(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】生体検出装置、生体検出方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
A61B5/11 110
(21)【出願番号】P 2023083265
(22)【出願日】2023-05-19
(62)【分割の表示】P 2022508282の分割
【原出願日】2021-03-11
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2020046621
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521369068
【氏名又は名称】データソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大槻 知明
(72)【発明者】
【氏名】葉 臣
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-097982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/109481(US,A1)
【文献】特開2019-088455(JP,A)
【文献】特開2005-237568(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216363(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/149923(WO,A1)
【文献】特開2011-215031(JP,A)
【文献】特開2008-125595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/03
A61B 5/11-5/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心拍の周波数成分である第1周波数成分を含む第1信号を取得する信号取得部と、
前記第1信号に基づいて、前記第1周波数成分より高い周波数成分を減衰させて第2信号を生成するフィルタ部と、
前記第2信号の周波数成分を分析する周波数分析部と、
前記周波数分析部による分析結果に基づいて、前記第1周波数成分のエネルギーの第1分散値を計算する分散値計算部と、
所定期間における前記第1分散値の第1統計量を計算する第1統計量計算部と、
前記第1統計量に基づいて、生体の有無を判断する判断部と
を含む生体検出装置。
【請求項2】
前記信号取得部は、ドップラーレーダによって前記第1信号を取得する
請求項1に記載の生体検出装置。
【請求項3】
前記フィルタ部は、3Hzより高い周波数成分を減衰させるローパスフィルタ処理を行う
請求項1又は2に記載の生体検出装置。
【請求項4】
前記第1周波数成分は、0.8Hz乃至3Hzの周波数成分である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生体検出装置。
【請求項5】
前記信号取得部は、前記生体がいない空間で生成される生体信号である第3信号を取得し、
前記周波数分析部は、前記第3信号の周波数成分を分析し、
前記分散値計算部は、前記第3信号の周波数成分の分析結果に基づいて、エネルギーの第2分散値を計算し、
前記判断部は、前記第2分散値の所定期間における第2統計量に基づく閾値を基準にして前記生体の有無を判断し、
前記閾値を設定する閾値設定部を更に含む
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の生体検出装置。
【請求項6】
前記信号取得部は、ドップラーレーダによって前記第3信号を取得する
請求項5に記載の生体検出装置。
【請求項7】
前記判断部によって前記生体が有りと判断されると、前記生体を対象として、指標の計算を行う指標計算部を更に含む
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の生体検出装置。
【請求項8】
前記第1統計量は、前記第1分散値の平均値、分散値、標準偏差、又は、これらの組み合わせである
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の生体検出装置。
【請求項9】
生体検出装置が行う生体検出方法であって、
生体検出装置が、心拍の周波数成分である第1周波数成分を含む第1信号を取得する信号取得手順と、
生体検出装置が、前記第1信号に基づいて、前記第1周波数成分より高い周波数成分を減衰させて第2信号を生成するフィルタ手順と、
生体検出装置が、前記第2信号の周波数成分を分析する周波数分析手順と、
生体検出装置が、前記周波数分析手順による分析結果に基づいて、前記第1周波数成分のエネルギーの第1分散値を計算する分散値計算手順と、
生体検出装置が、所定期間における前記第1分散値の第1統計量を計算する第1統計量計算手順と、
生体検出装置が、前記第1統計量に基づいて、生体の有無を判断する判断手順と
を含む生体検出方法。
【請求項10】
請求項9に記載の生体検出方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体検出装置、生体検出方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェアラブル機器で心拍数等の生体情報を計測して、生体情報に異常があるとユーザへ通知を行う技術が知られている(例えば、非特許文献1等)。
【0003】
また、見守りシステムにおいて、まず、老人等の被観察者に、ナースコールボタン、人感センサ、ドップラーセンサ、心拍計、呼吸計測機、サーモカメラ、血圧計、体温計、照度計、温度計、又は、湿度計等の観察機器を接続させる。このようにして、見守りシステムは、被観察者の観察情報を取得する。そして、見守りシステムは、観察情報に基づいて緊急発報条件に合致するか否かを判断して緊急事態であると緊急発報を行う。このようなバイタル系センサを用いる見守りシステムが知られている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】"心拍数。その意味とApple Watch(登録商標)での表示方法"、[online]、2020年01月21日、[令和2年3月2日検索]、インターネット〈URL:https://support.apple.com/ja-jp/HT204666〉
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の技術では生体の有無を精度良く判断することが難しかったことに鑑みて、生体の有無を精度良く判断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
生体検出装置は、
心拍の周波数成分である第1周波数成分及び呼吸の周波数成分である第2周波数成分を含む第1信号を取得する信号取得部と、
前記第1信号に基づいて、前記第1周波数成分より高い周波数成分を減衰させて第2信号を生成するフィルタ部と、
前記第2信号の周波数成分を分析する周波数分析部と、
前記周波数分析部による分析結果に基づいて、前記第1周波数成分、及び、前記第2周波数成分のうち、少なくともいずれか一方の周波数成分のエネルギーの第1分散値を計算する分散値計算部と、
所定期間における前記第1分散値の第1統計量を計算する第1統計量計算部と、
前記第1統計量に基づいて、生体の有無を判断する判断部と
を含むことを要件とする。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、生体の有無を精度良く判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】生体が有りの場合において実験した分析結果を示す図である。
【
図7】生体が無しの場合において実験した分析結果を示す図である。
【
図8】生体が無しの場合における所定期間の第1分散値を計算した第1実験結果を示す図である。
【
図9】生体が無しの場合における所定期間の第1分散値を計算した第2実験結果を示す図である。
【
図10】生体が有りの場合における所定期間の第1分散値を計算した第1実験結果を示す図である。
【
図11】生体が有りの場合における所定期間の第1分散値を計算した第2実験結果を示す図である。
【
図12】第2実施形態の全体処理例を示す図である。
【
図15】ドップラーレーダで計測するIQデータの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための最適かつ最小限な形態について、図面を参照して説明する。なお、図面において、同一の符号を付す場合には、同様の構成であることを示し、重複する説明を省略する。また、図示する具体例は、例示であり、図示する以外の構成が更に含まれる構成であってもよい。
【0011】
<第1実施形態>
例えば、生体検出システム1は、以下のような全体構成のシステムである。
【0012】
<全体構成例>
図1は、第1実施形態の全体構成例を示す図である。例えば、生体検出システム1は、PC(Personal Computer、以下「PC10」という。)、ドップラーレーダ12及びフィルタ13等を有する構成である。なお、生体検出システム1は、図示するように、アンプ11等を有する構成が望ましい。以下、図示する全体構成を例に説明する。
【0013】
PC10は、情報処理装置であって、生体検出装置の例である。また、PC10は、アンプ11等の周辺機器とネットワーク又はケーブル等を介して接続する。なお、アンプ11及びフィルタ13等は、PC10が有する構成でもよい。また、アンプ11及びフィルタ13等は、装置でなく、ソフトウェアによる構成、又は、ハードウェアとソフトウェアの両方による構成でもよい。以下、図示するような生体検出システム1の例で説明する。
【0014】
ドップラーレーダ12は、計測装置の例である。
【0015】
この例では、PC10は、アンプ11に接続される。また、アンプ11は、フィルタ13に接続される。さらに、フィルタ13は、ドップラーレーダ12に接続される。そして、PC10は、アンプ11及びフィルタ13を介して、ドップラーレーダ12から計測データを取得する。すなわち、計測データは、心拍及び呼吸等の生体の動作を示す信号のデータである。次に、PC10は、取得される計測データに基づいて被験者2の心拍、呼吸及び体の動き等の体動を解析し、心拍数等の人体の動きを計測する。
【0016】
ドップラーレーダ12は、例えば、以下のような原理で心拍及び呼吸等の動作を示す信号(以下「生体信号」という。)を取得する。
【0017】
<ドップラーレーダの例>
図2は、ドップラーレーダの例を示す図である。例えば、ドップラーレーダ12は、
図2に示すような構成の装置である。具体的には、ドップラーレーダ12は、ソース(Source)12Sと、発信器12Txと、受信器12Rxと、ミキサー(Mixer)12Mとを有する。また、ドップラーレーダ12は、受信器12Rxが受信するデータのノイズを減らす等の処理を行うLNA(Low Noise Amplifier)等の調整器12LNAを有する。
【0018】
ソース12Sは、発信器12Txが発信する発信波の信号を生成する発信源である。
【0019】
発信器12Txは、被験者2に対して発信波を発信する。なお、発信波の信号は、時間「t」に係る関数Tx(t)で示せ、例えば、下記(1)式のように示せる。
【0020】
【数1】
上記(1)式では、「ω
c」は、発信波の角周波数である。
【0021】
そして、被験者2、すなわち、発信された信号の反射面は、時間「t」において、x(t)の変位である場合とする。この例では、反射面は、被験者2の胸壁となる。そして、変位x(t)は、例えば、下記(2)式のように示せる。
【0022】
【数2】
上記(2)式では、「m」は、変位の振幅を示す定数である。また、上記(2)式では、「ω」は、被験者2の動きによってシフトする角速度である。なお、上記(1)式と同様の変数は同じ変数である。
【0023】
受信器12Rxは、発信器12Txによって発信されて被験者2で反射した反射波を受信する。また、反射波の信号は、時間tに係る関数Rx(t)で示せ、例えば、下記(3)式のように示せる。
【0024】
【数3】
上記(3)式では、「d
0」は、被験者2と、ドップラーレーダ12との距離である。また、「λ」は、信号の波長である。以下、同様に記載する。
【0025】
ドップラーレーダ12は、発信波の信号を示す関数Tx(t)(上記(1)式である。)と、受信波の信号を示す関数R(t)(上記(3)式である。)とをミキシングして、ドップラー信号を生成する。なお、ドップラー信号は、時間tに係る関数B(t)で示すと、下記(4)式のように示せる。
【0026】
【数4】
そして、ドップラー信号の角周波数を「ω
d」とすると、ドップラー信号の角周波数ω
dは、下記(5)式のように示せる。
【0027】
【数5】
また、上記(4)式及び上記(5)式における位相「θ」は、下記(6)式のように示せる。
【0028】
【数6】
上記(6)式では、「θ
0」は、被験者2の胸壁、すなわち、反射面における位相変位である。
【0029】
次に、ドップラーレーダ12は、発信した発信波の信号と、受信した受信波の信号とを比較した結果、すなわち、上記の式による計算結果に基づいて、被験者2の位置及び速度等が出力される。
【0030】
例えば、受信波から、Iデータ(同相データ)及びQデータ(直交位相データ)が生成できる。そして、Iデータ及びQデータにより、被験者2の胸壁が移動した距離が検出できる。また、Iデータ及びQデータが示す位相に基づいて、被験者2の胸壁が前後のどちらに動いたかが検出できる。したがって、心拍に由来する胸壁の移動が、送信波及び受信波の周波数変化を利用して、心拍等の指標を検出できる。
【0031】
<生体検出装置のハードウェア構成例>
図3は、生体検出装置の例を示す図である。例えば、PC10は、CPU(Central Processing Unit、以下「CPU10H1」という。)と、記憶装置10H2と、入力装置10H3と、出力装置10H4と、入力I/F(Interface)(以下「入力I/F10H5」という。)とを有する。なお、PC10が有する各ハードウェアは、バス(Bus)(以下「バス10H6」という。)で接続され、各ハードウェアの間では、バス10H6を介して、データ等が相互に送受信される。
【0032】
CPU10H1は、PC10が有するハードウェアを制御する制御装置及び各種処理を実現するための演算を行う演算装置である。
【0033】
記憶装置10H2は、例えば、主記憶装置及び補助記憶装置等である。具体的には、主記憶装置は、例えば、メモリ等である。また、補助記憶装置は、例えば、ハードディスク等である。そして、記憶装置10H2は、PC10が用いる中間データを含むデータ及び各種処理及び制御に用いるプログラム等を記憶する。
【0034】
入力装置10H3は、ユーザの操作によって、計算に必要なパラメータ及び命令をPC10に入力するための装置である。具体的には、入力装置10H3は、例えば、キーボード、マウス及びドライバ等である。
【0035】
出力装置10H4は、PC10による各種処理結果及び計算結果をユーザ等に出力するための装置である。具体的には、出力装置10H4は、例えば、ディスプレイ等である。
【0036】
入力I/F10H5は、計測装置等の外部装置と接続し、データ等を送受信するためのインタフェースである。例えば、入力I/F10H5は、コネクタ又はアンテナ等である。すなわち、入力I/F10H5は、ネットワーク、無線又はケーブル等を介して、外部装置とデータを送受信する。
【0037】
なお、ハードウェア構成は、図示する構成に限られない。例えば、PC10は、処理を並列、分散又は冗長して行うため、更に演算装置又は記憶装置等を有してもよい。また、PC10は、演算、制御及び記憶を並列、分散又は冗長して行うため、他の装置とネットワーク又はケーブルを介して接続される情報処理システムでもよい。すなわち、1以上の情報処理装置を有する情報処理システムによって、本発明は実現されてもよい。
【0038】
このようにして、PC10は、ドップラーレーダ12等の計測装置によって生体の動作を示す生体信号を取得する。なお、生体信号は、リアルタイムで随時取得されてもよいし、ある期間分の生体信号をドップラーレーダ等の装置が記憶して、その後、PC10がまとめて取得してもよい。また、取得は、記録媒体等を用いてもよい。さらに、PC10は、ドップラーレーダ12等の計測装置を有し、PC10がドップラーレーダ12等の計測装置で計測して生体信号を生成して、生体信号を取得する構成でもよい。
【0039】
<全体処理例>
図4は、全体処理例を示す図である。例えば、以下に説明する全体処理は、時間の窓(例えば、60秒のようにあらかじめ設定される。)ごとに実行される。
【0040】
(第1信号の取得例)
ステップS101では、PC10は、第1信号を取得する。例えば、第1信号は、以下のような信号である。
【0041】
図5は、第1信号の例を示す図である。図では、横軸が計測した時点を示す時間である。一方で、縦軸がドップラーレーダの計測結果に基づいて推定される電力である。
【0042】
以下、図示するような心拍の周波数成分(以下「第1周波数成分」という。)、及び、呼吸の周波数成分(以下「第2周波数成分」という。)を含む生体信号を「第1信号」という。
【0043】
(ローパスフィルタ処理の例)
ステップS102では、PC10は、第1信号に対して第1周波数成分より高い周波数成分を減衰させるローパスフィルタ処理を行う。すなわち、PC10は、第1信号に対して、心拍の周波数成分より高い周波数成分を減衰させる。例えば、PC10は、デジタルフィルタ等で、心拍の周波数成分より高い周波数をカットオフ周波数としたフィルタリングを行う。
【0044】
例えば、成人の男性であれば、1分間に50回乃至180回程度の心拍数であるため、心拍の周波数成分、すなわち、第1周波数成分は、0.8Hz乃至3Hz程度の周波数成分が主である。
【0045】
また、例えば、人は、1分間に10回乃至60回程度の呼吸数であるため、呼吸の周波数、すなわち、第2周波数成分は、0.1Hz乃至1Hz程度の周波数成分が主である。
【0046】
そこで、ローパスフィルタ処理は、例えば、0Hz乃至3Hzより高い周波数成分を減衰させるように設定されるのが望ましい。このような設定であると、PC10は、ローパスフィルタ処理によって、呼吸及び心拍を示す周波数成分を減衰させずに、ノイズとなる周波数成分を減衰させることができる。
【0047】
このように、呼吸及び心拍のいずれもが含まれる周波数帯域を減衰させず、それ以外のノイズが含まれる第1周波数成分より高い周波数成分を減衰させるようにローパスフィルタ処理が行われるのが望ましい。
【0048】
なお、ローパスフィルタ処理の対象とする周波数帯域は、生体の年齢、性別、及び、状態等を考慮して設定されてもよい。例えば、激しい運動の後又は興奮しているといった状態であると、心拍数及び呼吸数の両方とも、安静な状態より高い周波数となる。そのため、第1周波数成分、及び、第2周波数成分は、両方とも安静な状態よりも高い周波数となる。一方で、安静な状態であると、心拍数及び呼吸数の両方とも、低い周波数となる。そこで、例えば、状態等に合わせて、ローパスフィルタ処理の対象とする周波数帯域が動的に変更される、又は、ローパスフィルタ処理の対象とする周波数帯域が絞られてもよい。具体的には、激しい運動の後の状態といった、第1周波数成分、及び、第2周波数成分のいずれもが高い周波数帯域にあると考えられる状態では、3.5Hzより高い周波数成分を減衰させるローパスフィルタ処理が行われる。一方で、安静な状態等といった第1周波数成分、及び、第2周波数成分のいずれもが低い周波数帯域にあると考えられる状態では、1.4Hzより高い周波数成分を減衰させるローパスフィルタ処理が行われる。
【0049】
このように、状態等が入力できる、又は、状態等を考慮した値が設定されて、ローパスフィルタ処理が行われてもよい。
【0050】
例えば、3Hzに設定されるローパスフィルタ処理であると、PC10は、1分間に心拍が180回程度となるような激しい運動の後に発生する心拍及び呼吸の周波数成分を減衰させず、かつ、ノイズの周波数成分を減衰できる。ゆえに、生体が運動した後ではない状態であると分かっているような場合には、ローパスフィルタ処理は、1Hz程度に低い値が設定されてもよい。
【0051】
以下、ローパスフィルタ処理で生成される信号を「第2信号」という。
【0052】
(周波数分析の例)
ステップS103では、PC10は、第2信号の周波数分析を行う。例えば、周波数分析は、FFT(高速フーリエ変換、Fast Fourier Transform)等で実現する。このようにして、PC10は、周波数帯域ごとのエネルギーを示すスペクトルを算出する。また、PC10は、正規化し、かつ、スペクトルで分析結果を示すのが望ましい。以下、正規化された値でスペクトルを示す。分析結果の具体例は後述する。
【0053】
(第1分散値の計算の例)
ステップS104では、PC10は、第1分散値を計算する。第1分散値は、第2信号の周波数分析の分析結果におけるエネルギーのばらつきを示す値である。
【0054】
(所定期間の第1分散値が計算できたか否かを判断する例)
ステップS105では、PC10は、所定期間の第1分散値が計算できたか否かを判断する。例えば、所定期間は、2分間である。なお、所定期間は、あらかじめ設定される。
【0055】
次に、所定期間の第1分散値が計算できたと判断されると(ステップS105でYES)、PC10は、ステップS106に進む。一方で、所定期間の第1分散値が計算できていないと判断されると(ステップS105でNO)、PC10は、ステップS101に進む。すなわち、所定期間(この例では、2分間となる。)分、第1信号の取得乃至第1分散値の計算が終わるまで、ステップS101乃至ステップS104が繰り返し行われる。
【0056】
所定期間の第1分散値の具体例は後述する。
【0057】
(第1統計量の計算の例)
ステップS106では、PC10は、第1分散値の第1統計量を計算する。すなわち、PC10は、この例では、2分間における第1分散値の平均値を第1統計量として計算する。なお、第1統計量は、例えば、第1分散値の平均値、分散値、又は、標準偏差等のように、所定期間における複数の第1分散値を統計処理にして計算される値である。さらに、第1統計量は、第1分散値の平均値、分散値、又は、標準偏差のうち、2種類以上の組み合わせであってもよい。すなわち、後段のステップS107では、2種類以上の第1統計量を用いて判断がされてもよい。以下、第1統計量が第1分散値の平均値である場合を例に説明する。
【0058】
(第1統計量が閾値を超えるか否かを判断する例)
ステップS107では、PC10は、第1統計量が閾値を超えるか否かを判断する。閾値は、例えば、あらかじめ設定される。すなわち、生体を有りと判断するか、又は、生体を無しと判断するかの閾値は、あらかじめ実験を行う等で見極められる。
【0059】
なお、閾値は、第1統計量の種類及び数に合わせて設定される。この場合には、閾値は、平均値及び分散値のそれぞれの種類ごとに別々に設定されてもよいし、共通して1つの閾値が設定された上で判断が別々に行われてもよい。
【0060】
次に、第1統計量が閾値を超えると判断されると(ステップS107でYES)、PC10は、ステップS108に進む。一方で、第1統計量が閾値を超えないと判断されると(ステップS107でNO)、PC10は、ステップS109に進む。
【0061】
(生体が有りと判断する例)
ステップS108では、PC10は、生体が有りと判断する。
【0062】
(生体が無しと判断する例)
ステップS109では、PC10は、生体が無しと判断する。
【0063】
上記に示すステップS108又はステップS109のように、第1統計量に基づいて、PC10は、生体の有無を判断する。例えば、第1統計量が所定期間における第1分散値の平均値である場合において、第1分散値の平均値が高い値であると、部屋等に生体がいるという判断結果がステップS108によって出力される。一方で、第1分散値の平均値が低い値であると、部屋等に生体がいないという判断結果がステップS109によって出力される。
【0064】
なお、生体が有りと判断する場合には、PC10は、以下のように指標の計算等を行うのが望ましい。
【0065】
(指標の計算を行う例)
ステップS110では、PC10は、指標を計算する。
【0066】
例えば、指標は、対象とする生体の生体情報を示す値である。具体的には、指標は、生体信号を解析して計算される値であって、脈拍数、心拍数、呼吸数、血圧、PTT(pulse transit time)、収縮期血圧(systolic blood pressure)、RRI(R-R interval、R-R間隔)、QRS間隔、QT間隔、又は、これらの組み合わせ等である。なお、指標は、これ以外の生体情報でもよい。
【0067】
また、指標を計算するため、PC10は、生体信号の取得から行ってもよい。
【0068】
このように、生体検出システム1において、PC10は、生体が有りと判断した場合に、指標を計算する。このような構成であると、生体がいないのに計測等を行うといった無駄な計測及び処理等を行わずにすむ。そのため、例えば、計算コストを少なくできる。
【0069】
<実験結果>
例えば、周波数分析、すなわち、ステップS103の分析結果は、以下のような分析結果が得られた。
【0070】
<周波数分析の分析結果の例>
以下、横軸を周波数成分、縦軸をそれぞれの周波数成分のエネルギーを示すスペクトルを正規化した値で示す。
【0071】
<生体が無しの場合の分析結果>
図6は、生体が無しの場合において実験した分析結果を示す図である。図は、生体が不在な状態において、1分間分の第1信号を取得した実験における周波数分析の分析結果を示す。この実験では、第1分散値は、「4.8×10
-6」となった。
【0072】
このように、生体が無しの場合には、第1分散値は、低い値となる。
【0073】
<生体が有りの場合の分析結果>
図7は、生体が有りの場合において実験した分析結果を示す図である。図は、生体が存在する状態において、1分間分の第1信号を取得した実験における周波数分析の分析結果を示す。なお、生体は、人であって、ベッドに仰向けになった状態である。また、天井との距離は、「2.12m」である。この実験では、第1分散値は、「1426×10
-6」となった。
【0074】
このように、生体が有りの場合には、第1分散値は、高い値となる。
【0075】
また、生体が有りの場合には、呼吸の周波数である、第2周波数成分の周波数帯域(この例では、0.3Hz付近の周波数帯域である。)に、ピーク点(図では、第1ピーク点PK1である。)が現れる。
【0076】
同様に、生体が有りの場合には、心拍の周波数である、第1周波数成分の周波数帯域(この例では、1Hz付近の周波数帯域である。)に、ピーク点(図では、第2ピーク点PK2である。)が現れる。
【0077】
このように、第2信号において、呼吸及び心拍を示す周波数成分のエネルギーが高くなる。
【0078】
<所定期間の第1分散値の例>
上記周波数分析の分析結果で得られる所定期間の第1分散値、及び、平均値は、以下のような結果となる。以下、横軸を時間、縦軸を第1分散値で示す。なお、所定期間は、2分間である。
【0079】
<生体が無しの場合における第1分散値>
図8は、生体が無しの場合における所定期間の第1分散値を計算した第1実験結果を示す図である。
【0080】
図9は、生体が無しの場合における所定期間の第1分散値を計算した第2実験結果を示す図である。
【0081】
図8及び
図9は、第1分散値の時間における推移を示す。また、
図8に示す結果では、平均値を計算すると、2分間の第1分散値の平均値は、「5.2×10
-6」となった。さらに、
図9に示す結果では、平均値を計算すると、2分間の第1分散値の平均値は、「7.7×10
-6」となった。
【0082】
このように、生体が無しの場合には、所定期間の第1分散値の平均値は、低い値となる。
【0083】
<生体が有りの場合における第1分散値>
図10は、生体が有りの場合における所定期間の第1分散値を計算した第1実験結果を示す図である。
【0084】
図11は、生体が有りの場合における所定期間の第1分散値を計算した第2実験結果を示す図である。
【0085】
図10及び
図11は、
図8及び
図9と同様に、第1分散値の時間における推移を示す。また、
図10に示す結果では、平均値を計算すると、2分間の第1分散値の平均値は、「1457×10
-6」となった。さらに、
図11に示す結果では、平均値を計算すると、2分間の第1分散値の平均値は、「113.4×10
-6」となった。
【0086】
このように、生体が有りの場合には、所定期間の第1分散値の平均値は、高い値となる。
【0087】
そこで、生体の有無を判断するのに用いられる閾値は、例えば、上記の
図8及び
図9のような状態と、上記の
図10及び
図11の状態とが区別できる値であるのが望ましい。
【0088】
具体的には、上記の
図8及び
図9、すなわち、生体が無しの場合には、所定期間の第1分散値の平均値は、「10×10
-6」以下の値となる。一方で、上記の
図10及び
図11、すなわち、生体が有りの場合には、所定期間の第1分散値の平均値は、「100×10
-6」以上の値となる。そこで、閾値は、このような実験結果を踏まえて、例えば、「14×10
-6」乃至「20×10
-6」程度の値に設定されるのが望ましい。このような閾値であると、PC10は、精度良く生体の有無を判断できる。
【0089】
ただし、第1分散値、及び、平均値等の統計量は、正規化の方法、環境、及び、生体等によって値が大きく異なる。したがって、閾値は、上記の例に示す値に限られず、これらの条件を踏まえて設定されるのが望ましい。
【0090】
また、PC10は、第1周波数成分に対応する第1分散値の平均値と、第2周波数成分に対応する第1分散値の平均値のうち、少なくともいずれか一方の平均値を閾値と比較して生体の有無を判断する。すなわち、第1周波数成分に対応する第1分散値の平均値と、第2周波数成分に対応する第1分散値の平均値のうち、少なくともいずれか一方の平均値が高い値である場合に、PC10は、生体が有りと判断する、「OR」の構成でもよい。つまり、呼吸又は心拍のどちらかの周波数成分の第1分散値が高い値であれば、他方の第1分散値が低い値であっても、PC10は、生体が有りと判断してもよい。このように、第1周波数成分、及び、第2周波数成分のうち、PC10は、どちらか一方を用いて判断してもよい。
【0091】
ただし、PC10は、第1周波数成分に対応する第1分散値の平均値、及び、第2周波数成分に対応する第1分散値の平均値のいずれの判断でも生体が有りと判断する場合を全体として生体が有りと判断する、「AND」の構成が望ましい。
【0092】
すなわち、PC10は、まず、第1周波数成分に対応する第1分散値、及び、第2周波数成分に対応する第1分散値の両方を計算する。次に、PC10は、それぞれの第1分散値に基づいて、それぞれの平均値を別々に計算する。そして、第1周波数成分に基づく平均値、及び、第2周波数成分に基づく平均値のいずれの値も高い値であると判断すると、PC10は、生体が有りと判断する。このように、PC10は、第1周波数成分、及び、第2周波数成分の両方の判断を「AND」にする構成が望ましい。このような「AND」の構成であると、PC10は、生体の有無を精度良く判断できる。
【0093】
<第2実施形態>
例えば、生体の有無を判断するのに用いられる閾値は、以下のような処理で設定されてもよい。
【0094】
図12は、第2実施形態の全体処理例を示す図である。第1実施形態と比較すると、閾値を設定する処理が行われる点が異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、重複する説明を省略する。
【0095】
(閾値の設定する例)
ステップS201では、PC10は、閾値の設定を行う。なお、閾値は、ステップS106で計算される第1統計量の種類に合わせた種類が設定される。以下、ステップS106で計算される第1統計量が、所定期間における第1分散値の平均値である例で説明する。例えば、閾値を設定する処理は、以下のような処理である。
【0096】
【0097】
(生体がいない空間であるか否かを判断する例)
ステップS21では、PC10は、生体がいない空間であるか否かを判断する。すなわち、PC10は、生体がいない空間と確認された上で閾値を設定する処理を開始する。なお、生体がいない空間であるか否かの判断は、PC10がセンサ等で確認するではなく、ユーザによって判断された結果が入力されて判断されてもよい。
【0098】
次に、生体がいない空間であると判断されると(ステップS21でYES)、PC10は、ステップS22に進む。一方で、生体がいない空間ではないと判断されると(ステップS21でNO)、PC10は、ステップS21を繰り返す。
【0099】
すなわち、生体がいない空間であると確認された空間において生成される生体信号(以下「第3信号」という。)を用いて以降の処理を行う。
【0100】
(第3信号の取得例)
ステップS22では、PC10は、第3信号を取得する。例えば、第3信号は、第1信号と同様にドップラーレーダで生成されるのが望ましい。
【0101】
(周波数分析の例)
ステップS23では、PC10は、第3信号の周波数分析を行う。例えば、ステップS23は、ステップS103と同様の処理を行う。
【0102】
なお、第3信号は、周波数分析の前にローパスフィルタ処理等が行われてもよい。例えば、生体がいない空間であっても、ノイズが多い環境であると考えられる場合等では、第3信号は、ノイズを減衰させるようにローパスフィルタ処理が行われてもよい。
【0103】
(第2分散値の計算の例)
ステップS24では、PC10は、第2分散値を計算する。例えば、第2分散値は、第1分散値と同様、すなわち、ステップS104で計算される。以下、閾値の設定に用いられる分散値を「第2分散値」という。したがって、第2分散値は、第3信号の周波数分析の分析結果におけるエネルギーのばらつきを示す値である。
【0104】
(第2統計量の計算の例)
ステップS25では、PC10は、第2分散値の統計量(以下、複数の第2分散値を統計処理して得られる統計量を「第2統計量」という。)を計算する。例えば、第1統計量と同様に、第2分散値の平均値が第2統計量として計算されて、後段のステップS26で閾値に設定される。
【0105】
(第2統計量に基づく閾値の設定例)
ステップS26では、PC10は、第2統計量に基づく閾値を設定する。このように設定される閾値に基づいて、PC10は、ステップS107の判断を行う。
【0106】
なお、閾値は、平均値に限られず、ステップS24で計算される第2分散値を用いた他の統計量等でもよい。さらに、閾値は、ステップS25で計算される平均値に一定の値を加算した値等の第2統計量に基づく値でもよい。具体的には、ステップS25で平均値が「10×10-6」程度の値となる場合には、「10×10-6」に「10×10-6」乃至「50×10-6」程度の一定の値を加算して、閾値を「20×10-6」乃至「60×10-6」程度の値に設定してもよい。このように、閾値を設定する上で、閾値にある程度の許容値があってもよい。また、複数の第1統計量を用いる場合には、それぞれの判断に用いる閾値が別々に設定されてもよい。
【0107】
なお、閾値を設定する処理は、ステップS101以降の処理を行う前に完了していればよく、図示するように連続して処理を実行する必要はない。
【0108】
すなわち、閾値を設定する処理を行ってから、ステップS101以降の処理が行われるまでに時間が空いてもよい。また、閾値を設定する処理は、例えば、対象とする空間又は生体等の条件が変わった場合等に行うでもよい。
【0109】
このように、PC10は、第3信号を生成して取得する。第3信号は、生体がいない空間で生成されるため、生体が無しの空間における特徴を示す生体信号である。そして、PC10は、このような生体信号に基づいて設定される閾値を基準にして生体の有無を判断するのが望ましい。
【0110】
また、閾値は、例えば、実際に運用する環境ごとに別々に設定されるのが望ましい。環境によって、生体がいない空間で発生する周波数が異なる場合が多い。例えば、比較的、ノイズ等が少ない場合が多いオフィス等と、一定の周波数が特徴的に存在する場合が多い工場等と、様々な周波数が存在する場合が多い一般家庭とでは、生体がいない空間での分散値が異なる。したがって、閾値を環境ごとに設定するために、第3信号は、環境ごとに取得されるのが望ましい。
【0111】
以上のような実施形態であると、精度良く生体の有無を判断できる。
【0112】
<第3実施形態>
第3実施形態は、生体検出装置又は生体検出システムを有するシステム(以下単に「システム」という。)である。なお、生体検出装置及び生体検出システムは、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0113】
例えば、システムは、生体検出装置又は生体検出システムによる生体の有無の判断結果に基づいて、処理を開始、又は、処理を変更する。
【0114】
具体的には、システムにおいて、まず、生体検出装置又は生体検出システムが前段で生体の有無を判断する。
【0115】
そして、生体が有りと判断した場合には、生体検出装置又は生体検出システムは、システムにおける他の装置を起動させる。すなわち、生体検出装置又は生体検出システムは、生体が部屋に入ってきた等の場合に生体が有りと判断するため、生体が部屋に入ったのと連動させて、他の装置をウェイクアップさせる等の処理を行う。一方で、生体が無しと判断されている間は、他の装置等は、例えば、スリープの状態である。このように、生体検出装置又は生体検出システムによって、生体が有りと判断した場合に、他の装置を起動させると、装置等が無駄な計測及び処理等を行わずにすむ。そのため、例えば、消費電力を少なくできる。また、生体信号を検出するためのセンサ等と生体検出装置又は生体検出システムが連動する場合には、生体がいない場合の誤検出及び見逃しを少なくできる。
【0116】
また、生体検出装置又は生体検出システムによって生体が有りと判断された場合に、他の装置等が、生体を再度検出する、又は、生体の位置を特定する等の処理を行うでもよい。このように、生体検出装置又は生体検出システムが前段で生体の有無を判断し、ある程度、生体がいることが分かった状態で、生体を検出、又は、生体情報を生成する処理が開始されてもよい。このように、生体検出装置又は生体検出システムによる判断結果をきっかけにして他の装置によって生体の検出が再度行われると、精度良く生体が検出できる。
【0117】
また、このように、生体検出装置又は生体検出システムによる判断結果をきっかけにして他の装置によって、生体情報を生成する処理が開始されると、精度良く生体情報が生成できる。
【0118】
<機能構成例>
図14は、機能構成例を示す図である。例えば、生体検出装置は、信号取得部10F1と、フィルタ部10F2と、周波数分析部10F3と、分散値計算部10F4と、第1統計量計算部10F5と、判断部10F6とを含む機能構成であるのが望ましい。また、生体検出装置は、図示するように、閾値設定部10F7と、指標計算部10F8とを更に含む機能構成であるのが望ましい。以下、図示するような機能構成を例に説明する。
【0119】
信号取得部10F1は、第1信号等の生体信号を取得する信号取得手順を行う。例えば、信号取得部10F1は、ドップラーレーダ12、又は、入力I/F10H5等で実現する。
【0120】
フィルタ部10F2は、第1信号等の生体信号における一定の周波数帯域をフィルタリングするフィルタ手順を行う。例えば、フィルタ部10F2は、CPU10H1、又は、フィルタ13等で実現する。
【0121】
周波数分析部10F3は、第2信号等の信号に対して周波数分析を行う周波数分析手順を行う。例えば、周波数分析部10F3は、CPU10H1等で実現する。
【0122】
分散値計算部10F4は、第1分散値等の分散値を計算する分散値計算手順を行う。例えば、分散値計算部10F4は、CPU10H1等で実現する。
【0123】
第1統計量計算部10F5は、第1分散値の平均値等の第1統計量を計算する第1統計量計算手順を行う。例えば、第1統計量計算部10F5は、CPU10H1等で実現する。
【0124】
判断部10F6は、生体の有無を判断する判断手順を行う。例えば、判断部10F6は、CPU10H1等で実現する。
【0125】
閾値設定部10F7は、閾値を設定する閾値設定手順を行う。例えば、閾値設定部10F7は、CPU10H1、又は、入力装置10H3等で実現する。
【0126】
指標計算部10F8は、指標を計算する指標計算手順を行う。例えば、指標計算部10F8は、CPU10H1等で実現する。
【0127】
<ドップラーレーダで計測するIQデータの例>
図15は、ドップラーレーダで計測するIQデータの例を示す図である。例えば、ドップラーレーダ12は、図示するような信号を出力する。そして、arctan(Q/I)を計算すると、生体信号となる。
【0128】
ドップラーレーダ12は、動く対象物に電波を照射することで反射波の周波数が変化するドップラー効果に基づいて対象物の動きを計測できる。このように、非接触に被験者の動きを計測できる構成が望ましい。
【0129】
<変形例>
なお、生体は、人に限られず、動物等でもよい。
【0130】
生体信号を取得する間隔、及び、第1分散値が計算される所定期間は、用途及び精度等によって設定されてもよい。例えば、数秒程度の所定期間であると、PC10は、生体の有無を短い時間ごとに判断できるため、生体の有無を高い時間分解能で出力するような場合には、所定期間等は、数秒程度に短く設定されるのが望ましい。
【0131】
一方で、第1分散値、平均値、及び、判断は、所定期間が長いと精度良く生体の有無を判断できる。例えば、所定期間が4分間以上に長く設定されると、第1分散値が多く計算できるため、より精度良く生体の有無を判断できる。
【0132】
生体検出装置及び生体検出システムは、AI(Artificial Intelligence)を用いる構成でもよい。例えば、閾値は、機械学習等で学習されて設定されてもよい。具体的には、機械学習で
図8乃至
図11のような分散値又は平均値を学習データにして、機械学習が行われる。このような学習データが用いられると、分散値又は平均値に基づいて、生体の有無を判断する学習済みモデルを生成できる。
【0133】
また、生体検出装置及び生体検出システムは、時間領域信号又は周波数領域信号を学習の対象として、深層学習を行ってもよい。そして、学習済みモデルに基づいて、生体検出装置及び生体検出システムは、生体の有無を判断してもよい。
【0134】
学習済みモデルは、AIにおけるソフトウェアの一部として利用される。したがって、学習済みモデルは、プログラムである。そのため、学習済みモデルは、例えば、記録媒体又はネットワーク等を介して、頒布又は実行されてもよい。
【0135】
学習済みモデルは、例えば、CNN(Convolution Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)、又は、RNN(Recurrent Neural Network、回帰型ニューラルネットワーク)等といったネットワーク構造を含む。
【0136】
<その他の実施形態>
例えば、送信器、受信器、又は、情報処理装置は、複数の装置であってもよい。すなわち、処理及び制御は、仮想化、並行、分散又は冗長して行われてもよい。一方で、送信器、受信器及び情報処理装置は、ハードウェアが一体又は装置を兼用してもよい。
【0137】
なお、本発明に係る各処理の全部又は一部は、アセンブラ等の低水準言語又はオブジェクト指向言語等の高水準言語で記述され、コンピュータに生体検出方法を実行させるためのプログラムによって実現されてもよい。すなわち、プログラムは、情報処理装置、又は、生体検出システム等のコンピュータに各処理を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0138】
したがって、プログラムに基づいて各処理が実行されると、コンピュータが有する演算装置及び制御装置は、各処理を実行するため、プログラムに基づいて演算及び制御を行う。また、コンピュータが有する記憶装置は、各処理を実行するため、プログラムに基づいて、処理に用いられるデータを記憶する。
【0139】
また、プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されて頒布することができる。なお、記録媒体は、磁気テープ、フラッシュメモリ、光ディスク、光磁気ディスク又は磁気ディスク等のメディアである。さらに、プログラムは、電気通信回線を通じて頒布することができる。
【0140】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0141】
本国際出願は2020年3月17日に出願された日本国特許出願2020-046621号に基づく優先権を主張するものであり、2020-046621号の全内容をここに本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0142】
1 生体検出システム
2 被験者
10F1 信号取得部
10F2 フィルタ部
10F3 周波数分析部
10F4 分散値計算部
10F5 第1統計量計算部
10F6 判断部
10F7 閾値設定部
10F8 指標計算部
11 アンプ
12 ドップラーレーダ
13 フィルタ
PK1 第1ピーク点
PK2 第2ピーク点