(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】マンホールカバー
(51)【国際特許分類】
E02D 29/14 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
E02D29/14 C
(21)【出願番号】P 2020097550
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】394015877
【氏名又は名称】福西鑄物株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】上田 幸嗣
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-013552(JP,U)
【文献】特開2004-011244(JP,A)
【文献】特開2000-045311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの開口の位置に合わせて埋設される受枠と、
前記受枠に重ねて配置される開閉蓋と、
前記開閉蓋を前記受枠に固定するための固定部材とを備え、
前記受枠は、
前記マンホールの前記開口内に配置される環状枠部であって、内周面に上方から下方に向かうにつれて内径が徐々に狭まる枠側傾斜面が含まれる環状枠部と、
該環状枠部の内周面から径方向内側に向かって延出する枠内延出部とを有し、
前記枠内延出部は、上下方向に貫通する貫通孔が形成された固定用延出部を有し、
前記開閉蓋は、
前記環状枠部に内嵌させる蓋本体部であって、外周側面に上方から下方に向かうにつれて外径が徐々に狭まる蓋側傾斜面が含まれる蓋本体部を有し、
前記蓋本体部には、前記蓋本体部の表面から裏面に貫通する段付き穴が形成された固定用挿通部が含まれ、
前記固定部材は、前記固定用挿通部の前記段付き穴内に配置される環状のシール部材であって、弾性変形部が少なくとも前記固定用挿通部に対向配置される下面に形成されているシール部材と、
前記シール部材に挿通された状態で、前記固定用挿通部の前記段付き穴と前記固定用延出部の前記貫通孔とにスライド可能な状態で挿通される軸部であって、外周面にねじ山が形成されている軸部を含むボルト部材と、
前記軸部を螺合させるねじ孔が形成され、且つ前記固定用延出部に対して下方側に離れた位置に配置される雌ねじ部材と、
前記固定用延出部と前記雌ねじ部材との間に配置された状態で、前記雌ねじ部材を前記固定用延出部から離れる方向に向けて前記シール部材の弾力よりも強い力で付勢する付勢部材とを有
し、
前記弾性変形部は、前記シール部材の前記下面と、前記ボルト部材の前記軸部の外周面を取り囲む内周面とに設けられ、
前記シール部材は、
弾性を有し且つ環状に形成されるシール本体部と、
剛性を有し且つ前記シール本体部の外周側面と上面とを覆う環状のカバー部とを有する、
マンホールカバー。
【請求項2】
マンホールの開口の位置に合わせて埋設される受枠と、
前記受枠に重ねて配置される開閉蓋と、
前記開閉蓋を前記受枠に固定するための固定部材とを備え、
前記受枠は、
前記マンホールの前記開口内に配置される環状枠部であって、内周面に上方から下方に向かうにつれて内径が徐々に狭まる枠側傾斜面が含まれる環状枠部と、
該環状枠部の内周面から径方向内側に向かって延出する枠内延出部とを有し、
前記枠内延出部は、上下方向に貫通する貫通孔が形成された固定用延出部を有し、
前記開閉蓋は、
前記環状枠部に内嵌させる蓋本体部であって、外周側面に上方から下方に向かうにつれて外径が徐々に狭まる蓋側傾斜面が含まれる蓋本体部を有し、
前記蓋本体部には、前記蓋本体部の表面から裏面に貫通する段付き穴が形成された固定用挿通部が含まれ、
前記固定部材は、前記固定用挿通部の前記段付き穴内に配置される環状のシール部材であって、弾性変形部が少なくとも前記固定用挿通部に対向配置される下面に形成されているシール部材と、
前記シール部材に挿通された状態で、前記固定用挿通部の前記段付き穴と前記固定用延出部の前記貫通孔とにスライド可能な状態で挿通される軸部であって、外周面にねじ山が形成されている軸部を含むボルト部材と、
前記軸部を螺合させるねじ孔が形成され、且つ前記固定用延出部に対して下方側に離れた位置に配置される雌ねじ部材と、
前記固定用延出部と前記雌ねじ部材との間に配置された状態で、前記雌ねじ部材を前記固定用延出部から離れる方向に向けて前記シール部材の弾力よりも強い力で付勢する付勢部材とを有し、
前記雌ねじ部材は、筒状であり且つ内周面に雌ねじが形成されるとともに、軸線方向における一端側の外径が前記固定用延出部の前記貫通孔の内径よりも大きくなり、軸線方向における他端側の外径が前記固定用延出部の前記貫通孔の内径よりも小さくなるように形成される、
マンホールカバー。
【請求項3】
前記受枠は、前記環状枠部の内周面から径方向内側に向かって延出し、且つ前記固定用延出部から下方側に離れた位置に形成される仮置台部であって、前記雌ねじ部材を仮置きするための仮置台部を有し、
前記開閉蓋が前記固定部材によって前記受枠に固定されている状態で、上下方向において前記仮置台部と前記固定部材の下端との間に形成される隙間が、上下方向において前記蓋本体部の下面と前記環状枠部との間に形成される隙間よりも大きくなるように構成される、
請求項1
又は請求項2に記載のマンホールカバー。
【請求項4】
マンホールの開口の位置に合わせて埋設される受枠と、
前記受枠に重ねて配置される開閉蓋と、
前記開閉蓋を前記受枠に固定するための固定部材とを備え、
前記受枠は、
前記マンホールの前記開口内に配置される環状枠部であって、内周面に上方から下方に向かうにつれて内径が徐々に狭まる枠側傾斜面が含まれる環状枠部と、
該環状枠部の内周面から径方向内側に向かって延出する枠内延出部とを有し、
前記枠内延出部は、上下方向に貫通する貫通孔が形成された固定用延出部を有し、
前記開閉蓋は、
前記環状枠部に内嵌させる蓋本体部であって、外周側面に上方から下方に向かうにつれて外径が徐々に狭まる蓋側傾斜面が含まれる蓋本体部を有し、
前記蓋本体部には、前記蓋本体部の表面から裏面に貫通する段付き穴が形成された固定用挿通部が含まれ、
前記固定部材は、前記固定用挿通部の前記段付き穴内に配置される環状のシール部材であって、弾性変形部が少なくとも前記固定用挿通部に対向配置される下面に形成されているシール部材と、
前記シール部材に挿通された状態で、前記固定用挿通部の前記段付き穴と前記固定用延出部の前記貫通孔とにスライド可能な状態で挿通される軸部であって、外周面にねじ山が形成されている軸部を含むボルト部材と、
前記軸部を螺合させるねじ孔が形成され、且つ前記固定用延出部に対して下方側に離れた位置に配置される雌ねじ部材と、
前記固定用延出部と前記雌ねじ部材との間に配置された状態で、前記雌ねじ部材を前記固定用延出部から離れる方向に向けて前記シール部材の弾力よりも強い力で付勢する付勢部材とを有し、
前記受枠は、前記環状枠部の内周面から径方向内側に向かって延出し、且つ前記固定用延出部から下方側に離れた位置に形成される仮置台部であって、前記雌ねじ部材を仮置きするための仮置台部を有し、
前記仮置台部は、前記固定用延出部の下面から下方に離れた位置において、前記固定用延出部の下面に対向するベース部を有し、
前記固定用延出部と前記ベース部の空間である収容室には、前記雌ねじ部材と前記付勢部材とを出入可能である、
マンホールカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールの開口を開閉するマンホールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
上記マンホールカバーは、マンホールの開口内周面に沿わせて配置される環状枠部を有する受枠と、環状枠部に対して上方から重ねて配置する開閉蓋とを備えており、例えば、特許文献1に開示されているような、受枠と開閉蓋(マンホール蓋)とのガタツキを防止できるように構成されたものも知られている。
【0003】
特許文献1に開示されているマンホールカバーでは、環状枠部の内周面が、上方側から下方側に向かうにつれて内径が徐々に狭まるように形成されており、開閉蓋の外周側面もまた、上方側から下方側に向かうにつれて外径が徐々に狭まるように形成されている。
【0004】
かかるマンホールカバーでは、環状枠部に開閉蓋を重ねると、開閉蓋の外周側面が環状枠部の内周面に内嵌する。そして、開閉蓋に対して下向きに荷重を加えると、開閉蓋が環状枠部に対して下方側に沈み、開閉蓋の外周側面と環状枠部の内周面とが全周に亘って強固に噛み合う。このように、上記のマンホールは、開閉蓋の外周側面と環状枠部の内周面とを全周に亘って噛み合わせることにより、環状枠部に対する開閉蓋のガタつきを防止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来のマンホールカバーでは、開閉蓋が受枠にボルトで締結されている。より具体的に説明すると、開閉蓋には、表面から裏面に亘って貫通する段付き穴が形成されており、受枠は、環状枠部の内周面から径方向内側に向かって延出し、且つ上下方向で貫通するねじ孔が形成された支持部を有している。
【0007】
そして、段付き穴に挿通したボルトを支持部のねじ孔に螺合させることにより、開閉蓋が受枠に固定される。
【0008】
しかし、上記従来のマンホールカバーでは、ボルトとねじ孔との間を通じてマンホールの外から内、又はマンホールの内から外へと液体(雨水やマンホール内を流れる水等)が流れることがあり、特に、開閉蓋が受枠に固定されている状態であっても、開閉蓋に大きな荷重が加わると、支持部に螺合させているボルトに対して開閉蓋が沈むため、ボルトの頭部とボルト挿通部(段部)との間に隙間が生じることにより、マンホールの内から外、又は外から内へと液体が流れてしまう問題がより顕著になる。
【0009】
従って、上記従来のマンホールカバーには、開閉蓋の止水性を向上させる余地がある。
【0010】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、開閉蓋の止水性が高いマンホールカバーの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のマンホールカバーは、
マンホールの開口の位置に合わせて埋設される受枠と、
前記受枠に重ねて配置される開閉蓋と、
前記開閉蓋を前記受枠に固定するための固定部材とを備え、
前記受枠は、
前記マンホールの前記開口内に配置される環状枠部であって、内周面に上方から下方に向かうにつれて内径が徐々に狭まる枠側傾斜面が含まれる環状枠部と、
該環状枠部の内周面から径方向内側に向かって延出する枠内延出部とを有し、
前記枠内延出部は、上下方向に貫通する貫通孔が形成された固定用延出部を有し、
前記開閉蓋は、
前記環状枠部に内嵌させる蓋本体部であって、外周側面に上方から下方に向かうにつれて外径が徐々に狭まる蓋側傾斜面が含まれる蓋本体部を有し、
前記蓋本体部には、前記蓋本体部の表面から裏面に貫通する段付き穴が形成された固定用挿通部が含まれ、
前記固定部材は、前記固定用挿通部の前記段付き穴内に配置される環状のシール部材であって、弾性変形部が少なくとも前記固定用挿通部に対向配置される下面に形成されているシール部材と、
前記シール部材に挿通された状態で、前記固定用挿通部の前記段付き穴と前記固定用延出部の前記貫通孔とにスライド可能な状態で挿通される軸部であって、外周面にねじ山が形成されている軸部を含むボルト部材と、
前記軸部を螺合させるねじ孔が形成され、且つ前記固定用延出部に対して下方側に離れた位置に配置される雌ねじ部材と、
前記固定用延出部と前記雌ねじ部材との間に配置された状態で、前記雌ねじ部材を前記固定用延出部から離れる方向に向けて前記シール部材の弾力よりも強い力で付勢する付勢部材とを有する。
【0012】
上記構成のマンホールカバーによれば、固定部材により開閉蓋が受枠に固定されている状態においては、ボルト部材が雌ねじ部材を介して付勢部材の付勢力を受けることによって下方側に付勢されているため、シール部材がボルト部材の頭部によって蓋本体部に押し付けられている状態、すなわち、段付き穴内に流れ込んだ液体をシール部材で遮ることができる状態になる。
【0013】
また、開閉蓋が外部から荷重を受けて環状枠部に対してさらに沈み込んだとしても、付勢部材の付勢力によりボルトが開閉蓋の動きに追従して下方に動くため、ボルト部材の頭部がシール部材を蓋本体部に押し付けている状態、すなわち、段付き穴内に流れ込んだ液体をシール部材で遮ることができる状態を維持することができる。
【0014】
このように、上記構成のマンホールカバーは、開閉蓋が環状枠部に対して沈み込んだ場合であってもシール部材が段付き穴内で液体の流れを遮ることができる状態が維持されるようにすることによって、高い止水性を発揮できるようになっている。
【0015】
本発明のマンホールカバーにおいて、
前記受枠は、前記環状枠部の内周面から径方向内側に向かって延出し、且つ前記固定用延出部から下方側に離れた位置に形成される仮置台部であって、前記雌ねじ部材を仮置きするための仮置台部を有し、
前記開閉蓋が前記固定部材によって前記受枠に固定されている状態で、上下方向において前記仮置台部と前記固定部材の下端との間に形成される隙間が、上下方向において前記蓋本体部の下面と前記環状枠部との間に形成される隙間よりも大きくなるように構成されていてもよい。
【0016】
上記構成のマンホールカバーでは、固定部材によって開閉蓋を受枠に固定する際、開閉蓋を受枠に重ねた状態でボルト部材をシール部材、固定用挿通部の段付き穴、枠内延出部の貫通孔に挿通し、さらに、ボルト部材を雌ねじ部材に螺合させる操作が必要となるが、開閉蓋を受枠に重ねる前の段階で仮置台部に雌ねじ部材を配置することができるため、雌ねじ部材を固定用延出部の下側に配置しておくことができ、これにより、開閉蓋を受枠に重ねた後にボルト部材を雌ねじ部材に螺合作業を簡単に行えるようになる。
【0017】
そのうえで、上記構成のマンホールカバーは、開閉蓋が固定部材によって受枠に固定されている状態においては、上下方向において固定部材の下端と仮置台部との間に形成される隙間が、上下方向において蓋本体部の下面と環状枠部との間に形成される隙間よりも大きくなるため、開閉蓋の下方側への動き代よりも、ボルトの下方側への動き代の方が大きくなっている。
【0018】
そのため、上記構成のマンホールカバーは、開閉蓋が下方側に動いた際(沈んだ際)にボルト部材の下端が仮置台部に干渉して下方側に動けなくなることが原因となり、シール部材が段付き穴内で液体の流れを遮れない状態に陥ってしまうことを防ぐことができる。
【0019】
本発明のマンホールカバーにおいて、
前記弾性変形部は、前記シール部材の前記下面と、前記ボルト部材の前記軸部の外周面を取り囲む内周面とに設けられる、ようにしてもよい。
【0020】
上記構成のマンホールカバーによれば、シール部材の下面側に加えて、シール部材の内側(径方向における内側)においても、液体の流通を阻止する効果が高まるため、止水性をより高めることができる。
【0021】
本発明のマンホールカバーは、
前記シール部材は、
弾性を有し且つ環状に形成されるシール本体部と、
剛性を有し且つ前記シール本体部の外周側面と上面とを覆う環状のカバー部とを有する、 ようにしてもよい。
【0022】
上記構成のマンホールカバーによれば、シール本体部の外周側面と上面とがカバー部に覆われるため、ボルト部材によって固定用挿通部に押し付けられた際、シール本体部の外側に広がろうとする弾性変形がカバー部によって抑えられる。これにより、シール本体部と固定用挿通部の段部との密着性、シール本体部とボルト部材の軸部との密着性が高まるため、シール部材が段付き穴内で液体の流れを遮る効果がより高まる。
【0023】
本発明のマンホールカバーにおいて、
前記雌ねじ部材は、筒状であり且つ内周面に雌ねじが形成されるとともに、軸線方向における一端側の外径が前記固定用延出部の前記貫通孔の内径よりも大きくなり、軸線方向における他端側の外径が前記固定用延出部の前記貫通孔の内径よりも小さくなるように形成される、ようにしてもよい。
【0024】
上記構成のマンホールカバーによれば、雌ねじ部材の前記他端側を固定用延出部の貫通孔内に挿入した状態で仮置台部に配置できるため、固定部材によって開閉蓋を枠体に固定する際に、雌ねじ部材をボルト部材の軸部を螺合させることができる場所に位置決めした状態で仮置台部に配置できるようになり、これにより、ボルト部材の軸部を雌ねじ部材に螺合させる作業を簡単に行えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明のマンホールカバーは、開閉蓋の止水性を高めることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るマンホールカバーの平面図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係るマンホールカバーの受枠の平面図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線における断面の拡大図である。
【
図4】
図4は、
図1のIV-IV線における断面の拡大図である。
【
図5】
図5は、同実施形態に係るマンホールカバーの説明図であって、受枠に固定されている開閉蓋が沈み込んだ状態の説明図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係るマンホールカバーの説明図であって、沈み込んだ開閉蓋に追従してボルト部材が動いた状態の説明図である。
【
図7】
図7は、同実施形態に係るマンホールカバーを設置した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態にかかるマンホールカバーについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0028】
マンホールカバーは、マンホールの開口を開閉するためのものである。本実施形態のマンホールカバー1は、
図1に示すように、マンホールHの開口O(
図7参照)の位置に合わせて埋設される受枠2と、前記受枠2に重ねて配置される開閉蓋3と、前記開閉蓋3を前記受枠2に固定するための固定部材4とを備えている。
【0029】
また、本実施形態のマンホールカバー1は、受枠2に対する開閉蓋3のガタツキを抑えるように構成された、いわゆる、急勾配受けタイプのマンホールカバー1である。
【0030】
受枠2は、
図2に示すように、マンホールの前記開口内に配置される環状枠部20と、該環状枠部20の内周面から径方向内側に向かって延出する枠内延出部21と、環状枠部20の外周面から径方向外方に向かって延出するように形成される外側固定部であって、マンホールの開口の周囲に固定される外側固定部22と、を有する。
【0031】
環状枠部20の内周面には、上端側に位置し、且つ上方から下方に向かうにつれて内径が徐々に狭まる枠側傾斜面200と、該枠側傾斜面200の下端に連続し且つ該枠側傾斜面200よりも径方向内側に張り出すように形成された張出面201とが含まれている。張出面201の内径は、枠側傾斜面200の下端の内径よりもさらに小さくなっているため、張出面201の上端と枠側傾斜面200の下端の間には、枠側傾斜面200の下端全周からから径方向内側に向かって延出する環状平面202が形成されている。
【0032】
このように、環状枠部20の内周面は、枠側傾斜面200と環状平面202と、張出面201とによって壇上に形成されている。
【0033】
また、
図3に示すように、環状平面202には、上方に向かって開口する凹状の溝が周方向全周に亘って環状に形成されている。この環状に形成されている溝には、環状の枠側シール部材Sが配置され、開閉蓋3を環状枠部20に内嵌した状態においては、該枠側シール部材Sが開閉蓋3の裏面と環状枠部20とに密接することによって開閉蓋3と環状枠部20の間で止水するようになっている。なお、開閉蓋3を環状枠部20に内嵌した状態において、開閉蓋3の裏面と環状枠部20の環状平面202との間には隙間が生じるようになっている。
【0034】
枠内延出部21は、環状枠部20の内周面から径方向内側に向かって延出し、且つ上下方向に貫通する貫通孔210aが形成された固定用延出部210と、環状枠部20の内周面から径方向内側に向かって延出し、且つ固定用延出部210から下方側に離れた位置に形成される仮置台部211と、環状枠部20の周方向における固定用延出部210と仮置台部211の両端同士に連続する一対の横壁部212と、を有する。
【0035】
固定用延出部210は、片状に形成されている。
【0036】
仮置台部211は、開閉蓋3を受枠2に固定する際に雌ねじ部材42を仮置きするための構成である。本実施形態の仮置台部211は、固定用延出部210の下面から下方に離れた位置において、固定用延出部210の下面に対向するベース部211aと、ベース部211a上に配置される嵩上部211bと、を有し、嵩上部211bがベース部211aに対して着脱可能に構成されている。
【0037】
上述のように、一対の横壁部212は、環状枠部20の周方向における固定用延出部210と仮置台部211の両端同士に連続しているため、枠内延出部21には、一対の横壁部212と固定用延出部210と仮置台部211とによって取り囲まれた空間である収容室213が形成されている(
図4参照)。
【0038】
開閉蓋3は、環状枠部20に内嵌させる蓋本体部30と、蓋本体部30の一部で構成される固定用挿通部であって、蓋本体部30の表面から裏面に貫通する段付き穴310が形成された固定用挿通部31とを有する。
【0039】
蓋本体部30の外周側面には、上方から下方に向かうにつれて外径が徐々に狭まる蓋側傾斜面300が含まれている。また、蓋本体部30の外周側面は、開閉蓋3の径方向において最も外側に位置する面となっており、開閉蓋3全体が環状枠部20に内嵌するように構成されている。そのため、開閉蓋3は、環状枠部20上端には重ならず、また、固定部材4の後述するシール部材40が枠側シール部材Sよりも径方向内側に配置される構造となっている。
【0040】
固定用挿通部31の段付き穴310は、蓋本体部30の表面で開口する上側凹部311と、上側凹部311の底面から蓋本体部30の裏面に亘って貫通し、且つ上側凹部311よりも内径が小さくなるように形成された連通孔312とで構成されている。そのため、固定用挿通部31の内部は段状に形成されており、上側凹部311の底面と、連通孔312の上方側の開口端との間には、環状の内平面313が形成されている。
【0041】
固定部材4は、
図4に示すように、固定用挿通部31の段付き穴310内に配置される環状のシール部材40と、シール部材40に挿通された状態で、固定用挿通部31の段付き穴310と固定用延出部210の貫通孔210aとにスライド可能な状態で挿通される軸部410であって、外周面にねじ山が形成されている軸部410を含むボルト部材41と、固定用延出部210から下方側に離れた位置で軸部410が螺合される雌ねじ部材42と、固定用延出部210と雌ねじ部材42との間に配置された状態で、雌ねじ部材42を固定用延出部210から離れる方向に向けてシール部材40の弾力よりも強い力で付勢する付勢部材43とを有する。
【0042】
シール部材40は、弾性を有し且つ環状に形成されるシール本体部400と、該シール本体部400に被せる環状のカバー部401とを有する。
【0043】
カバー部401の内周面には、シール本体部400の外周側面に当接する横側当接面401aと、シール本体部400の上面に当接する(重なる)上側当接面401bとが含まれている。
【0044】
そのため、シール部材40では、シール本体部400の下面と内周面とが露出した状態になっており、固定部材4によって開閉蓋3を受枠2に固定している状態においては、シール本体部400の下面が固定用挿通部31の内平面313に密接し、シール本体部400の内周面がボルト部材41の軸部410(後述する密接部)の外周面全周に亘って密接するようになっている。
【0045】
このようにして、本実施形態のシール部材40では、固定用挿通部31に対向配置される下面側と、ボルト部材41の軸部410を取り囲む内周面とに弾性変形部が形成されている。
【0046】
ボルト部材41は、連通孔312の内径よりも外径が大きくなるように形成されている頭部411を有しており、上述の軸部410は頭部411から延出している。なお、頭部411の外径は、上側凹部311の内径よりも小さくなっている。
【0047】
本実施形態の軸部410には、部分的にねじ山が形成されている。そのため、軸部410は、基端部が外周面にねじ山が形成されていない密接軸部410aとなっており、密接軸部410aよりも先端側の部分が雄ねじ部410bとなっている。
【0048】
雌ねじ部材42は、筒状であり内部がねじ孔420となっている。雌ねじ部材42の軸線方向における一端側421は、固定用延出部210の貫通孔210aの内径よりも外径が大きくなるように形成されており、雌ねじ部材42の軸線方向における他端側422は、固定用延出部210の貫通孔210aの内径よりも外径が小さくなるように形成されている。
【0049】
すなわち、雌ねじ部材42の前記一端側421は、固定用延出部210の下側に配置された状態で付勢部材43からの付勢力を受ける受部であり、雌ねじ部材42の前記一端側421は、固定用延出部210の貫通孔210a内に挿し込まれることで雌ねじ部材42を位置決めする位置決用挿通部である。
【0050】
また、本実施形態の雌ねじ部材42全体の高さ寸法は、載置台部(嵩上部211b)と固定用延出部210の下面との間の間隔よりも大きくなっているが、雌ねじ部材42のうちの前記一端側421(受部)の高さ寸法は、載置台部(嵩上部211b)と固定用延出部210の下面との間の間隔よりも小さくなっている。
【0051】
付勢部材43は、固定用延出部210の下面と受部の間に配置されている。本実施形態に係る付勢部材43は、皿バネで構成されており、位置決用挿通部に通された状態で、固定用延出部210の下面と受部の間に配置されている。
【0052】
本実施形態に係るマンホールカバー1の構成は、以上の通りである。続いて、マンホールカバー1の受枠2への開閉蓋3の固定方法と、開閉蓋3の止水性について説明を行う。
【0053】
受枠2に開閉蓋3を取り付ける際、位置決用挿通部に付勢部材43を通し、雌ねじ部材42を収容室213内に配置する。次に、位置決用挿通部を固定用延出部210の貫通孔210aに挿し込み、受部の下に嵩上部211bを配置する。そして、嵩上部211bをベース部211aに固定することにより、雌ねじ部材42が収容室213内で位置決めされる。
【0054】
続いて、蓋本体部30を環状枠部20に内嵌する。そして、上側凹部311にシール部材40を配置し、ボルト部材41をシール部材40、固定用挿通部31の段付き穴310、枠内延出部21の貫通孔210aに挿通し、さらに、ボルト部材41を雌ねじ部材42に螺合させる。これにより、ボルト部材41の頭部411と雌ねじ部材42とによって、開閉蓋3と受枠2とが締結される。すなわち、固定部材4により開閉蓋3が受枠2に固定される。
【0055】
開閉蓋3が受枠2に対して固定されている状態においては、蓋本体部30の蓋側傾斜面300と環状枠部20の枠側傾斜面200とが全周に亘って強固に噛み合っている。
【0056】
また、雌ねじ部材42はボルト部材41を雌ねじ部材42に締め込む操作に伴って上方に引き上げられるため、雌ねじ部材42と嵩上部211bとの間には隙間が形成されている。
【0057】
そして、シール部材40は、ボルト部材41の頭部411により内平面313に向けて押圧されるため、シール本体部400がカバー部401に対して内側に膨らむように弾性変形する。これにより、シール本体部400の下面が内平面313に密接し、シール本体部400の内周面が密接軸部410aの外周全周に密接することによって、シール部材40が段付き穴310内で液体の流れを遮ることができる状態になる。
【0058】
さらに、固定部材4により開閉蓋3が受枠2に固定された状態においては、枠側シール部材Sが蓋本体部30の下面によって圧縮され、蓋本体部30の下面と張出面201との間に隙間が形成されている。このとき、雌ねじ部材42と嵩上部211bとの間の隙間は、この蓋本体部30の下面と張出面201との間の隙間よりも大きくなっている。
【0059】
開閉蓋3が受枠2に固定された後において、開閉蓋3に大きな荷重がかかると、
図5に示すように、蓋本体部30が環状枠部20に対して沈み込むが、このとき、
図6に示すように、ボルト部材41が付勢部材43の付勢力によって蓋本体部30の動きに追従して下方側に動くため、シール部材40がボルト部材41の頭部411により内平面313に向けて押圧されている状態、すなわち、シール部材40が段付き穴310内で液体の流れを遮ることができる状態が維持される。なお、
図5では、説明のためにシール部材40と内平面313とを離れた状態で図示しているが、実際にはシール部材40と内平面313とは密接状態を維持しながら蓋本体部30とシール部材40、ボルト部材41が下側に動く。
【0060】
以上のように、本実施形態に係るマンホールカバー1によれば、固定部材4によって開閉蓋3を受枠2に固定した直後においては、付勢部材43の付勢力を受けているボルト部材41が頭部411によってシール部材40を蓋本体部30(より具体的には、固定用挿通部31の内平面313)に向けて押し付けることによって、シール部材40が固定用挿通部31の段付き穴310内において止水する(すなわち、液体の流通を阻止する)。
【0061】
そして、開閉蓋3が大きな荷重を受けて環状枠部20内にさらに沈み込んだとしても、付勢部材43の付勢力によりボルトが開閉蓋3に追従して下方に動くため、ボルト部材41の頭部411がシール部材40を内平面313に向けて押し付けられている状態、すなわち、段付き穴310内に流れ込んだ液体をシール部材40で遮ることができる状態を維持することができる。
【0062】
従って、本実施形態のマンホールカバー1は、開閉蓋3が環状枠部20に対して沈み込んだ場合であってもシール部材40と固定用挿通部31との密着状態を維持できるようにすることで、開閉蓋3の止水性、より具体的には、開閉蓋3を受枠に固定する構造の止水性が高まるようになっている。
【0063】
また、固定部材4によって開閉蓋3を受枠2に固定した状態においては、上下方向での仮置台部211(嵩上部211b)とボルト部材41の下端との間隔が、上下方向での環状枠部20の張出面201と蓋本体部30との間隔よりも大きく設定されるため、開閉蓋3の下方側への動き代よりも、ボルトの下方側への動き代の方が大きくなっており、開閉蓋3が下方側に動いた際(沈んだ際)にボルト部材41の下端が仮置台部211(嵩上部211b)に干渉して下方側に動けなくなることが原因となり、シール部材40が段付き穴310内で液体の流れを遮れない状態に陥ってしまうことを防ぐことができるようになっている。
【0064】
そして、本実施形態のシール部材40は、下面(固定用挿通部31の内平面313に重ねて配置される下面)と、内周面(ボルト部材41の軸部410(密接軸部410a)の外周面を取り囲む内周面)とに弾性変形部が設けられているため、シール部材40の下面側と、シール部材40の内側(径方向における内側)とにおいて液体の流通を阻止でき、これにより、止水性が高まるようになっている。
【0065】
さらに、シール部材40は、弾性を有するシール本体部400に剛性を有するカバー部401を被せることで構成されているため、シール本体部400の外周側面と上面とがカバー部401に覆われた状態になり、ボルト部材41によって固定用挿通部31の段部(内平面313)に押し付けられた際、シール本体部400の外側に広がろうとする弾性変形がカバー部401によって抑えられる。これにより、シール本体部400と固定用挿通部31の段部との密着性、シール本体部400とボルト部材41の軸部410との密着性を高めて止水性も高めるようになっている。
【0066】
なお、本実施形態のマンホールカバー1では、雌ねじ部材42の軸線方向における一端側421の外径が固定用延出部210の貫通孔210aの内径よりも大きくなり、軸線方向における他端側422の外径が固定用延出部210の貫通孔210aの内径よりも小さくなるように形成されているため、雌ねじ部材42の他端側422を固定用延出部210の貫通孔210a内に挿入した状態で仮置台部211に配置すれば、固定部材4によって開閉蓋3を枠体に固定する際に、雌ねじ部材42をボルト部材41の軸部410を螺合させることができる場所に位置決めした状態で仮置台部211に配置できるようになり、これにより、ボルト部材41の軸部410を雌ねじ部材42に螺合させる作業を簡単に行えるようにすることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、固定用延出部210の貫通孔210aに前記他端側422を挿通した雌ねじ部材42の下側に嵩上部211bを配置した後に、嵩上部211bをベース部211aに固定することで、雌ねじ部材42が固定用延出部210に対して抜け止めされるようになっている。
【0068】
なお、本発明に係るマンホールカバーは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0069】
上記実施形態において、開閉蓋3は、平面視において円形状となるように形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、開閉蓋3は、平面視において矩形状となるように形成されていてもよい。
【0070】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、固定用挿通部31の数は、2つ以上であればよい。また、固定用延出部210の数も、固定用挿通部31の数に合わせて2つ以上であればよい。
【0071】
上記実施形態において、シール部材40は、固定用挿通部31に対向配置される下面側と、ボルト部材41の軸部410を取り囲む内周面とに弾性変形部が形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、シール部材40は、固定用挿通部31の下面のみに弾性変形部が形成されるように構成されていてもよい。つまり、シール部材40は、少なくとも固定用挿通部31に対向配置される下面に弾性変形部を有するように構成されていればよい。
【0072】
上記実施形態において、シール部材40は、一つのシール本体部400で2つの弾性変形部を形成するように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、シール部材40は、2つの弾性変形部を別々のシール本体部400で形成するように構成されていてもよい。
【0073】
上記実施形態において、付勢部材43は、皿バネで構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、付勢部材43は、スプリングワッシャや、コイルバネ等で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…マンホールカバー、2…受枠、3…開閉蓋、4…固定部材、20…環状枠部、21…枠内延出部、22…外側固定部、30…蓋本体部、31…固定用挿通部、40…シール部材、41…ボルト部材、42…雌ねじ部材、43…付勢部材、200…枠側傾斜面、201…張出面、202…環状平面、210…固定用延出部、210a…貫通孔、211…仮置台部、211a…ベース部、211b…嵩上部、212…横壁部、213…収容室、300…蓋側傾斜面、310…段付き穴、311…上側凹部、312…連通孔、313…内平面、400…シール本体部、401…カバー部、401a…横側当接面、401b…上側当接面、410…軸部、410a…密接軸部、410b…雄ねじ部、411…頭部、420…孔、421…一端側、422…他端側、H…マンホール、O…開口、S…枠側シール部材