(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】受信機、方法、電子回路、及び無線給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/20 20160101AFI20240621BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H02J50/20
H02J7/00 301D
(21)【出願番号】P 2023084455
(22)【出願日】2023-05-23
【審査請求日】2023-05-23
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520354692
【氏名又は名称】エイターリンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 真悟
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】小舘 直人
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-110533(JP,A)
【文献】特開2001-224551(JP,A)
【文献】特開2012-198605(JP,A)
【文献】特開2019-179489(JP,A)
【文献】特開2019-106847(JP,A)
【文献】国際公開第2021/033236(WO,A1)
【文献】特開2005-130943(JP,A)
【文献】特表2015-516606(JP,A)
【文献】特表2015-518963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/20
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機であって、
前記受信機は、
前記送信電力を整流する整流部と、
整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、
電力管理部からの出力電圧により充電される充電部と、
前記受信機の動作を制御する制御器と、を有し、
前記制御器は、
前記受信機内における所定の電圧の値を検出するステップと、
前記検出するステップで検出された電圧値を、DMA(Direct Memory Access)によって、バッファメモリに格納するステップと、を実行し、
前記検出するステップにおいて、前記整流電圧及び前記充電部の充電電圧である電源電圧を検出し、
さらに、前記制御器は、
検出した前記整流電圧と当該整流電圧に対して定められた第1の閾値との比較、及び、検出した前記電源電圧と当該電源電圧に対して定められた第2の閾値との比較を行い、前記整流電圧と前記第1の閾値との比較結果、及び、前記電源電圧と前記第2の閾値との比較結果のそれぞれの比較結果と、前記受信機の受電状態が正常、異常、またはそれ以外の状態であるとの判定とが予め規定された判定テーブルに基づいて、前記受信機の受電状態を判定する、受信機。
【請求項2】
前記制御器は、
検出された所定の電圧の値に対してA/D変換を行ってデジタル値を取得し、
取得した前記AD変換値を前記バッファメモリとしてのリングバッファに格納する、請求項
1に記載の受信機。
【請求項3】
前記制御器は、
前記デジタル値を取得するタイミングを定めるためのタイマーを備え、
前記AD変換を行うコンバータと、前記タイマーとを対応づける、請求項
2に記載の受信機。
【請求項4】
前記制御器はプロセッサを備え、前記プロセッサを起動することなく、
検出した前記整流電圧と当該整流電圧に対して定められた前記第1の閾値との比較、及び、検出した前記電源電圧と当該電源電圧に対して定められた前記第2の閾値との比較を行い、
前記比較の結果の少なくとも一方に基づいて、前記受信機の受電状態を判定する、請求項
2に記載の受信機。
【請求項5】
交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機であって、
前記受信機は、
前記送信電力を整流する整流部と、
整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、
電力管理部からの出力電圧により充電される充電部と、
前記受信機の動作を制御する制御器と、を有し、
前記制御器は、
前記受信機内における前記整流電圧及び前記充電部の充電電圧である電源電圧を検出するステップと、
前記検出するステップで検出された電圧値を、DMA(Direct Memory Access)によって、バッファメモリに格納するステップと、を実行し、
検出した前記整流電圧と当該整流電圧に対して定められた第1の閾値との比較、検出した前記電源電圧と当該電源電圧に対して定められた第2の閾値との比較、及び、検出した前記電源電圧の時間変化の検出を行い、前記整流電圧と前記第1の閾値との比較結果、前記電源電圧と前記第2の閾値との比較結果のそれぞれの比較結果、及び、前記電源電圧の時間変化の検出結果に基づいて、前記受信機の受電状態を判定する、受信機。
【請求項6】
交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機によって実行される方法であって、
前記受信機は、
前記送信電力を整流する整流部と、
整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、
電力管理部からの出力電圧により充電される充電部と、
前記受信機の動作を制御する制御器と、を有し、
前記制御器は、
前記受信機内における所定の電圧の値を検出するステップと、
前記検出するステップで検出された電圧値を、DMA(Direct Memory Access)によって、バッファメモリに格納するステップと、を実行し、
前記検出するステップにおいて、前記整流電圧及び前記充電部の充電電圧である電源電圧を検出し、
さらに、前記制御器は、
検出した前記整流電圧と当該整流電圧に対して定められた第1の閾値との比較、及び、検出した前記電源電圧と当該電源電圧に対して定められた第2の閾値との比較を行い、前記整流電圧と前記第1の閾値との比較結果、及び、前記電源電圧と前記第2の閾値との比較結果のそれぞれの比較結果と、前記受信機の受電状態が正常、異常、またはそれ以外の状態であるとの判定とが予め規定された判定テーブルに基づいて、前記受信機の受電状態を判定する、方法。
【請求項7】
交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機によって実行される方法であって、
前記受信機は、
前記送信電力を整流する整流部と、
整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、
電力管理部からの出力電圧により充電される充電部と、
前記受信機の動作を制御する制御器と、を有し、
前記制御器は、
前記受信機内における前記整流電圧及び前記充電部の充電電圧である電源電圧を検出するステップと、
前記検出するステップで検出された電圧値を、DMA(Direct Memory Access)によって、バッファメモリに格納するステップと、を実行し、
検出した前記整流電圧と当該整流電圧に対して定められた第1の閾値との比較、検出した前記電源電圧と当該電源電圧に対して定められた第2の閾値との比較、及び、検出した前記電源電圧の時間変化の検出を行い、前記整流電圧と前記第1の閾値との比較結果、前記電源電圧と前記第2の閾値との比較結果のそれぞれの比較結果、及び、前記電源電圧の時間変化の検出結果に基づいて、前記受信機の受電状態を判定する、方法。
【請求項8】
交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機を動作させるための電子回路であって、
前記受信機は、
前記送信電力を整流する整流部と、
整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、
電力管理部からの出力電圧により充電される充電部と、
前記受信機の動作を制御する制御器と、を有し、
前記制御器は前記電子回路を含み、
前記制御器は、前記受信機内における所定の電圧の値を検出し、
前記電子回路は、検出された前記電圧値を、DMA(Direct Memory Access)によって、バッファメモリに格納し、
さらに、前記制御器は、
所定の電圧の値を検出する際に、前記整流電圧及び前記充電部の充電電圧である電源電圧を検出し、
検出した前記整流電圧と当該整流電圧に対して定められた第1の閾値との比較、及び、検出した前記電源電圧と当該電源電圧に対して定められた第2の閾値との比較を行い、前記整流電圧と前記第1の閾値との比較結果、及び、前記電源電圧と前記第2の閾値との比較結果のそれぞれの比較結果と、前記受信機の受電状態が正常、異常、またはそれ以外の状態であるとの判定とが予め規定された判定テーブルに基づいて、前記受信機の受電状態を判定する、電子回路。
【請求項9】
交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機を動作させるための電子回路であって、
前記受信機は、
前記送信電力を整流する整流部と、
整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、
電力管理部からの出力電圧により充電される充電部と、
前記受信機の動作を制御する制御器と、を有し、
前記制御器は、前記電子回路を含み、
前記制御器は、前記受信機内における前記整流電圧及び前記充電部の充電電圧である電源電圧を検出し、
前記電子回路は、前記検出するステップで検出された電圧値を、DMA(Direct Memory Access)によって、バッファメモリに格納するステップと、を実行し、
さらに、前記制御器は、検出した前記整流電圧と当該整流電圧に対して定められた第1の閾値との比較、検出した前記電源電圧と当該電源電圧に対して定められた第2の閾値との比較、及び、検出した前記電源電圧の時間変化の検出を行い、前記整流電圧と前記第1の閾値との比較結果、前記電源電圧と前記第2の閾値との比較結果のそれぞれの比較結果、及び、前記電源電圧の時間変化の検出結果に基づいて、前記受信機の受電状態を判定する、電子回路。
【請求項10】
交流信号からなる送信電力を無線で送電する送信機と、
前記送信電力を無線で受電する受信機であって、前記送信電力を整流する整流部と、整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、電力管理部からの出力電圧により充電される充電部とを有する受信機と、
を有する無線給電システムであって、
前記無線給電システムは、少なくとも1つの制御器を有し、
前記制御器は、
前記受信機内における所定の電圧の値を検出するステップと、
前記検出するステップで検出された電圧値を、DMA(Direct Memory Access)によって、バッファメモリに格納するステップと、を実行し、
前記検出するステップにおいて、前記整流電圧及び前記充電部の充電電圧である電源電圧を検出し、
さらに、前記制御器は、
検出した前記整流電圧と当該整流電圧に対して定められた第1の閾値との比較、及び、検出した前記電源電圧と当該電源電圧に対して定められた第2の閾値との比較を行い、前記整流電圧と前記第1の閾値との比較結果、及び、前記電源電圧と前記第2の閾値との比較結果のそれぞれの比較結果と、前記受信機の受電状態が正常、異常、またはそれ以外の状態であるとの判定とが予め規定された判定テーブルに基づいて、前記受信機の受電状態を判定する、無線給電システム。
【請求項11】
交流信号からなる送信電力を無線で送電する送信機と、
前記送信電力を無線で受電する受信機であって、前記送信電力を整流する整流部と、整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、電力管理部からの出力電圧により充電される充電部とを有する受信機と、
を有する無線給電システムであって、
前記無線給電システムは、少なくとも1つの制御器を有し、
前記制御器は、
前記受信機内における前記整流電圧及び前記充電部の充電電圧である電源電圧を検出するステップと、
前記検出するステップで検出された電圧値を、DMA(Direct Memory Access)によって、バッファメモリに格納するステップと、を実行し、
検出した前記整流電圧と当該整流電圧に対して定められた第1の閾値との比較、検出した前記電源電圧と当該電源電圧に対して定められた第2の閾値との比較、及び、検出した前記電源電圧の時間変化の検出を行い、前記整流電圧と前記第1の閾値との比較結果、前記電源電圧と前記第2の閾値との比較結果のそれぞれの比較結果、及び、前記電源電圧の時間変化の検出結果に基づいて、前記受信機の受電状態を判定する、無線給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、方法、受信機、及び無線給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス給電システムにおいて、受信機の二次電池を無線給電で充電し、センサ装置への電源電圧を供給する定電圧生成部への給電は無線給電の整流出力電圧が一定以上の場合は無線給電、以下ならば二次電池から供給している技術がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤレス給電は、給電状態が環境によって左右されるため、安定して一定量の電力を供給するのが困難であり、給電量は経時的に大きく変動する可能性がある。しかしながら、特許文献1に開示された技術では、受信機の給電状態、つまり受電状態を判定していない。一方、受信機の受電状態の判定処理を受信機内のマイコンに搭載されたCPUで行うと、当該判定処理において電力を消費してしまうという懸念があった。
【0005】
本開示の目的は、ワイヤレス給電がされる受信機において、この受信機の受電状態を、省電力を実現しつつ判定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によると、交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機であって、当該受信機は、当該送信電力を整流する整流部と、整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、電力管理部からの出力電圧により充電される充電部と、当該受信機の動作を制御する制御器と、を有し、当該制御器は、当該受信機内における所定の電圧の値を検出するステップと、当該検出するステップで検出された電圧値を、DMA(Direct Memory Access)によって、バッファメモリに格納するステップと、を実行する受信機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ワイヤレス給電がされる受信機において、この受信機の受電状態を、省電力を実現しつつ判定する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るワイヤレス給電システム(WPTシステム)の全体の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す送信機と、受信機との構成例を表すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る受信機の回路構成の概略を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る受信機のマイコンによる機能的な構成を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る受信機のマイコンにおける電圧取得部の構成および処理を説明する図である。
【
図6】第1実施形態に係る判定テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る受信機における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係る受信機のマイコンによる機能的な構成を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る受信機のマイコンにおける受電状態判定部の構成を説明する図である。
【
図10】受電状態判定部における勾配算出部と勾配比較部の構成および処理を説明する図である。
【
図11】第2実施形態に係る判定テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【
図12】受電状態判定部における電源電圧比較部の構成および処理を説明する図である。
【
図13】第2実施形態に係る判定テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【
図14】受電状態判定部における整流電圧比較部の構成および処理を説明する図である。
【
図15】第2実施形態に係る判定テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【
図16】受電状態判定部における判定部の構成および処理を説明する図である。
【
図17】第2実施形態に係る判定テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態を説明する全図において、共通の構成要素には同一の符号を付し、繰り返しの説明を省略する。なお、以下の実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本開示の必須の構成要素であるとは限らない。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0010】
また、以下の説明において、「プロセッサ」は、1以上のプロセッサである。少なくとも1つのプロセッサは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサであるが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。
【0011】
また、少なくとも1つのプロセッサは、処理の一部又は全部を行うハードウェア回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサでもよい。
【0012】
また、以下の説明において、「xxxテーブル」といった表現により、入力に対して出力が得られる情報を説明することがあるが、この情報は、どのような構造のデータでもよいし、入力に対する出力を発生するニューラルネットワークのような学習モデルでもよい。従って、「xxxテーブル」を「xxx情報」と言うことができる。
【0013】
また、以下の説明において、各テーブルの構成は一例であり、1つのテーブルは、2以上のテーブルに分割されてもよいし、2以上のテーブルの全部又は一部が1つのテーブルであってもよい。
【0014】
また、以下の説明において、「プログラム」を主語として処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサによって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶部及び/又はインタフェース部などを用いながら行うため、処理の主語が、プロセッサ(或いは、そのプロセッサを有するコントローラのようなデバイス)とされてもよい。
【0015】
プログラムは、計算機のような装置にインストールされてもよいし、例えば、プログラム配布サーバ又は計算機が読み取り可能な(例えば非一時的な)記録媒体にあってもよい。また、以下の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0016】
また、以下の説明において、種々の対象の識別情報として、識別番号が使用されるが、識別番号以外の種類の識別情報(例えば、英字や符号を含んだ識別子)が採用されてもよい。
【0017】
また、以下の説明において、同種の要素を区別しないで説明する場合には、参照符号(又は、参照符号のうちの共通符号)を使用し、同種の要素を区別して説明する場合は、要素の識別番号(又は参照符号)を使用することがある。
【0018】
また、以下の説明において、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。
【0019】
<0 システムの概要>
本開示に係るWPTシステムは、ワイヤレス給電方式に基づいて、送信機から送電された電力を受電して、その電力をデバイスに給電する受信機を有する。
【0020】
詳細は第1実施形態において説明するが、本開示に係るWPTシステムでは、受信機のアンテナでマイクロ波電力(920MHzの略継続的なサイン波の連続波(CW))を受電して、アンテナと機能的に接続されている整流回路によって電波を直流電圧に変換する。整流回路から出力された直流電圧は、電力管理部によって電圧が制御されたあと、その電圧が充電部(主にキャパシタ)に供給される。充電部を構成する蓄電素子に特段の限定はなく、キャパシタ、リチウムイオン電池、電気二重層コンデンサ、セラミックコンデンサ等が含まれうる。本開示に係るWPTシステムでは、充電部は主にキャパシタを備えるものとして説明を行う。電力管理部から供給された電圧は、充電部に蓄積された電圧が所定値未満である場合、充電部へ供給される。充電部で所定電圧まで充電されると、電力管理部から供給出力された電力は、マイコンに供給される。
【0021】
ここで、ワイヤレス給電は、給電状態が環境によって左右されるため、安定して一定量の電力を供給するのが困難であり、給電量は経時的に大きく変動する。また、太陽電池やレーザー方式のワイヤレス給電においても同様に給電量が変化しうる。このように給電状態が安定しない状況下においても、受信機のマイコン、さらには受信機が有するセンサ装置への安定した給電を継続させるため、給電の継続が可能であるかを都度診断する必要がある。
【0022】
もしも診断結果が良好でない場合は、送信機、及び/またはWPTシステムにおいて送信機及び受信器を監視する情報処理装置に通知して、場合によってはシステムを正常終了する必要がある。これは、送信機/受信機を設置する段階と、実運用時およびメンテナンス時の全てにおいて診断する。
【0023】
しかし、上述した通り、受信機への給電量が経時的に大きく変動しうることから、受信機の受電状態は、瞬間的に受信機内の電圧値をチェックするだけでは正確に判定できない。例えば、充電部の充電電圧である電源電圧が仮に正常な電圧値であっても、整流回路からの出力値である整流電圧が0に近い電圧値である場合、受信機は給電が安定しておらず、やがてデバイスへの電力供給が途絶える可能性がある。
【0024】
そこで、受信機が電源電圧、整流電圧の2つの電圧値を取得して送信機及び/または情報処理装置にデータ送信を行うことが考えられるが、頻繁にデータ送信を行う必要があり受信機の電力消費が大きい。更に、1の送信機に対して数十から100近い受信機が対応付けられる場合、送信機(含む情報処理装置)の演算負荷が高くなる。
【0025】
そこで、本開示に係るWPTシステムでは、受信機の整流電圧と電源電圧とをそれぞれ閾値と比較することで、受信機がマイコン等へ電力を供給する機能を維持できるか否かを判断している。
【0026】
なお、本開示に係るWPTシステムが有する具体的な構成は上述のものに限定されないことは言うまでも無い。
【0027】
<1.第1実施形態>
<1.1 システム全体の構成図>
図1は、第1実施形態に係るWPTシステム1の全体の構成を示す図である。
【0028】
図1に示すWPTシステム1は、例えば、送信機100、受信機200、第1情報処理装置300、及び第2情報処理装置400を備える。
図1に示すWPTシステム1は、例えば、ビル、又は工場等で利用される。
【0029】
なお、本明細書において、送信機100は無線で電力を送信するという意味での(電力)送信機100であり、同様に、受信機200は無線で電力を受信するという意味での(電力)受信機200である。後述するように、送信機100は、例えば、受信機200の状態に関する情報、又はセンサによる計測結果に関する情報を、データ信号として送信機100へ送信し、送信機100はかかるデータ信号を受信することがある。この場合、送信機100はデータ信号を受信する受信機であり、受信機200はデータ信号を送信する送信機として機能する。
【0030】
図1において、WPTシステム1が送信機100を3台含む例を示しているが、WPTシステム1に含まれる送信機100の数は、3台に限定されない。WPTシステム1に含まれる送信機100は、2台以下であってもよいし、4台以上であってもよい。
【0031】
図1において、WPTシステム1が受信機200を7台含む例を示しているが、WPTシステム1に含まれる受信機200の数は、7台に限定されない。WPTシステム1に含まれる受信機200は、6台以下であってもよいし、8台以上であってもよい。
【0032】
図1において、WPTシステム1が第1情報処理装置300を2台含む例を示しているが、WPTシステム1に含まれる第1情報処理装置300の数は、2台に限定されない。WPTシステム1に含まれる第1情報処理装置300は、1台であってもよいし、3台以上であってもよい。
【0033】
送信機100は、例えば、受信機200へ給電信号、又はデータ信号を送信する。送信機100は、例えば、920MHz帯の電波により、受信機200へ給電信号を送信する。送信機100は、例えば、2.4GHz帯の電波により、受信機200へデータ信号を送信する。送信機100は、データ信号を、920MHz帯の電波により送信してもよい。
【0034】
送信機100から送信される送電信号は、一例として、所定の電力を有するサイン波の連続波(CW)であってもよい。また、送電信号の周波数帯域は、送信機100と受信機200との間の距離を考慮して、例えば920MHz帯域である。例示した周波数帯域より高周波数の帯域であると、送信機100と受信機200の距離を短くしないと、受信機200が動作可能な所定の電力を給電できない可能性があるので、実用的範囲を考慮する(一例として送信機100と受信機200との間の距離が数mであるとか)ことで適切な周波数帯域を決定することができる。
【0035】
この際、WPTシステム1が設置された国の法律等により、所定の電力を有する送電信号を間欠的に行う制限が生じることがある。一例として、送信機100からの送電信号が、日本の電波法に規定する無線局の規定に該当する場合(免許の有無は問わない)、電波法に基づいて送電信号に対して一定の休止期間を設ける必要が生じる場合がある。この場合、ある程度の時間軸上で考えると、送電信号は連続波とは言えない。但し、休止期間を設けることが肝要であり、この休止期間はわずかであれば足りるので、送信機100から送信される送電信号は略継続的な連続波であると見なすことができる。
【0036】
送信機100は、例えば、1台の受信機200へ給電してもよいし、複数台の受信機200へ給電してもよい。送信機100は、例えば、1台の受信機200へデータ信号を送信してもよいし、複数台の受信機200へデータ信号を送信してもよい。送信機100は、例えば、他の送信機100と同じデータ信号を送信してもよいし、他の送信機100と異なるデータ信号を送信してもよい。送信機100は、例えば、所定のコマンド信号をデータ信号として受信機200へ送信してもよいし、予め設定された信号をデータ信号として受信機200へ送信してもよい。
【0037】
送信機100は、例えば、受信機200から送信されるデータ信号を受信する。送信機100は、例えば、1台の受信機200から送信されるデータ信号を受信してもよいし、複数の受信機200から送信されるデータ信号を受信してもよい。送信機100は、受信機200から送信されるデータ信号を第1情報処理装置300へ送信する。送信機100は、送信機100の状態に関する情報を第1情報処理装置300へ送信する。
【0038】
受信機200は、例えば、送信機100から送信される給電信号、又はデータ信号を受信する。受信機200は、例えば、充電部を有する場合、送信機100から送信される給電信号を電力へ変換し、変換した電力を充電部に貯える。受信機200は、例えば、所定のセンサを有する場合、送信機100から送信される給電信号を電力へ変換し、変換した電力によりセンサを駆動させる。
【0039】
受信機200は、例えば、受信機200の状態に関する情報、又はセンサによる計測結果に関する情報を、データ信号として送信機100へ送信する。
【0040】
第1情報処理装置300は、WPTシステム1に収容される送信機100、受信機200の動作を監視する情報処理装置である。例えば、第1情報処理装置300は、送信機100から送信される、送信機100、及び受信機200の状態に関する情報に基づき、送信機100、又は受信機200が予め設定された状態になっているか否かを判断する。予め設定された状態になっていると判断した場合、第1情報処理装置300は、所定の情報を第2情報処理装置400へ送信する。
【0041】
また、第1情報処理装置300は、WPTシステム1に収容される送信機100、受信機200についての情報を蓄積する。例えば、第1情報処理装置300は、送信機100から送信される、送信機100及び受信機200の状態に関する情報を、第1情報処理装置300に設けられる記憶部に記憶する。
【0042】
また、第1情報処理装置300は、WPTシステム1に収容される送信機100の動作を制御する。
【0043】
第2情報処理装置400は、WPTシステム1の管理者が操作する情報処理装置である。第2情報処理装置400は、WPTシステム1に収容される送信機100、受信機200、又はこれらの両方が所定の状態になっている旨の連絡を第1情報処理装置300から受信すると、送信機100、受信機200、又はこれらの両方が所定の状態になっていることをユーザに提示する。
【0044】
また、第2情報処理装置400は、第1情報処理装置300に蓄積されている、送信機100及び受信機200の状態に関する情報を分析し、所定の情報をユーザに提示する。所定の情報は、例えば、以下である。
・送信機100の配置に関する情報
・受信機200の配置に関する情報
・消費電力に関する情報
・電力強度に関する情報
【0045】
<1.2 送信機と受信機の構成>
図2は、
図1に示す送信機100と、受信機200との構成例を表すブロック図である。
図2に示すように、送信機100と受信機200とは、例えば、互いに所定間隔で離間する。例えば、送信機100と受信機200とは、数m程度の距離だけ隔てられて設置される。具体的には、例えば、送信機100は、屋内の高所、例えば、天井、又は壁に設けられた所定の高位置に固定して設置される。受信機200は、屋内の所定のデバイスに設置されたり、給電が必要なデバイスの近傍に載置されたりする。また、受信機200は、ユーザにより携帯されてもよい。送信機100は、所定の周波数、例えば、920MHz帯の電波により、受信機200へ給電信号を送信する。受信機200は、送信機100から送信される給電信号を電力へ変換し、変換した電力を充電するか、又は、変換した電力を所定のデバイスへ供給する。
【0046】
送信機100は、例えば、発振器101、送信アンテナ102、マイコン103、データ送受信機104、データ送受信アンテナ105を有する。発振器101、マイコン103、データ送受信機104は、例えば、PCB(プリント基板)に実装されていてもよい。
【0047】
発振器101は、所定周波数帯、例えば、920MHz帯の信号を発振させる。発振された信号は、必要に応じて、増幅されて、不要周波数成分が除去されてもよい。
【0048】
送信アンテナ102は、例えば、920MHz帯の電波を効率的に送信可能に形成されている。送信アンテナ102は、発振器101で発振された信号を、給電信号として放射する。
【0049】
マイコン103は、送信機100の動作を制御する。マイコン103は、例えば、ARMプロセッサを搭載した半導体素子により実現される。マイコン103は、例えば、送信アンテナ102による電波の送信を制御する。
【0050】
例えば、工場で用いられるWPTシステム1では、受信機200は所定値以上の電力を供給することが望ましい。そのため、マイコン103は、受信機200から送信されるフィードバック信号に基づき、送信アンテナ102による電波の送信を制御する。フィードバック信号は、例えば、受信機200内の所定の部位の電圧値に係るものである。フィードバック信号に基づき、受信機200の電界強度が疑似的に把握可能である。送信アンテナ102が、例えば、複数のアンテナ素子を有する場合、マイコン103は、例えば、最適なアンテナ素子から給電信号を送信するように、送信アンテナ102を制御する。例えば、マイコン103は、駆動させるアンテナ素子を切り替えることで、給電信号の偏波方向を調整する。また、マイコン103は、アンテナ素子の駆動タイミングを調整することで、給電信号の指向方向を調整する。
【0051】
また、ビル等の室内で用いられるWPTシステム1では、マイコン103は、受信機200から送信されるフィードバック信号に基づき、送信アンテナ102による電波の送信を制御する。送信アンテナ102が、例えば、単一のアンテナ素子である場合、マイコン103は、例えば、送信アンテナ102からの送電出力の最適化する。
【0052】
データ送受信機104は、デジタルデータのアナログ化、アナログデータの変調等の処理を実施する。また、データ送受信機104は、データ送受信アンテナ105で受信されるデータ信号から抽出される信号の復調、復調されたアナログデータのデジタル化等の処理を実施する。データ送受信機104は、例えば、データ送受信アンテナ105で受信されるデータ信号からフィードバック信号を抽出し、デジタルデータに変換してマイコン103へ送信する。
【0053】
データ送受信アンテナ105は、例えば、2.4GHz帯の電波を効率的に送受信可能に形成されている。データ送受信アンテナ105は、データ送受信機104から供給されるデータ信号を放射する。また、データ送受信アンテナ105は、受信機200から送信されたデータ信号を受信する。
【0054】
受信機200は、例えば、受信アンテナ201、整流回路(整流部)202、電力管理部203、充電部(充電部)204、マイコン(制御器)205、データ送受信機206、データ送受信アンテナ207を有する。整流回路202、電力管理部203、充電部204、マイコン205、データ送受信機206は、例えば、PCB又はFPC(フレキシブル基板)に実装されていてもよい。
【0055】
受信アンテナ201は、例えば、920MHz帯の電波を効率的に受信可能に形成されている。受信アンテナ201は、送信アンテナ102から放射された給電信号を受信する。
【0056】
整流回路202は、給電信号として受信した電波を整流し、直流電圧に変換する。
【0057】
電力管理部203は、直流電圧を管理する。例えば、電力管理部203は、直流電圧に基づいて充電電圧を制御する。電力管理部203は、充電電圧を制御することで、充電部204を充電する。また、電力管理部203は、例えば、充電部204に所定容量以上の電力が蓄えられると、直流電圧を、接続される部材へ供給する。
【0058】
また、電力管理部203は、マイコン205からの制御に応じ、充電部204に蓄えられた電力を放出させる。
【0059】
充電部204は、電力管理部203からの指示に応じて電力を蓄える。また、充電部204は、電力管理部203からの指示に応じて蓄えている電力を放出する。
【0060】
マイコン(Microcontroller)205は、受信機200の動作を制御する。マイコン205は、電力管理部203から供給される直流電圧、又は充電部204に蓄えられた電力により駆動される。マイコン205は、電力管理部203を制御し、充電部204に蓄えられた電力を放出させる。
【0061】
受信機200には、例えば、種々のセンサが接続可能である。例えば、熱センサ、温度センサ、光センサ、湿度センサ、振動センサ等が受信機200に接続される。受信機200に接続されたセンサは、例えば、電力管理部203から供給される直流電圧、又は充電部204から放出される電力により駆動される。マイコン205は、受信機200の所定部位における電圧値、受信機200に接続されるセンサの状況、センサにより検出された情報等を、継続的又は断続的に監視する。マイコン205は、受信機200の所定部位における電圧値、受信機200に接続されるセンサの状況、センサにより検出された情報等をデジタルデータとしてデータ送受信機206へ送信する。
【0062】
データ送受信機206は、マイコン205から供給されるデジタルデータのアナログ化、アナログデータの変調等の処理を実施する。また、データ送受信機206は、アナログデータの復調、復調されたアナログデータのデジタル化等の処理を実施する。データ送受信機206は、例えば、電力管理部203から供給される直流電圧、又は充電部204から放出される電力により駆動される。
【0063】
データ送受信アンテナ207は、例えば、2.4GHz帯の電波を効率的に送受信可能に形成されている。データ送受信アンテナ207は、データ送受信機206から供給されるデータ信号を放射する。また、データ送受信アンテナ207は、送信機100から送信されたデータ信号を受信する。例えば、データ送受信アンテナ207は、電力管理部203から供給される直流電圧、又は充電部204から放出される電力により駆動される。
【0064】
データ送受信アンテナ207から送信(放射)されるデータ信号の送信フォーマットは任意である。特に、データ送受信アンテナ207から放射されるデータ信号は2.4GHz帯の電波であるので、Bluetooth(登録商標)、IEEE 802.11x(つまり、いわゆる無線LAN)フォーマットに準拠した信号であってもよい。この場合、送信機100のデータ送受信機104も、受信機200から送信されるデータ信号のフォーマットに合致したフォーマットのデータ信号を解析できる機能を有することが好ましい。あるいは、また、第1情報処理装置300がこのような機能を有することもできる。
【0065】
<1.3 受信機の回路構成>
図3は、
図2に示す受信機200の回路構成の概略を示す図である。なお、以下の説明では、
図2を参照して説明した受信機200の構成要素の詳細についての説明は省略する。また、
図2に示す受信機200の構成要素のうち、要部のみ図示している。
【0066】
図3において、整流回路202の後段(つまり整流回路202の出力側)電圧である整流電圧、及び、充電部204の充電電圧である電源電圧はマイコン205に入力され、マイコン205が有するA/D変換部によりデジタル値に変換されて、後述する受電状態判定に用いられる。
【0067】
<1.4 マイコン205の機能的な構成>
図4は、マイコン205の機能的な構成の例を示す図である。
図4に示すように、マイコン205は、A/D変換部2051と、電圧取得部2052と、記憶部2054と、制御部2053としての機能を有する。
【0068】
A/D変換部2051は、マイコン205に入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する処理を行う。A/D変換部2051は回路としてのA/Dコンバータを備えていてもよい。本実施形態のA/D変換部2051は、アナログ信号である整流電圧及び電源電圧について、それぞれデジタル値に変換する。
【0069】
電圧取得部2052は、例えばA/D変換部2051から電源電圧及び整流電圧をデジタル信号に変換した値を取得する。
図5は、電圧取得部2052の構成の一例を示す図である。
図5に示すように、電圧取得部2052は、タイマー20521と、 DMAコントローラ20522と、リングバッファ20523を備える。
【0070】
タイマー20521は、一例として発振回路で構成され、電源電圧及び整流電圧のデジタル値を取得するタイミングを定めるために用いられる。具体的には、タイマー20521が所定の間隔で信号を生成することにより、時間を計測することが可能となる。なお、電圧取得部2052による電源電圧及び整流電圧の取得タイミング及び取得間隔は任意であり、定期的に取得してもよいし、送信制御モジュール20532がセンサにより測定された物理量を送信機100等にデータ信号として送信するタイミングに合わせて取得してもよい。ここにいう「合わせて」とは、後述する受電状態判定モジュール20533による判定作業に必要な時間を考慮して、データ信号と略同時に判定結果を表す信号を送信機100等に送信できるタイミングに合わせて、という意味を含む。
【0071】
ここで、電圧取得部2052による電源電圧及び整流電圧の取得タイミングを、送信制御モジュール20532がセンサにより測定された物理量を送信機100等にデータ信号として送信するタイミングに合わせるのは、データ信号を送信することでマイコン205が電力を大きく消費するので、マイコン205の電力消費時における受信機200の受電状態を判定することで、受信機200の受電状態を適切に判定できるからである。言い換えると、データ信号送信時以外であれば、送信機100からのワイヤレス給電により整流電圧及び電源電圧は上昇し、受電状態は良好な方向に進むと考えられる。
【0072】
A/D変換部2051は、一例として、図示しないMUX(Multiplexer/多重器)によって電圧取得部2052のタイマー20521と対応づけられており、図示しないアナログ電源端子(AVDD)から取得したアナログ信号を、タイマー20521が定めるタイミングでデジタル信号に変換する。なお、実際の設計においては、当該タイマー20521とA/D変換部2051の対応づけが可能な機能ブロックを持つRFSоC(Radio Frequency System on a chip)を用いてもよい。
【0073】
なお、A/D変換部2051は、アナログ電源端子からアナログ信号を取得する際に、整流電圧または電源電圧のいずれか一方ずつを取得(いわゆる、シングル取得)してもよいし、両方を取得(いわゆる、スキャン取得)してもよい、また、A/D変換部2051は、アナログ電源端子からオフセット情報としてのリファレンス電圧(一例として5Vのバンドギャップ)の入力を合わせて受け付けてもよい。
【0074】
DMAコントローラ20522は、マイコン205内に搭載されたプロセッサを起動させることなく、マイコン205内でのデータ転送を行うDMA(Direct Memory Access)転送を制御する。DMAコントローラ20522は、A/D変換部2051が変換したデジタル信号をリングバッファ20523へ転送する。
【0075】
リングバッファ20523は、バッファメモリの一例であり、A/D変換部2051が変換したデジタル信号のデジタル値を一時的に記憶する。リングバッファ20523は、記憶領域の終端と先端が論理的に連結されているため、記憶領域を循環的に利用することができる。
【0076】
図4に戻って説明を続ける。制御部2053は、マイコン205に搭載されたプロセッサが自身の記憶部2054に記憶されるアプリケーションプログラム20541を読み込み、アプリケーションプログラム20541に含まれる命令を実行することにより実現される。制御部2053は、アプリケーションプログラム20541に従って動作することにより、受信制御モジュール20531、送信制御モジュール20532、及び受電状態判定モジュール20533として示す機能を発揮する。
【0077】
受信制御モジュール20531は、マイコン205が送信機100等の外部装置から通信プロトコルに従って信号を受信する処理を制御する。
【0078】
送信制御モジュール20532は、マイコン205が送信機100等の外部装置に対し通信プロトコルに従って信号を送信する処理を制御する。
【0079】
受電状態判定モジュール20533は、リングバッファ20523に記憶された整流電圧のデジタル値と予め定められた整流電圧の閾値(第1の閾値)とを、及び、電圧取得部2052が取得した電源電圧のデジタル値と予め定められた電源電圧の閾値(第2の閾値)とを、それぞれ比較する。そして、受電状態判定モジュール20533は、記憶部2054に格納された判定テーブル20542を参照し、比較結果に基づいて、受信機200の受電状態を判定する。
【0080】
記憶部2054は、例えば、判定テーブル20542等を有する。
【0081】
判定テーブル20542は、電源電圧及び整流電圧のそれぞれについて閾値以下であるか否かの条件に対して受信機200の受電状態をどのように判定するかについて記述されたテーブルである。判定テーブル20542は、受信機200またはマイコン205の製造時に、予め作成されたものをマイコン205の記憶部2054に格納してもよいし、受信機200の設置後に送信機100、第1情報処理装置300、第2情報処理装置400の少なくとも一つから送信されてもよい。
【0082】
ここで、受信機200は整流電圧及び電源電圧のデジタル値のみ取得して、このデジタル値を送信機100に送出し、送信機100及び/または第1情報処理装置300、第2情報処理装置400が受信機200の受電状態を判定する構成も考えられ、本開示に係るWPTシステム1においてかかる構成を排除する意図はない。
【0083】
一方で、受信機200が自身の受電状態を判定することで、後述するように、受信機200が自身の動作ステートを変更するなど、判定結果に基づいた詳細でかつ柔軟な動作制御を行えるメリットがある。加えて、
図1に示すように、送信機100が複数の受信機200からのデータ受信を行う構成であると、仮に送信機100等が各々の受信機200の受電状態を判定すると、送信機100等の演算負荷が大きくなる。以上の理由により、本開示に係るWPTシステム1では、受電状態判定を受信機200が主に行っている。
【0084】
受電状態判定の基礎となる第1の閾値及び第2の閾値は異なった値であってもよい。例えば、電力管理部203は、整流回路202の出力電圧の電圧値を変換して充電部204、マイコン205に供給することがあり得る。従って、整流回路202からの出力値である整流電圧の適正値と、電力管理部203からの出力値に関連する電源電圧の適正値とは異なりうる。第1の閾値及び第2の閾値の具体的な値は受信機200の回路構成により適宜決定すればよいが、回路設計上の規格値が、例えば整流回路202からの出力電圧値が5Vであれば第1の閾値は5Vをやや下回る値であり、同様に電力管理部203からの出力電圧値が3.3Vであれば第2の閾値は3.3Vをやや下回る値に設定すればよい。また、電源電圧は充電部204への充電電圧であり、また、マイコン205の動作電源の電圧と考えることもできるので、第2の閾値を充電部204への充電を可能にする電圧値、及び/またはマイコン205が動作可能な電圧値として定めることもできる。
【0085】
第1の閾値及び第2の閾値は、マイコン205の記憶部2054に予め格納されている。第1の閾値及び第2の閾値は、送信機100からのデータ送信に基づいて更新することも可能である。
【0086】
図6を参照して、受電状態判定モジュール20533が用いる判定テーブル20542の一例を説明する。
図5は、マイコン205の記憶部2054に格納されている判定テーブル20542を示す図である。
【0087】
判定テーブル20542には、電源電圧及び整流電圧のそれぞれについて、第2の閾値及び第1の閾値との比較結果と、これら比較結果に基づいた受信機200の受電状態の判定結果との関連付けが記述されている。
図6に示す例では、○は第1の閾値または第2の閾値以上の電圧値であることを示し、×は第1の閾値または第2の閾値未満の電圧値であることを示している。これら比較結果が整流電圧について2つ、電源電圧について2つあることから、受電状態の判定結果は4種類になる。
【0088】
そして、電源電圧及び整流電圧の少なくとも一方が閾値未満であると、受電状態判定モジュール20533は、受電が安定しないと判定する。
【0089】
具体的には、電源電圧が○、整流電圧も○であれば、受電状態は安定しており、正常であると判定する。次に、電源電圧は○であるが、整流電圧が×であるということは、充電部204によりマイコン205を動作させるための電力は現時点で確保できていると推測できるものの、整流電圧が×ということは、現時点で送信機100からのワイヤレス給電が不安定であり、マイコン205の動作継続によりいずれ電源電圧も低下することが予想されると判定する。さらに、電源電圧は×であるが整流電圧は○ということは、判定時の直近でワイヤレス給電が不安定な時期が続いたため、充電部204の充電率(SOC)が低く、マイコン205を動作させるための電力を確保できない時期が早々に到来すると判定する。そして、電源電圧、整流電圧のいずれも×であれば、受信機200全体が動作できないと判定する。但し、電源電圧がマイコン205の動作可能電圧を下回っているのであれば、そもそも受電状態判定モジュール20533そのものの判定動作ができないので、電源電圧、整流電圧のいずれもが×であるとしても、電源電圧はマイコン205の動作可能電圧を上回っているものとする。
【0090】
そして、受電状態判定モジュール20533は、判定テーブル20542に基づく判定結果を、送信制御モジュール20532を介して送信機100等に送信する。判定結果を送信するタイミングは任意であるが、電圧取得部2052による整流電圧、電源電圧のデジタル値取得タイミングと同様に、定期的に送信してもよいし、送信制御モジュール20532がセンサにより測定された物理量を送信機100等にデータ信号として送信するタイミングに合わせて送信してもよい。
【0091】
受電状態判定モジュール20533による判定結果の送信方法は任意であり、一例として、単に「正常」「異常」(この「異常」には「受電が安定しない」「異常」の双方を含む)のみを示す2種類の信号を送信する態様、「正常」「受電状態が安定しない」「異常」を示す3種類の信号を送信する態様、さらには、
図6に示す受電状態判定モジュール20533の4パターンを示す4種類の信号を送信する態様のいずれであってもよい。
【0092】
<1.5 動作例>
以下、マイコン205の動作の一例について説明する。
【0093】
図7は、マイコン205のメイン動作の一例を表すフローチャートである。
図7のフローチャートに示す動作は、タイマー20521に基づくタイミングに合わせて開始されてもよい。また、
図7のフローチャートに示す各々のステップの動作順序は図示したものに限定されず、適宜動作順序の入替等が可能である。一例として、ステップS600及びS601に示す電源電圧及び整流電圧の取得の順序に限定はなく、非同期で取得されてもよく、また、同時に取得されてもよい。
【0094】
ステップS600及びステップS601において、DMAコントローラ20522は、A/D変換部2051から電源電圧及び整流電圧のデジタル値を取得する。DMAコントローラ20522は、取得した電源電圧及び整流電圧のデジタル値を、少なくとも一時的にリングバッファ20523に格納する。
【0095】
次いで、ステップS602において、制御部2053は、ステップS600、S601において取得した電源電圧及び整流電圧の電圧値を判定テーブル20542と照合する。具体的には、例えば、制御部2053は、受電状態判定モジュール20533により、ステップS600、S601において取得した電源電圧及び整流電圧の電圧値を判定テーブル20542と照合する。ステップS602における判定テーブル20542との照合動作はステップS600、S601の直後に行う必要はなく、ステップS600、S601による電圧値取得タイミングと独立して行ってもよい。以下、ステップS603、S604に動作についても同様に、ステップS600、S601の直後に行う必要はなく、ステップS600、S601による電圧値取得タイミングと独立して行ってもよい。
【0096】
次いで、ステップS603において、制御部2053は、ステップS602における照合結果に基づいて、受信機200の受電状態を判定する。具体的には、例えば、制御部2053は、受電状態判定モジュール20533により、ステップS602における照合結果に基づいて、受信機200の受電状態を判定する。
【0097】
そして、ステップS604において、制御部2053は、ステップS603における判定結果を送信機100等に送信する。具体的には、例えば、制御部2053は、受電状態判定モジュール20533及び送信制御モジュール20532により、ステップS603における判定結果を送信機100等に送信する。
【0098】
<1.6 一実施形態の効果>
以上詳細に説明したように、本実施形態のWPTシステム1によれば、ワイヤレス給電がされる受信機200において、この受信機200の受電状態を判定することができる。
【0099】
具体的には、仮に電源電圧及び整流電圧の電圧値を送信機100等に逐次送信する構成であると、受信機200が頻繁に送信機100等にデータ送信を行う必要があり、受信機200の電力消費が大きくなる可能性が高い。さらに、
図1に示す構成のように、送信機100等が複数の受信機200からのデータ送信を受信する場合、送信機100等の演算負担が大きくなる可能性が高い。
【0100】
本実施形態のWPTシステム1によれば、受信機200が2種類の閾値(第1の閾値、第2の閾値)と電源電圧、整流電圧の電圧値とを比較し、この比較結果に基づいて受信機200の受電状態を判定しているので、受信機200、送信機100のいずれの演算負荷を軽減することができる。加えて、電源電圧、整流電圧のいずれについても閾値との比較を行い、この比較結果に基づいて受信機200の受電状態を判定しているので、受信機200の受電状態の詳細かつ精度高く判定することができる。
【0101】
そして、この受電状態判定に基づいて、受信機200の受電状態が異常状態(
図5の判定テーブル20542における電源電圧、整流電圧がいずれも×)に突入する前に、異常状態への突入の可能性を受信機200が通知し、この通知に基づいてWPTシステム1の管理者、あるいは第1情報処理装置300、第2情報処理装置400が適切な管理をすることができる。この管理には、受電状態が安定しない受信機200にワイヤレス給電を行っている送信機100の給電電力を上げる、送信機100の位置を変更する等の処置が含まれうる。
【0102】
また、WPTシステム1の構築時、すなわち、送信機100、受信機200の実際の配置時において、受信機200の受電状態の判定結果を取得し、この判定結果に基づいて送信機100、受信機200の設置台数、設置位置を最適化することができる。
【0103】
特に、受信機200はセンサを伴っており、センサは設置空間に対して適切な位置がある程度定まるので、受信機200を設置した上でどのようにこの受信機200に適切にワイヤレス給電を行うための送信機100の台数及び配置位置を検討し、最適化することのメリットは大きい。
【0104】
加えて、送信機100の製造業者と受信機200の製造業者が異なる場合、送信機100の構成がどのようなものであっても、受信機200の受電状態を適切に判定することができるので、運用時の相互接続性を確保、保証することができる。つまり、ベストエフォート型ではないWPTシステム1を構築することができる。
【0105】
さらに、マイコン205が、受信機200の受電状態の判定結果、特に電源電圧が閾値以下である場合、受信機200を省電力モードで動作させてもよい。つまり、電源電圧が閾値以下であるとマイコン205等の動作継続が困難になる可能性が高くなるので、受信機200を省電力モードで動作させることが好ましい。省電力モードの一例としては、送信機100等へのセンサ検出結果の送信間隔を長くする、受信機200が動作していることを示すためのLED等の点灯手段の点滅間隔を長くする、さらには、マイコン205が低消費電力モードを有する場合はこの低消費電力モードに移行する、などがある。省電力モードの移行を判定するための閾値は、第2の閾値と異なる値であってよい。
【0106】
さらに、本実施形態では、A/D変換部2051によって変換された電源電圧及び整流電圧のデジタル値を、DMAコントローラ20522が取得してリングバッファ20523に転送し、後続の受電状態の判定処理に使用している。このような構成とすることにより、制御部2053として機能するプロセッサを常時起動させずとも電源電圧及び整流電圧を取得することができ、省電力を実現することができる。
【0107】
また、電源電圧及び整流電圧のデジタル値を一時的に格納するためのバッファメモリとしてリングバッファを用いているため、マイコン205の記憶領域を抑えた形で、A/D変換部2051が変換したデジタル値を後続の処理に利用することが可能となる。
【0108】
<1.7 変形例>
上述した本実施形態のWPTシステム1では、受信機200のマイコン205がA/D変換部2051を有する構成であった。しかし、本実施形態のWPTシステム1において、電源電圧、整流電圧のデジタル値を取得する構成はこれに限られない。一例として、マイコン205への入力前段に、第1の閾値及び第2の閾値との電圧値比較を行うコンパレータを配置し、マイコン205にはコンパレータの出力値が入力される構成であってもよい。この場合、コンパレータの出力値はデジタル値であり得るので、A/D変換部2051を設ける必要がない。また、コンパレータの代わりにリセットICを用いてもよい。
【0109】
このように、電源電圧及び整流電圧と第1の閾値及び第2の閾値との比較演算を、マイコン205の内部処理によらない構成も十分可能である。
【0110】
また、上述した本実施形態のWPTシステム1では、電源電圧及び整流電圧と第1の閾値、第2の閾値との比較を行っていたが、これら第1の閾値、第2の閾値が複数の閾値を有してもよい。つまり、第1の閾値、第2の閾値として電圧値がそれぞれ異なる複数の閾値を有し、電源電圧及び整流電圧が、それぞれ、第1の閾値、第2の閾値のうちいずれの閾値以下、または未満であるか否かによって詳細な受電状態判定を行ってもよい。
【0111】
<2.第2実施形態>
図8~
図15を参照し、本開示の第2実施形態について説明する。第1実施形態では、制御部2053が備える受電状態判定モジュール20533によって、受信機200の受電状態が判定される。これに対して、第2実施形態は、受信機200の受電状態の判定を、制御部2053とは異なる受電状態判定部2055が行う。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0112】
図8に示すように、第2実施形態における受信機200のマイコン205は、制御部2053とは異なる受電状態判定部2055を備える。すなわち、受電状態判定部2055は、制御部2053として機能するプロセッサと異なる電子回路によって構成される。
【0113】
図9に示すように、受電状態判定部2055は、勾配算出部20551と、勾配比較部20552と、電源電圧比較部20553と、整流電圧比較部20554と、判定部20555を備える。受電状態判定部2055は、リングバッファ20523に記憶された電源電圧または整流電圧のデジタル値(以下、電源電圧値または整流電圧値ともいう)に基づいて、以下で説明する処理を行う。なお、受電状態判定部2055は、DMAコントローラ20522が実行するDMA転送によって、リングバッファ20523に記憶されている電圧値を取得する仕様としてもよい。
【0114】
図10を参照して、勾配算出部20551および勾配比較部20552の構成を説明する。勾配算出部20551は、電源電圧の単位時間あたりの差分(すなわち、勾配値)を算出する。一例として、勾配算出部20551は、減算器20551aを備える。減算器20551aは、リングバッファ20523に記憶されている最新の電源電圧値Vb(t)と、前回の電源電圧値Vb(t-1)とに基づいて、電源電圧の勾配値ΔVb(t)を算出する。一例として、所定の間隔Δtごとに電源電圧値がリングバッファ20523に格納される場合は、電源電圧値Vb(t)と前回の電源電圧値Vb(t-1)の差分値を、所定の間隔Δtで割った値が勾配値ΔVb(t)として算出される。
【0115】
勾配比較部20552は、勾配算出部20551が算出した勾配値ΔVb(t)と、所定の閾値との比較を行う。一例として、勾配比較部20552は、第1勾配比較器20552aと第2勾配比較器20552bを備える。第1勾配比較器20552aは、記憶部2054に記憶されている第1勾配閾値THS1と、電源電圧の勾配値ΔVb(t)を比較する。第2勾配比較器20552bは、記憶部2054に記憶されている第2勾配閾値THS2と、電源電圧の勾配値ΔVb(t)を比較する。
【0116】
図11は、記憶部2054に記憶されている判定テーブル20542のひとつである勾配判定テーブル20542aの一例を示す図である。勾配判定テーブル20542aは、電源電圧の勾配値ΔVb(t)が所定の条件を満たした場合の出力値を記憶する。一例として、
図11に示す通り、勾配比較部20552は、「電源電圧の勾配値ΔVb(t)≧第1勾配閾値THS1」の場合に出力値S1を1として出力して、それ以外の場合にはS1を0として出力する。また、勾配比較部20552は、「電源電圧の勾配値ΔVb(t)≧第2勾配閾値THS2」の場合に出力値S2を1として出力して、それ以外の場合にはS2を0として出力する。
【0117】
このようにすることにより、出力値S1および出力値S2がともに1の場合には、電源電圧の状態(ステータス)としては、「増加」傾向であると判断できる。また、出力値S1が1であって、出力値S2が0の場合には、電源電圧の状態としては、「安定」傾向であると判断できる。また、出力値S1および出力値S2がともに0の場合には、電源電圧の状態としては、「減少」傾向であると判断できる。なお、第1勾配閾値THS1および第2勾配閾値THS2の具体的な値は、受信機200または送信機100の仕様に合わせて適宜設定すればよい。
【0118】
図12を参照して、電源電圧比較部20553の構成を説明する。電源電圧比較部20553は、リングバッファ20523に記憶されている最新の電源電圧値Vb(t)と、所定の閾値との比較を行う。一例として、電源電圧比較部20553は、第1電圧比較器20553aと第2電圧比較器20553bを備える。第1電圧比較器20553aは、記憶部2054に記憶されている第1電圧閾値THV1と、電源電圧値Vb(t)を比較する。第2勾配比較器20552bは、記憶部2054に記憶されている第2電圧閾値THV2と、電源電圧値Vb(t)を比較する。
【0119】
図13は、記憶部2054に記憶されている判定テーブル20542のひとつである電圧判定テーブル20542bの一例を示す図である。電圧判定テーブル20542bは、電源電圧値Vb(t)が所定の条件を満たした場合の出力値を記憶する。一例として、
図13に示す通り、電源電圧比較部20553は、「電源電圧値Vb(t)≧第1電圧閾値THV1」の場合に出力値V1を1として出力して、それ以外の場合にはV1を0として出力する。また、電源電圧比較部20553は、「電源電圧値Vb(t)≧第2電圧閾値THV2」の場合に出力値V2を1として出力して、それ以外の場合にはV2を0として出力する。
【0120】
このようにすることにより、出力値V1および出力値V2がともに1の場合には、電源電圧の状態としては、「良好」であると判断できる。また、出力値V1が1であって、出力値V2が0の場合には、電源電圧の状態としては、「通常」であると判断できる。また、出力値V1および出力値V2がともに0の場合には、電源電圧の状態としては、「不良」であると判断できる。なお、第1電圧閾値THV1および第2電圧閾値THV2の具体的な値は、受信機200または送信機100の仕様に合わせて適宜設定すればよい。
【0121】
図14を参照して、整流電圧比較部20554の構成を説明する。整流電圧比較部20554は、リングバッファ20523に記憶されている整流電圧値Vr(t)と、所定の閾値との比較を行う。一例として、整流電圧比較部20554は、整流電圧比較器20554aを備える。整流電圧比較器20554aは、記憶部2054に記憶されている整流電圧閾値THR1と、整流電圧値Vr(t)を比較する。
【0122】
図15は、記憶部2054の記憶されている判定テーブル20542のひとつである整流電圧判定テーブル20542cの一例を示す図である。整流電圧判定テーブル20542cは、整流電圧値Vr(t)が所定の条件を満たした場合の出力値を記憶する。一例として、
図15に示す通り、整流電圧比較部20554は、「整流電圧値Vr(t)≧整流電圧閾値THR1」の場合に出力値R1を1として出力して、それ以外の場合にはR1を0として出力する。
【0123】
このようにすることにより、出力値R1の場合には、整流電圧の状態としては、「良好」であると判断できる。また、出力値R1が0の場合には、整流電圧の状態としては、「不良」であると判断できる。なお、整流電圧閾値THR1および整流電圧閾値THR2の具体的な値は、受信機200または送信機100の仕様に合わせて適宜設定すればよい。
【0124】
図16を参照して、判定部20555の構成を説明する。判定部20555は、勾配比較部20552が出力した出力値S1および出力値S2と、電源電圧比較部20553が出力した出力値V1および出力値V2と、整流電圧比較部20554が出力した出力値R1とに基づいて、受信機200の受電状態を判定する。一例として、判定部20555は、判定用比較器20555aを備える。
【0125】
図17は、記憶部2054の記憶されている判定テーブル20542のひとつである受電状態判定テーブル20542dの一例を示す図である。受電状態判定テーブル20542dは、入力値として受け付けたS1、S2、V1、V2、R1の値と、出力値O1との関係を記憶する。なお、
図17においては、視認性の観点から受電状態判定テーブル20542dを3つ(すなわち、受電状態判定テーブル20542d1~20542d3)に分けて図示している。
【0126】
一例として、S1およびS2がともに1であり(すなわち、電源電圧が増加傾向)、V1およびV2がともに1であり(すなわち、電源電圧が良好)、R1が1(すなわち、整流電圧が良好)の場合は、出力値O1として0を出力する。また、S1およびS2がともに1であり(すなわち、電源電圧が増加傾向)、V1およびV2がともに0であり(すなわち、電源電圧が不良)、R1が1(すなわち、整流電圧が良好)の場合は、出力値O1として1を出力する。
【0127】
出力値О1が0であることは、受信機200の受電状態が正常であることを意味する。また、出力値О1が1であることは、受信機200の受電状態が不良であることを意味する。このように出力値О1が1となった場合、制御部2053として機能するプロセッサを起動させ、予め定められた受電状態が不良の場合の処理(例えば省電力モードへの切替処理)を実行させる仕様としてもよい。
【0128】
このようにして、本開示の第2実施形態では、プロセッサを起動することなく、受信機200の受電状態を判定することができるため、受信機200内の省電力を実現することが可能となる。
【0129】
また、本実施形態では、勾配算出部20551が電源電圧の勾配値を算出することにより、電源電圧が上昇傾向または下降傾向にあるかを考慮して受電状態を判定している。このように、電源電圧の値、電源電圧の上昇/下降傾向、および整流電圧の値に基づいて受信機200の受電状態を判定することにより、将来の電源電圧の状態を推定することができる。一例として、電源電圧が下降傾向にあるものの、整流電圧が第1の閾値を上回っていれば、その後、電源電圧が復活して、今ある下降傾向は続かない(電源電圧の低下が将来想定されない)と判定することができる。
【0130】
なお、電源電圧の上昇傾向/下降傾向についてさらに2段階の定義を設けてもよい。つまり、電源電圧の上昇/下降の傾きにも閾値を設け、この閾値を上回る電源電圧の上昇/下降があるかどうかで状態の定義を変えてもよい。このように、電源電圧の上昇/下降の傾きに関する閾値の数は任意に設定可能である。
【0131】
<3. 付記>
なお、上記した実施形態は本開示を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【0132】
一例として、上述した各実施形態において、受信機の受電状態判定は主に受信機200で行っていたが、受信機200が送信機100、第1情報処理装置300に整流電圧及び電源電圧の値(デジタル値)を信号として送信し、送信機100、第1情報処理装置300が、受信機200から送信された整流電圧等の値に基づいて受信機200の受電状態を判定してもよい。つまり、
図4において、受電状態判定モジュール20533を送信機100または第1情報処理装置300の少なくとも一方に設け、送信制御モジュール20532が、電圧取得部2052が取得した整流電圧及び電源電圧を送信機100または第1情報処理装置300の少なくとも一方に送信する構成も可能である。
【0133】
また、上述した各実施形態においては交流信号からなる送信電力を送信機100から無線で受信機200に送信する、いわゆるWPTシステム1への適用について説明していたが、それ以外の手法により受信機200に電力を提供するシステムへの適用も当然に可能である。このようなシステムは既知であるので詳細な説明は割愛するが、一例として、太陽光発電により生成した電力を有線/無線を問わずに受信機200に送出するシステム、さらには、レーザー光により電力を有線/無線を問わずに受信機200に送出するシステム等が挙げられる。他に、振動や音を受信機200に与え、受信機200が振動等のパワーを電力に変換する構成であっても適用可能である。加えて、交流信号からなる送信電力を無線で受電する以外の、既知の非接触給電技術、一例として磁界結合方式による非接触給電技術を用いたシステムにも当然に適用可能である。
【0134】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、本発明は、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をコンピュータに提供し、そのコンピュータが備えるプロセッサが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、SSD、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0135】
また、本実施例に記載の機能を実現するプログラムコードは、例えば、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0136】
さらに、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することによって、それをコンピュータのハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、コンピュータが備えるプロセッサが当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしてもよい。
【0137】
以上の各実施形態で説明した事項を以下に付記する。
【0138】
(付記1)
交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機であって、前記受信機は、前記送信電力を整流する整流部と、整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、電力管理部からの出力電圧により充電される充電部と、前記受信機の動作を制御する制御器と、を有し、前記制御器は、前記受信機内における所定の電圧の値を検出するステップと、前記検出するステップで検出された電圧値を、DMA(Direct Memory Access)によって、バッファメモリに格納するステップと、を実行する、受信機。
(付記2)
前記制御器は、前記検出するステップにおいて、前記整流電圧及び前記充電部の充電電圧である電源電圧を検出し、検出した前記整流電圧と当該整流電圧に対して定められた第1の閾値との比較、及び、検出した前記電源電圧と当該電源電圧に対して定められた第2の閾値との比較を行う、付記1に記載の受信機。
(付記3)
前記制御器は、前記比較の結果の少なくとも一方に基づいて、前記受信機の受電状態を判定する、付記2に記載の受信機。
(付記4)
前記制御器は、検出された所定の電圧の値に対してA/D変換を行ってデジタル値を取得し、取得した前記AD変換値を前記バッファメモリとしてのリングバッファに格納する、付記1に記載の受信機。
(付記5)
前記制御器は、前記デジタル値を取得するタイミングを定めるためのタイマーを備え、前記AD変換を行うコンバータと、前記タイマーとを対応づける、付記4に記載の受信機。
(付記6)
前記制御器は、プロセッサを起動することなく、検出した前記整流電圧と当該整流電圧に対して定められた第1の閾値との比較、及び、検出した前記電源電圧と当該電源電圧に対して定められた第2の閾値との比較を行い、前記比較の結果の少なくとも一方に基づいて、前記受信機の受電状態を判定する、付記2に記載の受信機。
(付記7)
減算器および比較器を用いて、前記整流電圧と前記電源電圧とを、それぞれの電圧毎に定められた閾値と比較し、前記受信機の受電状態を判定する、付記6に記載の受信機。
【符号の説明】
【0139】
1:WPTシステム、100:送信機、101:発振器、102:送信アンテナ、103:マイコン、104:データ送受信機、105:データ送受信アンテナ、200:受信機、201:受信アンテナ、202:整流回路、203:電力管理部、204:充電部、205:マイコン、206:データ送受信機、207:データ送受信アンテナ、300:第1情報処理装置、400:第2情報処理装置、2051:A/D変換部、2052:電圧取得部、20521:タイマー、20522:DMAコントローラ、20523:リングバッファ、2053:制御部、20531:受信制御モジュール、20532:送信制御モジュール、20533:受電状態判定モジュール、2054:記憶部、20541:アプリケーションプログラム、20542:判定テーブル、20542a:勾配判定テーブル、20542b:電圧判定テーブル、20542c:整流電圧判定テーブル、20542d:受電状態判定テーブル、2055:受電状態判定部、20551:勾配算出部、20551a:減算器、20552:勾配比較部、20552a:第1勾配比較器、20552b:第2勾配比較器、20553:電源電圧比較部、20553a:第1電圧比較器、20553b:第2電圧比較器、20554:整流電圧比較部、20554a:整流電圧比較器、20555:判定部、20555a:判定用比較器。
【要約】
【課題】ワイヤレス給電がされる受信機において、この受信機の受電状態を、省電力を実現しつつ判定する技術を提供する。
【解決手段】交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機であって、当該受信機は、当該送信電力を整流する整流部と、整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、電力管理部からの出力電圧により充電される充電部と、当該受信機の動作を制御する制御器と、を有し、当該制御器は、当該受信機内における所定の電圧の値を検出するステップと、当該検出するステップで検出された電圧値を、DMA(Direct Memory Access)によって、バッファメモリに格納するステップと、を実行する受信機が提供される。
【選択図】
図5