vまで定電流放電し、5分間静置した。上記充放電プロセスを10回繰り返した後、電池を満充電にし、乾燥室内で分解し、負極の状態を撮影して記録した。
【0076】
リチウム析出程度の判定:満充電で分解された負極の状態によって判定した。負極全体が黄金色であり、且つ灰色の面積<2%である場合、リチウム析出なしと判定した。負極の大部分が黄金色であるが、一部箇所で灰色が観察され、灰色面積が2%~20%である場合、リチウム軽度析出と判定した。負極の一部が灰色であり、一部の黄金色がまだ観察でき、灰色の面積が20%~60%である場合、リチウム析出と判定した。負極の大部分が灰色であり、灰色面積>60%である場合、リチウム重度析出と判定した。
【0077】
14)リチウムイオン電池のサイクル膨張率の測定方法
リチウムイオン電池を25℃で5分間静置した後、0.7Cの電流で4.45Vまで定電流充電し、4.45Vの定電圧で0.05Cまで充電し、5分間静置した。MMC測定法により、リチウムイオン電池の3箇所の厚さを測定し、平均値を取り、MMC0とした。そして、リチウムイオン電池を0.5Cの電流で3.0Vまで定電流放電し、5分間静置した。上記の充放電サイクルを500回繰り返し、毎回ごとにリチウムイオン電池の3箇所の厚さを測定し、平均値MMCx(xはサイクル回数を表す)を取った。
【0078】
下記の式により、リチウムイオン電池の45℃でのサイクル膨張率を算出した。
サイクル膨張率(45℃)=(MMCx-MMC0)/MMC0×100%
【0079】
上述したMMC測定法として、マイクロメーター(日本Mitutoyo製、型番:MDC-25SX)を用い、リチウムイオン電池の正極タブのところの厚さを測定し、各サンプルに3つの異なる箇所で測定し、平均値を取り、MMC厚さとした。
【0080】
各実施例と比較例のパラメータの違いは、断面孔隙率にあり、具体的な違い及び測定結果は以下の表に示された通りであった。実施例1~実施例18及び比較例1は、極片に作用するロールプレスの圧力を調整することで、断面層における孔隙分布が異なる負極を得た。ロールプレスの圧力は、極片が通すロール間の隙間を調整することによって得られた。ロールプレスの圧力範囲は2T~12Tであった。実施例1~3、実施例4~8、実施例9~12、実施例13~16、実施例17~18は、負極活物質の厚さを調整することによって得られ、負極集電体の片面上における負極活物質層の厚さは40μm~80μmであった。実施例1~実施例3の片面の負極活物質層の厚さは、それぞれ40μm、60μm、80μmであった。実施例4~8の片面の負極活物質層の厚さは、それぞれ40μm、70μm、80μm、50μm、60μmであった。実施例9~12の片面の負極活物質層の厚さは、それぞれ40μm、50μm、60μm、80μmであった。実施例13~16の片面の負極活物質層の厚さは、それぞれ40μm、50μm、60μm、80μmであった。実施例17の片面の負極活物質層の厚さは80μmであった。実施例18の片面の負極活物質層の厚さは80μmであった。比較例1及び比較例2の片面負極活物質層の厚さは、いずれも60μmであった。
【0081】
【0082】
表1を参照し、表1は、負極の異なる深さの異なる断面孔隙率の条件下で、リチウムイオン電池のリチウム析出状態と、電荷移動抵抗(Rct)と、極片浸潤特性との関係を示した。
【0083】
表1から分かるように、すべての実施例のリチウム析出状態は、比較例1より優れており、電荷移動抵抗と電解液の浸潤時間は、比較例1より小さかった。それは、実施例における負極活物質層から垂直に負極集電体に向かって10μmまでのところの断面孔隙率X10が5%≦X10≦25%を満たすためである。この場合、電解液を良好に浸潤することができ、十分に高い電荷移動経路を提供することができ、電解液の浸潤特性の向上、電荷移動抵抗の低減、リチウム析出の減少に有利である。
【0084】
実施例1~3、実施例9~12、実施例13~8にから分かるように、異なる位置の断面孔隙率の増加に伴い、リチウムイオン電池のリチウム析出が改善され、電荷移動抵抗が減少し、極片の表面における電解液の浸潤性が改善された。それは、断面孔隙率の増加が、電解液の浸潤面積とリチウムイオンの伝導空間の増加に有利であるためと推測される。X10の孔隙率の変化が電荷移動抵抗に与える影響が最も顕著であった。X10の増加に伴い、電荷移動抵抗(Rct)は著しく減少した。それは、X10の表す位置が表層に近く、表層孔隙率が増加すると、電解液が負極活物質層の内部に浸潤しやすくなり、動力学特性が改善されるためと推測される。実施例4~8におけるX10の孔隙率は同じであった。実施例5は、実施例8に比べて、X>20のみがさらに増加したため、電解液の浸潤特性が改善され、孔隙率の増加が電解液の移動により有利になった一方、Rctは逆に増加した。それは、孔隙率が大きすぎると、粒子と粒子との連結が悪くなり、電子伝導が悪くなり、電荷移動抵抗がかえって増加してしまうためである。実施例6は、実施例5に比べて、X10-20のみが増加し、同様に、電解液の移動がより良好になったことを示したが、Rctは実施例5と同様であった。孔隙率が大きすぎると、逆に特性に影響を及ぼした。比較例1は、実施例1に比べて、比較例1におけるX10が、実施例1におけるX10より小さく、最終的に、リチウム析出状態として、比較例1がリチウム重度析出であり、且つRct及び極片の完全浸漬の所要時間が、いずれも実施例1より著しく大きかった。それは、比較例1におけるX10が小さすぎると、電解液が負極活物質層の内部に円滑に進入できなく、同時にリチウムイオンの移動が阻害されたためである。従って、X10の孔隙率を一定の範囲内に制御する必要がある。比較例2におけるX10の孔隙率は40%であり、設定値よりはるかに大きかった。孔隙率の増加は電解液の浸潤に有利であるが、粒子と粒子との接触が悪くなったため、抵抗が悪くなり、実施例1~18に比べて、Rctが逆に増加した。従って、実際に適用するとき、孔隙率を一定の範囲内に制御する必要がある。それは、電解液の浸潤、及び粒子と粒子との接触に有利である。実施例5と実施例6と実施例18との比較によって、5%≦X10≦25%を満たし、10%≦X10-20≦30%及び15%≦X>20≦40%を満たさない場合、Rct値が大きく、電池特性に影響を与えた。そのため、5%≦X10≦25%を満たすことが好ましく、同時に0%≦X10-20≦30%及び15%≦X>20≦40%を満たすことがより好ましく、その場合、電池特性がより良好である。
【0085】
表2には、負極活物質層の異なる圧縮密度の条件下で、負極活物質層の異なる深さの断面孔隙率と、負極活物質層の表層孔隙率と、電解液の浸潤性と、電池の電気的特性との関係を示した。
【0086】
【0087】
表2における実施例19~実施例26、比較例3及び比較例4における負極集電体の片面の負極活物質層の厚さは60μmであった。ロールプレスの圧力を変更する(2T~12T)して負極活物質層の圧縮密度を制御することで、負極活物質層の異なるところでの孔隙率の制御を実現した。
【0088】
表2における実施例19~21から分かるように、負極活物質層の圧縮密度の増加に伴い、負極活物質層の異なる深さの断面孔隙率が減少し、負極活物質層の表層孔隙率が減少し、リチウムイオン電池の初回効率が低下し、直流抵抗が増加した。その理由は次のように推測される。負極活物質層の圧縮密度の増加に伴い、ロールプレスの時、負極活物質層の表面に与えた圧力が増加し、表面の粒子がロールプレス装置に直接接触するため、表面の粒子は、内部の粒子に比べて、より大きい力を受けたことにより、表面の粒子間の孔隙率は内部の粒子の孔隙率より小さくなる。電解液が負極活物質層に接触する際に最初に接触するのは負極活物質層の表面である。負極活物質層の表面孔隙率が小さすぎると、電解液の浸潤に影響し、リチウムイオンの伝導経路が減少される。従って、負極活物質層の表面は一定の孔隙率を確保する必要がる。これにより、電解液の浸潤を改善し、リチウムイオンの円滑な放出を確保することに非常に積極的な役割を果たす。
【0089】
比較例3に示された負極活物質層表面の圧縮密度は実施例より小さかったため、比較例3はより高い断面孔隙率と表面孔隙率を有した。しかし、比較例3における孔隙率が大きすぎると、粒子と粒子との接触が悪くなり、逆に直流抵抗に影響し、大電流での充放電に不利であった。
【0090】
比較例4における負極活物質層の圧縮密度が大きすぎたため、比較例4における孔隙率が小さすぎた。そのため、電解液の浸潤性が悪く、リチウムイオンが伝導経路に欠けているため、直流抵抗が増加し、電池の初回効率が低下した。
【0091】
表3には、負極材料が電気的特性に与える影響が示された。
【0092】
【0093】
実施例15、実施例27~実施例34、及び比較例5~比較例6は、負極活物質層の圧縮密度が同じであり、負極集電体上の単位面積当たりの塗布重量及び塗布厚さが同じであった。実施例及び比較例におけるFとN元素は、フッ化グラフェン(フッ素含有量がフッ化グラフェンに占める質量分率が50%であった)、及び尿素、メラミン、フェノール樹脂などの窒素を含有するものを介して負極材料にドープされた。フッ素と窒素の含有量は負極活物質全体に対する含有量である。
【0094】
実施例15及び実施例27~34に示されたように、負極材料の表面のN含有量、F含有量の増加又は欠陥含有量の増加に伴い、電解液と負極活物質層の表面との間に形成された接触角が減少し、浸潤時間が低下した。それは電解液がNとFとの相容性が良好のためである。従って、負極材料の表面に一定量のN又はF元素をドープすることは、電解液と負極表面との表面張力の低減に有利であり、同時にF及びN元素の添加は、負極材料表面に欠陥又は空孔を生成することに有利であり、一定の圧縮密度での電解液と負極活物質層との界面接触に有利である。
【0095】
しかし、ドープ元素の含有量は高ければ高いほど良いわけではない。表に示された通り、ヘテロ原子のドープ量の増加に伴い、DCRはまず減少して、その後に増加した。その理由は次の通りである。ドープされた元素NとFは、原子半径がCより小さく、電気陰性度が炭素原子より大きいため、結晶構造を変え、負極材料の表層構造の電気化学特性を向上させ、より多くの活性部位を提供し、リチウムイオンの拡散に有利であるが、含有量が高すぎると、逆にリチウムイオンとヘテロ原子が形成する構造が安定しすぎてリチウムイオンの伝導に不利であり、それによって、インピーダンスが増加した。比較例5のように、N含有量が高すぎたことによりDCRが高すぎた。
【0096】
比較例6の表面には一定量のヘテロ元素が存在しなかったため、電解液と負極活物質層との接触角が大きく、電解液の浸潤効果が悪く、直流抵抗が大きく、レート特性が悪かった。
【0097】
表4には、負極材料の比表面積(BET)と、負極材料の粒子粒度比と、負極材料の粉末圧縮密度と、負極材料の粒子粒度と、負極材料のC004/C110と、電池特性との関係を示した。
【0098】
【0099】
表4において、実施例7、及び実施例35~実施例39は、負極活物質層の圧縮密度が同じであり、負極集電体上の単位面積当たりの塗布重量及び塗布厚さが同じであった。
【0100】
表4には、負極材料の比表面積(BET)と、粒子粒度変化と、一次粒子と二次粒子の組み合わせと、負極材料の粉末圧縮密度と、負極材料の粒子径Dv50が、電池の45℃でのサイクル膨張率及び5C放電容量維持率に与える影響を示した。
【0101】
実施例7、実施例35~38に示された通り、一次粒子及び二次粒子が同一材料である場合、二次粒子含有量の増加に伴い、C004/C110が減少し、電池のサイクル膨張率が減少し、5C放電容量保持率が増加した。その理由として、二次粒子含有量が増加すると、等方性粒子が増加するため、C004/C110が減少し、サイクルのプロセス中に、リチウムを放出するときの応力が各方向に解放されるため、膨張が減少し、そして比表面積の増加に伴い、リチウムイオンの拡散速率が増加したため、5Cの容量維持率が増加した。そのため、負極材料の比表面積は0.5m2/g~7.0m2/gであることが好ましく、電気化学装置の容量維持率及びサイクル特性がより良好になる。
【0102】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例及び適用された技術原理の説明にすぎない。当業者は、本発明に係る開示範囲が、上記技術的特徴の特定の組み合わせからなる技術案に限定されず、上記開示の思想から逸脱しない場合に、上記技術的特徴又はその均等の特徴を任意に組み合わせてなるその他の技術案も含むこと、を理解すべきである。例えば、上述特徴を本発明で開示された同等の機能を有する技術的特徴に置換してなる他の技術案である。