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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】折損式ガス放出防止器
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/40 20060101AFI20240621BHJP
   F16K 15/04 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
F16K17/40 Z
F16K15/04 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020012056
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021116900
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000142698
【氏名又は名称】株式会社桂精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 光
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-340208(JP,A)
【文献】特開2015-121313(JP,A)
【文献】特公昭49-020327(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00-15/20
17/36-17/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス容器から供給される高圧ガスを減圧する切替調整器と前記ガス容器との接続部に配設された折損式ガス放出防止器であって、
前記折損式ガス放出防止器は、折り曲げ荷重により折損する折損箇所と、前記折損箇所を境にして前記ガス容器側の第1部位と前記切替調整器側の第2部位とが構成され、
前記折損式ガス放出防止器における前記折損箇所の周囲に脆弱部が形成されており、
前記第1部位には、通常は前記ガス容器から前記切替調整器へのガスの供給を許容し、前記折損箇所が折損したときには前記ガス容器からのガスが外部に放出されるのを防止する放出防止機構が設けられ、
前記放出防止機構は、ストッパーを備え、
前記ストッパーは、スリット付き嵌合部を含み、
前記第2部位には、通常は前記ガス容器から前記切替調整器への高圧ガスの流れを許容し、前記折損箇所が折損したときには、前記切替調整器側からのガスが外部に放出されるのを防止する逆止弁が設けられており、
前記逆止弁は、一端部に弁体部を構成した弁ロッドと、前記弁ロッドを摺動自在に収納し、軸方向に複数個のスリットが形成されたスリット付きケースと、前記弁ロッドを前記スリット付きケースの底面側に付勢する圧縮ばねと、を備えることを特徴とする折損式ガス放出防止器。
【請求項2】
前記放出防止機構は、前記折損箇所を境にして前記第2部位側のガス流路に一端部が支持され、他端部が前記第1部位側のガス流路内に突出した前記ストッパーと、
前記第1部位の前記ガス流路内における前記折損箇所側に形成したシート面と、
前記第1部位側のガス流路内に配設され、前記ストッパーの他端部に当接して前記シート面から離間されたボールと、を備え、
前記ストッパーの一端部は、前記第1部位のガス流路におけるガスの流れを許容した状態で前記第2部位のガス流路内に支持され、
前記折損箇所が折損したときには、前記ストッパーの他端部が前記ボールとの当接が外れ、前記ガス容器からのガス圧によって、前記ボールを前記シート面に押圧させることを特徴とする請求項1に記載の折損式ガス放出防止器。
【請求項3】
前記シート面は、前記脆弱部の形成位置から前記ガス容器側に向かって離れた位置に形成されていることを特徴とする請求項に記載の折損式ガス放出防止器。
【請求項4】
前記ストッパーの前記ボールに当接する側の部位は、可撓性の部材から構成されていることを特徴とする請求項に記載の折損式ガス放出防止器。
【請求項5】
ガス容器から供給される高圧ガスを減圧する切替調整器と前記ガス容器との接続部に配設された折損式ガス放出防止器であって、
前記折損式ガス放出防止器は、折り曲げ荷重により折損する折損箇所と、前記折損箇所を境にして前記ガス容器側の第1部位と前記切替調整器側の第2部位とが構成され、
前記第1部位には、通常は前記ガス容器から前記切替調整器へのガスの供給を許容し、前記折損箇所が折損したときには前記ガス容器からのガスが外部に放出されるのを防止する放出防止機構が設けられ、
前記第2部位には、通常は前記ガス容器から前記切替調整器への高圧ガスの流れを許容し、前記折損箇所が折損したときには、前記切替調整器側からのガスが外部に放出されるのを防止する逆止弁が設けられており、
前記放出防止機構および前記逆止弁は、ストッパーを備え、
前記ストッパーは、支持ロッドおよびスリット付き嵌合部を含み、
前記第1部位と前記第2部位とを連結する連結管を設け、前記連結管に形成した前記折損箇所を境にした前記第1部位側と前記第2部位側の前記連結管内にそれぞれボールと、前記ボールに当接する前記支持ロッドと、前記各ボールをそれぞれ前記それぞれの支持ロッド側に付勢する圧縮ばねと、前記連結管内で傾かずに前記連結管内を摺動可能な外周径を有する前記スリット付き嵌合部と、を配設し、
前記各ボールの当接により弁機能を有するシート面を前記第1部位側の前記連結管内に形成するとともに、前記各ボールの当接により弁機能を有するシート面を前記第2部位側の前記連結管内に形成して、前記放出防止機構と前記逆止弁を構成したことを特徴とする折損式ガス放出防止器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ガス容器と切替調整器とを接続するガス供給管路に配設され、地震による落下物や強風による飛来物あるいは雪の塊折などによる衝撃荷重が、前記ガス供給管路に加わって、前記ガス供給管路が折損してもガス漏れを防止できる折損式ガス放出防止器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地震による落下物や強風による飛来物あるいは雪の塊折などからなる衝撃力が、ガス容器と切替調整器とを接続するガス供給管路に加わると、ガス供給管路が変形することによる損傷や破断によって、ガス漏れの発生する恐れが危惧されている。
【0003】
しかし、上記衝撃力が作用したときにガス漏れの発生が、ガス供給管路のどの部位において発生するのかは、実際にガス漏れが発生するまで特定できず、発生個所を予測しておくことは難しいのが現状である。強いて言うならば集中荷重が発生し易い管の継手部分などにおいて発生するのではないかと場所を挙げることはできるが、実際にその場所でガス漏れが発生するとは言い難い。
【0004】
折損式ガス放出防止器としては、地震による落下物や強風による飛来物あるいは雪の塊折などによる衝撃力が、前記ガス供給管路に加わったとき、特定の位置で変形または破断が自動的に発生するようにしたガス漏れ防止弁(特許文献1参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-34028
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12に示すように、特許文献1に記載されたガス漏れ防止弁50は、図の向かって左側に配した図示せぬガス容器と切替調整器60との接続部に設けられている。即ち、図示せぬガス容器から供給されるガスは、図12において向かって左側から右側に流れることになる。
【0007】
ガス漏れ防止弁50は、一端部がガス容器に取り付けられ他端部に切替調整器60を片持ち支持している。ガス漏れ防止弁50には、弁本体の周囲に環状の切り込みからなる薄肉部52が形成されており、弁本体の内部には弁座53が形成されている。弁座53の上流側には、ボール形の弁54が装填されており、下流側には、ガスの流れを確保するための放射状のフィン56を設けた弁押し棒55(図13参照)が嵌め入れられている。
【0008】
通常のガス供給状態のときに弁押し棒55は、中間棒57を介してボール形の弁54を供給されているガス流の上流側に押しつけた状態を維持しており、ガス容器からのガスの供給流路は、開いた状態になっている。このとき、図示せぬガス容器から供給されているガスは、弁押し棒55に設けた放射状のフィン56を通って、切替調整器60に供給される。
【0009】
ここで、ガス漏れ防止弁50を介してガス容器に片持ち支持されている切替調整器60が、地震による落下物や強風による飛来物あるいは雪の塊折などによる衝撃を受けると、ガス漏れ防止弁50の薄肉部52が変形して弁本体に隙間を形成したり、弁本体が薄肉部52において破断する。これにより、弁押し棒55は揺動して中間棒57を押さなくなる。その結果、ボール形の弁54を弁座53から離間させた状態が開放され、ボール形の弁54は、図示せぬガス容器からのガス圧によって弁座53に密着することになる。そして、ガス容器からのガスの供給は遮断される。
【0010】
特許文献1に記載されたガス漏れ防止弁50では、地震による落下物や強風による飛来物あるいは雪の塊折などによる衝撃力が、切替調整器60に作用したときに、切替調整器60の変形によってガス漏れ防止弁50が折損することで、ガス容器から供給されるガスが外部に放出するのを防止している。
【0011】
しかし、ガス漏れ防止弁50内には、ガスが存在しているので、薄肉部52が変形してガス漏れ防止弁50が薄肉部52で変形したときには、切替調整器60内に存在している減圧された低圧のガスが変形した箇所に逆流して、外部に放出されることになる。
切替調整器60は、ガス容器から供給された高圧のガスを減圧して、低圧ガスとしてガス器具等に供給することができる装置である。
【0012】
特許文献1に記載された切替調整器60は、ガスが供給される入口が1つしかない単段式の切替調整器60として構成されているため、予備のガス容器を接続することはできない。そのため、使用中のガス容器からの供給だけでは供給圧力が維持できなくなったときに、予備のガス容器からガスを補給することができない。
【0013】
そこで、切替調整器60の構成とは異なるが、予備のガス容器も接続することができ、使用中のガス容器からの供給だけでは供給圧力が維持できなくなったときに、予備のガス容器からガスを補給することができる切替調整器の構成について、以下の段落(0029)~(0039)において、図11を用いながらその作動原理とともに説明する。
【0014】
高圧ガス保安協会の調べでは、2017年11月から2018年3月に欠けた雪害事項として29件の事故が発生しており、そのうち6件の事故が、ガス容器と切替調整器を直接接続した設備等で折損事項が発生していることが報告されている。
【0015】
切替調整器内には、減圧されてはいるがガスが存在しているので、切替調整器に特許文献1に記載されたガス漏れ防止弁50を接続した配置構成にしておくと、上述した折損事故が発生したときにガス容器から供給されるガスの放出を遮断することはできても、切替調整器側からは内部に存在しているガスが折損箇所に逆流して、外部に放出され続けることになる。
【0016】
また、特許文献1に記載されたガス漏れ防止弁50では、通常の使用状態のときには、ボール形の弁54が、中間棒57を介して弁押し棒55によって弁座53から離間した位置に維持されている。そのため、地震によってガス漏れ防止弁50の薄肉部52が変形してガスが流出する隙間や亀裂、破断が形成されなくても、弁押し棒55と中間棒57との当接状態が解除されると、ガス容器からのガス圧によってボール形の弁54は弁座53に密着することになる。これによって、ガス容器からのガスの供給は遮断されてしまう。特に、弁押し棒55は棒状に構成されているので、地震等の衝撃によって弁押し棒55と中間棒57との当接状態が外れてしまう恐れが多く考えられる。
【0017】
このように弁本体の内部で弁押し棒55と中間棒57との当接状態が外れた状態になると、地震の終了後にもガス容器からのガスの供給が遮断された状態が続き、ガス容器からのガスの遮断原因を見極めることが難しくなる。また、ガス漏れ防止弁50における弁押し棒55と中間棒57との当接状態が解除されたことが、ガスが遮断されたことの原因ではないかと予想したとしても、ガス漏れ防止弁50を新しいものに取り換えてみるまで原因を究明することはできない。そのため、ガス容器からのガスの供給を再開させるには、コストと手間と時間が必要になる。
【0018】
本願発明では、上述した従来の問題を解決し、切替調整器とガス容器との接続部に配設することができる折損式ガス放出防止器であって、地震による落下物や強風による飛来物あるいは雪の塊折などによる衝撃力による影響を折損式ガス放出防止器が受けた際には、ガス容器からのガスの放出を防止するとともに、切替調整器側から逆流するガスの放出も防止することができる。しかも、地震の揺れだけで折損式ガス放出防止器に破断や隙間が形成されない場合には、ガス容器からのガスの流れを遮断することは起こらない。このような機能を有する折損式ガス放出防止器の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明の課題は、請求項1~6に記載した折損式ガス放出防止器によって達成することができる。
即ち、本願発明は、ガス容器から供給される高圧ガスを減圧する切替調整器と前記ガス容器との接続部に配設された折損式ガス放出防止器であって、
前記折損式ガス放出防止器は、折り曲げ荷重により折損する折損箇所と、前記折損箇所を境にして前記ガス容器側の第1部位と前記切替調整器側の第2部位とが構成され、
前記第1部位には、通常は前記ガス容器から前記切替調整器へのガスの供給を許容し、前記折損箇所が折損したときには前記ガス容器からのガスが外部に放出されるのを防止する放出防止機構が設けられ、
前記第2部位には、通常は前記ガス容器から前記切替調整器への高圧ガスの流れを許容し、前記折損箇所が折損したときには、前記切替調整器側からのガスが外部に放出されるのを防止する逆止弁が設けられていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本願発明の折損式ガス放出防止器によって、地震による落下物や強風による飛来物あるいは雪の塊折などによる衝撃力の影響で折損箇所が折損しても、ガス容器からのガスは、放出防止機構によって外部への放出が防止され、しかも、切替調整器側から逆流するガスは、逆止弁によって外部へ放出されるのを防止できる。即ち、前記折損箇所からガスが外部に放出されるのを確実に防止できる。
【0021】
折損式ガス放出防止器として、上記折損箇所を境にした第2部位側のガス流路に一端部が支持され、他端部が第1部位側のガス流路内に突出したストッパーと、第1部位のガス流路内における折損箇所側に形成したシート面と、第1部位のガス流路内に配設され、ストッパーの他端部に当接してシート面から離間されたボールと、を備えた構成にしておくことができる。
【0022】
そして、ストッパーの一端部は、第1部位側のガス流路におけるガスの流れを許容した状態で第2部位側のガス流路に支持された構成にしておき、折損箇所が折損したときには、ストッパーの他端部がボールとの当接が外れ、ガス容器からのガス圧によってボールをシート面に押圧させる構成にしておくことができる。
【0023】
このように構成しておくことにより、折損箇所が折損してストッパーとボールとの当接状態が解除されたときには、折損式ガス放出防止器によって、ガス容器のガスが外部に放出するのを防止できる。しかも、特許文献1に記載されたガス漏れ防止弁50のように、弁押し棒55とボール形の弁54との間に不安定な存在となる中間棒57を介在させていないので、地震のゆれ等で誤作動を生じることがなく、本願発明では、ストッパーとボールとの間での作動が安定することになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ガス容器からのガスを供給する全体的な配置構成を示す側面図である。(全体構成)
図2】切替調整器と折損式ガス放出防止器の断面図である。(実施形態1)
図3】折損式ガス放出器の折損状態を示す断面図である。(実施形態1)
図4図4(a)は、逆止弁を示す要部断面図であり、図4(b)は、逆止弁の弁体構造を示す斜視図であり、図4(c)は、放出防止機構の要部を示す斜視図である。(実施形態1)
図5図5(a)は、逆止弁の作動状態を示す断面図であり、図5(b)は、放出防止機構を示す断面図であり、図5(c)は、折損時の放出防止機構を示す断面図である。(実施形態1)
図6】切替調整器と折損式ガス放出器の断面図である。(実施形態2)
図7】折損式ガス放出器の折損状態を示す断面図である。(実施形態2)
図8】逆止弁と放出防止機構の要部を示す断面図である。実施形態2)
図9】折損式ガス放出器の折損状態を示す断面図である。(実施形態2)
図10】逆止弁と放出防止機構の要部を示す斜視図である。(実施形態2)
図11】切替調整器の作動原理図であり、図11-1は、使用側だけで全消費量のガスを供給している場合、図11-2は、使用側と予備側の両方からガスを供給している場合、図11-3は、ガス容器の交換前に切替レバーを操作して使用側から予備側に切替えた場合、図11-4は、ガス容器を交換した後、予備側となったガス容器からガスを供給している状態を示している。
図12】切替調整器とガス漏れ防止弁の断面図である。(従来例)
図13】弁押し棒の斜視図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本願発明を実施するための実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本願発明に係る折損式ガス放出防止器は、LPガス容器などのガス容器と切替調整器との間に接続され、折損式ガス放出防止器を介して切替調整器をガス容器によって片持ち支持している。
尚、以下で説明する各実施形態における折損式ガス放出防止器の構成において、切替調整器2に接続している2つのガス容器3a、3bの図示は、図1を除いて省略しているが、使用中のガス容器を符号3aで代表させ、予備のガス容器を符号3bで代表している。
【0026】
本願発明に係わる折損式ガス放出防止器の構成としては、以下の実施例で示す構成以外であっても、本願発明の技術思想を満たし、本願発明の課題を解決することができる構成であれば、以下に説明する構成に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
以下では、本願発明の好適な実施態様について、予備のガス容器が接続できる切替調整器を用いた構成について説明を行うが、本願発明に係る折損式ガス放出防止器としては、従来例1で示したような単段式の切替調整器に対しても使用することができる。
[実施形態1]
【0027】
図1図5を用いて、本願発明の実施形態1に係る折損式ガス放出防止器1の構成について説明する。図1には、ガス容器3aからのガスを供給する全体的な配置構成を示しており、ガス容器3a、3bとして2本を配置した構成を示している。そして、ガス容器3aは使用中のガス容器を示しており、ガス容器3bは予備用のガス容器を示している。
【0028】
ガス容器3aは、折損式ガス放出防止器1を介して切替調整器2を片持ち支持しており、ガス容器3bは、高圧ホース6を介して切替調整器2に接続している。ガス容器3a、3bから選択的に供給された高圧ガスは、切替調整器2において減圧され中圧ガスは、その後図示せぬ減圧器において減圧され、低圧ガスになった状態で低圧ホース4を通ってガスメータ5に供給される。ガスメータ5を通った低圧ガスは、図示しない家庭用のガス器具等に供給される。
【0029】
(切替調整器の作動原理)
図11-1~図11-4には、切替調整器2の作動原理を概略構成図で示している。切替調整器2は、図のA側に配設された図1のガス容器3aからの高圧ガス(左向きの黒い矢印)が、図1に示す折損式ガス放出防止器1を介して供給される流路48aと、図のB側に配設された図1の予備のガス容器3bからの高圧ガス(右向きの白抜き矢印)が、図1に示す高圧ホ-ス6を介して供給される流路48bと、ガス容器3a、3bから選択的に供給された高圧ガスを減圧する減圧室47と、減圧室47からの中圧ガス(右向きの黒い矢印)が、図のC側に流出する流路48cとから構成されている。流路48cは、図示せぬ減圧器を介して、図1に示す低圧ホース4に接続されている。図示せぬ減圧器で減圧された低圧ガスは、図1に示すように低圧ホース4を介してガスメータ5に供給される。
【0030】
なお、切替調整器2としては、ガス容器から供給された高圧ガスを、中圧ガスに減圧する構成について説明しているが、必要に応じて、切替調整器2の構成として、ガス容器から供給された高圧ガスを多段階に亘って低圧ガスに減圧する構成にしておくこともできる。
【0031】
図11-1に示すように、A側のガス容器3aから流路48aに供給された高圧ガスは、ノズル42aによって減圧され、減圧室47に流入する。ノズル42aの開口量は、圧縮ばね49aによって上方に付勢されている弁棒43aの先端部の位置によって調整されている。弁棒43aの先端部は、カム面44に当接しており、弁棒43aの先端部を当接しているカム面44の位置は、センターロッド41を付勢している調整バネ45のバネ力とダイヤフラム46とにより調整される。
【0032】
減圧室47は、切替調整器2の下方側のハウジングとダイヤフラム46によって囲まれた空間として形成されている。ダイヤフラム46は、調整バネ45と大気圧とによって、減圧室47の容積を減少させる方向(図11では下方向)に付勢しており、減圧室47内の圧力が基準の圧力よりも低下すると、カム面44からの押圧力によって弁棒43aは下に移動させられて、ノズル42aの開口面積は増大する。カム面44が下降することにより、カム面44は弁棒43bにも当接し、弁棒43bを下降させて、ノズル42bの開口面積を開かせる。そして、図11-2に示すように、B側に配した予備のガス容器3bからガスの供給を開始することができる。
【0033】
図11-1には、カム面44によって弁棒43aを押圧してノズル42aに隙間を形成した状態を示しており、これにより、A側から供給された高圧ガスは、ノズル42aによって減圧されて減圧室47に流入する。減圧室47に流入した中圧ガスは、基準の圧力となってC側から流出することになる。
【0034】
カム面44の形状により、流路48bに設けた弁棒43bの先端部は、カム面44とは非当接状態になっているので、弁棒43bは、減圧室47に通じるノズル42b(図11-1参照)を閉塞した状態になっている。
【0035】
図11-2には、使用中のA側に配したガス容器3aからの高圧ガスの圧力が、予め定めたガス圧よりも低下したときの状態を示しており、減圧室47内の圧力が基準の圧力よりも低下し、これ以上低下しないようにするため、予備のガス容器3bを配設したB側からの高圧ガスを補給して減圧室47内の圧力を高めようとしている状態を示している。
【0036】
図11-2に示す状態になると、切替調整器2の切替レバー7を切替えて、図11-3の状態にする。この状態では、減圧室47の圧力は、予備のガス容器3bから補給されたガスによって基準の圧力に戻ることになる。そして、圧力が予め定めた圧力以下に低下したA側に配設したガス容器3aは、図11-4のように切替レバー7を切替えた後で交換作業が行われる。
【0037】
図11-3には、切替レバー7によってカム面44が切替えられ、切替えられたカム面44によって弁棒43bが押圧されてノズル42bに隙間が形成された状態を示している。このとき、B側から流路48bに供給された高圧ガスは、ノズル42bによって減圧されて減圧室47に流入することになる。減圧室47に流入した中圧ガスは、基準の圧力となって流路48cを通りC側に流出する。このとき、ノズル42aは、遮蔽した状態になっている。
【0038】
図11-4には、圧力が予め定めた圧力以下に低下したA側のガス容器3aを交換して、予備側であったB側のガス容器3bからの高圧ガスを使用している状態を示している。交換されたA側のガス容器3aからの高圧ガスは、流路48aに供給されるが、予備のガス容器3bから供給されているガス圧が予め定めた基準の圧力よりも低下するまで、流路48aのノズル42aは閉塞された状態が維持されている。
【0039】
切替レバー7の切替操作は、切替調整器2の構成として手動で行う構成にしておくことも、必要に応じて、例えば減圧室47内の圧力を計測して自動的に切替操作を行わせる構成にしておくこともできる。
【0040】
(折損式ガス放出防止器の構成)
図2図5を用いて、折損式ガス放出防止器1の構成を説明する。なお、図2図3図5では、上下方向の天地を逆に図示している。即ち、図3図5(a)、(c)では、切替調整器2に対して衝撃荷重が図の左下から右上側に作用した状態を示しており、このとき切替調整器2は図の時計回り方向に回動する。これは、衝撃荷重が切替調整器2に作用したときに、折損式ガス放出防止器1の作動状態を分かり易くするために、天地を逆に図示しているものである。
【0041】
図2に示すように、切替調整器2と切替調整器2に接続した折損式ガス放出防止器1及び高圧ホース6の配置構成は、図1に示した配置構成と同様の配置構成になっている。切替調整器2は、折損式ガス放出防止器1によって、図示せぬガス容器3aに片持ち支持された配置構成になっている。
【0042】
折損式ガス放出防止器1は、図示せぬガス容器3aに接続する第1部位11と、切替調整器2に接続する第2部位12を備えた構成になっており、第1部位11と第2部位12は、連結管31によって連結されており、連結管31内にはガス流路17が形成されている。また、第1部位11と第2部位12とを連結する連結管31には、脆弱部14が形成されている。
【0043】
脆弱部14としては、地震による落下物や強風による飛来物あるいは雪の塊折などが切替調整器2に当接して衝撃荷重が作用した際に、衝撃荷重の影響により折損する折損箇所13として構成されている。即ち、片持ち支持された切替調整器2が折損箇所13の脆弱部14を中心に折れ曲がることにより、折損箇所13が折損することになる。
また、脆弱部14としては、連結管31の外周部に環状の凹溝として形成しておくことも、環状の切欠き部として形成しておくこともできる。
【0044】
第1部位11には、折損箇所13が折損したときに、図示せぬ使用中のガス容器3aから供給されている高圧ガスが、外部に放出するのを防止する放出防止機構16が設けられている。放出防止機構16は、第2部位12寄りの連結管31内に一端部が支持され、他端部が第1部位11側の連結管31内に突出した支持ロッド21からなるストッパー20と、第1部位11側の連結管31内における折損箇所13側に形成したシート面24と、第1部位11側の連結管31内に配設され、支持ロッド21の他端部に当接してシート面24から離間するように規制されたボール23と、を備えた構成になっている。
【0045】
ストッパー20は、図4(c)に示すように、ガスの流れを許容し、第2部位12側の連結管31の部位に嵌着されるスリット付き嵌合部22と、第1部位11側の連結管31内に突出することができる支持ロッド21を備えた形状に構成されている。支持ロッド21の外径は、連結管31の内径よりも小径に形成されている。
【0046】
図5(b)に示すように、第1部位11側の連結管31内で、ボール23は自由に移動でき、支持ロッド21の先端部によってシート面24から離間された位置と連結管31の端部に配設された押え部材15との間を自由に移動できる。ボール23の外周径は、第1部位11側の連結管31の内径よりも小径に形成されている。ボール23が第1部位11側の連結管31から抜け出るのを防止する押え部材15は、例えば、軸方向にハチの巣状に形成した複数個の貫通孔が形成された構成になっており、ガスの流通を許容する構成になっている。
【0047】
図4(a)、図4(b)に示すように、逆止弁25は、一端部に弁体部26を構成した弁ロッド27と、弁ロッド27を摺動自在に収納し、軸方向に複数個のスリットが形成されたスリット付きケース28と、弁ロッド27をスリット付きケース28の底面側に付勢する圧縮ばね29と、を備えた構成になっている。スリット付きケース28は、有底の筒状形状に構成されており、開口部の周囲には外方向に拡開したフランジ部が形成されている。そして、筒状の胴部には軸方向に形成したスリットが形成されている。
【0048】
前記フランジ部は、第2部位12側の連結管31の内面に形成した凹溝に嵌合することで、スリット付きケース28の抜け止めと位置決めを行うことができる。前記フランジ部を第2部位12側の連結管31の内面に形成した凹溝に嵌合させる際には、前記筒状の胴部に形成したスリットを利用して、前記フランジ部側を縮径させることにより、連結管31内に挿入した前記フランジ部を連結管31の内面に形成した凹溝に嵌合させることができる。
【0049】
筒状の底面には、ガスを流通させる流路17の開口部が形成され、この開口部には、図5(a)に示すように、弁座30が形成されている。この弁座30に弁体部26が当接することにより、前記ガスを流通させる連結管31に形成した流路17を遮断することができる。
【0050】
(折損時の折損式ガス放出防止器の作動)
図3に示すように、切替調整器2に衝撃荷重が作用して、切替調整器2が図の時計回り方向に回動することで折損箇所13が折れ曲がると、放出防止機構16では、図5(c)に示すように、第2部位12も図の時計回り方向に回動し、第2部位12側の連結管31の部位に嵌着されている支持ロッド21のスリット付き嵌合部22が図の時計回り方向に回動する。そして、支持ロッド21は衝撃荷重によって屈曲して、支持ロッド21の先端部とボール23との当接状態が解除される。支持ロッド21による規制が解除されたボール23は、ガス容器3aからのガス圧によってシート面24に密着して、ガス容器3a(図1参照)からのガスが外部に放出されるのを防止する。
【0051】
またこのとき、切替調整器2では、図11-2に示したのと同じ状況になっており、減圧室47のガスは、ノズル42aを通り、流路48aを通って連結管31の折損箇所13側に流出することになる。流路48aを通って流れ出るガスの圧力によって、逆止弁25の弁体ロッド27は、図3の右方向に移動する。弁体ロッド27が移動することによって、図5(a)に示すように、弁体ロッド27の弁体部26は、スリット付きケース28の底部に形成した弁座30に密着する。これにより、切替調整器2の流路48aを通るガスは、逆止弁25によって、外部に放出されるのが防止される。
【0052】
(効果)
地震による落下物や強風による飛来物あるいは雪の塊折などによる衝撃の影響を折損式ガス放出防止器1が受けて折損箇所13が折損しても、使用を行っていたガス容器3aからのガスは、放出防止機構16によって外部に放出するのが防止される。しかも、切替調整器2側から逆流したガスは、逆止弁25によって外部への放出が防止される。即ち、折損箇所13が折損することによって、両方のガスが外部に流出するのを確実に防止できる。そして、ガス漏れの危険が回避できるので、ガス爆発の原因を除去できる。
【0053】
しかも、本願発明では、特許文献1に記載されたガス漏れ防止弁50のように、弁押し棒55とボール形の弁54との間に不安定な存在となる中間棒57を介在させていない構成であるので、地震のゆれで放出防止機構16が誤作動を起こすことがなく、ストッパーの支持ロッド21とボール23との間での作動を安定させることができる。
[実施形態2]
【0054】
図1図6図10を用いて、本願発明の実施形態2に係る折損式ガス放出防止器1の構成について説明する。なお、図6図9では、上下方向の天地を逆に図示している。即ち、図7図9では、切替調整器2に対して衝撃荷重が図の左下から右上側に作用した状態を示しており、このとき切替調整器2は図の時計回り方向に回動する。これは、衝撃荷重が切替調整器2に作用したときに、折損式ガス放出防止器1の作動状態を分かり易くするために、上下逆に図示しているものである。
【0055】
実施形態1では、逆止弁25の構成として、弁体部26を用いた構成となっていたが、実施形態2の逆止弁25は、実施形態1の放出防止機構16の構成と同様の構成を備えており、支持ロッド21bとボール23bを用いて構成されている。他の構成は、実施形態1と同様の構成になっている。そこで、実施形態1と同様の構成については、実施形態1で用いた部材符号と同じ部材符号を用いることで、重複した説明を省略する。
【0056】
図6に示すように、折損式ガス放出防止器1は、図示せぬガス容器3aに接続する第1部位11と、切替調整器2に接続する第2部位12を備えた構成になっている。第1部位11と第2部位12とは、連結管31によって連結されており、連結管31内にはガス流路17が形成されている。また、第1部位11と第2部位12とが離間している連結管31の部位には、脆弱部14が形成されており、折損時に第1部位11と第2部位12とが分離する折損箇所13として構成されている。
【0057】
放出防止機構16は、脆弱部14よりも第1部位11側の連結管31内に構成されており、逆止弁25は、脆弱部14よりも第2部位12側の連結管31内に構成されている。
放出防止機構16は、図6図8図10に示すように、支持ロッド21aと、ボール23aと、ボール23aを支持ロッド21aの先端部に当接するように付勢する圧縮ばね29aと、ボール23aが当接してガス流路17を閉塞するシート面24aとから構成されている。シート面24aは、連結管31内に形成されている。支持ロッド21aのスリット付き嵌合部22aは、連結管31内に遊嵌されており、スリット付き嵌合部22aの外方端部は、脆弱部14よりも第2部位12側に位置しないように配設されている。
【0058】
支持ロッド21aの先端部は、ボール23aをシート面24aに当接させない位置に配設されている。スリット付き嵌合部22aの外周径は、連結管31内で傾いたりせずに連結管31内を摺動可能な外周径に構成されている。
尚、実施形態1では、ボール23を支持ロッド21側に付勢する圧縮ばねを用いていない構成を説明したが、実施形態1においても実施形態2で示した圧縮ばね29aと同様のばねを配設した構成にしておくこともできる。
【0059】
逆止弁25は、図6図8図10に示すように、支持ロッド21bと、ボール23bと、ボール23bを支持ロッド21bの先端部に当接するように付勢する圧縮ばね29bと、ボール23bが当接してガス流路17を閉塞する弁座30bとから構成されている。弁座30bは、連結管31内に形成されている。支持ロッド21bのスリット付き嵌合部22bは、連結管31内に遊嵌されており、スリット付き嵌合部22bの外方端部は、脆弱部14よりも第1部位11側に位置しないように配設されている。
そして、スリット付き嵌合部22bの外周径は、連結管31内で傾いたりせずに連結管31内を摺動可能な外周径に構成されている。
【0060】
図8に示すように、支持ロッド21aのスリット付き嵌合部22aの端面と支持ロッド21bのスリット付き嵌合部22bの端面は、互いに当接した配置構成になっている。スリット付き嵌合部22aの端面とスリット付き嵌合部22bの端面は、それぞれ圧縮ばね29aと圧縮ばね29bのばね力が釣り合った位置で当接している。そして、スリット付き嵌合部22aの端面とスリット付き嵌合部22bの端面が当接する位置としては、脆弱部14が形成された位置となるように、圧縮ばね29aと圧縮ばね29bのそれぞれのばね力は互いに等しいばね力となるように構成されている。
【0061】
(折損時の折損式ガス放出防止器の作動)
図7に示すように、図示せぬガス容器3aに片持ち支持されている切替調整器2に衝撃荷重が作用して、切替調整器2が図の時計回り方向に回動することで折損箇所13が折れ曲がると、図9に示すように、第1部位11と第2部位12とは折損箇所13において分断された状態になる。
【0062】
このとき、第1部位11側に設けた放出防止機構16の支持ロッド21aは、ボール23aを介した圧縮ばね29aからの付勢力によって連結管31内を摺動して第2部位12側の外方に押し出される。そして、ボール23aは、圧縮ばね29aからの付勢力によってシート面24aに密着し、第1部位11側のガス流路17でのガスの流れを遮断する。
これにより、使用中のガス容器3aから供給されるガスは、第1部位11側に設けた放出防止機構16によって、外部に放出されるのを防止される。
【0063】
また、第2部位12側に設けた逆止弁25では、支持ロッド21bは、ボール23bを介した圧縮ばね29bからの付勢力によって連結管31内を摺動して第1部位11側の外方に押し出される。そして、ボール23bは、圧縮ばね29bからの付勢力によって弁座30bに密着し、第2部位12側におけるガス流路17の遮断を行うことになる。
これにより、切替調整器2の流路48aを通って逆流するガスは、第2部位12側に設けた逆止弁25によって、外部に放出されるのを防止される。
【0064】
(効果)
地震による落下物や強風による飛来物あるいは雪の塊折などによる衝撃の影響を折損式ガス放出防止器1が受けて折損箇所13が折損しても、使用を行っていたガス容器3aからのガスは、第1部位11側に設けた放出防止機構16によって外部に放出するのが防止される。しかも、切替調整器2側から流出するガスは、第2部位12側に設けた逆止弁25によって外部への放出が防止される。即ち、折損箇所13が折損することによって、両方からのガスが外部に流出するのを確実に防止できる。そして、ガス漏れの危険が回避されるので、ガス爆発の原因を除去できる。
【符号の説明】
【0065】
1・・・折損式ガス放出防止器、2・・・切替調整器、3a、3b・・・ガス容器、4・・・低圧ホース、5・・・ガスメータ、6・・・高圧ホース、11・・・第1部位、12・・・第2部位、13・・・折損箇所、14・・・脆弱部、16・・・放出防止機構、17・・・ガス流路、20・・・ストッパー、21、21a、21b・・・支持ロッド、23、23a、23b・・・ボール、24、24a・・・シート面、25・・・逆止弁、26・・・弁体部、27・・・弁ロッド、29、29a、29b・・・圧縮ばね、30、30b・・・弁座、31・・・連結管、41・・・センターロッド、42a、42b・・・ノズル、43a、43b・・・弁棒、45・・・調整ばね、47・・・減圧室、48a、48b、48c・・・流路、50・・・ガス漏れ防止弁、52・・・薄肉部、53・・・弁座、54・・・ボール形の弁、55・・・弁押し棒、57・・・中間棒、60・・・切替調整器。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
図12
図13