(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23F 23/04 20060101AFI20240620BHJP
B23F 23/06 20060101ALI20240620BHJP
B23F 23/12 20060101ALI20240620BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20240620BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B23F23/04
B23F23/06
B23F23/12
B23Q7/04 G
B23Q11/08 Z
(21)【出願番号】P 2023001417
(22)【出願日】2023-01-10
【審査請求日】2023-04-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】西木 孝浩
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-019101(JP,A)
【文献】特開2020-073301(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105458819(CN,A)
【文献】特表2016-522092(JP,A)
【文献】特開2019-214099(JP,A)
【文献】特開昭57-89541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00-23/12;
B23Q 7/04,11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤを加工するための加工領域と、ギヤに加工されるワークが待機する待機領域とを有する工作機械であって、
前記加工領域
においてワーク主軸に着脱可能に支持される治具であり、交換対象と
なり得る加工済ワーク
を保持した状態で前記加工済ワークとの連結方向である軸方向に見た場合に前記
加工済ワークの外形より小さい外形を有す
る第1保持部と、前記待機領域
において支持台に着脱可能に支持される治具であり、交換対象と
なり得る未加工ワーク
を保持した状態で前記未加工ワークとの連結方向である軸方向に見た場合に前記
未加工ワークの外形より小さい外形を有す
る第2保持部と、を交換する交換部
と、
交換後に前記加工領域において前記ワーク主軸に支持された未加工ワークを加工する工具を保持する工具主軸と、
前記工具主軸を支持する主軸頭と、
前記主軸頭に着脱可能なストッカと、
を備え、
前記第1保持部および前記第2保持部が、それぞれ前記ワーク主軸および前記支持台の双方に着脱可能な共用の治具として構成され、
前記交換部は、前記第1保持部の外周面と前記第2保持部の外周面とを着脱可能に把持
可能であり、前記加工済ワークを保持した状態の前記第1保持部の外周面を把持して前記ワーク主軸から離脱させる一方、前記未加工ワークを保持した状態の前記第2保持部の外周面を把持して前記支持台から離脱させることで、前記第1保持部に保持された
加工済ワークと前記第2保持部に保持された
加工済ワークとを
治具付きワーク単位で交換
し、
前記ストッカは、前記工具主軸に両持ちタイプの工具が取り付けられた場合に、その工具の先端部を回転可能に支持可能な軸受を有する、工作機械。
【請求項2】
前記第1保持部と前記第2保持部とが同一構造を有する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記加工領域において前記第1保持部を鉛直方向の第1軸に沿って下方から支持する
前記ワーク主軸と、
前記待機領域において前記第2保持部を鉛直方向の第2軸に沿って下方から支持する
前記支持台と、
を備え、
前記交換部は、
前記第1保持部と前記第2保持部とをそれぞれ同時に把持可能な一対の把持部を有し、鉛直方向の第3軸を中心とした回転作動により
前記加工済ワークと前記未加工ワークとを交換するアームと、
前記アームを回転させるアーム回転機構と、
を含む、請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記加工領域と前記待機領域とを区画する隔壁と、
前記アームの上方に設けられ、前記隔壁に設けられた開口を前記第3軸を中心とした回転作動により開閉するシャッタと、
前記シャッタを回転させるシャッタ回転機構と、
を備える、請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
交換後に前記第1保持部に保持された
前記未加工ワークを、前記ワーク主軸とは反対側で前記第1軸に沿って上方から支持可能な心押し台と、
前記心押し台を上下方向に駆動する駆動機構と、
をさらに備える、請求項3に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤを加工する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、回転するワークに対して工具を移動させるターニングセンタ、回転する工具をワークに対して移動させるマシニングセンタ、材料をレーザで溶かしながら積層加工する付加加工機、およびこれらの機能を複合的に備える複合加工機などがある。ギヤの加工は従来、専用機を用いた少品種大量生産(いわゆるロット生産)が一般的であったが、近年の自動車等の電動化やロボット産業の促進などに伴ってギヤの多品種大量生産が可能な複合加工機の需要が高まっている。
【0003】
このような工作機械にはワークの加工領域と待機領域が設定され、加工領域にある加工済ワークと、待機領域にある未加工ワークとを自動交換可能なワーク交換装置が設けられる(特許文献1参照)。ワーク交換装置は、それらのワークを同時に把持可能な一対の把持部を有するアームと、そのアームを一体に回転させる回転機構を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなワーク交換装置は、把持部がワークを直に把持するため、そのワークの外形を考慮して把持部の大きさを設計する必要がある。ギヤの外径が大きくなるほどワークの外径も大きくなるため、加工対象となり得る最大径のギヤを念頭に把持部ひいてはアームを設計する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、ギヤを加工するための加工領域と、ギヤに加工されるワークが待機する待機領域とを有する工作機械である。この工作機械は、加工領域にある(i)所定方向から見た場合にワークの外形より小さい外形を有する、ワークを保持する第1保持部と、待機領域にある(ii)所定方向から見た場合にワークの外形より小さい外形を有するワークを保持する第2保持部と、を交換する交換部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワークの大きさにかかわらずワークの交換部を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る工作機械の構成を表す斜視図である。
【
図5】AWC26およびその周辺の構成および動作を表す図である。
【
図6】ワークを保持する治具の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態の工作機械は、ギヤのミーリング加工が可能な複合加工機として構成されている。
【0010】
図1は、実施形態に係る工作機械の構成を表す斜視図である。
図2は工作機械の平面図であり、
図3は工作機械の側面図である。なお、工作機械1を正面からみて上下方向,前後方向,左右方向を、それぞれX軸方向,Y軸方向,Z軸方向とする。
【0011】
図1に示すように、工作機械1は、加工装置2および制御装置4を備える。加工装置2を覆うように装置筐体が設けられ、その前面に操作盤が設けられるが、これらの図示については省略する。
【0012】
加工装置2は、ベッド10上にコラム12、主軸台14および支持台16等を搭載して構成される。コラム12には主軸頭18が設けられる。主軸頭18は工具主軸15を回転可能に支持し、主軸台14はワーク主軸17を回転可能に支持する。支持台16は、加工前後で待機するワークを支持する。
【0013】
ベッド10の前部に隔壁20が立設され、隔壁20を境として前方に待機領域22が形成され、後方に加工領域24が形成される。すなわち、隔壁20が待機領域22と加工領域24とを区画する。主軸頭18および主軸台14は加工領域24に配置され、支持台16は待機領域22に配置される。待機領域22はギヤに加工されるワークが待機する領域であり、加工領域24はギヤを加工するための領域である。
【0014】
隔壁20の下方にAWC26(Automatic Work Changer)が設けられ、ベッド10の側方にATC28(Automatic Tool Changer)が設けられている。AWC26は、未加工ワークと加工済ワークとを交換するワーク交換装置である。ATC28は、使用前工具と使用済工具とを交換する工具交換装置である。これらの工具は、ベッド10に隣接する工具収容部29(マガジン等)から取り出され、また収納される。
【0015】
コラム12は、ベッド10に設けられたサドル30に支持されている。サドル30は、ベッド10上で左右に延びるガイドレール32に沿ってZ軸方向に移動可能に支持されている。コラム12は、サドル30上で前後に延びるガイドレール34に沿ってY軸方向に移動可能に支持されている。
【0016】
主軸頭18は、サドル40に固定される固定部31と、固定部31に対して回転する回転部33を有する。固定部31は、Y軸方向に延びる回転軸を有し、回転部33を回転可能に支持する。回転部33は、工具主軸15を回転可能に支持する。工具主軸15には、ミーリング加工を行うための工具(図示略)が着脱可能である。主軸頭18には、回転部33および工具主軸15をそれぞれ回転させるモータが内蔵されている。サドル40は、コラム12の前面に設けられたガイドレール42に沿ってX軸方向に移動可能(昇降可能)に支持されている。
【0017】
サドル30、コラム12およびサドル40の移動は、図示略の送り機構とそれを駆動するサーボモータにより実現される。この送り機構は、例えばボールねじを用いたねじ送り機構である。主軸頭18は、各部がガイドレール32,34,42に沿って移動することにより、X,Y,Z軸方向(3軸方向)に移動可能である。主軸頭18の回転部33は、Y軸と平行な軸B1を中心に固定部31に対して回転可能である。工具主軸15は、軸B1に垂直な軸Lを中心に回転部33に対して回転可能である。
【0018】
主軸台14はコラム12の前方に位置し、鉛直方向の第1軸L1を中心にワーク主軸17を回転可能に支持する。ワーク主軸17は、後述の治具に保持されたワーク(図示略)を第1軸L1に沿って下方から支持する。主軸台14と支持台16とは、隔壁20に対して反対側に位置する。
【0019】
支持台16は、後述の治具に保持されたワーク(図示略)を鉛直方向の第2軸L2に沿って下方から支持する。支持台16は、加工前後のワークを保持して一時的に待機させる。支持台16に未加工ワークを待機させた状態でワーク形状の計測やワークオフセットの設定などの段取り処理も行われる。このため、待機領域22は「段取り領域」としても機能する。
【0020】
隔壁20の中央に待機領域22と加工領域24とを連通させる開口が設けられ、その開口を開閉可能な回転式のシャッタ44が設けられている。シャッタ44の直下にAWC26が設けられている。AWC26は、支持台16に支持されるワークと、ワーク主軸17に支持されるワークとを交換する「交換部」として機能する。
【0021】
AWC26は、水平方向に延びるアーム46と、アーム46を鉛直方向の第3軸L3を中心に回転させる駆動機構48を有する。アーム46の中心が駆動機構48の回転軸に接続されている。駆動機構48は、アーム46を回転させる「アーム回転機構」と、シャッタ44を回転させる「シャッタ回転機構」を含む。アーム46の両端には、支持台16に支持されるワークと、ワーク主軸17に支持されるワークとを同時に把持可能な一対の把持部が設けられるが、その詳細については後述する。
【0022】
ATC28は、工具収容部29から取り出された工具(使用前工具)と、工具主軸15に保持された工具(使用済工具)とを交換するが、その詳細については説明を省略する。
【0023】
図2にも示すように、ベッド10は、ガイドレール32の前方において中央寄りに小幅の加工領域24を有する。その加工領域24の片側(左側)に載置台50が設けられ、その載置台50にホブストッカ52が載置されている。ホブストッカ52は、両持ちタイプのホブカッタ(工具)を使用する場合に工具主軸15に装着される治具である。一方、ベッド10における加工領域24の反対側(右側)には比較的大きなスペースSが形成される。それにより、工作機械1の据え付け面積を小さくできる。オペレータがそのスペースSに立つこともできる。
【0024】
図3にも示すように、ワーク主軸17には、治具J1に取り付けられた状態のワークW1が保持される。一方、支持台16には、治具J2に取り付けられた状態のワークW2が保持される。治具J1は「第1保持部」として機能し、治具J2は「第2保持部」として機能する。治具J1および治具J2は同一構造を有し、支持台16およびワーク主軸17のいずれにも着脱可能な共用の治具である。ワークW1,W2は、本実施形態ではギヤに加工される円板状ないしリング状の素材である。ワークW1が加工された後、AWC26によりワークW2との交換が行われる。
【0025】
隔壁20の背面上部(加工領域24側の面)には心押し台54が設けられている。心押し台54は、隔壁20の背面に設けられたガイドレール56に沿ってX軸方向に移動可能(昇降可能)に支持されている。心押し台54の移動は、図示略の駆動機構により実現される。この駆動機構は、図示略の送り機構とそれを駆動するサーボモータを含む。この送り機構は、例えばボールねじを用いたねじ送り機構である。
【0026】
心押し台54の心押軸58は、第1軸L1上に位置するため、ワーク主軸17および工具Tとの同軸度が確保される。心押し台54は、ワーク主軸17に保持されたワークW1を、ワーク主軸17とは反対側で第1軸L1に沿って上方から支持する。なお、ギヤを加工する際には心押軸58に治具が取り付けられるが、その説明については後述する。
【0027】
制御装置4(
図1参照)は、NC(Numerical controller)を含み、加工プログラム(NCプログラム)にしたがってモータ等のアクチュエータを制御する。ワークW1にミーリング加工を施す際には各モータを駆動し、ワーク主軸17を回転させるとともに、主軸頭18の移動および工具主軸15の回転を制御する。制御装置4は、ワーク交換の際に駆動機構48(アーム回転機構、シャッタ回転機構)を制御する。
【0028】
図4は、工具の取付工程の一例としてホブカッタを取り付ける場合を表す図である。
工具Tとして両持ちタイプのホブカッタを使用する場合、制御装置4は、ATC28を制御して工具主軸15に工具Tを取り付ける。このとき、工具Tは工具主軸15に片持ち状態で保持される。
【0029】
制御装置4は、この状態から主軸頭18の移動および角度を制御し、固定部31に対してホブストッカ52を取り付ける。それにより、ホブストッカ52を載置台50から離脱させることができる。ホブストッカ52の先端部には軸受53が設けられているため、工具Tの先端部(ホブカッタの刃よりも先端側)が軸受53により回転可能に支持される。このようにして、両持ちタイプの工具Tを主軸頭18により安定に保持できる。工具Tの使用後は、ホブストッカ52を載置台50に戻し、ホブストッカ52と主軸頭18との取り付け状態を解除する。
【0030】
図5は、AWC26およびその周辺の構成および動作を表す図である。
図5(A)はAWC26の非作動状態を示し、
図5(B)はAWC26の作動状態を示す。
加工領域24における加工中はシャッタ44が閉じられ、AWC26は非作動の状態となる(
図5(A))。このとき、ワーク主軸17の回転と、工具(図示略)の回転および移動が制御されることにより、ワークW1がミーリング加工される。
【0031】
加工が終了すると、AWC26によりワーク交換が実行される(
図5(B))。このとき、シャッタ44およびアーム46が連動しながら第3軸L3周りに回転する。より詳細には、シャッタ44がやや先行で回転を開始し、アーム46の回転がこれに追従する。アーム46の両端には、第3軸L3に対して対称な位置に一対の把持部46aが設けられている。アーム46の回転により、これらの把持部46aの一方がワークW1を支持する治具J1を把持し、他方がワークW2を支持する治具J2を把持する。
【0032】
この状態で駆動機構48によりシャッタ44およびアーム46がやや上方に持ち上げられることで、治具J1がワーク主軸17から離脱するとともに、治具J2がワーク主軸17から離脱し、ワークW1,W2が両治具を介してアーム46に支持された状態で旋回する。そして、治具J2がワーク主軸17の第1軸L1上に、治具J1が第2軸L2上にそれぞれ位置した状態でシャッタ44およびアーム46が降下する。
【0033】
それにより、治具J2がワーク主軸17に、治具J1が支持台16にそれぞれ取り付けられる。すなわち、未加工のワークW2がワーク主軸17に支持され、加工済のワークW1が支持台16に支持される。その後、ワークW2に対する加工が行われる。また、支持台16と図示しない搬送機構との間で工具交換が行われ、加工済ワークは搬出される。新たな未加工ワークが支持台16に取り付けられて待機する。
【0034】
図6は、ワークを保持する治具の構成を表す図である。
なお、上述のように治具J1と治具J2は同一構造を有する。このため、以下の説明において両者を特に区別しない場合には「治具J」と総称する。また、ワークW1とワークW2とを特に区別しない場合には「ワークW」と総称する。
【0035】
図6左段に示すように、治具Jは、第1治具J11と第2治具J12とを上下に組み付けて構成される。第1治具J11は概略円筒状をなし、本体部60およびシャンク部62を有し、シャンク部62の基端に被把持部64を有する。第2治具J12は、大径部66と小径部68とを有する段付円柱状をなす。
【0036】
大径部66の下面と本体部60の上面との間には、双方を同軸状に嵌合するための嵌合構造(凹凸形状)が設けられている。小径部68は大径部66の上面中央から上方に突出し、ワークWが組み付けられる。すなわち、ワークWはリングギヤとして成形されるものであり、その中央を軸線方向に貫通する挿通孔70を有する。小径部68の外径は、挿通孔70の内径とほぼ等しい。
図6右段に示すように、ワークWを治具Jに組み付ける際には、小径部68を挿通孔70に挿通させるようにして双方を組み付ける。
【0037】
本実施形態では、第1治具J11については加工対象とするギヤの種類によって変わらない共通構造とされ、第2治具J12についてはギヤの種類に応じて取り換えられるよう複数種類の構造が用意されている。例えば、ワークWの大きさに応じて第2治具J12の大径部66の外径が異なるものを使用してもよい。このようにすることで、多品種のギヤの加工に対応できる。
【0038】
図6右段に示す状態、つまり治具JにワークWが組み付けられた状態でワーク交換が行われる。その際、アーム46の把持部46aが、治具Jの被把持部64を把持する。このように、本実施形態では、治具付きワークを単位としてワーク交換が行われる。
【0039】
図7は、ワークの加工時の支持構造を表す図である。図中の右段から左段に向けて、加工前後の治具の組付過程が示されている。
図7左段に示すように、ギヤの加工時においては、上述のようにワークW1を保持した治具Jをワーク主軸17に取り付ける。一方、心押し台54の心押軸58(
図3参照)に治具J3を組み付ける。
【0040】
治具J3は、第1治具J21と第2治具J22とを上下に組み付けて構成される。第1治具J21は概略円筒状をなし、本体部65およびシャンク部62を有し、シャンク部62の基端に被把持部64を有する。第2治具J22は円柱状をなす。本体部65の下面と第2治具J22の上面との間には、双方を同軸状に嵌合するための嵌合構造(凹凸形状)が設けられている。第2治具J22の下面には、治具Jの小径部68と嵌合可能な凹状嵌合部(図示略)が設けられている。
【0041】
本実施形態では、第1治具J21については加工対象とするギヤの種類によって変わらない共通構造とされ、第2治具J22についてはギヤの種類に応じて取り換えられるよう複数種類の構造が用意されている。例えば、ワークWの大きさに応じて第2治具J22の外径が異なるものを使用してもよい。このようにすることで、多品種のギヤの加工に対応できる。
【0042】
ギヤの加工時には、心押軸58に治具J3を取り付けた状態で心押し台54を降下させる。これにより、治具J3、ワークWおよび治具Jが上下に一体となった状態で同軸状に保持される。ワークWは、治具J3と治具Jとにより上下に挟まれて安定に支持された状態でミーリング加工され、歯面が形成される。
【0043】
図7右段に示すように、加工が終了すると、心押し台54が上昇し、治具J3がワークWから離脱する。これによりワーク交換が可能となる。
【0044】
以上、実施形態に基づいて工作機械1について説明した。
本実施形態では、交換対象となるワークWをそれぞれ治具Jに取り付け、AWC26の作動時にアーム46で治具Jを把持することによりワーク交換するようにした。アーム46でワークWを直に把持することなく、共用の治具Jを把持することとしため、ワークWの大きさにかかわらずアーム46を構成できる。治具JとワークWとの連結方向(軸L1,L2の方向)に見た場合に、治具Jの外形はワークWの外形よりも小さい(
図5,
図6等参照)。このため、アーム46の把持部46aを小さくでき、AWC26をコンパクトに構成できる。
【0045】
[変形例]
上記実施形態では、第1軸L1および第2軸L2が鉛直方向となる構成、つまりAWC26を縦置きとする構成を例示した。変形例においては、第1軸L1および第2軸L2が水平方向となる構成、つまりAWC26が横置きとなる構成としてもよい。あるいは、第1軸L1および第2軸L2が鉛直方向および水平方向に対して所定角度となる構成、つまりAWC26が斜め置きとなる構成としてもよい。その場合、心押し台54の移動方向(心押軸58の軸線方向)も第1軸L1に沿った方向とする。
【0046】
上記実施形態では、ホブ加工を例示したが、スカイビングその他の加工によりギヤを加工してもよい。工具の種類についてもそれに応じて変更する。
【0047】
上記実施形態では、歯形状が形成されていない未加工ワークをワークW1として例示した。変形例においては、未加工ワークに粗加工を施したワークをワークW1とし、仕上げ加工を終えたワークをワークW2としてもよい。
【0048】
上記実施形態では、工作機械1をミーリング加工機、つまりワークに対して除去加工(Subtractive manufacturing)を行う除去加工機として構成する例を示した。変形例においては、ワークに対して付加加工(Additive manufacturing)を行う付加加工機として構成してもよい。その場合、ワーク交換によりワーク主軸17に取り付けられる未加工ワークに対し、材料をレーザで溶かしながら積層加工が行われる。工具主軸15に対して付加加工ヘッドが取り付けられる。付加加工ヘッドは、ワークに向けて材料を供給するとともに、その供給した材料を溶解するためのレーザ光を照射する。あるいは、除去加工および付加加工の双方を行うことが可能な複合加工機として構成してもよい。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 工作機械、2 加工装置、4 制御装置、10 ベッド、12 コラム、14 主軸台、15 工具主軸、16 支持台、17 ワーク主軸、18 主軸頭、20 隔壁、22 待機領域、24 加工領域、26 AWC、28 ATC、36 主軸頭、44 シャッタ、46 アーム、46a 把持部、48 駆動機構、50 載置台、52 ホブストッカ、54 心押し台、56 ガイドレール、58 心押軸、60 本体部、62 シャンク部、64 被把持部、65 本体部、66 大径部、68 小径部、70 挿通孔、J 治具、J1 治具、J11 第1治具、J12 第2治具、J2 治具、J21 第1治具、J22 第2治具、J3 治具、W ワーク、W1 ワーク、W2 ワーク。
【要約】
【課題】ワークの大きさにかかわらずワークの交換部を構成できるようにする。
【解決手段】工作機械は、ギヤを加工するための加工領域と、ギヤに加工されるワークが待機する待機領域とを有する。この工作機械は、加工領域にある(i)所定方向から見た場合にワークの外形より小さい外形を有する、ワークを保持する第1保持部と、待機領域にある(ii)所定方向から見た場合にワークの外形より小さい外形を有するワークを保持する第2保持部と、を交換する交換部を備える。
【選択図】
図3