(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ビード分離装置
(51)【国際特許分類】
B60C 25/13 20060101AFI20240621BHJP
B60C 25/125 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B60C25/13
B60C25/125 B
(21)【出願番号】P 2023171959
(22)【出願日】2023-10-03
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000185916
【氏名又は名称】小野谷機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】宇田 公郎
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-31647(JP,A)
【文献】特開2012-192866(JP,A)
【文献】特開2012-121567(JP,A)
【文献】特開昭54-113107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 25/125-25/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ付きホイールを保持して回転軸線まわりに回転可能な回転テーブルを備える本体部と、
遊端部および前記回転軸線に平行な軸線まわりに回動自在に前記本体部に連結される基端部を有するアームと、
前記アームの前記遊端部に設けられ、前記本体部の側方に起立させた状態で配置されたタイヤ付きホイールのタイヤのビード部を押圧するためのブレードと、
圧縮空気を発生する圧縮空気圧源と、
第1方向または前記第1方向とは逆方向の第2方向に移動し、前記アームに連結されるピストン棒と、前記ピストン棒を前記第1方向に移動させるとき、前記圧縮空気が供給される第1ポートと、前記ピストン棒を前記第2方向に移動させるとき、前記圧縮空気が供給される第2ポートと、を有する複動空気圧シリンダと、
前記圧縮空気を前記第1ポートに導き、前記第2ポートから大気開放する第1流路、前記圧縮空気を前記第2ポートに導き、前記第1ポートから大気開放する第2流路、前記圧縮空気を前記第2ポートに導き、前記第1ポートに前記圧縮空気を減圧して導く第3流路のいずれかに切換可能に構成された流路構成部と、
前記圧縮空気圧源と前記第1ポートとを接続する流路に介在され、前記流路に導かれた前記圧縮空気の圧力を減圧する減圧弁と、
前記第1流路、前記第2流路、および前記第3流路のいずれかを選択可能な操作部と、を含むことを特徴とするビード分離装置。
【請求項2】
前記ブレードを、前記回転軸線に平行な軸線まわりに角変位可能に前記アームの遊端部に連結する第1連結部を含むことを特徴とする請求項1に記載のビード分離装置。
【請求項3】
前記ブレードを、水平な軸線まわりに角変位可能に前記第1連結部に連結する第2連結部を含むことを特徴とする請求項2に記載のビード分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ交換機などに備えられるビード分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワイヤまたはカーボン繊維によって補強された偏平タイヤとも呼ばれる剛性の高いタイヤは、ホイールからの取外し、またはホイールへの装着を人力によって行うことが困難であるため、タイヤチェンジャまたはタイヤ交換機とも呼ばれるタイヤ交換装置が用いられている。このタイヤ交換装置には、剛性の高いタイヤのビード部をホイールのリブ部から分離するためのビード分離装置が備えられている。このようなビード分離装置は、たとえば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のビード分離装置では、タイヤのビード部をホイールのリム部から分離するとき、ビード部は、複動空気圧シリンダによって駆動されるブレードによって高い押圧力で押圧された状態で分離されるので、ビード部がリム部から外れたとき、ブレードが受けるビード部からの反力が急激に低下し、ブレードが複動空気圧シリンダの圧力の作用によってリム部に接触し、リム部を損傷してしまうおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、ビード部がリム部から分離されたとき、ブレードの急激な反力の低下によって、ブレードがリム部に接触して損傷することが抑制されたビード分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤ付きホイールを保持して回転軸線まわりに回転可能な回転テーブルを備える本体部と、
遊端部および前記回転軸線に平行な軸線まわりに回動自在に前記本体部に連結される基端部を有するアームと、
前記アームの前記遊端部に設けられ、前記本体部の側方に起立させた状態で配置されたタイヤ付きホイールのタイヤのビード部を押圧するためのブレードと、
圧縮空気を発生する圧縮空気圧源と、
第1方向または前記第1方向とは逆方向の第2方向に移動し、前記アームに連結されるピストン棒と、前記ピストン棒を前記第1方向に移動させるとき、前記圧縮空気が供給される第1ポートと、前記ピストン棒を前記第2方向に移動させるとき、前記圧縮空気が供給される第2ポートと、を有する複動空気圧シリンダと、
前記圧縮空気を前記第1ポートに導き、前記第2ポートから大気開放する第1流路、前記圧縮空気を前記第2ポートに導き、前記第1ポートから大気開放する第2流路、前記圧縮空気を前記第2ポートに導き、前記第1ポートに前記圧縮空気を減圧して導く第3流路のいずれかに切換可能に構成された流路構成部と、
前記圧縮空気圧源と前記第1ポートとを接続する流路に介在され、前記流路に導かれた前記圧縮空気の圧力を減圧する減圧弁と、
前記第1流路、前記第2流路、および前記第3流路のいずれかを選択可能な操作部と、を含むことを特徴とするビード分離装置である。
【0007】
また本発明は、前記ブレードを、前記回転軸線に平行な軸線まわりに角変位可能に前記アームの遊端部に連結する第1連結部を含むことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記ブレードを、水平な軸線まわりに角変位可能に前記第1連結部に連結する第2連結部を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流路選択部は、第1流路、第2流路、および第3流路のいずれかが操作部によって選択される。第1流路が選択された場合には、第1ポートに圧縮空気が供給され、第2ポートから圧縮空気が大気開放されるので、複動空気圧シリンダのピストン棒を第1方向に移動させて、ブレードを本体部から離反させ、本体部とブレードとの間にタイヤの搬入空間を形成することができる。また操作部によって第2流路が選択された場合には、第2ポートに圧縮空気が供給され、第1ポートから圧縮空気が大気開放されるので、ピストン棒を第2方向に移動させて、ブレードによってビード部を押圧し、ビード部リム部から分離することができる。ビード部がリム部から分離される直前のタイミングで、作業者によって操作部が操作されて第3流路が選択されると、第2ポートに圧縮空気が供給され、第1ポートに減圧弁によって減圧された圧縮空気が供給される。これによってビード部がリム部から分離してブレードへのビード部からの反力が急激に低下しても、ピストン棒の第2方向への移動は、減圧弁によって減圧された圧縮空気の圧力によって制動され、ブレードの第2方向への急激な変位が抑制される。これによってブレードの第2方向への衝撃が緩和され、ホイールのブレードの接触による損傷が抑制される。
【0010】
また本発明によれば、ブレードが第1連結部によってアームの遊端部に連結されるので、ホイールに装着されるタイヤのサイズに応じてブレードの位置を、回転軸線に平行な軸線まわりに調整して、タイヤのビード部のホイールのリム部近傍に位置決めすることができる。これによって、ブレードの押圧位置をビード部に対向する位置に配置して、ビード分離作業を行うことができ、タイヤのサイズが異なる場合であっても、ビード分離作業を円滑に行うことができ、作業性を向上することができる。
【0011】
また本発明によれば、ブレードと第1連結部とが第2連結部によって連結されるので、ホイールに装着されるタイヤのサイズに応じてブレードの位置を、水平な軸線まわりに調整して、ブレードの押圧位置をビード部に対向する位置に位置決めすることができる。これによって、ブレードをタイヤの大きさに応じて適切な位置に配置し、ビード分離作業を行うことができ、ビード分離作業を円滑化し、作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態のビード分離装置1を簡略化して示す平面図である。
【
図2】ビード分離装置1を
図1の下方から見た側面図である。
【
図3】ビード分離装置1のプレート3とアーム5との連結構造を示す断面図である。
【
図4】
図3の切断面線IV-IVから見た断面図である。
【
図5】第1連結部11および第2連結部12の分解斜視図である。
【
図6A】流路構成部10の構成を示す空気圧回路図である。
【
図6B】流路構成部10の第1流路を説明するための空気圧回路図である。
【
図6C】流路構成部10の第2流路を説明するための空気圧回路図である。
【
図6D】流路構成部10の第3流路を説明するための空気圧回路図である。
【
図7】衝撃緩和効果の確認試験による空気圧反力R1およびばね反力R2を示すグラフである。
【
図8】ばね反力R2の測定に用いた単動空気圧シリンダCY2を示す断面図である。
【
図9】ビード分離装置1を備えるタイヤ着脱装置31の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態のビード分離装置1を簡略化して示す平面図であり、
図2は、ビード分離装置1を
図1の下方から見た側面図である。以下では、タイヤTは、金属製ワイヤまたはカーボン繊維などによって補強されたランフラットタイヤおよび偏平タイヤなどの高剛性タイヤを想定して説明する。
【0014】
本実施形態のビード分離装置1は、本体部2と、アーム5と、ブレード3と、圧縮空気圧源6と、複動空気圧シリンダCY1と、流路構成部10と、減圧弁V5(後述の
図6Aを参照)と、操作部9とを備える。本体部2は、後述の
図9および
図10に示されるように、タイヤ付きホイールを保持して鉛直方向に延びる回転軸線L31まわりに回転可能な回転テーブル34を備える。アーム5は、遊端部5aおよび回転軸線L31に平行な軸線L1まわりに回動自在に本体部2に連結される基端部5bを有する。
【0015】
ブレード3は、アーム5の遊端部5aに設けられ、本体部2の側方に起立させた状態で配置されたタイヤ付きホイールのタイヤ(以下、「ホイール既着タイヤ」または単に「タイヤ」という場合がある)Tのビード部TBを押圧するための部材である。圧縮空気圧源6は、圧縮空気を発生する。圧縮空気圧源6は、たとえば工場内に設置される空気圧縮装置および空気圧縮装置から吐出される圧縮空気が供給される工場内配管などを含んで構成されてもよい。圧縮空気圧源6からの圧縮空気は、第1管路m1に供給される。第1管路m1には、第2管路m2(後述の
図6を参照)が分岐して接続される。圧縮空気圧源6が発生する圧縮空気の圧力は、たとえば1.0MPaに設定されている。
【0016】
複動空気圧シリンダCY1は、ピストン棒7と、第1ポート8aと、第2ポート8bとを有する。ピストン棒7は、第1方向A1または第1方向A1とは逆方向の第2方向A2に移動し、アーム5に連結される。第1ポート8aには、ピストン棒7を第1方向A1に移動させるとき、圧縮空気圧源6の圧縮空気が供給される。第2ポート8bは、ピストン棒7を第2方向A2に移動させるとき、圧縮空気圧源6の圧縮空気が供給される。流路構成部10は、圧縮空気を第1ポート8aに導き、第2ポート8bから大気開放する第1流路(
図6Bを参照)、圧縮空気を第2ポート8bに導き、第1ポート8aから大気開放する第2流路(
図6Cを参照)、圧縮空気を第2ポート8bに導き、第1ポート8aに圧縮空気を減圧して導く第3流路(
図6Dを参照)のいずれかに切換可能に構成される。減圧弁V5は、圧縮空気圧源6と第1ポート8aとを接続する流路、すなわち後述する第6管路m6に介在され、この流路に導かれた圧縮空気の圧力を減圧する。操作部9は、第1流路、第2流路、および第3流路のいずれか1つまたは複数を選択可能である。
【0017】
図3は、ビード分離装置1のブレート3とアーム5との連結構造を示す断面図であり、
図4は、
図3の切断面線IV-IVから見た断面図である。
図5は、第1連結部11および第2連結部12の分解斜視図である。なお、
図3は図解を容易にするため、アーム5の側板89が省略されている。ビード分離装置1は、ブレード3を、アーム5の遊端部5aに、回転軸線L31に平行な軸線L2まわりに角変位可能に連結する第1連結部11と、ブレード3を第1連結部11の軸線L2に垂直な2つの軸線L3,L4まわりに角変位可能に連結する第2連結部12と、を含む。
【0018】
本発明の他の実施形態では、ビード分離装置1は、第1連結部11および第2連結部12のいずれか一方だけを備える構成であってもよく、または自在継手などによって全方向に角変位可能に連結する構成が採用されてもよい。
【0019】
第1連結部11は、第1軸14と、第1軸14の軸線方向両端部がたとえば溶接して固定されるブラケット15とを有する。これらの第1軸14およびブラケット15は、たとえば構造用鋼材から成る。
【0020】
ブラケット15は、たとえば直方体状であり、第1軸14が装着される第1孔15aと、第1孔15aに平行な第2孔15bとを有する。第2孔15bには、第2軸80が挿脱可能に装着される。アーム5は、上板81と、下板82と、側板89とを有する。上板81および下板82の遊端部5a側の部分には、第2軸80を挿脱可能な2つ透孔84a,84bがそれぞれ形成される。また、上板81および下板82には、第1軸14が挿通可能な挿通孔88がそれぞれ形成される。第2軸80の一端部は、外ねじが刻設された突片を有し、突片には、抜止めナット87が螺着される。抜止めナット87は、透孔84a,84bよりも大径であり、第2軸80を透孔84a,84bのいずれか一方を介してブラケット15の第2孔15bに装着したとき、上板81に抜止めナット87が係止され、第2軸80の抜け落ちが防がれる。
【0021】
各透孔84a,84bの軸線は、第1孔15aの軸線に対して、各透孔84a,84bおよび第1孔15aの軸線に垂直な仮想一平面上において、挿通孔88の軸線に関して角度θを成す。この角度θは、たとえば10°以上20°以下であってもよく、15°であってもよい。これによって、ブラケット15およびこれに連結されるブレード3を、タイヤTの大きさに応じて第1軸14の軸線まわりに、一方の透孔84aと第2孔15bとが連通する第1位置と、他方の透孔84bと第2孔15bとが連通する第2位置とに角変位させ、第2孔15bに連通している透孔84a,84bのいずれか一方を介して第2孔15bに第2軸80を挿入して、ブラケット15およびブレード3の角変位を阻止し、タイヤTにより適切な角度にブラケット15およびブレード3の向きを調整し、リム部にブレード3を当接させずにビード部TBを押圧することができる。
【0022】
第2連結部12は、ブラケット15に溶接して固定される取付片16と、取付片16がたとえば溶接して固定され、軸孔17aを有する第1案内部材17と、第1案内部材17の軸孔17aに挿入される案内軸18と、案内軸18の一端部にたとえば溶接して固定され、径孔19aを有する第2案内部材19と、第2案内部材19の径孔19aにボルト121およびナット21によって連結され、ブレード3の背面にたとえば溶接して固定されるブラケット25と、を有する。
【0023】
ブレード3は、普通乗用自動車のタイヤTのビード部TBの標準的な形状に対応する曲率で湾曲する円筒体の一部を成す鋼板またはステンレス鋼板から成り、ブレード3の一側縁部には、先細状に形成された略円弧状に延びる先端部3aが設けられる。
【0024】
ブレード3は、上記の第1連結部11によって、アーム5の遊端部5aに、回転軸線L31に平行な軸線L2まわりにそれぞれ角変位可能に連結され、第2連結部12によって、第1連結部11に、水平な軸線L3まわりに角変位可能に連結されるので、タイヤTのサイズが異なっても、ブレード3の先端部3aをビード部TBのリム部近傍に正確に位置決めしてビード部TBを押圧することができる。
【0025】
図6Aは、流路構成部10の構成を示す空気圧回路図であり、
図6Bは、流路構成部10の第1流路を説明するための空気圧回路図であり、
図6Cは、流路構成部10の第2流路を説明するための空気圧回路図であり、
図6Dは、流路構成部10の第3流路を説明するための空気圧回路図である。まず、
図6Aを参照して流路構成部10について説明する。流路構成部10は、第1操作弁V1、第2操作弁V2、第1切換弁V3、第2切換弁V4、第1逆止弁V6、および第2逆止弁V7を含む。第1操作弁V1は、第1位置から第2位置に切換えるための押ボタン85と、第2位置から第1位置に復帰するためのばねSとを有する5ポート2位置切換弁によって構成される。第2操作弁V2は、5ポート3位置切換弁によって構成され、操作しない状態では中立位置に自動復帰する。第1切換弁V3は、5ポート3位置切換弁によって構成され、2つのパイロットポートc1,c2を有し、各パイロットポートc1,c2にパイロット圧が作用しなければ中立位置に自動復帰する。第2切換弁V4は、3ポート2位置切換弁によって構成され、1つパイロットポートc1と復帰ばねSとを有する。減圧弁V5は、リリーフ付き減圧弁によって構成される。第2切換弁V4は、第1位置にあるとき、第1入力ポートa1は、テーパプラグが挿入されて閉鎖され、第2入力ポートa2には第3管路m3が接続されても、圧縮空気の放出が遮断される。
【0026】
流路構成部10は、作業者による操作部9の押ボタン85の操作によって、圧縮空気を複動空気圧シリンダCY1の第1ポート8aに導き、第2ポート8bを大気開放する第1流路(
図6Bを参照)、圧縮空気を第2ポート8bに導き、第1ポート8aを大気開放する第2流路(
図6Cを参照)、圧縮空気を第2ポート8bに導き、第1ポート8aに圧縮空気を減圧して導く第3流路(
図6Dを参照)のいずれかに切換可能に構成される。
【0027】
第1操作弁V1の押ボタン85が操作されていない未操作状態では、
図6Aに示されるように、第1操作弁V1は第1位置に位置し、圧縮空気圧源6から圧縮空気が供給される第1管路m1は第3管路m3に接続され、第1管路m1の圧縮空気が第3管路m3に供給される。第3管路m3の圧縮空気は、第2操作弁V2が中立位置にあるので、第2入力ポートa2は閉鎖されている。この状態では、ピストン棒7は、複動空気圧シリンダCY1によって停止している。
【0028】
また作業者が操作部9の操作レバー86を矢符d1方向に操作すると、
図6Bに示されるように、第2操作弁V2は中立位置から第1位置に移動して第1流路となる。したがって、圧縮空気圧源6から第1管路m1に供給される圧縮空気は、第1位置にある第1操作弁V1の第2入力ポートa2および第1出力ポートb1を経て第3管路m3に導かれ、第1位置にある第2操作弁V2の第2入力ポートa2および第1出力ポートb1を経て第7管路m7に導かれる。第7管路m7の圧縮空気は、第1切換弁V3の一方のパイロットポートc1に導かれ、第1切換弁V3を中立位置から第1位置に移動させる。したがって、圧縮空気圧源6からの圧縮空気は、第2管路m2から第1位置にある第1切換弁V3の第2入力ポートa2および第1出力ポートb1を経て第9管路m9へ導かれ、複動空気圧シリンダCY1の第1ポート8aから一方の圧力室に供給される。他方の圧力室内の空気は、第2ポート8bから第10管路m10、第2出力ポートb2および第3入力ポートa3から大気に放出される。これによってピストン棒7が第1方向A1に移動し、ブレード3と本体部2との間にタイヤTを搬入するための空間が形成される。この空間には、作業者によってタイヤTが搬入される。
【0029】
次に作業者が操作部9の操作レバー86を矢符d2方向に操作すると、
図6Cに示されるように、第2操作弁V2は中立位置から第2位置に移動して第2流路となる。したがって、圧縮空気圧源6から第1管路m1に供給される圧縮空気は、第1位置にある第1操作弁V1の第2入力ポートa2および第1出力ポートb1を経て、第3管路m3に導かれ、第2位置にある第2操作弁V2の第2入力ポートa2および第2出力ポートb2を経て第8管路m8に導かれる。第8管路m8の圧縮空気は、第1切換弁V3の他方のパイロットポートc2に導かれ、第1切換弁V3を中立位置から第2位置に移動させる。圧縮空気圧源6からの圧縮空気は、第2管路m2から第2位置にある第1切換弁V3の第2入力ポートa2および第2出力ポートb2を経て第10管路m10に導かれ、複動空気圧シリンダCY1の第2ポート8bから他方の圧力室に供給される。一方の圧力室内の空気は、第1ポート8aから第9管路m9を経て第1切換弁V3の第1出力ポートb1および第1入力ポートa1から大気に放散される。これによってピストン棒7は矢符A2方向に移動し、ブレード3によってビード部TBを押圧し、ビード部TBをリム部から分離することができる。
【0030】
ビード部TBがリム部から分離しようとすることは、ブレード3のビード部TBへの押圧力の微妙な変化によって作業者が認識できる。作業者がビード部TBがリム部から分離し始めていることを認識すると、作業者は押ボタン85を押圧する。これによって、
図6Dに示されるように、第1操作弁V1は第1位置から第2位置に移動するとともに、第2切換弁V4は第1位置から第2位置に移動する。第2操作弁V2は中立位置に自動復帰する。したがって圧縮空気圧源6の圧縮空気は、第1管路m1から第2位置にある第1操作弁V1の第2入力ポートa2および第2出力ポートb2を経て、第4管路m4に導かれる。第4管路m4の圧縮空気は、第5管路m5および第6管路m6へ導かれる。第5管路m5からの圧縮空気は、第10管路m10を経て、複動空気圧シリンダCY1の第2ポート8bから他方の圧力室に供給される。また、第6管路m6の圧縮空気は、減圧弁V5によって減圧され、第2位置にある第2切換弁V4の第2入力ポートa2および第1出力ポートb1を経て第11管路m11へ導かれ、複動空気圧シリンダCY1の第1ポート8aから一方の圧力室に供給される。
【0031】
このようにして押ボタン85を押圧すると、複動空気圧シリンダCY1の他方の圧力室に圧縮空気が供給され、一方の圧力室には減圧された圧縮空気が供給されるので、ビード部TBがリム部から離脱しても、ピストン棒7の矢符A2方向の移動が制動され、衝撃を抑制することができる。
【0032】
操作部9は、前述の第1操作弁V1を含んで構成される。流路構成部10は、前述したように、作業者が操作レバー86を矢符d1方向に操作することによって、
図6Bに示される第1流路、
図6Cに示される第2流路、および
図6Dに示される第3流路のいずれかに切換可能に構成される。押ボタン85が操作されていない未操作状態では、第1操作弁V1は第1位置に位置し、圧縮空気圧源6から圧縮空気が供給される第1管路m1が第1操作弁V1の第2入力ポートa2に接続され、第1管路m1の圧縮空気は第1出力ポートb1から第3管路m3に供給される。このとき、第2操作弁V2は中立位置にあり、第1切換弁V3も中立位置に復帰している。複動空気圧シリンダCY1の第1ポート8aおよび第2ポート8bのいずれにも圧縮空気は供給されず、作動圧力は与えられない。この状態で作業者は、ブレード3の先端部3aがビード部TBのリム部近傍に位置するように、操作レバー13を把持してブレード3を移動させて位置決め作業を行うことができる。
【0033】
再び
図2を参照して、作業者が操作レバー13を把持してブレード3を移動させると、その移動がアーム5を経てピストン棒7に伝達される。ピストン棒7は、作業者が操作レバー86を矢符d1方向に操作して第2操作弁V2を中立位置から第1位置に移動させると、第1管路m1の圧縮空気は第1操作弁V1の第2入力ポートa2および第1出力ポートb1を経て第3管路m3に流入する。第3管路m3の圧縮空気は、第1位置に位置する第2操作弁V2の第2入力ポートa2から第1出力ポートb1を経て、第7管路m7に供給される。第7管路m7の圧縮空気によって第1切換弁V3の第1パイロットポートc1が加圧され、第1切換弁V3は、中立位置から第1位置に移動される。これによって第2管路m2の圧縮空気は、第2入力ポートa2から第1出力ポートb1を経て、第9管路m9に供給される。第9管路m9の圧縮空気は、複動空気圧シリンダCY1の第1ポート8aを経て一方の圧力室に供給され、ピストン棒7は第1方向A1に駆動される。このようなピストン棒7の第1方向A1の変位によって、ピストン棒7はブレード3の本体部2から離反する方向への変位を許容可能な状態となるので、ブレード3を本体部2から離反する方向(矢符A1方向)へ移動させ、本体部2の側方には、ホイールWが装着されたタイヤTの収容空間が形成される。前記許容可能な状態とは、ブレード3を作業者が手作業によって本体部2から矢符A1方向に離反させることができる状態をいう。
【0034】
タイヤ交換のためにホイールWが装着されたタイヤTが、作業者によって本体部2の側方の収容空間に起立状態で搬入され、押ボタン85が押圧されると、第1操作弁V1は第1位置から第2位置へ移動し、第1管路m1が第2入力ポートa2に接続される。第2入力ポートa2に供給された圧縮空気は、第2出力ポートb2から第4管路m4に供給される。第4管路m4の圧縮空気は、第5管路m5および第10管路m10を経て、複動空気圧シリンダCY1の第2ポート8bから他方の圧力室に供給される。これによって、ピストン棒7は第2方向A2へ移動し、ブレード3の先端部3aによってビード部TBが押圧され、ビード部TBをリム部から分離させることができる。このとき、第4管路m4の圧縮空気は、第2切換弁V4のパイロットポートc1にも供給されるので、第2切換弁V4は第1位置から第2位置に移動されている。したがって、第6管路m6の圧縮空気は、減圧弁V5によって減圧され、第2入力ポートa2および第1出力ポートb1を経て、第11管路m11に供給される。複動空気圧シリンダCY1の一方の圧力室は、他方の圧力室に供給される圧縮空気の圧力よりも低い圧力の圧縮空気であるので、ピストン棒7の第2方向A2への変位を許容しながら、ピストン棒7の第2方向A2への急激な変位を抑制して、ピストン棒7の第2方向A2への移動を制動し、ビード部TBがリム部から外れたときに発生する衝撃を緩和することができる。
【0035】
図7は、衝撃緩和効果の確認試験による空気圧反力R1およびばね反力R2を示すグラフであり、
図8は、ばね反力R2の測定に用いた単動空気圧シリンダCY2を示す断面図である。
図7において、縦軸は反力の大きさを示し、横軸はブレード3の変位量を示す。本実施形態のビード分離装置1によるビード部TBのリム部からの分離時の衝撃に対する衝撃緩和効果を確認するため、前述の複動空気圧シリンダCY1を用いた場合を実施例とし、複動空気圧シリンダCY1に代えて
図8の単動空気圧シリンダCY2を用いた場合を比較例とし、ブレード3の変位量yに対する反力の大きさを測定した。単動空気圧シリンダCY2は、内径200mmのシリンダケース120と、シリンダケース120内に収容され、シリンダケース120内の空間を2つの圧力室21a,21bに仕切るピストン22と、ピストン22に一端部が固定されたピストン棒23と、一方の圧力室21aに収容され、ピストン22を第1方向A1にばね付勢する緩衝用ばね24とを含む。緩衝用ばね24は、ばね定数が0.753kgf/mm、自由長270mmの圧縮コイルばねである。
【0036】
上記の空気圧反力R1は、ポートから入る空気圧力×ピストン22の受圧面積によって算出した値である。ばね反力R2は、ブレード3の複数位置に対応するピストン22の位置を図面上で決定し、各位置での緩衝用ばね24の圧縮量×ばね定数によって算出した値である。
図7に示されるように、緩衝用ばね24によるばね反力R2は、ブレード3の変位量が大きくなるにつれて小さくなるのに対し、圧縮空気による空気圧反力R1は、ブレード3の位置に関わらず一定である。したがって空気圧反力R1を用いる本実施形態の複動空気圧シリンダCY1によれば、ブレード3の位置に関わらずビード部TBがリム部から離脱したときに一定の衝撃緩和効果を得ることができる。
【0037】
実施例で用いた複動空気圧シリンダCY1の第1ポート8aには、圧力が0.2MPaの圧縮空気を供給し、第2ポート8bには、圧力1.0MPaの圧縮空気を供給し、ピストン棒23の反力を測定したところ、ビード部TBがブレード3による押圧中にリム部から離脱しても、ブレード3の押圧位置に関わらずブレード3が急激に押圧方向へ変位する衝撃が緩和されることを確認した。
【0038】
図9は、ビード分離装置1を備えるタイヤ着脱装置31の一例を示す正面図であり、
図10は、タイヤ着脱装置31の平面図である。タイヤ着脱装置31は、ホイールWに装着されたタイヤTを新たなタイヤTの交換するために用いられる。タイヤ着脱装置31は、基本的に、前述のビード分離装置1と、ビード部案内装置Aと、ビードプレス装置Bと、第1タイヤ押え装置Cと、第2タイヤ押え装置Dとを含む。
【0039】
ビード部案内装置Aは、ホイールWが搭載され、ホイールWの下リム部を着脱可能に保持して回転軸線L31まわりに矢符E方向に回転駆動する回転テーブル34と、上昇方向および下降方向に変位可能に設けられる昇降アーム35と、昇降アーム35の下端部に設けられるビード案内部材36と、昇降アーム35を保持し、回転軸線L31に近接/離反する前後方向に変位する水平アーム37と、下端部を回動中心にして回転軸線L31に近接/離反する方向に傾動する支柱38とを含む。
【0040】
回転テーブル34は、回転軸線L31と同軸に載置されたホイールWを着脱自在に保持するチャック手段70を備える。このチャック手段70は、回転軸線L31に関して軸対称に4つのチャック爪71を有し、各チャック爪71は、スライダ73に搭載され、複動空気圧シリンダCY3によって相互に近接および離反する方向に変位駆動される。これらのチャック爪71は、載置されたホイールWの下リム部を半径方向外方から挟着し、ホイールWを回転軸線L31と同一軸線上に保持することができる。また、各チャック爪71を相互に離反する方向に変位させると、ホイールWの挟着状態が解除され、ホイールWを回転テーブル34上から取り外すことができる。
【0041】
回転テーブル34の基台83には、支柱38の転倒/倒立を操作するための支柱傾倒ペダルPs、スライダ73の開閉およびホイールWの固定/解除を行うためのチャッキングペダルPc、ビード分離装置1のブレード3をビード押圧方向、すなわち基台83に近接する方向へ押圧し、かつその押圧力を解除するための押ボタン85、ならびに回転テーブル34の正転・反転動作を指示するための回転指令ペダルPrが設けられる。
【0042】
ビード案内部材36は、鋼鉄またはステンレス鋼から成る昇降アーム35の下端部にボルトなどによって着脱可能に装着される取付け部材であって、回転テーブル34上にセットされたタイヤTのホイールWに対して、ホイールWの上リム部に掛合した状態で、上ビード部TBを下方から支持して該上ビード部TBを回転方向Eの下流側になるにつれて上方に案内するビード支持部41と、上リム部およびこの上リム部に密着する上ビード部TB間に割り込んで挿入される挿入部42とを備える。ビード支持部41は、回転軸線L31に垂直な仮想水平面に平行である。また挿入部42は、回転テーブル34の回転方向Eの下流側に臨んで先細状となる棒状に形成される。
【0043】
ビードプレス装置Bは、回転テーブル34上で、回転テーブル34から離反する上昇方向および回転テーブル34に近接する下降方向に変位可能に設けられるとともに、回転テーブル34の回転軸線L31に直交する水平な軸線L34に沿って、回転軸線L31に近接する前進方向および回転軸線L31から離反する後退方向に変位可能に設けられるビードプレスアーム50と、ビードプレスアーム50の回転軸線L31寄りに配置される長手方向一端部8(
図10を参照)に保持され、回転テーブル34に搭載されたタイヤTの上ビード部TBを押下した状態で回転自在に設けられるビードローラ51と、ビードプレスアーム50を長手方向に移動自在に保持するアーム保持部52とを含む。アーム保持部52は、空気圧リニアシリンダによって実現されてもよく、リニアスライダによって実現されてもよい。
【0044】
ビードローラ51は、回転軸線L31から離反するにつれて小径となる円錐台の周面状の押圧面51aを有し、ビードプレスアーム50の軸線L34および回転テーブル34の回転軸線L31を含む回転軸線L31な仮想一平面上で、底面を回転軸線L31に臨ませて、下方になるにつれて回転軸線L31から離反する方向に傾斜した軸線L33まわりに回転自在に設けられる。
【0045】
このようなビードローラ51は、ビード案内部材36が配置される位置よりも回転方向Eの下流側の予め定める角度φを成す近傍位置で、ホイールWに装着されたタイヤTの上ビード部TBを上方から押圧面の一部によって押圧することができる。タイヤTは、たとえば剛性の高いランフラットタイヤである。予め定める角度φは、回転軸線L31およびビード案内部材36が配置される位置を含む仮想一平面から前記回転テーブル34の回転方向E下流側に、30°以上でかつ90°未満(30°≦φ<90°)に選ばれる。すなわち、ビードローラ51は、回転軸線L31およびビード案内部材36が配置される位置を含む第1の仮想一平面と、回転軸線L31およびビードローラ51による押圧位置を含む第2の仮想一平面とが成す角度が30°以上でかつ90°未満の範囲に設けられる。
【0046】
第1タイヤ押え装置Cは、回転テーブル34に隣接して設けられ、回転テーブル34の回転軸線L31に平行な移動経路に沿って昇降移動する昇降体60を有する昇降手段61と、昇降手段61の昇降体60に、回転テーブル34の回転軸線L31に平行な軸線L41まわりに回転自在に連結されるアーム62と、アーム62に、回転テーブル34の回転軸線L31に平行な軸線L40まわりに回転自在に連結される、アーム62よりも上方で軸線L40まわりに回転自在に連結されるアーム63と、アーム63に、このアーム63よりも下方で軸線L35まわりに回転自在に連結されるアーム64と、アーム64に該アーム64に沿って移動可能に設けられるタイヤ押え部材65と、を含む。昇降手段61は、複動空気圧シリンダによって実現される。
【0047】
タイヤ押え部材65は、ビードローラ51が配置される位置よりも回転方向E下流側でかつビード案内部材36が配置される位置よりも回転方向E上流側の領域で、タイヤTを上方から押圧する板状の押圧部66を有し、この押圧部66によってタイヤTを上方から押圧した状態で、アーム62、アーム63,アーム64が角変位して、タイヤTの回転に追従して移動自在である。
【0048】
タイヤ押え部材65は、前述の板状の押圧部66と、押圧部66の一側部から上方へ立上がる側壁部67と、アーム64とタイヤ押え部材65とを連結する連結軸69の下端部が挿入されて連結軸69の軸線L36まわりに回動自在に連結され、側壁部67および押圧部66に一体的に形成されるボス部68とを有する。このようなタイヤ押え部材65は、強度が高く、耐衝撃性および耐摩耗性に優れ、しかもタイヤTに対して滑り性の良好な材料、たとえばポリカーボネートから成ってもよい。
【0049】
第2タイヤ押え装置Dは、タイヤTの回転に追従して移動する押圧体53を有し、ビードローラ51よりもタイヤTの回転方向E下流側で、かつ第1タイヤ押え装置Cの押圧部66よりもタイヤTの回転方向E上流側の位置で、タイヤTの上サイドウォール部を押圧する。押圧体53は、たとえばアセタールコポリマーおよびホモポリマーを原料とした、たとえば日本ポリペンコ株式会社製のポリペンコアセタールを用いて作製される、下方に向かって拡径された円錐台状部材である。押圧体53は、円錐台状部材の下面がタイヤTの上サイドウォール部に当接してタイヤTの上サイドウォール部を押圧する。第2タイヤ押え装置Dは、ホイールWにタイヤTを装着するときに使用される。
【0050】
第2タイヤ押え装置Dは、軸線L37まわりに回転自在に連結されるアーム75と、アーム75に、軸線L37に平行な軸線L38まわりに回転自在に連結されるアーム76と、アーム76の先端部の、軸線L38上に沿って昇降移動する駆動部74と、を有し、押圧体53は、軸線L38に平行な軸線L39まわりに回転自在に配設されている。軸線L37~L39は、回転軸線L31から上方に向かうにつれて回転軸線L31から離反する方向に傾斜させることもできる。このようにすると、押圧体53は、タイヤTを押圧していない状態では、回転軸線L31から離反する方向に移動するので、押圧体53が不用意に、ビードプレス装置Bなどに接触することを抑制して、上ビード部TBをホイールWのリム部から分離することができる。
【0051】
ホイール既着タイヤTを起立させた状態でビード分離装置1のブレード3をホイールWより10mm~20mm程度離した位置にセットする。この状態でビード分離装置1の押ボタン85を押下すると、ブレード3がタイヤTに近づく第2方向A2に移動し、タイヤTの上ビード部TBを押圧し、上ビード部TBをホイールWのドロップ部へ落とし込む。次にタイヤTを裏返して、ブレード3をホイールWより10mm~20mm程度離れた位置にセットする。この状態でビード分離装置1の押ボタン85を押下すると、ブレード3がタイヤTに近づく第2方向A2に移動し、タイヤTの下ビード部TBを押圧し、下ビード部TBをホイールWのドロップ部へ落とし込む。この後、タイヤTを回転テーブル34に乗載し、タイヤ交換作業が行われる。
【0052】
タイヤ交換作業では、ビード部TBがリム部から分離されたホイール既着タイヤTを作業者が回転テーブル34に乗載する。次に、作業者がチャッキングペダルPcを踏込むことによって、下リム部がチャック爪71によって把持されて、ホイールWが回転テーブル34に固定され、作業者が回転指令ペダルPrを踏込んで、ホイール既着タイヤTを回転軸線L31まわりに回転させ、ビード案内部材36によって上ビード部TBをホイールWの上リム部から離脱させる。その後、タイヤTの下サイドウォール部を押上げローラ78によって押し上げ、タイヤTをホイールWから離脱させることができる。
【0053】
次に、作業者が新たなタイヤTをホイールWに乗載し、タイヤ押え部材65によってタイヤTの上サイドウォール部を押えた状態で、上ビード部TBをビード案内部材36に掛止め、前述のチャッキングペダルPcを作業者が踏込んで、タイヤTをホイールWとともに回転軸線L31まわりに回転させることによって、上ビード部TBがビード案内部材36によって上リム部の下へ案内され、新たなタイヤTがホイールWに装着される。
【0054】
新たなタイヤTがホイールWに装着されると、作業者は回転指令ペダルPrを踏込んで回転テーブル34の回転を停止させた後、チャッキングペダルPcを踏込むことによって、各チャック爪71をホイールWの下リム部から離反させてホイールWのチャック状態を解除する。その後、作業者は回転テーブル34から新たなタイヤTに交換されたホイール既着タイヤTを降ろして、タイヤ交換作業が終了する。
【0055】
本発明によれば、第1流路、第2流路、および第3流路のいずれかが操作部9によって選択される。ビード部TBがリム部から分離する直前のタイミングで、作業者によって操作部9が操作されて第3流路が選択されると、複動空気圧シリンダCY1の第2ポート8bに圧縮空気が供給され、複動空気圧シリンダCY1の第1ポート8aに減圧された圧力の圧縮空気が供給される。これによってピストン棒7は、第2方向A2への移動が減圧された圧縮空気の圧力によって制動され、急激なブレード3の第2方向A2への変位が抑制され、ホイールWのリム部のブレード3の接触による損傷が抑制される。
【0056】
また本発明によれば、ブレード3が第1連結部11によって回転軸線L31に平行な軸線まわり角変位可能に連結されるので、ホイールWに装着されるタイヤTのサイズに応じてブレード3のビード部TBへの押圧位置を回転軸線L31に平行な軸線まわりに調整することができる。したがって、高精度でビード部TBのリム部近傍にブレード3の先端部3aが位置するように押圧位置を調整し、適切な押圧位置にブレード3を位置決めして配置することができ、これによって、ビード部TBをリム部からより確実に分離することができる。
【0057】
また本発明によれば、第1連結部11が第2連結部12によって水平な軸線まわりに角変位可能に連結されるので、ホイールWに装着されるタイヤTのサイズに応じてブレード3のビード部TBへの押圧位置を水平な軸線まわりに調整することができる。したがって、高精度でビード部TBのリム部近傍にブレード3の押圧位置を調整し、適切な押圧位置にブレード3を位置決めして配置することができ、これによって、ビード部TBをリム部からより確実に分離することができる。
【0058】
また本発明によれば、第1ポート8aに導かれる圧縮空気の圧力が減圧弁V5によって減圧されるので、減圧弁V5の設定圧力をビード部TBの硬さに応じた最適な値に容易に設定可能であり、ビード部TBがリム部から分離したときの衝撃の発生をより確実に抑制することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、また、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
1 ビード分離装置
2 本体部
3 ブレード
5 アーム
5a 遊端部
5b 基端部
6 圧縮空気圧源
7 ピストン棒
8a 第1ポート
8b 第2ポート
9 操作部
10 流路構成部
11 第1連結部
12 第2連結部
A1 第1方向
A2 第2方向
CY1 複動空気圧シリンダ
L1 軸線
L31 回転軸線
m1~m11 第1管路~第11管路
T ホイール装着タイヤ
TB ビード部
V1 第1操作弁
V2 第2操作弁
V3 第1切換弁
V4 第2切換弁
V5 減圧弁
V6 第1逆止弁
V7 第2逆止弁
【要約】
【課題】 ビード分離装置を提供する。
【解決手段】 ビード分離装置1は、本体部2と、アーム5と、アーム5の遊端部に設けられるブレード3と、圧縮空気圧源6と、第1ポート8aと第2ポート8bとを有する複動空気圧シリンダCY1と、圧縮空気を第1ポート8aに導き、第2ポート8bから大気開放する第1流路、圧縮空気を第2ポート8bに導き、第1ポート8aから大気開放する第2流路、圧縮空気を第2ポート8bに導き、第1ポート8aに圧縮空気を減圧して導く第3流路のいずれかに切換可能に構成された流路構成部10と、圧縮空気圧源6と第1ポート8aとを接続する流路に介在され、該流路に導かれた圧縮空気の圧力を減圧する減圧弁V5と、第1流路、第2流路、および第3流路のいずれかを選択可能な操作部9と、を含む。
【選択図】
図1