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  • 特許-骨疾患の予防または治療用の医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】骨疾患の予防または治療用の医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/20 20060101AFI20240621BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/201 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61K31/20
A61K31/19
A61K31/192
A61P19/08
A61P43/00 121
A61P43/00 123
A61K31/201
A61K31/202
A61P1/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020572309
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2020005590
(87)【国際公開番号】W WO2020166662
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019023276
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518125594
【氏名又は名称】株式会社ジェクスヴァル
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 珠蘭
(72)【発明者】
【氏名】内藤 貴子
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-542580(JP,A)
【文献】特表2016-529241(JP,A)
【文献】国際公開第2017/143220(WO,A1)
【文献】WAUQUIER, Fabien et al.,The Free Fatty Acid Receptor G Protein-coupled Receptor 40 (GPR40) Protects from Bone Loss through I,The Journal of Biological Chemistry,2013年03月01日,Vol. 288, No. 9,pp. 6542-6551,DOI: 10.1074/jbc.M112.429084
【文献】BOEYENS, Jan C. A. et al.,Effects of omega3- and omega6-Polyunsaturated Fatty Acids on RANKL-Induced Osteoclast Differentiatio,Nutrients,2014年,6,p.2584-2601
【文献】中島 友紀,破骨細胞研究と骨免疫学,日本臨床免疫学会会誌,2015年,Vol.38, No.1,pages 17-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61P 19/00
A61K 31/20
A61P 43/00
A61K 31/201
A61K 31/202
A61P 1/02
A61K 31/343
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPR40アゴニストと、GPR40の内因性リガンドである遊離脂肪酸とを含有する、骨疾患の予防または治療用の医薬組成物であって、
前記GPR40アゴニストが、式(I)で表される化合物もしくはその塩、または式(I)で表される化合物のプロドラッグであり、
【化1】
[式(I)中、
1は、C1-6アルキルスルホニル基または置換されていてもよい1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基を表し;
Xは、結合手または2価の炭化水素基を表し;
2およびR3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよいヒドロキシ基を表し、同一であっても異なっていてもよく;
4およびR5はそれぞれ、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC1-6アルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよく;
環Aは、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいヒドロキシ基および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基をさらに有していてもよい、ベンゼン環を表し;
環Bは、5ないし7員環を表し;
Yは、結合手またはCH2を表し;
Rは、置換されていてもよいヒドロキシ基を表す。]
前記GPR40の内因性リガンドである遊離脂肪酸が、1種または2種以上の、炭素原子数が6~22の飽和もしくは不飽和脂肪酸であ
前記プロドラッグが、式(I)中のアミノ基がアシル化、アルキル化またはリン酸化された化合物、式(I)中の水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化またはホウ酸化された化合物、あるいは式(I)中のカルボキシ基がエステル化またはアミド化された化合物であり、
前記骨疾患は、破骨細胞の活性または形成の亢進に起因する疾患である、医薬組成物。
【請求項2】
前記骨疾患が歯周病における歯槽骨吸収、抜歯後の歯槽骨吸収、歯槽骨造成術後の骨吸収またはその他の歯槽骨吸収を伴う疾患、症状または状態である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
GPR40アゴニストと、GPR40の内因性リガンドである遊離脂肪酸とを、有効成分として混合する工程を含む、骨疾患の予防または治療用の医薬組成物の製造方法であって、
前記GPR40アゴニストが、式(I)で表される化合物もしくはその塩、または式(I)で表される化合物のプロドラッグであり、
【化2】
[式(I)中、
1は、C1-6アルキルスルホニル基または置換されていてもよい1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基を表し;
Xは、結合手または2価の炭化水素基を表し;
2およびR3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよいヒドロキシ基を表し、同一であっても異なっていてもよく;
4およびR5はそれぞれ、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC1-6アルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよく;
環Aは、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいヒドロキシ基および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基をさらに有していてもよい、ベンゼン環を表し;
環Bは、5ないし7員環を表し;
Yは、結合手またはCH2を表し;
Rは、置換されていてもよいヒドロキシ基を表す。]
前記GPR40の内因性リガンドである遊離脂肪酸が、1種または2種以上の、炭素原子数が6~22の飽和もしくは不飽和脂肪酸であ
前記プロドラッグが、式(I)中のアミノ基がアシル化、アルキル化またはリン酸化された化合物、式(I)中の水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化またはホウ酸化された化合物、あるいは式(I)中のカルボキシ基がエステル化またはアミド化された化合物であり、
前記骨疾患は、破骨細胞の活性または形成の亢進に起因する疾患である、医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨疾患の予防または治療用の医薬組成物に関する。また本発明は、GPR40アゴニストの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
GPR40(FFAR1(free fatty acid receptor 1)と呼ばれることもある。)は、膵β細胞、骨関連細胞(破骨細胞、骨芽細胞およびそれらの前駆細胞等)に発現している、遊離脂肪酸を内因性リガンドとするGタンパク質共役受容体であり、GPR40への遊離脂肪酸の結合によって、当該受容体を発現する細胞の活性は調節されうる。例えば、膵β細胞は、GPR40への遊離脂肪酸の結合によって活性化され、インスリンの分泌が誘導される。
【0003】
一方で、GPR40に結合しうる遊離脂肪酸以外の化合物であって、GPR40発現細胞の活性を調節することのできる、様々なGPR40アゴニスト(作動薬)も知られている。例えば、特許文献1には、GPR40アゴニストとして特定の構造式で表される縮合環化合物が記載されており、実施例ではさらに、膵β細胞からのインスリンの分泌において当該化合物は遊離脂肪酸(γ-リノレン酸)と同程度の活性を有すること、したがって糖尿病の予防または治療のために使用できる可能性があることも記載されている。非特許文献1には、GPR40アゴニストとなる様々な化合物のリストが記載されている。
【0004】
特許文献1に記載されている縮合環化合物の一つに、Fasiglifam(ファシグリファム、開発コード:TAK-875)と呼ばれる化合物、[(3S)-6-({2',6'-ジメチル-4'-[3-(メチルスルホニル)プロポキシ]ビフェニル-3-イル}メトキシ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-3-イル]酢酸がある。非特許文献2には、アゴニストであるFasiglifamは内因性リガンドである遊離脂肪酸とはGPR40の異なる部位(アロステリック部位)に結合すること、Fasiglifamと遊離脂肪酸が同時にGPR40に作用することにより、それぞれ単独で作用した場合と比べて膵β細胞からのインスリンの分泌が増強されることなどが記載されている。
【0005】
非特許文献3では、リノレン酸、Fasiglifam(TAK-875)およびその他のGPR40アゴニスト(GW9508、TUG-770、AMG 837、AM 8182、AM 1638)のGPR40に対する結合様式を分子構造モデルにより解析している。非特許文献4にも、Fasiglifam(TAK-875)のGPR40に対する結合様式が分子構造モデルにより詳細に記載されている。
【0006】
また、非特許文献5では、破骨細胞に発現するGPR40および骨芽細胞に発現するGPR120に対する、各種の遊離脂肪酸、GPR40/GPR120アゴニスト(GW9508)それぞれ単独の作用が研究されており、それらの遊離脂肪酸およびアゴニストが、破骨細胞(RANK)が骨芽細胞(RANKL)と相互作用によって起きる破骨細胞の形成(破骨細胞への分化および成熟)を抑制する作用を有することなどが報告されている。非特許文献6にも、GPR40/GPR120アゴニスト(GW9508)を用いた研究を通じて、GW9508のGPR40に対する作用により破骨細胞への分化が抑制されること、それにより卵巣摘出による骨の減少を予防できることなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2008/001931
【非特許文献】
【0008】
【文献】Yonezawa et al. Free Fatty Acids-Sensing G Protein-Coupled Receptors in Drug Targeting and Therapeutics. Current Medicinal Chemistry, 2013, Vol.20, No.31:3855-3871
【文献】Yabuki C, Komatsu H, Tsujihata Y, Maeda R, Ito R, et al. (2013) A Novel Antidiabetic Drug, Fasiglifam/TAK-875, Acts as an Ago-Allosteric Modulator of FFAR1. PLoS ONE 8(10): e76280. doi:10.1371/journal.pone.0076280
【文献】Irina G. Tikhonova and Elena Poerio. Free fatty acid receptors: structural models and elucidation of ligand binding interactions. BMC Structural Biology (2015) 15:16. DOI 10.1186/s12900-015-0044-2
【文献】Srivastava et al. High-resolution structure of the human GPR40 receptor bound to allosteric agonist TAK-875. Nature VOL.513, pp. 124-127, September 4, 2014. doi:10.1038/nature13494
【文献】Cornish et al. Fatty Acids Modulate Osteoclastogenesis. Endocrinology, November 2008, 149(11):5688-5695
【文献】Wauquier et al. The Free Fatty Acid Receptor G Protein-coupled Receptor 40 (GPR40) Protects from Bone Loss through Inhibition of Osteoclast Differentiation. THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL. 288, NO. 9, pp. 6542-6551, March 1, 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
破骨細胞は、骨芽細胞および骨細胞とともに骨を構成しており、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成によって骨は再構築(骨リモデリング)されている。破骨細胞および骨芽細胞の活性のバランスが崩れると、骨粗鬆症、関節リウマチなどの各種の骨疾患の原因となる。
【0010】
また、歯周病原因細菌によって引き起こされる歯周病は、歯周組織における炎症の増大と慢性化に伴い、骨組織(歯槽骨)の破壊が引き起こされるが、その破壊にも破骨細胞が関係している。しかしながら、骨粗鬆症治療薬として用いられている、破骨細胞にアポトーシスを誘導し、骨吸収を抑制することにより骨量を増加させるビスホスフォネートは、歯周病の治療においてはビスホスフォネート関連顎骨壊死(BRONJ)を引きおこしてしまうこと、破骨細胞の形成・分化に必須なRANKLの働きを阻害する次世代の骨粗鬆症治療薬である抗RANKL抗体(denosumab:デノスマブ)を使用した場合も顎骨壊死が1~2%で生じることなども報告されている。細菌の感染により免疫のバランスが崩れやすい口腔内という特殊な環境において歯槽骨(顎骨)の破壊を抑制する必要がある、歯周病の予防または治療のためには、公知の骨粗鬆症治療薬等をそのまま使用するのではなく、新たな解決策を講じることが求められている。
【0011】
本発明は、破骨細胞および骨芽細胞のバランス異常が関係している骨疾患、特に歯周病の、予防または治療にとって有用な医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、骨髄間葉系幹細胞の培養系において、GPR40アゴニストと遊離脂肪酸の併用が、造血幹細胞から破骨細胞への分化を抑制すること、また間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化を促進することを明らかにし、これらが歯周病等の骨疾患の予防または治療用の医薬組成物として優れた有効成分となり得ることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は下記の事項を包含する。
[項1]
GPR40アゴニストと、GPR40の内因性リガンドである遊離脂肪酸とを含有する、骨疾患の予防または治療用の医薬組成物。
[項2]
前記GPR40アゴニストが、式(I)で表される化合物もしくはその塩、または式(I)で表される化合物のプロドラッグである、項1に記載の医薬組成物。
【化1】
[式(I)中、
は、R-SO-(Rは置換基を表す。)または置換されていてもよい1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基を表し;
Xは、結合手または2価の炭化水素基を表し;
およびRはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよいヒドロキシ基を表し、同一であっても異なっていてもよく

およびRはそれぞれ、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC1-6アルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよく;
環Aは、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいヒドロキシ基および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基をさらに有していてもよい、ベンゼン環を表し;
環Bは、5ないし7員環を表し;
Yは、結合手またはCHを表し;
Rは、置換されていてもよいヒドロキシ基を表す。]
[項3]
前記GPR40の内因性リガンドである遊離脂肪酸が、1種または2種以上の、炭素原子数が6~22の飽和もしくは不飽和脂肪酸である、項1に記載の医薬組成物。
[項4]
前記骨疾患が歯周病における歯槽骨吸収、抜歯後の歯槽骨吸収、歯槽骨造成術後の骨吸収またはその他の歯槽骨吸収を伴う疾患、症状または状態である、項1に記載の医薬組成物。
[項5]
GPR40アゴニストの有効量と、GPR40の内因性リガンドである遊離脂肪酸の有効量とを哺乳動物に投与することを含む、当該哺乳動物における骨疾患の予防または治療の方法。
[項6]
骨疾患の予防または治療用の医薬組成物を製造するための、GPR40アゴニストと、GPR40の内因性リガンドである遊離脂肪酸との使用。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、従来よりも予防または治療の効果の高い骨疾患用の医薬組成物が提供される。例えば、GPR40アゴニスト単独、またはGPR40のリガンドである遊離脂肪酸単独では十分な破骨細胞への分化抑制効果が奏されない場合であっても、GPR40アゴニストおよび遊離脂肪酸を併用することによって十分な効果が奏されるようになる場合があり、これら2種類の成分の併用は骨疾患の予防または治療用の医薬組成物の有効成分として顕著な作用効果を奏するといえる。したがって、本発明の医薬組成物により、これまで困難であった歯周病等による歯槽骨の消失を効果的に予防または治療することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例において測定した、破骨細胞のマーカー遺伝子(Ctsk, Calcr)の発現量の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
-医薬組成物-
本発明の医薬組成物は、第1の成分としてGPR40アゴニストと、第2の成分としてGPR40の内因性リガンドである遊離脂肪酸とを含有する、骨疾患の予防または治療のために使用されるものである。
【0017】
・第1成分:GPR40アゴニスト
「GPR40アゴニスト」としては様々な化合物が知られている。例えば、前掲特許文献1に記載されている化合物や、その背景技術に示されている、WO2004/041266に記載の化合物、WO2004/106276に記載の化合物、WO2005/063729に記載の化合物、また前掲特許文献2に記載されているGW9508、TUG-770、AMG 837、AM 8182、AM 1638などが「GPR40アゴニスト」として挙げられる。前掲非特許文献1に記載のリストも参照することができる。本発明の医薬組成物の第1成分として用いることのできる「GPR40アゴニスト」は特に限定されるものではなく、本発明の作用効果を考慮しながら選択することができ、GPR40アゴニストのいずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
GPR40アゴニストには、GPR40において遊離脂肪酸と同じ部位(オルソステリック部位)に結合するものと、遊離脂肪酸とは異なる部位(アロステリック部位)に結合するものがあるが、本発明で用いるGPR40アゴニストは後者の方が好ましい。
【0019】
また、GPR40アゴニストの内因性リガンドである中鎖または長鎖の遊離脂肪酸は、GPR40以外にもGPR120(FFAR4)の内因性リガンドでもある。本発明で用いるGPR40アゴニストは、GPR120のアゴニストとしても作用する(GPR40およびGPR120の両方のアゴニストとして作用する)非選択的アゴニスト(デュアルアゴニスト)であってもよいし、GPR120のアゴニストとしては作用しない(GPR40のアゴニストとしてのみ作用する)選択的アゴニストであってもよい。例えば、Fasiglifam(TAK-875)はGPR40に対する選択的アゴニストであり、GW9508はGPR40およびGPR120に対するデュアルアゴニストである。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の医薬組成物の第1成分として用いられるGPR40アゴニストは、前掲特許文献1に記載されている、式(I)で表される化合物(本明細書において「化合物(I)」と呼ぶ。)もしくはその塩、または化合物(I)のプロドラッグである。Fasiglifam(TAK-875)は、化合物(I)の代表例であり、GPR40の選択的アゴニストとして好適な化合物である。
【0021】
【化2】
【0022】
式(I)中、
は、R-SO-(Rは置換基を表す。)または置換されていてもよい1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基を表し;
Xは、結合手または2価の炭化水素基を表し;
およびRはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよいヒドロキシ基を表し、同一であっても異なっていてもよく

およびRはそれぞれ、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC1-6アルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよく;
環Aは、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいヒドロキシ基および置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる置換基をさらに有していてもよい、ベンゼン環を表し;
環Bは、5ないし7員環を表し;
Yは、結合手またはCHを表し;
Rは、置換されていてもよいヒドロキシ基を表す。
【0023】
本明細書中の「ハロゲン原子」としては、特に断りのない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0024】
本明細書中の「置換されていてもよい炭化水素基」としては、特に断りのない限り、例えば、「置換されていてもよいC1-6アルキル基」、「置換されていてもよいC2-6アルケニル基」、「置換されていてもよいC2-6アルキニル基」、「置換されていてもよいC3-8シクロアルキル基」、「置換されていてもよいC6-14アリール基」、「置換されていてもよいC7-16アラルキル基」などが挙げられる。
【0025】
本明細書中の「C1-6アルキル基」としては、特に断りのない限り、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。
【0026】
本明細書中の「C2-6アルケニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、2-ブテン-1-イル、4-ペンテン-1-イル、5-へキセン-1-イルなどが挙げられる。
【0027】
本明細書中の「C2-6アルキニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、2-ブチン-1-イル、4-ペンチン-1-イル、5-へキシン-1-イルなどが挙げられる。
【0028】
本明細書中の「C3-8シクロアルキル基」としては、特に断りのない限り、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0029】
本明細書中の「C6-14アリール基」としては、特に断りのない限り、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル、2-アンスリルなどが挙げられる。該C6-14アリールは、部分的に飽和されていてもよく、部分的に飽和されたC6-14アリールとしては、例えば、テトラヒドロナフチルなどが挙げられる。
【0030】
本明細書中の「C7-16アラルキル基」としては、特に断りのない限り、例えば、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル、2,2-ジフェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル、5-フェニルペンチル、2-ビフェニリルメチル、3-ビフェニリルメチル、4-ビフェニリルメチルなどが挙げられる。
【0031】
本明細書中の「置換されていてもよいヒドロキシ基」としては、特に断りのない限り、例えば、「ヒドロキシ基」、「置換されていてもよいC1-6アルコキシ基」、「置換されていてもよい複素環オキシ基」、「置換されていてもよいC6-14アリールオキシ基」、「置換されていてもよいC7-16アラルキルオキシ基」などが挙げられる。
【0032】
本明細書中の「C1-6アルコキシ基」としては、特に断りのない限り、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられる。
【0033】
本明細書中の「C1-6アルコキシ-C1-6アルコキシ基」としては、特に断りのない限り、例えば、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、エトキシメトキシ、エトキシエトキシなどが挙げられる。
【0034】
本明細書中の「複素環オキシ基」としては、後述の「複素環基」で置換されたヒドロキシ基が挙げられる。該複素環オキシ基の好適な例としては、テトラヒドロピラニルオキシ、チアゾリルオキシ、ピリジルオキシ、ピラゾリルオキシ、オキサゾリルオキシ、チエニルオキシ、フリルオキシなどが挙げられる。
【0035】
本明細書中の「C6-14アリールオキシ基」としては、特に断りのない限り、例えば、フェノキシ、1-ナフチルオキシ、2-ナフチルオキシなどが挙げられる。
【0036】
本明細書中の「C7-16アラルキルオキシ基」としては、特に断りのない限り、例えば、ベンジルオキシ、フェネチルオキシなどが挙げられる。
【0037】
本明細書中の「置換されていてもよいメルカプト基」としては、特に断りのない限り、例えば、「メルカプト基」、「置換されていてもよいC1-6アルキルチオ基」、「置換されていてもよい複素環チオ基」、「置換されていてもよいC6-14アリールチオ基」、「置換されていてもよいC7-16アラルキルチオ基」などが挙げられる。
【0038】
本明細書中の「C1-6アルキルチオ基」としては、特に断りのない限り、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオなどが挙げられる。
【0039】
本明細書中の「複素環チオ基」としては、後述の「複素環基」で置換されたメルカプト基が挙げられる。該複素環チオ基の好適な例としては、テトラヒドロピラニルチオ、チアゾリルチオ、ピリジルチオ、ピラゾリルチオ、オキサゾリルチオ、チエニルチオ、フリルチオなどが挙げられる。
【0040】
本明細書中の「C6-14アリールチオ基」としては、特に断りのない限り、例えば、フェニルチオ、1-ナフチルチオ、2-ナフチルチオなどが挙げられる。
【0041】
本明細書中の「C7-16アラルキルチオ基」としては、特に断りのない限り、例えば、ベンジルチオ、フェネチルチオなどが挙げられる。
【0042】
本明細書中の「複素環基」としては、特に断りのない限り、例えば、環構成原子として、炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる1又は2種、1ないし4個のヘテロ原子を含む5ないし14員(単環、2環又は3環式)複素環基、好ましくは(i)5ないし14員(好ましくは5ないし10員)芳香族複素環基、(ii)5ないし10員非芳香族複素環基などが挙げられる。なかでも5または6員芳香族複素環基が好ましい。具体的には、例えば、チエニル(例:2-チエニル、3-チエニル)、フリル(例:2-フリル、3-フリル)、ピリジル(例:2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、チアゾリル(例:2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、オキサゾリル(例:2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、ピラジニル、ピリミジニル(例:2-ピリミジニル、4-ピリミジニル)、ピロリル(例:1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル)、イミダゾリル(例:1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル)、ピラゾリル(例:1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル)、トリアゾリル(例:1-トリアゾリル、2-トリアゾリル)、テトラゾリル、ピリダジニル(例:3-ピリダジニル、4-ピリダジニル)、イソチアゾリル(例:3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル)、イソキサゾリル(例:3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル)、インドリル(例:1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル)、2-ベンゾチアゾリル、2-ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル(例:1-ベンズイミダゾリル、2-ベンズイミダゾリル)、ベンゾ[b]チエニル(例:2-ベンゾ[b]チエニル、3-ベンゾ[b]チエニル)、ベンゾ[b]フラニル(例:2-ベンゾ[b]フラニル、3-ベンゾ[b]フラニル)、キノリル(例:2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、8-キノリル)、イソキノリル(例:1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル)などの芳香族複素環基;
例えば、ピロリジニル(例:1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル)、オキサゾリジニル(例:2-オキサゾリジニル)、イミダゾリニル(例:1-イミダゾリニル、2-イミダゾリニル、4-イミダゾリニル)、ピペリジニル(例:ピペリジノ、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-ピペリジニル)、ピペラジニル(例:1-ピペラジニル、2-ピペラジニル)、モルホリニル(例:2-モルホリニル、3-モルホリニル、モルホリノ)、チオモルホリニル(例:2-チオモルホリニル、3-チオモルホリニル、チオモルホリノ)、テトラヒドロピラニルなどの非芳香族複素環基などが挙げられる。
【0043】
本明細書中の「C1-6アルキル-カルボニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、アセチル、イソブタノイル、イソペンタノイルなどが挙げられる。
【0044】
本明細書中の「C1-6アルコキシ-カルボニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニルなどが挙げられる。
【0045】
本明細書中の「C3-8シクロアルキル-カルボニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニルなどが挙げられる。
【0046】
本明細書中の「C6-14アリール-カルボニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、ベンゾイル、1-ナフトイル、2-ナフトイルなどが挙げられる。
【0047】
本明細書中の「C7-16アラルキル-カルボニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、フェニルアセチル、2-フェニルプロパノイルなどが挙げられる。
【0048】
本明細書中の「C6-14アリールオキシ-カルボニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、フェノキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0049】
本明細書中の「C7-16アラルキルオキシ-カルボニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0050】
本明細書中の「含窒素複素環-カルボニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、ピロリジニルカルボニル、ピペリジノカルボニルなどが挙げられる。
【0051】
本明細書中の「C1-6アルキルスルホニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニルなどが挙げられる。
【0052】
本明細書中の「C6-14アリールスルホニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、フェニルスルホニル、1-ナフチルスルホニル、2-ナフチルスルホニルなどが挙げられる。
【0053】
本明細書中の「C1-6アルキルスルフィニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニルなどが挙げられる。
【0054】
本明細書中の「C6-14アリールスルフィニル基」としては、特に断りのない限り、例えば、フェニルスルフィニル、1-ナフチルスルフィニル、2-ナフチルスルフィニルなどが挙げられる。
【0055】
本明細書中の「エステル化されていてもよいカルボキシル基」としては、特に断りのない限り、例えば、カルボキシル、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C6-14アリールオキシ-カルボニル基、C7-16アラルキルオキシ-カルボニル基などが挙げられる。
【0056】
本明細書中の「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基」としては、特に断りのない限り、1ないし5個の上記「ハロゲン原子」で置換されていてもよい上記「C1-6アルキル基」が挙げられる。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、イソブチル、トリフルオロメチルなどが挙げられる。
【0057】
本明細書中の「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基」としては、特に断りのない限り、1ないし5個の上記「ハロゲン原子」で置換されていてもよい上記「C1-6アルコキシ基」が挙げられる。例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、トリフルオロメトキシなどが挙げられる。
【0058】
本明細書中の「モノ-又はジ-C1-6アルキル-アミノ基」としては、特に断りのない限り、上記「C1-6アルキル基」でモノ-又はジ-置換されたアミノ基が挙げられる。例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが挙げられる。
【0059】
本明細書中の「モノ-又はジ-C6-14アリール-アミノ基」としては、特に断りのない限り、上記「C6-14アリール基」でモノ-又はジ-置換されたアミノ基が挙げられる。例えば、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、1-ナフチルアミノ、2-ナフチルアミノなどが挙げられる。
【0060】
本明細書中の「モノ-又はジ-C7-16アラルキル-アミノ基」としては、特に断りのない限り、上記「C7-16アラルキル基」でモノ-又はジ-置換されたアミノ基が挙げられる。例えば、ベンジルアミノ、フェネチルアミノなどが挙げられる。
【0061】
本明細書中の「N-C1-6アルキル-N-C6-14アリール-アミノ基」としては、特に断りのない限り、上記「C1-6アルキル基」及び上記「C6-14アリール基」で置換されたアミノ基が挙げられる。例えば、N-メチル-N-フェニルアミノ、N-エチル-N-フェニルアミノなどが挙げられる。
【0062】
本明細書中の「N-C1-6アルキル-N-C7-16アラルキル-アミノ基」としては、特に断りのない限り、上記「C1-6アルキル基」及び上記「C7-16アラルキル基」で置換されたアミノ基が挙げられる。例えば、N-メチル-N-ベンジルアミノ、N-エチル-N-ベンジルアミノなどが挙げられる。
【0063】
本明細書中の「モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイル基」としては、特に断りのない限り、上記「C1-6アルキル基」でモノ-又はジ-置換されたカルバモイル基が挙げられる。例えば、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、エチルメチルカルバモイルなどが挙げられる。
【0064】
本明細書中の「モノ-又はジ-C6-14アリール-カルバモイル基」としては、特に断りのない限り、上記「C6-14アリール基」でモノ-又はジ-置換されたカルバモイル基が挙げられる。例えば、フェニルカルバモイル、1-ナフチルカルバモイル、2-ナフチルカルバモイルなどが挙げられる。
【0065】
本明細書中の「モノ-又はジ-C3-8シクロアルキル-カルバモイル基」としては、特に断りのない限り、上記「C3-8シクロアルキル基」でモノ-又はジ-置換されたカルバモイル基が挙げられる。例えば、シクロプロピルカルバモイルなどが挙げられる。
【0066】
本明細書中の「モノ-又はジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基」としては、特に断りのない限り、上記「C7-16アラルキル基」でモノ-又はジ-置換されたカルバモイル基が挙げられる。例えば、ベンジルカルバモイルなどが挙げられる。
【0067】
本明細書中の「モノ-又はジ-5ないし7員複素環-カルバモイル基」としては、特に断りのない限り、5ないし7員複素環基でモノ-又はジ-置換されたカルバモイル基が挙げられる。ここで、5ないし7員複素環基としては、環構成原子として、炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる1又は2種、1ないし4個のヘテロ原子を含む複素環基が挙げられる。「モノ-又はジ-5ないし7員複素環-カルバモイル基」の好適な例としては、2-ピリジルカルバモイル、3-ピリジルカルバモイル、4-ピリジルカルバモイル、2-チエニルカルバモイル、3-チエニルカルバモイルなどが挙げられる。
【0068】
本明細書中の「モノ-又はジ-C1-6アルキル-スルファモイル基」としては、特に断りのない限り、上記「C1-6アルキル基」でモノ-又はジ-置換されたスルファモイル基が用いられ、例えば、メチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、ジエチルスルファモイルなどが挙げられる。
【0069】
本明細書中の「モノ-又はジ-C6-14アリール-スルファモイル基」としては、特に断りのない限り、上記「C6-14アリール基」でモノ-又はジ-置換されたスルファモイル基が用いられ、例えば、フェニルスルファモイル、ジフェニルスルファモイル、1-ナフチルスルファモイル、2-ナフチルスルファモイルなどが挙げられる。
【0070】
本明細書中の「モノ-又はジ-C7-16アラルキル-スルファモイル基」としては、特に断りのない限り、上記「C7-16アラルキル基」でモノ-又はジ-置換されたスルファモイル基が挙げられる。例えば、ベンジルスルファモイルなどが挙げられる。
【0071】
本明細書中の「置換されていてもよいC1-6アルキル基」、「置換されていてもよいC2-6アルケニル基」、「置換されていてもよいC2-6アルキニル基」、「置換されていてもよいC1-6アルコキシ基」および「置換されていてもよいC1-6アルキルチオ基」としては、例えば、
(1)ハロゲン原子;
(2)ヒドロキシ基;
(3)アミノ基;
(4)ニトロ基;
(5)シアノ基;
(6)ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-アミノ基、C6-14アリール基、モノ-又はジ-C6-14アリール-アミノ基、C3-8シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシ-C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C1-6アルキルスルフィニル基、C1-6アルキルスルホニル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-又はジ-C6-14アリール-カルバモイル基、スルファモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-スルファモイル基及びモノ-又はジ-C6-14アリール-スルファモイル基から選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよい複素環基(好ましくはフリル、ピリジル、チエニル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル);
(7)モノ-又はジ-C1-6アルキル-アミノ基;
(8)モノ-又はジ-C6-14アリール-アミノ基;
(9)モノ-又はジ-C7-16アラルキル-アミノ基;
(10)N-C1-6アルキル-N-C6-14アリール-アミノ基;
(11)N-C1-6アルキル-N-C7-16アラルキル-アミノ基;
(12)C3-8シクロアルキル基;
(13)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基;
(14)C1-6アルキルチオ基;
(15)C1-6アルキルスルフィニル基;
(16)C1-6アルキルスルホニル基;
(17)エステル化されていてもよいカルボキシル基;
(18)C1-6アルキル-カルボニル基;
(19)C3-8シクロアルキル-カルボニル基;
(20)C6-14アリール-カルボニル基;
(21)カルバモイル基;
(22)チオカルバモイル基;
(23)モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイル基;
(24)モノ-又はジ-C6-14アリール-カルバモイル基;
(25)モノ-又はジ-5ないし7員複素環-カルバモイル基;
(26)カルボキシル基で置換されていてもよいC1-6アルキル-カルボニルアミノ基(例:アセチルアミノ、プロピオニルアミノ);
(27)ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-アミノ基、C6-14アリール基、モノ-又はジ-C6-14アリール-アミノ基、C3-8シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシ-C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C1-6アルキルスルフィニル基、C1-6アルキルスルホニル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-又はジ-C6-14アリール-カルバモイル基、スルファモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-スルファモイル基及びモノ-又はジ-C6-14アリール-スルファモイル基から選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよいC6-14アリールオキシ基;
(28)ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-アミノ基、C6-14アリール基、モノ-又はジ-C6-14アリール-アミノ基、C3-8シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシ-C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C1-6アルキルスルフィニル基、C1-6アルキルスルホニル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-又はジ-C6-14アリール-カルバモイル基、スルファモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-スルファモイル基及びモノ-又はジ-C6-14アリール-スルファモイル基から選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよいC6-14アリール基;
(29)複素環オキシ基;
(30)スルファモイル基;
(31)モノ-又はジ-C1-6アルキル-スルファモイル基;
(32)モノ-又はジ-C6-14アリール-スルファモイル基;
(33)ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-アミノ基、C6-14アリール基、モノ-又はジ-C6-14アリール-アミノ基、C3-8シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシ-C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C1-6アルキルスルフィニル基、C1-6アルキルスルホニル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-又はジ-C6-14アリール-カルバモイル基、スルファモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-スルファモイル基及びモノ-又はジ-C6-14アリール-スルファモイル基から選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよいC7-16アラルキルオキシ基;
などから選ばれる1ないし5個の置換基をそれぞれ置換可能な位置に有していてもよい、「C1-6アルキル基」、「C2-6アルケニル基」、「C2-6アルキニル基」、「C1-6アルコキシ基」および「C1-6アルキルチオ基」が挙げられる。
【0072】
本明細書中の「置換されていてもよいC3-8シクロアルキル基」、「置換されていてもよいC6-14アリール基」、「置換されていてもよいC7-16アラルキル基」、「置換されていてもよい複素環基」、「置換されていてもよい複素環オキシ基」、「置換されていてもよいC6-14アリールオキシ基」、「置換されていてもよいC7-16アラルキルオキシ基」、「置換されていてもよい複素環チオ基」、「置換されていてもよいC6-14アリールチオ基」および「置換されていてもよいC7-16アラルキルチオ基」としては、例えば、
(1)ハロゲン原子;
(2)ヒドロキシ基;
(3)アミノ基;
(4)ニトロ基;
(5)シアノ基;
(6)置換されていてもよいC1-6アルキル基;
(7)置換されていてもよいC2-6アルケニル基;
(8)置換されていてもよいC2-6アルキニル基;
(9)ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-アミノ基、C6-14アリール基、モノ-又はジ-C6-14アリール-アミノ基、C3-8シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシ-C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C1-6アルキルスルフィニル基、C1-6アルキルスルホニル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-又はジ-C6-14アリール-カルバモイル基、スルファモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-スルファモイル基及びモノ-又はジ-C6-14アリール-スルファモイル基から選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよいC6-14アリール基;
(10)ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-アミノ基、C6-14アリール基、モノ-又はジ-C6-14アリール-アミノ基、C3-8シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシ-C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C1-6アルキルスルフィニル基、C1-6アルキルスルホニル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-又はジ-C6-14アリール-カルバモイル基、スルファモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-スルファモイル基及びモノ-又はジ-C6-14アリール-スルファモイル基から選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよいC6-14アリールオキシ基;
(11)ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-アミノ基、C6-14アリール基、モノ-又はジ-C6-14アリール-アミノ基、C3-8シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシ-C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C1-6アルキルスルフィニル基、C1-6アルキルスルホニル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-又はジ-C6-14アリール-カルバモイル基、スルファモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-スルファモイル基及びモノ-又はジ-C6-14アリール-スルファモイル基から選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよいC7-16アラルキルオキシ基;
(12)ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-アミノ基、C6-14アリール基、モノ-又はジ-C6-14アリール-アミノ基、C3-8シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシ-C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C1-6アルキルスルフィニル基、C1-6アルキルスルホニル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-又はジ-C6-14アリール-カルバモイル基、スルファモイル基、モノ-又はジ-C1-6アルキル-スルファモイル基及びモノ-又はジ-C6-14アリール-スルファモイル基から選ばれる1ないし3個の置換基で置換されていてもよい複素環基(好ましくはフリル、ピリジル、チエニル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル);
(13)モノ-又はジ-C1-6アルキル-アミノ基;
(14)モノ-又はジ-C6-14アリール-アミノ基;
(15)モノ-又はジ-C7-16アラルキル-アミノ基;
(16)N-C1-6アルキル-N-C6-14アリール-アミノ基;
(17)N-C1-6アルキル-N-C7-16アラルキル-アミノ基;
(18)C3-8シクロアルキル基;
(19)置換されていてもよいC1-6アルコキシ基;
(20)置換されていてもよいC1-6アルキルチオ基;
(21)C1-6アルキルスルフィニル基;
(22)C1-6アルキルスルホニル基;
(23)エステル化されていてもよいカルボキシル基;
(24)C1-6アルキル-カルボニル基;
(25)C3-8シクロアルキル-カルボニル基;
(26)C6-14アリール-カルボニル基;
(27)カルバモイル基;
(28)チオカルバモイル基;
(29)モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイル基;
(30)モノ-又はジ-C6-14アリール-カルバモイル基;
(31)モノ-又はジ-5ないし7員複素環-カルバモイル基;
(32)スルファモイル基;
(33)モノ-又はジ-C1-6アルキル-スルファモイル基;
(34)モノ-又はジ-C6-14アリール-スルファモイル基;
(35)カルボキシル基で置換されていてもよいC1-6アルキル-カルボニルアミノ基(例:アセチルアミノ、プロピオニルアミノ);
(36)複素環オキシ基;
などから選ばれる1ないし5個の置換基をそれぞれ置換可能な位置に有していてもよい、「C3-8シクロアルキル基」、「C6-14アリール基」、「C7-16アラルキル基」、「複素環基」、「複素環オキシ基」、「C6-14アリールオキシ基」、「C7-16アラルキルオキシ基」、「複素環チオ基」、「C6-14アリールチオ基」および「C7-16アラルキルチオ基」が挙げられる。
【0073】
本明細書中の「置換されていてもよいアミノ基」としては、特に断りのない限り、
(1)置換されていてもよいC1-6アルキル基;
(2)置換されていてもよいC2-6アルケニル基;
(3)置換されていてもよいC2-6アルキニル基;
(4)置換されていてもよいC3-8シクロアルキル基;
(5)置換されていてもよいC6-14アリール基;
(6)置換されていてもよいC1-6アルコキシ基;
(7)置換されていてもよいアシル基;
(8)置換されていてもよい複素環基(好ましくはフリル、ピリジル、チエニル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル);
(9)スルファモイル基;
(10)モノ-又はジ-C1-6アルキル-スルファモイル基;
(11)モノ-又はジ-C6-14アリール-スルファモイル基;
などから選ばれる1または2個の置換基で置換されていてもよいアミノ基が挙げられる。また、「置換されていてもよいアミノ基」が2個の置換基で置換されたアミノ基である場合、これらの置換基は、隣接する窒素原子とともに、含窒素複素環を形成していてもよい。該「含窒素複素環」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に少なくとも1個の窒素原子を含み、さらに酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1ないし2個のヘテロ原子を含有していてもよい5ないし7員の含窒素複素環が挙げられる。該含窒素複素環の好適な例としては、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、チアゾリジン、オキサゾリジンなどが挙げられる。
【0074】
本明細書中の「置換されていてもよいアシル基」としては、特に断りのない限り、式:-COR 7 、-CO-OR 7 、-SO2 7 、-SOR 7 、-PO(OR 7 )(OR 8 )、-CO-NR 7a 8a 及び-CS-NR 7a 8a [式中、R 7 およびR 8 は、同一または異なって、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよい複素環基を示し、R 7a およびR 8a は、同一または異なって、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよい複素環基を示すか、R 7a およびR 8a は、隣接する窒素原子とともに、置換されていてもよい含窒素複素環を形成していてもよい]で表される基などが挙げられる。
【0075】
7a およびR 8a が隣接する窒素原子とともに形成する「置換されていてもよい含窒素複素環」における「含窒素複素環」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に少なくとも1個の窒素原子を含み、さらに酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1ないし2個のヘテロ原子を含有していてもよい5ないし7員の含窒素複素環が挙げられる。該含窒素複素環の好適な例としては、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、チアゾリジン、オキサゾリジンなどが挙げられる。
【0076】
該含窒素複素環は、置換可能な位置に1ないし2個の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基などが挙げられる。
【0077】
「置換されていてもよいアシル基」の好適な例としては、
ホルミル基;
カルボキシル基;
カルバモイル基;
1-6アルキル-カルボニル基;
1-6アルコキシ-カルボニル基;
3-8シクロアルキル-カルボニル基;
6-14アリール-カルボニル基;
7-16アラルキル-カルボニル基;
6-14アリールオキシ-カルボニル基;
7-16アラルキルオキシ-カルボニル基;
モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイル基;
モノ-又はジ-C6-14アリール-カルバモイル基;
モノ-又はジ-C3-8シクロアルキル-カルバモイル基;
モノ-又はジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基;
1-6アルキルスルホニル基;
ニトロ基で置換されていてもよいC6-14アリールスルホニル基;
含窒素複素環-カルボニル基;
1-6アルキルスルフィニル基;
6-14アリールスルフィニル基;
チオカルバモイル基;
スルファモイル基;
モノ-又はジ-C1-6アルキル-スルファモイル基;
モノ-又はジ-C6-14アリール-スルファモイル基;
モノ-又はジ-C7-16アラルキル-スルファモイル基;
などが挙げられる。
【0078】
以下に、式(I)中の各記号の定義について詳述する。
【0079】
1 は、R 6 -SO2-(R 6 は置換基を示す)または置換されていてもよい1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基を示す。
【0080】
ここで、R 6 で示される「置換基」としては、「置換されていてもよい炭化水素基」、「置換されていてもよい複素環基」、「置換されていてもよいヒドロキシ基」、「置換されていてもよいアミノ基」、「置換されていてもよいメルカプト基」、「シアノ基」、「置換されていてもよいアシル基」、「ハロゲン原子」などが挙げられる。
【0081】
6 は、好ましくは置換されていてもよい炭化水素基であり、より好ましくはC1-6アルキル基(好ましくはメチル、エチル)である。
【0082】
1 で示される「置換されていてもよい1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基」における「1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基」は、置換可能な位置に置換基を、例えば、1ないし5個、好ましくは1ないし3個有していてもよい。該「置換基」としては、前記「置換されていてもよいC3-8シクロアルキル基」における置換基として例示したものが用いられる。「1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基」が置換基を2個以上有する場合、各置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0083】
該「置換基」は、好ましくは、ヒドロキシ基などである。
【0084】
1 は、好ましくは、ヒドロキシ基などから選ばれる1ないし3個の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、C1-6アルキルスルホニル基(好ましくは、メチルスルホニル、エチルスルホニル)、または1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基であり、より好ましくは、C1-6アルキルスルホニル基(好ましくは、メチルスルホニル、エチルスルホニル)、またはヒドロキシ基で置換されていてもよい1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基である。
【0085】
別の態様として、R 1 は、好ましくは、R 6 -SO2-(R 6 は置換基を示す)であり、より好ましくは、C1-6アルキルスルホニル基(好ましくは、メチルスルホニル、エチルスルホニル)である。
【0086】
Xは、結合手または2価の炭化水素基を示す。
【0087】
Xで示される「2価の炭化水素基」としては、例えば、2価の鎖状炭化水素基、2価の環状炭化水素基、2価の鎖状-環状炭化水素基が挙げられ、具体的には、
(1)C1-10アルキレン基(例、-CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-CHCH-、-C(CH-、-(CH(CH))-、-(CHC(CH-、-(CHC(CH-);
(2)C2-10アルケニレン基(例、-CH=CH-、-CH-CH=CH-、-CH=CH-CH-、-CH=CH-CH-CH-、-C(CH-CH=CH-、-CH-CH=CH-CH-、-CH-CH-CH=CH-、-CH=CH-CH=CH-、-CH=CH-CH-CH-CH-);
(3)C2-10アルキニレン基(例、-C≡C-、-CH-C≡C-、-CH-C≡C-CH-CH-);
(4)C3-8シクロアルキレン基(例、1,2-シクロプロピレン、1,3-シクロブチレン、1,3-シクロペンチレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘプチレン、1,5-シクロオクチレン);
(5)C6-14アリーレン基(例、フェニレン(例、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン)、ナフチレン(例、1,2-ナフチレン、1,3-ナフチレン、1,4-ナフチレン、1,5-ナフチレン、1,6-ナフチレン、1,7-ナフチレン、1,8-ナフチレン、2,3-ナフチレン、2,6-ナフチレン、2,7-ナフチレン)、ビフェニレン(例、2,2’-ビフェニレン、3,3’-ビフェニレン、4,4’-ビフェニレン)など。該C6-14アリーレンは、部分的に飽和されていてもよく、部分的に飽和されたC6-14アリーレンとしては、例えば、テトラヒドロナフチレンなどが挙げられる。);
(6)上記(1)ないし(5)から選ばれる任意の2種の組み合わせ(例、メチレン-フェニレン、フェニレン-メチレン、エチレン-フェニレン、フェニレン-エチレン、メチレン-シクロへキシレン、シクロへキシレン-メチレン、メチレン-ナフチレン、ナフチレン-メチレン);
などが挙げられる。
【0088】
Xは、好ましくは、結合手またはC1-10アルキレン基(好ましくは、C1-6アルキレン基であり、より好ましくは、直鎖C1-3アルキレン基である。)であり、より好ましくは、C1-6アルキレン基(好ましくは、直鎖C1-3アルキレン基、より好ましくは-(CH-)である。
【0089】
2 およびR 3 は、同一または異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよいヒドロキシ基を示す。
【0090】
2 およびR 3 は、好ましくは、同一または異なって、それぞれ
水素原子;
ハロゲン原子;または
1-6アルキル基(好ましくは、メチル)
であり、より好ましくは共に水素原子である。
【0091】
4 およびR 5 は、同一または異なって、それぞれヒドロキシ基で置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。
4 およびR 5 は、好ましくは、同一または異なって、それぞれC1-6アルキル基であり、より好ましくは共にメチルである。
【0092】
環Aは、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいヒドロキシ基および置換されていてもよいアミノ基から選ばれる置換基をさらに有していてもよいベンゼン環を示す。
【0093】
環Aは、好ましくは、
ハロゲン原子;
1ないし3個のC6-14アリールオキシ基(好ましくは、フェノキシ)で置換されていてもよいC1-6アルキル基;
1ないし3個のC6-14アリール基(好ましくは、フェニル)で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基;および
6-14アリールオキシ基(好ましくは、フェノキシ)
から選ばれる置換基を1ないし3個さらに有していてもよいベンゼン環であり、より好ましくは、ハロゲン原子、C1-6アルキル基およびC1-6アルコキシ基から選ばれる置換基を1ないし3個さらに有していてもよいベンゼン環であり、特に好ましくは、無置換のベンゼン環である。
【0094】
環Bは、5ないし7員環を示す。
【0095】
環Bで示される「5ないし7員環」としては、例えば、ベンゼン環、5ないし7員の芳香族複素環などの5ないし7員の芳香環や、5ないし7員の脂環式炭化水素、5ないし7員の非芳香族複素環などの5ないし7員の非芳香環が挙げられる。
【0096】
5ないし7員の芳香族複素環としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含む5ないし7員の単環式芳香族複素環が挙げられる。
【0097】
該単環式芳香族複素環の好適な例としては、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジンなどが挙げられる。
【0098】
5ないし7員の脂環式炭化水素としては、炭素数5ないし7の飽和または不飽和の脂環式炭化水素、例えば、C5-7シクロアルカン、C5-7シクロアルケンなどが挙げられる。
【0099】
5-7シクロアルカンの好適な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどが挙げられる。
【0100】
5-7シクロアルケンの好適な例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテンなどが挙げられる。
【0101】
5ないし7員の非芳香族複素環としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含む5ないし7員の単環式非芳香族複素環が挙げられる。
【0102】
該単環式非芳香族複素環の好適な例としては、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、ピロリン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ヘキサメチレンイミン、オキサゾリジン、オキサゾリン、チアゾリジン、チアゾリン、イミダゾリジン、イミダゾリン、アゼパン、オキセパン、テトラヒドロピリジン、ジヒドロピリジンなどが挙げられる。
【0103】
環Bは、好ましくは、5ないし7員の単環式非芳香族複素環であり、さらに好ましくは、テトラヒドロフランである。即ち、
【0104】
【化3】
【0105】
で示される環が、
【0106】
【化4】
【0107】
であり、特に好ましくは、
【0108】
【化5】
【0109】
である。
【0110】
Yは、結合手またはCHを示す。
Yは、好ましくはCHである。
【0111】
Rは、置換されていてもよいヒドロキシ基を示す。
ここで、「置換されていてもよいヒドロキシ基」が有していてもよい「置換基」は、好ましくは、C1-6アルキル基である。
【0112】
Rは、好ましくは、
ヒドロキシ基;または
1-6アルコキシ基(好ましくは、メトキシ)
であり、より好ましくは、ヒドロキシ基である。
式(I)中、部分構造式:
【0113】
【化6】
【0114】
は、好ましくは、(2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-3-イル)酢酸、すなわち、
【0115】
【化7】
【0116】
である。とりわけ、((3S)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-3-イル)酢酸の部分構造を有する化合物(I)は、優れたGPR40受容体アゴニスト活性を有するため、好ましい。
【0117】
化合物(I)の好適な例としては、以下の化合物A~Cが挙げられる。特に、化合物Cの一つである[(3S)-6-({2',6'-ジメチル-4'-[3-(メチルスルホニル)プロポキシ]ビフェニル-3-イル}メトキシ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-3-イル]酢酸(ファシグリファム)は、本発明におけるGPR40アゴニストとして好ましい。
【0118】
[化合物A]
が、
ヒドロキシ基などから選ばれる1ないし3個の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、
1-6アルキルスルホニル基(好ましくは、メチルスルホニル、エチルスルホニル)、または1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基であり
[Rは、好ましくは、C1-6アルキルスルホニル基(好ましくは、メチルスルホニル、エチルスルホニル)、またはヒドロキシ基で置換されていてもよい1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基である。];
Xが、結合手またはC1-6アルキレン基(好ましくは、直鎖C1-3アルキレン基)であり;
およびRが、同一または異なって、それぞれ
水素原子;
ハロゲン原子;または
1-6アルキル基(好ましくは、メチル)であり;
およびRが、同一または異なって、それぞれC1-6アルキル基(好ましくは、メチル)であり;
環Aが、ハロゲン原子、C1-6アルキル基およびC1-6アルコキシ基から選ばれる置換基を1ないし3個さらに有していてもよいベンゼン環(好ましくは、無置換のベンゼン環)であり;
環Bが、5ないし7員の単環式非芳香族複素環(好ましくは、テトラヒドロフラン)であり;
Yが、CHであり;かつ
Rが、ヒドロキシ基またはC1-6アルコキシ基である
[Rは、好ましくは、ヒドロキシ基である。];
化合物(I)。
【0119】
[化合物B]
が、
ヒドロキシ基などから選ばれる1ないし3個の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、
1-6アルキルスルホニル基(好ましくは、メチルスルホニル、エチルスルホニル)、または1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基であり
[Rは、好ましくは、C1-6アルキルスルホニル基(好ましくは、メチルスルホニル、エチルスルホニル)、またはヒドロキシ基で置換されていてもよい1,1-ジオキシドテトラヒドロチオピラニル基である。];
Xが、結合手またはC1-6アルキレン基(好ましくは、直鎖C1-3アルキレン基)であり;
およびRが、同一または異なって、それぞれ
水素原子;
ハロゲン原子;または
1-6アルキル基(好ましくは、メチル)であり;
およびRが、同一または異なって、それぞれヒドロキシ基で置換されていてもよいC1-6アルキル基(好ましくは、メチル、エチル)であり
[RおよびRは、好ましくは、同一または異なって、それぞれC1-6アルキル基(好ましくは、メチル)であり];
環Aが、
ハロゲン原子;
1ないし3個のC6-14アリールオキシ基(好ましくは、フェノキシ)で置換されていてもよいC1-6アルキル基;
1ないし3個のC6-14アリール基(好ましくは、フェニル)で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基;および
6-14アリールオキシ基(好ましくは、フェノキシ)
から選ばれる置換基を1ないし3個さらに有していてもよいベンゼン環であり[環Aは、好ましくは、ハロゲン原子、C1-6アルキル基およびC1-6アルコキシ基から選ばれる置換基を1ないし3個さらに有していてもよいベンゼン環であり、特に好ましくは、無置換のベンゼン環である。];
環Bが、5ないし7員の単環式非芳香族複素環(好ましくは、テトラヒドロフラン)であり;
Yが、CHであり;かつ
Rが、ヒドロキシ基またはC1-6アルコキシ基である
[Rは、好ましくは、ヒドロキシ基である。];
化合物(I)。
【0120】
[化合物C]
[(3S)-6-({4'-[(4-ヒドロキシ-1,1-ジオキシドテトラヒドロ-2H-チオピラン-4-イル)メトキシ]-2',6'-ジメチルビフェニル-3-イル}メトキシ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-3-イル]酢酸、
[(3S)-6-({2',6'-ジメチル-4'-[3-(メチルスルホニル)プロポキシ]ビフェニル-3-イル}メトキシ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-3-イル]酢酸、
[(3S)-6-({3'-フルオロ-2',6'-ジメチル-4'-[3-(メチルスルホニル)プロポキシ]ビフェニル-3-イル}メトキシ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-3-イル]酢酸、
[(3S)-6-({3'-クロロ-2',6'-ジメチル-4'-[3-(メチルスルホニル)プロポキシ]ビフェニル-3-イル}メトキシ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-3-イル]酢酸、
[(3S)-6-({3',5'-ジクロロ-2',6'-ジメチル-4'-[3-(メチルスルホニル)プロポキシ]ビフェニル-3-イル}メトキシ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-3-イル]酢酸、および
[(3S)-6-({2',6'-ジエチル-4'-[3-(メチルスルホニル)プロポキシ]ビフェニル-3-イル}メトキシ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-3-イル]酢酸から選ばれる化合物(I)。
【0121】
化合物(I)の塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性又は酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。
【0122】
金属塩の好適な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩などが挙げられる。
【0123】
有機塩基との塩の好適な例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。
【0124】
無機酸との塩の好適な例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。
【0125】
有機酸との塩の好適な例としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。
【0126】
塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
【0127】
上記した塩のなかでも、薬学的に許容し得る塩が好ましい。
【0128】
化合物(I)のプロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸などによる反応により化合物(I)に変換される化合物、すなわち酵素的に酸化、還元、加水分解などを起こして化合物(I)に変化する化合物、胃酸などにより加水分解などを起こして化合物(I)に変化する化合物をいう。
【0129】
化合物(I)のプロドラッグとしては、化合物(I)のアミノ基がアシル化、アルキル化またはリン酸化された化合物(例えば、化合物(I)のアミノ基がエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化またはtert-ブチル化された化合物);化合物(I)の水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化またはホウ酸化された化合物(例えば、化合物(I)の水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、スクシニル化、フマリル化、アラニル化またはジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物);化合物(I)のカルボキシ基がエステル化またはアミド化された化合物(例えば、化合物(I)のカルボキシ基がC1-6アルキルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化またはメチルアミド化された化合物);などが挙げられ、なかでも化合物(I)のカルボキシ基がメチル、エチル、tert-ブチルなどのC1-6アルキル基でエステル化された化合物が好ましく用いられる。これらの化合物は自体公知の方法によって化合物(I)から製造することができる。
【0130】
また、化合物(I)のプロドラッグは、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163頁から198頁に記載されているような生理的条件で本発明化合物に変化するものであってもよい。
【0131】
化合物(I)に立体異性体が存在する場合には、この異性体が単独の場合及びそれらの混合物の場合も本発明に含まれる。
【0132】
また、化合物(I)は、水和物又は非水和物であってもよい。化合物(I)の水和物は、通常、保存安定性に優れる。
【0133】
化合物(I)は同位元素(例、H、14C、35S)などで標識されていてもよい。
【0134】
化合物(I)もしくはその塩、または化合物(I)のプロドラッグは、毒性(例、赤血球数、ヘマトクリット値、ヘモグロビン濃度、MCH、MCHC、MCV、血小板数、白血球数、血中網状赤血球数、白血球分類などの血液学的パラメータ;総蛋白、アルブミン、A/G比、グルコース、総コレステロール、トリグリセリド、尿素窒素、クレアチニン、総ビリルビン、AST、ALT、LDH、ALP、CK、Na、K、Cl、カルシウム、無機リン、レチノール(ビタミンA)などの血液生化学的パラメータに対する影響)が低く、かつ副作用(例:急性毒性、慢性毒性、遺伝毒性、生殖毒性、心毒性、薬物相互作用、癌原性)も少ないため、本発明の医薬組成物の第1成分であるGPR40のアゴニストとして使用する上で好適である。
【0135】
・第2成分:GPR40の内因性リガンドである脂肪酸
「GPR40の内因性リガンドである脂肪酸」としては様々な脂肪酸が知られている。本発明の医薬組成物の第2成分として用いることのできる「GPR40の内因性リガンドである脂肪酸」は特に限定されるものではなく、本発明の作用効果を考慮しながら、公知のものの中から選択することができるが、一般的には、中鎖または長鎖の(炭素原子数が6~22程度の)飽和もしくは不飽和脂肪酸、例えば炭素原子数が12~16の飽和脂肪酸および炭素原子数が18~20の不飽和脂肪酸である。本発明の一実施形態において、第2成分は、γ-リノレン酸、ドコサヘキサエン酸などの炭素原子数が18~20の不飽和脂肪酸が好ましい。不飽和脂肪酸における不飽和結合(二重結合)の位置は、n-3(ω3)、n-6(ω6)、n-9(ω9)またはそれ以外のいずれであってもよく、不飽和結合(二重結合)の数は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つのいずれであってもよい。第2成分として、GPR40の内因性リガンドである脂肪酸のいずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上の脂肪酸を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
中鎖または長鎖の飽和脂肪酸の具体例としては、カプロン酸(ヘキサン酸、6:0)、カプリル酸(オクタン酸、8:0)、ペラルゴン酸(ノナン酸、9:0)、カプリン酸(デカン酸、10:0)、ラウリン酸(ドデカン酸、12:0)、ミリスチン酸(テトラデカン酸、14:0)、ペンタデシル酸(ペンタデカン酸、15:0)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸、16:0)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸、17:0)、ステアリン酸(オクタデカン酸、18:0)、アラキジン酸(イコサン酸、20:0)、ヘンイコシル酸(21:0)、ベヘン酸(ドコサン酸、22:0)が挙げられる。
【0137】
中鎖または長鎖の不飽和脂肪酸の具体例としては、ミリストレイン酸(14:1, n-5)、パルミトレイン酸(16:1, n-7)、サビエン酸(16:1, n-10)、オレイン酸(18:1, n-9, cis)、エライジン酸(18:1, n-9, trans)、バクセン酸(18:1, n-7)、ガドレイン酸(20:1, n-11)、エイコセン酸(20:1, n-9)、エルカ酸(22:1, n-9);リノール酸(18:2, n-6)、エイコサジエン酸(20:2, n-6)、ドコサジエン酸(22:2, n-6);α-リノレン酸(18:3, n-3)、γ-リノレン酸(18:3, n-6)、ピノレン酸(18:3, n-6)、α-エレオステアリン酸(18:3, n-5)、β-エレオステアリン酸(18:3, n-5)、ミード酸(20:3, n-9)、ジホモ-γ-リノレン酸(20:3, n-6)、エイコサトリ塩酸(20:3, n-3);ステアリドン酸(18:4, n-3)、アラキドン酸(20:4, n-6)、エイコサテトラエン酸(20:4, n-6)、アドレン酸(22:4, n-6);ボセオペンタエン酸(18:5, n-4)、エイコサペンタエン酸(20:5, n-3)、オズボンド酸(22:5, n-6)、イワシ酸(22:5, n-3);ドコサヘキサエン酸(22:6, n-3)が挙げられる。
【0138】
・医薬組成物の用途(骨疾患の予防または治療用の医薬組成物)
本発明の医薬組成物は、骨疾患の予防または治療のために使用することができる。「骨疾患」は、より具体的には、破骨細胞の活性または形成(分化)の亢進により、骨吸収が骨形成を上回ることに起因する(少なくとも一因となる)疾患であって、その亢進を抑制することによって予防または治療することのできるものである。そのような骨疾患としては、例えば、骨粗鬆症(閉経後骨粗鬆症、老人性骨粗鬆症、ステロイドやホルモン療法等の治療用薬剤の使用による続発性骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨粗鬆症)、関節リウマチに伴う骨破壊、癌性高カルシウム血症、多発性骨髄腫や癌の骨転移に伴う骨破壊、巨細胞腫、骨減少症、人工関節周囲の骨融解、慢性骨髄炎における骨破壊、骨ページェット病、腎性骨異栄養症、骨形成不全症、歯周病(歯根膜炎等の歯周疾患)による歯槽骨吸収、抜歯後の歯槽骨吸収、歯槽骨造成術後の骨吸収などの疾患、症状または状態が挙げられる。例えば、歯周病(歯根膜炎等の歯周疾患)による歯槽骨吸収、抜歯後の歯槽骨吸収、歯槽骨造成術後の骨吸収、その他の歯槽骨吸収を伴う疾患、症状または状態(本明細書において「歯槽骨吸収関連疾患等」と呼ぶ。)は、本発明の医薬組成物による予防または治療の対象として好ましい骨疾患である。
【0139】
本明細書中、「治療」とは、病態を完全に治癒させることの他、完全に治癒しなくても症状の進展及び/又は悪化を抑制し、病態の進行をとどめること、又は病態の一部若しくは全部を改善して治癒の方向へ導くことを意味し、「予防」とは、病態の発症を防ぐこと、抑制すること又は遅延させることを意味する。
【0140】
本発明の医薬組成物〔a pharmaceutical composition〕は、各国の法制度に従って、上記のような治療または予防の効果を標榜した製品、例えば医薬品〔a drug〕、または医薬品と化粧品〔a cosmetic〕の中間的な位置づけである医薬部外品〔a quasi-drug〕(薬用化粧品)などの分類に従った製品とすることができる。
【0141】
本発明の医薬組成物は、公知ないし周知慣用の技術に従って、予防または治療の対象とする骨疾患に応じて、適切な剤型に製剤化される。本発明の医薬組成物の剤型としては、例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などの経口剤;および注射剤(例:皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤)、外用剤(例:経皮製剤、外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤)、坐剤(例:直腸坐剤、膣坐剤)、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)、点眼剤などの非経口剤が挙げられる。これらの製剤は、速放性製剤または徐放性製剤などの放出制御製剤(例:徐放性マイクロカプセル)であってもよい。
【0142】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の医薬組成物は、歯周病等の歯槽骨吸収関連疾患を予防または治療するためのものとして製剤化される。そのような医薬組成物は、口腔内の歯槽骨吸収関連疾患が起きている、または起こりえる部位への局所的な投与に適した剤型、例えば外用剤(マウスウォッシュ、練り歯磨き、歯磨き粉等を含む。)、錠剤、トローチ剤、注射剤として調製することが好ましい。例えば、本発明の医薬組成物を外用剤として調製する場合は、アパタイトなどを基剤(マトリックス)とし、そこに各有効成分を混合してペースト状となるように製剤化したり、ヒドロキシプロピルセルロースなどの高分子化合物を基剤とし、そこに各有効成分を混合して粘稠性を有する外用液剤としたりすることができる。本発明による、歯周病等の歯槽骨吸収関連疾患を予防または治療するための医薬組成物は、市販品として販売されるものであってもよいし、歯周病に関連する手術や処置(歯周組織再生療法、光殺菌治療、メンテナンスなど)において医療機関等で使用されるものであってもよい。
【0143】
本発明の医薬組成物は、哺乳動物における骨疾患を対象とすることができる。哺乳動物には、ヒトおよびヒト以外の哺乳動物(非ヒト哺乳動物)、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、サルなどが包含される。
【0144】
本発明の医薬組成物は、必要に応じて、第1成分および第2成分以外の、骨疾患の予防または治療にとって有効なさらなる成分を含有していてもよい。換言すれば、本発明の医薬組成物において、第1成分および第2成分は、公知の骨疾患治療薬(成分)と併用することができる。
【0145】
公知の骨疾患治療薬としては、例えば、ビスホスフォネート(例:alendronate、etidronate、ibandronate、incadronate、pamidronate、risedronate、zoledronate)、活性型ビタミンD3、カルシトニンおよびその誘導体、エストラジオール等のホルモン、SERMs(selective estrogen receptor modulators)、イプリフラボン、ビタミンK2(メナテトレノン)、カルシウム製剤、PTH(parathyroid hormone)、非ステロイド性抗炎症剤(例:celecoxib、rofecoxib)、可溶性TNFレセプター(etanercept等)、抗TNFα抗体または該抗体の抗原結合断片(例:infliximab)、抗PTHrP(parathyroid hormonerelated protein)抗体または該抗体の抗原結合断片、IL-1レセプターアンタゴニスト(例:anakinra)、抗IL-6レセプター抗体または該抗体の抗原結合断片(例:tocilizumab)、抗RANKL抗体または該抗体の抗原結合断片(例:denosumab)、およびOCIF(osteoclastogenesis inhibitory factor)等を挙げることができる。
【0146】
例えば、本発明の医薬組成物が歯槽骨吸収関連疾患の予防または治療用の医薬組成物として調製される場合は、前記さらなる成分として、歯周病等の予防または治療にとって有効な公知の成分(歯周病治療剤)を、本発明の第1成分および第2成分と併用することが可能である。歯周病治療剤としては、例えば、抗菌剤(アモキシシリン、オーグメンチン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、クラリスロマイシン、レボフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾールなど)、抗炎症剤(トラネキサム酸、イプシロン-アミノカプロン酸、アズレン、アラトイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、グリチルレチン塩類、グリチルレチン酸類、ジヒドロコレステロール、ヒドロコレステロールなど)、殺菌剤(塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール、次亜塩素酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ラウロイルサルコシン塩、ヒノキチオールなど)、血行促進剤(ニコチン酸トコフェロール、塩酸ビリドキシン、酢酸トコフェロールなど)、歯周組織再生剤(トラフェルミン製剤)「リグロス」(登録商標、科研製薬株式会社)、光感光性ジェルなどが挙げられる。
【0147】
本発明の医薬組成物は通常、公知ないし周知慣用の技術に従って、第1成分および第2成分(さらに必要に応じてそれ以外の有効成分)と、薬理学的に許容される基剤(担体、マトリックス)および必要に応じてその他の添加剤とを含有する医薬組成物(製剤)として調製される。各種の基材および添加剤の医薬組成物中の配合量は、従来の公知ないし周知慣用の医薬組成物に準じて、本発明においても適宜調節することができる。
【0148】
薬理学的に供される基剤は、各種の剤型の医薬組成物において一般的に用いられているものを本発明においても用いることができ、例えば、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤、ペースト状製剤における研磨剤、湿潤剤、粘結剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0149】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。
【0150】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどが挙げられる。
【0151】
結合剤としては、例えば、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが挙げられる。
【0152】
崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L-ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
【0153】
溶剤としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油などが挙げられる。
【0154】
溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0155】
懸濁化剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリンなどの界面活性剤;例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性高分子などが挙げられる。
【0156】
等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、D-ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトールなどが挙げられる。
【0157】
緩衝剤としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液などが挙げられる。
【0158】
無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0159】
研磨剤としては、例えば、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ゼオライト、ジルコノシリケート、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、酸化チタン、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂系研磨剤などが挙げられる。
【0160】
湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、トレハロース、トルナーレなどが挙げられる。
【0161】
粘結剤としては、例えば、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、タラガム、グアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ゼラチン、カードラン、アラビアガム、寒天、ペクチンなどが挙げられる。
【0162】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルタウリン、アシルアミノ酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-スルホ脂肪酸アルキルエステル・ナトリウム、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの酢酸ベタイン型両性界面活性剤、N-脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩などのイミダゾリン型両性界面活性剤、N-脂肪酸アシル-L-アルギネート塩等のアミノ酸型界面活性剤などが挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー型活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライドなどが挙げられる。
【0163】
必要に応じて用いられる添加剤も、各種の剤型の医薬組成物において一般的に用いられているものを本発明においても用いることができ、例えば、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤が挙げられる。
【0164】
防腐剤としては、例えば、パラヒドロキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。
【0165】
抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α-トコフェロールなどが挙げられる。
【0166】
着色剤としては、例えば、水溶性食用タール色素(例:食用赤色2号および3号、食用黄色4号および5号、食用青色1号および2号などの食用色素)、水不溶性レーキ色素(例:前記水溶性食用タール色素のアルミニウム塩)、天然色素(例:β-カロチン、クロロフィル、ベンガラ)などが挙げられる。
【0167】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビアなどが挙げられる。
【0168】
本発明の医薬組成物(第1成分、第2成分および必要に応じて用いられるその他の有効成分それぞれ)の一日投与量は、骨疾患の種類、症状の程度;投与対象の動物種、年齢、性別、体重、感受性差;投与の方法、経路、時期、間隔、医薬組成物の剤型;有効成分の種類などによって異なり、特に限定されない。例えば、本発明の医薬組成物をヒトにおける骨疾患の予防または治療用のものとして調製する場合、当業者であれば過度の試行錯誤を要することなく、その骨疾患のモデル動物を用いた実験やヒトに対する臨床試験などを通じて、ヒトに投与する場合の適切な投与方法や一日投与量を決定したり、予防または治療の有効性や安全性を評価したりすることが可能である。
【0169】
本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、in vitroにおいて造血幹細胞から破骨細胞への分化を抑制する作用効果を奏する。このような実施形態において、第1成分(GPR40アゴニスト)の培地中の濃度は、例えば0.1~100μMの範囲とすることができ、第2成分(GPR40の内因性リガンド)の培地中の濃度は、例えば0.1~1000μMの範囲とすることができる。なお、破骨細胞への分化の抑制は、例えば、培養後の細胞における破骨細胞マーカー遺伝子(Ctsk, Calcr, TRAP等の少なくとも1つ)の発現量の低下によって確認することができる。本発明の医薬組成物を製剤化する際は、上記のような培地中の濃度も参酌して、医薬組成物中の第1成分および第2成分の含有量や、一日投与量を調節することができる。
【0170】
本発明の医薬組成物は、少なくとも第1成分および第2成分を含有し、必要に応じてさらにその他の有効成分を含有することもできるが、これらの成分は単一の製剤中に含有されていてもよいし、別個の(2つ以上の)製剤中に含有されていてもよい。すなわち、本発明の医薬組成物は、(i)各有効成分が単一の製剤によって同一の投与経路で同時に投与されるもの、(ii)各有効成分が複数の製剤によって同一の投与経路で同時に投与されるもの、(iii)各有効成分が複数の製剤によって同一の投与経路で時間差をおいて投与されるもの、(iv)各有効成分が複数の製剤によって複数の投与経路で同時に投与されるもの、(v)各有効成分が複数の製剤によって複数の投与経路で時間差をおいて投与されるもの、のいずれであってもよい。
【0171】
-方法および使用-
本発明の、哺乳動物における骨疾患の予防または治療の方法は、GPR40アゴニストの有効量と、GPR40の内因性リガンドである遊離脂肪酸の有効量とを哺乳動物に投与することを含む。
【0172】
本発明の、GPR40アゴニストと、GPR40の内因性リガンドである遊離脂肪酸との使用は、骨疾患の予防または治療用の医薬組成物を製造するためのものである。
【0173】
本明細書において、本発明の医薬組成物との関係で記載した技術的事項は、上記の本発明による方法および使用との関係においても同様に適用することができる。
【0174】
本発明の医薬組成物、方法および使用は、本明細書における記載に基づいて、さらに他の側面の発明に変換することもできる。例えば、本発明は一側面において、GPR40アゴニストと、GPR40の内因性リガンドである遊離脂肪酸とを使用する(例えば、in vivoまたはin vitroにおいて細胞と接触させる工程を含む)、破骨細胞への分化の抑制方法および/または骨芽細胞への分化の促進方法を提供する。
【実施例
【0175】
以下の実施例において、Fasiglifamは前掲特許文献1(WO2008/001931)に記載の方法で調製したものを用いた。
【0176】
[試験例1]マウスマクロファージ由来細胞の破骨細胞分化に対する抑制効果
破骨細胞は、破骨前駆細胞が骨芽細胞などから産生されるRANKL(receptor activation of nuclear factor-kB ligand)の刺激を受けることにより分化誘導される。破骨前駆細胞であるマクロファージ系細胞において、RANKL存在下で化合物を処置した時の破骨細胞分化に対する抑制効果を検討した。
【0177】
試験にはケー・エー・シー・社より購入したR264.7細胞を用いた。細胞を10% 血清を含むDMEMに懸濁し、6000 cells/wellの濃度で96ウェルプレートに播種して37℃、5%CO2条件下で培養した。一夜培養後、分化培地(50ng/mL RANKL、10% 血清を含むDMEM)に交換し、同時に、10μMの遊離脂肪酸および10μMのFasiglifamを単独もしくは併用で添加した。遊離脂肪酸にはγ-リノレン酸(SIGMA)またはドコサヘキサエン酸(SIGMA)を用いた。1日置きに培地交換および化合物添加を行い、分化培地で培養3日目に培地を除去し、細胞溶解液(buffer RLT, RNeasy, QIAGEN)を添加して5分間混合し、サンプルを回収した。各サンプルからRNeasy 96 kit(QIAGEN)を使用してRNAを抽出し、DNase処理後にtotal RNAを得た。得られたtotal RNAはSuperScript IV(Thermo Fisher)を使用してcDNAに逆転写した後、破骨細胞のマーカー遺伝子(Ctsk, Calcr)の発現を定量的PCR(ViiA7, Applied Biosystems)により測定した。PCR bufferにはTaqMan Fast Advanced Master Mix (Applied Biosystems)を、各遺伝子に相補的なprimerおよびprobeはTaqMan Gene Expression Assays (Applied Biosystems)を使用した。各遺伝子の発現量はβ-actinの発現量で補正し、RANKL非添加群の発現量を1.0とした時の相対値で示した。
【0178】
結果は図1に示される通りであった。遊離脂肪酸単独処置に比べ、遊離脂肪酸とFasiglifamを併用することにより、破骨細胞分化に対する抑制作用の増強が認められた。
図1