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特許7507248飽和コンタクト部を備えたMOSFETおよび飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法
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  • 特許-飽和コンタクト部を備えたMOSFETおよび飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法 図1
  • 特許-飽和コンタクト部を備えたMOSFETおよび飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法 図2
  • 特許-飽和コンタクト部を備えたMOSFETおよび飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法 図3
  • 特許-飽和コンタクト部を備えたMOSFETおよび飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法 図4A
  • 特許-飽和コンタクト部を備えたMOSFETおよび飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法 図4B
  • 特許-飽和コンタクト部を備えたMOSFETおよび飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法 図5A
  • 特許-飽和コンタクト部を備えたMOSFETおよび飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法 図5B
  • 特許-飽和コンタクト部を備えたMOSFETおよび飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法 図5C
  • 特許-飽和コンタクト部を備えたMOSFETおよび飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】飽和コンタクト部を備えたMOSFETおよび飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240620BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240620BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L29/78 653A
H01L29/78 652T
H01L29/78 658F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022549591
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2021053595
(87)【国際公開番号】W WO2021165182
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】102020202053.1
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】バリングハウス,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】クレープス,ダニエル
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-190982(JP,A)
【文献】特開2015-153789(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002386(WO,A1)
【文献】特開昭62-130565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MOSFET(200)であって、
n型ドープソース領域(16)と、
ソースコンタクト部(22)と、
前記ソースコンタクト部(22)から前記n型ドープソース領域(16)まで延び、前記ソースコンタクト部(22)とともに第1の導電接続を形成し、前記n型ドープソース領域(16)とともに第2の導電接続を形成するコンタクト構造(20)と、
障壁層(32)と、
絶縁層(18)と
を備え、
前記コンタクト構造(20)が、前記障壁層(32)と前記絶縁層(18)との間に埋め込まれており、当該コンタクト構造に二次元電子ガスが形成されるように構成されている部分を、前記第1の導電接続と前記第2の導電接続との間に有する、MOSFET(200)。
【請求項2】
前記部分が電圧に依存する抵抗を有し、
MOSFETの動作電圧の存在下で、前記電圧に依存する抵抗がMOSFETの他の全ての抵抗の合計より小さく、
前記動作電圧より高い電圧の存在下で、前記電圧に依存する抵抗がMOSFETの少なくとも1つの抵抗成分より高い、請求項1に記載のMOSFET(200)。
【請求項3】
前記コンタクト構造(20)が複数の構成のグループを有し、前記グループが、
グラフェン層と、
少なくとも1つの窒化ガリウム層と少なくとも1つの窒化アルミニウムガリウム層とを含む層システムと、
硫化モリブデン層と
を有する、請求項1または2に記載のMOSFET(200)。
【請求項4】
前記コンタクト構造(20)の下方に前記n型ドープソース領域(16)に隣接して配置されているp型ドープ遮蔽領域(24)をさらに有し、
前記障壁層(32)が前記p型ドープ遮蔽領域(24)の一部である、請求項1から3のいずれか一項に記載のMOSFET(200)。
【請求項5】
前記ソースコンタクト部(22)と前記p型ドープ遮蔽領域(24)とを少なくとも部分的に導電的に接続する金属コンタクト部(42)をさらに備え、
前記金属コンタクト部(42)が任意的にニッケル、チタン、アルミニウム、またはこれらの合金を有する、請求項4に記載のMOSFET(200)。
【請求項6】
前記障壁層(32)が誘電層、例えば酸化物または窒化物を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のMOSFET(200)。
【請求項7】
前記障壁層(32)の下方に前記n型ドープソース領域(16)に隣接して配置されているp型ドープ遮蔽領域(24)をさらに備え、
前記障壁層(32)が少なくとも1つの開口部を有し、前記開口部を通して前記ソースコンタクト部(22)と前記p型ドープ遮蔽領域(24)とが導電的に接続されている、請求項6に記載のMOSFET(200)。
【請求項8】
前記n型ドープソース領域(16)が炭化ケイ素および/または窒化ガリウムを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のMOSFET(200)。
【請求項9】
チャネル領域をさらに備え、
前記チャネル領域が横方向または垂直方向に形成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のMOSFET(200)。
【請求項10】
MOSFETの形成方法であって、
n型ドープソース領域を形成する工程(610)と、
障壁層を形成する工程(620)と、
横方向に少なくとも前記n型ドープソース領域の一部と前記障壁層の一部とにわたって延びるコンタクト構造を、前記n型ドープソース領域と導電的に接触するように形成する工程(630)と、
前記障壁層上に配置されている前記コンタクト構造の部分上に誘電層を形成する工程(640)と
を備え、
前記コンタクト構造が、前記部分において、そこに二次元電子ガスを形成するように構成されている(650)、MOSFETの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飽和コンタクト部を備えたMOSFETおよび飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大きなバンドギャップを備えた半導体(例えば、炭化ケイ素(SiC)または窒化ガリウム(GaN))をパワーエレクトロニクスに適用するには、通常、縦型チャネル領域を備えたパワーMOSFET(TMOSFET)または横型チャネル領域を備えたパワーMOSFET(VDMOSFET)が使用される。チャネル領域の設計パラメータによって、特に、ターンオン電圧、オン状態での抵抗(オン抵抗RON)、および飽和電流(短絡耐性)が調整され得る。このようなパワーMOSFETのチャネル領域は、JFETを形成する(JMOSFETの)ドーピングされた別の領域としばしば追加的に組み合わされることによって、より良好な遮蔽と、したがってより高い絶縁破壊電圧をもたらす。SiCの場合、通常、ニッケルシリサイドに合金化されるニッケルがソースコンタクト部として使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術によるVDMOSFET、TMOSFET、またはJMOSFETにおいて、可能な限り低いRONと可能な限り低い飽和電流とは最適化目標として相容れずに対立し得る。原則として、オン抵抗RONが低ければ、飽和電流がそれに応じて大きくなり、結果として短絡耐性が損なわれる。したがって、十分に低いRONとそれにもかかわらず十分に低い飽和電流との間の妥協点を見いだすことが必要となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
様々な実施例において、低電圧下でMOSFETのチャネルにおける抵抗より著しく低い抵抗を有し、高電圧下でチャネル抵抗より著しく大きい抵抗を有し得るコンタクト構造(このコンタクト構造は高電圧下で飽和挙動を示すので飽和コンタクト部とも呼ばれる)を備えたMOSFETが提供される。
【0005】
これによって、可能な限り低いRONを達成するようにチャネルが最適化され得、また、高電圧下で電流を制限するために飽和コンタクト部が使用され得るので、両方の最適化目標が互いに切り離され得る。
【0006】
様々な実施例において、コンタクト構造にそのような飽和コンタクト部の挙動を生じさせるために、MOSFETの半導体材料(例えば、SiC)に接触するコンタクト構造にグラフェンが用いられてもよい。グラフェンにおける二次元電子ガス(2DEG)の高い可動性によって、低電圧下で非常に低い抵抗が達成され得る。ただし、二次元電子ガスの荷電体(電子)のドリフト速度は非常に低い飽和電圧を有するので、臨界電圧を超えるとその可動性が大幅に低下する。それによって、MOSFET(例えば、パワーMOSFET)に流れる電流は高電圧下で効果的にコンタクト構造の抵抗によって制限され得る。
【0007】
図1は、ソースコンタクト部がMOSFETのチャネルと接続するグラフェンコンタクト構造を備えた(パワー)MOSFETのシミュレーションによる出力特性曲線(実線)を、従来のTMOSFET(破線)、および純グラフェン抵抗(一点鎖線)と比較して示す。低電圧下では電流がMOSFETのチャネルの抵抗によって制限される一方、高電圧下では接触抵抗が電流の制限を定める。
【0008】
本明細書では、「低い電圧」、「小さい電圧」または「微少電圧」は、MOSFETの動作電圧の大きさの範囲内の電圧、例えば数ボルトの電圧、例としては約10Vまでの電圧と理解される。「高い電圧」あるいは「大きい電圧」は、動作電圧の数倍、例えば2倍またはそれ以上の電圧、例としては約20Vまたはそれ以上の電圧と理解される。
【0009】
飽和コンタクト部を備えたMOSFETの長所は、飽和コンタクト部を備えていないMOSFETにおいて相容れない最適化パラメータである飽和電流(それとともに短絡耐性)とRONとが互いから独立して最適化可能である、あるいは最適化されることである。これによって、低いRONを同時に高い短絡耐性(小さい飽和電流)で達成することができる。
【0010】
上記の態様のさらなる構成は、従属請求項および明細書に記載されている。本発明の実施形態は図面に表されており、以下の説明においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来技術のTMOSFET、および純グラフェン抵抗と比較した、様々な実施例によるグラフェンコンタクト構造を備えたMOSFETのシミュレーションによる伝達特性曲線の図である。
図2】様々な実施例による飽和コンタクト部を備えたMOSFETの概略的な断面図である。
図3】様々な実施例による飽和コンタクト部を備えたMOSFETの等価回路図である。
図4A】様々な実施例による飽和コンタクト部を備えたMOSFETの概略的な断面図である。
図4B】様々な実施例による飽和コンタクト部を備えたMOSFETの概略的な断面図である。
図5A】様々な実施例による飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法の概略的な説明図である。
図5B】様々な実施例による飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法の概略的な説明図である。
図5C】様々な実施例による飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法の概略的な説明図である。
図6】様々な実施例による飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図2図4A、および図4Bには、それぞれ、様々な実施例による飽和コンタクト部200を備えたMOSFETの概略的な断面図が示されている。以下では説明のために縦型チャネル領域を備えたJMOSFETを記述するが、実施例は、他の構造を備えたMOSFET、例えば、JMOSFETを形成せず垂直方向のチャネル領域を備えたMOSFET(TMOSFET)、または横方向のチャネル領域を備えたMOSFET(VDMOSFET)にも関すると理解される。
【0013】
飽和コンタクト部200を備えたMOSFETは、n型ドープソース領域16と、ソースコンタクト22とともにソースコンタクト部16からn型ドープソース領域16まで延び、ソースコンタクト部22と第1の導電接続を形成し、n型ドープソース領域16とともに第2の導電接続を形成するコンタクト構造20と、障壁層32と、誘電層18とを有してもよい。
【0014】
飽和コンタクト部200を備えたMOSFETは、基本的にMOSFETに一般に用いられる方法で形成することができる別の構造、例えば、p型ドープチャネル領域14と、n型ドープドリフト領域12と、基板10と、ドレイン接続16と、ゲート領域28と、ゲート誘電体30とをさらに有してもよい。
【0015】
飽和コンタクト部を備えたMOSFETは、例えばn型ドープソース領域16、p型ドープチャネル領域14、およびn型ドープドリフト領域12を形成するためにドーピングされる、あるいはドーピングされた半導体材料として、および/または基板10として、例えば炭化ケイ素および/または窒化ガリウムを有してもよく、および/または他の(例えば、パワーMOSFET向けに)適した半導体材料を有してもよい。
【0016】
様々な実施例において、n型ドープソース領域16におけるドーピング濃度がn型ドープドリフト領域12より高くてもよい。例えば、ソース領域16が約1E19/cmでドーピングされていてもよく、ドリフト領域12が約1E16/cmでドーピングされていてもよい。以下では簡略的に「n型ドープ」という表現が用いられる。
【0017】
コンタクト構造20は、障壁層32と誘電層18との間に埋め込まれており、そこに二次元電子ガスが形成される、あるいは形成され得るように構成されている部分を、第1の導電接続と第2の導電接続との間に有してもよい。
【0018】
二次元電子ガス2DEGの形成によって、コンタクト構造20の上記部分が電圧に依存する抵抗を有し得る。例えば、MOSFETの動作電圧(あるいは動作電圧と同程度の高さの電圧、例えば、約0Vから約10V)の存在下で、電圧に依存する抵抗を小さく、例えばp型ドープチャネル領域14の抵抗より小さくすることができる。動作電圧より高い電圧(例えば、何倍もの電圧、または何倍も高い電圧)の存在下で、電圧に依存する抵抗を高く、例えば、p型ドープチャネル領域14の抵抗より高くすることができる。
【0019】
様々な実施例において、コンタクト構造20は、二次元電子ガスを形成するのに適した、グラフェン層と、少なくとも1つの窒化ガリウム層と少なくとも1つの窒化アルミニウムガリウム層とを有する層システム、硫化モリブデン層、または他の層、あるいは他の層システムを有してもよい。この場合、層あるいは層構造は、例えば、層の厚さ、数、層システムの個々の層の相対位置等に関して、2DEGの形成が可能となるように形成されていてもよい。2DEGの形成を可能にするために考慮すべきである構成パラメータは、当業者に知られている、または基本的に知られているであろう。
【0020】
コンタクト構造20は、n型ドープソース領域16全体にわたって(例示的に図2図4A図4B、および図5Aから図5Cに表されているように)延びてもよく、またはn型ドープソース領域16の上面の一部のみを覆ってもよい(図示せず)。
【0021】
コンタクト構造20は、ソースコンタクト部22全体の下方に(図2図4A図4B、および図5Aから図5Cに例示的に表されているように)延びてもよく、例えばソースコンタクト部22の一部の下方のみに延びてもよく(図示せず)、および/または例えばその表面に開口部を有してもよい(図4B)。
【0022】
様々な実施例において、飽和コンタクト部200を備えたMOSFETが、コンタクト構造20の下方にn型ドープソース領域16に隣接して配置されてもよいp型ドープ遮蔽領域24をさらに有してもよい。この場合、コンタクト構造20の上述の部分がp型ドープ遮蔽領域24の上方に位置してもよい。
【0023】
様々な実施例において、例えば、コンタクト構造20がグラフェンを有し、n型ドープソース領域16がn型ドープ炭化ケイ素を有し、p型ドープ遮蔽領域24がp型ドープ炭化ケイ素を有する場合、グラフェンがn型ドープ炭化ケイ素に対して低抵抗のコンタクト部を形成し得る。コンタクト構造20とp型ドープ遮蔽領域24との間の接点の伝導性は本質的に不良であってよく、さらなる対策が講じられなければ障壁層32がp型ドープ遮蔽領域24、例えばp型ドープ遮蔽領域24の表面と境を接する表面に形成される。これが図2に表されている。言い換えれば、障壁層32はp型ドープ遮蔽領域24の一部であり得る。
【0024】
コンタクト構造20(例えば、グラフェン、場合によっては、p型ドープ遮蔽領域24に対して本質的に不良な接触を形成する他の材料)がソースコンタクト部22によって接触される領域において、様々な実施例において、p型ドープSiCとも良好な接触(すなわち低抵抗での接触)を形成する金属コンタクト部42がコンタクト構造20とp型ドープ遮蔽領域との間に形成されていてもよい。金属コンタクト部42は、例えばニッケル、チタン、アルミニウム、またはこれらの合金を有してもよい。例えば、ニッケルコンタクト部は、ニッケルシリサイドが形成されるように合金化されていてもよい。金属コンタクト部42によって、p型ドープ遮蔽領域24は同時に接続され得る。
【0025】
グラフェン20とp型ドープ遮蔽領域(例えば、p-SiC領域)24との間の境界面は障壁層32を形成するので、p型ドープ遮蔽領域24上のグラフェン層20には二次元電子ガスが発生する。この二次元電子ガスは理想的な飽和コンタクト部に近い挙動を示す。2DEGの可動性は小さい電圧下でSiCにおける可動性よりも桁違いに高いので、低電圧下ではごく微少な抵抗のみがRONに加えられる。これに関しては図3の等価回路図も参照されたい。より高い電圧下では、グラフェン層20はすぐに飽和し、広い電圧範囲にわたって一定の電流密度のみを許容する(図1参照)。この電流密度は、MOSFETの動作点のある電流密度より高く、飽和電流密度より大幅に低くてもよい。つまり、飽和コンタクト部200を備えたMOSFETの出力特性曲線の直線状の領域では、電流の流れがグラフェン20によって制限されないが、それに対して飽和コンタクト部200を備えたMOSFETの飽和範囲ではこれが制限される。このため、短絡の際に全電流が効果的に制限され、それによって、飽和コンタクト部を備えたMOSFET200の出力特性が損なわれることなく短絡耐性が改善される。
【0026】
言い換えれば、MOSFETは、ソース領域16/コンタクト構造20の接触箇所とソースコンタクト部22/コンタクト構造20の接触箇所との間に、「飽和コンタクト部」として電圧に強く依存した抵抗を有する。低電圧下では抵抗が理想的には微小となり、高電圧下では抵抗がチャネル抵抗(すなわちp型ドープチャネル領域14の抵抗)あるいはMOSFETのドリフト領域12の抵抗より著しく大きくなる。
【0027】
様々な実施例において、例えば、コンタクト構造20が、n型ドープソース領域16ともp型ドープ遮蔽領域24とも良好な導電接触を形成できる材料または材料の組み合わせを有する場合、障壁層32が独立した障壁層32、例えば酸化物層または窒化物層として形成されていてもよい。これが図4Aおよび図4Bに例示的に表されている。
【0028】
障壁層32は、図4Aおよび図4Bに表されたものとは異なりソースコンタクト部22の下方まで延びるのであれば、p型ドープ遮蔽領域24とも接触するために、場合によってはいくつかの箇所に(例えば、図面の平面に対して垂直に、すなわちTMOSFETではゲートが形成されている溝に沿って、一定の間隔で)開口部を有してもよい。
【0029】
図5A図5B、および図5Cは、それぞれ、様々な実施例による飽和コンタクト部200を備えたMOSFETの形成方法の概略的な説明図が示す。
【0030】
図5Aは、グラフェン飽和コンタクト部20を含む飽和コンタクト部200を備えたTMOSFETの形成を説明する。例えばp型ドープチャネル領域14、n型ドープソース領域16、およびp型ドープ遮蔽領域24の埋め込み後、これらを活性化(図a)した後、グラフェンを、例えば全面的に、約1700℃で成長させることができる(図b)。その後、チャネル(トレンチ)50が形成され、これに後処理(例えば、面取り)が(約1400℃で)施されてもよい(図c)。全てのさらなる工程、例えばゲート誘電体30、例えばゲート酸化物の堆積、焼き鈍し、ゲート電極28としてのポリシリコンの堆積等も同様にその後に実施されてもよく(図d)、1400℃の最高温度に制限され得る。
【0031】
代替的に、図5Bに表されているように、最初に溝50が形成されこれに後処理(例えば、面取り)が施され(図a)、その後にグラフェン20の成長が行われてもよい(図b)。この場合、後続の工程では、トレンチ50内のグラフェン20は再び局所的に除去されなければならない(図c)。さらなる工程は、図5Aで説明されたように実施され得る(図d)。
【0032】
図5Cで説明されているさらなる変形例では、トレンチ50が形成および後処理の後、炭素カバー52、いわゆる「カーボンキャップ」で満たされる(図a)。続いて、トレンチ50内のみに残るように炭素カバー52はエッチング除去されてもよい(図b)。その後、グラフェン20が成長させられる。ここで、炭素カバー52で満たされているトレンチ50にはグラフェン20が存在していない(図c)。最後に、プラズマエッチングによって炭素カバー52が除去される。ここで、使用するエッチングは炭素カバー52のみを除去しグラフェン20を無傷のままにすることを確実にしなければならない。このために、例えば酸素プラズマが使用され得る(図d)。
【0033】
図6は、様々な実施例による飽和コンタクト部を備えたMOSFETの形成方法600のフローチャートを示す。この方法は、n型ドープソース領域を形成する工程(610)と、障壁層を形成する工程(620)と、横方向に少なくともn型ドープソース領域の一部と障壁層の一部とにわたって延びるコンタクト構造を、n型ドープソース領域と導電的に接触するように形成する工程(630)と、障壁層上に配置されているコンタクト構造の部分上に誘電層を形成する工程を有し得る方法であって、コンタクト構造は、この部分において、そこに二次元電子ガスを形成するように構成されている(640)。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6