IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 並木精密宝石株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-リニア振動アクチュエータの組立方法 図1
  • 特許-リニア振動アクチュエータの組立方法 図2
  • 特許-リニア振動アクチュエータの組立方法 図3
  • 特許-リニア振動アクチュエータの組立方法 図4
  • 特許-リニア振動アクチュエータの組立方法 図5
  • 特許-リニア振動アクチュエータの組立方法 図6
  • 特許-リニア振動アクチュエータの組立方法 図7
  • 特許-リニア振動アクチュエータの組立方法 図8
  • 特許-リニア振動アクチュエータの組立方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】リニア振動アクチュエータの組立方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/16 20060101AFI20240621BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H02K33/16 A
B06B1/04 S
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021530607
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2020025425
(87)【国際公開番号】W WO2021006082
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2019125813
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古川 武志
(72)【発明者】
【氏名】中村 元一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 千尋
(72)【発明者】
【氏名】中村 一也
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030107(JP,A)
【文献】特開2018-074763(JP,A)
【文献】特表2015-521840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0241295(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B1/00-3/04
H02K33/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に直進振動させる可動子と、
前記可動子を前記方向に沿って摺動可能に保持する複数のガイドシャフトと、
前記可動子と前記ガイドシャフトを囲むように収容する筐体と、を有するリニア振動アクチュエータの組立方法であって、
前記筐体の周壁部であって、前記可動子が振動する前記方向の両側に、前記ガイドシャフトの両端部を位置決め固定するための溝が形成されており、
前記可動子に形成されている前記ガイドシャフト用の保持部に前記ガイドシャフトを保持した状態で、前記ガイドシャフトの両端部を前記溝に嵌め込んで、前記可動子と前記ガイドシャフトを前記筐体に収容し、
前記ガイドシャフトが前記筐体の周壁部に対して動かないように固定することを特徴とするリニア振動アクチュエータの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動子を直進振動させるリニア振動アクチュエータの組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばスマートフォン等の携帯機器におけるバイブレーション機能を構成する装置として、薄型のリニア振動アクチュエータが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のリニア振動アクチュエータは、その両端が筐体(2)の周壁部で支持された1本のシャフト(8)が可動子を摺動自在に支持する構造を有し、可動子の一部である磁石(5)の近傍に配置したコイル(15)に、交流の駆動電流を流すことで可動子を直進振動させるように構成されている。また、ガイド用のシャフトを1本とした構造では、シャフトを複数本(例えば2本)とした場合に、互いの平行度が低いことなどに起因しておこる振動特性の悪化や、不要な音の発生する可能性を取り除くことができる。
【0004】
このようなガイドシャフトを備えるリニア振動アクチュエータの組立作業においては、基本的に可動子を筐体内側に配置した状態で、ガイドシャフトを筐体の外側から内側へ、筐体の周壁部に形成されたガイドシャフト支持用の穴と可動子の摺動部に通して組み立てることになる。そのため、周壁部の穴とガイドシャフト外径のクリアランスはある程度余裕(ガタ)が必要である。可動子とガイドシャフトの位置決めは、周壁部の一方の面に形成されたシャフト支持用の穴と、同じく周壁部の対向する面に形成された穴の位置、これらの穴の径寸法及びガイドシャフトの外径寸法とによって、主に決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-95943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可動子の振動軸周りの回転を抑え、安定した直線振動を実現するためには、ガイドシャフトは2本以上とすることが望ましい。しかし、複数のガイドシャフトを配置する場合は、摺動抵抗の増加やバラツキに伴う振動特性の悪化や異音の発生を抑えるために、ガイドシャフトの位置決めを高精度に行う必要がある。
【0007】
摺動抵抗は、摺動部(可動子とガイドシャフト)のクリアランスに依存し、クリアランスは各部品公差の積み上げに依存する。その中で、ガイドシャフトの両端を支持する筐体周壁部の穴の位置、穴の径、ガイドシャフトの外径公差を厳しくして、公差の積み上げを小さくしようとすると、ガイドシャフトを破損してしまう可能性が高くなる。
【0008】
また、可動子の磁石と、ヨークとしても機能する筐体周壁部が吸引するため、シャフトを通す作業が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、所定の方向に直進振動させる可動子と、可動子を摺動可能に保持する複数のガイドシャフトと、可動子とガイドシャフトを囲むように収容する筐体と、を有するリニア振動アクチュエータの組立方法であって、可動子に形成されているガイドシャフト用の保持部にガイドシャフトを保持した状態で、可動子とガイドシャフトを筐体に収容し、ガイドシャフトが筐体の周壁部に対して動かないように固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数あるガイドシャフトの配置を高精度且つ容易に行えるリニア振動アクチュエータの組立方法を提供することができる。また、本発明の組立方法によって、安定した直線振動で振動特性に優れるリニア振動アクチュエータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態にかかるリニア振動アクチュエータを示す図である。
図2】同リニア振動アクチュエータの組立方法と主要部位を説明する図である。
図3】同リニア振動アクチュエータの組立作業のフロー図である。
図4】本発明の実施形態にかかるリニア振動アクチュエータを示す図である。
図5】同リニア振動アクチュエータの組立方法と主要部位を説明する図である。
図6】同リニア振動アクチュエータの組立作業のフロー図である。
図7】本発明の実施形態にかかるリニア振動アクチュエータに対する比較例を示す図である。
図8】同比較例におけるリニア振動アクチュエータの組立方法を説明する図である。
図9】同比較例におけるリニア振動アクチュエータの組立作業のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態のリニア振動アクチュエータの組立方法は、所定の方向に直進振動させる可動子と、前記可動子を前記方向に沿って摺動可能に保持する複数のガイドシャフトと、前記可動子と前記ガイドシャフトを囲むように収容する筐体とを有する。そして、前記可動子に形成されている前記ガイドシャフト用の保持部に前記ガイドシャフトを保持した状態で、前記可動子と前記ガイドシャフトを前記筐体に収容し、前記ガイドシャフトが前記筐体の周壁部に対して動かないように固定することを特徴とする。
この構成によれば、複数あるガイドシャフトの配置を高精度且つ容易に行えるリニア振動アクチュエータの組立方法を提供することができる。また、本発明の組立方法によって、安定した直線振動で振動特性に優れるリニア振動アクチュエータを得ることができる。
【0013】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、前記可動子に形成されている前記ガイドシャフト用の保持部に前記ガイドシャフトを保持した状態で、前記筐体の周壁部の一部を構成するものであって前記ガイドシャフトの両端側で各々配置される中間部材と、前記ガイドシャフトとを固定する。そして、前記可動子と前記ガイドシャフトを前記筐体に収容し、前記中間部材と、当該中間部材以外の前記筐体の一部とを固着することにある。
この構成によれば、複数あるガイドシャフト同士の平行を高精度に位置決めした状態で、可動子とガイドシャフトを筐体内に収めることができる。
【0014】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、前記筐体の周壁部であって、前記可動子が振動する前記方向の両側に、前記ガイドシャフトの両端部を位置決め固定するための溝が形成されている。そして、前記ガイドシャフトの両端部を前記溝に嵌め込んで、前記可動子と前記ガイドシャフトを前記筐体に収容することにある。
この構成によれば、部品点数を増やすことなく、可動子と複数のガイドシャフトの位置決めを容易に行うことができる。
【0015】
次に、上記特徴を有する好ましい実施例と比較例を、図面に基づいて詳細に説明する。
尚、各実施例及び比較例を説明する図面において、一部の共通する構成要素については同じ符号を用いている。
【実施例1】
【0016】
図1は、本実施例にかかるリニア振動アクチュエータA1を示す図である。図1(a)は、リニア振動アクチュエータA1の外観図である。図1(b)では、リニア振動アクチュエータA1の内部構造を示すために外装の主な部分を仮想線で表している。
図2は、図1に示すリニア振動アクチュエータA1における主要な組立作業と特徴的な構成部位を説明する図である。
図3は、図1に示すリニア振動アクチュエータA1の組立作業のフロー図である。
【0017】
図1に示すように、リニア振動アクチュエータA1は、可動子20を所定の振動方向D11に直進振動させるものであり、筐体10、可動子20、ガイドシャフト30、平板状コイル40及び、一対の磁気バネ50を備えている。尚、図1(b)では、リニア振動アクチュエータA1の内部構造が見えるように、外装にあたる筐体10の主要部分を仮想線(細い2点鎖線)で表すとともに、実際にはコイル40を保持しているフレキシブル基板(FPC)等の図示を省略している。
【0018】
筐体10は、振動方向D11に約20mmの長さ寸法で延在する直方体状の箱であり、少なくとも一部が磁性材料で形成されている。筐体10は、周壁部11と、底壁部12と、天井壁部13とで構成されており、周壁部11の一部を構成するものとして中間部材14が配置されている。筐体10を構成する各部位は切削加工又はプレス加工等により形成されている。中間部材14には、ガイドシャフト30と、磁気バネ50を構成する一方の磁石が固定されている。尚、中間部材14は、磁性体で形成されており磁石に対するヨーク部材としても機能する。
【0019】
可動子20は、筐体10に収容される振動方向D11に延在する直方体状の部材であり、枠体21と、複数の磁石22と、を備えている。複数の磁石22は、振動方向D11に直線配列された状態で枠体21に嵌め込まれている。また、枠体21は、振動方向D11に沿った両側にガイドシャフト30を摺動可能に保持する保持部21gを有する。
【0020】
ガイドシャフト30は、本実施例では外径φ1mm弱のサイズのものが2本有り、中間部材14に形成されている所定の部分で筐体10に固定されているとともに、可動子20を振動方向D11に摺動可能なように保持している。
【0021】
平板状コイル40は、フレキシブル基板(図示しない)に保持されて、可動子20に備わる磁石22に対向するかたちで配置されている。この平板状コイル40に、交流電流が駆動電流として流されることで、可動子20における複数の磁石22との間に作用するローレンツ力により、この可動子20を振動方向D11に直進振動させる。
【0022】
一対の磁気バネ50は、磁石の反発力によって可動子20を振動方向D11に付勢する部材であり、可動子20における振動方向D11の両端部それぞれに配置されている。各磁気バネ50は、第1付勢用磁石51と第2付勢用磁石52を備えている。第1付勢用磁石51は、可動子20における振動方向D11の各端部に1つずつ配置されている。第2付勢用磁石52は、筐体10の内部において、各第1付勢用磁石51それぞれと対向するように配置されている。第2付勢用磁石52は、第1付勢用磁石51の極性と同じ極性を有する。各磁気バネ50は、互いに同極性の第1付勢用磁石51及び第2付勢用磁石52の相互間に発生する反発力により、可動子20を振動方向D11について筐体11の内壁面から離す向きに付勢している。
【0023】
リニア振動アクチュエータA1は、特徴的な構成部位を有することにより、2本あるガイドシャフト30を高精度に配置固定される。また、組立作業を比較的容易に行うことができる。リニア振動アクチュエータA1における主要な組立作業と特徴的な構成部位について、図2を用いて以下に説明する。
【0024】
図2(a)に示すように、予め可動子20の枠体21に形成されている保持部21gにガイドシャフト30を組み込む。次に中間部材14を用意する。中間部材14には、ガイドシャフト30の端部が挿入される穴部14hがある。穴部14hの内径寸法は、ガイドシャフト30の外径寸法およびガイドシャフト30との圧入公差によって適宜設定される。穴部14hによって、2本のガイドシャフト30の相互間の位置が決まっている。
【0025】
図2(b)に示すように、ガイドシャフト30の端部を中間部材14の穴部14hに挿入し、固定配置する。次に、筐体10のうち、周壁部11と底壁部12とが一体になった状態のものを用意する。可動子20と2本のガイドシャフト30及び2つの中間部材14を含む部組品において、中間部材14の部分の形状と配置によって、周壁部11の内周面にガタツキなく収まるように設計されている。
【0026】
図2(c)に示すように、可動子20と2本のガイドシャフト30及び2つの中間部材14を含む部組品を周壁部11の内側に収める。このとき、対向して配置されている2つの中間部材14の各々は、周壁部11の内周面に対して少なくとも3つの面で接触して固定されている。
【0027】
ガイドシャフト30は、筐体10を構成する周壁部11、中間部材14、底壁部12に対して相対的に動かないように固定されており、可動子20は、2本のガイドシャフト30によって、摺動可能に保持された状態にある。最終的に、平板状コイル40等を組み込んだ上で、天井壁部13を取り付けて、リニア振動アクチュエータA1となる。
【0028】
次に、図3に示すフロー図に沿って、リニア振動アクチュエータA1の組立作業について、より詳細に説明する。(各部の符号は図1及び図2を参照)
【0029】
〔1〕可動子の準備
可動子20の枠体21に複数の磁石22を嵌め込み、接着する。また、枠体21の振動方向両側に、磁気バネ50を構成する第1付勢用磁石51を接着固定する。
【0030】
〔2〕可動子へのガイドシャフトの組込み
可動子20の枠体21に形成されているガイドシャフトを摺動可能に保持するための保持部21gに、2本のガイドシャフト30を組込む。
【0031】
〔3〕中間部材の準備
2つある中間部材(ヨーク部材)14の各々に磁気バネ50を構成する第2付勢用磁石52を接着固定する。
【0032】
〔4〕ガイドシャフトと中間部材の固定
中間部材14に形成されている穴部14hにガイドシャフト13の端部を圧入し、更に接着又は溶着により、ガイドシャフトと中間部材とを固定する。
【0033】
〔5〕筐体側の準備
筐体10を構成する周壁部11と底壁部12とを溶接により一体とする。
【0034】
〔6〕可動子組品の筐体内への配置固定
〔1〕~〔4〕のプロセスで組み立てた可動子20とガイドシャフト30と中間部材14との組品を、〔5〕で組み立てた筐体10の内側に配置し、固定する。
【0035】
〔7〕コイル/基板を筐体の天井壁部に固定
予め平板状コイル40及び、平板状コイル40を保持する基板等を天井壁部13に配置し固定する。
【0036】
〔8〕筐体の天井壁部と周壁部を固定
筐体10を構成する天井壁部13を、同じく周壁部11に溶接固定して、リニア振動アクチュエータA1を完成する。
【0037】
以上、〔1〕~〔8〕の作業プロセスは、必ずしも順番に行わなくても問題無い作業もあるが、少なくとも、可動子20にガイドシャフト30が保持されているとともに、ガイドシャフトの端部が中間部材(ヨーク部材)14の穴部14hに挿入されている状態で、これらが、周壁部11の内側に配置されることは本実施例において必須である。
【実施例2】
【0038】
図4は、本実施例にかかるリニア振動アクチュエータA2を示す図である。本実施例の特徴的な部位を示すために、筐体10を構成する天井壁部13の一部を部分断面で示している。
図5は、図4に示すリニア振動アクチュエータA2における主要な組立作業と特徴的な構成部位を説明する図である。
図6は、図4に示すリニア振動アクチュエータA2の組立作業のフロー図である。
【0039】
図4に示すように、本実施例のリニア振動アクチュエータA2は、筐体10、可動子20、ガイドシャフト30、平板状コイル40及び、一対の磁気バネ50を備えており、可動子20を直進振動させる基本的な構成においては、[実施例1]のリニア振動アクチュエータA1と共通する。
【0040】
また、本実施例のリニア振動アクチュエータA2は、ガイドシャフト30を比較的容易な組立方法によって、高精度に配置固定できることにおいても、[実施例1]のリニア振動アクチュエータA1と共通する。一方、このことを可能にする特徴的な構成部位の形態が、[実施例1]のリニア振動アクチュエータA1とは異なっている。
【0041】
リニア振動アクチュエータA2は、ガイドシャフト30の位置決めを行うための位置決め形状部位として、筐体10における周壁部15の一部にU字溝15uが形成されている。
【0042】
リニア振動アクチュエータA2における主要な組立作業と特徴的な構成部位について、図5を用いて以下に説明する。
【0043】
図5(a)に示すように、可動子20の枠体21に形成されている保持部21gにガイドシャフト30を挿入する。
【0044】
図5(b)に示すように、筐体10のうち、周壁部15と底壁部12とが一体になった状態のものを用意する。周壁部15の一部に形成されているU字溝15uの底部の半径寸法は、ガイドシャフト30の外径寸法との圧入公差によって適宜設定される。次に、ガイドシャフト30を保持している可動子20を、周壁部15の内側に収めるようにする。
【0045】
図5(c)に示すように、ガイドシャフト30の端部を周壁部15のU字溝15uに押し込んで、固定配置する。U字溝15uによって、2本のガイドシャフト30の相互間の位置が決まっている。
【0046】
次に、図6に示すフロー図に沿って、リニア振動アクチュエータA2の組立作業について、より詳細に説明する(各部の符号は図4及び図5を参照)。尚、[実施例1]と同様の内容に関しては、一部省略する。
【0047】
[実施例1]と同様に、〔1〕可動子の準備、〔2〕可動子へのガイドシャフトの組込み のプロセスにより、ガイドシャフト30を保持している可動子20を準備する。
【0048】
〔3〕筐体側の準備
筐体10を構成する周壁部15の所定の位置に、磁気バネ50を構成する第2付勢用磁石52を接着固定する。そして、筐体10を構成する周壁部15と底壁部12とを溶接により一体とする。
【0049】
〔4〕可動子組品の筐体内への配置固定
ガイドシャフト30を保持している可動子20を、〔3〕で組み立てた筐体10の内側に配置し、固定する。
【0050】
[実施例1]と同様に、〔5〕コイル/基板を筐体の天井壁部に固定、〔6〕筐体の天井壁部と周壁部を固定 のプロセスにより、リニア振動アクチュエータA2を完成する。
【0051】
以上、〔1〕~〔6〕の作業プロセスは、必ずしも順番に行わなくても問題無い作業もあるが、少なくとも、可動子20にガイドシャフト30が保持されている状態から、これらが、周壁部15の内側に配置されることは本実施例において必須である。
【0052】
<比較例>
図7は、本発明の実施形態に対する比較例としてのリニア振動アクチュエータB1を示す図である。
図8は、図7に示すリニア振動アクチュエータB1における主要な組立作業と特徴的な構成部位を説明する図である。
図9は、図7に示すリニア振動アクチュエータB1の組立作業のフロー図である。
【0053】
図7に示すように、本比較例としてのリニア振動アクチュエータB1は、上述した実施例に係わるリニア振動アクチュエータA1、A2と同様に、その外観上、直方体状の箱形状をした筐体10に収まっている。また、図7では示さないが、その内部構造も、可動子20、ガイドシャフト30、平板状コイル40及び、一対の磁気バネ50を備えており、可動子20を直進振動させる基本的な構成においては、リニア振動アクチュエータA1、A2と共通する。
【0054】
一方、比較例のリニア振動アクチュエータB1は、筐体10を構成する周壁部16に、ガイドシャフト30の端部を支持する丸穴16cが形成されている点が、本発明の実施形態とは異なる態様となっている。
【0055】
リニア振動アクチュエータB1における主要な組立作業と特徴的な構成部位について、図8を用いて以下に説明する。
【0056】
図8(a)に示すように、可動子20と、筐体10のうち、周壁部16と底壁部12とが一体になった状態のものを用意する。このとき、一対の磁気バネ50を構成するための磁石が、可動子20と周壁部16に配置固定されている。また、周壁部16には、ガイドシャフトを挿入し支持するための貫通した丸穴16cが4箇所(図中で符号16cを付した2箇所と、これに対向する面に2箇所)をに形成されている。また、丸穴16cの内径は、ガイドシャフトの外径に対して10μm~15μmのクリアランスができるサイズに形成されている。
【0057】
図8(b)に示すように、可動子20を筐体10の中に収めた状態で、2本のガイドシャフト30を、筐体10の外部から、丸穴16cに挿入する。
【0058】
図8(c)に示すように、周壁部16の外側であって丸穴16cから挿入したガイドシャフト30を、可動子20の枠体21に形成されている保持部21gを通って、挿入側の内側面に対向する面に形成されている丸穴16cに通す。このとき、ガイドシャフト30は、可動子20を摺動可能に保持するとともに、両端部が丸穴16cに支持された状態となっている。
【0059】
次に、図9に示すフロー図に沿って、比較例であるリニア振動アクチュエータB1の組立作業について、より詳細に説明する。(各部の符号は図7及び図8を参照)尚、[実施例1]又は[実施例2]と同様の内容に関しては、一部省略する。
【0060】
〔1〕可動子の準備
[実施例1]、[実施例2]と同様のプロセスにより、磁気バネ50を構成する第1付勢用磁石51を備える可動子20を準備する。
【0061】
〔2〕筐体側の準備
[実施例2]におけるプロセスと同様に、筐体10を構成する周壁部16の所定の位置に、磁気バネ50を構成する第2付勢用磁石52を接着固定する。そして、筐体10を構成する周壁部16と底壁部12とを溶接により一体とする。
【0062】
〔3〕可動子の筐体内への配置
〔1〕のプロセスによる可動子20を、〔2〕のプロセスによる筐体10の内側に仮置きする。
【0063】
〔4〕ガイドシャフトの挿入固定
2本あるガイドシャフト30の各々を、筐体10の外部から周壁部16の丸穴16cに挿入し、可動子20の枠体21に形成されている保持部21gを通して、挿入側に対向する周壁部16の壁面に形成されている丸穴16cに端部が位置するように通す。ガイドシャフト30の両端部が丸穴16cに支持された状態で、ガイドシャフト30の両端部を周壁部16に接着又は溶着で固着する。
【0064】
[実施例1]及び[実施例2]と同様に、〔5〕コイル/基板を筐体の天井壁部に固定、〔6〕筐体の天井壁部と周壁部を固定 のプロセスにより、リニア振動アクチュエータB1を完成する。
【0065】
以上、〔1〕~〔6〕の作業プロセスは、必ずしも順番に行わなくても問題無い作業もあるが、少なくとも、可動子20が周壁部16の内側に配置した状態から、筐体10の外側からガイドシャフト30を挿入して、ガイドシャフト30が可動子20を摺動可能に保持するようにすることは本比較例において必須であるとともに、本発明の実施形態である[実施例1]及び[実施例2]等と比較して、大きく相違する部分である。
【0066】
次に、上述した本発明に係わる[実施例1]及び[実施例2]と、これに対する<比較例>の内容を鑑みて、本発明の実施形態による作用効果について説明する。
【0067】
比較例などに示したような、可動子を筐体の内側に配置した状態で、ガイドシャフトを筐体の周壁部の外側から挿入する従来の組立方法では、リニア振動アクチュエータの特性(振動加速度、共振周波数、立ち上がり時間)にばらつきが生じやすい。その要因の一つは、可動子の位置決めの再現性が悪く、摺動抵抗にばらつきが生じやすい為である。
【0068】
摺動抵抗は、摺動部(可動子とシャフト)のクリアランスに依存し、クリアランスは各部品公差の積み上げに依存する。しかし、筐体の外側からガイドシャフトを挿入する組立方法では、周壁部の穴の位置、穴の径、ガイドシャフトの外径の公差を厳しくして公差の積み上げを小さくしようとすると、ガイドシャフトを穴に通す際にシャフトを破損(傷付く、折れる)してしまう可能性が高くなる。また、周壁部と可動子の磁石が吸引するため、シャフトを通す工程が難しい。
【0069】
可動子を筐体内側に配置した状態で、ガイドシャフトを筐体の外側から内側へ通して組み立てる上で、例えば、ガイドシャフトを通す周壁部の穴の内径には、外径φ0.5mm~φ1.0mmのガイドシャフトに対して10μm~15μmのクリアランスを持たせることが必要となる。
【0070】
さらに、付勢手段として磁気ばねを採用した場合は、摺動抵抗は対になる付勢用磁石の位置決め精度に依存する。可動子側の付勢用磁石が周壁部側の付勢用磁石に近づいた際、付勢用磁石の位置決めが悪いと磁束の流れが左右均等ではなくなり、可動子が振動方向からずれた方向に力を受ける為である。
【0071】
これに対して、本発明の実施形態によるリニア振動アクチュエータの構成によれば、ガイドシャフトを筐体の周壁部の外側から挿入して、可動子を保持させながら組込む必要がないので、組立作業が容易である。
【0072】
また、ガイドシャフトを位置決め保持するために筐体に形成される穴部又は溝部の寸法を、ガイドシャフトの外径寸法に対してクリアランス無く設定できるので、ガイドシャフトの位置決めを高精度に行うことができる。これにより付勢用磁石の位置決め精度も高く設定することができる。したがって、可動子の摺動抵抗を最小限にし、振動特性に優れるリニア振動アクチュエータを実現できる。
【0073】
また、複数のガイドシャフトを高い平行度で配置できるので、可動子の振動軸周りの回転を抑え、安定した直線振動を実現できる。
【0074】
尚、本願出願人は、PCT/JP2019/002943の出願明細書などにおいても、複数のガイドシャフトと磁気ばねを備える形態のリニア振動アクチュエータについて提案、説明している。
【0075】
以上、説明した実施形態及び具体的な複数の実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明のリニア振動アクチュエータの構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0076】
例えば、上記実施例では、可動子の付勢用として永久磁石による磁気ばね使用したが、コイルスプリングや板バネ等を用いてもよい。また、上記実施例では、筐体の周壁部と底壁部を溶接により一体となるようにしたが、最初から一体に加工してもよい。また、各構成部位の形成において、採用する加工方法に合わせて許容される範囲内で最適な形状とすることができる。2本以上の複数のガイドシャフトをリニア振動アクチュエータであれば、本願発明は適用できる。
【符号の説明】
【0077】
A1,A2 リニア振動アクチュエータ
B1 リニア振動アクチュエータ
10 筐体
11,15,16 周壁部
12 底壁部
13 天井壁部
14 中間部材
14h 穴部
20 可動子
21 枠体
21g 保持部
30 ガイドシャフト
40 平板状コイル
50 磁気バネ
51 第1付勢用磁石
52 第2付勢用磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9