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特許7507281経カテーテル僧帽弁人工補綴物の心室展開
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】経カテーテル僧帽弁人工補綴物の心室展開
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20240620BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61F2/24
A61M25/00 530
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023057807
(22)【出願日】2023-03-31
(62)【分割の表示】P 2021524365の分割
【原出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2023073471
(43)【公開日】2023-05-25
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】62/757,462
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513259997
【氏名又は名称】ニオバスク ティアラ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エリック ソン-サン フン
(72)【発明者】
【氏名】キャサリーン フン
(72)【発明者】
【氏名】カレン ツェク-ジ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アンドリュー モファット
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-523894(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0165064(US,A1)
【文献】国際公開第2013/075215(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓の天然僧帽弁に人工補綴弁を送達するための送達システムであって、前記天然僧帽弁は、天然前尖と、天然後尖とを有し、前記送達システムは、
第1のシャフトと、
前記人工補綴弁を前記送達システムに取り付けるように構成された人工補綴物解放機構であって、前記人工補綴物解放機構は、半径方向に折り畳まれた状態から半径方向に拡張された状態に前記人工補綴弁を連続して解放するように構成されている、人工補綴物解放機構と、
前記人工補綴物解放機構を動作させるように前記送達システムに接続されたアクチュエータと
前記第1のシャフトに対して摺動可能な第2のシャフトと、
前記人工補綴物解放機構を備えるカプセルであって、前記カプセルは、
前記第1のシャフトに接続された遠位カプセル部分と、
前記第2のシャフトに接続された近位カプセル部分と
を備える、カプセルと、
前記人工補綴弁の第1の部分を係合するように構成された第1の制御要素と、
前記人工補綴弁の第2の部分を係合するように構成された第2の制御要素と
を備え
前記アクチュエータの動作は、前記近位カプセル部分および前記遠位カプセル部分を互いから離れるように移動させるように構成されており、
前記第1の制御要素および前記第2の制御要素は、前記カプセルの内側に配置されており、
前記遠位カプセル部分は、前記遠位カプセル部分の遠位端壁から近位に延在する前記第1のシャフトを備え、
前記第1の制御要素は、前記第1のシャフトに搭載された第1のディスク状本体を備え、
前記第2の制御要素は、前記第1のシャフトに搭載された第2のディスク状本体を備える、送達システム。
【請求項2】
前記第1のシャフトは、内側シャフトを備え、
前記第2のシャフトは、前記第1のシャフトを囲む外側シャフトを備え、
前記アクチュエータの動作は、前記遠位カプセル部分を前記近位カプセル部分から離れるように押して前記人工補綴弁の一部を拘束解除し、それによって前記一部が半径方向に拡張することを可能にする、請求項に記載の送達システム。
【請求項3】
前記カプセルは、第1の長さを有する内部ポケットを画定し、前記内部ポケットは、半径方向に折り畳まれた状態において前記人工補綴弁を受け取るように構成され、前記遠位カプセル部分および前記近位カプセル部分は、前記第1の長さの中間部分において集合する、請求項に記載の送達システム。
【請求項4】
前記遠位カプセル部分は、前記遠位カプセル部分の近位縁に沿って直線縁をさらに備え、前記カプセルの前記遠位カプセル部分の移動は、前記人工補綴弁の一部を展開させるように構成され、前記直線縁は、前記送達システムの中心軸に対して角度付けられている、請求項に記載の送達システム。
【請求項5】
前記遠位カプセル部分は、前記遠位カプセル部分の近位縁に沿って波状または襞状縁をさらに備え、前記近位カプセル部分から離れる前記カプセルの前記遠位カプセル部分の移動は、連続様式で前記人工補綴弁の異なる部分を展開させるように構成されている、請求項に記載の送達システム。
【請求項6】
前記第2のディスク状本体は、前記第1のディスク状本体より前記遠位端壁の近くに搭載されている、請求項に記載の送達システム。
【請求項7】
前記第1のディスク状本体は、第1および第2のスロットを備え、
前記第2のディスク状本体は、第3および第4のスロットを備える、請求項に記載の送達システム。
【請求項8】
前記第1および第2のスロットは、前記第3および第4のスロットから回転方向にオフセットされている、請求項に記載の送達システム。
【請求項9】
前記人工補綴弁をさらに備え、前記人工補綴弁は、
心室部分であって、前記心室部分は、
心室スカートと、
前記人工補綴弁の前記第2の部分を備える係留タブと
を備え、
前記係留タブは、肘継手において前記心室部分から延在する、心室部分と、
心房フランジを備える心房部分と、
前記人工補綴弁の前記第1の部分を備える交連タブと
を備える、請求項に記載の送達システム。
【請求項10】
前記アクチュエータの動作は、前記心房部分の前に前記心室部分を拘束解除するように構成されている、請求項に記載の送達システム。
【請求項11】
前記アクチュエータの動作が、前記第1の制御要素からの前記交連タブの展開の前に、前記第2の制御要素から前記肘継手を展開させるように構成されているか、または、前記アクチュエータの動作が、前記第2の制御要素からの前記肘継手の展開の前に、前記第1の制御要素から前記交連タブを展開させるように構成されている、請求項に記載の送達システム。
【請求項12】
前記第1のシャフトにわたって摺動可能なシースであって、前記シースは、前記人工補綴物解放機構を備える、シースと、
前記シース上に位置するスロットと
をさらに備え、
前記スロットは、前記シースの遠位端において、前記シースに沿って軸方向に配向されている長細い長方形を備える、請求項1に記載の送達システム。
【請求項13】
前記人工補綴弁をさらに備え、前記人工補綴弁は、
心室部分であって、前記心室部分は、
心室スカートと、
係留タブと
を備え、
前記係留タブは、肘継手において前記心室部分から延在する、心室部分と、
心房フランジを備える心房部分と、
交連タブと
を備える、請求項12に記載の送達システム。
【請求項14】
前記アクチュエータの動作は、前記心室部分の一部を前記スロットの中に配置し、それによって、拘束をそこから除去し、その半径方向拡張を可能にするように構成されている、請求項13に記載の送達システム。
【請求項15】
前記シースの近位移動は、前記人工補綴弁の一部を拘束解除するように構成されている、請求項13に記載の送達システム。
【請求項16】
前記アクチュエータの動作は、前記心房部分の前に前記心室部分を拘束解除するために前記シースを後退させるように構成されている、請求項15に記載の送達システム。
【請求項17】
前記アクチュエータは、サムホイールを備える、請求項1に記載の送達システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(優先権の主張)
本特許出願は、その全内容が、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、「VENTRICULAR DEPLOYMENT OF A TRANSCATHETER MITRAL VALVE PROSTHESIS」と題され、2018年11月8日に出願された、米国仮特許出願第62/757,462号(5131.014PRV)の優先権の利益を主張する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本特許出願はまた、その全内容が、参照することによって本明細書に組み込まれる、米国特許第8,579,964号、米国特許出願公開第2017/0165064号、および米国特許出願第16/111,898号のものに関連する。
【0003】
脊椎動物の心臓は、4つの心腔に分割され、心臓によって圧送される血液が心臓血管系を通る順方向に流動することを確実にする、4つの弁(僧帽、大動脈、肺動脈、および三尖弁)を装備している。健康な心臓の僧帽弁は、心臓の左心室から左心房の中への血液の逆流を防止し、左心室が収縮するときに閉鎖する2つの軟性弁尖(前および後)を備える。弁尖は、線維輪に付着し、それらの遊離縁は、左心室の収縮中に左心房の中へ逸脱することを防止するように、弁下腱索によって左心室内の乳頭筋に繋留される。
【0004】
種々の心臓疾患または退行性変化は、僧帽弁器官のこれらの部分のうちのいずれかで機能不全を引き起こし、僧帽弁を異常に狭窄または拡張させるか、または左心室から左心房の中へ戻って血液を漏出(すなわち、逆流)させ得る。いずれのそのような障害も、心臓の充足性を損なわせ、消耗性または致命的となり得る。
【0005】
したがって、天然僧帽弁器官を置換、修復、または再形成するための開胸心臓手術法、および天然僧帽弁の生体構造を修正する弁形成リング等の種々の人工補綴物の外科的埋込を含む、多数の外科的方法およびデバイスが、僧帽弁機能不全を治療するために開発されてきた。つい最近では、置換僧帽弁アセンブリの送達のための低侵襲経カテーテル技法が開発されている。そのような技法では、人工補綴弁が、概して、可撓性カテーテルの端部上に圧着状態で搭載され、弁が埋込部位に到達するまで患者の血管または身体を通って前進させられる。次いで、人工補綴弁は、欠陥のある自然弁の部位でその機能的サイズまで拡張される。
【0006】
関連し得る、特許および刊行物は、限定ではないが、PCT公開第WO2008/103722号、第WO2009/134701号、および第WO2011/137531号を含む。関連し得る、他の特許および刊行物は、限定ではないが、米国特許公開第US2007/0016286号、第US2006/0241745号、第US2011/0015731号、第2013/075215号、および米国特許第9,125,738号、第6,629,534号を含み得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施例は、主に、人工補綴僧帽弁を参照して議論されるであろうが、当業者は、これが、限定することを意図するものではなく、本明細書に開示されるデバイスが、大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、または静脈弁等のさらに他の弁等の他の弁において使用されてもよいことを理解するであろう。
【0008】
天然僧帽弁装置に取って代わる、それを修復する、または再成形するための開心外科手術技法、および天然僧帽弁の生体構造を修正するための弁形成リング等の種々の人工補綴デバイスの外科手術埋込を含む、多数の外科手術方法およびデバイスが、僧帽弁または他の弁膜機能不全を治療するために開発されている。より最近では、置換僧帽弁アセンブリの送達のための低侵襲性経カテーテル技法が、開発されている。そのような技法では、人工補綴弁が、概して、可撓性カテーテルの端部上に捲縮された状態で搭載され、弁が埋込部位に到達するまで、患者の血管または身体を通して前進される。人工補綴弁は、次いで、欠陥のある天然弁の部位において、その機能サイズに拡張される。
【0009】
これらのデバイスおよび方法は、弁閉鎖不全症のための有望な治療であるが、それらは、送達することが困難である、製造が高価であり得る、または全ての患者に適応されない場合がある。したがって、僧帽弁閉鎖不全症等の弁閉鎖不全症の治療のための改良されたデバイスおよび方法を提供することが望ましいであろう。これらの目的のうちの少なくともいくつかが、以下で開示されるデバイスおよび方法によって満たされるであろう。
【0010】
また、これらのデバイスおよび方法のうちのいくつかは、有望であるが、依然として、人工補綴弁のより正確な送達および展開をさらに可能にし、また、弁を定位置によりしっかりと係留するであろう、改良されたデバイスおよび方法の必要がある。これらの目的のうちの少なくともいくつかは、本明細書に開示される実施例によって満たされるであろう。ここで、図面を参照して、開示されるデバイス、送達システム、および方法の具体的実施例を説明する。本詳細な説明では、いかなる特定の構成要素、特徴、またはステップも、本発明の不可欠であると意図されない。
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
人工補綴弁を患者の心臓の天然僧帽弁に送達する方法であって、前記天然僧帽弁は、天然前尖と、天然後尖とを有し、前記方法は、
心室部分および心房部分を備える人工補綴弁を提供することであって、前記心室部分は、心室スカート、前記心室スカート上に配置される前係留タブ、前記心室スカート上に配置される後係留タブを備え、前記心房部分は、心房フランジを備える、ことと、
最初に、前記心室部分を半径方向に拡張させることと、
前記心室部分後、前記心房部分を半径方向に拡張させることと
を含む、方法。
(項目2)
前記心室部分を半径方向に拡張させることは、前記後係留タブを展開する前、かつ前記心室スカートを展開する前に、前記前係留タブを展開することを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記心室部分を半径方向に拡張させることは、前記前係留タブを展開する前、かつ前記心室スカートを展開する前に、前記後係留タブを展開することを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記心室部分を半径方向に拡張させることは、前記前係留タブを展開する前、かつ前記後係留タブを展開する前に、前記心室スカートを展開することを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
人工補綴弁であって、
心室部分であって、前記心室部分は、心室スカート、前記心室スカート上に配置される前係留タブ、および前記心室スカート上に配置される後係留タブを備える、心室部分と、
心房フランジを備える心房部分と
を備え、
前記心室部分は、最初に、半径方向に拡張するように構成され、
前記心房部分は、前記心室部分後、半径方向に拡張するように構成される、人工補綴弁。
(項目6)
前記心室部分の半径方向拡張は、前記後係留タブおよび前記心室スカートの前に、前記前係留タブを展開させる、項目5に記載の人工補綴弁。
(項目7)
前記心室部分の半径方向拡張は、前記前係留タブおよび前記心室スカートの前に、前記後係留タブを展開させる、項目5に記載の人工補綴弁。
(項目8)
前記心室部分の半径方向拡張は、前記前係留タブおよび前記後係留タブの前に、前記心室スカートを展開させる、項目5に記載の人工補綴弁。
(項目9)
人工補綴弁を患者の心臓の天然僧帽弁に送達する方法であって、前記天然僧帽弁は、天然前尖と、天然後尖とを有し、前記方法は、
心室部分および心房部分を備える前記人工補綴弁を提供することであって、前記心室部分は、心室スカート、前記心室スカート上に配置される前係留タブ、前記心室スカート上に配置される後係留タブを備え、前記心房部分は、心房フランジを備える、ことと、
送達システムを提供することであって、前記人工補綴弁は、前記送達システムの遠位部分に結合される、ことと、
前記送達システムの遠位部分を作動させ、それによって、拘束を前記人工補綴弁から除去することと、
最初に、前記心室部分を半径方向に拡張させることと、
前記心室部分後、前記心房部分を半径方向に拡張させることと
を含む、方法。
(項目10)
前記送達システムの遠位部分はさらに、遠位カプセル部分および近位カプセル部分を備えるカプセルを備え、
前記送達システムの遠位部分を作動させることは、前記近位カプセル部分を前記遠位カプセル部分から離れるように移動させることを含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記送達システムはさらに、前記遠位カプセルに結合される伸長シャフトを備え、前記伸長シャフトを遠位に移動させることは、前記遠位カプセル部分を移動させ、それによって、前記心室部分を拘束解除する、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記遠位カプセル部分はさらに、前記遠位カプセル部分の近位縁に沿って直線縁を備え、前記カプセルの遠位部分を移動させることは、同時に、前記前係留タブおよび後係留タブを展開させる、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記遠位カプセル部分はさらに、伸長シャフトを備え、前記伸長シャフトは、縦軸を有し、前記遠位カプセル部分の近位縁は、前記縦軸に対して横方向にあり、前記カプセルの遠位部分を移動させることは、前記後係留タブの前に、前記前係留タブを展開させる、または、前記カプセルの遠位部分を移動させることは、前記前係留タブの前に、前記後係留タブを展開させる、項目10に記載の方法。
(項目14)
前記遠位カプセル部分はさらに、前記遠位カプセル部分の近位縁に沿って波状または襞状縁を備え、前記カプセルの遠位部分を移動させることは、前記心室スカートおよび前記後係留タブの前に、前記前係留タブを展開させる、または、前記カプセルの遠位部分を移動させることは、前記心室スカートおよび前記前係留タブの前に、前記後係留タブを展開させる、項目10に記載の方法。
(項目15)
前記送達システムの遠位部分はさらに、スロットを備え、前記スロットは、軸方向に配向され、前記送達システムの遠位部分を作動させることは、前記心室部分の一部を前記スロットの中に配置し、それによって、拘束をそこから除去し、その半径方向拡張を可能にする、項目9に記載の方法。
(項目16)
前記前係留タブおよび後係留タブはそれぞれ、少なくとも1つの肘継手を備え、
前記人工補綴弁はさらに、少なくとも1つの交連タブを備え、
前記送達システムの遠位部分はさらに、カプセルおよび伸長シャフトを備え、前記カプセルは、遠位カプセル部分および近位カプセル部分を備え、前記伸長シャフトは、交連制御要素および肘継手制御要素を備え、
前記交連制御要素および肘継手制御要素は、前記カプセルの内側に配置され、
前記少なくとも1つの肘継手は、前記肘継手制御要素に結合され、前記少なくとも1つの交連タブは、前記交連制御要素に結合され、
前記送達システムの遠位部分を作動させることは、前記カプセルの近位部分を前記カプセルの遠位部分から離れるように移動させ、それによって、前記交連制御要素および前記肘継手制御要素を拘束解除することを含む、
項目9に記載の方法。
(項目17)
前記送達システムの遠位部分を作動させることは、前記少なくとも1つの交連タブを展開することを含み、前記交連タブを前記交連制御要素から分離することは、その半径方向拡張を可能にする、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記送達システムの遠位部分を作動させることは、同時に、前記少なくとも1つの肘継手を前記肘継手制御要素から解放し、前記少なくとも1つの交連タブを前記交連制御要素から解放することを含む、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記送達システムの遠位部分を作動させることは、前記少なくとも1つの交連タブを前記交連制御要素から解放する前に、前記少なくとも1つの肘継手を前記肘継手制御要素から解放すること、または、前記少なくとも1つの肘継手を前記肘継手制御要素から解放する前に、前記少なくとも1つの交連タブを前記交連制御要素から解放することを含む、項目16に記載の方法。
(項目20)
前記交連制御要素はさらに、スロットを備え、または、前記肘継手制御要素はさらに、スロットを備え、前記心室部分の遠位部分は、前記スロット内に配置される突出部を備え、前記送達システムの遠位部分を作動させることは、前記突出部を前記交連制御要素または前記肘継手制御要素から分離することを含み、前記分離は、前記心室部分が拡張することを可能にする、項目16に記載の方法。
(項目21)
人工補綴弁を患者の心臓の天然僧帽弁に送達するためのシステムであって、前記天然僧帽弁は、天然前尖と、天然後尖とを有し、前記システムは、
心室部分および心房部分を備える人工補綴弁であって、前記心室部分は、心室スカート、前記心室スカート上に配置される前係留タブ、前記心室スカート上に配置される後係留タブを備え、前記心房部分は、心房フランジを備える、人工補綴弁と、
送達システムであって、前記人工補綴弁は、前記送達システムの遠位部分に結合される、送達システムと
を備え、
前記送達システムの遠位部分の作動は、前記人工補綴弁を拘束解除し、最初に、前記心室部分の半径方向拡張、前記心室部分後、前記心房部分の半径方向拡張を可能にする、システム。
(項目22)
前記送達システムの遠位部分はさらに、遠位カプセル部分および近位カプセル部分を備えるカプセルを備え、
前記送達システムの遠位部分の作動は、前記近位カプセル部分を前記遠位カプセル部分から離れるように移動させるように構成される、項目21に記載のシステム。
(項目23)
前記送達システムはさらに、前記遠位カプセル部分に結合される伸長シャフトを備え、前記伸長シャフトの遠位移動は、前記遠位カプセル部分を前記近位カプセル部分に対して移動させ、前記遠位カプセル部分の遠位移動は、前記心室部分を拘束解除するように構成される、項目22に記載のシステム。
(項目24)
前記遠位カプセル部分はさらに、前記遠位カプセル部分の近位縁に沿って直線縁を備え、前記カプセルの遠位部分の移動は、同時に、前記前係留タブおよび後係留タブを展開させるように構成される、項目22に記載のシステム。
(項目25)
前記カプセルの遠位部分はさらに、伸長シャフトを備え、前記伸長シャフトは、縦軸を有し、前記カプセルの遠位部分の移動は、前記後係留タブの前に、前記前係留タブを展開させるように構成される、または、前記カプセルの遠位部分の移動は、前記前係留タブの前に、前記後係留タブを展開させるように構成される、項目22に記載のシステム。
(項目26)
前記遠位カプセル部分はさらに、前記遠位カプセル部分の近位縁に沿って波状または襞状縁を備え、前記カプセルの遠位部分の移動は、前記心室スカートおよび前記後係留タブの前に、前記前係留タブを展開させるように構成される、または、前記遠位カプセル部分の移動は、前記心室スカートおよび前記後係留タブの前に、前記後係留タブを展開するように構成される、項目22に記載のシステム。
(項目27)
前記送達システムの遠位部分はさらに、スロットを備え、前記スロットは、軸方向に配向され、前記送達システムの遠位部分の作動は、前記心室部分の一部を前記スロットの中に配置し、それによって、拘束をそこから除去し、その半径方向拡張を可能にするように構成される、項目21に記載のシステム。
(項目28)
前記前係留タブおよび後係留タブはそれぞれ、少なくとも1つの肘継手を備え、
前記人工補綴弁はさらに、少なくとも1つの交連タブを備え、前記送達システムの遠位部分はさらに、カプセルおよび伸長シャフトを備え、前記カプセルは、遠位部分および近位部分を備え、前記伸長シャフトは、交連制御要素および肘継手制御要素を備え、
前記交連制御要素および肘継手制御要素は、前記カプセルの内側に配置され、
前記少なくとも1つの肘継手は、前記肘継手制御要素に結合され、前記少なくとも1つの交連タブは、前記交連制御要素に結合され、
前記送達システムの遠位部分の作動は、前記カプセルの近位部分を前記カプセルの遠位部分から離れるように分離し、それによって、拘束をそこから除去するように構成される、
項目21に記載のシステム。
(項目29)
前記送達システムの遠位部分の作動は、前記少なくとも1つの交連タブを展開し、前記少なくとも1つの交連タブを前記交連制御要素から分離するように構成され、前記分離は、前記送達システムの遠位部分が拡張することを可能にするように構成される、項目28に記載のシステム。
(項目30)
前記送達システムの遠位部分の作動は、前記少なくとも1つの肘継手を前記肘継手制御要素から展開するように構成され、前記交連制御要素からの前記少なくとも1つの交連タブの展開は、同時に生じる、項目28に記載のシステム。
(項目31)
前記送達システムの遠位部分の作動は、前記交連制御要素からの前記少なくとも1つの交連タブの展開の前に、前記少なくとも1つの肘継手を前記肘継手制御要素から展開するように構成される、または、前記交連制御要素からの前記少なくとも1つの交連タブの展開は、前記肘継手制御要素からの前記少なくとも1つの肘継手の展開前に生じる、項目28に記載のシステム。
(項目32)
前記交連制御要素はさらに、スロットを備え、または、前記肘継手制御要素はさらに、スロットを備え、前記心室部分の遠位部分は、前記スロット内に配置される突出部を備え、前記送達システムの遠位部分の作動は、前記突出部を前記交連制御要素または前記肘継手制御要素から分離するように構成され、前記分離は、前記心室部分が拡張することを可能にするように構成される、項目27に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面では、これは、必ずしも、正確な縮尺で描かれておらず、同様の番号は、異なる図において類似構成要素を説明し得る。異なる文字の添え字を有する、同様の番号は、類似構成要素の異なる事例を表し得る。図面は、概して、一例として、限定ではないが、本書に議論される種々の実施形態を図示する。
【0012】
本発明の新規の特徴は、添付の請求項で詳細に記載される。本発明の特徴および利点のより良好な理解は、本発明の原理が利用される、例証的実施例を記載する以下の詳細な説明、および添付図面を参照することによって得られるであろう。
【0013】
図1図1は、矢印で収縮期中の血流を示す、心臓の左心室の概略図である。
【0014】
図2図2は、僧帽弁に逸脱弁尖を有する心臓の左心室の概略図である。
【0015】
図3-1】図3は、心臓が拡張され、弁尖が交わらない、心筋症に罹患している患者の心臓の概略図である。
【0016】
図3-2】図3Aは、弁尖の正常な閉鎖を示す。図3Bは、弁尖の異常な閉鎖を示す。
【0017】
図4図4は、損なわれた乳頭筋を有する心臓の左心室内の僧帽弁逆流を図示する。
【0018】
図5A図5A-5Bは、僧帽弁の生体構造を図示する。
図5B図5A-5Bは、僧帽弁の生体構造を図示する。
【0019】
図6図6は、フレームが平らにされて広げられている、人工補綴心臓弁内の覆われていないフレームを図示する。
【0020】
図7図7は、フレームが平らにされて広げられている、人工補綴心臓弁内の別の覆われていないフレームを図示する。
【0021】
図8図8は、フレームが平らにされて広げられている、人工補綴心臓弁内のなおも別の覆われていないフレームを図示する。
【0022】
図9A図9Aは、拡張した後の人工補綴心臓弁内の覆われていないフレームの斜視図を図示する。
【0023】
図9B図9Bは、図9Aの構造の上面図を図示する。
【0024】
図10図10は、被覆を伴い、それによって、人工補綴心臓弁を形成する、図9Aのフレームを図示する。
【0025】
図11A図11A-11Dは、人工補綴心臓弁を経心尖的に送達するために使用される送達システムを図示する。
図11B図11A-11Dは、人工補綴心臓弁を経心尖的に送達するために使用される送達システムを図示する。
図11C図11A-11Dは、人工補綴心臓弁を経心尖的に送達するために使用される送達システムを図示する。
図11D図11A-11Dは、人工補綴心臓弁を経心尖的に送達するために使用される送達システムを図示する。
【0026】
図12A図12A-12Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む方法を図示する。
図12B図12A-12Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む方法を図示する。
図12C図12A-12Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む方法を図示する。
図12D図12A-12Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む方法を図示する。
図12E図12A-12Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む方法を図示する。
図12F図12A-12Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む方法を図示する。
図12G図12A-12Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む方法を図示する。
図12H図12A-12Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む方法を図示する。
図12I図12A-12Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む方法を図示する。
図12J図12A-12Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む方法を図示する。
図12K図12A-12Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む方法を図示する。
図12L図12A-12Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む方法を図示する。
【0027】
図13A図13A-13Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む別の方法を図示する。
図13B図13A-13Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む別の方法を図示する。
図13C図13A-13Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む別の方法を図示する。
図13D図13A-13Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む別の方法を図示する。
図13E図13A-13Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む別の方法を図示する。
図13F図13A-13Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む別の方法を図示する。
図13G図13A-13Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む別の方法を図示する。
図13H図13A-13Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む別の方法を図示する。
図13I図13A-13Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む別の方法を図示する。
図13J図13A-13Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む別の方法を図示する。
図13K図13A-13Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む別の方法を図示する。
図13L図13A-13Lは、人工補綴心臓弁を埋め込む別の方法を図示する。
【0028】
図14図14A-14Dは、タブ被覆を図示する。
【0029】
図15-1】図15A-15Eは、多くの実施例による、人工補綴心臓弁を展開する方法を図式的に図示し、それによって、第1および第2の前タブは、並行して展開される。
【0030】
図15-2】図15F-15Lは、多くの実施例による、人工補綴心臓弁を展開する方法を図式的に図示し、それによって、第1の前タブは、第2の前タブの前に展開される。
図15-3】図15F-15Lは、多くの実施例による、人工補綴心臓弁を展開する方法を図式的に図示し、それによって、第1の前タブは、第2の前タブの前に展開される。
【0031】
図16A図16Aは、多くの実施例による、拘束シース内に保持される、人工補綴心臓弁を示す。
【0032】
図16B図16Bは、図16Bの線B-Bに沿って得られた、図16Aの人工補綴心臓弁の断面を図式的に図示する。
【0033】
図17-1】図17A-17Mは、多くの実施例による、人工補綴心臓弁の第1の前タブ、第2の前タブ、および後タブを完全に展開するための異なるシーケンスの変形例を図式的に図示する。
図17-2】図17A-17Mは、多くの実施例による、人工補綴心臓弁の第1の前タブ、第2の前タブ、および後タブを完全に展開するための異なるシーケンスの変形例を図式的に図示する。
図17-3】図17A-17Mは、多くの実施例による、人工補綴心臓弁の第1の前タブ、第2の前タブ、および後タブを完全に展開するための異なるシーケンスの変形例を図式的に図示する。
【0034】
図18-1】図18A-18Mは、多くの実施例による、人工補綴心臓弁の第1の前タブ、第2の前タブ、および後タブを部分的に展開するための異なるシーケンスの変形例を図式的に図示する。
図18-2】図18A-18Mは、多くの実施例による、人工補綴心臓弁の第1の前タブ、第2の前タブ、および後タブを部分的に展開するための異なるシーケンスの変形例を図式的に図示する。
図18-3】図18A-18Mは、多くの実施例による、人工補綴心臓弁の第1の前タブ、第2の前タブ、および後タブを部分的に展開するための異なるシーケンスの変形例を図式的に図示する。
【0035】
図19図19A-19Dは、人工補綴弁の展開のシーケンスを図示する。
【0036】
図20図20A-20Eは、人工補綴弁の展開の別のシーケンスを図示する。
【0037】
図21図21A-21Eは、人工補綴弁の展開のさらに別のシーケンスを図示する。
【0038】
図22図22A-22Bは、タブ展開の実施例を図示する。
【0039】
図23図23A-23Cは、人工補綴弁の展開のさらに別の実施例を図示する。
【0040】
図24図24A-24Cは、人工補綴弁のための送達システムを図示する。
【0041】
図25-1】図25A-25Cは、人工補綴弁のための別の送達システムを図示する。
【0042】
図25-2】図25D1-25D2は、カプセルの実施例を示す。
【0043】
図25-3】図25E1-25E2は、カプセルの別の実施例を示す。
【0044】
図25-4】図25F1-25F2は、カプセルのさらに別の実施例を示す。
【0045】
図25-5】図25G-25Hは、心室展開の実施例を示す。
図25-6】図25G-25Hは、心室展開の実施例を示す。
【0046】
図25-7】図25Iは、展開を制御するための機構の実施例を示す。
【0047】
図25-8】図25Jは、展開を制御する実施例を図示する。
【0048】
図26図26は、人工補綴心臓弁のための経隔壁送達システムの斜視図である。
【0049】
図27図27A-27Dは、人工補綴弁を送達する経隔壁方法の実施例を図示する。
【0050】
図28図28は、図26に見られる送達システムの組立図である。
【0051】
図29図29は、図26に見られる送達システムの送達ハンドル部分の組立図である。
【0052】
図30図30は、図26に見られる送達システムの操向ガイド部分の組立図である。
【0053】
図31図31は、図26に見られる送達システムの送達カテーテル部分の組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
心臓の生体構造。収縮期の正常な心臓Hの左心室LVが、図1で図示されている。左心室LVは、収縮しており、血液は、矢印の方向へ大動脈AV、三尖弁を通って外向きに流動する。僧帽弁は、左心室内の圧力が左心房LA内の圧力よりも高いときに逆流を防止する「逆止弁」として構成されるため、僧帽弁MVを通る血液の逆流動または「逆流」が防止される。僧帽弁MVは、図1で図示されるように、閉鎖するように均等に交わる、遊離縁FEを有する一対の弁尖を備える。弁尖LFの反対端は、弁輪ANと呼ばれる環状領域に沿って、周辺心臓構造に付着している。尖LFの遊離縁FEは、弁尖LFのそれぞれの下面を覆って固着された複数の分岐腱を含む、腱索(chordae tendineae)CT(本明細書では「腱索(chordae)」とも呼ばれる)を通って、左心室LVの下部分に固着される。腱索CTは、ひいては、左心室および心室中隔IVSの下部分から上向きに延在する、乳頭筋PMに付着している。
【0055】
ここで図2-4を参照すると、心臓内のいくつかの構造欠陥が、僧帽弁逆流を引き起こし得る。図2に示されるように、不十分な張力が腱索を介して弁尖に伝達されるため、断裂した腱索RCTが、弁尖LF2を逸脱させ得る。他の弁尖LF1が正常な外形を維持する一方で、2つの弁尖は適正に交わらず、左心室LVから左心房LAの中への漏出が、矢印によって示されるように起こるであろう。
【0056】
逆流はまた、図3に示されるように、心臓が拡張され、増大したサイズが、弁尖LFが適正に交わることを妨げる、心筋症に罹患している患者でも起こる。心臓の拡大は、僧帽弁輪を拡大させ、遊離縁FEが収縮期中に交わることを不可能にする。前尖および後尖の遊離縁は、通常、図3Aに示されるように、接合線Cに沿って交わるが、図3Bに示されるように、有意な間隙Gが、心筋症に罹患している患者において残され得る。
【0057】
僧帽弁逆流はまた、図4で図示されるように、乳頭筋PMの機能が損なわれている、虚血性心疾患に罹患した患者でも起こり得る。左心室LVが収縮期中に収縮すると、乳頭筋PMは、適正な閉鎖を達成するように十分接触しない。次いで、弁尖LF1およびLF2が、図示されるように逸脱する。再度、漏出が、矢印によって示されるように、左心室LVから左心房LAへ起こる。
【0058】
図5Aは、前側ANTおよび後側POSTを有する二尖弁である、僧帽弁MVの生体構造をより明確に図示する。弁は、前(大動脈)尖ALおよび後(壁)尖PLを含む。腱索CTは、弁尖AL、PLを前外側乳頭筋ALPMおよび後内側乳頭筋PMPMと連結する。弁尖AL、PLは、前外側交連ALCおよび後内側交連PMCと呼ばれる線に沿って相互に接合する。弁輪ANは、弁尖を取り囲み、前尖の反対側で弁輪の前部分に隣接する2つの領域は、左線維性三角LFT、また、右線維性三角RFTと呼ばれる。これらの領域は、概して、黒三角形によって示される。図5Bは、左右の線維性三角LFT、RFTをより明確に図示する。
【0059】
種々の外科的技法および埋込型デバイスが提案されており、僧帽弁逆流にとって有望な治療であると考えられるが、外科的アプローチは、長期の回復期間を必要とし得、埋込型デバイスには、様々な臨床結果がある。したがって、依然として、僧帽弁逆流を治療するための改良型デバイスおよび方法の必要性がある。本明細書で開示される実施例は、僧帽弁逆流を治療するための埋込型人工補綴僧帽弁を対象とするが、当業者は、これが限定的であることを目的とせず、本明細書で開示されるデバイスおよび方法はまた、三尖弁、大動脈、肺動脈弁等の他の心臓弁、および静脈弁等の体内の他の弁を治療するために使用されてもよいことを理解するであろう。
【0060】
人工補綴弁。人工補綴弁は、僧帽弁逆流の治療として、心臓に外科的に埋め込まれている。これらの弁のうちのいくつかは、ブタ弁等の動物から採取された弁であり、他の弁は、組織被覆を伴う、または伴わない人工補綴機械弁であった。つい最近では、人工補綴弁を心臓に送達するために、低侵襲カテーテル技術が使用されている。これらの弁は、典型的には、弁を患者の心臓に固着するためのアンカと、機械弁、動物組織を伴う弁、またはそれらの組み合わせのいずれか一方である弁機構とを含む。人工補綴弁は、いったん埋め込まれると、正常に機能していない自然弁の役割を引き継ぎ、それによって、弁閉鎖不全症を低減または排除する。これらの弁のうちのいくつかは有望と考えられるが、依然として、改良型弁の必要性がある。天然生体構造内に人工補綴弁を位置付けて係留することが、課題のままである。以下の明細書は、既存の人工補綴弁と関連付けられる課題のうちのいくつかを克服する、人工補綴弁、人工補綴弁用の送達システム、弁を送達する方法を開示する。
【0061】
図6は、切断され、広げられた平坦パターンにおける人工補綴心臓弁を図示する。フレームからの被覆(例えば、織物または組織)が、下層のフレーム600の観察を可能にするように除去されている。フレームは、広げられ、平らにされている。人工補綴弁フレーム600は、心房領域606、環状領域608、および心室領域610を有する。フレーム600は、相互に対して拡張および収縮し、それによって、フレームが折り畳み構成で送達カテーテル上に装填され、次いで、埋込のための標的治療部位で半径方向に拡張されることを可能にすることができる、一連の頂点および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱から形成される。フレームは、自己拡張式であり、超弾性ニチノールまたは他の自己拡張式材料を使用して加工されてもよい。遷移温度以上で跳開する形状記憶合金もまた、使用されてもよく、フレームを開放するために弾性変形(例えば、バルーン膨張)が必要とされるときに、拡張可能な部材もまた、フレームを拡張するために使用されてもよい。
【0062】
心房領域606は、一連の頂点および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱を含む、スカート616を有する。本領域中で、支柱は、相互に対して歪曲され、したがって、結果として生じるセルパターンは、拡大端を有し、反対側の端部は、より小さい端部まで先細になる。心房スカートの前部分は、後部分のようなフランジ付き領域を有さず、したがって、心房領域の前部分602は、後領域604よりも短い支柱を有してもよい。したがって、前部分における頂点および谷部は、心房領域の残りの後部分におけるものから軸方向にオフセットしている。これは、心房スカートの前部分における支柱が上向きに突出し、潜在的に左心房に対して衝突し、穿孔を引き起こすことを防止するため、有利であり得る。加えて、短縮された支柱およびオフセット頂点および谷部は、僧帽弁への人工補綴弁の送達の可視化で、および、人工補綴弁の拡張に先立った人工補綴弁の整合で、医師を支援することができる、整合要素614を形成する。随意的な放射線不透過性マーカ614aが、オフセット頂点および谷部の両側に配置され、さらに、弁の埋込中の可視化に役立つ。心房領域は、好ましくは、円筒形状まで自己拡張するか、または前部分602が略平坦であり、後部分604が円筒形状である、D字形断面を有し得るかのいずれかである。これは、心房スカートが天然僧帽弁の生体構造に一致することを可能にし、それによって、左心室流出路の閉塞を防止する。加えて、心房スカートもまた、拡張時に、スカートが外向きに広がり、僧帽弁の上面に対して静置することができるフランジを形成するように、形成されてもよい。フランジ付き領域は、好ましくは、心房スカートの後部分に沿っており、心房スカートの前部分は、フランジがないままである。または、フランジは、完全に心房スカートの周囲に延在してもよい。心房領域は、好ましくは、直線状であり、フレームの縦軸と略平行である接続支柱を用いて、隣接する環状領域608に接続された。
【0063】
環状領域608もまた、半径方向拡張を可能にする頂点および谷部を形成する、複数の軸方向に配向して相互接続された支柱から成る。支柱は、好ましくは、相互と平行であり、かつフレームの縦軸と平行である。環状領域はまた、自己拡張式であり、円筒形状に拡張してもよく、またはより好ましくは、環状領域は、心房領域に関して上記で説明されるようにD字形断面を有するように拡張してもよい。したがって、環状領域は、同様に、平坦な前部分、および円筒形状の後部分を有してもよい。送達時に、環状領域は、僧帽弁輪と整合させられ、それに対して拡張される。コネクタ支柱が、環状領域を心室領域610と接合する。
【0064】
心室領域610もまた、頂点および谷部を形成する複数の相互接続された支柱を含む。加えて、心室領域中の支柱は、人工補綴弁尖を形成するように、織物、心膜組織、または他の材料で被覆される、弁尖交連613を形成する。交連内の孔は、縫合糸がそれに取り付けられることを可能にする。心室領域中の支柱はまた、前および後僧帽弁尖に係合するように外向きに拡張する心室スカート628も形成し、心室領域中の支柱はまた、前タブ624および後タブ630も形成する。前タブは、前タブの内面と心室スカートの外面との間に前僧帽弁尖を捕捉するように設計されている。任意の隣接する腱索もまた、その間に捕捉されてもよい。また、前タブの先端は、一方が左側、もう一方が右側で、僧帽弁の前部分上の線維性三角に係合する。後タブは、同様に、任意の隣接する腱索とともに、後タブの内面と心室スカートの外面との間に後僧帽弁尖を捕捉する。これを以下でさらに詳細に説明する。
【0065】
フレームに沿って前または後タブの支柱長または軸方向位置を制御することによって、タブの展開のシーケンスが制御されてもよい。したがって、本例示的実施形態では、前タブおよび後タブ624、630内の支柱の長さ、およびフレームに沿ったそれらの相対位置が相互と同一であるため、拘束シースがタブから離れて後退させられたとき、前および後タブは、部分的にともに外向きに跳出するであろう。拘束シースがさらに後退させられると、前タブの残りの部分は、半径方向外向きに自己拡張するであろう。次いで、拘束シースのさらなる後退は、後タブの残りの部分が、その半径方向拡張を終えることを可能にし、最終的に、心室スカートが、半径方向外向きに拡張するであろう。後タブおよび心室スカートの支柱長および軸方向位置が類似する一方で、内部支柱が、心室スカートを交連と接続し、これは、心室スカートの拡張をわずかに遅延させ、したがって、後タブが心室スカートの前に拡張を終える。人工補綴弁を展開する本シーケンスを使用することにより、弁がより正確に送達され、また、よりしっかりと定位置に係留されることを可能にし得る。例えば、前タブまたは後タブのいずれかは、少なくともある場合には、他のものより容易に可視化され得、より容易に可視化されるタブは、ガイドとして、最初に展開し、埋込の際、フレームを配向するように構成されてもよい。少なくともある場合には、本発明者らは、後タブが、超音波および/または蛍光透視法を使用して可視化することがより容易であることを見出している。タブ展開のシーケンスは、ある場合には、個々の患者およびその生体構造にカスタマイズされてもよく、カスタマイズは、個々の患者のための事前スクリーニング撮像データに基づいてもよい。超音波および/または蛍光透視法等を使用することによってより容易に可視化されるように投影される、タブは、最初に展開するように構成されてもよい。最初に展開されるタブは、初期タブ設置の照合を提供するように、撮像源、例えば、蛍光透視法のための超音波またはX線デバイスを制御するC-アームの中間移動を可能にすることができる。必要とされる場合、人工補綴弁は、撮像または可視化に基づいて、初期タブが展開された(および残りのタブはまだ展開されていない)状態で、再位置付けおよび/または再配向されてもよい。タブの可視性をさらに改良するために、タブのうちの1つ以上のものの長さおよび/または曲率が、個々の患者およびその生体構造のためにカスタマイズされてもよい。1つ以上のタブの長さおよび/または曲率は、弁尖および/または腱索の背後の展開面積等の個々の患者の生体構造への最適嵌合を提供するようにカスタマイズされてもよい。
【0066】
縫合糸孔621は、心膜またはDacronまたはePTFE等のポリマー等のカバーの付着を可能にするように、環状領域および心室領域の支柱に沿って配置される。縫合糸孔はまた、フレームの任意の他の部分に沿って配置されてもよい。返し623は、人工補綴弁を隣接する組織に係留するのに役立つように、心室スカート628に沿って配置される。交連タブまたはタブ612は、交連613の先端の上に配置され、以下で説明されるように、交連を送達システムと解放可能に連結するために使用されてもよい。これは、フレームが最初に拡張し、次いで、その後に交連が送達システムから解放されることを可能にしてもよい。当業者は、いくつかの支柱の幾何学形状が使用されてもよく、加えて、剛性、半径方向粉砕強度、交連偏向等の所望の機械的性質を人工補綴物に提供するために、長さ、幅、厚さ等の支柱の寸法が調整されてもよいことを理解するであろう。したがって、図示した幾何学形状は、限定的であることを目的としていない。
【0067】
フレームは、放電機械加工(EDM)、レーザ切断、光化学エッチング、または当技術分野で公知である他の技法によって形成されてもよい。皮下注射管または平板が、フレームを形成するために使用されてもよい。いったんフレームが切断されて(必要であれば)円筒に形成されると、それは、所望の幾何学形状に半径方向に拡張され、形状を設定するように公知のプロセスを使用して熱処理されてもよい。したがって、人工補綴弁は、折り畳み構成で送達カテーテル上に装填され、拘束シースを用いて折り畳み構成で拘束されてもよい。拘束シースの除去は、人工補綴物がその不偏事前設定形状に自己拡張することを可能にするであろう。他の形態では、人工補綴物をその拡張構成に半径方向に拡張するために、バルーン等の拡張可能な部材が使用されてもよい。
【0068】
図7は、平らに広げられた切断パターンの人工補綴心臓弁の別の実施例を図示し、前述の実施例に類似し、主な違いは、前タブ、後タブ、および心室スカートにおける支柱長である。支柱長を変化させることにより、前および後タブおよび心室スカートの拡張のシーケンスが制御されることを可能にする。フレームからの被覆(例えば、織物または組織)が、下層のフレーム700の観察を可能にするように除去されている。フレームは、広げられ、平らにされている。人工補綴弁フレーム700は、心房領域706、環状領域708、および心室領域710を有する。フレーム700は、相互に対して拡張および収縮し、それによって、フレームが折り畳み構成で送達カテーテル上に装填され、次いで、埋込のための標的治療部位で半径方向に拡張されることを可能にすることができる、一連の頂点および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱から形成される。いくつかの実施例は、自己拡張式であり、超弾性ニチノールまたは他の自己拡張式材料を使用して加工されてもよい。遷移温度以上で跳開する形状記憶合金もまた、使用されてもよく、フレームを開放するために弾性変形(例えば、バルーン膨張)が必要とされるときに、拡張可能な部材もまた、フレームを拡張するために使用されてもよい。
【0069】
心房領域706は、一連の頂点および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱を含む、スカート716を有する。本領域中で、支柱は、相互に対して歪曲され、したがって、結果として生じるセルパターンは、拡大端を有し、反対側の端部は、より小さい端部まで先細になる。心房領域の前部分702は、後領域704よりも短い支柱を有する。したがって、前部分における頂点および谷部は、心房領域の残りの後部分におけるものから軸方向にオフセットしている。これは、医師が人工補綴弁を僧帽弁に送達し、人工補綴弁の拡張に先立って人工補綴弁を整合させるのに役立つように、整合要素714の生成を可能にする。心房領域706の他の側面は、図6の心房領域606のものに類似する。随意的な放射線不透過性マーカ714aが、オフセット頂点および谷部の両側に配置され、弁の埋込中の可視化に役立つ。心房領域は、好ましくは、円筒形状まで自己拡張するか、または前部分702が略平坦であり、後部分704が円筒形状である、D字形断面を有し得るかのいずれかである。これは、心房スカートが天然僧帽弁の生体構造に一致することを可能にし、それによって、左心室流出路の閉塞を防止する。加えて、心房スカートもまた、拡張時に、スカートが外向きに広がり、僧帽弁の上面に対して静置することができるフランジを形成するように、形成されてもよい。フランジ付き領域は、好ましくは、心房スカートの後部分に沿っており、心房スカートの前部分は、フランジがないままである。または、フランジは、完全に心房スカートの周囲に延在してもよい。心房領域は、好ましくは、直線状であり、フレームの縦軸と実質的に平行である、接続支柱を用いて、隣接する環状領域708に接続された。
【0070】
環状領域708もまた、半径方向拡張を可能にする頂点および谷部を形成する、複数の軸方向に配向して相互接続された支柱から成る。支柱は、好ましくは、相互と平行であり、かつフレームの縦軸と平行である。環状領域はまた、自己拡張式であり、円筒形状に拡張してもよく、またはより好ましくは、環状領域は、心房領域に関して上記で説明されるようにD字形断面を有するように拡張してもよい。したがって、環状領域は、同様に、平坦な前部分、および円筒形状の後部分を有してもよい。送達時に、環状領域は、僧帽弁輪と整合させられ、それに対して拡張される。コネクタ支柱が、環状領域を心室領域710と接合する。
【0071】
心室領域710もまた、頂点および谷部を形成する複数の相互接続された支柱を含む。加えて、心室領域中の支柱は、人工補綴弁尖を形成するように、織物、心膜組織、または他の材料で被覆される、弁尖交連713を形成する。交連内の孔は、縫合糸がそれに取り付けられることを可能にする。心室領域中の支柱はまた、前および後僧帽弁尖に係合するように外向きに拡張する心室スカート728も形成し、心室領域中の支柱はまた、前タブ724および後タブ730も形成する。前タブは、前タブの内面と心室スカートの外面との間に前僧帽弁尖を捕捉するように設計されている。任意の隣接する腱索もまた、その間に捕捉されてもよい。また、前タブの先端は、一方が左側、もう一方が右側で、僧帽弁の前部分上の線維性三角に係合する。後タブは、同様に、任意の隣接する腱索とともに、後タブの内面と心室スカートの外面との間に後僧帽弁尖を捕捉する。これを以下でさらに詳細に説明する。
【0072】
フレームに沿って前または後タブの支柱長または軸方向位置を制御することによって、タブの展開が制御されてもよい。したがって、本実施例では、前タブおよび後タブ724、730内の支柱の長さ、およびフレームに沿ったそれらの相対位置が相互と同一であるため、拘束シースがタブから離れて後退させられたとき、前および後タブは、部分的にともに外向きに跳出するであろう。拘束シースがさらに後退させられると、前タブの残りの部分は、心室スカートおよび後タブにおける支柱に対して最も短いため、半径方向外向きに自己拡張するであろう。次いで、拘束シースのさらなる後退は、心室スカートが半径方向に拡張することを可能にし、最終的に、シースのさらなる後退は、後タブの残りの部分が、その半径方向拡張を終えることを可能にする。人工補綴弁を展開する本シーケンスを使用することにより、弁がより正確に送達され、また、よりしっかりと定位置に係留されることを可能にし得る。
【0073】
縫合糸孔721は、心膜またはDacronまたはePTFE等のポリマー等のカバーの付着を可能にするように、環状領域および心室領域の支柱に沿って配置される。縫合糸孔はまた、フレームの任意の他の部分に沿って配置されてもよい。返し723は、人工補綴弁を隣接する組織に係留するのに役立つように、心室スカート728に沿って配置される。交連タブまたはタブ712は、交連713の先端の上に配置され、以下で説明されるように、交連を送達システムと解放可能に連結するために使用されてもよい。これは、フレームが最初に拡張することを可能にし、次いで、その後に交連が送達システムから解放されてもよい。当業者は、いくつかの支柱の幾何学形状が使用されてもよく、加えて、剛性、半径方向粉砕強度、交連偏向等の所望の機械的性質を人工補綴物に提供するために、長さ、幅、厚さ等の支柱の寸法が調整されてもよいことを理解するであろう。したがって、図示した幾何学形状は、限定的であることを目的としていない。フレームは、図6に関して上記で説明されるように同様に形成されてもよい。
【0074】
図8は、平らに広げられた切断パターンの人工補綴心臓弁の別の形態を図示し、前述の実施例に類似し、主な違いは、後タブが、拡張して、後尖と心室壁との間の弁輪下領域との後タブの係合および係留を可能にする細長い水平区分を形成するように設計されていることである。したがって、細長い水平区分は、支柱の間の単一のヒンジから形成される先細先端のみを有する後タブと比較して、弁輪下領域のより広い領域に接触する。これは、人工補綴弁の係留増進を提供する。ここでは、前タブが、最初に完全に自己拡張し、それに続いて、後タブ、次いで、心室スカートが自己拡張する。しかしながら、状況によっては、送達システム、生体構造等の外部要因が、拡張のシーケンスを変更し得、したがって、これは限定的であることを目的としていない。フレームからの被覆(例えば、織物または組織)が、下層のフレーム800の観察を可能にするように除去されている。フレームは、広げられ、平らにされている。人工補綴弁フレーム800は、心房領域806、環状領域808、および心室領域810を有する。フレーム800は、相互に対して拡張および収縮し、それによって、フレームが折り畳み構成で送達カテーテル上に装填され、次いで、埋込のための標的治療部位で半径方向に拡張されることを可能にすることができる、一連の頂点および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱から形成される。実施例は、自己拡張式であり、超弾性ニチノールまたは他の自己拡張式材料を使用して加工されてもよい。遷移温度以上で跳開する形状記憶合金もまた、使用されてもよく、フレームを開放するために弾性変形(例えば、バルーン膨張)が必要とされるときに、拡張可能な部材もまた、フレームを拡張するために使用されてもよい。
【0075】
心房領域806は、一連の頂点および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱を含む、スカート816を有する。本領域中で、支柱は、相互に対して歪曲され、したがって、結果として生じるセルパターンは、拡大端を有し、反対側の端部は、より小さい端部まで先細になる。心房領域の前部分802は、後領域804よりも短い支柱を有する。したがって、前部分における頂点および谷部は、心房領域の残りの後部分におけるものから軸方向にオフセットしている。これは、医師が人工補綴弁を僧帽弁に送達し、人工補綴弁の拡張に先立って人工補綴弁を整合させるのに役立つように、整合要素814の生成を可能にする。心房領域806の他の側面は、図6の心房領域606のものに類似する。随意的な放射線不透過性マーカ814aが、オフセット頂点および谷部の両側に配置され、弁の埋込中の可視化に役立つ。心房領域は、好ましくは、円筒形状まで自己拡張するか、または前部分802が略平坦であり、後部分804が円筒形状である、D字形断面を有し得るかのいずれかである。これは、心房スカートが天然僧帽弁の生体構造に一致することを可能にし、それによって、左心室流出路の閉塞を防止する。加えて、心房スカートもまた、拡張時に、スカートが外向きに広がり、僧帽弁の上面に対して静置することができるフランジを形成するように、形成されてもよい。フランジ付き領域は、好ましくは、心房スカートの後部分に沿っており、心房スカートの前部分は、フランジがないままである。または、フランジは、完全に心房スカートの周囲に延在してもよい。心房領域は、好ましくは、直線状であり、フレームの縦軸と実質的に平行である、接続支柱を用いて、隣接する環状領域808に接続された。
【0076】
環状領域808もまた、半径方向拡張を可能にする頂点および谷部を形成する、複数の軸方向に配向して相互接続された支柱から成る。支柱は、好ましくは、相互と平行であり、かつフレームの縦軸と平行である。環状領域はまた、自己拡張式であり、円筒形状に拡張してもよく、またはより好ましくは、環状領域は、心房領域に関して上記で説明されるようにD字形断面を有するように拡張してもよい。したがって、環状領域は、同様に、平坦な前部分、および円筒形状の後部分を有してもよい。送達時に、環状領域は、僧帽弁輪と整合させられ、それに対して拡張される。コネクタ支柱が、環状領域を心室領域810と接合する。
【0077】
心室領域810もまた、頂点および谷部を形成する複数の相互接続された支柱を含む。加えて、心室領域中の支柱は、人工補綴弁尖を形成するように、織物、心膜組織、または他の材料で被覆される、弁尖交連813を形成する。交連内の孔は、縫合糸がそれに取り付けられることを可能にする。心室領域中の支柱はまた、前および後僧帽弁尖に係合するように外向きに拡張する心室スカート828も形成し、心室領域中の支柱はまた、前タブ824および後タブ830も形成する。前タブは、前タブの内面と心室スカートの外面との間に前僧帽弁尖を捕捉するように設計されている。任意の隣接する腱索もまた、その間に捕捉されてもよい。また、前タブの先端は、一方が左側、もう一方が右側で、僧帽弁の前部分上の線維性三角に係合する。後タブは、同様に、任意の隣接する腱索とともに、後タブの内面と心室スカートの外面との間に後僧帽弁尖を捕捉する。これを以下でさらに詳細に説明する。後タブは、本実施例では、後タブが2本の相互接続された支柱とは対照的に、4本の相互接続された支柱を備えることを除いて、図6-7において上記で説明される後タブに類似する。したがって、本実施例では、複数の相互接続された支柱が、タブに沿って3つのヒンジ連結領域836を含有する。後タブの拡張時に、ヒンジ連結領域も拡張し、それによって、後尖と心室壁との間の弁輪下領域との後タブの係合および係留を可能にする、細長い水平区分を示すであろう。これは、僧帽弁の後部分と係合するためのより小さい設置面積または単一の先細先端のみを有する後タブよりも良好に人工補綴弁を位置付け、係留するのに役立ち得る。後タブは、本明細書に説明される他の後タブのうちのいずれかと置換されてもよい。
【0078】
フレームに沿って前または後タブの支柱長または軸方向位置を制御することによって、タブの展開が制御されてもよい。したがって、前タブおよび後タブ824、830内の支柱の長さ、およびフレームに沿ったそれらの相対位置が相互と同一であるため、拘束シースがタブから離れて後退させられたとき、前および後タブは、部分的にともに外向きに跳出するであろう。拘束シースがさらに後退させられると、前タブの残りの部分は、心室スカートおよび後タブにおける支柱に対して最も短いため、半径方向外向きに自己拡張するであろう。次いで、拘束シースのさらなる後退は、後タブの残りの部分が自己拡張し終えることを可能にし、心室スカートの自己拡張が続く。人工補綴弁を展開する本シーケンスを使用することにより、弁がより正確に送達され、また、よりしっかりと定位置に係留されることを可能にし得る。
【0079】
縫合糸孔821は、心膜またはDacronまたはePTFE等のポリマー等のカバーの付着を可能にするように、環状領域および心室領域の支柱に沿って配置される。縫合糸孔はまた、フレームの任意の他の部分に沿って配置されてもよい。返し823は、人工補綴弁を隣接する組織に係留するのに役立つように、心室スカート828に沿って配置される。交連タブまたはタブ812は、交連813の先端の上に配置され、以下で説明されるように、交連を送達システムと解放可能に連結するために使用されてもよい。これは、フレームが最初に拡張することを可能にし、次いで、その後に交連が送達システムから解放されてもよい。当業者は、いくつかの支柱の幾何学形状が使用されてもよく、加えて、剛性、半径方向粉砕強度、交連偏向等の所望の機械的性質を人工補綴物に提供するために、長さ、幅、厚さ等の支柱の寸法が調整されてもよいことを理解するであろう。したがって、図示した幾何学形状は、限定的であることを目的としていない。フレームは、上記で説明されるように同様に示されてもよい。
【0080】
図9Aは、拡張された後の人工補綴心臓弁のフレーム900を図示する。上記のフレームのそれぞれが、類似幾何学形状を有するが、異なる順序で拡張するため、上記で説明されるフレーム実施例のうちのいずれかは、本形態を成してもよい。フレームは、前部分914および後部分916を伴う心房スカート906を含む。フランジ付き領域が、後部分の周囲に配置され、前部分は、フランジがないままである。加えて、前部分が、略平坦である一方で、後部分は、円筒形状であり、それによって、僧帽弁の生体構造に適応するD字形断面を示す。図9Bは、図9Aの構造の上面図であり、D字形断面をより明確に図示する。
【0081】
フレームはまた、環状領域910および心室スカート912も含む。前タブ904(本図では1つだけが可視的である)は、前タブの内面と心室スカートの外面との間に空間が存在するように、完全に拡張される。これは、前尖および隣接する腱索がその間に捕捉されることを可能にする。同様に、後タブ902の内面と心室スカートの外面との間に類似空間を伴って、後タブ902も完全に展開される。これは、後尖および隣接する腱索がその間に捕捉されることを可能にする。交連柱908もまた可視的であり、フレームによって示される内側チャネルの中に配置される。交連柱は、人工補綴僧帽弁尖を保持するために使用される。拡張したフレームの全体的形状は、前部分が平坦で後部分が円筒形状である、D字形である。
【0082】
図10は、心膜組織、またはePTFE等のポリマー、またはDacronのような織物等のカバー1002がフレームに取り付けられて被覆され、それによって、人工補綴心臓弁1000を示す、拡張したフレームを図示する。心房スカートは、材料によって完全に被覆されてもよく、被覆は、心房スカートのフランジ付き部分の中の隣接セル内の隣接支柱1012の間にのみ配置される。同一のセル内の隣接支柱の間の領域1014は、被覆されていないままになることができる。これは、人工補綴弁が埋め込まれている間に血流が実質的に途切れないままとなることを可能にする。縫合糸1010が、カバーをフレームに取り付けるために使用されてもよい。本図では、後タブ1006が、心室スカート1008および心房スカート1004とともに、人工補綴弁の後部分上で可視的である。
【0083】
送達システム図11A-11Dは、本明細書で開示される人工補綴心臓弁のうちのいずれかを送達するために使用され得る、送達システムの実施例を図示する。送達システムは、好ましくは、人工補綴心臓弁を経心尖的に送達するように設計されているが、当業者は、それがまた、経中隔経路を使用する等して、人工補綴弁がカテーテルを介して経管腔的に送達され得るように修正されてもよいことを理解するであろう。当業者は、経中隔経路を使用することが、僧帽弁に対する送達システムの位置に適応するために、種々のシャフトの相対的運動が修正されることを要求し得ることを理解するであろう。
【0084】
図11Aは、送達システム1100の斜視図を図示する。送達システム1100は、送達システムの近位端の付近のハンドル1112と、遠位組織貫通先端1110とを含む。4本の細長いシャフトが、送達システムに含まれ、外側シースカテーテルシャフト1102と、外側シースカテーテルシャフト1102の中に摺動可能に配置されるベルカテーテルシャフト1104と、他のシャフトに対して静止したままであるが、ベルカテーテルシャフトがハブシャフトに対して摺動する、ハブカテーテルシャフト1106と、最終的に、他のシャフトに対して固定もされ、それを通過して遠位組織貫通先端から退出するガイドワイヤを受容するように定寸される管腔を有する、内側ガイドワイヤカテーテルシャフト1108とを含む。アクチュエータ機構1114は、以下でさらに詳細に説明されるように、種々のシャフトの移動を制御するために使用され、ルアーコネクタを伴う洗浄ライン1116、1118が、隣接シャフトの間の環状領域を洗浄するために使用される。洗浄ライン1118は、外側シースカテーテルシャフト1102とベルカテーテルシャフト1104との間の環状空間を洗浄するために使用される。洗浄ライン1116は、ベルカテーテル1104とハブカテーテル1106との間の環状空間を洗浄するために使用される。内側ガイドワイヤカテーテルシャフト1108は、ハブカテーテル1106に対して静止しており、したがって、環状空間は、Oリングまたは他の材料で密閉されてもよい。ルアーコネクタ1122は、ガイドワイヤ管腔の洗浄を可能にし、止血を維持しながら、ガイドワイヤがガイドワイヤカテーテルシャフトを通って前進させられることを可能にするように、Tuohy-Borst等の止血弁が、ルアーコネクタに連結されてもよい。ねじ1120は、ともに連結されたままハンドル筐体を保つ。図11Bは、送達システム1100の側面図を図示する。
【0085】
図11Cは、送達システム1100の部分分解図であり、ハンドル1112の中の構成要素およびそれらがどのようにして相互作用するかをより明確に図示する。ハンドル1112は、全ての構成要素を保持する2つの半体1112a、1112bを有する、筐体を含む。ハンドルは、好ましくは、ねじ1120およびナット1120bを用いてともに保持されるが、また、圧入、スナップ留め、接着接合、超音波溶接等の他の技法を使用して密閉されてもよい。アクチュエータホイール1114の回転は、ねじ山付き挿入物1124の直線運動に変換される。外側シースカテーテルシャフト1102は、ねじ山付き挿入物1124に連結され、したがって、1つの方向へのアクチュエータホイール1114の回転は、シースカテーテルシャフト1102を前進させ、反対方向への回転は、シースカテーテルシャフト1102を後退させるであろう。アクチュエータホイール1114のさらなる回転は、挿入物1128に連結されるピン1126に衝突し、それによって、挿入物1128も移動させるほど十分である、ねじ山付き挿入物1124を後退させる。ベルカテーテルシャフト1106は、挿入物1128に連結され、したがって、アクチュエータホイール1114のさらなる回転は、外側シャフト1102を移動させ、また、ベルカテーテルシャフト1106も移動させるであろう。反対方向へのアクチュエータホイールの回転は、シースを前進させ、ねじ山付き挿入物1124は、ピン1126から係脱する。バネ1130は、挿入物1128をその不偏位置に戻し、それによって、ベルカテーテルシャフトをその不偏位置に戻す。
【0086】
本明細書で開示される人工補綴心臓弁のうちのいずれかは、送達システム1100によって運搬されてもよい。心房スカート、環状スカート、前タブ、後タブ、および心室スカートは、ベルカテーテルシャフトを覆って装填され、外側シースカテーテルシャフト1102の下に配置される。心室スカートは、ハンドル1112に最も近いように近位に装填され、心房スカートは、先端1110に最も近いように最も遠位に装填される。したがって、外側シースカテーテルシャフト1102の後退は、人工補綴心臓弁の展開を制御することに有意な役割を果たす。したがって、心房スカートは、外側シースカテーテルが後退させられたときに最初に拡張する。人工補綴弁交連は、ハブカテーテル1106の遠位部分上でハブ1106aと連結されてもよく、次いで、ベルカテーテルシャフトは、それを覆って配置され、それによって、交連を送達カテーテルと解放可能に係合させる。いったん人工補綴心臓弁の他の部分が拡張すると、交連が解放されてもよい。
【0087】
図11Dは、送達システム1100の遠位部分を強調表示する。外側シースカテーテルシャフト1102は、外側シースカテーテルシャフト1102の中に摺動可能に配置される、ベルカテーテルシャフト1104に対して前進および後退する。ハブカテーテルシャフト1106は、人工補綴弁交連を保持するスロット1106bを有するハブ1106aを露出するよう、ベルカテーテルシャフト1104が後退させられた状態で、ベルカテーテルシャフト1104の中に摺動可能に配置されるように示される。内側ガイドワイヤカテーテルシャフト1108は、最内シャフトであり、人工補綴弁の円滑な移行を提供し、人工補綴心臓弁フレームの不要な屈曲または座屈を防止する、先細円錐区分1130を有する。組織貫通先端1110は、特に、心臓の経心尖手技で、組織を貫通するように適合される。
【0088】
送達方法。いくつかの方法が、人工補綴心臓弁を心臓に送達するために使用されてもよい。人工補綴僧帽弁を送達する方法は、心臓の右および左側の間の中隔を横断する経中隔技法でもあり得る、経管腔送達経路を含んでもよく、または他の実施例では、図12A-12Lで図示されるような経心尖経路が使用されてもよい。上記で以前に説明された送達デバイスが、本明細書に説明される人工補綴弁のうちのいずれかを送達するために使用されてもよく、または参照することにより本明細書に以前に組み込まれる、米国特許出願第13/096,572号で開示されるもの等の他の送達デバイスおよび他の人工補綴弁もまた、使用されてもよい。しかしながら、本実施例では、前タブが最初に展開し、それに続いて後タブ、次いで、心室スカートが展開するように、図6の人工補綴心臓弁が使用される。
【0089】
図12Aは、左心房LAおよび左心室LVを含む、患者の心臓の左側の基本生体構造を図示する。肺静脈PVが、肺からの血液を左心房に戻し、次いで、血液が、左心房から僧帽弁MVを横断して左心室の中へ圧送される。僧帽弁は、弁の前側Aに前尖ALと、弁の後側Pに後尖PLとを含む。弁尖が、腱索CTに付着し、後に、腱索は乳頭筋PMで心臓壁に固着される。次いで、血液が、逆流を防止する大動脈AVを伴う大動脈Aoの中へ左心室から圧送される。
【0090】
図12Bは、左心室LVを介した左心房LAの中への心尖を通した送達システム1202の経心尖送達を図示する。送達システム1202は、ガイドワイヤGWを経由して左心房の中へ前進させられてもよく、組織貫通先端1204は、組織を拡張し、送達システムの残りの部分が通過するためにより大きいチャネルを示すことによって、送達システムが心尖を通過するのに役立つ。送達カテーテルは、人工補綴心臓弁1208を運搬する。いったん送達システムの遠位部分が左心房の中へ前進させられると、外側シース1206は、近位に(例えば、オペレータに向かって)後退させられてもよく、それによって、人工補綴弁1208の心房部分から拘束を除去してもよい。これは、心房スカート1210が半径方向外向きに自己拡張することを可能にする。図12Cでは、外側シースがさらに後退させられると、心房スカートは、図12Dで見られるように完全に展開するまで、自己拡張し、その一部が見え続ける。心房スカートは、円筒形状を有してもよく、または大動脈および左心室流出路の他の側面に干渉することを回避するよう、平坦な前部分および円筒形の後部分を伴って、上記で議論されるようなD字形であり得る。人工補綴物は、人工補綴物を回転させ、以前に説明された整合要素を可視化することによって、配向され、適正に位置付けられてもよい。また、人工補綴心臓弁は、心房スカートを適正に位置付けるように上流または下流に前進させられてもよい。心房スカートは、僧帽弁の上面に対して静置するフランジを配置し、これは、人工補綴弁を係留し、左心室の中への不要な下流の移動を防止する。
【0091】
外側シース1206が近位に後退させられ続けると、人工補綴心臓弁の環状領域が、弁輪内で自己拡張する。環状領域もまた、好ましくは、D字形幾何学形状を有するが、また、円筒形であり得るか、または天然生体構造に一致する他の幾何学形状を有してもよい。図12Eでは、シース1206の後退は、最終的に、好ましくは、前または後尖または腱索に係合することなく、前1212および後1214タブの両方が部分的に外向きに自己拡張することを可能にする。本実施例では、次いで、外側シース1206のさらなる後退は、図12Fで図示されるように、前尖が前タブのそれぞれの内面と心室スカート1216の外面との間に捕捉されるように、前タブ1212(本図では1つだけが可視的である)がそれらの自己拡張を完了することを可能にする。後タブ1214は、部分的に開いたままであるが、その拡張をまだ完了していない。加えて、前タブの先端はまた、以下でさらに詳細に図示されるように、僧帽弁の左右の線維性三角の中に係留する。
【0092】
図12Gでは、次いで、外側シース1206のさらなる後退は、後タブ1214から拘束を解放し、その自己拡張を完了することを可能にし、それによって、後タブ1214の内面と心室スカート1218の外面との間に後尖PLを捕捉する。図12Hでは、シースがさらに後退させられ、心室スカート1220を解放し、心室スカート1220が半径方向外向きに拡張することを可能にし、さらに、心室スカートの外面とそれぞれの前または後タブとの間に前および後尖を捕捉する。心室スカートの拡張はまた、前および後尖を外向きに押し、それによって、天然弁尖が人工補綴弁または人工補綴弁尖のいかなる部分にも干渉しないことを確実にする。ここで、人工補綴弁は、僧帽弁の上方に、弁輪に沿って、弁尖に、および僧帽弁の下方に定位置で係留され、それによって、それを定位置で固着する。
【0093】
送達デバイスのさらなる作動は、図12Iで図示されるように、ハブカテーテル1224から拘束を除去するよう、外側シース1206およびベルカテーテルシャフト1222を後退させる。これは、人工補綴弁交連1226がハブカテーテルから解放されることを可能にし、したがって、交連がそれらの付勢構成まで拡張する。次いで、人工補綴弁1208を定位置に残して、送達システム1202およびガイドワイヤGWが除去され、そこで、図12Jで見られるように、天然僧帽弁の役割を引き継ぐ。
【0094】
図12Kおよび12Lは、それぞれの前および後尖との前および後タブの係合を強調表示する。図12Kでは、前タブ1212が完全に拡張された後、それらは、前タブの内面と心室スカート1220の外面との間に前尖ALおよび隣接する腱索を捕捉する。換言すると、前タブ1212は、心室スカート1220が、心室スカート1220と前タブ1212との間に前尖ALおよび隣接する腱索を捕捉するように、拡張し、外に押動する前に、前尖ALおよび隣接する腱索の下(心室に向かって)および背後に前進する。また、前タブ1212の先端1228は、僧帽弁の前側の線維性三角FTと係合させられる。線維性三角は、弁の線維性領域であり、したがって、前タブはさらに、天然僧帽弁生体構造の中へ人工補綴弁を係留する。一方の前タブが、左線維性三角の中へ係留し、他方の前タブが、右線維性三角の中へ係留する。三角は、弁尖の前側の反対側にある。図12Lは、同様に、後タブの内面と心室スカート1220の外面との間に捕捉される、後尖PLとの後タブ1214の係合を図示する。加えて、隣接する腱索もまた、後タブと心室スカートとの間に捕捉される。換言すると、後タブ1214は、心室スカート1220が、心室スカート1220と後タブ1214との間に後尖PLおよび隣接する腱索を捕捉するように、拡張し、外に押動する前に、後尖PLおよび隣接する腱索の下(心室に向かって)および背後に前進する。
【0095】
図13A-13Lは、送達方法の別の実施例を図示する。本実施例は、以前に説明されたものに類似し、主な違いは、人工補綴心臓弁が僧帽弁と係合するように自己拡張する順序である。本明細書で開示される任意の送達デバイスまたは任意の人工補綴心臓弁が使用されてもよいが、しかしながら、前述の実施例では、図7が使用される。順序を変化させることにより、インプラントのより良好な位置付け、弁尖のより容易な捕捉、およびインプラントのより良好な係留を可能にし得る。本方法はまた、好ましくは、経心尖経路も使用するが、経中隔も使用されてもよい。
【0096】
図13Aは、左心房LAおよび左心室LVを含む、患者の心臓の左側の基本生体構造を図示する。肺静脈PVが、肺からの血液を左心房に戻し、次いで、血液が、左心房から僧帽弁MVを横断して左心室の中へ圧送される。僧帽弁は、弁の前側Aに前尖ALと、弁の後側Pに後尖PLとを含む。弁尖が、腱索CTに付着し、後に、腱索は乳頭筋PMで心臓壁に固着される。次いで、血液が、逆流を防止する大動脈AVを伴う大動脈AOの中へ左心室から圧送される。
【0097】
図13Bは、左心室LVを介した左心房LAの中への心尖を通した送達システム1302の経心尖送達を図示する。送達システム1302は、ガイドワイヤGWを経由して左心房の中へ前進させられてもよく、組織貫通先端1304は、組織を拡張し、送達システムの残りの部分が通過するためにより大きいチャネルを示すことによって、送達システムが心尖を通過するのに役立つ。送達カテーテルは、人工補綴心臓弁1308を運搬する。いったん送達システムの遠位部分が左心房の中へ前進させられると、外側シース1306は、近位に(例えば、オペレータに向かって)後退させられてもよく、それによって、人工補綴弁1308の心房部分から拘束を除去してもよい。これは、心房スカート1310が半径方向外向きに自己拡張することを可能にする。図13Cでは、外側シースがさらに後退させられると、心房スカートは、図13Dで見られるように完全に展開するまで、自己拡張し、その一部が見え続ける。心房スカートは、円筒形状を有してもよく、または大動脈弁および左心室流出路の他の側面に干渉することを回避するよう、平坦な前部分および円筒形の後部分を伴って、上記で議論されるようなD字形であり得る。人工補綴物は、人工補綴物を回転させ、以前に説明された整合要素を可視化することによって、配向され、適正に位置付けられてもよい。また、人工補綴心臓弁は、心房スカートを適正に位置付けるように上流または下流に前進させられてもよい。心房スカートは、僧帽弁の上面に対して静置するフランジを有し、これは、人工補綴弁を係留し、左心室の中への不要な下流の移動を防止する。
【0098】
外側シース1306が近位に後退させられ続けると、人工補綴心臓弁の環状領域が、弁輪内で自己拡張する。環状領域もまた、好ましくは、D字形幾何学形状を有するが、また、円筒形であり得るか、または天然生体構造に一致する他の幾何学形状を有してもよい。図13Eでは、シース1306の後退は、最終的に、好ましくは、前または後尖または腱索に係合することなく、前1312および後1314タブの両方が部分的に外向きに自己拡張することを可能にする。本実施例では、次いで、外側シース1306のさらなる後退は、図13Fで図示されるように、前尖が前タブのそれぞれの内面と心室スカート1316の外面との間に捕捉されるように、前タブ1312(本図では1つだけが可視的である)がそれらの自己拡張を完了することを可能にする。後タブ1214は、部分的に開いたままであるが、その拡張をまだ完了していない。加えて、前タブの先端はまた、以下でさらに詳細に図示されるように、僧帽弁の左右の線維性三角の中に係留する。
【0099】
図13Gでは、次いで、外側シース1306のさらなる後退は、心室スカート1320から拘束を解放し、心室スカートが半径方向に拡張することを可能にする。次いで、これは、前タブ1312と心室スカート1316との間に前尖ALをさらに捕捉する。心室スカートの拡張はまた、前および後尖を外向きに押し、それによって、天然弁尖が人工補綴弁または人工補綴弁尖のいかなる部分にも干渉しないことを確実にする。図13Hで図示されるようなシース1306のさらなる後退は、後タブ1314から拘束を解放し、その自己拡張を完了することを可能にし、それによって、後タブ1314の内面と心室スカート1318の外面との間に後尖PLを捕捉する。ここで、人工補綴弁は、僧帽弁の上方に、弁輪に沿って、弁尖に、および僧帽弁の下方に定位置で係留され、それによって、それを定位置で固着する。
【0100】
送達デバイスのさらなる作動は、図13Iで図示されるように、ハブカテーテル1324から拘束を除去するよう、外側シース1306およびベルカテーテルシャフト1322を後退させる。これは、人工補綴弁交連1326がハブカテーテルから解放されることを可能にし、したがって、交連がそれらの付勢構成まで拡張する。次いで、人工補綴弁1308を定位置に残して、送達システム1302およびガイドワイヤGWが除去され、そこで、図13Jで見られるように、天然僧帽弁の役割を引き継ぐ。
【0101】
図13Kおよび13Lは、それぞれの前および後尖との前および後タブの係合を強調表示する。図13Kでは、前タブ1312が完全に拡張された後、それらは、前タブの内面と心室スカート1320の外面との間に前尖ALおよび隣接する腱索を捕捉する。また、前タブ1312の先端1328は、(上記に説明される前タブ1212と同様に)僧帽弁の前側の線維性三角FTと係合させられる。線維性三角は、弁の線維性領域であり、したがって、前タブはさらに、天然僧帽弁生体構造の中へ人工補綴弁を係留する。一方の前タブが、左線維性三角の中へ係留し、他方の前タブが、右線維性三角の中へ係留する。三角は、弁尖の前側の反対側にある。図13Lは、(上記に説明される後タブ1214と同様に)後タブの内面と心室スカート1320の外面との間に捕捉される後尖PLとの後タブ1314の係合を図示する。加えて、隣接する腱索もまた、後タブと心室スカートとの間に捕捉される。
【0102】
タブ被覆。上記で説明される実施例では、タブ(前三角タブおよび後心室タブ)は、概して、狭く、いくぶん先がとがっている。図8に関して以前に説明された特徴は、より広い領域にわたって力を分配するのに役立ち、それによって、組織の外傷を低減させる、後タブ上の水平支柱を含む。図14A-14Dは、好ましくは、外傷を低減させるように役立てるために前三角タブとともに使用される、別の実施例を図示する。それはまた、所望であれば後タブとともに使用されてもよい。
【0103】
図14Aは、先端1404を有する前三角タブ1402を図示する。本先端は、狭く、いくぶん先がとがっており、それによって、組織の中へ展開されたときに組織外傷を誘発し得る。したがって、いくつかの実施例では、組織外傷を低減させるのに役立つように、先端を覆ってカバーを配置することが望ましくあり得る。図14Bは、三角タブ1402に取り付けられ得るポリマータブ1406を図示する。他の実施例では、タブは、織物、金属、または当技術分野で公知である他の材料等の他の材料からの実施例であってもよい。ポリマータブは、ポリマーのシートからレーザ切断されてもよく、長軸部分1408と、拡大頭部領域1410とを含む。複数の縫合糸孔1412が、ポリマータブ1406に事前切断されてもよく、孔は、縫合糸材料を受容するように定寸される。ポリマータブ上の事前切断された孔は、三角タブ上の事前切断された孔と整合させられてもよく、次いで、ポリマータブは、縫合糸、接着剤、または当技術分野で公知である他の連結技法を用いて、三角タブに固着されてもよい。次いで、ヒンジ連結領域1416によって分離される2つの対称半体を有する、織物カバー1414が、ポリマータブに巻き付けられ、縫合糸によってポリマータブに取り付けられ、それによって、三角タブの周囲にシュラウドを示す。織物は、Dacron、ePTFE、または当技術分野で公知である任意の他の生体適合性材料であってもよい。したがって、カバーは、三角タブと組織との間の接触の表面積を増加させ、それによって、潜在的な外傷および心臓壁の穿刺の可能性を低減させる。加えて、材料は、人工補綴物を係留するのにさらに役立つ、組織内方成長を可能にし得る。材料および寸法はまた、折り畳み構成での送達中にデバイスの薄型外形を維持するために選択される。
【0104】
順次展開。上記および本明細書に議論されるように、タブの展開、特に、展開(それによって、前尖AL、後尖PL、および隣接する腱索の捕捉および/または係合)のシーケンスは、前および/または後タブの支柱長さおよび/または軸方向位置を制御することによって制御されてもよい。例えば、タブの心房端の軸方向位置は、拘束シースが後退されるにつれてタブが展開を開始すると変動するように変動され得、タブの心室端の軸方向位置は、拘束シースが後退されるにつれてタブが完全に展開されると変動するように変動されてもよい。展開の特定のシーケンスは、ある生体構造により最適であり得、人工補綴弁がより正確に送達され、定位置によりしっかりと係留されることを可能にし得る。例えば、前タブまたは後タブのいずれかは、少なくともある場合では、他のものより容易に可視化され得、より容易に可視化されるタブは、埋込の際、フレームを配向するためのガイドとして、最初に展開するように構成されてもよい。少なくともある場合では、本発明者らは、後タブが、超音波および/または蛍光透視法を使用して可視化することがより容易であることを見出している。タブ展開のシーケンスは、ある場合には、個々の患者およびその生体構造にカスタマイズされてもよく、カスタマイズは、個々の患者のための事前スクリーニング撮像データに基づいてもよい。超音波および/または蛍光透視法等を使用することによってより容易に可視化されるように投影される、タブは、最初に展開するように構成されてもよい。最初に展開されるタブは、撮像源、例えば、初期タブ設置の照合を提供するように、蛍光透視法のための超音波またはX線デバイスを制御するC-アームの中間移動を可能にすることができる。必要とされる場合、人工補綴弁は、撮像または可視化に基づいて、初期タブが部分的および/または完全に展開された(および残りのタブはまだ部分的および/または完全に展開されていない)状態で、再位置付けおよび/または再配向されてもよい。タブの可視性をさらに改良するために、タブのうちの1つ以上のものの長さおよび/または曲率は、個々の患者およびその生体構造のためにカスタマイズされてもよい。1つ以上のタブの長さおよび/または曲率は、弁尖および/または腱索の背後の展開面積等の個々の患者の生体構造のための最適嵌合を提供するようにカスタマイズされてもよい。
【0105】
いくつかの実施例では、第1および第2の前タブは、並行して展開されてもよい。図15A-15Eは、人工補綴心臓弁1500aの展開を図式的に図示し、それによって、その第1の前タブA1およびその第2の前タブA2は、並行して展開される。図15Aは、人工補綴心臓弁1500aを完全に拘束する、拘束シース1550を示す。人工補綴心臓弁1500aは、拘束シース1550が人工補綴心臓弁1500aの心房(ATR)側から心室(VEN)側に後退されるにつれて、展開されてもよい。図15Bに示されるように、拘束シース1550の後退は、最初に、人工補綴心臓弁1500の心房スカート1506が、半径方向外向きに自己拡張し始めることを可能にし得る。図15Cに示されるように、拘束シース1550は、さらに後退され、並行して、第1の前タブA1および第2の前タブA2を拘束から解放し、タブを暴露させ得る。図15Dに示されるように、拘束シース1500aのさらなる後退は、第1の前タブA1および第2の前タブA2が、上記に説明されるように、拘束シース1550および人工補綴心臓弁1500aの縦軸に対して横方向である配向にあるように半径方向外向きに部分的に跳出することを可能にする。第1および第2の前タブA1、A2は、その心房端が同一軸方向位置に位置付けられるように、同一長さを有してもよく、および/または人工補綴心臓弁上に位置付けられてもよい。故に、拘束シース1550の後退は、前タブA1、A2を暴露させ、および/または前タブA1、A2が、部分的に、並行して展開することを可能にし得る。図15Eに示されるように、拘束シース1550は、完全に後退され、人工補綴心臓弁1500aを完全に解放し、前タブA1、A2が、完全に展開し、隣接する腱索を捕捉することを可能にし、また、心室スカート1516が、半径方向外向きに自己拡張することを可能にし得る。人工補綴心臓弁1500の後タブPTBは、図15A-15Eに示されないが、前タブA1、A2の前に、それと並行して、またはその後に展開するように構成されてもよい。
【0106】
いくつかの実施例では、第1および第2の前タブは、連続して展開されてもよい。図15F-15Lは、人工補綴心臓弁1500bの展開を図式的に図示し、それによって、その第1の前タブA1およびその第2の前タブA2は、連続して展開される。図15Fは、人工補綴心臓弁1500bを完全に拘束する、拘束シース1550を示す。人工補綴心臓弁1500bは、拘束シース1550が人工補綴心臓弁1500の心房(ATR)側から心室(VEN)側に後退されるにつれて、展開されてもよい。図15Gに示されるように、拘束シース1550の後退は、最初に、人工補綴心臓弁1500bの心房スカート1506が、半径方向外向きに自己拡張し始めることを可能にし得る。図15Hに示されるように、拘束シース1550は、さらに後退され、並行して、第1の前タブA1および第2の前タブA2を拘束から解放し、タブを暴露させ得る。図15Iに示されるように、拘束シース1550のさらなる後退は、第1の前タブA1が、上記に説明されるように、拘束シース1550および人工補綴心臓弁1500bの縦軸に対して横方向である配向にあるように、半径方向外向きに部分的に跳出することを可能にする一方、第2の前タブA2は、非展開構成に留まる。図15Jに示されるように、拘束シース1550のなおもさらなる後退は、第1の前タブA1を拘束から完全に遊離させ、第1の前タブA1が、完全に展開し、隣接する腱索を捕捉することを可能にする。図15Kに示されるように、拘束シース1550の後続後退は、第2の前タブA1が、上記に説明されるように、拘束シース1550および人工補綴心臓弁1500bの縦軸に対して横方向である配向にあるように、半径方向外向きに部分的に跳出することを可能にする。図15Lに示されるように、拘束シース1550のなおもさらなる後退は、第2の前タブA2を拘束から完全に遊離させ、心室スカート1516が半径方向外向きに自己拡張するのと同様に、第2の前タブA2が、完全に展開し、隣接する腱索を捕捉することを可能にする。人工補綴心臓弁1500bの後タブPTBは、図15F-15Lに示されないが、前タブA1、A2の一方または両方の前に、前タブA1、A2のうちの1つと並行して、または前タブA1、A2の一方または両方の後に、展開するように構成されてもよい。
【0107】
図15A-15Eおよび図15F-15Lは、第1および第2の前タブA1、A2および後タブPTBを完全に展開する特定のシーケンスを示すが、第1および第2のタブA1、A2および後タブPTBは、任意の順序で完全に展開するように構成されてもよい。
【0108】
図16Aは、拘束シース1550内に保持される、人工補綴心臓弁1500を示す一方、図16Bは、図16Bの線B-Bに沿って得られた、人工補綴心臓弁1500の断面を図式的に図示し、第1および第2のタブA1、A2および後タブPTBの相対的位置を示す。例証を容易にするために、図17A-17Mでは、第1および第2の前タブA1、A2(特に、その心室端)、後タブPTB(特に、その心室端)、および心室スカートの縁V1、V2、およびV3は、後退する拘束シース1550に対して広げられた構成に示され、第1および第2の前タブA1、A2および後タブPTBの完全展開の種々の順序を示す。
【0109】
いくつかの実施例では、タブの長さおよび/またはタブの遊離端1701、1702、1703の軸方向位置は、2つの前タブA1、A2および後タブPTBのうちの2つ以上のものが、並行して完全に展開されるように変動されてもよい。
【0110】
図17Aに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Aでは、第1および第2の前タブA1、A2および後タブPTBは全て、同一長さを有し、および/またはその遊離端1701、1702、1703を同一軸方向位置に有してもよい。したがって、3つのタブA1、A2、PTBは、拘束シース1550の遠位縁1650が弁の縦軸と平行な矢印A1の方向に近位に後退するにつれて、相互に並行して完全に展開される。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、心室スカートが、タブA1、A2、PTBが拡張を終える前に展開するように構成されるように、3つのタブA1、A2、PTBの遊離端1701、1702、1703より環状領域に近い。
【0111】
図17Bに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Bでは、第1および第2の前タブA1、A2は、相互に同一長さを有してもよく、後タブPTBは、第1および第2の前タブA1、A2より長い長さを有してもよく、および/または後タブPTBの遊離端1703は、第1および第2の前タブA1、A2の遊離端1701、1702より環状領域から遠くてもよい。したがって、拘束シース1550の遠位縁1650が、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するにつれて、第1および第2の前タブA1、A2は、後タブPTBが完全に展開される前に、並行して、完全に展開される。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、タブA1、A2、PTBが拡張を終える前に、心室スカートが展開するように構成されるように、3つのタブA1、A2、PTBの遊離端1701、1702、1703より環状領域に近い。
【0112】
図17Mに示される(下記にさらに説明される)ように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Mでは、第1および第2の前タブA1、A2は、相互に同一長さを有してもよく、後タブPTBは、第1および第2の前タブA1、A2より短い長さを有してもよく、および/または後タブPTBの遊離端1703は、第1および第2の前タブA1、A2の遊離端1701、1702より環状領域に近くてもよい。したがって、拘束シース1550の遠位縁1650が、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するにつれて、第1および第2の前タブA1、A2は、後タブPTBが完全に展開された後、並行して、完全に展開される。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、タブA1、A2、PTBが拡張を終える前に、心室スカートが展開するように構成されるように、3つのタブA1、A2、PTBの遊離端1701、1702、1703より環状領域に近い。
【0113】
いくつかの実施例では、タブの長さおよび/またはタブの心室端の軸方向位置は、2つの前タブA1、A2のうちの1つが、後タブPTBと同一長さを有し得、および/またはその遊離端が、同一軸方向位置にあり得るように変動されてもよい。本場合では、2つの前タブA1、A2のうちの1つは、後タブPTBと並行して、完全に展開される。タブの長さおよび/またはタブの遊離端の軸方向位置は、前タブA1、A2の第2のものが、前タブA1、A2の第1のものおよび後タブPTBの同時完全展開の前または後に、完全に展開することを可能にされ得るように変動されてもよい。
【0114】
図17Cに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Cでは、第1の前タブA1は、後タブPTBと同一長さを有し得、および/またはその遊離端1701、1703は、同一軸方向位置にあり得る。第2の前タブA2は、第1の前タブA1および後タブPTBより長い長さを有してもよく、および/またはその遊離端1702は、第1の前タブA1および後タブPTBの遊離端1701、1703より環状領域から遠くてもよい。本場合では、拘束シース1550の遠位縁1650が、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退されるにつれて、第1の前タブA1は、後タブPTBと並行して、完全に展開し、第2の前タブA2は、それらの後に、完全に展開する。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、タブA1、A2、PTBが拡張を終える前に、心室スカートが展開するように構成されるように、3つのタブA1、A2、PTBの遊離端1701、1702、1703より環状領域に近い。
【0115】
図17Dに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Dでは、第2の前タブA2および後タブPTBは、第1の前タブA1が、第2の前タブA2および後タブPTBより長い長さを有し得、および/または第2の前タブA2および後タブPTBの遊離端1702、1703が、第1の前タブA1の遊離端1701より環状領域に近くあり得るように、相互に同一長さを有してもよい。したがって、拘束シースの遠位縁1650が、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するにつれて、第2の前タブA2は、後タブPTBと並行して完全に展開し、第1の前タブA1は、その後、完全に展開する。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、タブA1、A2、PTBが拡張を終える前に、心室スカートが展開するように構成されるように、3つのタブA1、A2、PTBの遊離端1701、1702、1703より環状領域に近い。
【0116】
図17Eに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Eでは、第2の前タブA2および後タブPTBは、相互に同一長さを有してもよく、第1の前タブA1は、第2の前タブA2および後タブPTBより短い長さを有してもよく、および/または第2の前タブA2および後タブPTBの遊離端1702、1703は、第1の前タブA1の遊離端1701より環状領域から遠くてもよい。したがって、拘束シースの遠位縁1650が、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するにつれて、第1の前タブA1が、最初に、完全に展開し、その後、第2の前タブA2および後タブPTBが並行して続く。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、タブA1、A2、PTBが拡張を終える前に、心室スカートが展開するように構成されるように、3つのタブA1、A2、PTBの遊離端1701、1702、1703より環状領域に近い。
【0117】
図17Fに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Fでは、第1の前タブA1および後タブPTBは、相互に同一長さを有してもよく、第2の前タブA1は、第1の前タブA1および後タブPTBより短い長さを有してもよく、および/または第1の前タブA1および後タブPTBの遊離端1701、1703は、第2の前タブA2の遊離端1702より環状領域から遠くてもよい。したがって、拘束シースの遠位縁1650が、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するにつれて、第2の前タブA2が、最初に、完全に展開し、その後、第1の前タブA1および後タブPTBが並行して続く。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、タブA1、A2、PTBが拡張を終える前に、心室スカートが展開するように構成されるように、3つのタブA1、A2、PTBの遊離端1701、1702、1703より環状領域に近い。
【0118】
いくつかの実施例では、タブの長さおよび/またはタブの心室端の軸方向位置は、2つの前タブA1、A2のうちの1つが、後タブPTBの前に、完全に展開されるように変動されてもよい。タブの長さおよび/またはタブの心室端の軸方向位置は、前タブA1、A2の第2のものが、後タブPTBの完全展開の前または後に完全に展開することを可能にされ得るように変動されてもよい。
【0119】
図17Gに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Gでは、後タブPTBは、第1の前タブA1より長くあり得る、第2の前タブA2より長くてもよく、および/または後タブPTBの遊離端1703は、第1の前タブA1の遊離端1701より環状領域から遠くあり得る、第2の前タブA2の遊離端1702より環状領域から遠くてもよい。本場合では、拘束シース1550の遠位縁1650が、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退されるにつれて、第1の前タブA1が、最初に、心室スカートの縁V1、V2、V3とともに、完全に展開し、その後、第2の前タブA2が続き、次いで、その後、後タブPTBが続く。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、A1と並行して、タブA2、PTBが拡張を終える前に、心室スカートが展開するように構成されるように、第2の前タブA2および後タブPTBの遊離端1702、1703より環状領域に近い。
【0120】
図17Hに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Hでは、後タブPTBは、第2の前タブA2より長くあり得る、第1の前タブA1より長くてもよく、および/または後タブPTBの遊離端1703は、第2の前タブA2の遊離端1702より環状領域から遠くあり得る、第1の前タブA1の遊離端1701より環状領域から遠くてもよい。本場合では、拘束シース1550の遠位縁1650が、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退されるにつれて、第2の前タブA2が、最初に、心室スカートの縁V1、V2、V3とともに、完全に展開し、その後、第1の前タブA1が続き、次いで、その後、後タブPTBが続く。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、A2と並行して、タブA1、PTBが拡張を終える前に、心室スカートが展開するように構成されるように、第1の前タブA1および後タブPTBの遊離端1701、1703より環状領域に近い。
【0121】
図17Iに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Iでは、第2の前タブA2は、第1の前タブA1より長くあり得る、後タブPTBより長くてもよく、および/または第2の前タブA2の遊離端1702は、第1の前タブの遊離端1701より環状領域から遠くあり得る、後タブPTBの遊離端1703より環状領域から遠くてもよい。本場合では、拘束シース1550の遠位縁1650が、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退されるにつれて、第1の前タブA1が、最初に、心室スカートの縁V1、V2、V3とともに、完全に展開し、その後、後タブPTBおよび第2の前タブA2が続く。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、A1と並行して、タブA2およびPTBが拡張を終える前に、心室スカートが展開するように構成されるように、第2の前タブA2および後タブPTBの遊離端1702、1703より環状領域に近い。
【0122】
図17Jに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Jでは、第1の前タブA1は、第2の前タブA2より長くあり得る、後タブPTBより長くてもよく、および/または第1の前タブA1の遊離端1701は、第2の前タブA2の遊離端1702より環状領域から遠くあり得る、後タブPTBの遊離端1703より環状領域から遠くてもよい。本場合では、拘束シース1550の遠位縁1650が、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退されるにつれて、第2の前タブA2が、最初に、心室スカートの縁V1、V2、V3とともに、完全に展開し、その後、後タブPTBが続き、次いで、その後、第1の前タブA1が続く。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、A2と並行して、タブA1、PTBが拡張を終える前に、心室スカートが展開するように構成されるように、第1の前タブA1および後タブPTBの遊離端1701、1703より環状領域に近い。
【0123】
いくつかの実施例では、タブの長さおよび/またはタブの心室端の軸方向位置は、後タブPTBが、最初に完全に展開されるように変動されてもよい。タブの長さおよび/またはタブの心室端の軸方向位置は、後タブPTBの完全展開の後に連続して、またはそれと並行してのいずれかにおいて、前タブA1、A2が完全に展開するように変動されてもよい。
【0124】
図17Kに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Kでは、第2の前タブA2は、後タブPTBより長くあり得る、第1の前タブA1より長くてもよく、および/または第2の前タブA2の遊離端1702は、後タブPTBの遊離端1703より環状領域から遠くあり得る、第1の前タブA1の遊離端1701より環状領域から遠くてもよい。本場合では、拘束シース1550の遠位縁1650が、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退されるにつれて、後タブPTBが、最初に、心室スカートの縁V1、V2、V3とともに、完全に展開し、その後、第1の前タブA1、次いで、第2の前タブA2が続く。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、PTBと並行して、タブA1およびA2が拡張を終える前に、心室スカートが展開するように構成されるように、第1および第2の前タブA1、A2の遊離端1701、1702より環状領域に近い。
【0125】
図17Lに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Lでは、第1の前タブA1は、後タブPTBより長くあり得る、第2の前タブA2より長くてもよく、および/または第1の前タブA1の遊離端1701は、後タブPTBの遊離端1703より環状領域から遠くあり得、第2の前タブA2の遊離端1702より環状領域から遠くてもよい。本場合では、拘束シース1550の遠位縁1650が、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退されるにつれて、後タブPTBが、最初に、心室スカートの縁V1、V2、V3とともに、完全に展開し、その後、第2の前タブA2、次いで、第1の前タブA1が続く。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、PTBと並行して、タブA1およびA2が拡張を終える前に、心室スカートが展開するように構成されるように、第1および第2の前タブA1、A2の遊離端1701、1702より環状領域に近い。
【0126】
図17Mに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR1の方向に、近位に後退するように配列される。図17Mでは、第1の前タブA1および第2の前タブA2は、同一長さを有してもよく、その両方とも、後タブPTBより長くてもよく、および/または第1の前タブA1の遊離端1701および第2の前タブA2の遊離端1702は、環状領域から同一距離にあってもよく、その両方とも、後タブの遊離端1703より環状領域から遠くてもよい。本場合では、後タブPTBが、最初に、心室スカートの縁V1、V2、V3とともに、完全に展開し、その後、第1の前タブA1および第2の前タブA2が並行して続く。心室スカートの縁V1、V2、V3は、シース1550が後退されるにつれて、PTBと並行して、タブA1およびA2が拡張を終える前に、心室スカートが展開するように構成されるように、第1および第2の前タブA1、A2の遊離端1701、1702より環状領域に近い。
【0127】
図17A-17Mは、第1の展開されるタブと並行して、またはタブのいずれかの前に展開する、心室スカート(およびその縁V1、V2、V3)を示すが、心室スカートは、任意の順序で、例えば、タブの任意の組み合わせの前に、タブの任意の組み合わせの後に、および/またはタブのいずれかと並行して、展開するように構成されてもよい。側V1、V2、およびV3のうちの1つ以上のものは、残りの側の前に展開してもよい。
【0128】
上記および本明細書に説明されるように、前および後タブは、部分的に、人工補綴心臓弁および拘束シースの縦軸に対して横方向の配向に展開する等、拘束シース1550の後退に応じて、展開してもよい。タブの本部分的に展開された位置は、完全展開に応じたタブによる後続係合および捕捉のために、前尖AL、後尖PL、または隣接する腱索のうちの1つ以上のものに対してタブを位置付け得る。部分的に展開された前または後タブのうちの1つ以上のものは、人工補綴心臓弁およびそのタブの適切な位置付けおよび/または配向を確認するために可視化されてもよい。必要とされる場合、人工補綴弁は、撮像または可視化に基づいて、初期タブが展開された(および残りのタブはまだ展開されていない)状態で、再位置付けおよび/または再配向されてもよい。可視化に応答して、人工補綴心臓弁は、再位置付けおよび/または再配向されてもよい。前および後タブは、図17A-17Bに関して上記に説明されるように、タブの完全展開の任意の順序において、および任意の順序との任意の組み合わせにおいて、部分的に展開してもよい。以下に説明される図18A-18Mの例証を容易にするために、第1および第2の前タブA1、A2(特に、その心房端1801、1802)および後タブPTB(特に、その心房端1803)は、後退する拘束シース1550に対して広げられた構成で示され、第1および第2の前タブA1、A2および後タブPTBの部分的展開の種々の順序を示す。
【0129】
いくつかの実施例では、タブの長さおよび/またはタブの心房端の軸方向位置は、2つの前タブA1、A2および後タブPTBのうちの2つ以上のものが、並行して、部分的に展開されるように変動されてもよい。
【0130】
図18Aに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Aでは、第1および第2の前タブA1、A2および後タブPTBは、同一長さを有してもよく、および/またはその心房端1801、1802、1803は、環状領域から離れるように同一軸方向位置にあってもよい。第1および第2の前タブA1、A2および後タブPTBは、拘束シース1550が後退されるにつれて、相互に並行して、部分的に展開するであろう。
【0131】
図18Bに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Bでは、第1および第2の前タブA1、A2は、同一長さを有してもよく、その両方とも、後タブPTBより長くてもよく、および/または第1および第2の前タブA1、A2の両方の心房端1801、1802は、環状領域から離れるように同一軸方向位置にあってもよく、その両方とも、後タブPTBの心房端1803より環状領域から遠くてもよい。第1および第2の前タブA1、A2は、拘束シース1550が後退されるにつれて、後タブPTBが部分的に展開される前に、並行して、部分的に展開するであろう。
【0132】
図18Mに示される(下記にさらに説明される)ように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Mでは、第1および第2の前タブA1、A2は、同一長さを有してもよく、その両方とも、後タブPTBより短くてもよく、および/または第1および第2の前タブA1、A2の両方の心房端1801、1802は、環状領域から離れるように同一軸方向位置にあってもよく、その両方とも、後タブPTBの心房端1803より環状領域に近くてもよい。第1および第2の前タブA1、A2は、拘束シース1550が後退されるにつれて、後タブPTBが部分的に展開された後、並行して、部分的に展開するであろう。
【0133】
いくつかの実施例では、タブの長さおよび/またはタブの心房端の軸方向位置は、2つの前タブA1、A2のうちの1つが、後タブPTBと並行して部分的に展開されるように変動されてもよい。タブの長さおよび/またはタブの心房端の軸方向位置は、前タブA1、A2の第2のものが、前タブA1、A2の第1のものおよび後タブPTBの同時部分的展開の前または後に、部分的に展開することを可能にされ得るように変動されてもよい。
【0134】
図18Cに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Cでは、第1の前タブA1および後タブPTBは、同一長さを有してもよく、その両方とも、第2の前タブA2より長くてもよく、および/または第1の前タブA1および後タブPTBの両方の心房端1801、1803は、環状領域から離れるように同一軸方向位置にあってもよく、その両方とも、第2の前タブA2の心房端1802より環状領域から遠くてもよい。第1の前タブA1は、後タブPTBと並行して部分的に展開し、第2の前タブA2は、拘束シース1550が後退されるにつれて、その後、部分的に展開するであろう。
【0135】
図18Dに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Dでは、第2の前タブA2は、後タブPTBと同一長さであってもよく、その両方とも、第1の前タブA1より長くてもよく、および/または第2の前タブA2の心房端1802は、環状領域に対して、後タブPTBの心房端1803の軸方向位置と同一である、軸方向位置にあってもよく、その両方とも、第1の前タブA1の心房端1801より環状領域から遠い軸方向位置にあってもよい。第2の前タブA2は、後タブPTBと並行して部分的に展開し、第1の前タブA1は、拘束シース1550が後退されるにつれて、その後、部分的に展開するであろう。
【0136】
図18Eに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Eでは、第2の前タブA2および後タブPTBは、同一長さを有してもよく、その両方とも、第1の前タブA1より短くてもよく、および/または第2の前タブA2および後タブPTBの心房端1802、1803は、環状領域から離れるように、第1の前タブA1の心房端1801より環状領域に近い、同一軸方向位置にあってもよい。第1の前タブA1は、拘束シース1550が後退されるにつれて、最初に、部分的に展開し、その後、第2の前タブA2および後タブPTBが並行して続くであろう。
【0137】
図18Fに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Fでは、第1の前タブA1および後タブPTBは、同一長さを有してもよく、その両方とも、第2の前タブA2より短くてもよく、および/または第1の前タブA1および後タブPTBの心房端1801、1803は、環状領域から離れるように、第2の前タブA2の心房端1802より環状領域に近い、同一軸方向位置にあってもよい。第2の前タブA2は、拘束シース1550が後退されるにつれて、最初に、部分的に展開し、その後、第1の前タブA1および後タブPTBが並行して続くであろう。
【0138】
いくつかの実施例では、タブの長さおよび/またはタブの心房端の軸方向位置は、2つの前タブA1、A2のうちの1つが、後タブPTBの前に部分的に展開されるように変動されてもよい。タブの長さおよび/またはタブの心房端の軸方向位置は、前タブA1、A2の第2のものが、後タブPTBの完全展開の前または後に、部分的に展開することを可能にされ得るように変動されてもよい。
【0139】
図18Gに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Gでは、第1の前タブA1は、後タブPTBより長くあり得る、第2の前タブA2より長くてもよく、および/または第1の前タブA1の心房端1801は、環状領域から離れるように、後タブPTBの心房端1803より環状領域から遠い軸方向位置にあり得る、第2の前タブA2の心房端1802より遠い、軸方向位置にあってもよい。第1の前タブA1は、拘束シース1550が後退されるにつれて、最初に、部分的に展開し、その後、第2の前タブA2が続き、次いで、その後、後タブPTBが続くであろう。
【0140】
図18Hに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Hでは、第2の前タブA2は、後タブPTBより長くあり得る、第1の前タブA1より長くてもよく、および/または第2の前タブA2の心房端1802は、環状領域から離れるように、後タブPTBの心房端1803より環状領域から遠い軸方向位置にあり得る、第1の前タブA1の心房端1801より遠い、軸方向位置にあってもよい。第2の前タブA2は、拘束シース1550が後退されるにつれて、最初に、部分的に展開し、その後、第1の前タブA1が続き、次いで、その後、後タブPTBが続くであろう。
【0141】
図18Iに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Iでは、第1の前タブA1は、第2の前タブA2より長くあり得る、後タブPTBより長くてもよく、および/または第1の前タブA1の心房端1801は、環状領域から離れるように、第2の前タブA2の心房端1802より環状領域から遠い軸方向位置にあり得る、後タブPTBの心房端1803より遠い、軸方向位置にあってもよい。第1の前タブA1は、拘束シース1550が後退されるにつれて、最初に、部分的に展開し、その後、後タブPTBが続き、次いで、その後、第2の前タブA2が続くであろう。
【0142】
図18Jに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Jでは、第2の前タブA2は、第1の前タブA1より長くあり得る、後タブPTBより長くてもよく、および/または第2の前タブA2の心房端1802は、環状領域から離れるように、第1の前タブA1の心房端1801より環状領域から遠い軸方向位置にあり得る、後タブPTBの心房端1803より遠い、軸方向位置にあってもよい。第2の前タブA2は、拘束シース1550が後退されるにつれて、最初に、部分的に展開し、その後、後タブPTBが続き、次いで、その後、第1の前タブA1が続くであろう。
【0143】
いくつかの実施例では、タブの長さおよび/またはタブの心房端の軸方向位置は、後タブPTBが、最初に、部分的に展開されるように変動されてもよい。タブの長さおよび/またはタブの心房端の軸方向位置は、前タブA1、A2が、後タブPTBの部分的展開後、連続して、またはそれと並行してのいずれかにおいて、部分的に展開するように変動されてもよい。
【0144】
図18Kに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Kでは、後タブPTBは、第2の前タブA2より長くあり得る、第1の前タブA1より長くてもよく、および/または後タブPTBの心房端1803は、環状領域から離れるように、第2の前タブA2の心房端1802より環状領域から遠い軸方向位置にあり得る、第1の前タブA1の心房端1801より遠い、軸方向位置にあってもよい。後タブPTBは、拘束シース1550が後退されるにつれて、最初に、部分的に展開し、その後、第1の前タブA1、次いで、第2の前タブA2が続くであろう。
【0145】
図18Lに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Lでは、後タブPTBは、第1の前タブA1より長くあり得る、第2の前タブA2より長くてもよく、および/または後タブPTBの心房端1803は、環状領域から離れるように、第1の前タブA1の心房端1801より環状領域から遠い軸方向位置にあり得る、第2の前タブA2の心房端1802より遠い、軸方向位置にあってもよい。後タブPTBは、拘束シース1550が後退されるにつれて、最初に、部分的に展開し、その後、第2の前タブA1、次いで、第1の前タブA1が続くであろう。
【0146】
図18Mに示されるように、拘束シース1550の遠位縁1650は、タブ展開の間、弁の縦軸と平行な矢印AR2の方向に、近位に後退するように配列される。図18Mでは、後タブPTBは、第1の前タブA1と同一長さであり得る、第2の前タブA2より長くてもよく、および/または後タブPTBの心房端1803は、環状領域から離れるように、環状領域から同一軸方向位置にあり得る、第1の前タブA1および第2の前タブA2の心房端1801、1802より遠い、軸方向位置にあってもよい。後タブPTBは、拘束シース1550が後退されるにつれて、最初に、部分的に展開し、その後、第1の前タブA1および第2の前タブA2が並行して続くであろう。
【0147】
第1および第2の前タブA1、A2および後タブPTBは全て、同一タブのいずれかが並行して展開する前に、部分的に展開してもよい。代替として、第1および第2の前タブA1、A2および後タブPTBのうちの1つ以上のものは、第1および第2の前タブA1、A2および後タブPTBのうちの1つ以上のものが完全に展開する前に、部分的に展開してもよい。
【0148】
心室展開。前述の実施例では、人工補綴物の心房部分は、心室部分に先立って、半径方向に拡張する。心房展開は、ある状況では、有益であり得る。例えば、心房展開は、人工補綴弁を着座させながら、心臓の定常化を可能にし、デバイスと天然弁生体構造をより容易に回転整合させることができる。心房展開はまた、アンカタブの3つの点のみに沿っての代わりに、心房スカートのより大きい面積に沿って、力をより均一に分散させ得る。なお、ある状況では、心房部分の前に、心室部分を展開することが有益であり得る。以下の実施例は、本明細書に開示される人工補綴弁のいずれかであり得る、人工補綴弁の心室展開の潜在的心室シーケンスを図示する。人工補綴弁は、人工補綴僧帽弁または本明細書に開示される他の人工補綴弁のいずれかであってもよい。
【0149】
本明細書に開示される人工補綴弁のいずれかにおいて心室部分を最初に展開する1つの利点は、これが、それらが正しくなく展開される状況では、アンカタブのいずれかの再捕捉および再展開を可能にすることである。例えば、アンカタブが、腱と交絡された状態になり得る、またはアンカタブの先端が、天然弁尖の背後の代わりに、弁輪の内側上に着地し得る。さらに他の状況では、アンカタブが、天然生体構造と正しく回転配向されない場合がある(例えば、人工補綴弁の前部分が、天然弁の前部と回転整合されない場合がある)。したがって、任意または全てのアンカタブを再捕捉および再展開し、それらが適切に展開されることを確実にすることが可能であることが有益となるであろう。
【0150】
心室部分を最初に展開する他の可能性として考えられる利点は、天然弁尖をより容易に捕捉することの潜在性を含む。後方経心尖送達システムが使用される、実施例では、心室の高さは、概して、懸念されない。心室展開はまた、より短い閉塞時間を要求し得、高速ペーシングの使用なく、展開を可能にし得る。心室展開はまた、アンカタブが腱を越えて突出する場所を選定するためのより多くの機会を提供し得る。さらに、心室展開は、送達システム内のカテーテルシャフトの数の低減を可能にし、それによって、カテーテルシステムの全体的外形を減少させ得る(例えば、フレンチサイズを低減させる)。
【0151】
図19A-19Dは、人工補綴弁の展開シーケンスを図示する。図19Aでは、人工補綴弁1903が、シース1901の管腔1901内に配置される。シースは、人工補綴弁1903を拘束し、これはまた、第1のアンカタブ1907および第2のアンカタブ1905が、フレームの心室領域に隣接する人工補綴弁フレームに結合されるように拘束する。第1のアンカタブ1907は、アンカタブの先端が、人工補綴弁を線維性三角に係合および係留するように、腱索を通して、前天然弁尖の背後に延在するように構成される、前アンカタブである。随意に、第2の前タブもまた、含まれてもよく(図示せず)、また、第2の前アンカタブの先端が、人工補綴弁を他の線維性三角に対向する第2の線維性三角に係合および係留するように、腱索を通して、前天然弁尖の背後に延在するように構成されてもよい。他のアンカタブ1905は、好ましくは、後アンカタブの先端が、人工補綴弁を後棚状部等の天然弁輪の後部分に係合および係留するように、任意の腱索を通して、後天然弁尖の背後に延在するように構成される、後アンカタブである。前および後アンカタブは、概して、上記で前述されたものと同一形態をとる。前または後天然弁尖は、少なくとも部分的に、個別のアンカタブと人工補綴弁の外面との間に配置されてもよい。アンカタブは、本明細書に開示される他のアンカタブのいずれかと同一形態をとってもよい。
【0152】
図19Bは、人工補綴弁1903から離れるようなシース1901の近位後退を図示し、それによって、拘束を2つのアンカタブ1905、1907から除去し、それによって、最初に、それらが自己拡張することを可能にする。
【0153】
図19Cでは、シース1901のさらなる近位後退は、人工補綴物1903の付加的遠位部分を暴露し、それによって、心室スカート1911が自己拡張し得るように、拘束を人工補綴物の心室部分から除去する。心室スカート1911は、本明細書に説明される他の心室スカートと実質的に同一である。
【0154】
ここで図19Dを参照すると、シース1901のさらなる近位後退は、人工補綴物1903全体を暴露し、シース1901によって提供される拘束を除去し、それによって、環状領域および心房フランジ1913が、自己拡張することを可能にする。環状領域および心房フランジは、前述の心房フランジおよび環状領域のいずれかと実質的に同一形態をとる。
【0155】
したがって、アンカタブは、最初に、自己拡張および展開し、その後、心室スカートが続き、それによって、人工補綴物を天然心臓弁に、ここでは、最初に、天然僧帽弁に、心室側から係留し、その後、心房側が続くことに役立つ。当業者はまた、自己拡張人工補綴物の代わりに、人工補綴物がまた、バルーン拡張可能である、または当技術分野において公知の他の手段によって拡張可能であってもよいことを理解するであろう。
【0156】
図19A-19Eでは、アンカタブは両方とも、並行して開放する。しかしながら、いくつかの状況では、一方のタブを他方のタブの前に展開することが好ましくあり得る。図20A-20Eは、これの実施例を図示する。
【0157】
図20Aでは、人工補綴弁2003が、シース2001の管腔2009内に配置される。シースは、人工補綴物を拘束し、送達の間、それが自己拡張することを防止し、かつそれを保護する。人工補綴物はまた、第1のアンカタブ2007と、第2のアンカタブ2005とを含む。アンカタブもまた両方とも、シース2001によって拘束され、これは、送達の間、それらが拡張することを防止し、保護を提供する。
【0158】
図20Bでは、シース2001の近位後退は、第1のアンカタブ2007を暴露し、心室スカートおよび第2のアンカタブ2005の適正な拘束を維持し、その拡張を防止しながら、それが自己拡張することを可能にする。第1のアンカタブは、好ましくは、前述のものと実質的に同一である、天然僧帽弁の線維性三角上に係合および係留するように構成される、前アンカタブである。これは、示されるように、最初に、略水平位置に拡張し、次いで、略垂直位置にさらに外向きに跳出し得る。随意に、人工補綴弁はまた、上記に説明されるように、第2の前タブを有してもよい。
【0159】
さらなる後退は、図20Cに示されるように、第2のアンカタブ2005を暴露し、心室スカートにわたって適正な拘束を維持し、それが拡張することを防止しながら、それが自己拡張することを可能にする。上記に議論されるように、好ましくは、第2のアンカタブ2005は、示されるように、最初に、略水平位置に拡張し、次いで、略垂直位置に拡張し得る。加えて、第2のアンカタブは、好ましくは、上記に記載されるように、天然僧帽弁の後輪上に係合および係留するように構成される、後アンカタブである。
【0160】
第1および第2のアンカタブの両方に関して、タブ軸方向位置、長さ、断面、熱処理等が、拡張シーケンスを制御するために人工補綴物の中にプログラムされることができる。
【0161】
図20Dに示されるシース2001のさらなる後退は、拘束を心室スカート2011から除去し、それによって、人工補綴物の心房部分が拘束されたままである間、それが自己拡張することを可能にする。心室スカートの他の側面は、概して、本明細書の前述のものと同一である。
【0162】
図20Eでは、シース2001のさらなる後退は、拘束を人工補綴弁2003の残りから除去し、それによって、環状領域および心房フランジ2013が、自己拡張することを可能にする。環状領域および心房フランジは、概して、本明細書に前述のものと同一形態をとる。
【0163】
したがって、アンカタブは、順次、自己拡張し、その後、心室スカートが続き、それによって、人工補綴物を天然心臓弁に係留することに役立ち、ここでは、天然僧帽弁が、最初に、心室側から展開され、その後、心房側が続く。当業者はまた、自己拡張人工補綴物の代わりに、人工補綴物がまた、バルーン拡張可能である、または当技術分野において公知の他の手段によって拡張可能であってもよいことを理解するであろう。
【0164】
図21A-21Eは、図20A-20Eにおける変形例を図示し、第2のアンカタブが、第1のアンカタブの前に展開する。
【0165】
図21Aでは、人工補綴弁2103が、シース2101の管腔2109内に配置され、それによって、人工補綴弁2102を拘束する。第1のアンカタブ2107および第2のアンカタブ2105もまた、シース2101によって拘束され、拡張することを防止される。
【0166】
図21Bでは、シース2101の近位後退は、拘束を第2のアンカタブ2105から除去し、それが自己拡張することを可能にする。これは、示されるように、最初に、外向きに水平に延在し、次いで、略垂直位置に自己拡張し得る。第1のアンカタブ2017は、拘束されたままであって、自己拡張しない。
【0167】
図21Cは、シース2101のさらなる近位後退が、拘束を第1のアンカタブから除去し、それが自己拡張することを可能にすることを示す。第2のアンカタブと同様に、第1のアンカタブは、示されるように、最初に、略水平位置に自己拡張し、次いで、略垂直位置に完全に拡張し得る。
【0168】
シース2101のさらなる近位後退は、図21Dに示されるように、拘束を心室スカート2111から除去し、それが自己拡張することを可能にする。
【0169】
図21Eは、シース2101のさらなる後退が、拘束を人工補綴物2103の残りから除去し、環状領域および心房フランジ2113が、自己拡張することを可能にすることを示す。
【0170】
上記に議論されるように、好ましくは、第1のアンカタブは、前アンカタブであって、好ましくは、第2のアンカタブは、後アンカタブであって、両タブは、概して、本明細書に前述のものと同一形態をとる。加えて、随意に、人工補綴物はまた、同様に上記に議論されるような第2の前アンカタブを有してもよい。さらに、アンカタブ長さ、軸方向位置、断面等は、展開のシーケンスに影響を及ぼし、これらは、所望の展開シーケンスを提供するために、製造の間、選択されることができる。
【0171】
さらに、上記に議論されるように、本明細書で議論される実施例は、好ましくは、自己拡張するが、当業者は、それらがまた、バルーン拡張可能である、または当技術分野において公知の他の手段によって拡張されてもよいことを理解するであろう。
【0172】
弁フレーム設計に加え、送達システムも、優先的に、人工補綴物の選択された領域が、図22A-22Bに図示されるような順序で拡張することを可能にするようにエンジニアリングされてもよい。
【0173】
図22Aでは、本明細書に開示されるもののいずれかであり得る、人工補綴物が、シース2201内に配置される。シースは、アンカタブ2207の先端を拘束するだけではなく、また、シースの縦軸と平行に延在する、スロット付き領域2203を有する。したがって、シースの近位後退は、図22Bに見られるように、最初に、拘束がアンカタブ2207から除去されることを可能にし、それによって、アンカタブが、人工補綴物の他の部分の前に自己拡張することを可能にする。図22Bは、図22Aにおけるものと同一形態であるが、90度回転されており、展開されたアンカタブの側面図を示す。スロット付き領域は、シース上の任意の位置に位置し、アンカタブまたは他の領域等の人工補綴物の任意の部分の拘束および拡張を制御してもよい。
【0174】
前述の実施例では、アンカタブは、心室スカートの前に拡張する。しかしながら、ある状況では、最初に、心室スカートを拡張させることが所望され得る。図23A-23Cは、心室スカート展開の実施例を図示する。
【0175】
図23Aでは、人工補綴弁2305が、シース2301の管腔2303内に配置される。シース2301は、人工補綴弁2305を拘束し、第1のアンカタブ2309および第2のアンカタブ2307を含む、人工補綴物の拡張を防止する。上記に記載されるように、好ましくは、人工補綴物は、本明細書に説明される僧帽弁人工補綴物のいずれかである。好ましくは、第1のアンカタブ2309は、本明細書に説明されるもの等の前アンカタブであって、第2のアンカタブ2307は、後アンカタブである。随意に、人工補綴物はまた、本図では見えないため、図示されない、第2の前アンカタブを有してもよい。
【0176】
アンカタブ軸方向位置、長さ、断面等は、展開のシーケンスに影響を及ぼす。本実施例では、アンカは、図23Bに示されるように、シース2301の近位後退が、拘束を心室スカートから除去し、心室スカート2311が、最初に自己拡張することを可能にするように位置付けられる。
【0177】
シース2301のさらなる後退は、図23Cに見られるように、拘束の残りを除去し、それによって、第1のアンカタブ2309および第2のアンカタブ2311の両方が、半径方向に拡張することを可能にする。本実施例では、2つのアンカタブ2309、2311は、並行して半径方向に拡張するが、しかしながら、いずれか一方が、最初に拡張し、その後、他方が拡張する等、任意のシーケンスが、使用されてもよい。加えて、人工補綴物は、2つの前アンカタブが所望される場合、別のアンカタブ(図示せず)を有してもよく、本明細書に開示される任意の展開シーケンスが、利用されてもよい。シースのさらなる後退は、拘束を人工補綴物の残りから除去し、環状領域および心房フランジが、その後、拡張することを可能にするであろう(図示せず)。
【0178】
任意の数の送達システムが、人工補綴物の展開の制御に役立つために使用されてもよい。例えば、中空カプセルが、人工補綴物を治療部位に搬送するために使用されてもよく、次いで、カプセルは、所望のシーケンスにおいて、開放され、展開を可能にしてもよい。カプセル送達システムは、米国特許公開第2017/0165064号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に開示される。米国特許公開第2017/0165064号に開示されるカプセルは、概して、最初に、人工補綴物の心房展開を提供するが、当業者は、それらが、最初に、人工補綴物の心室展開を提供するように修正されることができることを理解するであろう。
【0179】
図24A-24Cは、最初に心室展開を伴う、人工補綴弁を送達するために使用される、カプセル送達システムの実施例を図示する。
【0180】
図24Aは、中空カプセル2405内に配置される、人工補綴弁2411を図示する。カプセルは、人工補綴物を標的治療面積に搬送し、送達の間、それを保護し、かつ人工補綴物が圧潰された構成で保たれるように拘束を提供し、自己拡張を防止する。人工補綴物は、好ましくは、人工補綴僧帽弁であって、本明細書に開示される実施例のいずれかであってもよい。中空カプセル2405は、近位部分2407と、遠位部分2409とを含む。内側シャフト2403は、遠位カプセル部分2409と結合され、外側シャフト2401は、近位カプセル部分2405に結合される。内側および外側シャフトは、相互に対して摺動する。カプセルの近位および遠位部分は、下記に議論されるように、相互から分離可能である。
【0181】
図24Bでは、遠位カプセル部分2409が、近位カプセル部分2405に対して遠位に移動され(および/または近位カプセル部分2407が、遠位カプセル部分に対して近位に移動される)、2つの半体を分離し、拘束を人工補綴弁2411の心室領域から除去し、それによって、心室スカート2417が、自己拡張することを可能にする一方、第1および第2のアンカタブ2415、2417は、拘束されたままであって、心房および環状部分とともに自己拡張しない。カプセル半体は、内側シャフト2403または外側シャフト2401の相対的移動によって移動されてもよい。
【0182】
図24Cでは、近位および遠位カプセル部分のさらなる分離は、拘束を人工補綴弁からさらに除去し、第1および第2のアンカタブ2415、2417が、自己拡張することを可能にする。カプセル半体のさらなる分離は、次いで、環状領域および心房フランジが、自己拡張することを可能にするであろう(図示せず)。上記に記載されるように、好ましくは、第1のアンカタブは、前アンカタブであって、第2のアンカタブは、好ましくは、後アンカタブである。随意に、人工補綴弁はまた、第2の前アンカタブを含む。アンカタブは、概して、上記に議論されるものと同一形態をとる。さらに、アンカタブの任意の展開シーケンスは、前述のものを含む、本実施例において使用されてもよい。
【0183】
ある状況では、図25A-25Cに見られるように、心室スカートの展開前に、アンカタブの展開を可能にすることが有益であり得る。
【0184】
図25Aは、人工補綴弁2511を搬送するためのカプセル2505を有する、送達システムを示す。カプセルは、相互から分離可能である、近位カプセル部分2507と、遠位カプセル部分2509とを含む。内側シャフト2503は、遠位カプセル部分2509に結合され、外側シャフト2501は、近位カプセル部分2505と結合される。内側および外側シャフト2501、2503は、相互に対して摺動する。
【0185】
図25Bでは、遠位カプセル部分は、近位カプセル部分2507から分離され、拘束を人工補綴弁2511の一部から除去し、それによって、心室スカート2517が拘束されたままである間、アンカタブ2515、2513が、自己拡張することを可能にする。上記に議論されるように、好ましくは、第1のアンカタブ2515は、前アンカタブであって、好ましくは、第2のアンカタブ2513は、後アンカタブである。随意に、人工補綴弁は、第2の前アンカタブ(図示せず)を含んでもよい。第1および第2のアンカタブは、上記に前述される任意のアンカタブの形態をとってもよい。
【0186】
近位および遠位カプセル2507、2509のさらなる分離は、図25Cに見られるように、心室スカート2517が、拘束されていない状態となり、次に、自己拡張することを可能にする。人工補綴弁の残りは、最後に環状領域および心房フランジを含む、カプセル半体のさらなる分離に伴って拡張する(図示せず)。
【0187】
図25D1は、人工補綴弁1506を搬送し、人工補綴弁の心房部分が最初に展開しないように拘束しながら、最初に、心室部分が展開することを可能にするための、遠位カプセル部分2601と、近位カプセル部分2505を有する、送達システムを示す。内側シャフト2518は、遠位カプセル部分2601に結合される。遠位カプセル部分2601は、直線近位縁2325を伴う、近位縁を含有する。図25D2は、直線近位縁2325の3次元図および2次元図を示す。本直線縁2325は、第1の前アンカタブA1、第2の前アンカタブA2、および近位アンカタブ(存在する場合でも、図示せず)の制御された展開を可能にする。心室アンカは、タブ2324を含み、これは、スロット付きディスクと係合し、心室展開を拘束する。本実施例では、近位および遠位カプセル部分は、第1の前アンカタブA1が、第2の前アンカタブA2および後アンカタブ(図示せず)の前に展開するように分離されてもよい。別の実施例では、第2の前アンカタブA2は、第1の前アンカタブA1および後アンカタブ(図示せず)の前に展開されてもよい。さらに別の実施例では、後アンカタブ(図示せず)は、第1の前アンカタブA1および第2の前アンカタブA2の前に展開してもよい。さらなる実施例では、第1の前アンカタブA1および第2の前アンカタブA2は、後アンカタブ(図示せず)の前に同時に展開する。さらに別の実施例では、第1の前アンカタブA1、第2の前アンカタブA2、および後アンカタブ(図示せず)は、同時に展開する。本実施例の他の側面は、概して、アンカA1、A2および弁1506、1500B等の本明細書に議論される他の実施例と同一形態をとる。遠位カプセル部分2601は、遠位カプセル部分2601に結合される内側シャフト2518を遠位に押動させ、それによって、遠位カプセル部分2601を近位カプセル部分2505から分離することによって作動される。第2の内側シャフト(図示せず)は、近位カプセル部分2505に結合されてもよく、第2の内側シャフトを引動させることは、心室展開後、近位カプセル部分を遠位カプセル部分から分離または除去する。
【0188】
図25E1は、近位カプセル部分2505と、遠位カプセル部分2602とを伴う、送達システムの別の実施例を示し、遠位カプセル部分は、部分的に、人工補綴弁1506から分離され、拘束を人工補綴弁の一部から除去し、それによって、前タブA1、A2が、拡張することを可能にする。遠位カプセル部分2602は、カプセルの縦軸に対して傾斜付きの縁2326を伴う、近位縁を有する。図25E2は、傾斜付き近位縁2326の3次元図および2次元図を示す。傾斜付き縁2326は、第1の前アンカタブA1、第2の前アンカタブA2、および後アンカタブ(図示せず)の制御された展開を可能にする。ある実施例では、遠位カプセル部分2602または近位カプセル部分2505は、分離され得、第1の前アンカタブA1は、第2の前アンカタブA2および後アンカタブ(図示せず)の前に展開する。別の実施例では、第2の前アンカタブA2は、第1の前アンカタブA1および後アンカタブ(図示せず)の前に展開されてもよい。さらに別の実施例では、後アンカタブ(図示せず)は、第1の前アンカタブA1および第2の前アンカタブA2の前に展開してもよい。さらなる実施例では、第1の前アンカタブA1および第2の前アンカタブA2は、後アンカタブ(図示せず)の前に同時に展開する。さらに別の実施例では、第1の前アンカタブA1、第2の前アンカタブA2、および後アンカタブ(図示せず)は、同時に展開する。心室アンカは、スロット付きディスクと係合し、その展開を拘束する、タブ2324を含む。人工補綴弁およびカプセルの他の側面は、概して、本明細書の前述で開示されるものと同一の形態をとる。近位カプセルは、心室展開後、人工補綴弁の心房部分から離れるように近位に後退され、心房部分が、拡張することを可能にしてもよい。
【0189】
図25F1は、近位カプセル部分2505と、遠位カプセル部分2518とを伴う、送達システムのさらに別の実施例を示し、遠位カプセル拘束を人工補綴弁の一部から除去することは、心房部分が拘束されたまま、前タブA1、A2が、拡張することを可能にする。遠位カプセル部分2603は、遠位カプセル部分の近位縁に沿って波状または襞状縁2327を伴う、近位縁を有する。図25F2は、近位波状または襞状縁2327の3次元図および2次元図を示す。波状または襞状縁2327は、第1の前アンカタブA1、第2の前アンカタブA2、および後アンカタブの制御された展開を可能にする。ある実施例では、カプセルは、分離され得、第1の前アンカタブA1は、第2の前アンカタブA2および後アンカタブ(図示せず)の前に展開する。別の実施例では、第2の前アンカタブA2は、第1の前アンカタブA1および後アンカタブ(図示せず)の前に展開されてもよい。さらに別の実施例では、後アンカタブ(図示せず)は、第1の前アンカタブA1および第2の前アンカタブA2の前に展開してもよい。さらなる実施例では、第1の前アンカタブA1および第2の前アンカタブA2は、後アンカタブ(図示せず)の前に同時に展開する。さらに別の実施例では、第1の前アンカタブA1、第2の前アンカタブA2、および後アンカタブ(図示せず)は、同時に展開する。波状部の頂点および谷部は、調節され、それによって、人工補綴物に提供される拘束を制御し、したがって、展開シーケンスを制御してもよい。近位カプセルは、近位に後退され、人工補綴物の近位部分を拘束解除し、それによって、心室部分後、心房部分が、自己拡張することを可能にしてもよい。
【0190】
図25Gは、近位カプセル部分2505と、遠位カプセル部分2604とを伴う、送達システムのさらに別の実施例を示し、遠位カプセル拘束を人工補綴弁の一部から除去することは、心房部分が拘束されたまま、前タブA1、A2が、拡張することを可能にする。ある実施例では、カプセルは、分離され得、第1の前アンカタブA1は、第2の前アンカタブA2および後アンカタブ(図示せず)の前に展開する。別の実施例では、第2の前アンカタブA2は、第1の前アンカタブA1および後アンカタブ(図示せず)の前に展開されてもよい。さらに別の実施例では、後アンカタブ(図示せず)は、第1の前アンカタブA1および第2の前アンカタブA2の前に展開してもよい。
【0191】
図25Hは、遠位カプセルのさらなる前進が、図25Gにおける第2のアンカタブを解放することを示す。ここでは、近位カプセル部分2505および遠位カプセル部分2606は、分離可能であって、遠位カプセル拘束を人工補綴弁の一部から除去し、心房部分が依然として拘束されたまま、第2の前タブが、展開することを可能にする。さらなる実施例では、第1の前アンカタブA1および第2の前アンカタブA2は、後アンカタブ(図示せず)の前に同時に展開する。さらに別の実施例では、第1の前アンカタブA1、第2の前アンカタブA2、および後アンカタブ(図示せず)は、同時に展開する。
【0192】
図25Iは、伸長シャフト2518がディスク状交連制御要素2520に結合され、ディスク状肘継手制御要素2519がその遠位端に隣接する、送達システムの一部を示す。送達システムの他の側面は、本明細書に開示される他の送達システムと同一または類似形態をとってもよい。交連制御要素は、半径方向内向きまたは外向きに延在する、1つ以上の交連制御スロット2522を有してもよく、肘継手制御要素は、半径方向内向きまたは外向きに延在する、1つ以上の肘継手制御スロット2521を有してもよい。スロットは、交連タブまたはアンカタブ肘継手の一部を受容するように定寸および成形され、したがって、それらは、定位置に拘束され、外側シースまたはカプセルが、後退される、または伸長シャフト2518が、遠位に前進され、拘束を除去し、交連タブおよび/またはアンカタブ肘継手が、半径方向に拡張することを可能にするまで保持され得る。交連制御要素または肘継手制御要素の作動は、交連タブおよびアンカタブ肘継手を任意の所望の順序で解放するために、任意の所望の順序で制御されてもよい。したがって、下記に議論されるように、最初に、交連タブが、次いで、肘継手が、または、最初に、肘継手が、次いで、交連タブが解放されてもよい、または交連タブおよび肘継手は、並行して、解放されてもよい。
【0193】
図25Jはさらに、送達システムおよび人工補綴弁1506とのその相互作用を示す。本実施例では、肘継手制御要素2519は、少なくとも2つの肘継手制御スロットを備え、前アンカタブA1およびA2は、それぞれ、突出部(タブとも称される)2523および2519を含有する。突出部2523および2519は、スロット2521の中に配置され、外側シースまたはカプセルの一部によって拘束され、解放に応じて、A1またはA2または両方が、拡張する。A1が、最初に、拡張してもよい、A2が、最初に、拡張してもよい、またはA1およびA2が、同時に、拡張してもよい。交連制御要素2520はまた、1つ以上の交連制御スロット2522を含有し、交連制御突出部2324が、1つ以上のスロットの中に配置されてもよい。交連制御要素は、肘継手制御要素の前に、1つ以上のタブを解放してもよい、または肘継手制御要素は、交連制御要素の前に、1つ以上のタブを解放してもよい、または交連制御要素および肘継手制御要素は、同時に、解放してもよい。ある実施例では、肘継手制御要素2519が、展開され得、第1の前アンカタブA1は、第2の前アンカタブA2および後アンカタブ(図示せず)の前、かつ交連制御要素が交連タブを解放する前に、展開する。別の実施例では、第2の前アンカタブA2は、第1の前アンカタブA1および後アンカタブ(図示せず)の前に展開されてもよい。さらに別の実施例では、後アンカタブ(図示せず)は、第1の前アンカタブA1および第2の前アンカタブA2の前に展開してもよい。さらなる実施例では、第1の前アンカタブA1および第2の前アンカタブA2は、後アンカタブ(図示せず)の前に同時に展開する。さらに別の実施例では、第1の前アンカタブA1、第2の前アンカタブA2、および後アンカタブ(図示せず)は、同時に展開する。さらに別の実施例では、内側シャフトに結合され、交連タブに接続される、交連制御要素は、第1の前アンカタブA1、第2の前アンカタブA2、および後アンカタブ(図示せず)の前に、交連タブ(図示せず)を展開することができる。
【0194】
他の展開シーケンスもまた、検討される。上記で参照されるシーケンスの任意の順列または組み合わせが、使用されてもよい。例えば、心房スカートが、最初に、展開し、その後、心室スカートが続き、次いで、任意のシーケンスにおいて、アンカタブのいずれかまたは全てが続いてもよい。別の実施例では、心室スカートが、最初に、展開し、その後、心房スカート、次いで、任意のシーケンスにおいてアンカタブが続いてもよい。なおも別の実施例では、アンカタブが、任意のシーケンスにおいて展開し、その後、心室スカート、次いで、心房スカートが続いてもよい。さらに別の実施例では、心室スカートが、最初に、展開し、その後、任意のシーケンスにおいて、アンカタブが続き、次いで、その後、心房スカートが続いてもよい。
【0195】
経隔壁送達システム
【0196】
最初に、図26を参照すると、経カテーテル心臓弁送達のための経隔壁送達システムの一実施例が、概して、1として描写される。図面および続く説明では、用語「近位」は、ユーザに最も近い、送達システムの端部2を指すであろう一方、用語「遠位」は、ユーザから最も遠い、端部3を指すであろう。経隔壁送達システム1は、人工補綴物カプセルまたは弁カプセルアセンブリ8等の人工補綴物と、送達カテーテルアセンブリ7と、操向ガイド10と、送達ハンドルアセンブリ4と、送達ハンドル4と操向ハンドル5との間のインターフェース9とを備えることができる。操向ガイド10は、操向可能カテーテルアセンブリ6と、操向ハンドル5とから成ることができる。弁カプセルアセンブリ8は、その間に延在する、送達カテーテルアセンブリ7を経由して、送達ハンドルアセンブリ4と動作可能に連通することができる。人工補綴物または弁カプセルアセンブリ8の平行移動位置および角度姿勢は、操向ハンドル5によって動作可能に制御され、その間に延在する、操向可能カテーテルアセンブリ6を経由して、連通することができる。インターフェース9は、Oリングタイプシール等の摺動可能シールから成ることができる。インターフェース9はさらに、送達ハンドルまたは送達カテーテルが、ある程度の静止摩擦力を維持しながら、操向ハンドル内で平行移動することを可能にし、したがって、血液または流体が操向カテーテルアセンブリまで前進する場合、そのような血液または他の流体が操向ハンドルから外に滲出することを防止するように機能することができる。
【0197】
本明細書に説明される送達デバイスのいずれかと併用され得る、経カテーテル僧帽弁または任意の人工補綴物のさらなる詳細は、他の関連送達カテーテルとともに、Lane, et al.の米国特許第8,579,964号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明される。
【0198】
概して、送達ハンドルアセンブリ4は、サムホイール11等の遠位アクチュエータと、サムホイール12等の近位アクチュエータとを含み、その両方とも、送達ハンドルアセンブリ4と一体的に関連付けられ、これは、A側送達ハンドル筐体22と、B側送達ハンドル筐体23とから成る。遠位サムホイール11および近位サムホイール12はまた、送達ハンドルアセンブリ4に対して回転可能に位置付け可能であって、内部ねじ山(図示せず)を経由してアクチュエータとしての役割を果たし、送達カテーテルアセンブリ7内の種々のカテーテルの平行移動制御を可能にし、そのさらなる証拠は、後の節に詳述されるであろう。送達ハンドルアセンブリ4は、一側面では、運動伝達機構として機能する、送達カテーテルアセンブリ7を介して、弁カプセルアセンブリ8に動作可能に結合される。いくつかの実施形態では、送達ハンドルアセンブリ4、送達カテーテルアセンブリ7、および弁カプセルアセンブリ8は、送達システム26を形成することができる。いくつかの実施形態では、操向ハンドル5および操向可能カテーテルアセンブリ7は、操向ガイド10を形成することができ、これは、それを通して、送達システム26が平行移動および回転し得、そこから、埋込の間、蛇行性血管系を横断するために、その形状を成し得る、経路を提供する。全体的に見て、送達システム26および操向ガイド10は、経隔壁送達システム1を形成することができる。
【0199】
弁カプセルアセンブリ8は、種々の構造を呈し得る。例えば、遠位カプセル14および近位カプセル13は、実質的に剛性、ステンレス鋼、ポリマー、金属、または別様に剛性の管類から、圧壊可能、可撓性の管類から、または形状記憶特性を呈し、ニチノール等のヒト生理学に固有の温度勾配によって作動される、形状設定可能な特殊金属合金から形成されてもよい。現在、弁カプセルアセンブリ8の部分は、送達ハンドルアセンブリ4内に位置する、遠位サムホイール11または近位サムホイール12のいずれかの旋回によって平行移動可能に制御されることができる。遠位サムホイール11を回転させることによって、近位カプセル14は、例えば、人工補綴僧帽弁等の人工補綴物のある部分を露見させるために、カプセルアセンブリ8の軸に沿って平行移動可能に位置付けられることができる。近位サムホイール12を回転させることによって、近位カプセル13は、弁カプセルアセンブリ8の軸に沿って平行移動可能に位置付けられ、再び、好ましくは、人工補綴弁(図示せず)のある部分を露見および解放させることができる。カプセル変形例は、後の節に詳細に説明されるであろう。任意のカプセル実施例が、前述に開示される展開シーケンスのいずれかと併用されてもよい。
【0200】
図31を参照すると、送達カテーテルアセンブリ7は、概して、一群の同心状に入れ子にされたカテーテルから成り、相互にわたって摺動可能に配置される。一群の入れ子にされたカテーテル内の最内カテーテルは、ガイドワイヤカテーテル30であって、これは、遠位カプセル14に結合される、遠位区分32と、概して、その間に延設されるガイドワイヤを受け取るように定寸される、ガイドワイヤ管腔33を伴う、近位区分31とを有する。ガイドワイヤカテーテル30は、その全長全体を通して一定外径および一定内径と、関節運動を可能にする、可撓性区分300とを有する。ガイドワイヤカテーテル30は、概して、ベルカテーテル34の内側に嵌合し、それに対して摺動可能に平行移動することが可能であるように構成される。ベルカテーテル34は、ベルが、略円筒形形状であって、ベルカテーテルより大きい直径を有する、ベル36に結合される、遠位区分360と、概して、その間に延設されるガイドワイヤカテーテル30を受け取るように定寸される、内側管腔361を伴う、近位区分35とを有する。ベルカテーテル34は、その全長全体を通して一定外径および一定内径と、関節運動を可能にする、可撓性区分301とを有する。ベルカテーテル34は、概して、係留カテーテル37の内側に嵌合し、それに対して摺動可能に平行移動することが可能であるように構成される。係留カテーテル37は、アンカが、略円筒形形状であって、弁交連係留部分(図示せず)を受容するように円周方向に位置付けられる、複数の係留スロットを有し得る、アンカ400に結合される、遠位区分39と、概して、その間に延設されるベルカテーテル34を受け取るように定寸される、内側管腔40を伴う、近位区分38とを有する。係留カテーテル37は、その全長全体を通して一定外径および一定内径と、関節運動を可能にする、可撓性区分302とを有する。係留カテーテル37は、概して、シースカテーテル41の内側に嵌合し、それに対して平行移動することが可能であるように構成される。シースカテーテル41は、近位カプセルが、キャップ部分で終端する、円筒形部分を有し得、キャップ部分が、丸みを帯びたドーム状表面を有し得る、近位カプセル13に結合される、遠位区分43と、概して、その間に延設される係留カテーテル37を受け取るように定寸される、内側管腔130を伴う、近位区分42とを有する。シースカテーテル41は、その全長全体を通して一定外径および一定内径と、関節運動を可能にする、可撓性区分303とを有する。シースカテーテル41は、概して、操向カテーテルアセンブリ6の内側に嵌合し、それに対して摺動可能に平行移動することが可能であるように構成される。操向カテーテルアセンブリ6は、操向可能カテーテル309と、プルリング307であって、カテーテルの遠位区分305に位置する、円形リング状形状を有し得る、プルリングと、カテーテルの近位区分に位置する、複数のプルワイヤ308と、関節運動を可能にする、可撓性区分304と、全長全体を通して延設される、内側管腔310とから成る。プルワイヤ308毎に、操向可能カテーテル309の全体に延設される、対応する管腔(図示せず)が存在する。
【0201】
概して、操向ガイド10は、それぞれ、AおよびB側操向ハンドル筐体24および25内に埋設される、ガスケットに類似する、円筒形形状のOリングタイプインターフェースから成る、インターフェース区分9と、A側操向ハンドル筐体24と、B側操向ハンドル筐体25と、操向サムホイール16であって、略円筒形形状を有し得る、操向サムホイール等のアクチュエータと、カテーテル歪み逃がし27と、操向可能カテーテルアセンブリ6とを含む。操向サムホイールは、加えて、1つ以上の陥凹またはスロットによって分離され、ホイールの握持および旋回を促進するための表面を提供する、1つ以上の突出部を含むことができる。いくつかの実施例では、操向サムホイールは、ホイールの握持および旋回を促進するためのリブを伴う、テクスチャ加工された表面を有することができる。インターフェース区分9は、動的シールを操向ハンドル5と送達カテーテルアセンブリ7との間に提供し、したがって、それによって、摺動可能にシールされたカテーテル平行移動を可能にし、送達カテーテルアセンブリは、したがって、それを通して横断し、操向可能カテーテルアセンブリ6の末端の関節運動端15において、操向ガイド10の遠位端に向かって退出し得る。インターフェース区分9は、動的シールを提供するが、送達カテーテルアセンブリ7は、依然として、標的埋込部位における患者内の正確な位置付けを画定するために、操向ガイド10内で平行移動および回転し得る。埋込手技および標的埋込部位に関する詳細は、後の節において議論されるであろう。操向カテーテルアセンブリ6の操向可能部分を作動させるために、操向サムホイール16が、旋回される。操向サムホイール16が、旋回されると、操向可能カテーテルアセンブリ6の関節運動端15は、サムホイール旋回の方向と同一方向に屈曲するであろう。本運動の平行移動は、例えば、プルリング307と遠位に噛合接続(溶接接続、または締結具または接着剤を使用して、または任意の好適な締結方法等)し、操向ハンドル5に固有であって、後の節にさらに詳細に説明されるであろう、内部機構と近位に接続可能に連通する、図31に描写されるような内部プルワイヤ308の使用を通して達成される。
【0202】
図27Aは、ヒト心臓の部分的図の一般的描写を説明する(前心室表面、肺動脈幹、および大動脈は、除去されている)。操向ガイド7は、標的埋込部位につながる経路を提供するために事前に設置されている、ガイドワイヤ811に追従するであろう。典型的手技の間、操向ガイド7は、最初に、鼠径部の近傍の大腿静脈(図示せず)における切開から、下行性下大静脈(図示せず)を経由して、下大静脈810に進入するであろう。操向ガイド7は、次いで、右心房802への入口として作用する、大静脈孔801を通して、下大静脈810から退出するであろう(図27B)。いったん右心房802に入ると、操向ガイド10は、次いで、隔壁内の卵円孔803に穿通し、左心房804へのアクセスを得るであろう。左心房804(図27C)では、操向ガイド10が、送達カテーテル812(図27D)がその中で動作するための埋込部位(僧帽弁輪805)に向かって直接チャネルを提供するために、僧帽弁輪805に向かって照準されるであろう。
【0203】
図28-31を特に参照すると、機能性を可能にする、経隔壁送達システム1の内部機構が、説明されるであろう。具体的には、図28は、分解図に示される、経隔壁送達システム1のアセンブリの実施例を図示する。経隔壁送達システム1は、内部部品の説明をより容易に理解させるために、断面で表示される。送達ハンドル区分403は、図29を参照して下記にさらに詳細に説明されるであろう。操向ハンドル区分402は、図30を参照して下記にさらに詳細に説明されるであろう。最後に、送達カテーテル区分401は、図31を参照して上記に前述されている。
【0204】
ここで図29を参照すると、送達ハンドル区分403は、概して、B側送達ハンドル筐体23と噛合接続する、A側送達ハンドル筐体22と、複数のサムホイール(遠位サムホイール11および近位サムホイール12)等のアクチュエータと、該複数のサムホイール内のサムホイールの回転に応じて、近位または遠位に平行移動し得る、複数の力伝達送りねじ(遠位送りねじ503および近位送りねじ511)と、同伴される空気ボーラスをシステム内の同心状に入れ子にされたカテーテルから除去する能力を提供する、複数の止血ポートおよび関連管類と、さらに詳細に説明されるであろう、種々の他の構成要素および締結具とから成る。送達ハンドル区分403の運動伝達要素を具体的に参照すると、遠位送りねじ503は、遠位サムホイール11と螺合接続し、該遠位サムホイール11を旋回させることによって、平行移動運動が、遠位送りねじ503上に付与される。遠位送りねじ503の運動は、シースカテーテル41の近位端42と、それ自体は、接着剤(医療グレードのUV硬化性接着剤、または医療グレードのシアノアクリレート接着剤、またはプラスチックまたはポリマーのための任意の好適な医療グレードの接着剤等)で遠位送りねじ503に噛合される、遠位送りねじキャップ501の遠位端5010との間の接続を経由して、シースカテーテル41に伝達される。遠位送りねじキャップ501はまた、シースカテーテル41と係留カテーテル37との間のシールされたインターフェース(遠位Oリング502)を経由して、空気の吐出を可能にする。定常ねじキャップ504は、それぞれ、AおよびB側ハンドル筐体22、23内に同伴され、係留カテーテル37のための場所および保定を提供し、それによって、係留カテーテル37の近位端38は、定常ねじキャップ504の遠位端5040と噛合接続する(医療グレードのUV硬化性接着剤、または医療グレードのシアノアクリレート接着剤、またはプラスチックまたはポリマーのための任意の好適な医療グレードの接着剤、または締結用の機械的ねじ山を経由して)。定常ねじキャップ504はまた、係留カテーテル37とベルカテーテル34との間のシールされたインターフェース(中間Oリング505)を経由して、空気の吐出を可能にする。近位送りねじ511は、近位サムホイール12と螺合接続し、該近位サムホイール12を旋回させることによって、平行移動運動が、近位送りねじ511上に付与される。近位送りねじ511の運動は、ガイドワイヤカテーテル30の近位端31と近位送りねじ511の遠位端5110との間の接続を経由して、ガイドワイヤカテーテル30に伝達される。近位送りねじ511の運動はまた、近位送りねじ511の遠位端5110と近位送りねじプレート510との間の摺動可能干渉を経由して、ベルカテーテル34に伝達され、それによって、近位送りねじプレート510は、近位送りねじキャップ508と噛合接続し、近位送りねじキャップ508は、ベルカテーテル34の近位端35を格納する。近位送りねじキャップ508はまた、ベルカテーテル34とガイドワイヤカテーテル30との間のシールされたインターフェース(近位Oリング509)を経由して、空気の吐出を可能にする。近位送りねじ511は、それを経由して近位送りねじ511と噛合接続し、空気の吐出を可能にする。
【0205】
ここで図30を参照すると、操向ハンドル区分402は、概して、B側操向ハンドル筐体25と噛合接続する、A側操向ハンドル筐体24と、カテーテル歪み逃がし27と噛合接続する、操向可能カテーテルアセンブリ6と、インターフェース9と、複数の回転可能ディスク(B側回転可能ディスク600およびA側回転可能ディスク607)と、操向サムホイール16と、プッシュボタン613と、さらに詳細に説明されるであろう、種々の他の構成要素および締結具とから成る。操向ハンドル区分402の操向要素を具体的に参照すると、操向サムホイール16は、A側回転可能ディスク607内に心合される、係止ハブ608と噛合接続する。A側回転可能ディスク607およびB側回転可能ディスク600は、複数の担体ロッド601を経由してともに結合され、A側操向ハンドル筐体24およびB側操向ハンドル筐体25から成る、ハンドル筐体内でスピンするように機械的に作用する。A側回転可能ディスク607は、操向サムホイール16に接続されるため、操向サムホイール16の回転は、A側回転可能ディスク607の回転を引き起こす。複数の回転可能ディスク(B側回転可能ディスク600およびA側回転可能ディスク607)の具体的機能は、担体ロッド601上で自由にスピンし得、また、プルワイヤ308に接続され、また、旋回されると、張力をそれらに印加する、緊張ヒンジ602を経由して、複数のプルワイヤ308を作動させることである。ここで、操向ハンドル区分402の係止要素を具体的に参照すると、プッシュボタン613は、シャフトとして作用する、プッシュボタンピン611と螺合接続する。プッシュボタン613は、ボタンが押下されると、直接平行移動を可能にする、空洞6131内に位置する。プッシュボタンばね612が、プッシュボタン613の内面と空洞6131の底部との間に格納され、押下されたプッシュボタン613が解放されると、復帰力を提供する。プッシュボタン613からの運動は、プッシュボタンピン611に沿って、直接、止めねじ605を経由してプッシュボタンピン611に締結される、クロスバー604に伝達される。プッシュボタンピン611が、プッシュボタン613が押下されるにつれて、平行移動すると、クロスバー604もまた、平行移動し、クロスバー604の端部上に位置する、複数のクロスバーペグ6041も、したがって、同様に平行移動する。非押下状態にあるとき、クロスバーペグ6041は、A側回転可能ディスク607の周縁上に現れる、複数のスロット6071内に着座される。クロスバーペグ6041は、次いで、また、スロット6071を通して突出し、ねじ山付き締結具606によってA側操向ハンドル筐体24の内面に搭載される、位置決めディスク609の周縁を中心としてアレイで現れる、円周方向細隙610のいずれか内に静置し得る。押下状態にあるとき、クロスバーペグ6041は、隙間が達成されるまで、円周方向細隙610から離れるように移動され、係止機構は、クロスバー604およびA側回転可能ディスク607に直接接続される全ての側面の自由回転を可能にする。
【0206】
本発明の種々の形態が本明細書で示され、説明されているが、そのような形態は、具体例のみとして提供されることが当業者に明白となるであろう。多数の変形例、変更、および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者に想起されるであろう。本明細書に説明される本発明の実施例の種々の代替案が、本発明を実践する際に採用されてもよいことを理解されたい。以下の請求項が本発明の範囲を定義し、これらの請求項およびそれらの同等物の範囲内の方法および構造が、それによって対象とされることが意図される。

注記および実施例
【0207】
以下の非限定的実施例は、とりわけ、本主題のある側面を詳述し、本明細書で議論される課題を解決し、利点を提供する。
【0208】
実施例1は、人工補綴弁を患者の心臓の天然僧帽弁に送達する方法であって、天然僧帽弁は、天然前尖と、天然後尖とを有し、心室部分および心房部分を備える、人工補綴弁を提供するステップであって、心室部分は、心室スカート、心室スカート上に配置される、前係留タブ、心室スカート上に配置される、後係留タブを備え、心房部分は、心房フランジを備える、ステップと、最初に、心室部分を半径方向に拡張させるステップと、心室部分後、心房部分を半径方向に拡張させるステップとを含む、方法である。
【0209】
実施例2は、実施例1に記載の方法であって、心室部分を半径方向に拡張させるステップは、後係留タブを展開する前、かつ心室スカートを展開する前に、前係留タブを展開するステップを含む。
【0210】
実施例3は、実施例1-2のいずれかに記載の方法であって、心室部分を半径方向に拡張させるステップは、前係留タブを展開する前、かつ心室スカートを展開する前に、後係留タブを展開するステップを含む。
【0211】
実施例4は、実施例1-3のいずれかに記載の方法であって、心室部分を半径方向に拡張させるステップは、前係留タブを展開する前、かつ後係留タブを展開する前に、心室スカートを展開するステップを含む。
【0212】
実施例5は、人工補綴弁であって、心室スカート、心室スカート上に配置される、前係留タブ、および心室スカート上に配置される、後係留タブを備える、心室部分と、心房フランジを備える、心房部分とを備え、心室部分は、最初に、半径方向に拡張するように構成され、心房部分は、心室部分後、半径方向に拡張するように構成される、人工補綴弁である。
【0213】
実施例6は、実施例5に記載の人工補綴弁であって、心室部分の半径方向拡張は、後係留タブおよび心室スカートの前に、前係留タブを展開させる。
【0214】
実施例7は、実施例5-6のいずれかに記載の人工補綴弁であって、心室部分の半径方向拡張は、前係留タブおよび心室スカートの前に、後係留タブを展開させる。
【0215】
実施例8は、実施例5-7のいずれかに記載の人工補綴弁であって、心室部分の半径方向拡張は、前係留タブおよび後係留タブの前に、心室スカートを展開させる。
【0216】
実施例9は、人工補綴弁を患者の心臓の天然僧帽弁に送達する方法であって、天然僧帽弁は、天然前尖と、天然後尖とを有し、心室部分および心房部分を備える、人工補綴弁を提供するステップであって、心室部分は、心室スカート、心室スカート上に配置される、前係留タブ、心室スカート上に配置される、後係留タブを備え、心房部分は、心房フランジを備える、ステップと、送達システムを提供するステップであって、人工補綴弁は、送達システムの遠位部分に結合される、ステップと、送達システムの遠位部分を作動させ、それによって、拘束を人工補綴弁から除去するステップと、最初に、心室部分を半径方向に拡張させるステップと、心室部分後、心房部分を半径方向に拡張させるステップとを含む、方法である。
【0217】
実施例10は、実施例9に記載の方法であって、送達システムの遠位部分はさらに、遠位カプセル部分および近位カプセル部分を備える、カプセルを備え、送達システムの遠位部分を作動させるステップは、近位カプセル部分を遠位カプセル部分から離れるように移動させるステップを含む。
【0218】
実施例11は、実施例9-10のいずれかに記載の方法であって、送達システムはさらに、遠位カプセルに結合される、伸長シャフトを備え、伸長シャフトを遠位に移動させるステップは、遠位カプセル部分を移動させ、それによって、心室部分を拘束解除する。
【0219】
実施例12は、実施例9-11のいずれかに記載の方法であって、遠位カプセル部分はさらに、遠位カプセル部分の近位縁に沿って直線縁を備え、カプセルの遠位部分を移動させるステップは、同時に、前係留タブおよび後係留タブを展開させる。
【0220】
実施例13は、実施例9-12のいずれかに記載の方法であって、遠位カプセル部分はさらに、伸長シャフトを備え、伸長シャフトは、縦軸を有し、遠位カプセル部分の近位縁は、縦軸に対して横方向であって、カプセルの遠位部分を移動させるステップは、後係留タブの前に、前係留タブを展開させる、またはカプセルの遠位部分を移動させるステップは、前係留タブの前に、後係留タブを展開させる。
【0221】
実施例14は、実施例9-13のいずれかに記載の方法であって、遠位カプセル部分はさらに、遠位カプセル部分の近位縁に沿って波状または襞状縁を備え、カプセルの遠位部分を移動させるステップは、心室スカートおよび後係留タブの前に、前係留タブを展開させる、またはカプセルの遠位部分を移動させるステップは、心室スカートおよび前係留タブの前に、後係留タブを展開させる。
【0222】
実施例15は、実施例9-14のいずれかに記載の方法であって、送達システムの遠位部分はさらに、スロットを備え、スロットは、軸方向に配向され、送達システムの遠位部分を作動させるステップは、心室部分の一部をスロットの中に配置し、それによって、拘束をそこから除去し、その半径方向拡張を可能にする。
【0223】
実施例16は、実施例9-15のいずれかに記載の方法であって、前係留タブおよび後係留タブはそれぞれ、少なくとも1つの肘継手を備え、人工補綴弁はさらに、少なくとも1つの交連タブを備え、送達システムの遠位部分はさらに、カプセルおよび伸長シャフトを備え、カプセルは、遠位カプセル部分および近位カプセル部分を備え、伸長シャフトは、交連制御要素および肘継手制御要素を備え、交連制御要素および肘継手制御要素は、カプセルの内側に配置され、少なくとも1つの肘継手は、肘継手制御要素に結合され、少なくとも1つの交連タブは、交連制御要素に結合され、送達システムの遠位部分を作動させるステップは、カプセルの近位部分をカプセルの遠位部分から離れるように移動させ、それによって、交連制御要素および肘継手制御要素を拘束解除するステップを含む。
【0224】
実施例17は、実施例9-16のいずれかに記載の方法であって、送達システムの遠位部分を作動させるステップは、少なくとも1つの交連タブを展開するステップを含み、交連タブを交連制御要素から分離するステップは、その半径方向拡張を可能にする。
【0225】
実施例18は、実施例9-17のいずれかに記載の方法であって、送達システムの遠位部分を作動させるステップは、同時に、少なくとも1つの肘継手を肘継手制御要素から解放し、少なくとも1つの交連タブを交連制御要素から解放するステップを含む。
【0226】
実施例19は、実施例9-18のいずれかに記載の方法であって、送達システムの遠位部分を作動させるステップは、少なくとも1つの交連タブを交連制御要素から解放する前に、少なくとも1つの肘継手を肘継手制御要素から解放するステップ、または少なくとも1つの肘継手を肘継手制御要素から解放する前に、少なくとも1つの交連タブを交連制御要素から解放するステップを含む。
【0227】
実施例20は、実施例9-19のいずれかに記載の方法であって、交連制御要素はさらに、スロットを備え、または肘継手制御要素はさらに、スロットを備え、心室部分の遠位部分は、スロット内に配置される、突出部を備え、送達システムの遠位部分を作動させるステップは、突出部を交連制御要素または肘継手制御要素から分離するステップを含み、分離は、心室部分が拡張することを可能にする。
【0228】
実施例21は、人工補綴弁を患者の心臓の天然僧帽弁に送達するためのシステムであって、天然僧帽弁は、天然前尖と、天然後尖とを有し、心室部分および心房部分を備える、人工補綴弁であって、心室部分は、心室スカート、心室スカート上に配置される、前係留タブ、心室スカート上に配置される、後係留タブを備え、心房部分は、心房フランジを備える、人工補綴弁と、送達システムであって、人工補綴弁は、送達システムの遠位部分に結合される、送達システムとを備え、送達システムの遠位部分の作動は、人工補綴弁を拘束解除し、最初に、心室部分の半径方向拡張、心室部分後、心房部分の半径方向拡張を可能にする、システムである。
【0229】
実施例22は、実施例21に記載のシステムであって、送達システムの遠位部分はさらに、遠位カプセル部分および近位カプセル部分を備える、カプセルを備え、送達システムの遠位部分の作動は、近位カプセル部分を遠位カプセル部分から離れるように移動させるように構成される。
【0230】
実施例23は、実施例21-22のいずれかに記載のシステムであって、送達システムはさらに、遠位カプセル部分に結合される、伸長シャフトを備え、伸長シャフトの遠位移動は、遠位カプセル部分を近位カプセル部分に対して移動させ、遠位カプセル部分の遠位移動は、心室部分を拘束解除するように構成される。
【0231】
実施例24は、実施例21-23のいずれかに記載のシステムであって、遠位カプセル部分はさらに、遠位カプセル部分の近位縁に沿って直線縁を備え、カプセルの遠位部分の移動は、同時に、前係留タブおよび後係留タブを展開させるように構成される。
【0232】
実施例25は、実施例21-24のいずれかに記載のシステムであって、カプセルの遠位部分はさらに、伸長シャフトを備え、伸長シャフトは、縦軸を有し、カプセルの遠位部分の移動は、後係留タブの前に、前係留タブを展開させるように構成される、またはカプセルの遠位部分の移動は、前係留タブの前に、後係留タブを展開させるように構成される。
【0233】
実施例26は、実施例21-25のいずれかに記載のシステムであって、遠位カプセル部分はさらに、遠位カプセル部分の近位縁に沿って波状または襞状縁を備え、カプセルの遠位部分の移動は、心室スカートおよび後係留タブの前に、前係留タブを展開させるように構成される、または遠位カプセル部分の移動は、心室スカートおよび後係留タブの前に、後係留タブを展開するように構成される。
【0234】
実施例27は、実施例21-26のいずれかに記載のシステムであって、送達システムの遠位部分はさらに、スロットを備え、スロットは、軸方向に配向され、送達システムの遠位部分の作動は、心室部分の一部をスロットの中に配置し、それによって、拘束をそこから除去し、その半径方向拡張を可能にするように構成される。
【0235】
実施例28は、実施例21-27のいずれかに記載のシステムであって、前係留タブおよび後係留タブはそれぞれ、少なくとも1つの肘継手を備え、人工補綴弁はさらに、少なくとも1つの交連タブを備え、送達システムの遠位部分はさらに、カプセルおよび伸長シャフトを備え、カプセルは、遠位部分および近位部分を備え、伸長シャフトは、交連制御要素および肘継手制御要素を備え、交連制御要素および肘継手制御要素は、カプセルの内側に配置され、少なくとも1つの肘継手は、肘継手制御要素に結合され、少なくとも1つの交連タブは、交連制御要素に結合され、送達システムの遠位部分の作動は、カプセルの近位部分をカプセルの遠位部分から離れるように分離し、それによって、拘束をそこから除去するように構成される。
【0236】
実施例29は、実施例21-28のいずれかに記載のシステムであって、送達システムの遠位部分の作動は、少なくとも1つの交連タブを展開し、少なくとも1つの交連タブを交連制御要素から分離するように構成され、分離は、送達システムの遠位部分が拡張することを可能にするように構成される。
【0237】
実施例30は、実施例21-29のいずれかに記載のシステムであって、送達システムの遠位部分の作動は、少なくとも1つの肘継手を肘継手制御要素から展開するように構成され、交連制御要素からの少なくとも1つの交連タブの展開は、同時に生じる。
【0238】
実施例31は、実施例21-30のいずれかに記載のシステムであって、送達システムの遠位部分の作動は、交連制御要素からの少なくとも1つの交連タブの展開の前に、少なくとも1つの肘継手を肘継手制御要素から展開するように構成される、または交連制御要素からの少なくとも1つの交連タブの展開は、肘継手制御要素からの少なくとも1つの肘継手の展開前に生じる。
【0239】
実施例32は、実施例21-31のいずれかに記載のシステムであって、交連制御要素はさらに、スロットを備え、または肘継手制御要素はさらに、スロットを備え、心室部分の遠位部分は、スロット内に配置される、突出部を備え、送達システムの遠位部分の作動は、突出部を交連制御要素または肘継手制御要素から分離するように構成され、分離は、心室部分が拡張することを可能にするように構成される。
【0240】
実施例33では、実施例1-32のうちの任意の1つまたはそれらの任意の組み合わせの装置または方法は、随意に、列挙される全ての要素またはオプションが、使用または選択するために利用可能であるように構成されることができる。
【0241】
上記に詳述される実施形態は、詳細な説明の一部を形成する、付随の図面の参照を含む。図面は、例証として、本発明が実践され得る、具体的実施形態を示す。これらの実施形態は、本明細書では、「実施例」とも称される。そのような実施例は、図示または説明されるものに加え、要素を含むことができる。しかしながら、本発明者らはまた、図示または説明されるそれらの要素のみが提供される、実施例も想定する。さらに、本発明者らはまた、本明細書に図示または説明される特定の実施例(またはその1つ以上の側面)に対して、または他の実施例(またはその1つ以上の側面)に対してのいずれかにおいて、図示または説明されるそれらの要素(またはその1つ以上の側面)の任意の組み合わせまたは順列を使用する実施例も想定する。
【0242】
本書とそのように参照することによって組み込まれる任意の文書との間の矛盾する使用の場合、本書における使用が、優先される。
【0243】
本書では、用語「a」または「an」は、特許文書において一般的であるように、「少なくとも1つ」または「1つ以上の」の任意の他の事例または使用から独立して、1つまたは1つを上回るものを含むために使用される。本書では、用語「または」は、別様に示されない限り、非排他的である、すなわち、「AまたはB」が、「Aを含むが、Bを含まない」、「Bを含むが、Aを含まない」、および「AおよびBを含む」ものを指すためように使用される。本書では、用語「including(~を含む)」および「in which」は、個別の用語「comprising(~を備える)」および「wherein」の平易な英語均等物として使用される。また、以下の請求項では、用語「including(~を含む)」および「comprising(~を備える)」は、非制限的である、すなわち、請求項におけるそのような用語の後のそれらの列挙されたものに加え、要素を含む、システム、デバイス、物品、組成物、調合物、またはプロセスも、依然として、その請求項の範囲内に該当すると見なされる。さらに、以下の請求項では、用語「第1」、「第2」、および「第3」等は、単に、標識として使用され、その目的語に関して数値要件を課すことを意図するものではない。
【0244】
上記の説明は、制限的ではなく、例証的であるものと意図される。例えば、上記に説明される実施例(またはその1つ以上の側面)は、相互に組み合わせて使用されてもよい。他の実施形態も、上記の説明を精査することに応じて、当業者等によって、使用されることができる。要約は、読者が、本技術的開示の性質を迅速に確認することを可能にするために提供される。これは、請求項の範囲または意味を解釈または限定するために使用されるものではないことを理解されたい。また、上記の詳細な説明では、種々の特徴は、ともに群化され、本開示を簡潔にし得る。これは、請求されない開示される特徴が任意の請求項に不可欠であることを意図するものとして解釈されるべきではない。むしろ、本発明の主題は、特定の開示される実施形態の全て未満の特徴にあり得る。したがって、以下の請求項は、本明細書では、実施例または実施形態として、詳細な説明の中に組み込まれ、各請求項は、別個の実施形態として独立し、そのような実施形態は、種々の組み合わせまたは順列において、相互に組み合わせられることができることが想定される。本発明の範囲は、そのような請求項が権利を与えられる、均等物の全範囲とともに、添付の請求項を参照して決定されるべきである。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
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図12H
図12I
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図13B
図13C
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図13E
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図13I
図13J
図13K
図13L
図14
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図16A
図16B
図17-1】
図17-2】
図17-3】
図18-1】
図18-2】
図18-3】
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図25-8】
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