(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】血流認証装置
(51)【国際特許分類】
G06V 40/145 20220101AFI20240621BHJP
A61B 5/1171 20160101ALI20240621BHJP
【FI】
G06V40/145
A61B5/1171 100
(21)【出願番号】P 2021066935
(22)【出願日】2021-04-12
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2020075178
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501078085
【氏名又は名称】バイオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】須下 幸三
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110807447(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109409293(CN,A)
【文献】特開2005-128935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06V 40/145
A61B 5/1171
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指を挿入する挿入孔が設けられる筐体と、
前記挿入孔の内壁面に前記指の掌側を接触させることなく、前記内壁面に前記指の甲側 を接触させて挿入される前記指の甲側に対して、前記筐体の内部に近赤外光を照射する 近赤外光源と、
前記挿入孔の中に紫外光を照射する紫外光源と、
前記指を透過した前記近赤外光源から照射される近赤外光を前記近赤外光源と対向する 位置にて撮像する撮像部と、
前記内壁面に接触される前記指の指先に対応した位置に設置され、前記指先の当接に より前記指先の位置決めを行うとともに、前記指先の接触を検知する指先検知センサと 、
前記内壁面に接触される前記指の指元に対応した位置に設置され、前記指元の接触を検 知する指元検知センサと、
前記挿入孔を開閉自在に覆う蓋部を備える血流認証装置用端末機器を有し、
前記蓋部が開かれているときに前記
紫外光源を消灯し、前記蓋部が閉められているとき に前記
紫外光源を点灯する制御を行うことを特徴とする血流認証装置。
【請求項2】
前記血流認証装置用端末機器が、前記紫外光源からの紫外線を受光し、前記挿入孔の 中に前記紫外線を反射可能である位置に設置された光反射部材を備えることを特徴とす る請求項1に記載の血流認証装置。
【請求項3】
前記血流認証装置用端末機器において、前記紫外光源が、挿入される前記指の甲側又 は掌側の少なくとも一方に設置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記 載の血流認証装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の指を透過した光を撮像して得られる血管パターンを利用して個人認証を行う血流認証装置用端末機器及び血流認証装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、個人認証を行う個人認証技術として指紋認証が公知であるが、他人の指紋は偽造が可能であるという問題から、血管パターンに基づく血流認証が発達してきている。
【0003】
当該血流認証は、血管パターンが個々に独立しており、同形状のものが存在しないとされている。また、血管が外見から判断し難いことから、偽造が困難であり、高精度にて認証することができるものである。
【0004】
例えば、特許文献1には、指を載置する基台と、基台の一端に位置し基台に載置した指の指先の前方に設置され、指先前方から指の甲に向けて指先から指元まで光を照射する光源と、基台に載置した指の腹側で指の直下に対応して基台に設置され、光源から出射した照射光が指を透過して得られるこの指の血管像を撮像する撮像装置とを備える血流認証装置用端末機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された血流認証装置用端末機器では、複数の使用者が出入りする住宅用建物やオフィスなどで使用されたときに、内部において使用者の指が接触ために、ウイルスや細菌などの病原体が付着していると、使用者の指に付着させて感染させるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するものであって、複数の使用者が出入りする住宅用建物やオフィスなどで共用される場合でも、使用者にウイルスや細菌などの病原体を蔓延させない衛生的な血流認証装置用端末機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔1〕本発明は、指(F)を挿入する挿入孔(21)が設けられる筐体(20)と、 前記挿入孔(21)の内壁面に前記指(F)の掌側を接触させることなく、前記内壁面 に前記指(F)の甲側(F1)を接触させて挿入される前記指(F)の甲側に対して、 前記筐体(20)の内部に近赤外光を照射する近赤外光源(30)と、前記挿入孔(2 1)の中に紫外光を照射する紫外光源(31)と、前記指(F)を透過した前記近赤外 光源(30)から照射される近赤外光を前記近赤外光源(30)と対向する位置にて撮 像する撮像部(40)と、前記内壁面に接触される前記指(F)の指先に対応した位置 に設置され、前記指先の当接により前記指先の位置決めを行うとともに、前記指先の接 触を検知する指先検知センサ(50)と、前記内壁面に接触される前記指(F)の指元 (F5)に対応した位置に設置され、前記指元(F5)の接触を検知する指元検知セン サ(60)と、前記挿入孔(21)を開閉自在に覆う蓋部(24)を備える血流認証装 置用端末機器(10)を有し、前記蓋部(24)が開かれているときに前記紫外光源
(31)を消灯し、前記蓋部(24)が閉められているときに前記紫外光源(31)を 点灯する制御を行うことを特徴とする血流認証装置である。
【0009】
〔2〕そして、前記血流認証装置用端末機器(10)が、前記紫外光源(31)から の紫外線を受光し、前記挿入孔(21)の中に前記紫外線を反射可能である位置に設置 された光反射部材(80)を備えることを特徴とする前記〔1〕に記載の血流認証装置 である。
【0010】
〔3〕そして、前記血流認証装置用端末機器(10)において、前記紫外光源(31 )が、挿入される前記指(F)の甲側(F1)又は掌側(F2)の少なくとも一方に設 置されていることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の血流認証装置である 。
【発明の効果】
【0012】
本発明の血流認証装置用端末機器では、複数の使用者が出入りする住宅用建物やオフィスなどで共用される場合でも、使用者にウイルスや細菌などの病原体を蔓延させない衛生的な状態を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第一実施形態における血流認証装置用端末機器の使用時における縦断面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態における血流認証装置用端末機器の未使用時(殺菌時)における縦断面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態における血流認証装置用端末機器の使用時におけるA-A断面図である。
【
図4】本発明の第一実施形態における血流認証装置用端末機器の使用時におけるB-B断面図である。
【
図5】本発明の第一実施形態における血流認証装置用端末機器を用いた血流認証装置において、血流認証のプロセスを示すフローチャート図である。
【
図6】本発明の第一実施形態における血流認証装置用端末機器を用いた血流認証装置において、殺菌のプロセスを示すフローチャート図である。
【
図7】本発明の第二実施形態における血流認証装置用端末機器の使用時における縦断面図である。
【
図8】本発明の第二実施形態における血流認証装置用端末機器の未使用時(殺菌時)における縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態における血流認証装置用端末機器を図面に基づいて説明する。当該血流認証装置用端末機器を用いる血液認証装置は、被認証者の指の甲側を上方側に配置し、掌側を下方側に配置した状態で筐体の挿入孔に挿入し、当該挿入孔における内壁面の上方側に指の甲側を当接させた状態で血管パターンを撮像し、認証を行うものである。
【0015】
本発明に係る血流認証装置用端末機器10は、被認証者の血管パターンの認証、近赤外光源、紫外光源、指検知センサ、撮像装置等の制御、登録した又は撮像した血管パターンの記憶、マッチング処理等を行う認証制御装置(図示しない)に接続されて血流認証装置を構成する。血流認証装置用端末機器は、第一の実施形態である
図1から
図4、又は第二の実施形態である
図7、
図8に示すように、主に、血液パターンを撮像する被認証者の指Fを挿入する筐体20、赤外光源30、紫外光源31、撮像装置40などを備えている。
【0016】
筐体20には、血液パターンを撮像する被認証者の指Fを挿入する挿入孔21が設けられる。
図1から
図4に示すように、当該筐体20には、挿入される指Fの甲側F1である挿入孔21の上方側に近赤外光源30及び紫外光源31となるLEDが挿入孔21の軸方向に沿って配置されて内包されている。または、
図7、
図8に示すように、当該筐体20には、挿入される指Fの甲側F1である挿入孔21の上方側に近赤外光源30となるLEDが挿入孔21の軸方向に沿って複数配置されて内包され、そして、挿入される指Fの掌側F2である挿入孔21の下方側に紫外光源31となるLEDが配置されている。一方、筐体20において、挿入孔21の下方側には近赤外線光源30と対向する位置にて撮像装置40が配置される。
【0017】
また、挿入孔21の上方側に位置する内壁面には、近赤外光源30から照射される近赤外等が透光可能なアクリル等の合成樹脂製の透光板22を介在させており、被認証者の指Fが近赤外光源30、紫外光源31に直接接触することを防止している。さらに、筐体20の外部には、挿入孔21を開閉自在に覆う蓋部24が付設されており、被認証者の指Fを挿入孔21に挿入していなときは、蓋部24が挿入孔21を覆っており、使用時に蓋部24が回動やスライド移動など動かされることにより挿入孔21が現れることとなる。後述するように、蓋部24を有することにより、その開閉によって紫外光源31の点灯及び消灯のタイミングを計り、また、紫外光源31の点灯中に紫外光が筐体20の内部から漏れ出ないようにしている。
【0018】
更に、筐体20の上方側に位置する内壁面には、
図2、
図8に示すように、挿入孔21の軸方向に沿って配置される近赤外光源30を中心として、左右一対の支持部23が下方に突設して設けられる。
【0019】
支持部23は、血流認証を行う被認証者の指Fの両側面を支持するものである。具体的には、被認証者の指Fが近赤外光源30、紫外光源31の直下に位置し、筐体20における挿入孔21の内壁面と被認証者の指Fの甲側F1が接触した状態で、当該指Fの両側面を支持するものである。
【0020】
当該支持部23は、左右一対から構成されるものであり、両者は所定の間隙を有した状態で挿入孔21の内壁面に沿って突設して設置される。すなわち、挿入孔21の形状によっては、当該軸方向に対して直線状であってもよいし、曲線状であってもよいものである。また、支持部23は、指Fの長手方向の略全長に対応した長さで形成されるとともに、指Fと当接する部分が指の側面に沿うように略円弧状に形成されることが望ましい。このようにして形成される支持部23は、可視光及び近赤外光を遮光する材料にて形成される。これにより、近赤外光源30から撮像装置40への光の回り込みを低減することができ、撮像時におけるハレーションが生じるのを抑制することができる。
【0021】
また、支持部23は、認証する1本の指Fを支持するものであるが、当該支持部23の片側又は両側にも同様の支持部を設けることもできる。このように、複数の支持部を設けることで、認証を行う指F以外の隣接する他の指を支持することができる。これにより、支持部に支持された指Fが当該指Fの軸に沿って回動する、いわゆるローリングを防止することができる。ローリングを防止することで、撮像画像の一定化を図ることができ、より鮮明な血管パターンを撮像することができる。
【0022】
また、挿入孔21に挿通される指Fの指先に対応した位置には指先検知センサ50が設けられ、当該指Fの指元F5に対応した位置には指元検知センサ60が設けられる。また、筐体20において、撮像装置40の上方には近赤外光以外の光を透過しないフィルタ70が設けられる。
【0023】
近赤外光源30は、先端部に集光レンズを備えたLED等の近赤外光を発光する部材からなる。近赤外光源30から照射される700~2500nmの範囲の波長を有する近赤外光が、被認証者の指Fを透過して被認証者の指Fにおける血管パターンを浮かび上がらせる。近赤外光源30は、挿入される指Fの甲側F1である挿入孔21の上方側に配設されている。第一実施形態および第二実施形態において、近赤外光源30は、筐体20における挿入孔21の軸方向、すなわち指Fの長手方向に沿って、4個のLEDが配列されるが、これに限られるものではない。例えば、4個の個数に限られるものではなく、一体化された細長い形状の発光素子とすることもできる。当該近赤外光源30から照射される光量や照射時間は、光量調節手段によって制御することができる。
【0024】
紫外光源31は、先端部に集光レンズを備えたLED等の紫外光を発光する部材からなる。前記紫外光源から照射される紫外光が、筐体20の内部の指先検知センサ50や透光板22などに付着した菌やウイルスなどの病原体を死滅や不活化する。紫外光源31から照射される紫外光の波長としては、260~285nmであることが好ましい。紫外光の波長がこの範囲であると、とりわけインフルエンザウイルス、コロナウイルス、ノロウイルス、SARSなどのウイルスを約60秒以内には不活化することができるとともに、照射する準備に時間を要さず素早く照射することができる。紫外光源31は、挿入される指Fの甲側F1である挿入孔21の上方側、又は挿入される指Fの掌側F2である挿入孔21の下方側に配設されている。第一実施形態においては、紫外光源31は、近赤外光源30よりも指Fの指先F3側に配置されており、より具体的には複数個設置されている近赤外光源30のうち最も指先F3側に設置されている近赤外光源30よりもさらに指先F3側に1個のLEDが設置されている。また、他の実施形態において、紫外光源31は、1個に限られるものではなく、また、複数の赤外光源30の真ん中などに設置することもできる。そして、第二実施形態においては、紫外光源31は、挿入される指Fの指元F5側に配置されており、より具体的には挿入孔21の開口近傍に1個のLEDが設置されている。また、他の実施形態において、紫外光源31は、同様に1個に限られるものではなく、また、指Fの指先F3側などに設置することもできる。、なお、紫外光源31から照射される光量や照射時間は、光量調節手段によって制御することができる。
【0025】
撮像装置40は、近赤外光源30より照射される光のうち、指F及びフィルタ70を透過して得られる血管を撮像するものである。当該撮像装置40は、撮像素子、レンズを含む光学系、撮像駆動用回路を備えてなり、挿入孔21の下方側、すなわち、フィルタ70のさらに下方側において、被認証者の指Fを挟んで近赤外光源30と対向する位置に設置される。具体的には、撮像装置40における光軸が、近赤外光源30が設置される長手方向の略中央部の下方位置にて設置される。また、撮像装置40は、指紋等を認識させない為に、被認証者における掌側の表皮から僅かに指の内側に合焦させている。
【0026】
指先検知センサ50は、筐体20の挿入孔21に挿通される被認証者の指先F3を検知するものである。当該指先検知センサ50は、支持部23に支持された指Fの指先F3に対応する位置に設置され、例えば短形の金属板等から形成される。被認証者の指先F3が指先検知センサ50に接触することにより、挿入孔21における軸方向の指先F3の位置決めを行うとともに、当該接触を電気的に検知する。具体的には、指先検知センサ50の表面がアルミニウムなどの導電性材料からなり、静電容量変化により、接触を検知する。
【0027】
また、指先検知センサ50は、被認証者の指先F3が当接し、且つ、被認証者の指Fの爪F4が当接しない高さを有して設置される。例えば、筐体20における挿入孔21の内壁面の上方から下方に突出させた略L字状部材の先端に設置してもよいし、挿入孔21の内壁面の上方から下方に向けるとともに、被認証者の爪F4が挿通し得る孔部を設けた部材の先端に設置してもよいものである。
【0028】
指元検知センサ60は、筐体20の挿入孔21に挿通される被認証者の指元F5を検知するものである。当該指元検知センサ60は、支持部23に支持された指Fの指元F5に対応する位置に設置され、例えば短形の金属板等から形成される。被認証者の指元F5が指元検知センサ60に接触することにより、当該接触を電気的に検知する。具体的には、指元検知センサ60の表面がアルミニウムなどの導電性材料からなり、静電容量変化により、接触を検知する。
【0029】
また、指元検知センサ60は、被認証者の指Fが近赤外光源30の直下に位置し、且つ、筐体20における挿入孔21の内壁面と被認証者の指Fの甲側F1が接触した状態で、指元F5の甲側F1に接触するよう設置される。指元検知センサ60において指元F5が接触する下端面は、指元F5の形状に合うように、略円弧状に形成することが望ましい。これにより、被認証者の指元F5の支持を確実に行うことができ、指Fの検知を確実に行うことができる。
【0030】
そして、指先検知センサ50及び指元検知センサ60の双方が被認証者の指Fを検知することで、指に見立てた擬似的な指ではなく生体であることが判別することができる。このようにして、指先検知センサ50及び指元検知センサ60の双方にて被認証者の指Fであることが確認できてから、検知血流認証動作が開始するように制御することが好ましい。
【0031】
さらに、光反射部材80は、紫外光源31からの紫外線を受光し、挿入孔21の中に紫外光源31からの紫外線を反射可能である位置に設置される部材である。光反射部材80は、第一実施形態において、指先検知センサ50を挟み紫外光源31に対向して設置され、第二実施形態において、近赤外光源30よりも指Fの指先F3側に配置されており、紫外光などの光を反射する。具体的に、光反射部材80としては、鏡などが好ましい。光反射部材80によって、紫外光源31から照射された紫外光を反射及び乱反射させて、筐体20の内部、とりわけ挿入孔21の中に広く紫外光を行き渡らせ、指Fの甲側F1と当接する透光板22、支持部23、指先検知センサ50や指元検知センサ60に付着した菌やウイルスを死滅や不活化することができる。また、光反射部材80は、第一実施形態および第二実施形態において、平板状であるが、他の実施形態において、紫外光源31から照射される紫外光が挿入孔21の中に届くように紫外光源31からの紫外光を反射及び乱反射させられれば凹凸を有していてもよい。
【0032】
また、上述した光反射部材80の有無に関わらず、上述した指先検知センサ50及び指元検知センサ60のうち、少なくとも指先検知センサ50の表面を鏡面のように平滑にしておくことが好ましい。このように、鏡面のように平滑にしておくことで、光反射部材80を設置するスペースが設けることが難しい大きさの筐体であっても、紫外光源31から照射された紫外光を少なくとも指先検知センサ50にて反射及び乱反射させて、筐体20の内部に広く紫外光を行き渡らせ、付着した菌やウイルスを死滅や不活化することができる。なお、指先検知センサ50等の表面は、紫外光を反射及び乱反射させられる程度に平滑であれば、凹凸を有する曲面であってもよいのはもちろんである。
【0033】
さらに、付着した菌の死滅やウイルスの不活化の効果を高めるために、筐体20の内部に、アナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタンなどの光触媒活性を示す金属酸化物を塗布して光触媒層を設けることも好ましい。ここでの筐体20の内部とは、指Fを挿入する挿入孔21の内壁面であって、より具体的には、指Fが当接する透明板22の下面や支持部23の表面、さらに、指Fの掌側2であってフィルタ70の上面や挿入孔21の側面などの表面である。なお、通電性が下がるために、指先検知センサ50及び指元検知センサ60の表面には光触媒層を設けないことが好ましい。
【0034】
このようにして血流認証装置用端末機器10は構成され、これに認証制御装置(図示しない)を接続することで構成される血流認証装置について、
図5、
図6を参照して説明する。認証制御装置は、被認証者の血管パターンの認証、近赤外光源30や紫外光源31の点灯、指検知センサ、撮像装置40等の制御、登録した又は撮像した血管パターンの記憶、マッチング処理等を行うものである。
【0035】
図5に示すように、以下に、血流認証に関するプロセスについて説明する。まず、S10において、被認証者が蓋部24を開けたことを、蓋部24と接触して連動するスイッチや蓋部24との距離の変化を検知する非接触型のセンサなどの検知器によって検知する。この動作がトリガーとなり血流認証プロセスが開始する。そして、被認証者が指Fを支持部23に沿って、甲側F1を透光板22に当接させる。
【0036】
S11においては、被認証者の動作により、指先検知センサ50及び指元検知センサ60の双方にて指Fを検知したか否かを判定する。当該判定は、血流認証装置用端末機器10に接続される認証制御装置にて行われる。判定結果が肯定の場合には、生体としてS12に進み認証動作を開始し、否定の場合には、生体でないとして認証動作を開始せずその旨を音声として出力したりブザー音などを鳴らしたりするなどして適切でないことを通知して血流認証プロセスを終了する。
【0037】
S12においては、上記認証制御装置により近赤外光源30であるIR-LEDを発光させ、被認証者の指Fの甲側F1から光を照射する。そして、例えば、光量調節手段における所定の設定により、IR-LEDの照度が安定したところでS13に進む。
【0038】
S13においては、上記認証制御装置により撮像装置40を作動させ、指Fの撮像を行う。撮像された画像は、認証制御装置に供給される。当該撮像においては、適宜の照度毎に複数枚を撮像した後、所定の領域を切り出してつなぎ合わせて、1枚の指Fの画像とするものであってもよいし、所定の照度から1枚のみを撮像するものであってもよい。画像処理については、これに限られることなく、適宜処理を組み合わせて行うこともできる。
【0039】
S14においては、認証制御装置にて、撮像された画像と、被認証者の登録画像とが一致するか否かを判定する。このとき、血流認証においては、本実施例においては従来と同様にして、血流の形状をパターン抽出し画像処理を施し、特徴点抽出及び特徴点マッチングを用いて行われるが、その他のマッチング処理を採用することもできる。
【0040】
血流認証の結果、撮像した画像と登録画像とが一致、又は所定の一致率以上であれば、上記認証制御装置は、当該被認証者を適合者であると判定し、適合者信号を送出して、血流認証プロセスが終了する。その適合者信号をトリガーとして作動する、例えば、開錠プロセスによって、血流認証装置と紐付けされた扉の錠を開ける。一方、当該被認証者を適合者でないと判定した場合、その旨を音声として出力したりブザー音などを鳴らしたりするなどして適合者でないことを通知して血流認証プロセスを終了する。
【0041】
そして、
図6に示すように、以下に、殺菌に関するプロセスについて説明する。まず、S20において、蓋部24が閉まったことを、蓋部24と接触して連動するスイッチや蓋部24との距離の変化を検知する非接触型のセンサなどの検知器によって検知する。この動作がトリガーとなり殺菌プロセスが開始して、S21に進む。
【0042】
S21においては、紫外光源31を点灯させる。照射された紫外光が、筐体20の内部である被認証者の指Fを挿入している空間の殺菌等を行う。
【0043】
S22においては、紫外光源31の点灯時間を判断する。紫外光源31の点灯させて紫外光を照射し始めて、例えば、5秒、30秒、60秒など予め設定された時間が経過したかを判断する。所定時間が経過すれば、S24に進み、経過していなければ、S23に進む。なお、予め設定されている紫外光源31の照射時間については、流行している菌やウイルスなどに対してより効果が高くなるように、変更できるようにしておくことが好ましい。
【0044】
S23においては、紫外光源31の点灯が所定時間経過していないときに、蓋部24が開けられていなか判断する。蓋部24が開けられたことを検知されていると、被認証者の指Fが挿入される可能性があることから指Fへ紫外光を照射しないように、S24に進む。また、蓋部24が開けられていなければ、所定時間が経過するまで紫外光源31が点灯し続ける。なお、本実施例では、理解しやすいように、蓋部24が開けられたことを適宜判断するフローとしているが、これに限られるものではなく、蓋部24が開けられたことを検知したときに、割り込みプログラムとして紫外光源31の点灯を強制的に終了させることも可能であることはもちろんである。
【0045】
S24においては、紫外光源31の点灯が所定時間経過したとき、若しくは、紫外光 源31の点灯が所定時間経過していないが蓋部24が開けられたことを検知されている ときに、紫外光源31を消灯して、殺菌プロセスを終了する。
【0046】
上述した血流認証に関するプロセスについては、
図1から
図4に示す第一実施形態におけるものであるが、
図7および
図8に示す第二実施形態においても同様に利用することができる。
【0047】
以上、説明した本発明に係る血流認証装置用端末機器10及び血流認証装置によれば、筐体20に設けられる挿入孔21における内壁面の下方側に指Fの掌側F2を接触させることなく、内壁面の上方側に指Fの甲側F1を接触させて挿入し、指Fの甲側F1に対して筐体20の内部上方から近赤外光源30の光を照射して血管パターンの撮像を行うものである。これにより、血流認証装置の使用に習熟していない被認証者であっても、指Fの掌側F2に分布する血管が圧迫されることがない。よって、撮像効果が低下することによる認識率の低下を防止するとともに、従来に比べてより鮮明な画像を得ることができる。
【0048】
さらに、説明した本発明に係る血流認証装置用端末機器10及び血流認証装置によれば、被認証者の指Fが筐体20から引き抜かれたときには、紫外光源31の光を照射して、筐体20の内部、すなわち、被認証者の指Fの甲側F1と当接する透光板22の下面、支持部23、指先検知センサ50や指元検知センサ60などに付着した菌やウイルスを死滅や不活化することができ、複数の使用者が出入りする住宅用建物やオフィスなどで共用される場合でも、使用者にウイルスや細菌などの病原体を蔓延させない衛生的な状態を保つことができる。
【0049】
また、上記実施例においては、被認証者の指Fの甲側F1を上方側に配置し、掌側F2を下方側に配置した状態で筐体20の挿入孔21に挿入し、当該挿入孔21における内壁面の上方側に指Fの甲側F1を当接させた状態で血管パターンを撮像し、認証を行うものであったが、これに限られることなく、指Fの甲側F1に対して筐体20の内部に近赤外光源30の光を照射して血管パターンの撮像を行うものであればよい趣旨である。
【0050】
例えば、被認証者の指Fの甲側F1を下方側に配置し、掌側F2を上方側に配置した状態で筐体20の挿入孔21に挿入し得るよう構成することもできるし、甲側F1を右側又は左側に配置し、掌側F2を左側又は右側に配置した状態で挿入孔21に挿入し得るよう構成することもできる。更には、甲側F1を上下左右方向以外に傾斜させて配置した状態で挿入孔21に挿入し得るよう構成することもできる。
【0051】
さらに、筐体20の挿入孔21の形状、指先検知センサ50及び指元検知センサ60の形状、寸法等を適宜変更して実施することが可能である。また、一部構成を省略することができるし、一部抽出した構成とすることができるのは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
10 血流認証装置用端末機器
20 筐体
21 挿入孔
22 透光板
23 支持部
24 蓋部
30 近赤外光源
31 紫外光源
40 撮像装置
50 指先検知センサ
60 指元検知センサ
70 フィルタ
80 光反射部材
F 指