(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】グラウンド・ゴルフ用クラブ
(51)【国際特許分類】
A63B 53/02 20150101AFI20240621BHJP
A63B 59/60 20150101ALI20240621BHJP
A63B 53/10 20150101ALI20240621BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20240621BHJP
A63B 102/38 20150101ALN20240621BHJP
【FI】
A63B53/02
A63B59/60
A63B53/10 Z
A63B102:32
A63B102:38
(21)【出願番号】P 2020101411
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】523150059
【氏名又は名称】合同会社アスプライヤー
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】米村 安弘
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3150686(JP,U)
【文献】特開2007-190044(JP,A)
【文献】登録実用新案第3052104(JP,U)
【文献】特開2016-059542(JP,A)
【文献】特開2015-226581(JP,A)
【文献】特開2003-000776(JP,A)
【文献】実開昭60-138569(JP,U)
【文献】特開平11-047331(JP,A)
【文献】特開2006-150058(JP,A)
【文献】国際公開第94/002216(WO,A1)
【文献】米国特許第04136722(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B53/00-53/14
A63B49/00-51/16
A63B55/00-60/64
A63B67/00-67/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップ側の第1シャフト部と、
第1曲げ部を介して前記第1シャフト部へ繋がる第2シャフト部と、
第2曲げ部を介して前記第2シャフト部へ繋がる第3シャフト部と、
を備えた
一本のシャフトと、
ボールが当たるフェース面と、
前記第3シャフト部が挿入される
一個の接合穴と、
を備えたヘッドと、
からなり、
前記第1曲げ部と前記第2曲げ部とは、互いに逆方向に曲がっているグラウンド・ゴルフ用クラブにおいて、
前記第1シャフト部の中心軸が、前記接合穴の中心よりも前記ヘッドの前記フェース面側に寄っている、或いは前記ヘッドの前記フェース面の反対側に寄っていることを特徴とするグラウンド・ゴルフ用クラブ。
【請求項2】
前記第1シャフト部の中心軸は、前記接合穴の中心よりも前記ヘッドの前記フェース面側によっていることを特徴とする請求項1に記載のグラウンド・ゴルフ用クラブ。
【請求項3】
前記シャフトは、
無垢材で形成された無垢部と、
複数の薄板を積層した積層材で形成された積層部と、
からなり、
前記無垢部は、前記シャフトのグリップ側に用いられ、
前記積層部は、前記第1曲げ部と前記第2曲げ部を含む前記ヘッド側に用いられていることを特徴とする請求項1に記載のグラウンド・ゴルフ用クラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウンド・ゴルフで使用するグラウンド・ゴルフ用クラブに関し、より詳しくは、競技者にとって扱いやすいグラウンド・ゴルフ用クラブに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会が進んでいる中、高齢者の健康維持のために様々なスポーツが行われている。その中の1つにグラウンド・ゴルフがある。そして、グラウンド・ゴルフの用具については、公益社団法人日本グラウンド・ゴルフ協会の用具標準規則において、仕様が定められている。その中で、クラブはシャフト及びヘッドからなる滑らかな木製と決められている。
【0003】
このグラウンド・ゴルフ用のヘッドは、横幅140mm以上160mm以下、縦幅は最も広いところで70mm以上80mm以下、厚みは40mm以上45mm以下と打面の奥行巾が長く、大きくて重たい。また、シャフトは、その太さが30mm以下(通常は20mm~30mm程度)と太くて重たい。
【0004】
理想的なスイングとしては、ヘッドの重心にボールを当てることではあるが、上記のように重いグラウンド・ゴルフ用クラブを使って安定したスイングを行うことは、思った以上に難しい。競技歴の長い中級者や上級者であれば、このような重いクラブであっても、比較的使いこなすことはできるが、特に競技を始めたばかりの初心者や、力の弱い女性にとっては、グラウンド・ゴルフ用クラブで安定したスイングを行うことは難しい。
【0005】
そのような中で、競技の初心者や力の弱い女性であっても、扱いやすいグラウンド・ゴルフ用クラブとしては、ヘッドとシャフトの左右のバランスが均一なものである。具体的には、
図8に示すようなグラウンド・ゴルフ用クラブである。
【0006】
図8は、テーブルの上に置いた支持台Tの上にグラウンド・ゴルフ用クラブを載せた撮像である。このグラウンド・ゴルフ用クラブは、ヘッドとシャフトの左右のバランスが均一となっているため、打面となるフェース面が上を向いて安定している。
【0007】
このようなグラウンド・ゴルフ用クラブであれば、ヘッドとシャフトの左右のバランスが均一であるため、誰にでも安定したスイングを行いやすく、ヘッドの重心にボールを当てやすくなる。
【0008】
また、グラウンド・ゴルフ用クラブはシャフトが太いのでボールが見え難く、インパクト時にボールがヘッドの最適な打点(重心の位置)からずれ易い。
そこで、ヘッド近傍のシャフトに隠れて見え難いボールを見やすくする方法として、シャフトがストレートな形状となっている
図8のようなグラウンド・ゴルフ用クラブとは異なり、特許文献1にあるようなグラウンド・ゴルフ用クラブも知られている。
【0009】
この特許文献1のグラウンド・ゴルフ用クラブのシャフトは、第1シャフト部と、ヘッドの上面から突出した第2シャフト部と、ヘッドに埋設された第3シャフト部とが一体に形成され、第1及び第2シャフト部の間に第1曲げ部を有し、第3シャフト部の近傍に第1曲げ部とは逆方向の第2曲げ部を有している。
【0010】
そして、第1シャフト部と第3シャフト部は、概ね平行であり、第1シャフト部の軸の延長線上にヘッドの重心が位置している。このようなシャフトの形状により、ヘッド近傍のシャフトがヘッドのヒール側にずれるので、ボールが見えやすくなり、打ちやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、
図8のような、ヘッドとシャフトの左右のバランスが均一なグラウンド・ゴルフ用クラブを提供することは非常に難しい。この理由について説明する。
【0013】
グラウンド・ゴルフ用クラブは、クラブを構成しているヘッドとシャフトが別々に作られ、最終的にヘッドに掘り込まれた接合穴であるシャフト用の挿入部にシャフトを挿入し、接着剤で固定して一体化している。
【0014】
ヘッドの重心に対して、接合穴である丸穴を設け、シャフトを一体化させてバランスを取ることは設計図上では可能であるが、実際の製品制作においては、寸法誤差等が生じることからバランスを取ることは難しい。また、バランスを調整するために一度開けてしまった丸穴を僅かにずらして開け直すというようなことも製品上不可能である。また、バランスを調整するために、後でヘッドを削ることも製品上不可能である。
【0015】
従って、現実的には
図8のようにヘッドとシャフトの左右のバランスが均一なグラウンド・ゴルフ用クラブの提供は難しく、現状のグラウンド・ゴルフ用クラブは、設計上のヘッドの重心に対してシャフト用の接合穴を開け、わずかなズレが生じることで、打面となるフェース面が左右のどちらかに傾いている。
【0016】
このようにフェース面が傾いている現状のグラウンド・ゴルフ用クラブの撮像を
図9に示している。
図9は、現状のグラウンド・ゴルフ用クラブをテーブルの上において支持台Tの上に載せた撮像である。
図9Aは、斜め方向からみた撮像であり、
図9Bは底面(ソール)側から見た撮像である。
図9に示すように、このグラウンド・ゴルフ用クラブはフェース面が斜めに傾いている。つまり、支持台Tの支持面とフェース面が平行になっていない。このように、ヘッドとシャフトの左右のバランスが均一なグラウンド・ゴルフ用クラブの製造は難しく、実際には
図9のようにフェース面が傾いてしまう。
【0017】
また、ボールが見えやすく打ちやすい特許文献1のグラウンド・ゴルフ用クラブも同様であり、フェース面が傾いてしまう。
図10は、特許文献1の製品化されているクラブをテーブルの上の支持台Tに載せた撮像である。
図10Aは、斜め方向からみた撮像であり、
図10Bは底面(ソール)側から見た撮像である。この撮像からもわかる通り、ヘッドが回転しており、ヘッドのフェース面が大きく斜めに向いている。そして、このようなグラウンド・ゴルフ用クラブで実際に素振りを行ってみると、ヘッドが開く方向に回転しやすく、初心者になるほど当然ながらボールが曲がりやすく、扱い難い。
そこで本発明は、ヘッドとシャフトの左右のバランスが均一で、競技者の誰にも扱いやすいグラウンド・ゴルフ用クラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明の一つの態様に係るグラウンド・ゴルフ用クラブは、グリップ側の第1シャフト部と、第1曲げ部を介して前記第1シャフト部へ繋がる第2シャフト部と、第2曲げ部を介して前記第2シャフト部へ繋がる第3シャフト部と、を備えたシャフトと、ボールが当たるフェース面と、前記第3シャフト部が挿入される接合穴と、を備えたヘッドと、からなり、前記第1曲げ部と前記第2曲げ部とは、互いに逆方向に曲がっているグラウンド・ゴルフ用クラブにおいて、前記第1シャフト部の中心軸が、前記接合穴の中心よりも前記ヘッドの前記フェース面側に寄っている、或いは前記ヘッドの前記フェース面の反対側に寄っていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、第1シャフト部の中心軸がヘッドの接合穴の中心よりもフェース面側、或いはフェース面の反対側に寄る構成となっている。このため、第3シャフト部の中心軸を回転中心としてシャフトを回転させることができるので、ヘッドとシャフトの左右のバランスの均衡がとれるように調整することができる。従って、本発明によれば、ヘッドとシャフトの左右のバランスが均一で、競技者の誰にも扱いやすいグラウンド・ゴルフ用クラブを提供することができる。
【0020】
つまり、
図8、
図9、
図10のような従来のグラウンド・ゴルフ用クラブは、側面(ヘッドのヒール側或いはトゥ側)方向から観察した際に、シャフト部の中心軸と、接合穴の中心とが必ず一致していた。
【0021】
一方、本発明は、シャフトに第1曲げ部、第2曲げ部を設けた構成とし、更に側面方向からの観察において、第1シャフト部の中心軸がヘッドの接合穴の中心からずれた構成となっている。従って、製造工程において、第3シャフト部の中心軸を回転中心としてシャフトを回転させることができるので、ヘッドとシャフトの左右のバランスの均衡がとれるように調整することができる。
【0022】
従って、ヘッドとシャフトの左右のバランスが均一となったところで、接着剤で固定し一体化することで、ヘッドとシャフトの左右のバランスが均一なグラウンド・ゴルフ用クラブを提供することができる。なお、このような本発明の構成は、従来のグラウンド・ゴルフ用クラブのシャフトの構成において全くなかったものである。そして、このような構成により、どのような形状のヘッドであっても、グラウンド・ゴルフ用クラブにおけるバランスをとることができる。
【0023】
また、本発明のグラウンド・ゴルフ用クラブにおいては、前記第1シャフト部の中心軸は、前記接合穴の中心よりも前記ヘッドの前記フェース面側によっていることが好ましい。このような構成により、第1シャフト部の中心軸が接合穴の中心よりもヘッドのフェース面の反対側に寄っている構成のグラウンド・ゴルフ用クラブに比べて、扱いやすいグラウンド・ゴルフ用クラブとなる。
【0024】
また、本発明のグラウンド・ゴルフ用クラブにおいては、前記シャフトは、無垢材で形成された無垢部と、複数の薄板を積層した積層材で形成された積層部と、からなり、前記無垢部は、前記シャフトのグリップ側に用いられ、前記積層部は、前記第1曲げ部と前記第2曲げ部を含む前記ヘッド側に用いられていることを特徴とする。
このような構成により、本発明の効果を奏すると共にシャフトを安価にしたグラウンド・ゴルフ用クラブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】Aは第1実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブの正面側からみた図であり、BはAをヒール側の側面から見た図であり、CはBのIC~IC断面図である。
【
図2】Aは第1実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブをトゥ側の側面から見た曲げ寸法を示す図であり、Bは認定品基準の認定方法を示す概念図である。
【
図3】第1実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブの試作品の撮像であり、Aは正面側からの撮像であり、Bは斜め方向からの撮像である。
【
図4】第1実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブの試作品と市販品とを比較した撮像であり、Aは試作品の撮像であり、Bは市販品の撮像である。
【
図5】Aは第1実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブの試作品をテーブルの上の支持台に載せて斜め方向からみた撮像であり、Bは底面(ソール)側から見た撮像である。
【
図6】A~Dは第2~第5実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブをトゥ側の側面から見た図である。
【
図7】Aは第6実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブの接合前の正面側からみた図であり、BはAを接合した図である。
【
図8】従来のフェース面が傾いていないグラウンド・ゴルフ用クラブをテーブルの上の支持台に載せた撮像である。
【
図9】Aは、フェース面が傾いている従来のグラウンド・ゴルフ用クラブをテーブルの上の支持台に載せて斜め方向からみた撮像であり、Bは底面(ソール)側から見た撮像である。
【
図10】Aは、
図8、
図9とは異なる従来のグラウンド・ゴルフ用クラブをテーブルの上の支持台に載せて斜め方向からみた撮像であり、Bは底面(ソール)側から見た撮像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0027】
[第1実施形態]
図1、
図2を用いて、第1実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100の主要な構成を説明する。
図1Aは正面側からみた図であり、
図1Bはヒール側から見た側面の図であり、
図1Cは
図1BのIC~IC断面図である。
図2Aはトゥ側から見た側面の図であり、
図2Bは後述する認定品基準の認定方法を示す概念図である。
【0028】
図1Aに示すように、グラウンド・ゴルフ用クラブ100は、シャフト1と、ヘッド2からなる。シャフト1は、同じ角度(約10°)で互いに逆方向に曲がる第1曲げ部11と第2曲げ部12を備えており、グリップ131側の第1シャフト部13と、第1曲げ部11を介して第1シャフト部13へ繋がる第2シャフト部14と、第2曲げ部14を介して第2シャフト部14へ繋がる第3シャフト部15と、を備える。
【0029】
第1曲げ部11は、ヘッド2のヒール22側に曲がっており、第2曲げ部12は、ヘッド2のヒール22側から離れるように曲がっている。このように、第1曲げ部11と第2曲げ部12は、同じ角度で互いに逆方向に曲がっており、そして、第1シャフト部13の中心軸13Cと第3シャフト部15の中心軸15Cは、概ね平行となっている。
【0030】
また、シャフト1は、第1曲げ部11と第2曲げ部12のように曲げ部を有することから、曲げ加工に適した積層材で形成されている。積層材は、薄板を積層したものであり、
図2Cに示すように、本実施形態においては1.6mmの薄板を16枚積層した積層材からなっている。
【0031】
ヘッド2は、用具標準規則を満たすものであり、無垢材からなる木製である。また、本実施形態では、ボールが当たるヘッド2の表面となるフェース面21は、
図1に示すように金属以外の樹脂等で補強された構成となっている。なお、ヘッド2の裏面となるフェース面21の反対側の面は、平面となっているが、用具標準規則を満たす凹みが設けてあっても構わない。また、ヘッド2の底面が金属や樹脂で補強されていても構わない。
【0032】
また、ヘッド2の上面には、シャフト1の第3シャフト部15が挿入される接合穴23が形成されている。接合穴23は、
図1Aに示すようにヒール22寄りから斜めに掘り込まれて形成されている。第3シャフト部15の第3接合部151は、この接合穴23に挿入され、接着剤により固着されている。なお、ヘッド2のヒール22の反対側が所謂トゥ側となる。
【0033】
ヘッド2の接合穴23を介して固着されているシャフト1は、
図1Aにおいては、第1シャフト部13の中心軸13Cの延長線がヘッド2の重心Gを通るかのように固着されている。また、第3シャフト部15の中心軸15Cは、ヘッド2の接合穴23の中心と一致するとともに、
図1Bにおいては、中心軸15Cの延長線がヘッド2の重心Gを通るかのように固着されている。
【0034】
そして、
図1B、
図2Aに示すように、第1シャフト部13の中心軸13Cは、ヘッド2の接合穴23の中心Cよりもフェース面21側に寄った構成となっている。つまり、第1シャフト13の中心軸13Cが、ヘッド2の重心Gよりもフェース21側に寄っている。
【0035】
なお、このようにシャフト1とヘッド2が固着されたグラウンド・ゴルフ用クラブ100について、シャフト1とヘッド2の関係をわかりやすく示すため、試作品の撮像を
図3に示す。
図3Aは、試作品のヘッド2を中心に正面から撮影したものである。
図3Bは、試作品のヘッド2のトゥ側から斜め方向で撮影したものである。
また、グラウンド・ゴルフ用クラブ100と、特許文献1の製品化されたグラウンド・ゴルフ用クラブを比較した撮像を
図4に示す。
【0036】
このようにグラウンド・ゴルフ用クラブ100においては、第1シャフト部13の中心軸13Cが、ヘッド2の接合穴23の中心Cよりもフェース面21側に寄った構成となっている。グラウンド・ゴルフ用クラブ100をこのような構成とすることにより、
図8に示したような、ヘッド2とシャフト1の左右のバランスが均一なグラウンド・ゴルフ用クラブ100となる。
【0037】
この理由について説明する。発明が解決しようとする課題の欄でも説明したように、グラウンド・ゴルフ用クラブ100は、ヘッド2に掘り込まれた接合穴23にシャフト1を挿入し、接着剤で固定して一体化する。この接合穴23にシャフト1を挿入した際に、本実施形態では第1シャフト部13の中心軸13Cがヘッド2の接合穴23の中心Cよりもフェース面21側に寄った構成となっている。このような構成とするために、曲げ部を有するシャフト1を接合穴23に挿入した後、シャフト1は、第1シャフト部13の中心軸13Cがヘッド2の接合穴23の中心Cよりもフェース面21側に寄るように、第3シャフト部15の中心軸15Cを回転中心として、回転させる必要がある。
【0038】
このように、第1シャフト部13の中心軸13Cがヘッド2の接合穴23の中心Cよりもフェース面21側に寄るように、シャフト1を第3シャフト部15の中心軸15Cを回転中心として回転させることで、ヘッド2とシャフト1の左右のバランスの均衡がとれるように調整することができる。従って、ヘッド2とシャフト1の左右のバランスが均一となったところで、接着剤で固定し一体化することで、ヘッド2とシャフト1の左右のバランスが均一なグラウンド・ゴルフ用クラブ100となる。
【0039】
つまり、本実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100は、その製造工程において、曲げ部を有するシャフト1をヘッド2の接合穴23に挿入後、シャフト1を回転させて、ヘッド2とシャフト1のバランスを調整するという、シャフト回転によるバランス調整工程を備えている。このようなシャフト回転によるバランス調整工程を有することで、グラウンド・ゴルフ用クラブ100は、ヘッド2とシャフト1の左右のバランスを確実に均一にすることができる。そして、どのようなヘッドの形状であっても、このようなシャフト1の構成によりバランスをとることができる。
【0040】
図5は、実際にグラウンド・ゴルフ用クラブ100の試作品をテーブルの上に置いた支持台Tの上に載せた撮像である。
図5Aは、斜め方向からみた撮像であり、
図10Bはヘッド2の底面側から見た撮像である。このように、試作品はフェース面21が上を向いて安定している。つまり、支持台Tの支持面とフェース面21が平行になっている。このようにグラウンド・ゴルフ用クラブ100は、ヘッドとシャフトの左右のバランスが均一となっているため、誰にでも安定したスイングを行いやすく、ヘッドの重心にボールを当てやすくなる。
【0041】
また、本実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100は、第1曲げ部11と第2曲げ部12は、互いに逆方向に曲がる第1曲げ部11と第2曲げ部12からなる曲げ部を備えているので、ヘッド2近傍のシャフト1がヘッド2のヒール22側にずれるので、ボールが見えやすくなっている。
【0042】
ここで、
図1B、
図2Aに示すように、第1シャフト部13の中心軸13Cと第2シャフト部14の中心軸14Cの交点をP1とし、第2シャフト部14の中心軸14Cと第3シャフト部15の中心軸15Cの交点をP2とし、第2シャフト部14の中心軸14Cの長さをP1、P2間の距離とする。
【0043】
そして、本実施形態では、
図2Aにおいて、第1実施形態の第2シャフト部14の中心軸14Cの長さは45mmとなっている。なお、約10°の角度で互いに逆方向に曲がるシャフト1は、第1シャフト部13Aの中心軸13Cと第3シャフト部15Aの中心軸15Cの離間距離が8mmとなっている。
【0044】
ところで公益社団法人日本グラウンド・ゴルフ協会に認定品基準において、クラブの外観基準として、ヘッドの打面(フェース)とシャフトが平行であることが規定されている。そして、この基準の確認方法としては、
図2Bに示すように、打面を平面に固定し、シャフト中心軸までの距離のシャフトエンド部分(b:シャフトエンド部から20mmの位置)とヘッド挿入部分(a:挿入部分から20mmの位置)の差が15mm以内となっている。
そしてこのような本実施形態においても、実際に計測を行い確認したが、この認定品基準を満たしていた。
【0045】
また、シャフト1は、16枚の薄板を積層した積層材で作られている。本実施形態のように第1シャフト部13の中心軸13Cがヘッド2の重心Gよりもフェース21側に寄っている構成を採用し、公益社団法人日本グラウンド・ゴルフ協会の認定品基準を満たそうとする場合、第1曲げ部11と第2曲げ部12の角度が大きくなる。何故ならば、本発明者が検証したところ、曲げ部の角度が小さいと、P1、P2間の距離が長くなり、
図2Aにおける中心軸14の傾斜が緩やかになってしまう。このようになると、ヘッド挿入部分(a)での位置が中心軸13Cとあまり変わらなくなり、ヘッドとシャフトのバランスを均一にしながら、認定品基準を満たす、ということができなくなってしまったからである。従って、第1曲げ部11と第2曲げ部12の角度を大きくする必要がある。
【0046】
そして、本発明者が検証したところ、特許文献1のような5枚程度の薄板の積層では、薄板自体が厚くなるので、このような大きな曲げ角度のシャフトを実現することができなかった。従って、薄板の数は少なくとも9枚以上が必要であり、できれば本実施形態のような16枚程度が好ましい。
【0047】
[第2~第5実施形態]
図6A~
図6Dを用いて第2~第5実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100A~100Dを説明する。第2~第5実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100A~100Dにおいては、第1実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100と構成が同一の部分については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略し、構成が異なる同一名の部分については参照符号にそれぞれ添え字「A」~「D」を付す。
図6Aに示すように、第2実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100Aの第2シャフト部14Aの中心軸14CAの長さは45mmとなっている。
【0048】
そして、本実施形態では第1実施形態のシャフト1と異なり、第1曲げ部11と第2曲げ部12が、約18°の角度で互いに逆方向に曲がり、第1シャフト部13Aの中心軸13CAと第3シャフト部15Aの中心軸15CAの離間距離が14mmのシャフト1Aとなっている。
【0049】
このような本実施形態においても、
図6Aのように第1シャフト部13Aの中心軸13CAが、ヘッド2の接合穴23の中心よりもフェース面21側に寄った構成とすることで、ヘッド2とシャフト1Aの左右のバランスが均一なグラウンド・ゴルフ用クラブ100Aとなる。また、実際に計測を行い確認したが、認定品基準を満たすことができた。
図6Bに示すように、第3実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100Bの第2シャフト部14Bの中心軸14CBの長さは45mmとなっている。
【0050】
そして、第1曲げ部11と第2曲げ部12が、約26°の角度で互いに逆方向に曲がり、第1シャフト部13Bの中心軸13CBと第3シャフト部15Bの中心軸15CBの離間距離が20mmのシャフト1Bとなっている。
【0051】
このような本実施形態においても、
図6Bのように中心軸13CBが、ヘッド2の接合穴23の中心よりもフェース面21側に寄った構成とすることで、ヘッド2とシャフト1Bの左右のバランスが均一なグラウンド・ゴルフ用クラブ100Bとなる。また、実際に計測を行い確認したが、認定品基準を満たすことができた。
図6Cの正面図に示すように、第4実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100Cの第2シャフト部14Cの中心軸14CCの長さは44mmとなっている。
【0052】
そして、第1曲げ部11と第2曲げ部12が、約30°の角度で互いに逆方向に曲がり、第1シャフト部13Cの中心軸13CCと第3シャフト部15Cの中心軸15CCの離間距離が22mmのシャフト1Cとなっている。
【0053】
このような本実施形態においても、
図6Cのように中心軸13CCが、ヘッド2の接合穴23の中心よりもフェース面21側に寄った構成とすることで、ヘッド2とシャフト1Cの左右のバランスが均一なグラウンド・ゴルフ用クラブ100Cとなる。また、実際に計測を行い確認したが、認定品基準を満たすことができた。
【0054】
図6Dの正面図に示すように、第5実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100Dの第2シャフト部14Dの中心軸14CDの長さは31.2mmとなっている。
【0055】
そして、第1曲げ部11と第2曲げ部12が、約31°の角度で互いに逆方向に曲がり、第1シャフト部13Dの中心軸13CDと第3シャフト部15Dの中心軸15CDの離間距離が15.9mmのシャフト1Dとなっている。
【0056】
このような本実施形態においても、
図6Dのように中心軸13CDが、ヘッド2の接合穴23の中心よりもフェース面21側に寄った構成とすることで、ヘッド2とシャフト1Dの左右のバランスが均一なグラウンド・ゴルフ用クラブ100Dとなる。また、実際に計測を行い確認したが、認定品基準を満たすことができた。
【0057】
なお、第1実施形態~第5実施形態において、第1シャフト部13の中心軸13Cと第3シャフト部15の中心軸15Cの離間距離の範囲は、14mm~22mmの範囲であったが、より広い離間距離としても、シャフト1を回転させる量を調整することで、ヘッドとシャフトのバランスを均一にしながら、認定品基準を満たすことが可能である。本発明者の検証によると、距離間隔44mm程度(この時の第2シャフト部14の中心軸14の長さは60mm)であっても、グラウンド・ゴルフ用クラブ100については、ヘッドとシャフトのバランスを均一にしながら、認定品基準を満たすことが可能である。そして、距離間隔が広くなれば、ヘッド2近傍のシャフト1がヘッド2のヒール22側により一層ずれるので、ボールが見えやすくなる。
【0058】
[第6実施形態]
図を用いて第6実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100Eを説明する。第6実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100Eにおいては、第1実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100と構成が同一の部分については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略し、構成が異なる同一名の部分については参照符号にそれぞれ添え字「E」を付す。
【0059】
第6実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100Eと第1実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100はシャフトの構成のみ相違する。
図7を用いて、第6実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100の主要な構成を説明する。
図7Aはフェース側から見た接合前(分解)の正面図であり、Bは接合後の部分断面の図である。
シャフト1Eは、いわゆる無垢材で形成されたグリップ131側の無垢部1E1と、積層材で形成された第1曲げ部11側の積層部1E2からなる。
【0060】
そして、無垢部1E1は、第1シャフト部13Eの一部132で形成されている。また、積層部1E2は、第1シャフト部13Eの一部133と、第1曲げ部11と、第2シャフト部14と、第2曲げ部12と、第3シャフト部15とで形成されている。
【0061】
そして、無垢部1E1の第1シャフト部13Eの一部132と、積層部1E2の第1シャフト部13Eの一部133がダボ134でダボ継ぎされることによりシャフト1Eとなっている。
【0062】
このように、本実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100Eは、シャフト1Eが無垢部1E1と、積層材で形成された積層部1E2からなる。グラウンド・ゴルフ用クラブは、用具標準規則において仕様が定められているが、その販売価格についても、現時点では税別18,000円までと決められている。積層材を用いた曲げ加工は、無垢材に比べ製造工程が増加してしまい、製造コストが高くなってしまう。従って、シャフト全体を積層材で形成するとシャフトのコストが高くなってしまう。一方、本実施形態のように、シャフト1Eの一部に無垢部1E1を用いることでシャフト1Eの製造コストを抑えることができる。
【0063】
具体的には、積層材からなるシャフトは、複数の薄板を接着して一枚の積層板を形成した後に切断し、個々のシャフトを形成していくことになる。しかし、本実施形態によればシャフト全体に対応した切断を積層板から行う必要はなく、積層部1E2に対応した切断だけを行えばよいので、積層板から効率よく積層部1E2を切断できるので、製造コストを下げることができる。とくに積層材をシャフト形状に切削、研磨する工程は、無垢材をシャフト形状に切削、研磨する工程に比べ非常に時間を有する。本発明によれば、積層材の切削、研磨は、積層部1E2だけとなるため、製造時間の大幅な削減により製造コストを下げることができる。また、積層材は無垢材に比べ非常に高価であるため、積層材の使用料を減らすことで材料のコストを下げることができる。その他、曲げ加工を行う場合にもシャフト全体での加工が不要となるので、加工装置を小型化することができる。
【0064】
販売価格の上限が決められているグラウンド・ゴルフ用クラブの場合、製造コストを少しでも低減することができれば、販売、製造を行う者にとってはより多くの利益を得ることができるため、非常に重要となる。
【0065】
なお、本実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100Eは、無垢部1E1と積層部1E2は、ダボ134により接続していた。しかしながら、無垢部1E1と積層部1E2との接続は、例えば、ボルトとナットのような螺着構造であったり等、他の方法でも構わない。また、例えば、ダボ134の周囲を緩衝材のような物で覆って接合してもよい。
【0066】
また、本実施形態のグラウンド・ゴルフ用クラブ100Eは、第1シャフト部13の中心軸13Cは、ヘッド2の接合穴23の中心よりもフェース面21側に寄った構成となっていた。しかしながら、第1シャフト部13の中心軸13Cが、ヘッド2の接合穴23の中心よりもフェース面21の反対側、つまり、ヘッド2の裏面側に寄った構成を採用することもできる。ただし、本発明者の検証によると、中心軸13Cがヘッド2の裏面側に寄った構成のクラブは、シャフト1の前方にヘッド2の重心Gが位置することからスイングが難しい印象を受けた。従って、中心軸13Cが接合穴23の中心よりもフェース面21側に寄った構成が好ましい。
【符号の説明】
【0067】
100、100A~E:グラウンド・ゴルフ用クラブ
1、1E:シャフト
11:第1曲げ部
12:第2曲げ部
13、13E:第1シャフト部
13C:中心軸
14:第2シャフト部
15:第3シャフト部
21:フェース面
23:接合穴
1E1:無垢部
1E2:積層部