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特許7507284ロボットハンド、ロボット及びロボットシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ロボットハンド、ロボット及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240620BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20240620BHJP
   B65G 59/04 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B25J15/06 A
B25J15/00 F
B65G59/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023078586
(22)【出願日】2023-05-11
(62)【分割の表示】P 2021537321の分割
【原出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2023090980
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2019143711
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 秀士
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 祥一
(72)【発明者】
【氏名】森岡 宏仁
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-88624(JP,A)
【文献】特開2007-130711(JP,A)
【文献】特開2016-55995(JP,A)
【文献】特開平11-123687(JP,A)
【文献】特開2020-40788(JP,A)
【文献】特開平7-251937(JP,A)
【文献】特開平10-87074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00
B65G 59/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送するロボットハンドであって、
前記物品が載せられる載置面を有するベースと、
前記物品を吸着により保持する複数の吸着装置を含み且つ第1方向に移動する保持部と、
前記保持部を前記第1方向に移動させる駆動装置と、
撮像装置と、
前記駆動装置、及び前記複数の吸着装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記保持部は、前記第1方向に移動することで、保持している前記物品を前記載置面上に載せるように構成され、
前記制御装置は、
前記撮像装置によって撮像された前記物品を写し出す画像に基づき、前記物品のサイズを推定し、
推定された前記物品のサイズに対応して、前記複数の吸着装置のうちの第1吸着装置、前記複数の吸着装置のうちの第2吸着装置、又は、前記第1吸着装置及び前記第2吸着装置の両方に動作させて前記物品を吸着させる
ロボットハンド。
【請求項2】
前記複数の吸着装置は、前記保持部が有する第1面上の第1領域に配置される複数の前記第1吸着装置の第1群と、前記第1面上の第2領域に配置される複数の前記第2吸着装置の第2群とを含み、
前記制御装置は、
推定された前記物品のサイズに対応して、前記第1群と、前記第2群と、前記第1群及び前記第2群の両方とのうちから、吸着を実施する群を決定し、
決定した群に含まれる前記吸着装置に動作させる
請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記複数の吸着装置は、前記保持部が有する第1面上の第1領域に配置される複数の前記第1吸着装置の第1群と、前記第1面上の第2領域に配置される複数の前記第2吸着装置の第2群と、前記第1面上の第3領域に配置される複数の第3吸着装置の第3群とを含み、
前記第2領域は、前記第1領域に対して、前記第1方向と交差し且つ前記載置面に沿う方向である第2方向に配置され、
前記第3領域は、前記第1領域及び前記第2領域のいずれか又は両方に対して、前記載置面から離れる方向である第3方向に配置され、
前記制御装置は、
推定された前記物品のサイズに対応して、前記第1群と前記第2群と前記第3群とのうちの1つ以上を含む群の組み合わせを、吸着を実施する群として決定し、
決定した群に含まれる前記吸着装置に動作させる
請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項4】
ロボットアームと接続される取付基部と、
前記取付基部に取り付けられる前記撮像装置とを備え、
前記取付基部は、前記ベースと接続される収容部を含み、
前記収容部は、前記第1方向に移動した前記保持部を収容する収容空間を含み、
前記撮像装置は、前記収容部に配置される
請求項1からのいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記保持部は、前記駆動装置に移動される基部と、前記複数の吸着装置を支持する支持体と、前記基部と前記支持体とを連結する昇降装置とを含み、
前記昇降装置は、前記基部に対して前記支持体を、前記載置面に接近する方向及び前記載置面から離れる方向に移動する
請求項1からのいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記保持部は、前記駆動装置に移動される基部と、前記複数の吸着装置を支持する支持体と、前記基部と前記支持体とを連結する旋回装置とを含み、
前記旋回装置は、前記基部に対して前記支持体を、前記載置面に交差する方向に延びる第1軸と、前記第1方向と交差し且つ前記載置面に沿う方向に延びる第2軸との周りに旋回する
請求項1からのいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載のロボットハンドと、
前記ロボットハンドが端部に接続されたロボットアームとを備え
前記制御装置は、前記ロボットハンドの前記駆動装置の動作と、前記ロボットアームの動作とを制御す
ロボット。
【請求項8】
記制御装置は、前記撮像装置によって撮像された前記物品を写し出す画像に基づき前記ロボットアームに動作させて、前記物品に対する前記ロボットハンドの位置及び姿勢を制御する
請求項に記載のロボット。
【請求項9】
前記撮像装置は、前記保持部と一緒に移動するように前記保持部に配置される
請求項に記載のロボット。
【請求項10】
前記保持部は、配列された前記複数の吸着装置を含み、
前記複数の吸着装置は、前記撮像装置の撮像方向と交差する方向で前記撮像装置の周囲に配置される
請求項に記載のロボット。
【請求項11】
請求項から10のいずれか一項に記載のロボットと、
前記ロボットによって移送される前記物品を受け取ることができる受付装置とを備え、
前記ベースは、前記第1方向と反対方向の端部に少なくとも1つの切り欠き部を有し、
前記受付装置は、前記切り欠き部を上下方向に通過することができるように構成される少なくとも1つの突出部を含み、
前記ロボットハンドは、前記ロボットアームによって前記受付装置へ向かって下降されることで、前記少なくとも1つの切り欠き部に下方から前記少なくとも1つの突出部を挿入し、前記載置面に載せられた前記物品を前記少なくとも1つの突出部に支持させることができるように構成される
ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットハンド、ロボット、ロボットシステム及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを搬送するためにロボットが用いられている。例えば、特許文献1は、ワークを吸着することで搬送する複数の吸着アセンブリを備えるロボットハンドを開示している。このロボットハンドは、複数の吸着アセンブリを移動することができるように構成され、それにより、複数の吸着アセンブリ間の距離を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-60039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、物流分野においてロボットを用いた作業の自動化が進められている。例えば、段ボールケースの搬送にロボットが適用される場合がある。コンテナ又はトラックの箱状の荷台のような周囲が囲まれた空間内に、複数の段ボールケースが積み上げられた状態で収容されている場合がある。この場合、ロボットは、段ボールケースに側方からロボットハンドをアプローチさせ引き出し搬送する必要がある。しかしながら、特許文献1のロボットハンドは、このような搬送に適さない。
【0005】
そこで、本開示は、ワーク等の物品に対して側方からアプローチし搬送することを可能にするロボットハンド、ロボット、ロボットシステム及び搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係るロボットハンドは、物品を搬送するロボットハンドであって、前記物品を保持し且つ第1方向に移動する保持部と、前記物品を載せることができる搬送面を有し且つ前記第1方向に前記搬送面を移動させるように駆動する駆動ベルトと、前記駆動ベルトを駆動する第1駆動装置とを備え、前記保持部は、前記第1方向に移動することで、保持している前記物品を前記搬送面上に載せるように構成される。
【0007】
本開示の一態様に係るロボットは、本開示の一態様に係るロボットハンドと、前記ロボットハンドが端部に接続されたロボットアームと、前記ロボットハンドの前記駆動装置の動作と、前記ロボットアームを駆動する第5駆動装置の動作とを制御する制御装置とを備える。
【0008】
本開示の一態様に係るロボットシステムは、本開示の一態様に係るロボットと、前記ロボットによって移送される前記物品を受け取ることができる受付装置とを備え、前記ロボットハンドは、前記物品を載せることができるベースをさらに備え、前記ベースは、前記第1方向と反対方向の端部に少なくとも1つの切り欠き部を有し、前記受付装置は、前記切り欠き部を上下方向に通過することができるように構成される少なくとも1つの突出部を含み、前記ロボットハンドは、前記ロボットアームによって前記受付装置へ向かって下降されることで、前記少なくとも1つの切り欠き部に下方から前記少なくとも1つの突出部を挿入し、前記ベースに載せられた前記物品を前記少なくとも1つの突出部に支持させることができるように構成される。
【0009】
本開示の一態様に係る搬送方法は、本開示の一態様に係るロボットを用いて物品を搬送する搬送方法であって、前記ロボットアームに前記ロボットハンドの前記保持部を前記物品に接近させて、前記保持部に前記物品を保持させ、前記ロボットハンドに、前記物品を保持する前記保持部を前記第1方向に移動させつつ、前記第1方向に前記搬送面を移動させるように前記駆動ベルトを駆動させ、前記物品を前記搬送面の上に移動させる。
【0010】
本開示の一態様に係る搬送方法は、本開示の一態様に係るロボットを用いて載置面に載置された物品を搬送する搬送方法であって、前記ロボットハンドは、前記搬送面と交差する方向で前記搬送面に接近する方向及び離れる方向に前記保持部を移動させる第3駆動装置をさらに備え、前記ロボットアームに前記ロボットハンドの姿勢を、前記物品から離れるに従って前記載置面から離れるように前記搬送面が傾斜する第1姿勢にさせ、前記ロボットアームに前記第1姿勢の前記ロボットハンドの前記保持部を前記物品に接近させて、前記保持部に前記物品を保持させ、前記ロボットハンドに、前記物品を保持する前記保持部を前記搬送面から離れる方向に移動させ、前記ロボットハンドに、前記搬送面から離れる方向に移動させた前記保持部を前記第1方向に移動させつつ、前記第1方向に前記搬送面を移動させるように前記駆動ベルトを駆動させ、前記物品を前記搬送面の上に移動させる。
【0011】
本開示の一態様に係る搬送方法は、本開示の一態様に係るロボットシステムを用いて物品を搬送する搬送方法であって、前記ロボットアームに前記ロボットハンドの前記保持部を前記物品に接近させて、前記保持部に前記物品を保持させ、前記ロボットハンドに、前記物品を保持する前記保持部を前記第1方向に移動させつつ、前記第1方向に前記搬送面を移動させるように前記駆動ベルトを駆動させ、前記物品を前記搬送面の上に移動させ、前記ロボットアームに、前記ベースの前記少なくとも1つの切り欠き部が前記受付装置の前記少なくとも1つの突出部の上方に位置するように、前記ロボットハンドを移動させ、前記ロボットアームに、前記少なくとも1つの切り欠き部に下方から前記少なくとも1つの突出部を挿入するように、前記ロボットハンドを下降させ、前記ロボットアームに、前記物品を前記少なくとも1つの突出部上に載せた状態で前記受付装置から退避するように前記ロボットハンドを移動させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の技術によれば、物品に対して側方からアプローチし搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施の形態に係るロボットシステムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係るロボットの構成の一例を示す側面図である。
図3図3は、実施の形態に係るロボットハンドの一状態の構成の一例を示す斜視図である。
図4図4は、図3のロボットハンドを背面方向から見た斜視図である。
図5図5は、実施の形態に係るロボットハンドの別の一状態の構成の一例を示す斜視図である。
図6図6は、図5のロボットハンドを背面方向から見た斜視図である。
図7図7は、図3のロボットハンドに対して駆動ベルトに沿い且つ垂直である断面を方向VIIで見た断面側面図である。
図8図8は、第1方向で見たときの図3の保持部を示す正面図である。
図9図9は、第2方向で見たときの図3の保持部を示す背面図である。
図10図10は、図7において昇降装置が伸長した状態を示すロボットハンドの断面側面図である。
図11図11は、図9において昇降装置が伸長した状態を示す保持部の背面図である。
図12図12は、実施の形態に係る制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図13図13は、実施の形態に係る制御装置のCPUとサーボモータとの構成の一例を示すブロック図である。
図14図14は、実施の形態に係るロボットシステムの第1の動作の一例を示すフローチャートである。
図15図15は、実施の形態に係るロボットシステムの第1の動作のうちの一状態を示す側面図である。
図16図16は、実施の形態に係るロボットシステムの第1の動作のうちの一状態を示す側面図である。
図17図17は、実施の形態に係るロボットシステム1の第2の動作の一例を示すフローチャートである。
図18図18は、実施の形態に係るロボットシステム1の第2の動作のうちの一状態を示す側面図である。
図19図19は、実施の形態に係るロボットシステム1の第2の動作のうちの一状態を示す側面図である。
図20図20は、実施の形態に係るロボットシステム1の第2の動作のうちの一状態を示す側面図である。
図21図21は、変形例1に係るロボットハンドの構成の一例を図4と同様に示す斜視図である。
図22図22は、変形例2に係るロボットハンドの構成の一例を図9と同様に示す背面図である。
図23図23は、変形例3に係るロボットハンドの構成の一例を図3と同様に示す斜視図である。
図24図24は、変形例3に係るロボットハンドの構成の一例を図5と同様に示す斜視図である。
図25図25は、第1方向で見たときの図23の保持部を図8と同様に示す正面図である。
図26図26は、変形例3に係るロボットハンド上での物品の積載状態の一例を示す正面図である。
図27図27は、変形例3に係るロボットハンド上での物品の積載状態の一例を示す正面図である。
図28図28は、変形例3に係るロボットハンド上での物品の積載状態の一例を示す正面図である。
図29図29は、積載物品を降ろすための変形例3に係るロボットハンドの動作の一例を示す斜視図である。
図30図30は、積載物品を降ろすための変形例3に係るロボットハンドの動作の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本開示の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、添付の図面における各図は、模式的な図であり、必ずしも厳密に図示されたものでない。さらに、各図において、実質的に同一の構成要素に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。また、本明細書及び特許請求の範囲では、「装置」とは、1つの装置を意味し得るだけでなく、複数の装置からなるシステムも意味し得る。
【0015】
<ロボットシステムの構成>
実施の形態に係るロボットシステム1の構成を説明する。図1は、実施の形態に係るロボットシステム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、以下の実施の形態において、ロボットシステム1は、ロボット100を用いて、ある場所に積み上げられた物品Aを他の場所又は装置に移送する作業を行うとして説明する。また、本実施の形態では、移送対象の物品Aは、段ボールケースである。なお、物品Aは、所定の形状を有する他の物体であってもよく、所定の形状を有しない物体であってもよい。
【0016】
実施の形態に係るロボットシステム1は、ロボット100と、入力装置200と、制御装置300と、撮像装置400とを構成要素として備える。本実施の形態では、ロボット100は、床面等の上で様々な場所に自律的に移動することができるが、他の装置によって移動されるように構成されてもよく、固定して配置されてもよい。制御装置300は、ロボット100に配置され、入力装置200は、ロボット100から離れた位置に配置されるが、それぞれの配置位置はこれらに限定されない。
【0017】
[ロボット]
図2は、実施の形態に係るロボット100の構成の一例を示す側面図である。図1及び図2に示すように、ロボット100は、ロボット本体110と、機器収容部150と、搬送車160とを備える。ロボット本体110は、ロボットアーム120とロボットハンド(「エンドエフェクタ」とも呼ばれる)130とを備える。ロボット本体110及び機器収容部150は、搬送車160に搭載される。
【0018】
搬送車160は、床面等の上でロボット100を移動させることが可能であり、走行手段としての車輪160aと、車輪160aを駆動する搬送駆動装置160b(図示せず)とを備えるが、これに限定されず、クローラ(「キャタピラ(登録商標)」とも呼ばれる)等の他の走行手段を備えてもよい。搬送駆動装置160bは、電力を動力源とし、電気モータとしてサーボモータを有するが、これに限定されない。搬送車160は、AGV(無人搬送車:Automated Guided Vehicle)等であってもよい。
【0019】
機器収容部150は、制御装置300、電源装置170及び負圧発生装置180等の機器を収容する。電源装置170は、電力を消費するロボット100の各構成要素に電力を供給する。電源装置170は、一次電池、二次電池又は燃料電池等の電池を備えてもよく、商用電源又はロボット100の外部の装置等の外部電源と有線等を介して接続されてもよく、電池を備え且つ外部電源と接続されてもよい。電源装置170は、電池の電力及び/又は外部電源の電力を各構成要素に供給する。一次電池は、電力の放電のみが可能である。二次電池は、電力の充放電が可能である電池であり、鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池等であってもよい。
【0020】
負圧発生装置180は、後述するロボットハンド130の吸着装置134aak(k=1~nの自然数)に負圧を発生させる。負圧発生装置180の構成は、吸着装置134aakに負圧を発生させることができれば特に限定されず、既存のいかなる構成が用いられてもよい。例えば、負圧発生装置180は、空気を吸引することで負圧又は真空を発生する真空ポンプ又は空気圧シリンダの構成を有してもよく、圧縮空気を送入することで負圧又は真空を発生するエジェクタの構成を有してもよい。負圧発生装置180の動作は、制御装置300によって制御される。
【0021】
[ロボットアーム]
ロボットアーム120の基部は、搬送車160に取り付け固定され、ロボットアーム120の先端部には、ロボットハンド130が取り付けられている。ロボットハンド130は、積み上げられた複数の物品Aの中の1つの物品Aに対して側方からアプローチし、当該物品Aを側方に引き出しその上に載せることで搬送するように構成されている。ロボットアーム120及びロボットハンド130の動作は、制御装置300によって制御される。ロボットアーム120は、以下に説明するように垂直多関節型のロボットアームとして構成されるが、これに限定されず、例えば、水平多関節型、極座標型、円筒座標型、直角座標型、又はその他の型式のロボットアームとして構成されてもよい。
【0022】
ロボットアーム120は、その基部から先端に向かって順に配置されたリンク120a~120fと、リンク120a~120fを順次接続する関節JT1~JT6と、関節JT1~JT6それぞれを回転駆動するアーム駆動装置M1~M6とを備える。アーム駆動装置M1~M6の動作は制御装置300によって制御される。アーム駆動装置M1~M6はそれぞれ、電力を動力源とし、これらを駆動する電気モータとしてサーボモータを有するが、これに限定されない。アーム駆動装置M1~M6は第5駆動装置の一例である。なお、ロボットアーム120の関節の数量は、6つに限定されず、7つ以上であってもよく、1つ以上5つ以下であってもよい。
【0023】
リンク120aは搬送車160に取り付けられる。リンク120fの先端部は、メカニカルインタフェースを構成し、ロボットハンド130と接続される。関節JT1は、搬送車160とリンク120aの基端部とを、搬送車160を支持する床面に対して垂直である鉛直方向の軸周りに回転可能に連結する。関節JT2は、リンク120aの先端部とリンク120bの基端部とを、当該床面に平行である水平方向の軸周りに回転可能に連結する。関節JT3は、リンク120bの先端部とリンク120cの基端部とを、水平方向の軸周りに回転可能に連結する。関節JT4は、リンク120cの先端部とリンク120dの基端部とを、リンク120cの長手方向の軸周りに回転可能に連結する。関節JT5は、リンク120dの先端部とリンク120eの基端部とを、リンク120dの長手方向と直交する方向の軸周りに回転可能に連結する。関節JT6は、リンク120eの先端部とリンク120fの基端部とを、リンク120eに対する捻れ回転可能に連結する。
【0024】
[ロボットハンド]
図3は、実施の形態に係るロボットハンド130の一状態の構成の一例を示す斜視図である。図4は、図3のロボットハンド130を背面方向から見た斜視図である。図5は、実施の形態に係るロボットハンド130の別の一状態の構成の一例を示す斜視図である。図6は、図5のロボットハンド130を背面方向から見た斜視図である。図5及び図6では、後述する保持部134が、図3及び図4に対して第1方向D1へスライドしている。図7は、図3のロボットハンド130に対して駆動ベルト133cに沿い且つ垂直である断面を方向VIIで見た断面側面図である。
【0025】
図3図6に示すように、ロボットハンド130は、取付基部131と、ベース132と、ベルト駆動機構133と、保持部134と、ベルト駆動装置135とを備える。保持部134は、ベース132に対して方向D1及びD2に移動可能である。
【0026】
ベース132は、保持部134を支持し、物品Aをその上に載せることができる。ベース132は、例えば、第1方向D1を長手方向とする矩形状の板状部材で構成される。ベース132は、その上面に摺動材136及び137を備える。摺動材136及び137は、第1方向D1に延びる帯状の部材であり、第5方向D5に間隔をあけて配置されている。本実施の形態では、摺動材136及び137は平行に延びるが、これに限定されない。ベース132の上面は、第3方向D3に向いた面である。
【0027】
ここで、第1方向D1は、ベース132の長手方向に沿い且つベース132の端部132aから端部132bに向かう方向である。端部132a及び132bはベース132の長手方向での両側の端部である。第2方向D2は第1方向D1と反対方向である。第5方向D5は、方向D1及びD2と垂直であり且つ摺動材136から摺動材137に向かう方向であり、ベース132の上面に沿う方向である。第6方向D6は第5方向D5と反対方向である。第3方向D3は、方向D1、D2、D5及びD6と垂直であり且つベース132から摺動材136及び137に向かう方向である。第4方向D4は第3方向D3と反対方向である。
【0028】
摺動材136及び137はそれぞれ、第3方向D3で同等の高さであり且つ滑らかで平坦である上表面136a及び137aを有している。摺動材136及び137は、例えば、物品Aに対する摩擦係数が低く且つ物品Aの表面に与える損傷等の影響が低い材料で構成される。摺動材136及び137の構成材料の例は、樹脂等である。樹脂で構成された摺動材136及び137は、ロボットハンド130の軽量化にも貢献する。
【0029】
取付基部131は、ロボットアーム120のリンク120fと接続される。取付基部131は、ベース132に対して第3方向D3に配置され且つ固定され、摺動材136及び137に対して第1方向D1に配置される。取付基部131は、収容部131aと接続部131bとを含む。収容部131aは、方向D5及びD6でベース132を跨ぐ逆U字形状の部材で構成され、その内側に収容空間131a1を形成する。収容空間131a1は、第1方向D1に移動した保持部134の構成要素を収容する。接続部131bは、収容部131aの第1方向D1の部位と接続され、リンク120fと接続される。
【0030】
ベルト駆動機構133は、摺動材136及び137の間でベース132に配置されている。図7に示すように、ベルト駆動機構133は、回転自在なローラ133a及び133bと、無端輪状の駆動ベルト133cとを備える。ローラ133a及び133bは第1方向D1に間隔をあけてベース132に配置され、ローラ133a及び133bの回転軸の方向は第5方向D5である。ローラ133a及び133bはそれぞれ、ベース132の端部132a及び132b(図3参照)の近傍に配置され、ベース132を第3方向D3に貫通する貫通穴に埋め込まれている。
【0031】
駆動ベルト133cは、上記の2つの貫通穴を通ってローラ133a及び133bに掛け渡されている。駆動ベルト133cは、方向D3及びD4それぞれに向いたベース132の上面及び下面の両側で第1方向D1に延びる。ベース132の上面において、駆動ベルト133cは、第1方向D1に延び且つ第3方向D3に向いた搬送面133c1をその外周面に形成する。駆動ベルト133cは、ローラ133a及び/又は133bが回転駆動されることでこれらの周囲を周回し、搬送面133c1を第1方向D1又は第2方向D2に移動させる。なお、駆動ベルト133cは、無端輪状でなくてもよい。例えば、駆動ベルト133cは、ローラ133a及び133bに巻き付けられてもよい。ローラ133a及び133bは、回転して駆動ベルト133cを繰り出す又は巻き付けることで、搬送面133c1を第1方向D1又は第2方向D2に移動させる。
【0032】
第3方向D3での搬送面133c1の高さは、摺動材136及び137の上表面136a及び137aの高さと同等である。このため、物品Aは、搬送面133c1並びに上表面136a及び137aの上に同時に載ることができる。駆動ベルト133cは、搬送面133c1を移動させることで、上表面136a及び137a上の物品Aを第1方向D1又は第2方向D2に移動させることができる。
【0033】
ベルト駆動装置135は、ローラ133bの近傍に配置され、ローラ133bを回転駆動する。ベルト駆動装置135は、電気モータとしてのサーボモータ135aと、減速機135bとを備える。減速機135bは、サーボモータ135aの回転速度を減速し且つ回転駆動力を増加させて、当該回転駆動力をローラ133bに伝達する。ベルト駆動装置135は第1駆動装置の一例である。
【0034】
図3図6に示すように、保持部134は、駆動ベルト133cに対して第3方向D3に配置され、方向D1及びD2に移動可能である。保持部134は、付着部134aと、支持体134bと、固定部134cと、昇降装置134dとを含む。
【0035】
図4及び図7に示すように、支持体134bは、付着部134aを支持し、昇降装置134dを介して固定部134cと接続される。例えば、支持体134bは矩形状の板状部材で構成され、摺動材136及び137並びに搬送面133c1に対して第3方向D3に起立している。支持体134bは、方向D1及びD2それぞれに向いた表面134b1及び134b2を有する。付着部134aは表面134b2上に配置され、昇降装置134dは表面134b1上に配置される。
【0036】
図8は、第1方向D1で見たときの図3の保持部134を示す正面図である。図9は、第2方向D2で見たときの図3の保持部134を示す背面図である。図8に示すように、付着部134aは、表面134b2上に配置された複数の吸着装置134aak(k=1~nの自然数)を含む。各吸着装置134aakは、例えばノズル状の中空の形状を有するが、形状はこれに限定されない。本実施の形態では、各吸着装置134aakは、ベローズ(蛇腹)状の中空形状を有し、伸縮可能である。このため、物品Aの表面が不陸又は傾斜等を有し、支持体134bの表面134b2と平行でない場合でも、複数の吸着装置134aakは当該表面に接触し吸着することができる。各吸着装置134aakは、第2方向D2に存在する物品Aを吸着するように、第2方向D2へ方向付けられている。これにより、保持部134は、複数の吸着装置134aakを用いて第2方向D2に存在する物品Aを保持するように、指向されている。
【0037】
本実施の形態では、20個の吸着装置134aa1~134aa20が配置されている。吸着装置134aa1~134aa20は、第5方向D5の4つの行と第3方向D3の5つの列とを形成する4行×5列に配列されている。吸着装置134aa1~134aa12は、第1吸着装置群G1を構成し、4行×3列で矩形状に配列される。吸着装置134aa13~134aa16は、第2吸着装置群G2を構成し、第1吸着装置群G1に対して第5方向D5の位置で4行×1列に配列される。吸着装置134aa17~134aa20は、第3吸着装置群G3を構成し、第1吸着装置群G1に対して第6方向D6の位置で4行×1列に配列される。
【0038】
図7及び図8に示すように、上記のような吸着装置134aa1~134aa20は、駆動ベルト133cの搬送面133c1と交差する方向、具体的には搬送面133c1と略垂直な方向D3及びD4で、搬送面133c1に接近する方向及び離れる方向に配列されている。さらに、搬送面133c1から遠位の吸着装置134aakは、搬送面133c1から近位の吸着装置134aakよりも、第1方向D1側に配置されている。支持体134bは、搬送面133c1と垂直な方向に対して方向D1及びD2で僅かに傾斜し、具体的には、搬送面133c1から第3方向D3へ離れるに従って第1方向D1へ向かうように僅かに傾斜している。
【0039】
図8及び図9に示すように、吸着装置134aa1~134aa12は、表面134b1上の接続口134baを介して、第1配管系統181(図示せず)と連通する。吸着装置134aa13~134aa16は、表面134b1上の接続口134bbを介して、第2配管系統182(図示せず)と連通する。吸着装置134aa17~134aa20は、表面134b1上の接続口134bcを介して、第3配管系統183(図示せず)と連通する。配管系統181~183はそれぞれ、別々の配管系統であり負圧発生装置180と接続される。配管系統181~183の配管等の保持部134から延びる配管及び電気ケーブル等は、ベース132に配置された収容ダクト138(図3参照)内を通って負圧発生装置180等の接続先に延びる。例えば、収容ダクト138は、自在に曲がることができるケーブルベア(登録商標)であるが、配管及び電気ケーブル等を収容できればよい。配管系統181~183のうちの任意の2つは第1系統及び第2系統の一例である。
【0040】
負圧発生装置180は、配管系統181~183の少なくとも1つを選択して当該配管系統に負圧を発生させるように構成される。つまり、負圧発生装置180は、複数の吸着装置群G1~G3の少なくとも1つを選択して吸着を実行させることができる。例えば、物品Aの形状及びサイズ等に対応して、負圧を発生させる吸着装置群G1~G3を選択することで、物品Aの効率的な吸着が可能になる。
【0041】
図7及び図9に示すように、固定部134cは、支持体134bを駆動ベルト133cに、具体的にはベース132の上面の駆動ベルト133cの部分に固定する。支持体134bは、固定部134cを介して、駆動ベルト133cによって搬送面133c1と一緒に方向D1及びD2に移動される。固定部134cは、基板134c1と、挟持部134c2と、スライドガイド134c3a及び134c3bと、昇降ガイド134c4a及び134c4bとを含む。基板134c1と、スライドガイド134c3a及び134c3bと、昇降ガイド134c4a及び134c4bとは一体化されている。
【0042】
基板134c1は、板状部材であり、駆動ベルト133cに対して第3方向D3に配置され、駆動ベルト133cの上方を横切って第5方向D5に延びる。基板134c1は方向D3及びD4それぞれに向いた表面134c1a及び134c1bを有する。
【0043】
挟持部134c2は、ベース132と駆動ベルト133cとの間に配置される部材である。挟持部134c2と基板134c1の表面134c1bとは、駆動ベルト133cを挟持し互いに接続されることで、基板134c1を駆動ベルト133cに固定する。
【0044】
スライドガイド134c3a及び134c3bは、基板134c1の表面134c1b上で方向D5及びD6での駆動ベルト133cの両側に配置され固定されている。スライドガイド134c3a及び134c3bそれぞれの凹部は、帯状突起であるベースガイド132c及び132dと方向D1及びD2にスライド可能に嵌合する。ベースガイド132c及び132dは、ベース132に固定又は一体化され、方向D5及びD6での駆動ベルト133cの両側で駆動ベルト133cに沿って第1方向D1に延び、本実施の形態では互いに平行である。スライドガイド134c3a及び134c3b並びにベースガイド132c及び132dは、駆動ベルト133cの両側で互いから離れて配置されるため、ベース132に対する基板134c1の方向D1及びD2の移動を案内しつつ、意図しない方向への基板134c1の変位を抑える。
【0045】
昇降ガイド134c4a及び134c4bは、第3方向D3へ延びる柱状部材であり、本実施の形態では互いに平行である。昇降ガイド134c4a及び134c4bは、基板134c1の表面134c1a上で、方向D5及びD6での昇降装置134dの両側に配置され固定されている。昇降ガイド134c4a及び134c4bはそれぞれ、支持体ガイド134b3のガイド穴134b3a及び134b3bを貫通する。支持体ガイド134b3は、支持体134bの表面134b1から第1方向D1へ突出する板状部材であり、方向D3及びD4に貫通するガイド穴134b3a及び134b3bを有する。昇降ガイド134c4a及び134c4b並びに支持体ガイド134b3は、基板134c1に対する支持体134bの方向D3及びD4の移動を案内する。第5方向D5に離れて配置された昇降ガイド134c4a及び134c4bは、支持体134bが第3方向D3の軸を中心として基板134c1に対して回動することを抑える。
【0046】
昇降装置134dは、基板134c1の表面134c1a上に配置され、支持体ガイド134b3と基板134c1とに接続されている。支持体134bは、昇降装置134dを介して基板134c1によって支持される。昇降装置134dは、方向D3及びD4に伸縮し、基板134c1に対して支持体ガイド134b3を方向D3及びD4に移動させる。つまり、昇降装置134dは、支持体134bをベース132に対して方向D3及びD4に昇降させる。昇降装置134dは第3駆動装置の一例である。
【0047】
本実施の形態では、昇降装置134dは空気圧シリンダで構成されるが、これに限定されず、固定部134cに対して支持体134bを方向D3及びD4に昇降させるものであればよい。例えば、昇降装置134dは、油圧若しくは電動のシリンダ、電動リニアアクチュエータ、又は、ネジ機構等を備えてもよい。ネジ機構は、例えば、棒ネジと、棒ネジに螺合するボールナット等のナットとを含み、ナットの回転運動を棒ネジの直線運動に変換する機構である。昇降装置134dは、電力により昇降駆動する場合、例えばサーボ制御されるようなモータ又はリニアアクチュエータ等を備えてもよい。
【0048】
図10は、図7において昇降装置134dが伸長した状態を示すロボットハンド130の断面側面図である。図11は、図9において昇降装置134dが伸長した状態を示す保持部134の背面図である。
【0049】
図7及び図10に示すように、昇降装置134dは、シリンダ134d1と、シリンダ134d1内のピストン134d2とを含む。シリンダ134d1は、支持体ガイド134b3に固定され、ピストン134d2は、基板134c1にロッド134d3を介して固定される。ピストン134d2は、シリンダ134d1内の空間を、ピストン134d2に対して第3方向D3に位置する第1チャンバ134d4と、ピストン134d2に対して第4方向D4に位置する第2チャンバ134d5とに区分する。チャンバ134d4及び134d5はそれぞれ、配管系統184及び185(図示せず)を介して負圧発生装置180と接続される。負圧発生装置180は、空気を送る又は吸引することでチャンバ134d4及び134d5内の空気圧の関係を変更し、ピストン134d2に対してシリンダ134d1を方向D3又はD4に移動させる。
【0050】
図9に示すように、昇降装置134dは、収縮しシリンダ134d1を第4方向D4に移動させることで、支持体134bを第4方向D4に移動させ搬送面133c1に接近させる。図11に示すように、昇降装置134dは、伸長しシリンダ134d1を第3方向D3に移動させることで、支持体134bを第3方向D3に移動させ搬送面133c1から離す。なお、昇降装置134dの昇降方向は、搬送面133c1と垂直な方向D3及びD4に限定されず、搬送面133c1と交差する方向であってもよい。
【0051】
[撮像装置]
撮像装置400は、ロボット100が処理する対象の物品Aを撮像する。図3及び図8に示すように、撮像装置400は、ロボットハンド130、具体的には取付基部131に配置されるが、処理対象の物品Aを撮像できる位置であればよい。撮像装置400は、被写体までの距離等の撮像装置400に対する被写体の3次元位置等を検出するための画像を撮像するカメラ401と、被写体を照明する光源402とを備える。
【0052】
例えば、カメラ401は、デジタル画像を撮像するカメラであり、ステレオカメラ、単眼カメラ、TOFカメラ(トフカメラ:Time-of-Flight-Camera)、縞投影等のパターン光投影カメラ、又は光切断法を用いたカメラ等の構成を有してもよい。本実施の形態では、カメラ401はステレオカメラである。光源402の例は、LED(light emitting diode)及びストロボ等である。カメラ401及び光源402は、第2方向D2に向けて指向される。撮像装置400は、物品Aを撮像した画像に基づき、当該物品Aの3次元の位置及び姿勢(向き)を検出し制御装置300に出力してもよく、当該画像を制御装置300に出力し、制御装置300が上記3次元の位置及び姿勢を演算してもよい。
【0053】
[入力装置]
図1に示す入力装置200は、ロボットシステム1を管理するユーザによる指令及び情報等の入力を受け付け、当該指令及び情報等を制御装置300に出力する。入力装置200は、制御装置300と有線通信又は無線通信を介して接続される。有線通信及び無線通信の形式はいかなる形式であってもよい。例えば、入力装置200は、ロボット100が処理する物品Aの種類、形状、サイズ及び規格等の物品の構成を特定するための情報の入力を受け付けてもよい。入力装置200の構成は特に限定しないが、本実施の形態では、ボタン、キー及び/又はタッチパネル等を含む端末装置である。
【0054】
[制御装置の構成]
図12は、実施の形態に係る制御装置300の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図12に示すように、制御装置300は、統括制御部301と、撮像制御部302と、画像処理部303と、搬送制御部304と、アーム制御部305と、ベルト駆動制御部306と、吸着制御部307と、昇降制御部308と、記憶部309とを機能的構成要素として含む。
【0055】
記憶部309を除く制御装置300の各機能的構成要素の機能は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなるコンピュータシステムにより実現されてもよく、電子回路又は集積回路等の専用のハードウェア回路により実現されてもよく、上記コンピュータシステム及びハードウェア回路の組み合わせにより実現されてもよい。
【0056】
例えば、CPUはプロセッサであり、ロボットシステム1の処理及び動作の全体を制御する。ROMは不揮発性半導体メモリ等で構成され、CPUに処理及び動作を制御させるためのプログラム及びデータ等を格納する。RAMは揮発性半導体メモリ等で構成され、CPUで実行するプログラム及び処理途中又は処理済みのデータ等を一時的に格納する。例えば、CPUが動作するためのプログラムは、ROM等に予め保持されている。CPUは、ROM等からプログラムをRAMに読み出して展開する。CPUは、RAMに展開されたプログラム中のコード化された各命令を実行する。
【0057】
記憶部309の機能は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリなどの半導体メモリ、ハードディスク(HDD:Hard Disc Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶装置であるメモリによって実現される。
【0058】
制御装置300は、CPU、ROM、RAM及び/又はハードウェア回路と、半導体メモリ、ハードディスク及びSSD等のメモリとをハードウェアとして備えてもよい。
【0059】
統括制御部301は、入力装置200から指令等の入力を受け付け、当該入力及びプログラム等に従って、他の機能的構成要素それぞれに指令を出力する。統括制御部301は、他の機能的構成要素それぞれからその動作の情報を取得し、取得した情報を用いて、他の機能的構成要素それぞれを連携、協調及び/又は協働して動作させる。統括制御部301は、カメラ401、光源402、搬送駆動装置160b、アーム駆動装置M1~M6、ベルト駆動装置135、負圧発生装置180、吸着装置134aa1~134aa20、及び昇降装置134d等のうちの少なくとも1つの装置を動作させつつ、他の少なくとも1つの装置を動作させることができる。
【0060】
記憶部309は、種々の情報を記憶し、記憶している情報の読み出しを可能にする。記憶部309は、ロボット100が処理し得る物品の種類、形状、サイズ及び規格等を含む構成の情報を、テンプレート等として記憶する。記憶部309は、作業場所等の地図の情報、カメラ401によって撮像された画像、及びプログラム等も記憶してもよい。
【0061】
撮像制御部302は、撮像装置400のカメラ401及び光源402の動作を制御する。例えば、撮像制御部302は、ロボット100が物品Aの移送を開始する直前等の所定のタイミングでカメラ401に撮像させてもよい。撮像制御部302は、カメラ401の撮像のタイミングで光源402に照明させてもよい。
【0062】
画像処理部303は、カメラ401によって撮像された画像と、記憶部309の物品のテンプレートとを用いて、当該画像に写し出される物品Aを抽出し、カメラ401に対する当該物品Aの3次元の位置及び姿勢等を検出する。画像処理部303は、当該3次元の位置及び姿勢等をアーム制御部305等に出力する。制御装置300は、物品Aの3次元の位置及び姿勢等に基づきロボット100を制御する。
【0063】
搬送制御部304は、搬送駆動装置160bの動作を制御する。搬送制御部304は、入力装置200から受け取る指令等に従って、搬送駆動装置160bの動作を制御することで、搬送車160に対応する動作をさせる。例えば、搬送制御部304は、画像処理部303から受け取る情報に基づき搬送車160を移動させることで、物品Aに対するロボット100の位置を調節してもよい。なお、搬送制御部304は、搬送駆動装置160bからそのサーボモータの回転量等の動作量の情報を取得し、当該動作量に基づき、搬送車160の位置及び向きを検出してもよい。また、搬送車160は、GPS(Global Positioning System)受信機及びIMU(慣性計測装置:Inertial Measurement Unit)等の位置計測装置を備えてもよい。搬送制御部304は、GPS受信機の受信信号又はIMUによって計測された加速度及び角速度等を用いて、搬送車160の位置及び向きを検出してもよい。搬送制御部304は、例えば、床面に埋設された電線から微弱な誘導電流を検出し、この検出値に基づき搬送車160の位置及び向きを検出してもよい。
【0064】
アーム制御部305は、アーム駆動装置M1~M6の動作を制御する。アーム制御部305は、画像処理部303の検出結果等に基づき、アーム駆動装置M1~M6を制御することで、ロボットアーム120に物品Aの移送作業に対応する動作をさせる。また、アーム制御部305は、アーム駆動装置M1~M6のサーボモータから回転量等の動作量の情報を取得し、当該動作量に基づき、ロボットアーム120の各リンク及びロボットハンド130の位置、姿勢、移動方向、移動速度及び移動加速度等を含む位置姿勢情報を検出する。アーム制御部305は、当該位置姿勢情報を、ベルト駆動制御部306、吸着制御部307及び昇降制御部308等に出力する。さらに、アーム制御部305は、位置姿勢情報をフィードバック情報として用いることで、ロボットハンド130の位置及び姿勢等が目的の位置及び姿勢等となるように、アーム駆動装置M1~M6の動作を制御する。
【0065】
ベルト駆動制御部306は、ベルト駆動装置135の動作を制御する。ベルト駆動制御部306は、移送対象の物品Aの3次元の位置及び姿勢と、ロボットハンド130の位置姿勢情報とに基づき、ベルト駆動装置135のサーボモータ135aを制御することで、保持部134を方向D1又はD2に移動させる。
【0066】
ここで、サーボモータは、電気モータと、電気モータの回転子の回転角を検出するエンコーダと、電気モータの電流値を検出する電流センサとを備えている。制御装置300は、少なくとも1つのCPU(つまり、プロセッサ)と、ROM312と、RAM313と、メモリ314とを有する。図13に示すように、本実施の形態では、少なくとも1つのCPUのうちの単一のCPU311は、アーム駆動装置M1~M6のサーボモータSM1~SM6、ベルト駆動装置135のサーボモータ135a、及び搬送駆動装置160bのサーボモータ160cの動作を制御する。図13は、実施の形態に係る制御装置300のCPU311とサーボモータSM1~SM6、135a及び160cとの構成の一例を示すブロック図である。
【0067】
サーボモータSM1~SM6、135a及び160cはそれぞれ、CPU311から出力される指令等に従って、電気モータを動作させ、エンコーダ及び電流センサの検出値をCPU311に出力する。CPU311は、サーボモータSM1~SM6、135a及び160cからフィードバックされたエンコーダ及び電流センサの検出値に基づき、当該電気モータの回転子の回転量、回転速度及び回転トルク等を検出し、検出結果を用いて当該電気モータの回転開始、回転停止、回転速度及び回転トルク等を制御する。これにより、CPU311は、サーボモータSM1~SM6、135a及び160cそれぞれを任意の回転位置で停止させることができ、任意の回転速度で回転させることができ、任意の回転トルクで動作させることができる。よって、CPU311は、ロボットアーム120、ベルト駆動機構133及び搬送車160等を多様に且つ緻密に動作させることができる。
【0068】
単一のCPU311は、サーボモータSM1~SM6に対応する6つの軸での駆動と、サーボモータ135a及び160cに対応する少なくとも2つの軸での駆動とを含む少なくとも8つの軸での駆動を一括で制御する。サーボモータ135a及び160cに対応する軸は、外部軸とも呼ばれる。なお、単一のCPU311はさらに、ロボットハンド130が備える他のサーボモータ、後述の吸着装置134aakの駆動のための開閉装置181a~183a、後述の昇降装置134dの駆動のための切替装置187及び負圧発生装置180の駆動を、上記の少なくとも8つの軸での駆動と共に一括で制御するように構成されてもよい。これにより、CPU311は各装置を、より円滑に協調させて動作させることができる。
【0069】
吸着制御部307は、吸着装置134aakの動作を制御する。具体的には、吸着制御部307は、負圧発生装置180及び開閉装置181a~183aの動作を制御する。開閉装置181aは、第1配管系統181に配置され、第1配管系統181を導通又は遮断する。開閉装置182aは、第2配管系統182に配置され、第2配管系統182を導通又は遮断する。開閉装置183aは、第3配管系統183に配置され、第3配管系統183を導通又は遮断する。吸着制御部307は、負圧発生装置180を動作させ、開閉装置181a~183aそれぞれに導通させることで、吸着装置群G1~G3それぞれに負圧を発生させる。開閉装置181a~183aの例は電磁弁等で構成される開閉弁である。
【0070】
昇降制御部308は、昇降装置134dの動作を制御する。具体的には、昇降制御部308は、負圧発生装置180及び切替装置187の動作を制御する。切替装置187は、昇降装置134dのチャンバ134d4及び134d5(図10参照)それぞれと連通する配管系統184及び185に配置される。切替装置187は、第4配管系統184と負圧発生装置180との連通と、第5配管系統185と負圧発生装置180との連通とを切り替える。また、切替装置187は、両方の連通を遮断することもできる。昇降制御部308は、負圧発生装置180を動作させ、切替装置187に連通を切り替えさせることで、チャンバ134d4又は134d5を増圧又は減圧し、昇降装置134dを伸縮させる。切替装置187の例は、電磁弁等で構成される切替弁である。
【0071】
<ロボットシステムの第1の動作>
ロボットシステム1の第1の動作を図14を参照しつつ説明する。図14は、実施の形態に係るロボットシステム1の第1の動作の一例を示すフローチャートである。図15及び図16はそれぞれ、実施の形態に係るロボットシステム1の第1の動作のうちの一状態を示す側面図である。
【0072】
第1の動作は、床面等の載置面から上方へ離れた位置に存在する物品A1をロボットハンド130を用いて移送する動作である。物品A1は、物品A1よりも下方にロボットハンド130のベース132を位置させることができる高さ位置にあり、例えば、他の物品Aの上に載せられている。本例では、ロボットシステム1は、上下に一列に積み上げられた物品Aのうちの最上段の物品A1を移送する。第1の動作は完全自動であり、この動作では、ロボットシステム1は自律的に、撮像装置400を用いて物品A1の3次元の位置及び姿勢等を検出し、検出結果に基づきロボット100に各動作を実行させる。
【0073】
ステップS101において、図1に示すように、ロボットシステム1を管理するユーザは入力装置200に移送作業の実行の指令を入力し、制御装置300は当該指令を受け付ける。当該指令は、移送対象の複数の物品Aが積み上げられた物品Aの山の位置と、ベルトコンベヤ等の物品Aの移送先の位置とを含む。当該指令は、物品Aの構成も含む。
【0074】
次いで、ステップS102において、制御装置300は、入力装置200から受け取る指令に従って、搬送車160を動作させ、ロボット100を物品Aの山の近傍位置に移動させる。制御装置300は、記憶部309に記憶されている地図の情報を用いてもよい。
【0075】
次いで、ステップS103において、制御装置300は、撮像装置400に物品Aの山を撮像させる。制御装置300は、撮像のために必要に応じてロボットハンド130の位置及び姿勢を変更する。
【0076】
次いで、ステップS104において、制御装置300は、撮像装置400によって撮像された画像を画像処理することで、移送対象の物品A1の3次元の位置及び姿勢等を検出する。具体的には、制御装置300は、物品Aの構成に対応するテンプレートを記憶部309から抽出し、当該テンプレートを用いて、上記画像内に写し出される物品Aを検出する。検出には、テンプレートとのパターンマッチング等の手法が用いられてもよい。さらに、制御装置300は、物品Aの山の中の最上段の物品Aの1つを移送対象の物品A1として検出する。制御装置300は、上記画像をステレオ処理することで、物品A1の3次元の位置及び姿勢並びに物品A1のサイズ等も検出する。
【0077】
次いで、ステップS105において、図15に示すように、制御装置300は、物品A1の3次元の位置及び姿勢等に基づきロボットアーム120を動作させることで、ロボットハンド130を物品A1の側方に移動及び接近させる。制御装置300は、物品A1に対して、水平方向側方からロボットハンド130にアプローチさせる。このとき、制御装置300は、水平方向側方に向いた物品A1の側面A1aと対向させるように、吸着装置134aakを側方から側面A1aに接近させる。
【0078】
上記過程において、制御装置300は、ロボットハンド130の保持部134を、移動可能な範囲内で第2方向D2での最も端の位置に移動させる。これにより、吸着装置134aakが、ロボットハンド130のベース132の端部132aよりも第2方向D2へ突出し、側面A1aと接触しやすい。さらに、制御装置300は、保持部134がベース132の上方に位置するようにロボットハンド130の姿勢を制御する。さらにまた、制御装置300は、ベース132の摺動材136及び137の上表面136a及び137a(図3参照)が略水平であり且つ物品A1よりも下方に位置するように、ロボットハンド130の位置及び姿勢を制御する。
【0079】
なお、制御装置300は、ロボットハンド130の位置制御と、ロボットハンド130の姿勢制御と、保持部134の移動制御とについて、これらの少なくとも一部がラップするように並行して実行してもよく、別々に順番に実行してもよい。
【0080】
次いで、ステップS106において、制御装置300は吸着装置134aakに物品A1の側面A1aを吸着させる。制御装置300は、吸着装置134aakに負圧を発生させ、側面A1aに近接させる又は接触させる。具体的には、制御装置300は、物品A1のサイズに基づき、吸着装置群G1~G3の中で負圧を発生させる吸着装置群を決定する。図15の例では、物品A1の側面A1aのサイズは吸着装置134aakの全てが接触できるほど大きいため、制御装置300は吸着装置群G1~G3の全てに負圧を発生させる。制御装置300は、負圧発生装置180を起動させ且つ開閉装置181a~183aに導通させ、吸着装置群G1~G3に側面A1aを吸着させる。例えば、吸着装置群G2及びG3が接触できないような小さいサイズの側面を有する物品Aに対して、制御装置300は第1吸着装置群G1のみに負圧を発生させる。
【0081】
次いで、ステップS107において、図16に示すように、制御装置300は、保持部134をベース132に対して第1方向D1へ移動させることで、物品A1を物品Aの山から側方へ引き出しロボットハンド130上に積載する。具体的には、制御装置300は、負圧発生装置180での負荷の上昇、又は、配管系統181~183に設けられた圧力センサ(図示せず)の検出負圧力値の上昇等の情報に基づき、吸着装置134aa1~134aa20での吸着の完了を判定する。吸着完了後、制御装置300は、ベルト駆動装置135を起動し駆動ベルト133cを駆動させる。駆動ベルト133cは、搬送面133c1と共に保持部134を第1方向D1へ移動させ、保持部134及び吸着装置134aa1~134aa20は、物品A1を第1方向D1へ引き出し摺動材136及び137並びに搬送面133c1上に載せる。その後、物品A1は、搬送面133c1と保持部134との双方によって第1方向D1へさらに移動される。物品A1は、摺動材136及び137の上表面136a及び137a上で滑らかに摺動する。
【0082】
次いで、ステップS108において、制御装置300は、ロボットハンド130を移動させ、物品A1を物品Aの山から取り除く。具体的には、制御装置300は、保持部134が、移動可能な範囲内で第1方向D1での最も端の位置に到達すると、ベルト駆動装置135を停止し、ロボットハンド130を物品Aの山から離れる方向に移動させる。さらに、制御装置300は、物品A1の移送先へロボットハンド130を移動させる。本例では、制御装置300は、ロボットハンド130が移送先に到達するまで、吸着装置134aa1~134aa20での吸着を継続するが、ベルト駆動装置135の停止後のいかなるタイミングで吸着を停止してもよい。
【0083】
次いで、ステップS109において、制御装置300は、移送先への到達後、ロボットハンド130から物品A1を降ろす。具体的には、制御装置300は、ベルト駆動装置135を起動する。駆動ベルト133cは、搬送面133c1と共に保持部134を第2方向D2へ移動させ、保持部134は物品A1を第2方向D2へ押圧する。物品A1は、搬送面133c1と保持部134とによって、第2方向D2へ移動され摺動材136及び137上から降ろされる。
【0084】
<ロボットシステムの第2の動作>
ロボットシステム1の第2の動作を図17を参照しつつ説明する。図17は、実施の形態に係るロボットシステム1の第2の動作の一例を示すフローチャートである。図18図20はそれぞれ、実施の形態に係るロボットシステム1の第2の動作のうちの一状態を示す側面図である。
【0085】
第2の動作は、床面等の載置面に直接載置されている物品A1をロボットハンド130を用いて移送する動作である。物品A1は、物品A1よりも下方にロボットハンド130のベース132を位置させることができない高さ位置にある。本例では、ロボットシステム1は、他の物品Aが載せられていない最下段の物品A1を移送する。第2の動作も完全自動である。
【0086】
ステップS201~S204は、第1の動作のステップS101~S104と同様である。なお、ステップS204では、制御装置300は、撮像装置400によって撮像された画像を画像処理することで、物品Aの山の中で最下段の物品Aの1つを物品A1として検出し、物品A1の3次元の位置及び姿勢並びにサイズ等を検出する。
【0087】
次いで、ステップS205において、図18に示すように、制御装置300は、物品A1の3次元の位置及び姿勢等に基づき、ロボットハンド130を、傾斜状態である第1姿勢で物品A1の側面A1aの側方に接近させ、吸着装置134aakを側面A1aに対向させて接近させる。さらに、制御装置300は、ベース132の端部132aを物品A1の載置面である床面FSに近接させる。第1姿勢では、保持部134は、ベース132の上方且つ第2方向D2での最も端の位置にある。第1姿勢では、摺動材136及び137の上表面136a及び137a並びに搬送面133c1は、物品A1から離れるに従って床面FSから離れるように傾斜し、ベース132の端部132bは端部132aよりも床面FSから離れている。
【0088】
なお、制御装置300は、ロボットハンド130の位置制御と、ロボットハンド130の姿勢制御と、保持部134の移動制御とについて、少なくとも一部がラップするように並行して実行してもよく、別々に順番に実行してもよい。
【0089】
次いで、ステップS206において、制御装置300は、吸着装置134aakに物品A1の側面A1aを吸着させる。制御装置300は、第1の動作のステップS106と同様に、物品A1のサイズに基づき決定した吸着装置群G1~G3に吸着させる。
【0090】
次いで、ステップS207において、図19に示すように、制御装置300は、保持部134を第3方向D3へ上昇させることで、物品A1の少なくとも一部を床面FSから持ち上げる。具体的には、制御装置300は、吸着完了後、昇降装置134dを起動し、昇降装置134dは伸長して保持部134をベース132に対して第3方向D3へ移動させる。保持部134及び吸着装置134aa1~134aa20は、側面A1aを上方へ引っ張り物品A1を持ち上げる。昇降装置134dの伸長により、側面A1aの近傍の物品A1の底面は、摺動材136及び137の上表面136a及び137a並びに搬送面133c1よりも上方になるまで持ち上げられる。物品A1全体が持ち上げられてもよい。
【0091】
次いで、ステップS208において、図20に示すように、制御装置300は、昇降装置134dの伸長完了後、第1の動作のステップS107と同様に、保持部134を第1方向D1へ移動させ物品A1を側方へ引き出す。物品A1の底面が持ち上げられているため、保持部134は物品A1を摺動材136及び137上にスムーズに載せることができる。さらに、ステップS209及びS210は、第1の動作のステップS108及びS109と同様である。
【0092】
なお、制御装置300は、第1の動作と第2動作とを組み合わせて実行してもよい。例えば、制御装置300は、第1の動作のステップS103~S109と、第2の動作のステップS203~S210とをそれぞれ繰り返して実行することで、物品Aの山の物品Aを順次自動で移送してもよい。
【0093】
<効果等>
上述のような実施の形態に係るロボットハンド130は、物品Aを保持し且つ第1方向D1に移動する保持部134と、物品Aを載せることができる搬送面133c1を有し且つ第1方向D1に搬送面133c1を移動させるように駆動する駆動ベルト133cと、駆動ベルト133cを駆動するベルト駆動装置135とを備える。保持部134は、第1方向D1に移動することで、保持している物品Aを搬送面133c1上に載せるように構成される。
【0094】
上記構成によると、保持部134は、物品Aを保持した状態で第1方向D1に移動することで、物品Aを搬送面133c1上に載せることができる。搬送面133c1上の物品Aは、駆動ベルト133cによってロボットハンド130上にさらに引き込まれる。保持部134及び搬送面133c1の移動方向はいずれも第1方向D1であるため、ロボットハンド130は、保持部134と駆動ベルト133cとを共同させて物品Aをロボットハンド130上に載せることができる。さらに、ロボットハンド130は、第1方向D1が物品Aの側方となるように配置されることで、物品Aに対して側方からアプローチし当該物品Aを側方(第1方向D1)に引き出して搬送することができる。
【0095】
また、保持部134は、搬送面133c1と共に移動するように駆動ベルト133cに固定されてもよい。上記構成によると、保持部134を移動させるための構成の簡略化が可能である。さらに、保持部134と駆動ベルト133cとは、同じ動きで一緒に物品Aを移動させることができる。
【0096】
また、保持部134は、第1方向D1と反対方向である第2方向D2に存在する物品Aを保持するように指向されていてもよい。上記構成によると、保持部134は、第2方向D2に位置する物品Aを保持し第1方向D1へ引っ張るように移動させる。よって、保持部134による物品Aの移動が容易になる。
【0097】
また、保持部134は、物品Aを付着させることで保持する付着部134aを有してもよい。さらに、付着部134aは、物品Aを吸着する吸着装置134aakを含んでもよい。上記構成によると、保持部134は、付着部134aに物品Aを付着させることで当該物品Aを保持することができる。そして、付着部134aは、吸着装置134aakを備えることで、物品Aの表面に与える損傷等の影響を低減した付着を可能にする。
【0098】
また、付着部134aは、複数の吸着装置134aakを含んでもよい。複数の吸着装置134aakを構成する吸着装置群G1~G3はそれぞれ、配管系統181~183を介して負圧発生装置180と接続され、負圧発生装置180が発生する負圧によって物品Aを吸着してもよい。さらに、負圧発生装置180は、配管系統181~183の少なくとも1つを選択して負圧を発生させてもよい。例えば、吸着装置群G1~G3のいずれにおいても、一部の吸着装置134aakが物品Aの表面と接触できない場合、その全ての吸着装置134aakが有効な負圧を発生できないことがある。上記構成では、物品Aにおける吸着される表面のサイズ及び形状等に応じて、物品Aの表面を吸着する吸着装置134aakを変更できるため、効果的な吸着が可能である。
【0099】
また、付着部134aの複数の吸着装置134aakは、駆動ベルト133cの搬送面133c1と交差する方向で搬送面133c1に接近する方向及び離れる方向に配列され、搬送面133c1から遠位の吸着装置134aakは、搬送面133c1から近位の吸着装置134aakよりも、第1方向D1に配置されてもよい。例えば、第1の動作では、ロボットハンド130は、搬送面133c1が物品A1の側面A1aに対して略垂直となる姿勢で、物品Aの山から物品A1を引き出す。第2の動作では、ロボットハンド130は、搬送面133c1が物品A1の側面A1aに対して垂直な状態から傾斜した状態である姿勢で、物品A1を引き出す。複数の吸着装置134aakが上記のように配置されることで、ロボットハンド130は、第1の動作及び第2の動作の両方で、多くの吸着装置134aakに側面A1aを吸着させることができる。
【0100】
また、実施の形態に係るロボットハンド130は、保持部134を、搬送面133c1と交差する方向で搬送面133c1に接近する方向及び離れる方向(例えば、第3方向D3及び第4方向D4)に移動させる昇降装置134dを備えてもよい。上記構成によると、昇降装置134dは、保持部134に保持されている物品Aの底面の少なくとも一部が搬送面133c1よりも上方に位置するように、保持部134を上昇できる。よって、物品Aの搬送面133c1上への移動が円滑になる。
【0101】
また、実施の形態に係るロボット100は、ロボットハンド130と、ロボットハンド130が端部に接続されたロボットアーム120と、ロボットハンド130のベルト駆動装置135及び昇降装置134dの動作と、ロボットアーム120のアーム駆動装置M1~M6の動作とを制御する制御装置300とを備える。上記構成によると、実施の形態に係るロボットハンド130と同様の効果が得られる。さらに、ロボット100は、ロボットアーム120を用いて、物品Aに対するロボットハンド130の位置及び姿勢を最適に制御することができる。
【0102】
また、実施の形態に係るロボット100において、ベルト駆動装置135及びアーム駆動装置M1~M6は、サーボモータを含み、制御装置300は、ベルト駆動装置135及びアーム駆動装置M1~M6のサーボモータの動作を、協調させて制御してもよい。なお、制御装置300は、少なくとも1つのプロセッサを含み、単一のプロセッサが、ベルト駆動装置135のサーボモータの動作とアーム駆動装置M1~M6のサーボモータの動作とを制御してもよい。上記構成によると、ロボット100は、例えば、駆動ベルト133cを駆動させつつロボットアーム120を動作させるように、複数の動作を協調させて実行することができる。さらに、単一のプロセッサが、ロボットハンド130及びロボットアーム120の全てのサーボモータの動作を制御するため、各サーボモータの動作の協調を円滑に且つ容易に実現することが可能になる。
【0103】
また、実施の形態に係るロボット100は、付着部134aの吸着装置134aakと接続された負圧発生装置180を備え、制御装置300は負圧発生装置180の動作を制御してもよい。上記構成によると、ロボット100は、物品Aを負圧により吸着することでロボットハンド130上に載せることができる。
【0104】
また、実施の形態に係るロボット100は、撮像装置400を備えてもよい。さらに、制御装置300は、撮像装置400によって撮像された物品Aを写し出す画像に基づき、物品Aのサイズを推定し、推定された物品Aのサイズに対応して、配管系統181~183の少なくとも1つを選択して負圧発生装置180に負圧を発生させてもよい。なお、配管系統181~183はそれぞれ、吸着装置群G1~G3と負圧発生装置180とを接続してもよい。上記構成によると、ロボット100は、撮像装置400によって撮像された画像に基づき、物品Aに応じて、負圧を発生させる吸着装置134aakを自動で決定することができる。
【0105】
また、実施の形態に係るロボット100の制御装置300は、撮像装置400によって撮像された物品Aを写し出す画像に基づき、物品Aに対するロボットハンド130の位置及び姿勢を制御してもよい。上記構成によると、ロボット100は、物品Aに応じて、ロボットハンド130の位置及び姿勢を自動で最適に制御することができる。
【0106】
<変形例1>
変形例1に係るロボットハンド130Aを説明する。変形例1に係るロボットハンド130Aは、保持部134を移動させる移動装置133Aを、ベルト駆動機構133とは別に備える点で、実施の形態と異なる。以下、変形例1について、実施の形態と異なる点を中心に説明し、実施の形態と同様の点の説明を適宜省略する。
【0107】
図21は、変形例1に係るロボットハンド130Aの構成の一例を図4と同様に示す斜視図である。図21に示すように、ロボットハンド130Aは、保持部134の移動装置133Aを備え、保持部134は駆動ベルト133cに固定されていない。移動装置133Aは、ネジ孔部材133A1と、棒ネジ133A2と、減速装置133A3と、ネジ駆動装置133A4とを備える。移動装置133Aは第2駆動装置の一例である。
【0108】
ネジ孔部材133A1は、第1方向D1に延びる雌ネジ孔を有し、保持部134の固定部134cの基板134c1に固定されている。ネジ孔部材133A1の例は、ボールナットである。本変形例では、スライドガイド134c3bが設けられず、スライドガイド134c3bの位置に、ネジ孔部材133A1が配置されている。
【0109】
棒ネジ133A2は、第1方向D1に延び、ネジ孔部材133A1の雌ネジ孔と螺合する。本変形例では、ベース132のベースガイド132dが設けられず、ベースガイド132dの位置に、棒ネジ133A2が配置されている。
【0110】
ネジ駆動装置133A4は、収容空間131a1内に配置され、減速装置133A3を介して棒ネジ133A2と接続される。ネジ駆動装置133A4は、電力を動力源とし、電気モータとしてサーボモータを有し、制御装置300によって制御される。減速装置133A3は、ネジ駆動装置133A4のサーボモータの回転速度を減速し且つ回転駆動力を増加させて、当該回転駆動力を棒ネジ133A2に伝達する。ネジ駆動装置133A4は、棒ネジ133A2をネジ回転の方向に回転駆動することができる。
【0111】
移動装置133Aは、ネジ機構を構成し、ネジ駆動装置133A4の回転駆動力によって棒ネジ133A2を回転駆動し、棒ネジ133A2に螺合するネジ孔部材133A1を、棒ネジ133A2の軸方向である方向D1又はD2に移動させる。よって、移動装置133Aは、保持部134を方向D1及びD2に移動させる。
【0112】
上述のような変形例1に係るロボットハンド130Aによると、実施の形態と同様の効果が得られる。なお、移動装置133Aは、ベースガイド132cの位置、又は、ベースガイド132c及び132dとは別の位置に設けられてもよい。2つ以上の移動装置133Aが設けられてもよい。移動装置133Aの数量及び位置は、いかなる数量及び位置であってもよい。また、ベルト駆動装置135のサーボモータ135aが、ネジ駆動装置133A4の機能を兼ねてもよい。また、移動装置133Aは、ネジ機構に限定されず、保持部134を方向D1及びD2に移動できればよい。例えば、移動装置133Aは、空気圧、油圧若しくは電動のシリンダ、又は電動リニアアクチュエータ等で構成されてもよい。
【0113】
<変形例2>
変形例2に係るロボットハンド130Bを説明する。変形例2に係るロボットハンド130Bは、保持部134の付着部134aの指向方向を変える指向装置134Bを備える点で、実施の形態及び変形例1と異なる。以下、変形例2について、実施の形態及び変形例1と異なる点を中心に説明し、実施の形態及び変形例1と同様の点の説明を適宜省略する。
【0114】
図22は、変形例2に係るロボットハンド130Bの構成の一例を図9と同様に示す背面図である。図22に示すように、ロボットハンド130Bは、保持部134の固定部134cに、第4駆動装置の一例である指向装置134Bを備える。指向装置134Bは、2軸のジンバル状の構成を有し、保持部134の支持体134bをヨーイング方向及びピッチング方向に旋回させることができる。ヨーイング方向は、第3方向D3の軸を中心とする回転方向であり、ピッチング方向は第3方向D3と垂直な方向の軸を中心とする回転方向である。
【0115】
指向装置134Bは、ヨー回転軸134B1と、ヨー回転駆動装置134B2と、台座部材134B3と、ピッチ回転軸134B4と、ピッチ回転駆動装置134B5と、支持部材134B6とを備える。
【0116】
ヨー回転軸134B1は、固定部134cの基板134c1の表面134c1aから第3方向D3へ延びる回転自在な軸であり、その軸心方向が第3方向D3である。ヨー回転駆動装置134B2は、基板134c1内に埋め込まれ、ヨー回転軸134B1をその軸心を中心に回転駆動する。ヨー回転駆動装置134B2は、電力を動力源とし、電気モータとしてサーボモータを有し、制御装置300によって制御される。
【0117】
台座部材134B3は、ヨー回転軸134B1に対して第3方向D3に配置されている。台座部材134B3は、ヨー回転軸134B1と一体に回転するように接続された基板134B3aと、基板134B3aから第3方向D3に延びる2つの軸支持部134B3bとを含む。台座部材134B3は、基板134c1に対してヨーイング方向に旋回可能である。
【0118】
支持部材134B6は、実施の形態における基板134c1と同様の構成を有する。支持部材134B6は、第3方向D3の上面において、昇降ガイド134c4a及び134c4bと、昇降装置134dのロッド134d3(図7参照)と接続されている。基板134c1は、昇降ガイド134c4a及び134c4b、並びにロッド134d3と分離されている。
【0119】
2つのピッチ回転軸134B4は、2つの軸支持部134B3bと支持部材134B6とを回転可能に接続する。2つのピッチ回転軸134B4の軸心は、第3方向D3と垂直な方向の同軸である。支持部材134B6は、台座部材134B3に対してピッチング方向に旋回可能である。ピッチ回転駆動装置134B5は、軸支持部134B3bに配置され、ピッチ回転軸134B4をその軸心を中心に回転駆動する。ピッチ回転駆動装置134B5は、電力を動力源とし、電気モータとしてサーボモータを有し、制御装置300によって制御される。
【0120】
指向装置134Bは、ヨー回転駆動装置134B2及びピッチ回転駆動装置134B5の回転駆動力によって、ベース132を基準とする付着部134a及び支持体134bの向きを、ヨーイング方向及びピッチング方向の任意の向きに変えることができる。
【0121】
上述のような変形例2に係るロボットハンド130Bによると、実施の形態と同様の効果が得られる。また、指向装置134Bは、付着部134aの指向方向を変えることができるため、吸着装置134aakを物品Aの表面に確実に接触させ吸着させることができる。なお、指向装置134Bは、2軸を中心する回転方向に指向方向を変えるように構成されるが、これに限定されない。指向装置134Bは、1軸を中心する回転方向、又は、3軸以上を中心とする回転方向に指向方向を変えるように構成されてもよい。指向装置134Bの構成は、ジンバルに限定されず、指向方向を変えることができればよい。変形例2に係るロボットハンド130Bの構成を変形例1に適用してもよい。
【0122】
<変形例3>
変形例3に係るロボットハンド130Cを説明する。変形例3に係るロボットハンド130Cは、撮像装置400が保持部134Cに配置される点で、実施の形態及び変形例1~2と異なる。以下、変形例3について、実施の形態及び変形例1~2と異なる点を中心に説明し、実施の形態及び変形例1~2と同様の点の説明を適宜省略する。
【0123】
図23は、変形例3に係るロボットハンド130Cの構成の一例を図3と同様に示す斜視図である。図24は、変形例3に係るロボットハンド130Cの構成の一例を図5と同様に示す斜視図である。図23及び図24に示すように、ロボットハンド130Cは、保持部134Cを備え、保持部134Cは、実施の形態の保持部134と同様に、駆動ベルト133cに固定される。
【0124】
撮像装置400は、保持部134Cの支持体134Cbに配置され、支持体134Cbと一緒に方向D1及びD2に移動可能である。支持体134Cbは、矩形平板状の第1部分134Cb1と、逆U字型の枠状の第2部分134Cb2と、2つの第3部分134Cb3とを含む。第2部分134Cb2は、第1部分134Cb1に対して第3方向D3に位置する。第3部分134Cb3は、第1部分134Cb1及び第2部分134Cb2に対して第1方向D1に位置し、第1部分134Cb1と第2部分134Cb2とを連結する。撮像装置400は、第1部分134Cb1と第2部分134Cb2との間に形成される開口134Cb4内に配置され、第3部分134Cb3によって支持される。撮像装置400は、第2方向D2に向かって指向される。撮像装置400の視野は、保持部134Cが方向D1及びD2のいかなる位置であっても保持部134Cによって遮られない。
【0125】
図25は、第1方向D1で見たときの図23の保持部134Cを図8と同様に示す正面図である。図25に示すように、保持部134Cは、実施の形態の保持部134と同様に、付着部134Caを支持体134Cbの上に有する。付着部134Caは、第2方向D2に方向付けられた複数の吸着装置134aakを含み、具体的には、23個の吸着装置134aa1~134aa23を含む。吸着装置134aa1~134aa14は、第1部分134Cb1に配置され、第5方向D5の3つの行を形成するように配列される。吸着装置134aa15~134aa23は、第2部分134Cb2に配置され、第2部分134Cb2に沿って逆U字状に1列に配列される。吸着装置134aa1~134aa23は、撮像装置400の視野を遮らないように、撮像装置400の向きである第2方向D2と交差する方向、具体的には直交する方向で撮像装置400の周囲に配置される。
【0126】
第1部分134Cb1上において方向D5及びD6での中央から第5方向D5に配置される吸着装置134aa1~134aa7は、破線により囲まれるように第1吸着装置群G1を構成し、第1配管系統181と連通する。上記中央から第6方向D6に配置される吸着装置134aa8~134aa14は、破線により囲まれるように第2吸着装置群G2を構成し、第2配管系統182と連通する。吸着装置134aa15~134aa23は、第3吸着装置群G3を構成し、第3配管系統183と連通する。制御装置300は、移送対象の物品Aの形状及びサイズ等に対応して、負圧を発生させる吸着装置群G1~G3を選択し得る。
【0127】
上述のようなロボットハンド130Cは、様々な形状及びサイズの物品Aを積載し移送することができる。図26図28は、変形例3に係るロボットハンド130C上での物品Aの積載状態の一例を示す正面図である。図26に示すように、対象物品Aが方向D5及びD6の水平方向に支持体134Cb以上の幅を有し且つ方向D3及びD4の鉛直方向に支持体134Cbよりも小さい高さを有する場合、制御装置300は、第1吸着装置群G1及び第2吸着装置群G2のペアに負圧を発生させた状態で当該物品Aを吸着し積載するように、ロボットハンド130Cに動作させる。
【0128】
対象物品Aが水平方向及び鉛直方向に支持体134Cb以上の幅及び高さを有する場合、制御装置300は、第1吸着装置群G1~第3吸着装置群G3の全てに負圧を発生させた状態で当該物品Aを吸着し積載するように、ロボットハンド130Cに動作させる。例えば、図27に示すように、対象物品が図26に示す物品Aであり且つ上下に積まれた2つの当該物品Aである場合も、制御装置300は、第1吸着装置群G1~第3吸着装置群G3の全てに負圧を発生させた状態でロボットハンド130Cに2つの当該物品Aを吸着させ積載させる。
【0129】
図28に示すように、対象物品Aが水平方向に支持体134Cbよりも小さい幅を有し且つ鉛直方向に支持体134Cb以上の高さを有する場合、制御装置300は、第1吸着装置群G1及び第3吸着装置群G3のペア又は第2吸着装置群G2及び第3吸着装置群G3のペアに負圧を発生させた状態で当該物品Aを吸着し積載するように、ロボットハンド130Cに動作させる。例えば、制御装置300は、方向D5及びD6で移送対象の物品Aに隣接するスペースの大きさに応じて、負圧を発生させるペアを決定してもよい。なお、本変形例では、吸着装置134aa1~134aa23には逆止弁が設けられており、当該吸着装置からの負圧のリークが防がれる。
【0130】
また、図24及び図25に示すように、ロボットハンド130Cのベース132の端部132aには、切り欠き部132e及び132fが形成されている。切り欠き部132e及び132fは、ベース132を方向D3及びD4に貫通し且つ端部132aから第1方向D1へ延びるように、ベース132の一部を切り欠く。切り欠き部132e及び132fは、端部132aから第1方向D1へ延びる細長いスリット状の形状を有する。切り欠き部132e及び132fは、方向D5及びD6で互いから離れて配置される。切り欠き部132eは、駆動ベルト133cとベースガイド132cとの間に配置され、切り欠き部132fは、駆動ベルト133cとベースガイド132dとの間に配置される。このようなベース132は、端部132a付近で櫛状の形状を有する。切り欠き部132e及び132fは、ロボットハンド130Cに積載された物品Aを降ろすときに用いられる。
【0131】
図29及び図30は、積載物品Aを降ろすための変形例3に係るロボットハンド130Cの動作の一例を示す斜視図である。図29に示すように、ロボットシステム1において、受付装置500が配置され、受付装置500は、ロボットハンド130Cから積載物品Aを受け取る。本変形例では、受付装置500は、ロボットシステム1に構成要素として含まれるが、これに限定されない。
【0132】
受付装置500の構成は、特に限定されず、ロボットハンド130Cからその積載物品Aを受け取ることができるように構成されればよい。本変形例では、受付装置500は、物品Aを搬送することができる搬送装置であり、具体的には、コンベヤである。受付装置500は、いわゆるローラコンベヤであり、搬送方向TDに並ぶ複数のローラ501と、各ローラ501を回転自在に支持する枠体502と、床面等の支持面上で枠体502を支持する支持台503とを含む。各ローラ501の回転軸は、搬送方向TDと垂直である水平方向に延びる。複数のローラ501は、搬送方向TDに向かって次第に高さが低くなる傾斜面を形成するように互いに異なる高さで配置される。物品Aは、複数のローラ501上に載置されると、重力の作用により、複数のローラ501を回転させつつ搬送方向TDへ移動する。複数のローラ501は物品Aの摺動抵抗を極めて低くする。
【0133】
受付装置500は、搬送方向TDでの枠体502の上流端に、突出部504及び505を含む。突出部504及び505は、搬送方向TDと反対方向に枠体502から延びる柱状の形状を有し、枠体502又は支持台503に固定され支持される。突出部504及び505は、それぞれの上部に、搬送方向TDに並び且つ回転自在である複数のローラ504a及び505aを有する。各ローラ504a及び505aの回転軸の方向は、各ローラ501の回転軸の方向と同じである。複数のローラ504a及び505aはそれぞれ、複数のローラ501によって形成される傾斜面と同様の傾斜方向及び傾斜量の傾斜面を形成するように互いに異なる高さで配置される。複数のローラ504a及び505aによって形成される傾斜面と、複数のローラ501によって形成される傾斜面とは、連続する傾斜面を形成するが、互いの間に段差を有してもよく、異なる傾斜方向及び/又は傾斜量を有してもよい。なお、ローラ504a及び505aは必須ではなく、例えば、突出部504及び505が平坦な上面を有してもよい。
【0134】
突出部504及び505はそれぞれ、ロボットハンド130Cのベース132の切り欠き部132e及び132fを方向D5及びD6に通過することができる形状及びサイズを有し、例えば、切り欠き部132e及び132fに近似する形状及びサイズを有してもよい。突出部504及び505は、方向D5及びD6での切り欠き部132e及び132fの間隔と同様の間隔で配置される。本変形例では、突出部504及び505の搬送方向TDでの長さは、第1方向D1での切り欠き部132e及び132fの長さ以上であるが、これに限定されない。
【0135】
ロボットハンド130Cのベース132上に積載された物品Aを受付装置500に降ろす場合、制御装置300は、以下のような制御を実行する。図29に示すように、制御装置300は、切り欠き部132e及び132fそれぞれが突出部504及び505の上方に位置し且つ切り欠き部132e及び132fの窪み方向が突出部504及び505の突出方向と一致するように、ロボットハンド130Cを位置決めする。このとき、制御装置300は、ロボットハンド130Cの摺動材136及び137の上表面136a及び137aが、複数のローラ504a及び505aと同様の傾斜方向及び傾斜量で傾斜するように、ロボットハンド130Cの姿勢を調節してもよい。
【0136】
次いで、図30に示すように、制御装置300は、ロボットハンド130Cを鉛直下方へ下降させる。突出部504及び505はそれぞれ、切り欠き部132e及び132fに下方から挿入され、その後、切り欠き部132e及び132fから上方に突出し、物品Aの底面に当接し物品Aを下方から支持する。制御装置300は、物品Aの底面が摺動材136及び137から離れる所定の高さ位置までロボットハンド130Cを下降させた後に、ロボットハンド130Cを第1方向D1へ移動させて受付装置500から退避させ、ロボットハンド130C上から物品Aを取り除く。
【0137】
物品Aの底面は、複数のローラ504a及び505aと複数のローラ501とによって支持される。物品Aは、重力の搬送方向TDの分力の作用によって、搬送方向TDに摺動する。
【0138】
上述のようなロボットハンド130Cは、保持部134Cを第2方向D2へスライドさせずに、物品Aを受付装置500に降ろすことができ、物品Aを降ろすための時間の短縮を可能にする。吸着装置134aakによる物品Aの吸着を解除するタイミングは、ロボットハンド130Cを所定の高さ位置まで下降するまでのいかなるタイミングであってもよい。
【0139】
上述のような変形例3に係るロボットハンド130Cによると、実施の形態と同様の効果が得られる。さらに、撮像装置400は、保持部134Cと一緒に移動するように保持部134Cに配置されるため、撮像装置400の視野が、保持部134Cの位置にかかわらず保持部134Cによって遮られることが抑えられる。さらに、複数の吸着装置134aa1~134aa23は、撮像装置400の撮像方向と交差する方向で撮像装置400の周囲に配置されるため、撮像装置400の視野を遮ることを抑えることができる。よって、撮像装置400による確実な物品Aの撮像が可能になる。
【0140】
変形例3に係るロボットハンド130Cは、ロボットアーム120によって受付装置500へ向かって下降されることで、切り欠き部132e及び132fに下方から突出部504及び505を挿入し、ベース132に載せられた物品Aを突出部504及び505に支持させることができるように構成されてもよい。これにより、ロボットハンド130Cは、物品Aを受付装置500に降ろすときに、保持部134Cを第2方向D2に移動させて物品Aを押し出す必要がない。よって、ロボットハンド130Cの動作の簡略化及び迅速化が可能になる。さらに、突出部504及び505は、ベース132の内方に向かって第1方向D1に延びるため、ベース132上の物品Aを広い領域で安定して支持することができる。
【0141】
変形例3に係るロボットハンド130Cは2つの切り欠き部132e及び132fを備え、受付装置500は2つの突出部504及び505を備えるが、切り欠き部及び突出部の数量は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。さらに、切り欠き部の数量と突出部の数量とは異なっていてもよい。例えば、制御装置300は、ベース132上での物品Aの積載状態に対応して、突出部が通過する切り欠き部と、切り欠き部を通過する突出部とを選択してもよい。
【0142】
変形例3では、ローラ501、504a及び505aは、駆動力が付与されずに自由に回転するように構成されるが、駆動装置によって駆動力が付与されるように構成されてもよい。これにより、受付装置500は物品Aを容易且つ確実に搬送することができる。コンベヤとしての受付装置500はベルトコンベヤであってもよい。
【0143】
変形例3に係るロボットハンド130Cの構成を変形例1及び2に適用してもよい。
【0144】
<その他の実施の形態>
以上、本開示の実施の形態の例について説明したが、本開示は、上記実施の形態及び変形例に限定されない。すなわち、本開示の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。例えば、各種変形を実施の形態及び変形例に施したもの、及び、異なる実施の形態及び変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0145】
例えば、実施の形態及び変形例では、ロボット100は、1つのロボットアーム120と、1つのロボットハンド130,130A~130Cとを備えるように構成されるが、これに限定されない。例えば、ロボット100は、2つ以上のロボットアーム120及びロボットハンド130,130A~130Cを備えてもよい。ロボット100は、2つ以上のロボットアーム120及びロボットハンド130,130A~130Cを協働させて物品Aを搬送するように構成されてもよい。
【0146】
また、実施の形態及び変形例では、保持部134,134Cは、物品Aを付着させることで当該物品Aを保持する付着部134a,134Caを備えるが、物品Aを保持するための保持部の構成はこれに限定されない。保持部は、物品Aを保持し搬送面133c1上に移動できればよく、例えば、把持、挟持、係合、掬い上げ、吊り下げ、又は磁力等により物品Aを保持するように構成されてもよい。
【0147】
また、実施の形態及び変形例では、付着部134a,134Caは吸着装置134aakで構成されるが、これに限定されない。例えば、付着部134a,134Caは、粘着力により物品Aを付着させるように構成されてもよい。又は、付着部134a,134Caは、可撓性を有するゴム又は樹脂等で構成される吸盤を備え、吸盤を押し付けることで物品Aを吸着してもよい。さらに、吸着力の増加のために、吸盤の吸着面の空気を吸い出す機構が設けられてもよい。
【0148】
また、実施の形態及び変形例では、保持部134,134Cの複数の吸着装置134aakは、3つの吸着装置群G1~G3に区分けされるが、これに限定されない。複数の吸着装置134aakは、1つの吸着装置群を構成してもよく、2つの吸着装置群に区分けされてもよく、4つ以上の吸着装置群に区分けされてもよい。そして、各吸着装置群が、互いに異なる配管系統を介して負圧発生装置180と接続されてもよい。
【0149】
また、実施の形態及び変形例では、制御装置300は、撮像装置400によって撮像された画像を用いて、物品Aの3次元の位置及び姿勢等を検出するが、これに限定されない。例えば、ロボットハンド130等に、対象物までの距離を計測するセンサが設けられてもよい。制御装置300は、当該センサの計測距離を用いて、物品Aの位置等を検出してもよい。上記センサの例は、光電センサ、レーザセンサ及び超音波センサ等である。
【0150】
また、本開示の技術は、搬送方法であってもよい。例えば、本開示の一態様に係る搬送方法は、本開示の一態様に係るロボットを用いて物品を搬送する搬送方法であって、前記ロボットアームに前記ロボットハンドの前記保持部を前記物品に接近させて、前記保持部に前記物品を保持させ、前記ロボットハンドに、前記物品を保持する前記保持部を前記第1方向に移動させつつ、前記第1方向に前記搬送面を移動させるように前記駆動ベルトを駆動させ、前記物品を前記搬送面の上に移動させる。上記方法によれば、本開示に係るロボットハンドと同様の効果が得られる。
【0151】
また、本開示の一態様に係る搬送方法は、本開示の一態様に係るロボットを用いて載置面に載置された物品を搬送する搬送方法であって、前記ロボットハンドは、前記搬送面と交差する方向で前記搬送面に接近する方向及び離れる方向に前記保持部を移動させる第3駆動装置をさらに備え、前記ロボットアームに、前記ロボットハンドの姿勢を、前記物品から離れるに従って前記載置面から離れるように前記搬送面が傾斜する第1姿勢にさせ、前記ロボットアームに前記第1姿勢の前記ロボットハンドの前記保持部を前記物品に接近させて、前記保持部に前記物品を保持させ、前記ロボットハンドに、前記物品を保持する前記保持部を前記搬送面から離れる方向に移動させ、前記ロボットハンドに、前記搬送面から離れる方向に移動させた前記保持部を前記第1方向に移動させつつ、前記第1方向に前記搬送面を移動させるように前記駆動ベルトを駆動させ、前記物品を前記搬送面の上に移動させる。上記方法によれば、本開示に係るロボットハンドと同様の効果が得られる。さらに、搬送面を物品よりも下方にすることができない物品の搬送が可能になる。
【0152】
また、本開示の一態様に係る搬送方法は、本開示の一態様に係るロボットシステムを用いて物品を搬送する搬送方法であって、前記ロボットアームに前記ロボットハンドの前記保持部を前記物品に接近させて、前記保持部に前記物品を保持させ、前記ロボットハンドに、前記物品を保持する前記保持部を前記第1方向に移動させつつ、前記第1方向に前記搬送面を移動させるように前記駆動ベルトを駆動させ、前記物品を前記搬送面の上に移動させ、前記ロボットアームに、前記ベースの前記少なくとも1つの切り欠き部が前記受付装置の前記少なくとも1つの突出部の上方に位置するように、前記ロボットハンドを移動させ、前記ロボットアームに、前記少なくとも1つの切り欠き部に下方から前記少なくとも1つの突出部を挿入するように、前記ロボットハンドを下降させ、前記ロボットアームに、前記物品を前記少なくとも1つの突出部上に載せた状態で前記受付装置から退避するように前記ロボットハンドを移動させる。上記方法によれば、本開示に係るロボットハンドと同様の効果が得られる。さらに、ロボットハンドの動作の簡略化及び迅速化が可能になる。
【0153】
上述のような搬送方法は、実施の形態に係る制御装置300によって実現されてもよい。具体的には、搬送方法は、例えば、CPU、LSIなどの回路、ICカード又は単体のモジュール等によって、実現されてもよい。
【符号の説明】
【0154】
1 ロボットシステム
100 ロボット
120 ロボットアーム
130,130A~130C ロボットハンド
133A 移動装置(第2駆動装置)
133c 駆動ベルト
133c1 搬送面
134,134C 保持部
134B 指向装置(第4駆動装置)
134a,134Ca 付着部
134aa1~134aa23,134aak 吸着装置
134d 昇降装置(第3駆動装置)
135 ベルト駆動装置(第1駆動装置)
180 負圧発生装置
181~183 配管系統(第1系統、第2系統)
300 制御装置
400 撮像装置
A,A1 物品
G1~G3 吸着装置群
M1~M6 アーム駆動装置(第5駆動装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図30