(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】廃油回収容器
(51)【国際特許分類】
B65F 1/14 20060101AFI20240621BHJP
B65F 1/00 20060101ALI20240621BHJP
A47J 37/12 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B65F1/14 B
B65F1/00 A
B65F1/00 S
A47J37/12 321
(21)【出願番号】P 2020025680
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019035013
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019086820
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519279948
【氏名又は名称】株式会社油人
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100104396
【氏名又は名称】新井 信昭
(72)【発明者】
【氏名】林 育生
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-032418(JP,U)
【文献】実開昭57-202836(JP,U)
【文献】実公平06-004864(JP,Y2)
【文献】特開2012-217712(JP,A)
【文献】特開2018-033873(JP,A)
【文献】実公昭35-028058(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 1/00- 1/16
A47J37/00-37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油の廃油を一時貯留する廃油回収容器であって、
制御用のコントロールパネルを有するフライヤーの油槽から内部に廃油を自重落下させるための上部開口を有する容器本体と、当該容器本体から廃油を抜き取るために
当該コントロールパネルの正面と同方向に向く当該容器本体の正面から見て下に取り付けられた回収バルブと、を備え、
当該回収バルブは、所定の廃油回収袋の注入口と当該回収バルブの出口側を水密結合する結合構造とを有している、
ことを特徴とする廃油回収容器。
【請求項2】
前記注入口には、注入した廃油の逆流を解除可能に防止する逆止弁が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の廃油回収容器。
【請求項3】
前記逆止弁は、前記注入口に対し着脱自在に構成されている
ことを特徴とする請求項2記載の廃油回収容器。
【請求項4】
前記廃油回収袋は、使用前の食用油の運搬に使用した使用済み容器である
ことを特徴とする請求項2または3記載の廃油回収容器。
【請求項5】
前記注入口は、閉鎖キャップにより閉鎖可能に構成されている
ことを特徴とする請求項2ないし4いずれか記載の廃油回収容器。
【請求項6】
前記回収バルブは、当該容器本体の内側に設けられた開閉機構と、当該開閉機構を当該容器本体の外側から操作可能な操作機構と、を有し、
当該開閉機構は、当該操作機構の操作により閉鎖状態にあった当該開閉機構を可逆的もしくは不可逆的に開放して廃油抜き取りを可能とするように構成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の廃油回収容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み食用油すなわち廃油を回収するための廃油回収容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レストラン、飲食店、学校、病院などの調理室や惣菜店やコンビニなどの店舗から排出される廃油は、フライヤーとよばれる揚げ物機で使用されたものがほとんどである。廃油はフライヤーの油槽に入っていて、その底部の排油バルブを介して抜き取られる。具体的には、油槽と外部を連通する排油バルブを開くことで廃油が自重落下してフライヤー下の取っ手付き廃油回収容器に移される。レストラン等の従業員は廃油回収容器の取っ手を一方の手で持ち上げ、他方の手で底を引き上げて廃油回収容器を傾け、上部から溢れる廃油をペール缶に注ぎ入れる。
【0003】
ペール缶とは、大きいもので直径30センチメートル、高さ50センチメートルほどの蓋つき取っ手付き丸缶である。廃油を注ぎ入れるとき蓋を外し、終わったときに蓋を閉め、蓋を閉めたペール缶は所定の置き場所に保管される。外した蓋は床の上などに仮置きすることになるが、そのとき蓋の裏側に付着していた廃油がこぼれて床などを汚すことが多く、また注ぎ入れるときに外にこぼれた廃油でペール缶の外表面を汚すことなどが頻繁に起こる。従業員は廃油の汚れをふき取ろうとするが、その努力にも限界があり、したがって、ペール缶の外側は廃油によって加重的に汚れていく。
【0004】
ところで、尺貫法の単位である1斗(約18リットル)の容量を持つ、角形の金属缶のことを一斗缶という。一斗缶の半分の容量、すなわち、約9リットルの容量の金属角缶のことをハーフ缶などと呼ぶことがあるが、本明細書では両者を含めた金属缶のことを一斗缶と総称する。一斗缶は、使用前の食用油を運搬するための容器であるが、食用油を抜いて空になった一斗缶が廃油容器として再利用することもよく行われている。廃油容器として使用された一斗缶の外側は、ペール缶の場合と同じ理由で汚れている。次に、ペール缶の使用状況を説明するが、一斗缶の使用状況もこれと異ならない。
【0005】
回収業者は、上述のレストランや店舗などに出向き、保管されているペール缶を外に停めてある専用車のところまで人力で運び、上記した廃油回収容器の注ぎと同じ要領で専用車のタンクの中に廃油を移し替える。しかし上述のようにペール缶の外側は廃油で汚れている。回収業者は作業服を汚したくないからペール缶を体から離して扱おうとするので力を入れづらい。そのうえ廃油の入ったペール缶は非常に重いから廃油の移し替えはたいへんな重労働となる。
【0006】
他方、使用前の食用油の運搬には、合成樹脂製の柔軟な運搬容器や、この運搬容器を段ボール箱に入れたバッグ・イン・ボックスを、廃油回収用に流用する技術的思想が次に示す特許文献1および2に開示されている。また特許文献3は、廃油回収容器に係る先行技術を示す。
【0007】
たとえば、特許文献1には、未使用の食用油が入っていたプラスチック製袋を、使用済み食用油(廃油)の回収に流用する技術思想が開示されている(
図34)。特許文献1には、このプラスチック製袋は段ボール箱の中に入れられていて、食用油を上部開口からフライヤーに移したあと、つまり、通常の使い方をして空にしたあと、その上部開口からプラスチック製袋の中に180℃を超える使用済みの食用油(廃油)を入れ封止手段で封止される旨の記載がある。封止手段については、任意である旨のみが述べられ、具体的な開示はない。
【0008】
特許文献2には、食用油の配達兼回収ケースが開示されている(
図35)。このケースは、それぞれ未使用食用油を小分けした包装袋と、廃油を入れるための折り畳み状態の樹脂製内袋とが同梱された段ボール箱である。内袋にはスパウト(注ぎ口)が突き出して接続され、このスパウトが段ボール箱のフラップに設けられた口孔にはめ込まれることで、段ボール箱の外から廃油を注ぎ入れられるようになっている。内袋は、注ぎ入れる廃油が180℃以上の高温であっても耐えられる耐熱性を有することが記載されている。スパウトは、キャップで封止できるようになっている。
【0009】
また特許文献3には、コック付きの濾過器が紹介されている。特許文献3は濾過器についての詳細な説明を含まないが、濾過した廃油を一時的に貯留する容器と推測される。添付図面に示されるように、コックは水道蛇口に類似するものであって濾過器の外側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2003-231559(
図2、段落0011他)
【文献】特開2012-144292(段落0010他)
【文献】実公昭35-28058(右欄第1~4行目、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように廃油を移し替える作業が行われることから、ペール缶や再利用された一斗缶の外側はどうしても廃油で汚れてしまい、それが回収業者の重労働につながる点が問題となっている。
【0012】
特許文献1のプラスチック製袋の上部開口から180℃を超える廃油を入れ任意の封止手段で封止するといっても、不定形のプラスチック製袋の上部開口を封止することは理論的にはともかく、実際に行うことはかなり難しい。そもそも自立できない不定形のプラスチック袋は、その上端を手などで吊り上げるように保持しなければ、廃油を注ぎ込むことができないし、仮にできたとしても、手を離したとたんに重みで廃油が横流れしてプラスチック製袋が自立できず廃油がこぼれ出す恐れがある。もし、こぼれれば周辺を汚してしまうし、それが180℃から十分に冷めていないなら、やけどの原因にもなりかねないという問題がある。
【0013】
特許文献2の場合はスパウトが段ボール箱に固定されているので内袋の自立は保てるが、折りたたまれていた状態の内袋の中に注ぎ込まれる廃油には、内袋を押し広げようとする力の反力と廃油の自重による力が合わさり押し出す方向の力として廃油に働く。このため、キャップにより封止される前の開口状態のスパウトから逆流した廃油がこぼれ出す恐れがあった。こぼれた廃油は周辺を汚してしまうこと、それは十分に冷めていないときに、やけどの原因となりかねないことは、特許文献1の場合と同じである。
【0014】
特許文献3の先行技術の場合は、前記二者の先行技術とは状況が異なり、コックが濾過器の外に設けられているため、その分だけ側方への最大突起量が大きくなるという問題点がある。廃油容器は床上に置かれることが多く、そこで突起量が大きいと大きい分だけ床上を無駄に占有してしまうし、歩行者が足を引っかけて火傷事故などの原因となりかねないという問題がある。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、上述した問題を解決することにあり、具体的には、ペール缶や専用車を使用しないで、周辺を汚したりせず安全に廃油を回収・運搬できる廃油回収方法、廃油回収袋、廃油注入具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を達成するため本願発明者は、次項以下に述べる方法を考え出した。実は本願発明者は廃油を扱うことを業とする者であり、廃油回収の実態を熟知している。その中で廃油回収のあるべき姿を長い間、追及してきた。本発明は、このような本件発明者の知見と問題意識から生み出されたものである。行を改めて解決手段を説明する。
【0017】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係る廃油回収容器(以下、適宜「請求項1の回収容器」という)は、食用油の廃油を一時貯留する廃油回収容器であって、制御用のコントロールパネルを有するフライヤーの油槽から内部に廃油を自重落下させるための上部開口を有する容器本体と、当該容器本体から廃油を抜き取るために当該コントロールパネルの正面と同方向に向く当該容器本体の正面から見て下に取り付けられた回収バルブと、を備え、当該回収バルブは、所定の廃油回収袋の注入口と当該回収バルブの出口側を水密結合する結合構造とを有している、ことを特徴とする。
【0018】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係る廃油回収容器(以下、適宜「請求項2の回収容器」という)は、請求項1の容器であって、前記注入口には、注入した廃油の逆流を解除可能に防止する逆止弁が設けられていることを特徴とする。
【0019】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3載の発明に係る廃油回収容器(以下、適宜「請求項3の回収容器」という)は、請求項2の回収容器であって、前記逆止弁は、前記注入口に対し着脱自在に構成されていることを特徴とする。
【0020】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係る廃油回収袋(以下、適宜「請求項4の回収容器」という)は、請求項2または3の回収容器であって、前記廃油回収袋は、使用前の食用油の運搬に使用した使用済み容器であることを特徴とする。
【0021】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5記載の発明に係る廃油回収容器(以下、適宜「請求項5の回収容器」という)は、請求項2ないし4いずれかの回収容器であって、前記注入口は、閉鎖キャップにより閉鎖可能に構成されていることを特徴とする。
【0022】
(請求項6記載の発明の特徴)
請求項6記載の発明に係る廃油回収容器(以下、適宜「請求項6の回収容器」という)は、請求項1ないし5いずれかの回収容器であって、前記回収バルブは、当該容器本体の内側に設けられた開閉機構と、当該開閉機構を当該容器本体の外側から操作可能な操作機構と、を有し、当該開閉機構は、当該操作機構の操作により閉鎖状態にあった当該開閉機構を可逆的もしくは不可逆的に開放して廃油抜き取りを可能とするように構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ペール缶や専用車を使用しないで、周辺を汚したりせず安全に廃油を回収・運搬できる廃油回収容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】一部を断面にしたフライヤーの側面図である。
【
図3】廃油回収容器に回収バルブを結合する様子を示す側面図である。
【
図5】バッグ・イン・ボックスのタイプの廃油回収袋の縦断面図である。
【
図7】
図6に示す廃油注入口の使用状態を示す側面図である。
【
図9】
図8に示す廃油注入具のA-A断面図である。
【
図13】
図10に示す廃油注入具を組み立てた状態を示す縦断面図である。
【
図14】
図13に示す廃油注入具の使用方法を示す縦断面図である。
【
図15】廃油注入具の第1変形例を示す正面図である。
【
図18】
図17に示す短尺筒体とトラップバーを左側から見た図である。
【
図19】
図17に示す廃油注入具を組み立てた状態の縦断面図である。
【
図20】廃油注入具の第2変形例を有する注入口の正面図である。
【
図21】
図20に示す廃油注入具を有する注入口の縦断面図である。
【
図23】
図20に示す廃油注入具の第2変形例を有する注入口の縦断面図である。
【
図24】第1変形例に係る廃油回収容器の縦断面図である。
【
図25】
図2に示す廃油回収容器のX1-X1縦断面図である。
【
図26】第2変形例に係る廃油回収容器の平面図である。
【
図27】
図26に示す廃油回収容器のX2-X2縦断面図である。
【
図28】
図26に示す廃油回収容器の回収バルブが(a)から(c)に向かって開放される様子を示す背面図である。
【
図29】第3変形例に係る廃油回収容器の平面図である。
【
図30】
図29に示す廃油回収容器のX3-X3断面図である。
【
図31】
図29に示す廃油回収容器のX4-X4断面図である。
【
図32】第4変形例に係る廃油回収容器の縦断面図である。
【
図34】特許文献1のプラスチック製の袋を示す斜視図である。
【
図35】特許文献2の配達兼回収ケースを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(フライヤーの概略構成)
図1および2に示すフライヤー1は、フライヤー本体3と、脚部5と、コントロールパネル7と、廃油回収容器31、とを有している。フライヤー本体3は、その内部に油Oiを貯めておく上部開口の油槽11を有する。油槽11の底部には廃油を自重で抜き取るための排流路13が設けられている。底部11bは、廃油の残りを少なくするために排流路13に向かって緩やかに傾斜するように形成されている。廃流路13には、流下する廃油を制御する排油バルブ15.が設けられている。油槽11の中にはヒーター17が設置され、ヒーター17はコントロールパネル7によって制御される。脚部5は、平面視矩形のフライヤー本体3の四隅それぞれに設けられた4本の細長い断面L字の棒材であり、フライヤー本体3を床F上に起立させている。これにより廃流路3の真下に廃油回収容器31を置く空間が形成される。
【0027】
(廃油回収容器の構成)
図1および2に示す廃油回収容器31は、上部開口の直方体形状を有する。合成樹脂製とすることもできるが、廃油Oiが190℃前後の場合があるので、強度と耐熱を考え金属製とし外面に耐熱塗料を塗ってある。廃油回収容器31には、バケツの取っ手のように揺動する取っ手33が設けられている。取っ手33は、起立したとき作業員がこれを持って廃油回収容器31全体を持ち上げるためのものである。廃油回収容器31の後面部31b(
図2参照)には、作業者が後面側を持ち上げて廃油回収容器31を前のめりに傾けるようにするためのL字の引手35が取り付けられている。廃油を注ぐときに使用する。また、前面部31aの下のほうに温度シール37が張り付けられている。廃油回収容器31に貯留された廃油Oiの温度を確認できるようにするためである。符号51は、正面から見た前面部31aの左下に取り付けられた回収バルブを指す。
【0028】
(廃油回収袋の構成)
説明の都合上
図3および4を参照しながら、廃油回収袋71を説明する。廃油回収袋71は、少なくとも180℃~190℃もしくはそれ以上の耐熱性を有することを妨げないが、本実施形態では少なくとも100℃前後に耐えられる耐熱性と、廃油運搬に使用できる耐油性をもった合成樹脂製の袋体であって、上記と同じもしくはそれ以上の耐油性・耐熱性をもった注入口73のみを通して内外が連通している。注入口73の外面には雄ネジ部75が形成してある。符号61は、雄ネジ部75とネジ結合して注入口73を取り外し可能に水密閉鎖するための螺合キャップを指す。廃油回収袋71は未使用のものでもよいが、未使用の食用油が入っていた食用油運搬袋を、食用油を抜いて空になったものを廃油回収袋として再使用することが環境を守るうえでたいへん好ましい。
【0029】
(回収バルブの構成)
図3(a)(b)を参照しながら、回収バルブ51の構成を説明する。回収バルブ51の取付手順の説明は次項の廃油回収方法の説明の中で行う。好ましい形態の回収バルブ51は、パイプ部52と、パイプ52の途中にあるバルブ部53と、パイプ部52の一端側52aの外面に形成された雄ネジ部55と、バルブ部53の他端側52b寄りにあるフランジ部56と、パイプ52の他端側52bの外面に形成された雄ネジ部(図示を省略)と、取付ナット58および雄ネジ部55とネジ結合しているジョイント57を備える。符号54は、回収バルブ51を開閉するためのレバーである。
【0030】
雄ネジ部55の外径とピッチは、廃油回収袋51の雄ネジ部75の外径とピッチに合わせて形成されているので、廃油回収袋71の雄ネジ部75と回収バルブ51の雄ネジ部55とは、
図3(a)の左向き矢印で示すように直線状に接触させ、ジョイント57を回して(
図3(a)の左方向へ)ネジ進行させることで水密結合できるように構成されている。廃油回収袋71を取り外すには、上記と逆方向に回してジョイント57をネジ進行させればよい。キャップ61を雄ネジ部75にしっかりとネジ結合させれば、廃油回収袋71は密閉される。
【0031】
(廃油回収方法)
図4を主とし併せて
図3を参照しながら、本実施形態の廃油回収方法について説明する。
図4では廃油回収容器31の取っ手31cは、図を単純化するために省略してある。
図4(1)は、既存の廃油回収容器31を示す。レストランやコンビニの店頭などにあるフライヤーで実際に使用されているものはもとより、未使用のものも対象となる。ここに
図4(2)に示すように、廃油回収容器31の前面部31aに向かって左下にドリルなどの工具を用いて廃油孔31hを貫通形成する(排油孔形成工程)。廃油孔31hの内径は、回収バルブ51の他端側52bがかろうじて通るがフランジ部57より小径の寸法にする。
【0032】
図4(3)に移り排油孔31hに回収バルブ51の他端側52bを差し込み、フランジ部77と取付ナット58により締め付けることで回収バルブ51を廃油回収容器31に取り付ける(バルブ取付工程)。このとき回収バルブ51が閉鎖状態になっていることを確認したら、フライヤー本体3の排油バルブ13を開放して自重落下してくる廃油を貯留する(
図4(3)、貯留工程)。
【0033】
次に、耐熱温度T℃(<190℃)でキャップ付き注入口73のついた廃油回収袋71を用意する(
図4(3)、袋用意工程)。その間に廃油回収容器31に貯留されている廃油を温度t℃(0<t<T)まで自然冷却もしくは強制冷却する(
図4(3)、冷却工程)。自然冷却は、たとえば、ある日の夜から翌朝までのように少なくとも5時間前後、放置することをいう。放熱促進のため、フライヤーが設置されている部屋の換気扇や冷房装置を使用することもよい。強制空冷とは、廃油回収容器31を外側から冷却水で冷却したり、廃油の中に冷却装置を差し入れたりして行う冷却のことをいう。これらの冷却は、廃油回収袋を用意する前、すなわち、廃油回収袋を用意してから行ってもよい。
【0034】
自然もしくは強制により十分に冷却できたら、廃油回収袋71の注入口73と当該回収バルブ51の出口側(一端側52a)を、ジョイント57を回すことで水密結合する(
図4(4)、結合工程)。結合が完了したら、レバー54を操作して回収バルブ51を開放して廃油回収容器31内の廃油Oiを自重落下により廃油回収袋71の中に注入する(
図4(5)、注入工程)。廃油注入前の廃油回収袋71は、通常は折りたたまれていたり、しぼんでいたりして中に空気がほとんど入っていない状態であることを確認するとよい。空気が入っていると、廃油注入により廃油回収袋71内に閉じ込められ、その反発力により廃油注入に支障が生じる可能性を減らすためである。したがって、廃油回収袋71の中に空気が入っているなら、これをできるだけ抜いておくことが好ましい。
【0035】
注入が終わったら、ジョイント57を戻して廃油回収袋71と回収バルブ51の出口側(一端側52a)との結合を解き、キャップ71を注入口73にネジ締めして密閉する(図(6)から(8)、密閉工程)。以上により、フライヤー1の油槽11から廃油回収容器31を介して廃油を回収する作業が終了する。たとえば、コンビニの店舗のフライヤーから廃油を回収する際に上記工程のうち、廃油孔形成工程とバルブ取付工程は1回で終わるが、貯留工程から密閉工程までを繰り返すことで継続的な廃油回収を行うことができる。なお、廃油回収容器71は、
図5に符号101で示すようなバッグ・イン・ボックスのタイプとすることもできる。
【0036】
(注入口の変形例)
図5に示す注入口121は、廃油回収袋71の内側に貼り付けられたベース部123と、ベース部123から廃油回収袋71の外側に突き出る中空パイプ122と、中空パイプ122の開放端にネジ固定されるキャップ124と、ベース部123に片持ち支持された逆止弁125とを備える。中空パイプ122内面の長さ方向全長にはネジ部(図示を省略)が形成されている。逆止弁125は、廃油回収袋71内に注入した廃油の逆流を解除可能に防止するもので、中空パイプ122の廃油回収袋71内の開口を閉鎖する弾性を持った合成樹脂製の片持ち舌片により構成されている。逆止弁(片持ち舌片、逆止構造)125は、廃油回収袋71の外から中空パイプ122の中空部に後述のようにして差し込まれた解除片(差し込み中空パイプ)127により押されて閉鎖解除、解除片127の抜き取りで弾性復帰して中空パイプ122の開口を閉鎖するように構成されている。
【0037】
図6(c)の符号131は、キャップを示す。図示を省略しているが差し込み中空パイプ127外面の長さ方向全長には、中空パイプ122内面のネジ部とネジ結合可能なネジ部が形成されている。この両者のネジ結合により、中空パイプ122に対し解除片127が、
図6(b)の双方向矢印で示すように出没自在となる。
図6(b)および(c)に示すように、逆止弁125の機能が解除されるまで解除片127を回して突出させ、注入後に回し戻せば逆止弁125の弾性により逆止機能が復帰する。
【0038】
すなわち、注入した廃油の逆流が防止される。この状態で
図6(c)に示すように解除片127の開放端が中空パイプ122より突き出すので、これにキャップ131をネジ固定すれば、廃油回収容器71の密閉が完了する。こうすれば、ペール缶を使用する必要がなくなるし、一端注入した廃油が逆戻りして容器の外にこぼれることがほとんどなくなるので、廃油の取り扱いがきわめて簡単になって作業者の負担を大きく減らすことができる。
【0039】
図1および7に示す符号103は、未使用の食用油Onを運搬するための食用油運搬袋75の入ったバッグ・イン・ボックス(以下、「ボックス103」という)である。ボックス103には、
図6に示す注入口121が設けられている。注入口121が有する解除片127の出没作用により逆止弁(逆止構造)125の機能が解除され食用油Onを外部に注ぐことができる。その結果、食用油も空気も抜けて食用油運搬袋75が空になるので、これを廃油回収袋として流用することができる。これまで廃棄されていた食用油運搬袋75をそのまま廃油回収袋として流用できれば、環境保全に大きく貢献することは言うまでもなく、廃油の入ったボックス103を専用車ではなく汎用車で運搬することができるので食用油を運んできた運搬車両に廃油を積載して送り返せるようにもなる。廃油を運搬するための専用車を用意し、ペール缶などを使って廃油を注ぎ移す従来の廃油循環モデルを大きく改善することができる。
【0040】
(廃油注入具の概略構成)
図8ないし13を参照する。
図8に示す符号151は、廃油回収袋を示す。廃油回収袋151は、180℃~190℃程度の耐熱性と耐油性をもった樹脂製の袋である。廃油回収袋151には、注入口153が取り付けられていて、この注入口153のみを通して廃油回収袋151の中と外が繋がっている。注入口153は、廃油回収袋151に一端が固定された円筒状の注入口本体154と、注入口本体154の他端側外周面から突き出す雄ネジ部155と、を有している。廃油回収袋151は、廃油回収のために用意された新品の樹脂製袋であってもよいが、ここでは、中に入っていた新しい未使用食用油を抜き取った空の袋を流用している。このため、注入口153の雄ネジ部155には、
図8に2点鎖線で示す螺合キャップが螺合されていたが、これは取り外されている。
【0041】
(第1の廃油注入具の構成)
図8ないし13において、符号161は、廃油注入具を示す。廃油注入具161は、筒体163と、トラップ165と、キャップ167と、弁ボール169と、内筒171と、パッキン173と、から概ね構成されている。これらの部材それぞれは、合成樹脂製であるが、同じ合成樹脂製であっても種類を異ならせたり、一部または全部を金属製としたりすることも可能である。廃油注入具161は、いずれの材料により構成するにせよ、180~190℃の廃油に対して十分な耐熱性と耐油性を有するものである必要がある。
【0042】
(筒体の構成)
筒体161は、流路164を有する中空円筒形で、後述する逆止構造を内装するために十分な長さと、注入口153に外側から取り付けられる内径を有している。筒体161の一端側(注入口153に配される側)の内面には、注入口153の雄ネジ部155と螺合(ネジ結合)できる雌ネジ部163bが形成されている。雄ネジ部155に対する雌ネジ部163bは、廃油注入具161の固定構造となる。雌ネジ部163の螺合により、筒体161の流路164が注入口153と連通して廃油を通過させることができるようになる。なお、本明細書における雄ネジ部と雌ネジ部とは、両者混同を防ぐ目的で区別するためだけの名称であり、いずれも特定の形状を示すものではない。
【0043】
雌ネジ部163の、筒体161の他端側に並ぶ位置には、環状フランジ163cが形成されている。環状フランジ163cは、筒体161の内径より小さい内径を有するドーナツ状に形成されている。環状フランジ163cは、注入口153の雄ネジ部155の開放端との間にトラップ165を保持する保持手段である。
【0044】
筒体161の長さ方向中央から僅かに他端側よりの内面には雌ネジ部163bが、同じく他端側の外面には雄ネジ部163aがそれぞれ形成されている。雌ネジ部163bは後述する内筒171の雄ネジ部171aと螺合するように構成されている。雄ネジ部163aは、後述するキャップ167の雌ネジ部167aと螺合するように構成されている。
【0045】
(トラップの構成)
図11に示すように、トラップ165は、前述したとおり全体として合成樹脂製であって、ドーナツ状の外枠165aと、外枠165aに4個それぞれの開放端が支持されたクロスバー165bとにより構成され、この結果、外枠165aとクロスバー165bとの間に扇型の通過孔165hが4個形成される。通過孔165hは廃油を通過させるための孔で、クロスバー165bは後述する弁ボール169の通過を阻止するためのバーである。
【0046】
外枠165aは柔軟な合成ゴム製であって、水密を保持するパッキンとして機能するようにクロスバー165bより肉厚に構成されている。クロスバー165bは、弁ボール169から受ける圧力を支えるだけの硬さの合成樹脂で作られている。トラップ165は、廃油通過を許し弁ボール169の通過を阻止する機能を有するのであれば上記構造に限定されず、たとえばクロスバーの代わりにメッシュ構造を用いるなどの変形が可能である。
【0047】
(内筒の構成)
図10および13に示すように、内筒171の外径は、筒体161の内径より僅かに小径に形成され、筒体161の雌ネジ部163bと螺合する雄ネジ部171aが、一端側(注入口153に近い側)の外周に形成されている。この螺合は、弁ボール169により、
図11に示すように内筒171が筒体161の中にネジ固定された状態で収納される。内筒171の一端側には、ゴム製でドーナツ状のパッキン171bが接直剤などにより固定されている。パッキン171bの孔171hの孔径は内筒171の孔径とほぼ同じで、弁ボール169の外径より僅かに小径に形成されている。
【0048】
弁ボール169の外径がパッキン171bの孔171hの孔径より僅かに大きいことにより、
図12の2点鎖線で示す弁ボール169が孔171hを水密閉鎖して廃油の逆流を阻止する機能を有する。
図12に実線で示す弁ボール169は、トラップ165に阻止され、それ以上、注入口153方向(
図12に左方向)に移動できない。つまり、弁ボール169は、トラップ165とパッキン171bとの間の流路164内でのみ移動可能となる。弁ボール169は合成樹脂製の球体で中空に形成されているが、無垢であってもよい。廃油に浮かぶ大きさである。
【0049】
図10、12および13に基づきパッキン173について説明する。パッキン173は、合成樹脂製であって、つば部173aとキャップ部173bからなる帽子型に形成されている。キャップ部173bは、内筒171の中空部に入り、つば部173aは内筒171の端面に密着し、キャップ167の締め付けにより水密が確保されるようになっている。
【0050】
(廃油注入具の組立方法)
図8~13に基づき、廃油注入具161の組立方法を説明する。注入口153の雄ネジ部155を上に向け、その上にトラップ165を載せてから雄ネジ部155と筒体161の雌ネジ部163bを螺合させる。最後まで螺合すると、トラップ165の外枠165aが雄ネジ部11の開放端と環状フランジ163cに挟まれ、これによって外枠165aがつぶれてパッキン機能が発揮され、これによって両者間が水密閉鎖されて注入口153と筒体161の流路164が繋がる。
【0051】
次に、弁ボール169を筒体161の開放端から中に入れ、その後に内筒171を筒体161の中に入れ、さらにパッキン173を差し入れて雄ネジ部171aと雌ネジ部163aを螺合させる。内筒171の注入口153側には、予めパッキン171bを接着剤などにより固定しておく。これにて弁ボール169はトラップ165とパッキン171bとの間で自由移動できる状態になる(
図13)。
【0052】
(廃油注入具の使用方法)
図14を参照しながら、廃油注入具161の使用方法について説明する。この使用方法及び効果は、後述する変形例についても適用される。上記手順で組み立て、注入口153に固定した廃油注入具161は、これを起立させて廃油の注入を行う。廃油注入前の弁ボール169はトラップ165の上に載った状態にある。ここで内筒171の開口から流路164内に注入した廃油は、実線矢印で示すように降下し、その一部は弁ボール169の表面に伝わって降下する。降下した廃油はトラップ165の通過孔165hを通過し注入口153を介して廃油回収袋151内に流れ込む。
【0053】
注入量が通過量を超えて流路164内に廃油が溜まったときは、廃油から受ける浮力により2点鎖線で示すように弁ボールが上昇し、パッキン171bの孔171hを閉鎖する。これによって、廃油の逆流、逆流に伴う廃油注入具161の外への廃油漏れを防止する。廃油の逆流は、廃油回収袋151内にある廃油が外圧などにより押し返され、孔171hを介して流路164に戻ることによっても生じる。廃油の注入を終えたら、2点鎖線で示すキャップ167を螺合して全作業を終了する。注入口153は廃油注入具161によって閉鎖されているから、注入された廃油が運搬・保管中に漏れ出すことはない。
【0054】
(廃油注入具の第1変形例の構成)
図15ないし19を参照して、廃油注入具191について説明するが、これと対応する廃油回収袋180を先に説明する。
図15に示す廃油回収袋180は、もともとは食用油運搬用袋であったが、これを廃油回収用に流用するものである。注入口181は、注入口本体183と、段部18aを介して注入口本体183より小径の雄ネジ部185から構成され、流路186を有している(
図17)。段部184aは、注入口本体183と雄ネジ部185をつなぐフランジ部184の一部である。雄ネジ部185は、パッキン186(
図15)と螺合キャップ187により水密閉鎖されていた。本実施形態では、上記図示を省略したパッキンと、2点鎖線で示すキャップ187を取り外し、このうちキャップ187を後述するように再利用する(
図17の一番右に実線で示す)。
【0055】
廃油注入具191は、全体として合成樹脂製であって、短尺筒体193と、トラップ195と、弁ボール197と、パッキン199と、パッキン押え201と、から構成されている。廃油注入具191は、後述するようにパッキン203とキャップ187により注入口181内に水密封印されるようになっている。パッキン203は、合成樹脂製であって、つば部203aとキャップ部203bからなる帽子型に形成されている。キャップ187は、上述のように注入口181の雄ネジ部185に螺合されていたものの再利用である。なお、パッキン203は、
図12に示すパッキン173と同じ構造である。
【0056】
(短尺筒体の構成)
図17ないし19に示すように、短尺筒体193は、内部に流路194を有する円筒形の部材であり、その外径は雄ネジ部185の中空部に人の手で圧入可能な外径に形成されている。短尺筒体193は、注入口185に圧入して保持するのに十分で、かつ後述するトラップバー195と、弁ボール197と、パッキン199とパッキンと、パッキン押え201を流路194内に収納したうえで逆止機能を発揮できる必要最小限の長さに構成されている。
【0057】
短尺筒体193の注入口181側には、端面側を開口し中に向かって長さ方向に延びる4本のスリット193sが形成されている。これらスリット193sは短尺筒体193の円周方向に所定間隔を空けて配され、これにより、2個の可動片193aと、2個の固定片193bが円周方向に互い違いに配置される。可動片193aは固定片195bより小さく、外力を受けて弾性変形できる形状に形成されている。可動片193aの外周には、最大突出量が雄ネジ部185の中空部外径より大きな突起193cが形成されている。つまり、それぞれの突起193cは、雄ネジ部185への圧入時に邪魔になる一方、圧入後は
図21に示す段部184aと当接する位置に設けられている。突起193cの邪魔を排して圧入を可能にするのは、それぞれの可動片193aの弾性力である。それぞれの固定片195bは突起を有しないので弾性力を必ずしも必要としない。固定片195bの開放端面には、後述する固定溝が2個ずつ形成されている。
【0058】
つまり、短尺筒体193を雄ネジ部185に圧入する際に、雄ネジ部185に接触した突起193cを介して短尺筒体193から外力を受け、これによって可動片193aが弾性変形して両者は中心に向かって押し込まれる。これにより短尺筒体193をさらに雄ネジ部185の中に押し入れることができる。突起193cが段部184aを通過すると外力がなくなって可動片193aが弾性復帰する。弾性復帰により段部184aは、
図20に示す位置に落ち着き段部184aに引っ掛かって、短尺筒体193を抜け止めする。
【0059】
流路186を囲む雄ネジ部185の内面と、短尺筒体193の外周面の間の摩擦構造と、段部184aに対する突起193aが、本実施形態の固定構造を形成する。図示は省略するが、たとえば、両者間にネジ構造を設け、これを固定構造としてもよい。短尺筒体193を構成する合成樹脂の膨張係数を注入口181のそれより大きくしておけば、高温の廃油通過により短尺筒体193を膨張させ、注入口181とお間の摩擦を大きく、すなわち、圧入時に緩く廃油注入時に抜けづらくなるように固くなるように摩擦調整することができる。
【0060】
(トラップバーの構成)
図18に示すようにトラップバー195は、たとえばピアノ線のような細い金属棒(合成樹脂棒や廃油通過可能なメッシュ構造なども使用可)2本から構成されている。それぞれのトラップバー195は、クロスさせその両端を固定片193bの固定溝195dに差し入れ、必要に応じて接着剤を塗布することで短尺筒体193に固定できるようになっている。トラップバー195は、流路194内の廃油通過を許しながら弁ボール197の移動を阻止する機能を有している。トラップバー195の固定先を固定溝195d経由の固定片193bとしたのは、トラップバー195が撓まない部材により構成されている、換言すると、固定片193bにも突起(図示を省略)を設け可動片193aのように弾性変形させるように構成するとその変形に追随できないからである。トラップバー195を、弾性変形可能な、もしくは可撓性のある素材(たとえば、釣糸のような樹脂糸)で構成すれば、固定片193bに突起(図示を省略)を設けるとともに弾性を持たせてもよい。
【0061】
(廃油注入具の組立)
図17~20に基づき、廃油注入具191の組立方法を説明する。
図18に示すように2本あるトラップバー195のそれぞれを、短尺筒体193の固定溝193dに固定する。トラップバー195が一端側に固定された短尺筒体193の他端側には、パッキン押え201を接着剤などを用いて固定する。その固定前にトラップ195に近い側のパッキン押え201に、パッキン199を接着剤などの固定手段を用いて固定しておく。弁ボール197は、トラップバー195とパッキン199の間の流路194内に自由に移動できるように封入しておく。以上が、雄ネジ部185に圧入されるときの廃油注入具191の構成である。
【0062】
こうして組み立てた廃油注入具191を、雄ネジ部185に人の手で圧入する。突起195aが雄ネジ部185の段部184aに引っ掛かって抜け止めされたところで廃油注入具191の圧入を完了する。圧入後に、パッキン押え201の中空部にパッキン203のキャップ部203bを入れ同じくつば部203aをパッキン押え203の端面に密着し、キャップ167の締め付けにより水密が確保されるようになっている。廃油注入具191の使用方法と、廃油を注入するときの弁ボールを中心とする逆止作用とは、
図14に示すそれらと同じである。すなわち、廃油の逆流、逆流に伴う廃油注入具191の外への廃油漏れを防止する。注入された廃油が運搬・保管中に漏れ出すことはない。
【0063】
(廃油注入具の第2変形例の構成)
図21ないし23を参照して、廃油注入具211の第2変形例について説明する。廃油注入具211は、廃油回収袋213に水密固定された注入口215の内部に配されており、注入口と一体型と呼んでもよい(
図21)。廃油回収袋213は、廃油回収用の新品の合成樹脂製の袋であることを妨げないが、もともとは食用油運搬用袋であった袋を使用後に流用して廃油回収用としてもよい。注入口215は、注入口本体217と、注入口本体217から突き出す雄ネジ部219とから概略構成されている。
【0064】
注入口本体217と雄ネジ部219との間にはトラップ221が設けられている。トラップ221は、
図11に示すトラップ165と類似する構造を有し(
図22)、廃油の通過は許すが弁ボール223の通過を妨げるようになっている(
図22)。
【0065】
雄ネジ部219内の流路220に入れられた弁ボール223は、先のトラップ221とOリング状のパッキン225により移動が制限される。パッキン225の内径は弁ボール223の外径より僅かに小径に構成され、パッキン225がパッキン225に密着することで廃油の逆流が防止される。パッキン225は、ドーナツ状のパッキン押え227によって、雄ネジ部219内に保持される。パッキン押え227は外周に雄ネジ部227aを有する。雄ネジ部227は、短尺筒体219の流路220を囲む内面に形成された雌ネジ部219bと螺合し、これによって、パッキン押え227が雄ネジ部219内に固定される。
【0066】
パッキン押え227の中空部は、パッキン229によって水密閉鎖され、パッキン229はキャップにより閉鎖される。キャップ231の内面には雌ネジ部231aが形成されていて、雄ネジ部外周の雄ネジ219aと螺合可能に構成されている。
【0067】
第2変形例に係る廃油を注入するときの弁ボールを中心とする逆止作用は、
図14に示すそれらと同じである。すなわち、廃油の逆流、逆流に伴う廃油注入具211の外への廃油漏れを防止する。注入された廃油が運搬・保管中に漏れ出すことはない。
【0068】
(廃油回収容器の第1変形例)
図24および25の符号301は、廃油回収容器を示す。廃油回収容器301が、先に説明した廃油回収容器30と異なる点は、廃油回収容器301の廃油回収バルブ30の開閉部が容器本体31の外部にあるのに対し、廃油回収容器301の開閉機構304は容器本体302の内部にある点である。開閉機構304を容器本体302の内部に配したことにより、その分、容器本体302に対する回収バルブ303の側方突出を少なくすることできる。そして、少なくした分、床に置かれた容器本体302の回収バルブ303が通行人の妨げとなる可能性が低くなる。以下、回収バルブ303を中心に説明する。
【0069】
回収バルブ303は、容器本体302を貫通して内外を連通させる貫通パイプ部303aと、貫通パイプ部303の中空部である断面円形の流路303bを容器本体302の内部で開閉する開閉機構304とから概略構成されている。開閉機構304は、リング部304aと閉鎖板305とを有している。リング部304aは、貫通パイプ部303aと流路303bを共有する部位である。閉鎖板305は、リング部304aに対し容器本体302の奥側から(
図24の左側から右側に向かって)取り外し可能にはめ込まれる流路303bを閉鎖可能な所定形状、たとえば円形の閉鎖板305を有する部材である。閉鎖板305と対向する側のリング部304aには、周方向等間隔に複数(本変形例では2個)の嵌合孔304bが厚み方向(
図24の左右方向)に所定の深さに掘り込み形成されている。一方、リング部304aと対向する側の閉鎖板305のには、嵌合孔304bそれぞれと対応して挿入して回転させることで嵌合する嵌合突起305aがそれぞれ突出形成されている。
【0070】
嵌合突起305aは、図では隠れて見えないが略L字状に形成されている。他方、嵌合孔304bは、その縦断面の形状が嵌合突起305aに類似する略L字状に形成され、これによって嵌合突起305aを差し込んだ後に所定方向(
図25で半時計方向とする)に所定角度(たとえば、45度)回転させるとL字状の形態同士が嵌合することで抜け止めされる。この嵌合により閉鎖板305がリング部304aと密着して流路303bを水密閉鎖するように構成されている。この水密閉鎖をより確実にする必要があるなら、たとえばゴム製のパッキン(たとえば、O(オー)リング、図示を省略)を閉鎖板305とリング部304aとの間に設けるとよい。この閉鎖により、容器本体302内に入れた廃油Woが、そのままの状態で外部に漏れることはない。
【0071】
符号306は、開閉機構304を容器本体302の外側から操作するための操作機構であって、その下端が閉鎖板305に固定され上端側(たとえば、上端を含む全長の3分の1程度の長さの部分)が容器本体302の上端から上方に突き出した操作アーム306により構成されている。操作アーム306は使用者がその上端をつかみ、リング部304aに嵌合された閉鎖板305を解除方向(
図25の時計方向)に45度回転させた後、リング部304aから離れる方向に移動して両嵌合孔304bから両嵌合突起305aを離脱させることで、嵌合解除することができるようになっている。嵌合解除により、閉鎖状態にあった流路303bが開放され廃油Woの抜き取りが可能になる。抜き取りは廃油Woの自重による場合もあるが、補助するために貫通パイプ部303aが下になるように容器本体302を傾けてもよい。
【0072】
この時点では不可逆的な解除であるが、上記とは逆に、操作アーム306と、必要に応じて閉鎖板305とを操作することで開閉機構を再び嵌合させて流路303bを再閉鎖できることはいうまでもない。好ましくは操作アーム306が倒れて廃油Wo中に沈まないようにチェーン(保持部材)307などによって容器本体302に保持できるようにしておくよい。なお、符号309は、延長パイプを示す。延長パイプ309は、貫通パイプ部303aから出た廃油Woを所定方向(たとえば、下向き)に誘導したり、先に説明した廃油回収袋151と水密連結可能なネジ山のついた継手としたりするためのものである。延長パイプ317の分だけ容器本体302からの突出寸法が大きくなるが、開閉機構を容器本体302の外部に設けた場合に比べれば問題にならない。
【0073】
(廃油回収容器の第2変形例)
廃油回収容器311の基本構造は、回収バルブを除き廃油回収容器301のそれと大きく異ならない(次に述べる変形例でも同じ)。そこで、回収バルブの構造を中心に説明を行う。参照する図面は、
図26ないし28である。
【0074】
廃油回収容器311の回収バルブ313は、流路313bを備える貫通パイプ部313aと、容器本体312内に設けられた後述の開閉機構314と、同じく後述の操作機構315と、を備える。開閉機構314は、貫通パイプ部313aと流路313bを共有する円筒状の内筒314aと、内筒314aより僅かに大径で円筒状の外筒314dとを主要部品とする。内筒314aは、所定長さを有し貫通パイプ313aから遠い側の端部が円形の閉鎖壁314bによって閉鎖されている。閉鎖壁314bの周縁近くには所定形状(ここでは長円形)の廃油Woを通過させるための通過孔314cが周方向等間隔に複数(ここでは4個)貫通形成されている。また、外筒314dは、内筒314aに対応する所定長さを有し、貫通パイプ313aから遠い側の端部に円形の閉鎖壁314eによって閉鎖されている。閉鎖壁314eの周縁近くの通過孔314cそれぞれと同じ形状の廃油Woを通過させるための通過孔134fが周方向等間隔に通過孔314cと同数(すなわち4個)貫通形成されている。
【0075】
内筒314aの内径と通過孔314cの大きさは廃油Woを抜き取るために十分な大きさに構成され、外筒314dの内径は内筒314aの外径よりごくわずかに大径に構成されている。内筒314aが外筒314dの中空部にすっぽり入る大きさである。さらに、通過孔314cと314fが周方向互い違いに配されたとき両者間の水密が保たれ、その状態を保ちながら内筒314aに対し外筒314dが周方向に摺動可能に構成されている。
【0076】
操作機構315は、操作アーム316と支持板317を主要部材として構成されている。操作アーム316は、その下端が内筒314aに固定され上端側(たとえば、上端を含む全長の3分の1程度の長さの部分)が容器本体312の上端から上方に突き出すように構成されている。支持板317は、開閉機構314の上部に当たる容器本体312の上端には、容器本体312の幅方向(
図27の紙面垂直方向)にかけ渡され、その幅方向中央に長さ方向(
図27の紙面垂直方向)に細長い支持孔317aを有している。支持孔317aは、上端側を貫通させることで操作アーム316を長さ方向に揺動支持するための孔である。操作アーム316の揺動は、外筒314dに対し内筒314aを周方向(
図28の時計方向)に摺動させ、これによって、それまで不一致により閉鎖されていた外筒314dの通過孔314fと内筒314aの通過孔314cとが、食卓で使用する七味唐辛子の容器本体の孔と蓋体の孔が蓋体回転により一致することと同じ理屈で一致する。一致により通過孔314cと通過孔314fとが貫通して廃油の通過が可能となる。
【0077】
上記した場合は外筒314dが固定で、これに対し内筒314aが摺動するように構成されているが、これとは逆に、内筒314aが固定で外筒314dが摺動するように構成してもよい。後者の場合は、操作アーム316の下端は、外筒314dに固定されることになる。
【0078】
(廃油回収容器の第3変形例)
廃油回収容器321の基本構造は、回収バルブを除き廃油回収容器301のそれと大きく異ならないことは先に述べたとおりである。そこで、回収バルブの構造を中心に説明を行う。参照する図面は、
図29ないし31である。
【0079】
廃油回収容器321の回収バルブ323は、流路323bを備える貫通パイプ部323aと、容器本体322内に設けられた後述の開閉機構324と、同じく後述の操作機構325と、を備える。開閉機構324は、容器本体322を貫通する貫通パイプ部323aと流路323bを共有する一体に設けられた円筒状の内筒324aと、内筒324aより僅かに大径で円筒状の外筒324dとを主要部品とする。内筒324aは、所定長さを有し貫通パイプ323aから遠い側の端部が円形の閉鎖壁324bによって閉鎖されている。内筒324aには所定形状(ここでは長円形)の廃油Woを通過させるための通過孔314cが周方向等間隔に複数(ここでは6個)貫通形成されている。また、外筒324dは、内筒324aに対応する所定長さを有し、貫通パイプ323aから遠い側の端部に円形の閉鎖壁324eによって閉鎖されている。外筒324dには、通過孔324cそれぞれと同じ形状の廃油Woを通過させるための通過孔324ffが周方向等間隔に通過孔314cと同数(すなわち6個)貫通形成されている。
【0080】
内筒324aの内径と通過孔324cの大きさは廃油Woを抜き取るために十分な大きさに構成され、外筒324dの内径は内筒324aの外径よりごくわずかに大径に構成されている。内筒324aが外筒324dの中空部にすっぽり入る大きさである。さらに、通過孔324cと324fが周方向互い違いに配されたとき両者間の水密が保たれ、その状態を保ちながら内筒324aに対し外筒324dが周方向に摺動可能に構成されている。
【0081】
操作機構325は、操作アーム326と支持板327を主要部材として構成されている。操作アーム326は、その下端が内筒324aに固定され上端側(たとえば、上端を含む全長の3分の1程度の長さの部分)が容器本体322の上端から上方に突き出すように構成されている。支持板327は、開閉機構324の上部に当たる容器本体322の上端には、容器本体322の幅方向(
図30の紙面垂直方向)にかけ渡され、その幅方向中央に長さ方向(
図30の紙面垂直方向)に細長い支持孔327aを有している。支持孔327aは、上端側を貫通させることで操作アーム326を長さ方向に揺動支持するための孔である。操作アーム326の揺動は、外筒324dに対し内筒324aを周方向(
図31の時計方向)に摺動させ、これによって、それまで不一致により閉鎖されていた外筒324dの通過孔324fと内筒324aの通過孔324cとが、食卓で使用する七味唐辛子の容器本体の孔と蓋体の孔が蓋体回転により一致することと同じ理屈で一致する。一致により通過孔324cと通過孔324fとが貫通して廃油の通過が可能となる。
【0082】
(廃油回収容器の第4変形例)
廃油回収容器331の基本構造は、回収バルブを除き廃油回収容器301のそれと大きく異ならないことは先に述べたとおりである。そこで、回収バルブの構造を中心に説明を行う。参照する図面は、
図32および33である。
【0083】
廃油回収容器331の回収バルブ333は、内部に流路333bを備え容器本体332を貫通する貫通パイプ部333aと、容器本体332内に設けられた後述の開閉機構334と、同じく後述の操作機構335と、を備える。開閉機構334は、貫通パイプ部333aに固定され開口部334bが開口された開口壁334aと、開口壁334aを囲む枠体334cと、枠体334cによって上下動可能に支持された可動閉鎖板334dと、を備えている。開口部334bは貫通パイプ333a内の流路333bと連通する。枠体334cに支持された可動閉鎖版334dは、操作機構335を操作する使用者によって上下動される。操作機構335は、可動閉鎖版334dに下端が固定された操作アーム336と、操作アーム336を上下動可能に支持する支持板337によって構成されている。
【0084】
支持板337には操作アーム336を上下動可能に支持する支持孔337aが貫通形成され、支持板337は容器本体332の上端の所定位置に掛けたされている。使用者はしじ板337から突き出した操作アーム336を操作することで可動閉鎖板334dを上下動することができる。下げられた可動閉鎖板334dは開口部334bを水密閉鎖して流路333bを容器本体332の内部を外部と遮断する。これと逆に可動閉鎖板334dを引き上げると、開口部334を開口させて廃油Woを抜き取ることができる。図示は省略したが、必要であれば、開口部334周縁と可動閉鎖板334dとの間に、上下動を邪魔しないことを条件にパッキンを設けることもできる。
【符号の説明】
【0085】
1 フライヤー
3 フライヤー本体
5 脚部
7 コントロールパネル
11 油槽
11b 底部
13 排流路
15 排油バルブ
17 ヒーター
30 廃油回収容器
31 容器本体
31a 前面部
31b 後面部
33 取っ手
35 引手
37 シール温度計
51 回収バルブ
52 パイプ部
52a 一端側
52b 他端側
53 バルブ部
54 レバー
55 雄ネジ部
56 フランジ部
57 ジョイント
58 取付ナット
61 螺合キャップ
71 廃油回収袋
73 注入口
75 食用油運搬袋(廃油回収袋)
101 排油回収用バッグ・イン・ボックス
103 未使用の食用油を運搬するためのバッグ・イン・ボックス
121 注入口
122 中空パイプ
123 ベース部
124 キャップ
125 片持ち舌片(逆止弁)
127 解除片(差し込み中空パイプ)
151 廃油回収袋
153 注入口
154 注入口本体
155 雄ネジ部
157 螺合キャップ
161 廃油注入具
163 筒体
163a 雄ネジ部
163b 雌ネジ部
163c 環状フランジ
164 流路
165 トラップ
165a 環状外枠
165b クロスバー
165h 通過孔
167 キャップ
169 弁ボール
171 内筒
171a 雄ネジ部
171b パッキン
171h 孔
173 パッキン
173a つば部
173b キャップ部
180 食用油運搬袋(廃油回収袋)
181 注入口
183 注入口本体
184 フランジ部
184a 段部
185 雄ネジ部
186 パッキン
187 キャップ
191 廃油注入具
193 短尺筒体
193a 可動片
193b 固定片
193c 突起
193d 固定溝
193s スリット
194 流路
195 トラップバー
197 弁ボール
199 パッキン(O(オー)リング)
201 パッキン押え
203 パッキン
211 廃油注入袋
213 袋本体
215 注入口
217 注入口本体
219 雄ネジ部
220 流路
221 トラップ
223 弁ボール
225 パッキン
227 パッキン押え
229 パッキン
231 キャップ
301 廃油回収容器
302 容器本体
303 回収バルブ
303a 貫通パイプ部
303b 流路
304 開閉機構
304a リング部
304b 嵌合孔
305a 嵌合突起
306 操作サーム(操作機構)
307 チェーン
309 延長パイプ
311 廃油回収容器
313 回収バルブ
313a 貫通パイプ部
313b 流路
314 開閉機構
314a 内筒
314b 閉鎖壁
314c 通過孔
314d 外筒
314e 閉鎖壁
314f 通過孔
315 操作機構
316 操作アーム
317 支持板
317a 支持孔
321 廃油回収容器
322 容器本体
323 回収バルブ
323a 貫通パイプ部
323b 流路
324 開閉機構
324a 内筒
324b 閉鎖壁
324c 通過孔
324d 外筒
324e 閉鎖壁
324f 通過孔
325 操作機構
326 操作アーム
327 支持板
327a 支持孔
331 廃油回収容器
333 回収バルブ
333a 貫通パイプ部
333b 流路
334 開閉機構
334a 開口壁
334b 開口部
334c 枠体
334d 可動閉鎖板
335 操作機構
336 操作アーム
337 支持板
337a 支持孔
F 床
Oi 食用油(廃油)