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特許7507330アルデヒド水素化触媒およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】アルデヒド水素化触媒およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/755 20060101AFI20240620BHJP
   B01J 35/61 20240101ALI20240620BHJP
   B01J 35/77 20240101ALI20240620BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240620BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240620BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20240620BHJP
   C07C 29/141 20060101ALN20240620BHJP
   C07C 31/12 20060101ALN20240620BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240620BHJP
【FI】
B01J23/755 Z
B01J35/61
B01J35/77
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J37/03 A
C07C29/141
C07C31/12
C07B61/00 300
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024503333
(86)(22)【出願日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2023035561
【審査請求日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2022156369
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134119
【弁理士】
【氏名又は名称】奥町 哲行
(72)【発明者】
【氏名】小松丸 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】田河 勝吾
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-236341(JP,A)
【文献】特開平3-120233(JP,A)
【文献】特表2002-537974(JP,A)
【文献】特開2020-163334(JP,A)
【文献】特表2022-502243(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102994145(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102941095(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒドを水素化する触媒であって、
Ni、Zrおよび珪藻土を含み、
Niの含有量が、NiO換算で、40~90質量%の範囲にあり、
Zrの含有量が、ZrO換算で、0.5~10質量%の範囲にあり、
シリカの含有量が、SiO換算で、10~40質量%の範囲にあり、
NHの昇温脱離測定において、250℃~600℃の温度域でのNH脱離量が1.00mmol/g以上であることを特徴とするニッケル珪藻土触媒。
【請求項2】
Ni結晶子径が2nm~8nmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のニッケル珪藻土触媒。
【請求項3】
比表面積が80m/g以上であることを特徴とする請求項2に記載のニッケル珪藻土触媒。
【請求項4】
Zrの結合エネルギーがZrOの結合エネルギーより0.4eV以上高いことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のニッケル珪藻土触媒。
【請求項5】
アルデヒドを水素化する触媒の製造方法であって、
NiおよびZrが溶解した酸性水溶液を得る酸性水溶液調製工程、
NaOHおよびNaCOの少なくとも一方が溶解し、かつ珪藻土が分散した塩基性懸濁液を得る塩基性懸濁液調製工程、
前記酸性水溶液を前記塩基性懸濁液に添加して混合液を得る中和工程、
前記混合液のpHを6.5以下に調整して30分以上保持する熟成工程、
前記熟成工程で得られた混合液のpHを8.5~9.5の範囲に調整して、60分以上保持して前駆体スラリーを得る再熟成工程、
前記前駆体スラリーから前駆体を分離する分離工程、
前記前駆体を焼成する焼成工程、
を有することを特徴とするニッケル珪藻土触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルデヒドを水素化する触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
アルデヒド類を水素化してアルコールを製造するための触媒は、古くから知られている。例えば、特許文献1には、ニッケル珪藻土触媒中のニッケルに対して、金属分として3~15%のマグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ジルコニウムのうちから選択された1種もしくは2種以上を含む還元ニッケル触媒が開示されている。この文献1には、この還元ニッケル触媒を用い、飽和ないし不飽和アルデヒド類を水素化し、対応するアルコールを製造する方法が開示されている。更に、この文献1には、ニッケル触媒を用いたアルデヒド類の水素化反応において、エーテルおよびアセタールを生成する副反応が大きな問題として記載されている。更に、これらの副反応は触媒中に存在する酸によって促進されることに着目し、塩基性金属塩を触媒中に含ませることで副反応が著しく抑制されたことが記載されている。また、特許文献2には、アルカリ金属成分を表面に固定化したシリカを触媒中に高分散させることによって副反応が抑制され、アルコールの選択率が高くなることが記載されている。
【0003】
塩基性金属成分を用いない方法も知られており、例えば特許文献3には、触媒活性成分が表面から中心部に向かってなだらかな濃度勾配をもって担持されている触媒を用いることによってアルコール類の選択性が向上することが記載されている。
【0004】
このように、アルデヒド類を水素化してアルコールを製造する方法において、使用する触媒の酸性質や活性金属の担持状態を変化させることによってアルコール類の選択率を高めることが知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭44-17127号公報
【文献】特開2020-163334号公報
【文献】特開2005-279587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アルデヒドを水素化してアルコールを製造する水素化触媒において、従来の触媒ではエーテルやアセタールなどが生じる副反応が顕著であるために、アルコールの収率が低いと云う課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アルデヒドを水素化してアルコールを製造する水素化触媒について検討し、Ni、Zrおよび珪藻土を含むニッケル珪藻土触媒において、酸強度の高い固体酸を多く含むものを用いれば、エーテル等の生成を抑制して、アルコールの収率を高めることができることを見出した。本発明はこの知見に基づいた触媒を解決手段として用い、従来の前記課題を解決した。
【0008】
本発明は、アルデヒドを水素化する触媒であって、Niの含有量が、NiO換算で、40~90質量%の範囲にあり、Zrの含有量が、ZrO換算で、0.5~10質量%の範囲にあり、シリカの含有量が、SiO換算で、10~40質量%の範囲にあり、NHの昇温脱離測定において、250℃~600℃の温度域でのNH脱離量が1.00mmol/g以上であることを特徴とするニッケル珪藻土触媒(以下、「本発明の触媒」ともいう)と、その製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の触媒を用いれば、アルデヒドを水素化してアルコールを製造する方法において、副反応によって生じるエーテル等の生成を抑制して、アルコールの収率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1、比較例1および比較例2のNH-TPD測定プロファイル。
図2】実施例1のXPSプロファイル。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の触媒とその製造方法について詳述する。なお、本発明において、数値範囲を示す際に「~」と記載されている場合は、その数値範囲に上限と下限の値を含むものとする。
[本発明の触媒]
本発明の触媒は、アルデヒドを水素化する触媒であって、Ni、Zrおよび珪藻土を含み、Niの含有量が、NiO換算で、40~90質量%の範囲にあり、Zrの含有量が、ZrO換算で、0.5~10質量%の範囲にあり、シリカの含有量が、SiO換算で、10~40質量%の範囲にあり、NHの昇温脱離測定において、250℃~600℃の温度域でのNH脱離量が1.00mmol/g以上であることを特徴とするニッケル珪藻土触媒である。
【0012】
特許文献1に記載されているとおり、アルデヒドを水素化してアルコールを製造するための触媒において、触媒中に含まれる酸によって副反応(アルコール以外の化合物が生成する反応)が促進されるので、塩基性金属等を添加して酸を少なくすることが知られていた。これに対し、本発明は、Ni、Zrおよび珪藻土を含むニッケル珪藻土触媒について、酸強度の高い固体酸を多く含むようにした触媒である。
【0013】
固体酸の強度および量は、NH昇温脱離測定によって特定することができる。この測定は、固体酸にNHが吸着し、吸着したNH等が加熱により脱離する現象を利用したものである。酸強度の高い固体酸に吸着したNHは強く固体酸に吸着するので、高温でないと脱離しない。従って、加熱温度に応じたNH脱離量を測定すれば酸強度に応じた固体酸の量を把握することができる。
【0014】
本発明の触媒は、NH昇温脱離測定において、250℃~600℃の温度域(高温域と云う)で脱離するNH量は高温域全体で1.00mmol/g以上である。後述の表2に示すように、本発明の実施例1の触媒は、100℃以上~250℃未満の温度域(低温域と云う)でのNH脱離量は低温域全体で0.39mmol/gであるが、250℃~600℃の高温域でのNH脱離量は大幅に増加し高温域全体で1.84mmol/gである。このように、本発明の触媒は、高温域のNH脱離量が多く、固体酸強度が高い固体酸(以下、「強い固体酸」ともいう)を多く含むことを示している。
【0015】
NH脱離量の温度変化は、図1のNH-TPD測定プロファイルに示される。本発明の実施例1の触媒は、100℃以上~250℃未満の低温域では、各温度においてそれぞれ約0.3×10-3mmol/g以下であるが、250℃~600℃の高温域でのNH脱離量は急激に増加し、測定温度においてそれぞれ約0.3×10-3mmol/g~約0.7×10-3mmol/gであり、高温域でのNH脱離量が格段に多い。なお、低温域や高温域の各温度域全体のNH脱離量は、各温度域での測定温度のNH脱離量を積算した値である。
【0016】
本発明の触媒は、高温域全体のNH脱離量が1.10mmol/g以上であることが好ましく、1.10mmol/g以上~3.00mmol/g以下の範囲にあることがより好ましく、1.10mmol/g以上~2.00mmol/g以下の範囲にあることが特に好ましい。また、本発明の触媒の低温域のNH脱離量は、0.20mmol/g以上であってもよく、0.20mmol/g以上~1.00mmol/g以下の範囲にあってもよく、0.20mmol/g~0.40mmol/gの範囲にあってもよい。本発明の触媒は低温域のNH脱離量が多くても、アルコールの収率が高い。
【0017】
本発明の触媒はNiを含む。Niは、触媒中において、金属NiやNi酸化物またはこれらの一部が珪藻土に取り込まれた状態で存在している。アルデヒドを水素化する反応においては、金属Niが活性金属となる。しかし、金属Niは大気中で容易に酸化される。そこで、Ni酸化物の状態で触媒に含ませておき反応の直前にこれを前処理して金属Niに還元する酸化物触媒や、金属Niの表面に酸化被膜を形成しておき反応の直前にこれを前処理して酸化被膜を除去する還元安定化触媒が知られている。本発明の触媒はそのどちらであってもよい。前処理の簡便さという点においては、還元安定化触媒であることが好ましい。また、Niが珪藻土に含まれるシリカ(SiO)と結合して珪藻土に取り込まれると強い固体酸が生成するので、少なくともNiの一部は珪藻土のシリカと結合した状態が好ましい。
【0018】
本発明の触媒は、Niの含有量が、触媒全量に対してNiO換算で、40~90質量%の範囲である。この含有量が多くなると、アルデヒドの水素化反応において活性が高くなるが、触媒の価格も高くなるので、経済性を勘案し、触媒中のNi含有量は50~85質量%の範囲が好ましく、60~80質量%の範囲がより好ましい。
【0019】
本発明の触媒は、Zrを含む。Zrは、触媒中において、酸化物の状態、珪藻土に取り込まれた状態、またはその両方の状態で存在しているものと考えられる。Zrが珪藻土に取り込まれると、珪藻土に含まれるシリカと結合を形成し、Zrの電子状態が変化する。この電子状態の変化はXPS測定によって確認することができ、酸化物状態のZrとは異なる位置にエネルギー準位がシフトする。そして、シリカとZrとの結合により強い固体酸が生成し、前述のNH脱離量に影響を与えているものと考えられる。従って、本発明の触媒に含まれるZrは、その一部または全部が珪藻土に取り込まれた状態であることが好ましい。
【0020】
図2のXPSプロファイルに示すように、本発明の実施例1の触媒では、触媒に含まれるZrの結合エネルギー(3d軌道に由来するピーク位置)はZrOの結合エネルギーより1eV高く、実施例1の触媒に含まれるZrの少なくとも一部が珪藻土のシリカと結合していることを示している。本発明の触媒は、Zrの結合エネルギーが、ZrOの結合エネルギーより0.4eV以上高いことが好ましく、0.5eV以上高いことがより好ましい。
【0021】
本発明の触媒は、Zrの含有量が、触媒の全量に対してZrO換算で、0.5~10質量%の範囲にある。Zrの含有量がこの範囲にあると、強い固体酸が生成しやすくなる。Zrの含有量は、1~8質量%の範囲が好ましく、1~6質量%の範囲がより好ましい。
【0022】
本発明の触媒は珪藻土を含む。珪藻土はNiやZrの担体となる。珪藻土はシリカを主成分としており、本発明の触媒において、前述のように、NiおよびZrの一部は珪藻土のシリカと結合していることが好ましい。本発明の触媒の珪藻土の含有量は10~40質量%の範囲が好ましく、10~30質量%の範囲がより好ましく、15~25質量%の範囲が特に好ましい。
【0023】
珪藻土の主成分はシリカなので、本発明の触媒に含まれる珪藻土の含有量を、シリカ含有量とみなしてもよい。本発明の触媒において、シリカ含有量は10~40質量%の範囲が好ましく、10~30質量%の範囲がより好ましく、15~25質量%の範囲が特に好ましい。なお、本発明の触媒は、珪藻土とは別に成形剤や造孔剤としてシリカ粒子を含んでいてもよい。
【0024】
本発明の触媒のシリカ含有量は、成形剤や造孔剤のシリカ含めた総量であるが、このシリカ量は珪藻土のシリカが主体であるので、成形剤や造孔剤などを含む場合、これらの珪藻土以外のシリカ量は、成形剤や造孔剤などの一般的な配合量に応じて限定される。成形剤や造孔剤などに由来するシリカ量はこれらの原料配合量に応じて、例えば、5質量%以下とみなすことができる。この場合、本発明の触媒に含まれるシリカ量10~40質量%のうち、珪藻土由来のシリカ量は5~35質量%である。
【0025】
本発明の触媒は、Ni結晶子径が、2~8nmの範囲にあることが好ましく、3~7nmの範囲にあることがより好ましく、4~6nmの範囲にあることが特に好ましい。本発明の触媒に含まれるNiは、X線回折測定により得られる回折ピークから求めることができる。本発明においてNi結晶子径は、本発明の触媒が還元安定化触媒の場合は金属Niの結晶子径を表すものとし、酸化物触媒の場合はNiOの結晶子径を表すものとする。Ni結晶子径が小さくなると、本発明の触媒の水素化活性が高くなりやすい。
【0026】
本発明の触媒は、比表面積が80m/g以上であることが好ましく、90m/g以上がより好ましく、100m/g以上が特に好ましい。本発明の触媒において比表面積が前述の範囲にあると、その水素化活性が高くなりやすい。また、本発明の触媒は、比表面積が、300m/g以下でもよく、250m/g以下でもよく、200m/g以下でもよい。
【0027】
本発明の触媒は、成形体であることが好ましい。アルデヒドを水素化してアルコールを製造する方法において、本発明の触媒は、粉末でも使用できるが、成形体の方が反応後に分離回収がしやすいので好ましい。成形体の形状は、従来公知の形状であればよい。例えば、球状、柱状またはこれらに類する形状が良く、柱状ないしそれに類する形状が好ましい。この柱状には、円柱状、三つ葉状、四つ葉状などの形状も含まれる。具体的には、本発明の触媒の形状は、柱状であって、その径が0.5mm以上~5mm以下であり、その長さが1mm以上~10mm以下の範囲であるものが好ましい。
【0028】
本発明の触媒は、アルデヒドを水素化してアルコールを製造する方法において特に好適に使用することができる。しかしながら、本発明の触媒は、Niが活性種となる反応においても好適に使用することができる。例えば、エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン等の不飽和化合物の水素化にも使用することができる。
【0029】
本発明は、前記本発明の触媒について、その製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)を含む。以下、本発明の製造方法について詳述する。
【0030】
[本発明の製造方法]
本発明の触媒の製造方法は、以下の各工程(イ)~(ト)を含む。
(イ)NiおよびZrが溶解した酸性水溶液を得る酸性水溶液調製工程、
(ロ)NaOHおよびNaCOの少なくとも一方が溶解し、かつ珪藻土が分散した塩基性懸濁液を得る塩基性懸濁液調製工程、
(ハ)前記酸性水溶液を前記塩基性懸濁液に添加して混合液を得る中和工程、
(ニ)前記混合液のpHを6.5以下に調整して30分以上保持する熟成工程、
(ホ)前記熟成工程で得られた混合液のpHを8.5~9.5の範囲に調整して、60分以上保持して前駆体スラリーを得る再熟成工程、
(ヘ)前記前駆体スラリーから前駆体を分離する分離工程、
(ト)前記前駆体を焼成する焼成工程。
各工程について、詳述する。
【0031】
[酸性水溶液調製工程]
本発明の製造方法は、NiおよびZrが溶解した酸性水溶液を得る酸性水溶液調製工程を含む。この工程では、NiおよびZrが溶解してイオン化していることが重要である。イオン化されたNiおよびZrが後述の中和工程、熟成工程および再熟成工程において珪藻土と結合を作り、強い固体酸を形成する。
【0032】
この工程では、Ni原料およびZr原料を水に溶解して、酸性水溶液を調製する。Ni原料は、酸性水溶液中において溶解するものであれば限定されない。例えば、硫酸Ni、硝酸Ni、酢酸Ni、金属Ni等を用いることができる。また、Zr原料も、酸性水溶液中において溶解するものであれば限定されない。例えば、硫酸Zr、硝酸Zr等を用いることができる。これらの原料が水に溶解しない場合は、酸を使って溶解してもよい。酸の種類は限定されないが、例えば、硫酸、硝酸、塩酸などの一般的な無機酸を使用することができる。
【0033】
この工程で得られる酸性水溶液に含まれるNiおよびZrの含有量は、最終的に調製する触媒の組成に合わせて調整するとよい。例えば、Niの含有量を1~12質量%の範囲に調整してもよく、3~10質量%に調整してもよく、5~7質量%の範囲に調整してもよい。また、Zrの含有量を0.01~2質量%の範囲に調整してもよく、0.05~1質量%に調整してもよく、0.1~0.5質量%の範囲に調整してもよい。
【0034】
また、この工程で得られる酸性水容器のpHは4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2.5以下が特に好ましい。また、pHの下限は限定されず、1以上でもよい。pHが前述の範囲にあると、酸性水溶液中においてNiおよびZrが安定して存在する。
【0035】
[塩基性水溶液調製工程]
本発明の製造方法は、NaOHおよびNaCOの少なくとも一方が溶解し、かつ珪藻土が分散した塩基性懸濁液を得る塩基性懸濁液調製工程を含む。この工程では、珪藻土が固体で液中に分散しつつ、その一部(主に表面)が溶解していることが重要である。珪藻土の主成分はシリカであり、塩基性の水溶液中で溶解する。但し、珪藻土がすべて溶解すると、珪藻土の細孔も消失するので、この工程では珪藻土が固体のまま存在している状態の懸濁液を調製する。この珪藻土の一部が該懸濁液中で次第に溶解することによって、次の中和工程において混合する酸性水溶液中のNiおよびZrと該珪藻土との結合が形成されやすくなる。
【0036】
前記塩基性懸濁液は、NaOHおよびNaCOの少なくとも一方を水に溶解した後に珪藻土を添加する方法、または水に珪藻土を分散させた後にNaOHおよびNaCOの少なくとも一方を添加する方法によって調製することができる。NaOHおよびNaCOの少なくとも一方の添加量は限定されず、次の中和工程においてpHを6.5以下にするために必要な量を添加すればよい。
【0037】
この工程で得られる塩基性懸濁液に含まれる珪藻土の含有量は、最終的に調製する触媒の組成に合わせて調整するとよい。例えば、珪藻土の含有量を1~20質量%の範囲に調整してもよく、2~10質量%に調整してもよく、3~6質量%の範囲に調整してもよい。但し、珪藻土の含有量が少なすぎると、珪藻土がすべて溶解してしまい懸濁液でなくなってしまうので、珪藻土が固体の状態で存在できる程度の含有量に調整するとよい。
【0038】
この工程で得られる塩基性懸濁液のpHは9~12.5の範囲が好ましく、10~12の範囲がより好ましい。pHが高い状態で長時間放置すると珪藻土の溶解が進行するので、珪藻土が溶解しきらないうちに次の工程に移ることが好ましい。
【0039】
[中和工程]
本発明の製造方法は、前記酸性水溶液を前記塩基性懸濁液に添加して、pHが6.5以下の混合液を得る中和工程を含む。この工程は、前記酸性溶液中に溶解しているNiやZrを中和反応で沈殿物として析出させ、また珪藻土の表面にZrとの結合を形成させる工程である。従って、珪藻土の一部が溶解した状態が維持されている塩基性懸濁液中に酸性水溶液を添加することが好ましい。
【0040】
混合する前記酸性水溶液と前記塩基性懸濁液の液温はそれぞれ65℃~95℃の範囲が好ましく、75℃~85℃の範囲がより好ましい。前記酸性水溶液と前記塩基性懸濁液の液温がこの範囲であると、Zrと珪藻土との結合反応が促進される。
【0041】
混合する前記酸性水溶液は、その全量を15分~120分の間で添加することが好ましく、30分~90分の間で添加することがより好ましい。このような時間で前記酸性水溶液の全量を添加すると、Zrと珪藻土との結合が生成しやすくなる。
【0042】
前記酸性水溶液の全量を添加しても混合液のpHが6.5以下にならない場合は、必要に応じて、酸性水溶液を添加してpHを前述の範囲に調整すると良い。ここで使用できる酸性水溶液は、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸またはこれらの混合物を含む水溶液を用いることが出来る。
【0043】
[熟成工程]
本発明の製造方法は、前記中和工程で得られた混合液を30分以上保持する工程を含む。この工程では、珪藻土の表面にZrとの結合を形性する反応を進めることが重要である。保持する時間は、45分以上が好ましく、60分以上がより好ましい。保持する時間の上限は限定されないが、生産性の観点から、600分以下であってもよく、300分以下であってもよく、150分以下であってもよい。このとき、撹拌した状態で保持することが好ましい。
【0044】
熟成工程の混合液の温度は、65℃~95℃の範囲が好ましく、75℃~85℃の範囲がより好ましい。混合液の温度が前述の範囲にあると、Zrと珪藻土との結合を作る反応が促進される。
【0045】
[再熟成工程]
本発明の製造方法は、前記熟成工程で得た混合液のpHを8.5~9.5の範囲に調整して、60分以上保持して前駆体スラリーを得る工程を含む。この工程では、前記熟成工程とは異なるpHで混合液を熟成することによって、Niと珪藻土との結合を形成することが重要である。
【0046】
この工程では、前記熟成工程で得た混合液に塩基性化合物を添加して、pHを8.5~9.5の範囲に調整する。添加する塩基性化合物は、従来公知のものを使用することができる。例えば、NaOH、NaCO、アンモニア等、またはこれらが溶解した水溶液を使用することができる。pHをこの範囲に調整して1時間以上熟成することにより、Niと珪藻土との結合がより形成される。再熟成する際の混合液の温度は、65℃~95℃の範囲が好ましく、75℃~85℃の範囲がより好ましい。混合液の温度が前述の範囲にあると、Niと珪藻土との結合を形成する反応が促進される。
【0047】
[分離工程]
本発明の製造方法は、前記工程で得た前駆体スラリーから前駆体を分離する工程を含む。この工程では、従来公知の方法を用いて前駆体スラリーから前駆体を分離することができる。例えば、乾燥機を用いて水を除去する方法、濾過して水と分離する方法、遠心分離によって水と分離する方法等を用いることができる。
【0048】
前駆体スラリーに中和反応等によって生成した不純物が含まれる場合は、分離した前駆体を水に懸濁し攪拌した後に再び前駆体を分離する懸濁洗浄、または触媒前駆体に水等の洗浄液を流通して洗浄する流通洗浄等によって不純物を除去することができる。特に、前駆体に大量の硫黄が含まれる場合は、触媒活性を低下させる懸念があるので、洗浄して硫黄を除去することが好ましい。また、硝酸イオンが含まれる場合は、後述の焼成工程でNOが発生する原因になるので、これも洗浄して除去することが好ましい。例えば、洗浄後のろ液の伝導度が5mS/cm以下になるように洗浄することが好ましい。
【0049】
分離した前駆体は、必要に応じで種々の形状に成形することができる。例えば、球状、柱状またはこれらに類する形状に成形することができ、柱状ないしそれに類する形状にせいけいすることが好ましい。この柱状には、円柱状、三つ葉状、四つ葉状などの形状も含まれる。具体的には、柱状であって、その径が0.5mm以上~5mm以下であり、その長さが1mm以上~10mm以下の範囲となるように成形することが好ましい。このような形状に成形する方法は、打錠成形、押出成形といった従来公知の方法を用いることができる。
【0050】
[焼成工程]
本発明の製造方法は、前述の工程で分離した前駆体を焼成する工程を含む。この工程では、前駆体に含まれる沈殿物を分解し、酸化ニッケルを生成させることが重要である。焼成後の前駆体は、酸化物触媒としてアルデヒドを水素化してアルコールを製造する方法に使用することができる。酸化物触媒を使用する場合は、酸化ニッケルを水素等の還元性の物質で還元して金属の状態にする前処理が必要になる。
【0051】
この工程では、従来公知の装置を用いて前駆体を焼成することができる。例えば、マッフル炉、ロータリーキルン、ガス炉などを用いて触媒前駆体を焼成することができる。また、焼成する温度は、前駆体がどの程度の温度で分解するかにもよるが、300℃~500℃の温度範囲で焼成することが好ましい。更に、焼成する時間は、前駆体の量にもよるが、1時間~24時間の範囲で焼成することができる。焼成する雰囲気は、大気雰囲気であることが好ましく、大気を流通した状態で焼成してもよい。
【0052】
この工程では、前駆体を焼成した後に得られる酸化物触媒を、必要によって、水素等で還元してもよい。例えば、酸化物触媒を反応容器に充填し、水素流通下にて380℃~450℃の反応温度で、1~48時間保持することによって、酸化ニッケルを金属ニッケルに還元することができる。また、酸化ニッケルを還元して生成した金属ニッケルは、そのまま大気中に晒すと酸化反応によって発熱し、触媒が燃えてしまうことがある。そこで、酸化ニッケルを還元した後は、徐々に酸素を供給し、金属ニッケルの表面に酸化ニッケルの被膜を形成するとよい。また、二酸化炭素等を金属ニッケルの表面に吸着させることもできる。このような還元安定化工程を経て得られた触媒は、還元安定化触媒としてアルデヒドを水素化してアルコールを製造する方法に使用することができる。還元安定化触媒は、前述の酸化物触媒と比較して、前処理に必要な時間が大幅に少ないので好ましい。
【0053】
以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例および比較例において、各種測定ないし評価は以下のように行った。
【0054】
[pH測定]
pHは、pHメーター(山形東亜DKK社製、「MM43-X」)およびpH電極(山形東亜DKK社製、「GST-5841C」)を用いて、液温40℃にて測定した。
【0055】
[組成分析](Ni、ZrおよびSi)
試料を酸に溶解し、その濾液を水で適切な濃度に希釈した後、ICP発光分光分析装置(アジレントテクノロジー株式会社製、730ICP-OES、誘導結合プラズマ発光分光分析法)を用いてNi、ZrおよびSiの含有量を測定した。なお、各含有量は、触媒の全量を基準とし、NiはNiO換算、ZrはZrO換算、SiはSiO換算で算出した。
【0056】
[NH-TPD測定]
アンモニア脱離量は、アンモニア昇温脱離法(NH-TPD法)により測定した。マイクロトラックベル社製BELCAT-II(登録商標)を使用し、測定セル中に試料0.05gを入れ、水素雰囲気で250℃、1時間前処理を行った。その後温度を100℃にし、1時間アンモニアガスを導入して吸着した。次いで、ヘリウム雰囲気で100℃、1時間排気処理を行なった後、毎分30mlのヘリウムガス流通下、100℃から毎分10℃で600℃まで昇温しながら温度上昇にともなって脱離するアンモニア量をTCD検出器で1秒毎に検出した。最後に100%ヘリウムガスの流通下におけるTCDシグナル強度と、5.14Vol%-NH/He混合ガスのTCDシグナル強度とから、キャリブレーションファクターを算出した。このキャリブレーションファクターを用いて、100℃から600℃におけるTCDシグナルをNH量(mmol)に換算し、これを試料重量で除して、各時間における試料1g当たりのアンモニア脱離量を求めた。縦軸を試料1g当たりのアンモニア脱離量、横軸を時間としたグラフを作成し、温度が250℃に到達した時間から600℃に到達するまでの時間を積分して250℃~600℃におけるアンモニア脱離量を求めた。また、同様の方法で100℃以上~250℃未満におけるアンモニア脱離量も求めた。これらの計算は装置に付属の解析ソフトを用いて行った。
【0057】
[結晶子径測定]
試料について、リガク社製のX線回折装置(リガク MultiFlex)を用いてX線回折測定を行った。まず、測定する試料を粉砕し、試料板に詰め、管電圧40kV、管電流20mA、走査範囲10~70°、発散スリット1.0mm、散乱スリット1.0mm、受光スリット0.3mm、スキャンスピード4°/minの条件でX線回折(線源Cu-Kα線)測定を行った。Niの結晶子径は、X線回折測定により2θ=44°付近にピークトップを有する回折ピークを検出し、解析ソフト(JADE Version 5.0)を用いてScherrerの式により算出した。また、酸化物触媒のNiO結晶子径を求める際は、2θ=62°付近にピークトップを有する回折ピークから算出した。
【0058】
[比表面積測定]
比表面積は窒素吸着法(BET法)により算出した。具体的には、比表面積測定装置(mountech製、Macsorb1220)を用いて、試料を約0.1g測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行った後、試料を窒素30容積%とヘリウム70容積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。そして、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素量を測定し、測定後の試料重量で割ることで試料の比表面積を算出した。
【0059】
[XPS測定]
測定装置(サーモフィッシャー社:ESCALAB 220I-X)を用いて、以下条件にて、XPS測定を行った。また、市販されている試薬(酸化ジルコニウム,3N、関東化学株式会社製)を標準試料として使用した。
線源:monochromatic Al Kα線
加速電圧、電流:10KV、19.0mA
Pass Energy:20eV
Dwell Time:50ms
Energy Step Size:0.1eV
【0060】
[活性評価:アルデヒドの水素化反応]
<前処理>
ガラス管に試料4.0gを仕込んだ後に、これを水素流通下、150℃で60分保持した。その後、ガラス管内を窒素で置換し、室温まで冷却した。その後、窒素雰囲気にてオートクレーブに試料を仕込んだ。
<水素添加試験>
n-ブチルアルデヒド100.3gを前述のオートクレーブへ注入した。注入後、400rpmで撹拌しながら100℃まで昇温した。昇温後、オートクレーブ内の圧力が5MPaになるまで水素を注入し、圧力を5MPaに維持した状態で2時間保持した。保持後、これを室温まで冷却し、反応液を得た。
<分析>
得られた反応液をガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC-14B)で分析し、n-ブチルアルデヒド(NBD)、n-ブタノール(NBA)、ジブチルエーテル(Et)、2―エチルー1,3―ヘキサンジオール(Diol)、およびブチルアルデヒドジブチルアセタール(Ac)の質量含有率を測定した。そして、これを各成分のモル含有率に換算し、下記の式から転化率および選択率を算出した。
[転化率]
転化率(%)=(反応後のNBDモル含有率―反応前のNBDモル含有率)/反応前のNBDモル含有率×100
[NBA選択率]
NBA選択率(%)=反応後のNBAモル含有率/(反応後のNBDモル含有率-反応前のNBDモル含有率)×100
[Et選択率]
Et選択率(%)=反応後のEtモル含有率×2/(反応後のNBDモル含有率-反応前のNBDモル含有率)×100
[Diol選択率]
Diol選択率(%)=反応後のDiolモル含有率×2/(反応後のNBDモル含有率-反応前のNBDモル含有率)×100
[Ac選択率]
Ac選択率(%)=反応後のAcモル含有率×3/(反応後のNBDモル含有率-反応前のNBDモル含有率)×100
【0061】
[実施例1]
酸性水溶液調製工程
硫酸ニッケル水和物〔Ni(SO・6HO〕(富士フイルム和光純薬社製)1418.0gを水道水5.4Lに溶解した後に、硫酸ジルコニウム溶液(第一稀元素化学工業社製)94.0gを添加し、80℃に調整して酸性水溶液を調製した。酸性水溶液のpHは2.1であった。
【0062】
塩基性懸濁液調製工程
15Lの攪拌槽に水道水を3.1L注入し、これに炭酸ナトリウム(NaCO、関東化学社製)333.0gを溶解して、80℃に調整した。その後、珪藻土〔Celite505〕(Imerys社製)76.3g、珪藻土〔FilterCel〕(Imerys社製)53.5gを投入した。そして、60分間攪拌して珪藻土を分散させ、塩基性懸濁液を調製した。塩基性懸濁液のpHは、11.3であった。二種類の珪藻土を用いることによって良好な成形性とNi,Zrとの良好な結合性を得ることができる。
【0063】
中和工程
チューブポンプを用いて、前記酸性水溶液を前記塩基性懸濁液に80分かけて注加して混合液を得た。混合液のpHは6.3であった。
【0064】
熟成工程
前記混合液を80℃に保持しつつ、1時間攪拌を継続した。
【0065】
再熟成工程
炭酸ナトリウム(関東化学社製)645.0gを水道水3.0Lに溶解し、80℃に調整してpH調整用の塩基性水溶液を調製した。これを熟成工程後の前記混合液に、チューブポンプを用いて10分かけて注加し、pHを9.5に調整した。注加終了後も80℃に保持しつつ、120分攪拌を継続して、前駆体スラリーを得た。
【0066】
前駆体分離工程
前記前駆体スラリーを、ヌッチェを用いて減圧濾過し、ケーキ状の前駆体を得た。40℃に調整した6Lの温水に、この前駆体の全量を投入し、濾過して懸濁洗浄を行った。同工程を繰り返し行い、濾液の電気伝導度が1.5mS/cmとなったところで洗浄を終了した。箱型乾燥機を用いて、ケーキ状の前駆体を120℃で12時間乾燥した。乾燥後のケーキはハンマークラッシャーミルを用いてケーキを粉砕し粉末状の前駆体を得た。
【0067】
触媒前駆体焼成工程
前記前駆体を、打錠成形機を用いて直径3.2mm、高さ3.2mmの円柱状に成形した。この前駆体を、マッフル炉を用いて370℃で6時間焼成して酸化物触媒を得た。更に、この酸化物触媒を水素雰囲気下430℃で10時間還元し、80℃で安定化処理を行って触媒を得た。製造条件等を表1に示す。また、これを試料として、前述の測定ないし評価を行った。その結果を表2に示す。
【0068】
この触媒のNH―TPD測定プロファイルを比較例1,2の触媒と共に図1に示す。図1は、NH脱離量を加熱温度に対応して示した。また、この触媒のZrのXPSプロファイルをZrOと比較して図2に示す。
【0069】
[実施例2]
再熟成工程において炭酸ナトリウム(関東化学社製)500.0gを用い、混合液のpHを8.8としたこと以外は実施例1と同様の方法で触媒を得た。得られた触媒について、前述の測定ないし評価を行った。
【0070】
[実施例3]
塩基性懸濁液調製工程において、珪藻土〔Celite505〕(Imerys社製)を64.1g、珪藻土〔FilterCel〕(Imerys社製)を45.0g添加したこと以外は実施例1と同様の方法で触媒を得た。得られた触媒について、前述の測定ないし評価を行った。
【0071】
[実施例4]
酸性水溶液調製工程において、硫酸ジルコニウム溶液(第一稀元素化学工業社製)43.1gを添加し、塩基性懸濁液調製工程において、珪藻土〔Celite505〕(Imerys社製)を64.1g、珪藻土〔FilterCel〕(Imerys社製)を45.0g添加したこと以外は実施例1と同様の方法で触媒を得た。得られた触媒について、前述の測定ないし評価を行った。
【0072】
[比較例1]
再熟成工程において炭酸ナトリウム(関東化学社製)379.5gを用い、混合液のpHを7.5としたこと以外は実施例1と同様の方法で触媒を得た。得られた触媒について、前述の測定ないし評価を行った。
【0073】
[比較例2]
再熟成工程において、保持時間を0にしたこと以外は実施例1と同様の方法で触媒を得た。得られた触媒について、前述の測定ないし評価を行った。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【要約】
アルデヒドを水素化する触媒であって、Ni、Zrおよび珪藻土を含み、Niの含有量が、NiO換算で、40~90質量%の範囲にあり、Zrの含有量が、ZrO換算で、0.5~10質量%の範囲にあり、シリカの含有量が、SiO換算で、10~40質量%の範囲にあり、NHの昇温脱離測定において、250℃~600℃の温度域でのNH脱離量が1.00mmol/g以上であることを特徴とするニッケル珪藻土触媒とその製造方法。

図1
図2