(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ウェアラブル機器用防熱カバー
(51)【国際特許分類】
G04B 43/00 20060101AFI20240620BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20240620BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20240620BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G04B43/00 G
A61B5/02 310P
A61B5/0245 P
A61B5/11 200
(21)【出願番号】P 2024009857
(22)【出願日】2024-01-26
【審査請求日】2024-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】石神 稜大
(72)【発明者】
【氏名】林 大稀
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-229166(JP,A)
【文献】特開平02-253189(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114938409(CN,A)
【文献】特開2022-149317(JP,A)
【文献】中国実用新案第213545051(CN,U)
【文献】中国実用新案第207380463(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 43/00
A61B 5/00 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に装着して使用するウェアラブル機器
の機器本体のうち、前記人体と反対側に位置する表面と、前記表面と接続する側面と、を被覆するように、前記ウェアラブル機器に着脱可能に装着され、
前記機器本体は内部機構を備えており、
前記表面および前記側面に沿う位置に伝熱抑制部を有
し、前記伝熱抑制部が前記機器本体への伝熱を抑制することにより、外部熱によって発生する前記内部機構の動作不良を抑制する、
ように構成されているウェアラブル機器用防熱カバー。
【請求項2】
請求項1に記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、
前記内部機構を露出させる露出部を有
し、前記内部機構は、前記人体に接触して生体情報を取得する生体情報取得部である、
ように構成されているウェアラブル機器用防熱カバー
。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、
前記伝熱抑制部は、蓄熱材を有する、
ように構成されているウェアラブル機器用防熱カバー。
【請求項4】
人体に装着して使用するウェアラブル機器に着脱可能に装着され、
前記ウェアラブル機器への伝熱を抑制する伝熱抑制部を有し、
前記伝熱抑制部は
、蓄熱材を容器に封入した蓄熱部材を分離可能に収容して
おり、前記伝熱抑制部が前記機器本体への伝熱を抑制することにより、外部熱によって発生する前記内部機構の動作不良を抑制する、
ように構成されているウェアラブル機器用防熱カバー。
【請求項5】
請求項4に記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、
前記蓄熱部材を収容する収容部と、
前記収容部を挟んで対向する位置に設けられ、前記蓄熱部材を前記収容部に挿入する挿入口と、
を有する、
ように構成されているウェアラブル機器用防熱カバー。
【請求項6】
人体に装着して使用するウェアラブル機器に着脱可能に装着され、
前記ウェアラブル機器への伝熱を抑制する伝熱抑制部を有し、
前記伝熱抑制部にて
、蓄熱材
が容器に封入された蓄熱部材が一体に設けられて
おり、
前記伝熱抑制部が前記機器本体への伝熱を抑制することにより、外部熱によって発生する前記内部機構の動作不良を抑制する、
ように構成されているウェアラブル機器用防熱カバー。
【請求項7】
請求項3に記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、
前記伝熱抑制部は、
前記ウェアラブル機器用防熱カバーに設けられたキャビティと、
前記キャビティに充填された前記蓄熱材と、
を有する、
ように構成されているウェアラブル機器用防熱カバー。
【請求項8】
請求項1、請求項4、請求項6の何れか1つに記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、
前記伝熱抑制部を有し、内部機構を備える前記ウェアラブル機器の機器本体を被覆可能なカバー本体と、
前記カバー本体に接続し、前記機器本体を前記人体に装着する装着ベルトと、
を有する、
ように構成されているウェアラブル機器用防熱カバー。
【請求項9】
請求項8に記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、
前記装着ベルトは、前記カバー本体に着脱可能に接続する、
ように構成されているウェアラブル機器用防熱カバー。
【請求項10】
人体に装着して使用するウェアラブル機器に着脱可能に装着され、
前記ウェアラブル機器への伝熱を抑制する伝熱抑制部を有するウェアラブル機器用防熱カバーであって、
前記伝熱抑制部を有し、内部機構を備える前記ウェアラブル機器の機器本体を被覆可能なカバー本体と、
前記カバー本体に接続し、前記機器本体を前記人体に装着する装着ベルトと、
を有し、
前記装着ベルトは、前記カバー本体に着脱可能に接続し、
前記カバー本体は、可撓性を有する素材によってブロック状に形成され、
前記装着ベルトは、引張荷重に対する強度が前記カバー本体の素材より大きい素材によって帯状に形成されている、
ように構成されているウェアラブル機器用防熱カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術分野は、ウェアラブル機器に装着されるウェアラブル機器用防熱カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
時計、スマートウォッチ、心拍計測機能つきリストバンドなど、人体に装着して使用するウェアラブル機器が、日常生活で使用されている。ウェアラブル機器の動作保証温度は、一般的に、日常生活の環境温度範囲に設定されている。動作保証温度帯域は、例えば、-10℃~50℃であり、上限温度は高くても60℃程度である。一方、ウェアラブル機器の使用態様は、多様化し、動作保証温度帯域外で使用したいというニーズがある。例えば、昨今のサウナブームにより、心拍数や血圧などの生体情報を計測可能なウェアラブル機器をサウナ室に持ち込み、自分の状態を確認したいというニーズである。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献1には、外装ケースに動作可能に支持される時計本体部に耐熱部を設けることで、時計本体部内への入熱を抑制するウェアラブル機器が開示されている。また、特許文献2には、内部機構を収容する内ケースと、内ケースを覆う外ケースとの間に、線状のシール材を配置し、内ケースとシール材との間に密閉空間を有することで、内部機構への伝熱を抑制する携帯時計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-149317号公報
【文献】特開2009-236531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に記載のウェアラブル機器は、機器本体自体に防熱構造が備えられている。一方、防熱構造を備えていないウェアラブル機器の防熱対策に関する技術については、発見されなかった。よって、現状では、例えば、サウナなどの動作保証温度帯域外の温度環境で使用できるウェアラブル機器は、特許文献1および特許文献2記載のウェアラブル機器のように機器本体に防熱構造を備えるものに制約されていた。今後、ウェアラブル機器は用途に応じて様々なニーズが考えられることから、ウェアラブル機器の種類を問わず、ウェアラブル機器に防熱機能を付加できる技術が、求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書において開示するウェアラブル機器用防熱カバーは、(1)人体に装着して使用するウェアラブル機器に着脱可能に装着され、前記ウェアラブル機器への伝熱を抑制する伝熱抑制部を有する、ように構成されている。
【0007】
上記構成を有するウェアラブル機器用防熱カバーは、伝熱抑制部によってウェアラブル機器への伝熱速度を遅らせる。そのため、ウェアラブル機器は、機器自体が防熱構造を備えていなくても、ウェアラブル機器用防熱カバーが装着されることによって防熱機能が付加され、例えば、サウナや夏場の炎天下における工事作業などのように、非日常的な温度環境で使用される場合でも、熱による動作不良が抑制される。ウェアラブル機器用防熱カバーは、ウェアラブル機器に着脱可能に装着できるので、機種や形態など、種類が異なるウェアラブル機器に装着して防熱機能を付加できる。よって、上記構成のウェアラブル機器用防熱カバーによれば、ウェアラブル機器の種類を問わず、ウェアラブル機器に防熱機能を付加できる。
【0008】
(2)(1)に記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、前記ウェアラブル機器に設けられた生体情報取得部であって、前記人体に接触して生体情報を取得する前記生体情報取得部を露出させる露出部を有する、ことが好ましい。
【0009】
上記構成を有するウェアラブル機器用防熱カバーは、生体情報取得部を露出部から露出させて人体に接触させることができるので、ウェアラブル機器の生体情報取得機能を損なわないように、ウェアラブル機器に防熱機能を付加できる。
【0010】
(3)(1)または(2)に記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、内部機構を備える前記ウェアラブル機器の機器本体を被覆する位置に、前記伝熱抑制部を有する、ことが好ましい。
【0011】
上記構成を有するウェアラブル機器用防熱カバーは、伝熱抑制部によってウェアラブル機器の内部機構を熱から積極的に保護できる。
【0012】
(4)(1)から(3)の何れか1つに記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、前記伝熱抑制部は、蓄熱材を有する、ことが好ましい。
【0013】
上記構成を有するウェアラブル機器用防熱カバーは、蓄熱材の熱交換能力を利用してウェアラブル機器への伝熱速度を遅らせるので、コンパクトな構造で高い防熱効果を得ることが期待できる。
【0014】
(5)(4)に記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、前記伝熱抑制部は、前記蓄熱材を容器に封入した蓄熱部材を分離可能に収容している、ことが好ましい。
【0015】
上記構成を有するウェアラブル機器用防熱カバーは、蓄熱部材と分離可能なので、例えば、劣化した蓄熱部材を交換して使用し続けることができる。
【0016】
(6)(5)に記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、前記蓄熱部材を収容する収容部と、前記収容部を挟んで対向する位置に設けられ、前記蓄熱部材を前記収容部に挿入する挿入口と、を有する、ことが好ましい。
【0017】
上記構成を有するウェアラブル機器用防熱カバーは、例えば、一方の挿入口から収容部に入った温水が他方の挿入口から排出されるので、蓄熱部材の熱交換効率の低下が抑制される。
【0018】
(7)(4)に記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、前記伝熱抑制部は、前記蓄熱材を容器に封入した蓄熱部材が前記ウェアラブル機器用防熱カバーと一体に設けられている、ことが好ましい。
【0019】
上記構成を有するウェアラブル機器用防熱カバーは、蓄熱部材が一体に設けられているので、蓄熱部材の周囲の空気層が抑制される。これにより、ウェアラブル機器用防熱カバーは、蓄熱部材によってウェアラブル機器への伝熱速度を遅らせる効果の向上が期待できる。また、ウェアラブル機器用防熱カバーは、蓄熱部材を取り外さずに丸洗いして衛生的に繰り返し使用できる。
【0020】
(8)(4)に記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、前記伝熱抑制部は、前記ウェアラブル機器用防熱カバーに設けられたキャビティと、前記キャビティに充填された前記蓄熱材と、を有する、ことが好ましい。
【0021】
上記構成を有するウェアラブル機器用防熱カバーは、蓄熱材がキャビティに充填されて一体に設けられているので、蓄熱材と直接接触して熱交換できる。これにより、ウェアラブル機器用防熱カバーは、蓄熱材によってウェアラブル機器への伝熱速度を遅らせる効果の向上が期待できる。また、ウェアラブル機器用防熱カバーは、丸洗いして衛生的に繰り返し使用できる。
【0022】
(9)(1)から(8)の何れか1つに記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、前記伝熱抑制部を有し、内部機構を備える前記ウェアラブル機器の機器本体を被覆可能なカバー本体と、前記カバー本体に接続し、前記機器本体を前記人体に装着する装着ベルトと、を有する、ことが好ましい。
【0023】
上記構成を有するウェアラブル機器用防熱カバーは、例えば、ウェアラブル機器の機器本体に接続するバンドの交換が必要になった場合、バンドが取り外された機器本体をカバー本体によって被覆すれば、カバー本体に接続する装着ベルトがウェアラブル機器のバンドに代替して機器本体を人体に装着することができる。
【0024】
(10)(9)に記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、前記装着ベルトは、前記カバー本体に着脱可能に接続する、ことが好ましい。
【0025】
上記構成を有するウェアラブル機器用防熱カバーは、例えば、機器本体に接続するバンドを使用できる場合、装着ベルトをカバー本体から取り外し、バンドを用いて機器本体を人体に装着する。一方、ウェアラブル機器用防熱カバーは、例えば、機器本体に接続するバンドが損傷等で使用できず、機器本体から取り外された場合、装着ベルトをカバー本体に取り付け、装着ベルトがバンドに代替して機器本体を人体に装着することとする。よって、ウェアラブル機器用防熱カバーは、ウェアラブル機器のバンドの有無に応じて装着ベルトの接続有無を選択でき、形態が異なるウェアラブル機器に対応できる。
【0026】
(11)(10)に記載するウェアラブル機器用防熱カバーにおいて、前記カバー本体は、可撓性を有する素材によってブロック状に形成され、前記装着ベルトは、引張荷重に対する強度が前記カバー本体の素材より大きい素材によって帯状に形成されている、ことが好ましい。
【0027】
上記構成を有するウェアラブル機器用防熱カバーは、例えば、ブロック状のカバー本体を撓ませて機器本体を人体に密着させるように、カバー本体に接続する装着ベルトを人体に装着する。装着ベルトは、カバー本体との接続部分に引張荷重が作用する。装着ベルトは、引張荷重に対する強度がカバー本体の素材より大きい素材によって形成されている。よって、ウェアラブル機器用防熱カバーは、装着ベルトとカバー本体とをシリコンゴムなどの同じ素材で形成する場合と比べて、装着ベルトがカバー本体と接続する付近の破損が抑制される。
【発明の効果】
【0028】
本明細書に開示される技術によれば、ウェアラブル機器の種類を問わず、ウェアラブル機器に防熱機能を付加する技術が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態に係るウェアラブル機器用防熱カバーの使用例を示す図である。
【
図2】ウェアラブル機器用防熱カバーの装着例を示す図である。
【
図3】ウェアラブル機器用防熱カバーの分解斜視図である。
【
図4】ウェアラブル機器用防熱カバーの裏面図である。
【
図6】評価試験における計測点と試験結果を示す図である。
【
図7】第2実施形態に係るウェアラブル機器用防熱カバーの外観斜視図である。
【
図10】第3実施形態に係るウェアラブル機器用防熱カバーの外観斜視図である。
【
図11】第4実施形態に係るウェアラブル機器用防熱カバーの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本実施形態にかかるウェアラブル機器用防熱カバーについて、図面を参照して説明する。本実施形態は、生体情報取得機能を備えるウェアラブル機器に装着される防熱カバーを開示するものである。
【0031】
<第1実施形態>
図1に示すように、第1実施形態のウェアラブル機器用防熱カバー(以下「防熱カバー」とする)1は、例えば、人体の手首100に装着されるウェアラブル機器2に装着して使用される。
【0032】
(ウェアラブル機器の概略構成)
図1および
図2に示すように、ウェアラブル機器2は、機器本体21とバンド22とを備えている。機器本体21は、人体側に位置する裏面21cに、心拍数や血圧や皮膚温などの生体情報を取得可能な生体センサ23が、設けられている。生体センサ23は、「生体情報取得部」、「内部機構」の一例である。生体センサ23は、動作保証温度が日常生活の環境温度範囲内に設定されている。本実施形態の生体センサ23は、センサ面23aを人体に接触させて、生体情報を取得可能であり、動作保証温度帯域が-20℃以上60℃以下に設定されている。本実施形態の生体センサ23は、防水機能を有する。機器本体21は、生体センサ23への熱伝達を防ぐ防熱構造が一体的に設けられていない。バンド22は、機器本体21に接続し、手首100の太さに合わせて長さを自由に調整できる。
【0033】
(防熱カバーの構成)
防熱カバー1は、カバー本体3と蓄熱パック5とを有する。蓄熱パック5は「蓄熱部材」の一例である。カバー本体3は、ウェアラブル機器2の機器本体21を被覆するようにウェアラブル機器2に着脱可能に装着される。蓄熱パック5は、カバー本体3に収容され、機器本体21の裏面21c以外の面、すなわち、人体に非接触で外部熱が生体センサ23に伝熱する可能性がある部位に、配置されている。防熱カバー1は、蓄熱パック5の蓄熱能力を利用して、外部熱が機器本体21の生体センサ23に伝達される伝熱速度を抑制し、生体センサ23を外部熱から保護する防熱機能を有する。
【0034】
具体的には、
図3に示すように、カバー本体3は、平面視で略矩形状をなし、カバー本体3をウェアラブル機器2の機器本体21に取り付けるための一対の固定ベルト4A,4Bを備えている。一対の固定ベルト4A,4Bは、「第1固定部」、「第2固定部」の一例である。
【0035】
カバー本体3は、機器本体21に被せやすくするために、ドーム形状に形成されている。カバー本体3は、外皮31と内皮32とからなる二重構造をなし、外皮31と内皮32との間に蓄熱パック5を収容する収容部33が設けられている。
【0036】
外皮31は、ウェアラブル機器2のバンド22の長さ方向(以下「長さ方向」とする)の両端部に、一対の固定ベルト4A,4Bが設けられている。一対の固定ベルト4A,4Bの両端部は、それぞれ、長さ方向に直交する方向、すなわちバンド22の幅方向(以下「幅方向」とする)に延のび、留め具41が設けられている。固定ベルト4A(4B)は、留め具41の接合位置によって長さを自由に調整できる。留め具41は、熱伝導性の低いプラスチックなど、非金属材料で形成されている。留め具41は、例えば、面ファスナ、プラスチックボタンである。
【0037】
図4に示すように、収容部33は、固定ベルト4A,4Bより内側の位置であって、収容部33を挟んで対向する位置で、開口している。この開口部分によって、蓄熱パック5を収容部33に挿入するための挿入口34が形成されている。挿入口34の開口サイズは、蓄熱パック5より小さく設定され、蓄熱パック5の意図しない脱落を防止している。蓄熱パック5、収容部33、挿入口34は、「伝熱抑制部」の一例である。
【0038】
例えば、本実施形態の外皮31と内皮32とは、略矩形状に形成されている。外皮31は、ウェアラブル機器2の機器本体21を覆うことができるサイズを有する。内皮32は、長さ方向および幅方向の長さが、外皮31より短い。内皮32は、外皮31の長さ方向中央付近に配置され、幅方向両端部が外皮31の幅方向両端部に揃えて接合されている。挿入口34は、内皮32の長手方向両端部の非接合部分により形成されている。
【0039】
図5に示すように、蓄熱パック5は、外縁部51aが溶着された包装容器51と、包装容器51に封入される潜熱蓄熱材52と、を有する。潜熱蓄熱材52は、「蓄熱材」の一例である。包装容器51は、「容器」の一例である。本実施形態の包装容器51は、サウナ室の温度80℃以上110℃以下を考慮して120℃の熱に対する耐熱性を有する素材によって形成されている。また、包装容器51は、柔軟性を有する素材によって形成されている。包装容器51の素材は、さらに、耐薬品性、難燃性、耐候性、電気的安定性を有していてもよい。包装容器51は、例えば、塩化ビニール樹脂により形成されている。
【0040】
潜熱蓄熱材52は、所定の温度に融点が設定され、機器本体21の周辺温度の変化を抑制する。潜熱蓄熱材52は、ウェアラブル機器2の動作保証温度帯域の上限温度60℃に対応して、例えば、融点を30~60℃の範囲内に調整した物性を有することが好ましい。本実施形態の潜熱蓄熱材52は、融点が約40℃以上50℃以下に調整されている。蓄熱パック5は、潜熱蓄熱材52がゲル状をなし、カバー本体3の形状に合わせて自由に変形できる。潜熱蓄熱材52の組成は、例えば、特許6279778号公報、特許第6279784号公報、特許第6439059号公報、特許第6500152号公報、特許第6596549号公報、特許第6682712号公報、特許第6778840号公報、特許第7013616号公報、特許第7137654号公報などに開示されているので、説明を割愛する。潜熱蓄熱材52の組成は、これらに限定されない。
【0041】
本実施形態の蓄熱パック5は、十字形状をなし、平面視において矩形状をなす中央蓄熱部5aと、中央蓄熱部5aの四方から外向きに延設された側蓄熱部5b,5b,5c,5cと、を有する。中央蓄熱部5aは、機器本体21の裏面21cと反対側に位置する表面21bより大きいサイズに設けられ、表面21bに沿って配置可能である。側蓄熱部5b,5b,5c,5cは、中央蓄熱部5aに対して折り曲げ可能であり、機器本体21の側面21dに沿って配置可能である。機器本体21の裏面21cは「第1面」の一例であり、表面21bは「第2面」の一例であり、側面21dは「第3面」の一例である。
【0042】
(防熱カバー1の使用例)
続いて、防熱カバー1の使用例について説明する。ここでは、サウナを利用するユーザが、ウェアラブル機器2をサウナ室に持ち込んで、心拍数を確認する場合を例にして説明する。本実施形態では、サウナ室の室温が85℃とする。蓄熱パック5の潜熱蓄熱材52の融点は45℃とする。
【0043】
ユーザは、使用するウェアラブル機器2に防熱カバー1を装着する。すなわち、
図2に示すように、ユーザは、ウェアラブル機器の機器本体21に対して防熱カバー1を機器本体21の表面21b側から被せる。ユーザは、機器本体21の両側で一対の固定ベルト4A,4Bをそれぞれバンド22に巻き付け、固定ベルト4A,4Bの両端部をそれぞれ留め具41で接合する。防熱カバー1は、カバー本体3がドーム形状に形成されているので、機器本体21の表面21bと側面21dとを覆うようにウェアラブル機器2に取り付けやすい。カバー本体3の幅方向両端部は、固定ベルト4A,4Bの巻き付けに応じて、機器本体21の裏面21c側に折り込まれる。カバー本体3の幅方向両端部の間には、生体センサ23のセンサ面23aを露出させる間隙S1が形成されている。この間隙S1は、「露出部」の一例である。
【0044】
図1に示すように、防熱カバー1は、蓄熱パック5がカバー本体3の形状に倣って変形し、中央蓄熱部5aと側蓄熱部5b,5b,5c,5cとが機器本体21の表面21bと側面21dとに沿って配置される。
【0045】
ユーザは、上述のように防熱カバー1が装着されたウェアラブル機器2のバンド22に手首100を通し、防熱カバー1の間隙S1から露出する生体センサ23のセンサ面23aを手首100に密着させるようにバンド22を締める。ウェアラブル機器2の機器本体21は、センサ面23a以外の部分が防熱カバー1で覆われた状態で、ユーザの手首100に装着される。
【0046】
ユーザは、手首100にウェアラブル機器2を装着する状態で、室温が約85℃のサウナ室に入る。ウェアラブル機器2は、生体センサ23が手首100に接触するセンサ面23aを介して、ユーザの心拍数を計測する。
【0047】
本実施形態のウェアラブル機器2は、生体センサ23の動作保証温度帯域の上限温度が60℃であり、上限温度を20℃以上も超えるサウナ室にそのまま持ち込まれると、生体センサ23が故障して心拍数を計測できなくなる可能性が高い。
【0048】
しかし、ウェアラブル機器2は、機器本体21が防熱カバー1によって覆われている。機器本体21は、カバー本体3に収容される蓄熱パック5によって、センサ面23a以外の部分が覆われている。サウナ入浴中、蓄熱パック5が機器本体21の周りでサウナ室の高温空気と熱交換するので、生体センサ23への伝熱速度が遅くなる。このように、防熱カバー1が動作保証温度帯域の上限温度を超える熱から生体センサ23を保護するので、サウナ入浴中、生体センサ23がユーザの心拍数を安定して計測できる。
【0049】
防熱カバー1は、カバー本体3の幅方向両端部が手首100に沿って配置され、さらに、一対の固定ベルト4A,4Bがバンド22にきっちり巻き付けられて留め具41で固定されている。そのため、サウナ室の高温の空気が、防熱カバー1の内部に入り込みにくい。よって、防熱カバー1は、サウナ室の高温の空気がカバー本体3内に入り込んで生体センサ23の周囲温度を上昇させることを、抑制できる。
【0050】
防熱カバー1は、手首100側に位置する留め具41が非金属製で設けられているため、留め具41がサウナ入浴中に加熱されない。よって、留め具41の温度上昇によりユーザに不快感を与えることが回避される。
【0051】
サウナ室に所定時間(例えば8~15分)いたユーザは、水風呂に入ったり、外気の中で休憩したりする。防熱カバー1は、蓄熱パック5が冷水あるいは外気と熱交換して冷却され、蓄熱能力が回復する。蓄熱パック5は、潜熱蓄熱材52の封入量が少量で、潜熱蓄熱材52が包装容器51内に薄く広がっているため、水風呂入浴中や休憩中に蓄熱能力を十分回復できる。
【0052】
防熱カバー1は、挿入口34が一対の固定ベルト4A,4Bより内側の二カ所に設けられ、収容部33の長さ方向両端部が開口しているため、例えば、風呂入浴時に水が一方の挿入口34から収容部33に流れ込んでも、その水が他方の挿入口34から排出され、収容部33内に溜まらない。よって、防熱カバー1は、カバー本体3内に入り込んだ風呂水等で蓄熱パック5の熱交換効率が低下しにくい。
【0053】
ユーザは、休憩後、サウナ室に再入室する。このとき、防熱カバー1は、カバー本体3が濡れていても、最初にその水分にサウナ室の高温空気が熱伝達され、次にその熱と蓄熱パック5との間で熱交換が行われるため、生体センサ23への伝熱速度をより遅くする方向に作用する。
【0054】
ユーザは、サウナ、水風呂、休憩のセットを何回か繰り返す。その間、蓄熱パック5が熱交換を繰り返す。防熱カバー1は、蓄熱パック5が完全に再生されていなくても、サウナ室に持ち込まれるウェアラブル機器2の温度上昇を回避し、生体センサ23の異常を防止できる。よって、ウェアラブル機器2は、サウナ利用中継続して、ユーザの心拍数を計測できる。ユーザは、ウェアラブル機器2が計測した心拍数をサウナ利用中に適宜確認してもよいし、サウナ利用後にまとめて確認してもよい。ウェアラブル機器2は、異常な心拍数を検知した場合にバイブレーション等で異常をユーザに知らせてもよい。
【0055】
サウナの利用が終わったユーザは、バンド22を緩めてウェアラブル機器2を防熱カバー1ごと手首100から外す。ユーザは、一方の挿入口34を介してカバー本体3から蓄熱パック5を取り出し、カバー本体3と蓄熱パック5とを分離させる。カバー本体3は、洗濯機等で洗うことで汚れが落ち、衛生的に使用できる。蓄熱パック5は、空気や水に晒し、別の防熱カバーに収容して使い回すことができる。防熱カバー1は、挿入口34が収容部33を挟んで対向する二カ所に設けられているので、カバー本体3に蓄熱パック5を出し入れしやすい。
【0056】
このような防熱カバー1は、ウェアラブル機器2の機器本体21に被せるようにして取り付けられる。そのため、防熱カバー1は、形状やサイズが異なるウェアラブル機器2の機器本体21に着脱可能に装着でき、使い勝手が良い。応する位置に蓄熱パックを配置しやすくなり、機器本体の温度上昇を効率的に抑制できる。
【0057】
(防熱性能試験について)
続いて、防熱性能試験について説明する。発明者は、防熱カバー1の防熱性能を調べる防熱性能試験を行った。防熱性能試験の評価対象には、蓄熱パック5がカバー本体3の収容部33に収容された防熱カバー1をウェアラブル機器2に装着した実施例と、綿化繊がカバー本体3の収容部33に収容された防熱カバーをウェアラブル機器2に装着した比較例2と、防熱カバーをウェアラブル機器に装着しない比較例1とを、使用した。人の平均皮膚温と同程度の34℃の水を入れたボトルを人の腕と見立て、各比較対象のウェアラブル機器2をボトルに巻きつけた。ウェアラブル機器2は、同一機種である。
【0058】
カバー本体3は、フェルト地(ポリエステル100%)により形成されている。実施例の蓄熱パック5には、融点温度を45℃に調整した潜熱蓄熱材52が10g封入されている。
【0059】
試験では、
図6に示すように、機器本体21の第1~第4測定点P1~P4に、温度センサを取り付けた。すなわち、第1測定点P1は、
図6(A)に示すように、生体センサ23のセンサ面23aである。第2測定点P2は、
図6(B)に示すように、機器本体21の表面21bの中央位置、すなわちセンサ面23aと反対側の位置である。第3測定点P3は、機器本体21とバンド22との接続位置である。第4測定点P4は、
図6(C)に示すように、機器本体21のバンド22と接続しない側面21dの中央位置、すなわち、生体センサ23の側面23bである。試験では、平均室温85.6℃のサウナ室に実施例、比較例1、比較例2の評価対象を同時に設置し、第1~第4測定点P1~P4の測定温度を測定した。評価対象ごとに、第1~第4測定点P1~P4の測定温度を平均した値を、
図6(d)に示す。
【0060】
図6(d)に示すように、50℃の到達時間は、比較例1は約1.5分、比較例2は約9.5分、実施例は約11.8分であった。また、60℃の到達時間は、比較例1は約56分、比較例2は約20.0分、実施例は30分以上であった。よって、防熱カバー1は、80℃以上の厳しい高温環境下において、10gの潜熱蓄熱材52で30分以上、動作保証温度帯域を超える熱から生体センサ23を保護できることが分かった。ユーザが高温のサウナ室に連続30分以上滞在することは、熱中症リスクが著しく高くなるため、安全上有り得ない。本試験により、蓄熱パック5を備える防熱カバー1は、サウナ利用時にウェアラブル機器2の生体センサ23を厳しい高温熱から保護できることを、確認できた。
【0061】
以上説明したように、第1実施形態の防熱カバー1は、蓄熱パック5によってウェアラブル機器2への伝熱速度を遅らせる。そのため、ウェアラブル機器2は、機器自体が防熱構造を備えていなくても、防熱カバー1が装着されることによって防熱機能が付加され、例えば、サウナや夏場の炎天下における工事作業などのように、非日常的な温度環境で使用される場合でも、熱による動作不良が抑制される。防熱カバー1は、ウェアラブル機器2に着脱可能に装着できるので、機種や形態など、種類が異なるウェアラブル機器2に装着して防熱機能を付加できる。よって、第1実施形態の防熱カバー1によれば、ウェアラブル機器2の種類を問わず、ウェアラブル機器2に防熱機能を付加することができる。
【0062】
第1実施形態の防熱カバー1は、生体センサ23を備える前記ウェアラブル機器の機器本体21を被覆する位置に、蓄熱パック5を有するので、蓄熱パック5によってウェアラブル機器2の生体センサ23を熱から積極的に保護できる。
【0063】
第1実施形態の防熱カバー1は、蓄熱パック5と分離可能なので、例えば、劣化した蓄熱パック5を交換して使用し続けることができる。
【0064】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態に係る防熱カバーについて、
図7~
図9を参照しつつ詳細に説明する。第2実施形態の防熱カバー101は、潜熱蓄熱材52がカバー本体103に一体に設けられている。この点が、潜熱蓄熱材52を充填した蓄熱パック5がカバー本体3と別体の第1実施形態の防熱カバー1と相違する。ここでは、第1実施形態と同様の構成や処理に同じ符号を付して、適宜説明を省略する。
【0065】
図7に示す防熱カバー101は、略直方体のブロック状をなすカバー本体103を備え、カバー本体103の対向する側面に一対の固定ベルト104A,104Bが結合されている。カバー本体103と一対の固定ベルト104A,104Bとは、撥水性および可撓性を有する素材で形成されている。本実施形態のカバー本体103と一対の固定ベルト104A,104Bとは、シリコンゴムで形成されている。
【0066】
図8および
図9に示すように、カバー本体103は、セット部103aが溝状に形成され、断面コの字形をなす。カバー本体103は、機器本体21の表面21bと側面21dとを被覆するように、ウェアラブル機器2に装着できる。
【0067】
カバー本体103は、セット部103aの幅方向両端部に沿って、一対の突片103b,103bが設けられている。一対の突片103b,103bは、セット部103aの開口端部から内向きに突出するように設けられ、一対の突片103b,103bの間には、バンド22の幅より狭い間隙103cが設けられている。間隙103cは、「露出部」の一例である。
【0068】
カバー本体103は、セット部103aの軸線方向両端部に、ウェアラブル機器2のバンド22に巻き付けられる帯状の固定ベルト104A,104Bがそれぞれ接続している。一対の固定ベルト104A,104Bは、それぞれ、セット部103aの底部に対応する位置でカバー本体103に接続し、センサ面23a側と異なる位置(本実施形態では上面側、手の甲側)で両端部が留め具41を介して結合される。
【0069】
図8に示すように、カバー本体103は、機器本体21を被覆する位置にキャビティ103gが形成され、そのキャビティ103gに潜熱蓄熱材52が充填されている。キャビティ103gおよび潜熱蓄熱材52は、「伝熱抑制部」の一例である。本実施形態では、キャビティ103gは、機器本体21の表面21bと側面21dとに対応する位置に亘ってコの字形に形成され、機器本体21を被覆する位置に潜熱蓄熱材52が収容されている。さらに、本実施形態では、キャビティ103gが一対の突片103b,103bにも形成されている。なお、キャビティ103gは、例えば、表面21bと側面21dとに対応する位置に分離して形成されてもよい。
【0070】
このような防熱カバー101は、間隙103cを広げるようにカバー本体103を撓ませて、ウェアラブル機器2の機器本体21をセット部103aに挿入する。カバー本体103が自身の弾性力で元の形状に戻ると、機器本体21を挟むように保持する。この際、一対の突片103b,103bの間隙103cが狭められ、機器本体21が一対の突片103b,103bに係止されてセット部103aから脱落しにくくなる。防熱カバー101は、固定ベルト104A,104Bを各々バンド22に巻き付け、留め具41で両端部を結合することで、ウェアラブル機器2に装着される。
【0071】
例えば、サウナ利用者は、防熱カバー101を装着したウェアラブル機器2を手首100に付け、サウナ室に入室する。防熱カバー101は、カバー本体103のキャビティ103gに充填される潜熱蓄熱材52がキャビティ103gの内壁を介して外部熱と熱交換し、外部熱の生体センサ23への伝熱速度を遅らせる。これにより、ウェアラブル機器2の生体センサ23は、動作保証温度帯域外の熱による動作不良が抑制される。防熱カバー101は、ウェアラブル機器2の機器本体21に着脱可能に装着できるので、種類が異なるウェアラブル機器2に装着して防熱機能を付加できる。よって、本実施形態の防熱カバー101によれば、ウェアラブル機器2の種類を問わず、ウェアラブル機器2に防熱機能を付加できる。
【0072】
また、防熱カバー101は、カバー本体103がシリコンゴムで形成されているので、ウェアラブル機器2のバンド22の巻き付けに応じてカバー本体103が弾性変形し、手首100に密着できる。これにより、例えば、サウナ室の空気が、カバー本体103と手首100との間から入り込みにくくなり、機器本体21への伝熱速度が抑制される。
【0073】
しかも、防熱カバー101は、一対の突片103b,103bがバンド22の下側に入り込み、バンド22と手首100との間に形成される隙間を抑制する。よって、防熱カバー101は、機器本体21とバンド22との接続部分からセット部103aへの入熱を抑制し、機器本体21への伝熱速度を遅らせることができる。
【0074】
ここで、本実施形態の固定ベルト104A,104Bは、シリコンゴムで形成され、ファブリック素材で形成された固定ベルトと比べて、厚みが厚い。そのため、固定ベルト104A,104Bの両端部を手首100側(センサ面23a側)で結合すると、カバー本体103が手首100から浮き上がり、センサ面23aを手首100に接触しないおそれがある。
【0075】
そこで、防熱カバー101は、センサ面23a側と異なる位置で固定ベルト104A,104Bの両端部をそれぞれ留め具41を介して結合する。これによれば、防熱カバー101を取り付けられたウェアラブル機器2を手首100に装着した場合に、センサ面23aが手首100に密着し、生体センサ23が生体情報を計測できる。
【0076】
以上説明した第2実施形態の防熱カバー101は、潜熱蓄熱材52がカバー本体103のキャビティ103gに充填されてカバー本体103と一体に設けられているので、潜熱蓄熱材52と直接接触して熱交換できる。これにより、防熱カバー101は、潜熱蓄熱材52によって機器本体21への伝熱速度を遅らせる効果の向上が期待できる。また、防熱カバー101は、例えば、サウナ室に所定時間滞在した後、例えば、冷水浴を行った際に、潜熱蓄熱材52が効率良く再生する。また、防熱カバー101は、丸洗いして衛生的に繰り返し使用できる。また、カバー本体103が撥水性のある素材で形成されているので、洗浄後に乾きやすい。
【0077】
<第3実施形態>
続いて、第3実施形態に係る防熱カバーについて、
図10を参照しつつ詳細に説明する。第3実施形態の防熱カバー201は、カバー本体203に装着ベルト204A,204Bが一体に設けられている。この点が、装着ベルトを備えない第1実施形態の防熱カバー1と相違する。ここでは、第1実施形態と同様の構成や処理に同じ符号を付して、適宜説明を省略する。
【0078】
防熱カバー201は、カバー本体203と一対の装着ベルト204A,204Bとを一体成形したものである。カバー本体203と一対の装着ベルト204A,204Bとは、撥水性および可撓性を有する素材で形成されている。本実施形態のカバー本体203と一対の装着ベルト204A,204Bとは、シリコンゴムで形成されている。
【0079】
カバー本体203は、略直方体のブロック状をなし、機器本体21を保持するための保持孔203aが下面に形成されている。カバー本体203は、潜熱蓄熱材52が充填されるキャビティ203gを備える。キャビティ203gおよび潜熱蓄熱材52は、「伝熱抑制部」の一例である。キャビティ203gは、カバー本体203のうち、保持孔203aに保持される機器本体21の表面21bと側面21dとを被覆する位置、すなわち、保持孔203aの外側の位置に、設けられている。
【0080】
一対の装着ベルト204A,204Bは、薄い帯形状をなし、カバー本体203の保持孔203aを挟んで対向する側面に接続している。装着ベルト204Bは、バックル205を備える。装着ベルト204Aは、バックル205に係合する複数の調節穴206が形成されている。本実施形態のバックル205は、プラスチックなど、伝熱性の低い非金属材料で形成されている。バックル205は、防熱カバー201が高温環境で使用されない場合、金属で形成されていてもよい。
【0081】
本実施形態の防熱カバー201は、例えば、バンド22が取り外されたウェアラブル機器2の機器本体21、あるいは、バンドを備えないウェアラブル機器の機器本体を、保持孔203aに嵌め込み、生体センサ23のセンサ面23aを保持孔203aの開口部から露出させた状態で保持する。保持孔203aの開口部には、機器本体21の脱落を防止する突片があってもよい。
【0082】
防熱カバー201は、装着ベルト204A,204Bを手首100に巻き付け、手首100の太さに合わせてバックル205を調節穴206に係合させる。これにより、防熱カバー201は、カバー本体203が装着ベルト204A,204Bに直接引っ張られて手首100に沿うように弾性変形し、生体センサ23のセンサ面23aを手首100に密着させることができる。また、カバー本体203が手首100に強く密着し、保持孔203a内の機器本体21への伝熱速度を遅らせることが可能になる。
【0083】
防熱カバー201は、機器本体21の表面21bと側面21dとに対応する位置に形成されたキャビティ203gに潜熱蓄熱材52が充填されている。そのため、サウナ室では、潜熱蓄熱材52が外部熱と熱交換し、生体センサ23への伝熱速度が遅くなる。
【0084】
以上説明したように、第3実施形態の防熱カバー201は、潜熱蓄熱材52がキャビティ203gに充填されて一体に設けられているので、潜熱蓄熱材52と直接接触して熱交換できる。これにより、防熱カバー201は、潜熱蓄熱材52によって機器本体21への伝熱速度を遅らせる効果の向上が期待できる。また、防熱カバー201は、丸洗いして衛生的に繰り返し使用できる。
【0085】
また、第3実施形態の防熱カバー201は、例えば、ウェアラブル機器2の機器本体21に接続するバンド22の交換が必要になった場合、バンド22が取り外された機器本体21をカバー本体203によって被覆すれば、カバー本体203に接続する装着ベルト204A,204Bがウェアラブル機器2のバンド22に代替して機器本体21を人体の手首100に装着することができる。
【0086】
<第4実施形態>
続いて、第4実施形態に係る防熱カバーについて、
図11を参照しつつ詳細に説明する。第4実施形態の防熱カバー301は、カバー本体303に装着ベルト304A,304Bが着脱可能に接続できる。この点が、装着ベルト204A,204Bがカバー本体203に一体に設けられた第3実施形態の防熱カバー201と相違する。ここでは、第3実施形態と同様の構成や処理に同じ符号を付して、適宜説明を省略する。
【0087】
防熱カバー301は、カバー本体303と、装着ベルト304A.304Bとを備え、両者は異なる素材で形成されている。カバー本体303は、可撓性のある素材によって、直方体のブロック状に形成されている。装着ベルト304A,304Bは、引張荷重に対する強度が大きい素材によって、薄い帯状に形成されている。本実施形態では、カバー本体303はシリコンゴムによって形成され、装着ベルト304A,304Bはファブリック素材によって形成されている。
【0088】
カバー本体303の下面には、機器本体21を保持する機器本体保持孔303aが開設されている。カバー本体303の下面には、機器本体保持孔303aを挟んで対向する位置に、バンド22を保持するバンド保持溝303e,303eが開設されている。バンド保持溝303e,303eの開口部には、幅方向両端部に沿って一対の突片303b,303bが内向きに突設され、バンド22の脱落を防ぐことができる。カバー本体303は、潜熱蓄熱材52が充填されるキャビティ303gが機器本体保持孔303aの外側に沿って形成されている。すなわち、カバー本体303は、機器本体保持孔303aに装着された機器本体21の表面21bと、側面21dとに対応する位置にキャビティ303gが形成され、潜熱蓄熱材52が一体に設けられている。キャビティ303gおよび潜熱蓄熱材52は、「伝熱抑制部」の一例である。
【0089】
カバー本体303のバンド保持溝303e,303eが開口する側面には、フック311A,311Bがインサート成形などで一体成形されている。装着ベルト304A,304Bは、フック311A,311Bに係合するフック穴307A,307Bが形成されている。フック311A,311Bは、人体に接触しない位置に設けられている。フック311A,311Bは、金属製でも、非金属製でもよい。
【0090】
第4実施形態の防熱カバー301は、例えば、ウェアラブル機器2のバンド22を使用できる場合、装着ベルト304A,304Bがフック311A,311Bから外される。防熱カバー301は、防熱カバー201のカバー本体203と同様に、ウェアラブル機器2の機器本体21とバンド22とがカバー本体303に装着される。
【0091】
一方、防熱カバー301は、例えば、ウェアラブル機器2のバンド22が損傷等で使用できず、機器本体21から取り外された場合、装着ベルト304A,304Bがフック311A,311Bに取り付けられる。防熱カバー301は、バンド22が取り外された機器本体21が機器本体保持孔303aに嵌め込まれた状態で、装着ベルト304A,304Bがバンド22に代替して機器本体21を人体に装着する。
【0092】
よって、防熱カバー301は、ウェアラブル機器2のバンド22の有無に応じて装着ベルト304A,304Bの接続有無を選択でき、形態が異なるウェアラブル機器2に対応できる。
【0093】
防熱カバー301は、カバー本体303を引っ張って弾性変形させるように、装着ベルト304A,304Bを結合することで、生体センサ23を手首100に密着させることができる。この場合、装着ベルト304A,304Bは、フック311A,311Bに係合するフック穴307A,307B付近に大きな荷重が作用する。本実施形態の装着ベルト304A,304Bは、引張荷重に対する強度がカバー本体303の素材より大きい素材で形成されている。よって、防熱カバー301は、装着ベルト304A,304Bとカバー本体303とを同じ素材(本実施形態ではシリコンゴム)で形成する場合と比べて、装着ベルト304A,304Bのフック穴307A,307B付近の破損が抑制される。
【0094】
なお、本実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、防熱カバー1は、平面形状や四角錐形状など、ドーム形状以外の形状に形成されていてもよい。防熱カバー1,101を装着するウェアラブル機器2は、上記実施形態と機種や形態などの種類が異なってもよい。ウェアラブル機器2は、耐熱構造を備えるものであってもよい。
【0095】
例えば、防熱カバー1,101,201,301は、蓄熱パック5あるいは潜熱蓄熱材52の代わりに、断熱部材を「伝熱抑制部」の一例として使用してもよい。ただし、防熱カバー1,101,201,301は、蓄熱パック5あるいは潜熱蓄熱材52が「伝熱抑制部」の一例として使用されることで、潜熱蓄熱材52の熱交換能力を利用してウェアラブル機器2への伝熱速度を遅らせるので、コンパクトな構造で高い防熱効果を得ることが期待できる。
【0096】
例えば、防熱カバー1,101,201,301は、サウナのような著しい高温環境化でなくても、夏期屋外での猛暑環境下での作業時の安全管理などでウェアラブル機器を利用する際にも、生体センサ等を熱から守るために使用してもよい。
【0097】
例えば、防熱カバー1,101,201,301は、腕時計など、生体情報取得機能を備えないウェアラブル機器に装着されてもよい。ウェアラブル機器2は、例えばスマートウォッチなどのように、生体情報取得機能だけでなく、歩数などの活動量を計測する機能や位置情報取得機能など、別の機能を有するものであってもよい。ウェアラブル機器2は、腕や脚、胸など、手首100以外の場所に装着されるものでもよい。
【0098】
例えば、防熱カバー1,101,201,301は、例えば、機器本体21を完全に覆うようにウェアラブル機器2に取り付けられてもよい。つまり、露出部がなくてもよい。ただし、防熱カバー1,101は、生体センサ23を露出させる露出部(上記形態では間隙S1,103c、保持孔203a,303aの開口部)を有することで、生体センサ23を露出部から露出させて人体に接触させることができるので、ウェアラブル機器の生体情報取得機能を損なわないように、ウェアラブル機器に防熱機能を付加できる。
【0099】
例えば、蓄熱パック5、キャビティ103g、および、キャビティ203g,303gは、例えば、機器本体21の表面21bのみ、表面21bと側面21dの一部など、必ずしも表面21bと側面21dに対応する位置に配置されなくてもよい。ただし、防熱カバー1,101,201,301は、表面21bと側面21dに対応する位置に蓄熱パック5、キャビティ103g、あるいは、キャビティ203g,303gを設けることで、ウェアラブル機器を人体に装着した場合に外気に接触する位置に潜熱蓄熱材52を有する。これにより、防熱カバー1,101,201,301は、潜熱蓄熱材52によって生体センサ23を熱から効果的に保護できる。
【0100】
例えば、防熱カバー1に設けられる挿入口34は、1箇所でもよいし、3箇所以上でもよい。ただし、防熱カバー1は、カバー本体3に接続する固定ベルト4A,4Bより内側の二箇所であって、収容部33を挟んで対向する位置に、挿入口34が設けられていることにより、例えば、一方の挿入口34から収容部33に入った温水が他方の挿入口34から排出されるので、蓄熱パック5の熱交換効率の低下が抑制される。また、防熱カバー1は、挿入口34を介して自由に蓄熱パック5を外皮31と内皮32との間の収容部33に自由に出し入れすることができ、カバー本体3を洗うことができる。
【0101】
例えば、蓄熱パック5は、円形など、十字型形状以外の形状でもよい。ただし、防熱カバー1は、蓄熱パック5が十字形状をなすことで、直方体形状や円柱形状など、外形が異なる機器本体の周りに蓄熱パック5を配置しやすい。
【0102】
例えば、カバー本体3は、外皮31と内皮32とを幅方向両端部に沿って接合する以外の方法で形成してもよい。例えば、カバー本体3は、筒形状の素材や、平面形状の素材を1箇所で接合して筒状にした素材により、形成してもよい。
【0103】
例えば、防熱カバー101,201,301は、カバー本体103,203,303に蓄熱パック5を一体成形してもよい。このような防熱カバーは、蓄熱パック5が機器本体21を被覆する位置に一体的に配置されることで、蓄熱パック5の周囲の空気層が抑制される。これにより、防熱カバーは、蓄熱パック5によって機器本体21への伝熱速度を遅らせる効果の向上が期待できる。また、防熱カバーは、蓄熱パック5を取り外さずに丸洗いして衛生的に繰り返し使用できる。
【0104】
例えば、防熱カバー101は、一対の突片103b,103bが省略されてもよい。一対の固定ベルト104A,104Bの両端部は、センサ面23aと異なる場所であれば、上記形態と異なる場所で結合されてもよい。一対の固定ベルト104A,104Bは、例えば、ファブリック製のベルトのように厚みが薄く、センサ面23aを手首100に接触させることができる場合には、センサ面23a側で両端部が結合されてもよい。
【0105】
例えば、露出部は、カバー本体に形成された穴など、間隙以外の方法で形成されてもよい。
【0106】
例えば、防熱カバー301の装着ベルト304A,304Bは、カバー本体303と同じ素材で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1,101,201,301 ウェアラブル機器用防熱カバー
2 ウェアラブル機器
5 蓄熱パック(蓄熱部材の一例)
51 容器
52 潜熱蓄熱材(蓄熱材の一例)
21 機器本体
21b 表面(第2面の一例)
21c 裏面(第1面の一例)
21d 側面
23 生体センサ(生体情報取得部の一例)
33 収容部
34 挿入口
203,303 カバー本体
204A,204B,304A,304B 装着ベルト
S1,103c 間隙(露出部の一例)
【要約】
【課題】ウェアラブル機器の種類を問わず、ウェアラブル機器に防熱機能を付加すること。
【解決手段】人体に装着して使用するウェアラブル機器2に防熱カバー1を着脱可能に装着する。ウェアラブル機器2は、動作保証温度帯域が設定された機器本体21を備える。防熱カバー1は、カバー本体3と蓄熱パック5とを備える。カバー本体3は、機器本体21を被覆するようにウェアラブル機器2に装着される。蓄熱パック5は、動作保証温度帯域内で融点が設定され、カバー本体3に収容される。
【選択図】
図1