(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】スパイクソール、義足足部、およびシューズ
(51)【国際特許分類】
A43B 13/26 20060101AFI20240621BHJP
A43C 15/02 20060101ALI20240621BHJP
B29D 35/00 20100101ALI20240621BHJP
A61F 2/60 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A43B13/26 A
A43C15/02 102
B29D35/00
A61F2/60
(21)【出願番号】P 2021185871
(22)【出願日】2021-11-15
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390005751
【氏名又は名称】株式会社今仙技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】391016842
【氏名又は名称】岐阜県
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 美文
(72)【発明者】
【氏名】森山 幸俊
(72)【発明者】
【氏名】尾田 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】藤川 良宏
(72)【発明者】
【氏名】浜田 篤至
(72)【発明者】
【氏名】大塚 滋
(72)【発明者】
【氏名】西垣 康広
(72)【発明者】
【氏名】千原 健司
(72)【発明者】
【氏名】仙石 倫章
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-212438(JP,A)
【文献】国際公開第2012/127556(WO,A1)
【文献】特開2002-345504(JP,A)
【文献】特開2020-054474(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0313733(US,A1)
【文献】特開平03-261402(JP,A)
【文献】実開昭63-161507(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0060664(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/26
A43C 15/02
B29D 35/00
A61F 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端および基端を有する突起部と、前記突起部の中心軸線に対する径方向において前記基端から外側に突出しているベース部とを含むスパイク部と、
前記ベース部に対して前記先端とは反対側に配置されているソール部と、
前記ソール部に対して前記先端側に配置されており、前記ベース部を覆い、前記先端を露出させ、かつ前記ソール部に溶着されているカバー部とを備え、
前記ソール部には、凸部が形成されており、
前記ベース部には、前記凸部と嵌め合わされる嵌合部が形成されており、
前記嵌合部は、前記ベース部
を貫通しており、
前記嵌合部の内部が、前記凸部を構成する材料及び前記カバー部を構成する材料によって満たされている、スパイクソール。
【請求項2】
前記カバー部は、複数の強化繊維を含み、
前記複数の強化繊維の少なくとも一部は、前記ベース部の外縁部の少なくとも一部上を前記外縁部と交差するように延びている、請求項1に記載のスパイクソール。
【請求項3】
前記複数の強化繊維は、前記外縁部上において疑似等方に配向されている、請求項2に記載のスパイクソール。
【請求項4】
前記ソール部は、本体部と、前記本体部と一体成形されておりかつ前記本体部に対して突出している突出部を含み、
前記スパイク部は、前記突出部上に配置されており、
前記カバー部は、前記突出部に溶着されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のスパイクソール。
【請求項5】
前記ソール部は、メッシュ部と、前記メッシュ部を覆う中実部とを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のスパイクソール。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のスパイクソールを備える、義足足部。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のスパイクソールを備える、シューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイクソールと、スパイクソールを備える義足足部およびシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
競技用のシューズおよび義足足部として、スパイクピンが固着されたシューズおよび義足足部が知られている。
【0003】
特表2018-519193号公報(特許文献1)には、スパイクピンとスパイクピンをシューズのアウターソールに固定するための固定プレートとからなるスパイクを、インサート成形する方法が開示されている。
【0004】
特開2019-072170号公報(特許文献2)には、ペース部とベース部に対して突出するスパイクとから成るソールを、熱硬化性樹脂を金型内で熱硬化させて成形する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-519193号公報
【文献】特開2019-072170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
競技用のシューズおよび義足足部には、競技者あるいは競技の種目に応じて、スパイクピンの数および配置をカスタマイズする要求がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のスパイクピンは、金型を用いて固定プレートと一体的に成形される。同様に、特許文献2に記載のスパイクは、金型を用いてベース部と一体的に成形される。このような金型を用いて製造されるスパイクソールをカスタマイズする場合には、新たな金型を準備する必要があるため、コストおよびリードタイムの削減が困難である。
【0008】
本開示の主たる目的は、コストおよびリードタイムを削減できるスパイクソール、ならびに該スパイクソールを備える義足足部およびシューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るスパイクソールは、先端および基端を有するピンと、基端に接続されているフランジとを有するスパイクピンと、フランジに対して先端とは反対側に配置されているソール部と、フランジに対して先端側に配置されてフランジを覆い、先端を露出させ、かつソール部に溶着されているカバー部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、コストおよびリードタイムを削減できるスパイクソール、ならびに該スパイクソールを備える義足足部およびシューズを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係るスパイクソール、およびスパイクソールを備える義足足部を説明するための図である。
【
図2】
図1に示される義足足部の接地部分の部分拡大斜視図である。
【
図3】
図1に示される義足足部の接地部分の部分拡大断面図である。
【
図4】
図1に示されるスパイクソールの分解斜視図である。
【
図5】
図1に示されるスパイクソールの製造方法において、溶着前の状態を説明するための部分拡大断面図である。
【
図6】
図1に示されるスパイクソールの製造方法において、溶着後の状態を説明するための部分拡大断面図である。
【
図7】実施の形態2に係るスパイクソールを説明するための、部分拡大断面図である。
【
図8】実施の形態2に係るスパイクソールを説明するための、部分分解斜視図である。
【
図9】
図7に示されるスパイクソールの製造方法において、溶着前の状態を説明するための部分拡大断面図である。
【
図10】実施の形態3に係るスパイクソールを説明するための、部分拡大断面図である。
【
図11】実施の形態3に係るスパイクソールを説明するための、部分分解斜視図である。
【
図12】
図10に示されるスパイクソールの製造方法において、溶着前の状態を説明するための部分拡大断面図である。
【
図13】実施の形態4に係るスパイクソールのカバー部に含まれる強化繊維の配向を説明するための、部分拡大平面図である。
【
図14】実施の形態4に係るスパイクソールの変形例のカバー部に含まれる強化繊維の配向を説明するための、部分拡大平面図である。
【
図15】実施の形態1に係るスパイクソールを備えるシューズを説明するための図である。
【
図16】実施の形態1~4に係るスパイクソールのスパイク部の変形例を説明するための図である。
【
図17】実施の形態1~4に係るスパイクソールの変形例を説明するための図である。
【
図18】実施の形態1~4に係るスパイクソールの他の変形例を説明するための図である。
【
図19】
図18に示されるスパイクソールの製造方法において、溶着前の状態を説明するための部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0013】
本実施の形態において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「直交」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。
(実施の形態1)
<義足足部の構成>
図1に示されるように、実施の形態1に係る義足足部100は、接地される接地部分101Aを有する板バネ101と、板バネ101の接地部分101Aに取り付けられているスパイクソール10とを備える。
図1~
図3には、義足足部100の上下方向Z、前後方向Y、および左右方向Xが示されている。スパイクソール10は、例えば接着層20を介して接地部分101Aに固定されている。
【0014】
<スパイクソールの構成>
実施の形態1に係るスパイクソール10は、
図1に示される義足足部100の板バネ101の接地部分101Aに取り付けられるように設けられている。
図1~
図3に示されるように、スパイクソール10は、複数のスパイク部1、ソール部2、および複数のカバー部3を備える。
【0015】
複数のスパイク部1の各々は、ソール部2と複数のカバー部3の各々とにより覆われており、複数のカバー部3の各々がソール部2に溶着されていることにより、ソール部2に固定されている。
【0016】
複数のスパイク部1の各々は、例えばスパイクピンとして構成されている。各スパイク部1は、ピンとして構成された突起部1Aと、突起部1Aに対するフランジとして構成されたベース部1Bとを有する。突起部1Aは、当該突起部1Aの中心軸線が延びる方向に互いに間隔を空けて配置されている先端1A1および基端1A2を有する。ベース部1Bは、基端1A2に接続されており、突起部1Aの中心軸線に対する径方向において基端1A2よりも外側に突出している。スパイク部1の突起部1Aおよびベース部1Bの各々の外形上は、任意の形状を有していればよい。突起部1Aの外形状は、例えば円錐台形である。
【0017】
ベース部1Bには、その外表面に対して窪んでいる複数の嵌合部が形成されている。複数の嵌合部の各々は、例えば貫通孔1C(
図3参照)として形成されている。複数の貫通孔1Cの内部は、後述する溶着部4Bにより満たされている。貫通孔1Cの内部が満たされているとは、当該内部に空隙部が形成されていないことを意味する。複数(N個)の貫通孔1Cの各々は、例えば突起部1Aの中心軸線に対して(360/N)度の回転対称に配置されている。突起部1Aおよびベース部1Bは、一体成形されている。スパイク部1を構成する材料は、例えば金属を含む。複数のスパイク部1の各々は、例えば互いに同等の構成を有している。
【0018】
複数のスパイク部1の各々は、例えば互いに間隔を空けて配置されている。複数のスパイク部1の各々は、例えばU字状に配列されている。複数のスパイク部1は、例えば前後方向Yにおいて、最前に配置された第1のスパイク部1と、第1のスパイク部1よりも後方に配置されており左右方向Xに互いに間隔を空けて配置された1対の第2のスパイク部1と、1対の第2のスパイク部1よりも後方に配置されており左右方向Xに互いに間隔を空けて配置された1対の第3のスパイク部1と、1対の第3のスパイク部1よりも後方に配置されており左右方向Xに互いに間隔を空けて配置された1対の第4のスパイク部1とを有している。
【0019】
ソール部2は、スパイク部1のベース部1Bに対して先端1A1とは反対側に配置されている。ソール部2は、第1面2Aと、第1面2Aとは反対側に位置する第2面2Bとを有している。第2面2Bは、接着層20を介して板バネ101に固定される面である。第1面2Aおよび第2面2Bの各々は、複数のスパイク部1の各々の突起部1Aの中心軸線に対して交差する方向に延びている。
【0020】
ソール部2は、メッシュ部2Cと、メッシュ部2Cを覆う中実部2Dとを含む。中実部2Dは、中実である。中実部2Dには、中空部が形成されていない。第1面2Aおよび第2面2Bの各々は、中実部2Dの外周面である。
【0021】
メッシュ部2Cは、複数の中空部2C1と、複数の中空部2C1の各々を区画する複数の壁部2C2とを有している。複数の中空部2C1の各々は、例えば第1面2Aおよび第2面2Bの各々に沿って延びており、かつ第1面2Aおよび第2面2Bの各々に直交する方向に並んで配置されている。複数の中空部2C1の各々は、例えば左右方向Xに沿って延びており、かつ上下方向Zおよび前後方向Yに並んで配置されている。複数の壁部2C2の各々は、中実部2Dと一体成形されている。
【0022】
複数の壁部2C2の各々は、例えば格子状に配列されている。複数の中空部2C1の断面形状は、例えば四角形状である。複数の壁部2C2の各々は、例えば第1面2Aおよび第2面2Bの各々と直交する方向に対して傾斜する第1方向に連なる複数の第1群の壁部2C2と、第1面2Aおよび第2面2Bの各々と直交する方向に対して傾斜する第2方向に連なる複数の第2群の壁部2C2とを含む。1つの第1群の壁部2C2は、複数の第2群の壁部2C2と交わっている。1つの第2群の壁部2C2は、複数の第1群の壁部2C2と交わっている。複数の第2群の壁部2C2の各々は、例えば複数の第1群の壁部2C2の各々と直交する。複数の第1群の壁部2C2および複数の第2群の壁部2C2の各々の下端は、中実部2Dのうち外周面が第1面2Aを構成する部分の内周面に接続されている。複数の第1群の壁部2C2および複数の第2群の壁部2C2の各々の上端は、中実部2Dのうち外周面が第2面2Bを構成する部分の内周面に接続されている。なお、複数の中空部2C1の断面形状は、任意の形状であればよく、例えば三角形状、六角形状、または八角形状等であってもよい。
【0023】
ソール部2の厚みは、例えば前後方向Yにおいて前側から後側に向かうにつれて徐々に薄くなっている。中実部2Dの厚みは、例えば前後方向Yにおいて一定である。メッシュ部2Cの厚みは、例えば前後方向Yにおいて前側から後側に向かうにつれて徐々に薄くなっている。
【0024】
複数の中空部2C1および複数の壁部2C2の各々の寸法は、例えば前後方向Yにおいて一定である。ソール部2の前後方向Yの前側に位置する部分の複数の中空部2C1および複数の壁部2C2の数は、例えばソール部2の前後方向Yの前側に位置する部分の複数の中空部2C1および複数の壁部2C2の数よりも多い。ソール部2の複数の中空部2C1および複数の壁部2C2の数は、例えば前後方向Yの前側から後側に向かうにつれて徐々に少なくなっている。
【0025】
ソール部2は、複数のスパイク部1の各々を各突起部1Aの中心軸線が延在する方向から視たときに、複数のスパイク部1の各々の全体と重なるように設けられている複数の重畳部分と、隣り合う重畳部分間を接続する接続部分とを含む。第1面2Aおよび第2面2Bの各々の面積は、複数のスパイク部1の各々を各突起部1Aの中心軸線に直交する面に投影したときの投影面積の和よりも大きい。
【0026】
ソール部2の第1面2Aおよび第2面2Bの各々は、例えばU字形状を有している。ソール部2を構成する材料は、樹脂を含む。
【0027】
複数のカバー部3の各々は、複数のスパイク部1の各々の基端1A2の周囲のベース部1Bを覆い、先端1A1を露出させており、ソール部2に溶着されている。複数のカバー部3の各々は、ソール部2の中実部2Dに溶着されている。複数のカバー部3の各々は、例えば中実である。
【0028】
複数のカバー部3の各々には、貫通孔3Aおよび該貫通孔3Aに連なる凹部3Bが形成されている。貫通孔3Aおよび凹部3Bの各々の中心軸は一致している。貫通孔3Aの孔径は、凹部3Bの内径よりも短い。貫通孔3Aは、突起部1Aの基端1A2よりも先端1A1側に位置する部分が通されるように設けられている。凹部3Bは、基端1A2およびベース部1Bが収容されるように設けられている。
【0029】
複数のカバー部3の各々を構成する材料は、樹脂を含む。
ソール部2の中実部2Dと1つのカバー部3との界面には、溶着部4が形成されている。溶着部4は、ソール部2及びカバー部3の各々が互いに溶融して接合した部分である。具体的には、溶着部4は、超音波溶着装置によってスパイク部1、ソール部2及びカバー部3の各々が超音波振動することにより生じたソール部2及びカバー部3の各々の溶融材料がその周囲に形成された隙間に流れ込んで接合した部分である。溶着部4を構成する材料は、ソール部2を構成する材料及びカバー部3を構成する材料のみを含み、それ以外の材料(例えば接着剤を構成する材料)を含まない。
【0030】
複数の溶着部4は、突起部1Aの中心軸線に対する径方向においてベース部1Bよりも外側に配置されており、ベース部1Bを囲むように環状に形成されている溶着部4Aと、各貫通孔1Cの内部に形成されている溶着部4Bとを有している。溶着部4Bは、溶融したソール部2及びカバー部3の各々の一部が貫通孔1Cの内部に流れ込み、互いに接合した部分である。溶着部4Bは、例えば複数の貫通孔1Cの内部を満たしている。溶着部4には、ソール部2の中実部2Dと1つのカバー部3との界面において溶着時に加えられた圧力の痕跡が存在する。この痕跡は、特に顕微鏡画像において顕著に確認され得る。
【0031】
<スパイクソールの製造方法>
次に、
図4、
図5、及び
図6を参照して、スパイクソール10の製造方法の一例を説明する。まず、
図4に示されるように、複数のスパイク部1、ソール部2、および複数のカバー部3の各々が準備される。
【0032】
複数のスパイク部1は、任意の方法により製造される。ソール部2は、3Dプリンタを用いた積層造形法により製造される。メッシュ部2Cを含むソール部2は、例えば、3Dプリンタの造形条件のうち体積充填率および密度を、使用する材料の特性やソール部2に求められる特性に応じて任意に設定することにより製造される。複数のカバー部3の各々は、任意の方法により製造される。複数のカバー部3の各々は、例えば射出成形法、あるいは3Dプリンタを用いた積層造形法により製造される。
【0033】
次に、1つのスパイク部1および1つのカバー部3がソール部2に位置決めされた後、ソール部2とカバー部3とが溶着される。具体的には、まず、スパイク部1がカバー部3の貫通孔3Aおよび凹部3Bに通される。突起部1Aは貫通孔3Aに通され、突起部1Aの基端1A2およびベース部1Bは貫通孔3Aに収容される。次に、被溶着物が載置されるステージ200(
図5参照)と、ステージ200との間で被溶着物に圧力を加えるホーン201(
図5参照)と、ホーン201による加圧方向に直交する方向の振動をホーン201に加える加振装置202(
図5参照)とを備える超音波溶着装置が準備される。ソール部2は、第1面2Aが上方を向くように超音波溶着装置のステージ200上に載置され、スパイク部1およびカバー部3はソール部2の第1面2A上においてスパイク部1が溶着されるべき場所に配置される。
【0034】
次に、超音波溶着装置のホーン201がステージ200側に移動することによりスパイク部1、カバー部3、およびソール部2が加圧される。これにより、
図5に示される状態が実現される。
図5に示される状態では、溶着部4が未形成である。
図5に示される状態では、少なくとも、ソール部2とカバー部3との間に第1隙間S1及び第2隙間S2が形成されている。第1隙間S1は、突起部1Aの中心軸線に対する径方向においてベース部1Bよりも外側に、ベース部1Bを囲むように環状に形成されている。第2隙間S2は、各貫通孔1Cの内周面に囲まれた空間であり、各貫通孔1Cの内部に形成されている。第1隙間S1及び第2隙間S2は、ソール部2およびカバー部3の各々に面している。
【0035】
次に、上記加圧された状態において、ホーン201が加振される。これにより、
図6に示されるように、ソール部2及びカバー部3のうちスパイク部1と接触する領域(接触面及びその近傍の領域を含む)が加熱されて溶融する。ソール部2及びカバー部3の各々から溶融した材料の一部は、第1隙間S1に流入し、第1隙間S1において互いに接合する。これにより、溶着部4Aが形成される。ソール部2及びカバー部3の各々から溶融した材料の他の一部は、第2隙間S2に流入し、第2隙間S2において互いに接合する。これにより、溶着部4Bが形成される。これにより、1つのスパイク部1および1つのカバー部3の各々が、ソール部2に溶着される。
【0036】
上記溶着工程が繰り返し行われることにより、複数のスパイク部1および複数のカバー部3の各々が、ソール部2に溶着される。
【0037】
なお、溶着工程により、複数のカバー部3の各々とソール部2との溶着部の周囲には、バリが発生する場合がある。バリが発生した場合には、溶着工程後に、バリを除去する工程が実施される。このようにして、スパイクソール10が製造される。
【0038】
義足足部100は、スパイクソール10の第2面2Bが接着層20を介して板バネ101の接地部分101Aに固定されることにより、製造される。
【0039】
<効果>
上述のように、従来のスパイクソールは、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を金型内で成形する方法により、製造されている。そのため、従来のスパイクソールのソール部は中実部のみにより構成されている。
【0040】
これに対し、スパイクソール10では、ソール部2がメッシュ部2Cと中実部2Dとを含むため、ソール部がメッシュ部2Cを含まない点でのみスパイクソール10とは異なる比較例のスパイクソールと比べて、ソール部2が弾性変形しやすく、衝撃吸収性が高い。さらに、スパイクソール10では、ソール部2がメッシュ部2Cを含むため、比較例のスパイクソールと比べて、軽量化され得る。
【0041】
また、従来のスパイクソールのスパイクピンの数および配置をカスタマイズするには、カスタマイズを行う都度新たな金型を準備する必要があり、コストおよびリードタイムの削減が困難である。
【0042】
これに対し、スパイクソール10のメッシュ部2Cと中実部2Dとを含むソール部2は、3Dプリンタを用いた積層造形法により容易に製造され得る。そのため、スパイクソール10によれば、従来のスパイクソールと比べて、製造コストおよびリードタイムが削減され得る。スパイクソール10は、スパイクピンの数および配置がカスタマイズされたカスタムスパイクソールに好適である。
【0043】
スパイクソール10を備える義足足部100は、スパイクソール10を備えない義足足部と比べて、高い衝撃吸収性を有している。さらに、スパイクソール10を備える義足足部100の製造コストおよびリードタイムは、スパイクソール10を備えない義足足部と比べて、削減され得る。
(実施の形態2)
図7および
図8に示されるように、実施の形態2に係るスパイクソール11は、実施の形態1に係るスパイクソール10と基本的に同様の構成を備えるが、複数のスパイク部1の各々の嵌合部(貫通孔1C)の内部が溶着部4および充填部5Aにより満たされている点で、スパイクソール10とは異なる。以下では、スパイクソール11がスパイクソール10と異なる点を主に説明する。
【0044】
充填部5Aは、例えばソール部2と一体成形された充填部材5により構成されている。充填部5Aを構成する材料は、例えばソール部2を構成する材料と同じである。このような充填部材5は、例えば3Dプリンタを用いた積層造形法により、ソール部2と一体成形された同一の部材として準備され得る。
【0045】
図7に示されるように、複数の貫通孔1Cの各々の内部において、充填部5Aは、例えば溶着部4Bよりもソール部2側に形成されている。
【0046】
複数のスパイク部1の各々の突起部1Aの基端1A2には、例えば、先端1A1側に凹んでいる凹部1D(
図7参照)が形成されている。
【0047】
図7に示されるように、凹部1Dの内部は、充填部5Bにより満たされている。
溶着部4Aは、ソール部2及びカバー部3の各々が互いに溶融して接合した部分である。溶着部4Bは、充填部材5及びカバー部3の各々が互いに溶融して接合した部分である。具体的には、溶着部4Bは、超音波溶着装置によってスパイク部1、ソール部2及び充填部材5、並びにカバー部3の各々が超音波振動することにより生じた充填部材5及びカバー部3の各々の溶融材料がその周囲に形成された隙間に流れ込んで接合した部分である。溶着部4Bを構成する材料は、充填部材5を構成する材料及びカバー部3を構成する材料のみを含み、それ以外の材料(例えば接着剤を構成する材料)を含まない。
【0048】
スパイクソール11の製造方法は、スパイクソール10の製造方法と基本的に同様の構成を備えるが、一体成形されたソール部2及び複数の充填部材5(
図8参照)が準備され、かつカバー部3がソール部2および各充填部材5に溶着される点で、スパイクソール10の製造方法と異なる。
【0049】
複数の充填部材5の各々は、スパイクソール11において充填部5Aとなるべき複数の凸部5Cと、充填部5Bとなるべき凸部5Dとを有している。複数の凸部5Cの各々は、貫通孔1Cに挿入されるように設けられている。複数の凸部5Cの各々は、例えば貫通孔1Cと嵌め合うように設けられている。凸部5Dは、凹部1Dに挿入されるように設けられている。凸部5Dは、例えば凹部1Dと嵌め合うように設けられている。複数の充填部材5の各々は、例えば射出成形法、あるいは3Dプリンタを用いた積層造形法により、ソール部2と一体的に製造される。
【0050】
次に、1つのスパイク部1及び1つのカバー部3がソール部2及び1つの充填部材5に対して位置決めされた後、カバー部3がソール部2及び充填部材5に溶着される。具体的には、まず、超音波溶着装置のステージ200上において、スパイク部1の貫通孔1Cが充填部材5の凸部5Cに嵌め合わされ、かつ凹部1Dが凸部5Dに嵌め合わされる。さらに、スパイク部1の突起部1Aにカバー部3の貫通孔3Aが通される。次に、超音波溶着装置のホーン201がステージ200側に移動することによりスパイク部1、カバー部3、充填部材5、およびソール部2が加圧される。これにより、
図9に示される状態が実現される。
図9に示される状態では、溶着部4が未形成である。
図9に示される状態においても、第1隙間S1と第2隙間S2とが形成されている。第2隙間S2は、各貫通孔1Cの内部において充填部材5の凸部5Cとカバー部3との間に形成されている。
【0051】
次に、ホーン201が加振される。ソール部2、カバー部3、及び充填部材5のうち他の部材(例えばスパイク部1)との接触領域が加熱されて溶融し、さらに溶融した材料同士が互いに接合することにより、スパイク部1およびカバー部3がソール部2に溶着される。
【0052】
第1隙間S1の周囲においてソール部2及びカバー部3の各々から溶融した材料は、第1隙間S1に流入し、第1隙間S1において互いに接合する。これにより、溶着部4Aが形成される。第2隙間S2において充填部材5の凸部5Cから溶融した材料は、第2隙間S2の周囲においてカバー部3から溶融しかつ第2隙間S2に流入した材料と、第2隙間S2において接合する。これにより、溶着部4Bが形成される。このようにして、スパイクソール11が製造される。
【0053】
<効果>
スパイクソール11は、スパイクソール10と基本的に同様の構成を備えるため、スパイクソール10と同様の効果を奏することができる。
【0054】
さらに、スパイクソール11によれば、スパイク部1の複数の貫通孔1Cおよび凹部1Dの各々の内部に充填部5Aおよび充填部5Bが形成されているため、複数の貫通孔1Cおよび凹部1Dの各々の内部に充填されるべき材料が不足してこれらの内部に空隙部が形成されることを防止できる。その結果、スパイクソール11では、複数の貫通孔1Cおよび凹部1Dの各々の内部に空隙部が形成された場合と比べて、ソール部2とカバー部3との溶着部の強度が高くなり、耐衝撃性が向上する。
【0055】
複数の凸部5Cは、ソール部2及びカバー部3の少なくともいずれかと一体成形された部材として構成されていてもよい。
【0056】
また、充填部5Aは、ソール部2とは別の部材として準備されてソール部2に溶着された充填部材5(
図8参照)により構成されていてもよい。充填部5Aとソール部2との界面にも、図示しない溶着部が形成されている。充填部5Aを構成する材料は、ソール部2に溶着できる材料であれば、例えばソール部2を構成する材料と異なっていてもよい。この場合、ソール部2、カバー部3、及び充填部材5は、同一の工程において同時に溶着され得る。上記溶着工程では、互いに別部材として準備されたソール部2、カバー部3、及び充填部材5がスパイク部1とともに超音波溶着装置において位置決めされて加圧・加振されてもよい。
(実施の形態3)
図10および
図11に示されるように、実施の形態3に係るスパイクソール12は、実施の形態2に係るスパイクソール11と基本的に同様の構成を備えるが、ソール部2が本体部2Eと本体部2Eに対して突出している複数の突出部2Fとを含む点で、スパイクソール10とは異なる。以下では、スパイクソール12がスパイクソール11と異なる点を主に説明する。
【0057】
本体部2Eは、第1面2Aおよび第2面2Bを有している。複数の突出部2Fの各々は、第1面2Aから突出している。複数の突出部2Fの各々は、頂面としての第3面2Gを有している。第3面2Gは、第2面2Bとは反対側を向いている。複数の突出部2Fの各々は、本体部2Eと同一の部材として設けられている。突出部2Fの外形状は、任意の形状であればよいが、例えば円柱形である。
【0058】
本体部2Eおよび複数の突出部2Fの各々は、メッシュ部2Cおよび中実部2Dを含む。複数の突出部2Fの各々のメッシュ部2Cは、本体部2Eのメッシュ部2Cと一体的に連なっている。本体部2Eのメッシュ部2Cと各突出部2Fのメッシュ部2Cとの間には、中実部2Dが形成されていない。本体部2Eの中実部2Dおよび各突出部2Fの中実部2Dは、一体的に連なっているメッシュ部2Cを覆うように設けられている。
【0059】
複数のスパイク部1の各々は、複数の突出部2Fの各々の上に固着されている。複数のカバー部3の各々は、複数の突出部2Fの各々に溶着されている。複数のスパイク部1の各々の貫通孔1Cの内部が溶着部4および突出部2F上に形成された充填部5Aにより満たされている。
【0060】
スパイクソール12の製造方法は、スパイクソール11の製造方法と基本的に同様の構成を備えるが、一体成形された本体部2E、複数の突出部2F、および複数の充填部材5(
図8参照)を含むソール部2が準備され、かつカバー部3がソール部2の各突出部2Fおよび各充填部材5に溶着される点で、スパイクソール11の製造方法と異なる。本体部2E、複数の突出部2F、及び複数の充填部材5とが一体成形されたソール部2は、3Dプリンタを用いた積層造形法により製造される。溶着工程は、スパイクソール11の製造方法と同様に実施され得る。溶着工程では、
図12に示される状態が実現された後に、ホーン201が加振されることにより、
図10に示される溶着部4A,4B及び充填部5A,5Bが形成される。
【0061】
溶着工程により、複数のカバー部3の各々と突出部2Fとの溶着部の周囲には、バリが発生する場合がある。バリが発生した場合には、溶着工程後に、バリを除去する工程が実施される。このようにして、スパイクソール12が製造される。
【0062】
<効果>
スパイクソール12は、スパイクソール11と基本的に同様の構成を備えるため、スパイクソール11と同様の効果を奏することができる。
【0063】
さらに、スパイクソール12は、スパイク部1が突出部2F上に固着されているため、複数のカバー部3の各々と突出部2Fとの溶着部が本体部2Eの第1面2Aとは間隔を空けた位置に形成される。そのため、当該溶着部の周囲には工具を用いて作業できるスペースが形成され得る。溶着工程により溶着部の周囲に発生するバリは、本体部2Eの第1面2Aとは間隔を空けた位置に形成されるため、当該バリは工具を用いて比較的容易に除去される。その結果、スパイクソール12の製造方法では、スパイクソール11の製造方法と比べて、バリを除去する工程のリードタイムが削減され得る。
【0064】
<変形例>
スパイクソール12は、ソール部2が本体部2Eと本体部2Eに対して突出している複数の突出部2Fとを含む点を除き、実施の形態1に係るスパイクソール10と同様の構成を備えていてもよい。異なる観点から言えば、スパイクソール12では、複数のスパイク部1の各々の貫通孔1Cの内部が充填部5Aによらず溶着部4のみによって満たされていてもよい。
【0065】
上記製造方法においても、複数の充填部材5の各々がソール部2と一体成形された部材として準備されるが、これに限られるものではない。スパイクソール12においても、複数の充填部材5の各々は、ソール部2とは別の部材として準備されてもよい。
(実施の形態4)
実施の形態4に係るスパイクソールは、実施の形態1に係るスパイクソール10と基本的に同様の構成を備えるが、
図13に示されるように、複数のカバー部3の各々が複数本の強化繊維30を含み、複数本の強化繊維30の少なくとも一部がベース部1Bの外縁部1Eの少なくとも一部上を外縁部1Eと交差する方向に延びているように設けられている点で、スパイクソール10とは異なる。カバー部3に含まれる複数本の強化繊維30の配向は、
図13中の円形領域R内において模式的に示されている。
【0066】
以下では、実施の形態4に係るスパイクソールがスパイクソール10と異なる点を主に説明する。
【0067】
突起部1Aの中心軸線の延在方向から視て、ベース部1Bの外縁部1Eの平面形状は、任意の形状であればよいが、例えば円形である。
【0068】
複数のカバー部3の各々を構成する材料は、繊維強化プラスチック(FRP)である。
図13に示される複数本の強化繊維30の各々は、複数のカバー部3の各々の内部において、ベース部1Bの外縁部1Eの少なくとも一部上を外縁部1Eと交差する方向に延びているように設けられている。強化繊維30が外縁部1Eと交差する方向に延びるとは、突起部1Aの中心軸線の延在方向から視て、強化繊維30が外縁部1Eと平行でないことを意味する。なお、複数のカバー部3の各々は、外縁部1Eと交差する方向に延びる複数本の強化繊維30に加えて、外縁部1Eと平行に延びる複数本の強化繊維をさらに含んでいてもよい。
【0069】
複数のカバー部3の各々は、3Dプリンタを用いた積層造形法により製造される。複数本の強化繊維30は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、およびセラミック繊維からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0070】
実施の形態4に係るスパイクソールの製造方法は、スパイクソール10の製造方法と基本的に同様の構成を備えるが、複数のカバー部3の各々が糸状もしくはテープ状、またはシート状の繊維強化プラスチックを用いて作製されることにより準備される点で、スパイクソール10の製造方法と異なる。糸状もしくはテープ状の繊維強化プラスチックは、1つの方向に沿って延びる複数本の強化繊維30を含む。シート状の繊維強化プラスチックは、第1方向に沿って延びる複数本の強化繊維30と、第1方向と交差する第2方向に沿って延びる複数本の強化繊維30とが織り込まれた織物として構成されている。
【0071】
<効果>
スパイクソールの使用時には、スパイク部1の先端1A1が繰り返し接地することにより、スパイク部1およびスパイク部1を覆うカバー部3には繰り返し衝撃が加えられる。この場合、カバー部3が強化繊維を含まない樹脂により構成されている場合、カバー部3のうちベース部1Bの外縁部1E上に位置する部分がベース部1Bの外縁部1Eに押圧されて破断しやすくなる。
【0072】
これに対し、実施の形態4に係るスパイクソールでは、複数のカバー部3の各々が複数本の強化繊維30を含み、複数本の強化繊維30がベース部1Bの外縁部1Eの少なくとも一部上を外縁部1Eと交差する方向に延びているように設けられている。そのため、カバー部3のうち複数本の強化繊維30が外縁部1Eと交差する方向に延びている部分がベース部1Bの外縁部1Eに押圧されても、当該部分は破断しにくい。その結果、実施の形態4に係るスパイクソールは、高い耐衝撃性を有している。
【0073】
好ましくは、複数のカバー部3の各々において、複数の強化繊維30は外縁部1E上において疑似等方に配向されている。具体的には、複数のカバー部3の各々は、突起部1Aの中心軸線の延在方向に沿って積層された複数の繊維束を含む。複数の繊維束の各々は、複数の強化繊維30を含む。複数の繊維束は、複数の繊維束の各々の強化繊維30が互いに等しい角度を成して交差するように積層されている。
【0074】
上記角度は、例えば90°である。このような複数のカバー部3の各々は、1枚以上のシート状の繊維強化プラスチックを用いて作製され得る。
【0075】
より好ましくは、
図14に示されるように、上記角度は45°である。この場合、複数本の強化繊維30は、第1繊維束と、第1繊維束に対して45°の角度を成して交差している第2繊維束と、第1繊維束に対して90°の角度を成して交差している第3繊維束と、第1繊維束に対して135°の角度を成して交差している第4繊維束とを含む。代表的には、複数本の強化繊維30は、突起部1Aの中心軸線の延在方向から視て外縁部1Eの接線に対して成す角度が、0°である強化繊維、45°である強化繊維、90°である強化繊維、および-45°である強化繊維の組み合わせである。このような複数のカバー部3の各々は、第1のシート状の繊維強化プラスチックと第2のシート状の繊維強化プラスチックとを用いて積層造形され得る。第1および第2のシート状の繊維強化プラスチックの各々は、例えば互いに直交する1組の繊維束が織り込まれて成る織物として構成されている。第2のシート状の繊維強化プラスチックの1組の繊維束の各々は、第1のシート状の繊維強化プラスチックの1組の繊維束の各々に対して45°傾いた状態で積層造形される。これにより、第1のシート状の繊維強化プラスチックの1組の繊維束から上記第1繊維束と第3繊維束とが形成され、第2のシート状の繊維強化プラスチックの1組の繊維束から上記第2繊維束と第4繊維束とが形成される。
【0076】
このようにすれば、複数本の強化繊維30は、カバー部3のうちベース部1Bの外縁部1Eの全周上において、ベース部1Bの外縁部1Eと交差する方向に延びている。そのため、カバー部3のうち外縁部1E上の位置する部分の全体が、外縁部1Eに押圧されても破断しにくい。その結果、
図14に示されるカバー部3を備えるスパイクソールは、
図13に示されるカバー部3を備えるスパイクソールと比べて、さらに高い耐衝撃性を有している。
【0077】
<変形例>
実施の形態1~4に係るスパイクソールは、シューズ120に取り付けられてもよい。
図15に示されるシューズ120では、スパイクソール10がシューズ120のアウターソールの前方部分121Aに取り付けられている。実施の形態1~4に係るスパイクソールは、例えば図示しない接着層を介して前方部分121Aに固定されている。
【0078】
スパイクソール10を備えるシューズ120は、スパイクソール10を備えないシューズと比べて、高い衝撃吸収性を有している。さらに、スパイクソール10を備えるシューズ120の製造コストおよびリードタイムは、スパイクソール10を備えないシューズと比べて、削減され得る。
【0079】
実施の形態1~4に係るスパイクソールにおいて、スパイク部1は、スパイクピンとして構成されているが、これに限られるものではない。スパイク部1は、例えば、
図16に示されるように、ボルトピン6が螺着されるスパイクナットとして構成されていてもよい。このようなスパイク部1は、ナットとして構成されており先端1A1から基端1A2に向かってネジ穴が形成されている突起部1Aと、突起部1Aの基端1A2から外側に突出しているベース部1Bとを含む。突起部1Aに形成されたネジ孔の孔軸は、突起部1Aの中心軸に沿っており、例えば同軸状に配置されている。突起部1Aの先端1A1は、突起部1Aに形成されたネジ孔の開口端部を構成している。ベース部1Bは、例えば突起部1Aの中心軸に対する径方向において突起部1Aからの突出量が相対的に多い複数の第1部分1B1と、当該突出量が相対的に少ない複数の第2部分1B2とを有している。第1部分1B1および第2部分1B2は、突起部1Aの中心軸に対する周方向において交互に配置されている。
図16に示されるベース部1Bでは、周方向において第2部分1B2を挟んで隣り合う2つの第1部分1B1間に、嵌合部1Fが形成されている。嵌合部1Fの内部(隣り合う2つの第1部分1B1間)は、溶着部4、または溶着部4および充填部5Aによって満たされている。
【0080】
なお、ベース部1Bは、複数の第1部分1B1のみによって構成されていてもよい。異なる観点から言えば、ベース部1Bは、突起部1Aの中心軸に対する周方向において間欠的に形成されていてもよい。
【0081】
図17は、
図16に示されるスパイク部1を備える点でのみ実施の形態1に係るスパイクソール10とは異なるスパイクソールを説明するための部分断面図であり、突起部1Aの中心軸Oの左側は第1部分1B1を通る部分断面図を示し、突起部1Aの中心軸Oの右側は第2部分1B2を通る部分断面図を示している。
図17に示されるように、カバー部3は、ベース部1Bの第1部分1B1および第2部分1B2の各々を覆い、先端1A1を露出させ、かつソール部2に溶着されている。
図17に示されるスパイクソールも、実施の形態1に係るスパイクソール10と基本的に同様の構成を備えるため、スパイクソール10と同様の効果を奏することができる。
【0082】
図18に示されるように、実施の形態1~4に係るスパイクソールでは、複数の溶着部4が、溶着部4A及び溶着部4B以外に、溶着部4Cをさらに有していてもよい。溶着部4Cは、ベース部1Bとソール部2との界面、又はベース部1Bと充填部5Bとの界面に形成されている。
図18に示されるスパイクソールも、実施の形態1に係るスパイクソール10と基本的に同様の構成を備えるため、スパイクソール10と同様の効果を奏することができる。
【0083】
図19に示されるように、
図18に示されるスパイクソールの製造方法では、超音波溶着装置によってスパイク部1、カバー部3、およびソール部2が加圧された状態において、第3隙間S3がさらに形成されている。第3隙間S3は、スパイク部1のベース部1Bとソール部2との間、又はベース部1Bと充填部材5との間に形成されている。第3隙間S3は、第2隙間S2と連なっている。上記加圧された状態においてホーン201が加振されることにより、ソール部2及びカバー部3の各々から溶融した材料の一部は、第3隙間S3に流入し、第3隙間S3において互いに接合する。これにより、溶着部4Cが形成される。
【0084】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
1 スパイク部、1A1 先端、1A2 基端、1A 突起部、1B ベース部、1E 外縁部、1C 貫通孔、1D 凹部、2 ソール部、2A 第1面、2B 第2面、2C メッシュ部、2C1 中空部、2C2 壁部、2D 中実部、2E 本体部、2F 突出部、2G 第3面、3 カバー部、3A,3B 貫通孔、4,4A,4B,4C 溶着部、5 充填部材、5A,5B 充填部、5C,5D 凸部、6 ボルトピン、10,11,12 スパイクソール、20 接着層、30 強化繊維、100 義足足部、110 板バネ、101A 接地部分、120 シューズ、121A 前方部分、200 ステージ、201 ホーン、202 加振装置。