(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】蓋付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 43/22 20060101AFI20240621BHJP
A45D 33/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B65D43/22 100
A45D33/00 610F
(21)【出願番号】P 2020199190
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】砂川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓太
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-057312(JP,U)
【文献】実開昭63-064650(JP,U)
【文献】特開2003-118763(JP,A)
【文献】実開昭60-103406(JP,U)
【文献】実公昭55-047152(JP,Y2)
【文献】特開2018-039568(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1563224(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/22
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被係止部(15)を有して内容物を収容する容器本体(10)と、
前記被係止部(15)を係止する係止突起(35a)を有して前記容器本体(10)
に対して開閉
可能に設けられた蓋体(30)と、前記容器本体(10)に対して蓋体(30)を開閉自在に連結するヒンジ(20)と、前記蓋体(30)に回転可能に設けられた回転体(40)と、を有して構成される蓋付き容器であって、
前記回転体(40)とこれと対向する前記容器本体(10)の一方に、
一対の持ち上げ突起(45)が設けられ、他方に前記
一対の持ち上げ突起(45)が挿入されると共に溝底から上面(13)に続く斜面(16a)を備えた
一対の移動溝(16)が形成され
、更に前記一対の持ち上げ突起(45)に形成された係止片(45a)と前記一対の移動溝(16)に形成された被係止片(16b)とによる一対のロック機構が前記被係止部(15)及び前記係止突起(35a)を挟んで周方向の両側の位置に設けられており、
前記回転体(40)を開方向に回転させたときに
は、前記
一対の移動溝(16)内を移動した前記
一対の持ち上げ突起(45)が前記斜面(16a)上を乗り上げることで前記蓋体(30)
を開く方向に押し上げ
、前記一対のロック機構をロック解除状態に設定すると同時に、前記係止突起(35a)と前記被係止部(15)との係止が解除された開蓋状態に設定されることを特徴とする蓋付き容器。
【請求項2】
前記回転体(40)を閉方向に回転させたときには、前記一対の移動溝(16)内を移動した前記一対の持ち上げ突起(45)が前記斜面(16a)を下ることで前記蓋体(30)を閉じる方向に押し下げ、前記一対のロック機構をロック状態に設定すると同時に、前記係止突起(35a)が前記被係止部(15)を係止する閉蓋状態に設定される請求項1記載の蓋付き容器。
【請求項3】
蓋体(30)に固定された蓋側模様円板(51)と回転体(40)に固定された透明又は半透明な回転体側模様円板(55)とを対向配置させることで形成される意匠部(50)が設けられ、前記回転体(40)に形成された窓部(42)を介して前記意匠部(50)の模様が視認可能とされている請求項1又は2記載の蓋付き容器。
【請求項4】
意匠部(50)の模様は、蓋側模様円板(51)に中心側から径方向外側に向かって放射状に延びる多数の線により形成した模様と、回転体側模様円板(55)に前記蓋側模様円板(51)側の模様を反転させた模様とによって形成されている請求項3記の蓋付き容器。
【請求項5】
回転体(40)は、蓋体(30)を覆うように全周に渡って連続して延びるリング状の部材で形成されている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蓋付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤作動によって蓋体が開放されることを防止した蓋付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
蓋付きの容器の一種として、内容物を収容する容器本体と、容器本体の背部ヒンジを介して開閉自在に連結された蓋体と、容器本体と蓋体との間を閉状態に保持するための機構とを備えるコンパクト容器などは従来からよく知られている。
例えば、特許文献1に記載のコンパクト容器にあっては、容器の手前側(ヒンジの逆側)に、蓋体の閉状態を維持するためのフック機構が設けられており、容器本体に設けられたフックピースを押し込んで係合状態を解除することによって、蓋体が開くように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の蓋付き容器(コンパクト容器)にあっては、フックピースが常時外部に露出する構成であることから、例えばバックの中に入れて持ち歩いているうちに、フックピースが押されて蓋体が開いてしまうといった誤作動が起きやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、誤作動による蓋体の開放を抑制できる蓋付き容器を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、
被係止部を有して内容物を収容する容器本体と、被係止部を係止する係止突起を有して前記容器本体に対して開閉可能に設けられた蓋体と、容器本体に対して蓋体を開閉自在に連結するヒンジと、前記蓋体に回転可能に設けられた回転体とを有して構成される蓋付き容器であって、
回転体とこれと対向する前記容器本体の一方に、一対の持ち上げ突起が設けられ、他方に前記一対の持ち上げ突起が挿入されると共に溝底から上面に続く斜面を備えた一対の移動溝が形成され、更に前記一対の持ち上げ突起に形成された係止片と前記一対の移動溝に形成された被係止片とによる一対のロック機構が前記被係止部及び前記係止突起を挟んで周方向の両側の位置に設けられており、
前記回転体を開方向に回転させたときには、前記一対の移動溝内を移動した前記一対の持ち上げ突起が前記斜面(上を乗り上げることで前記蓋体を開く方向に押し上げ、前記一対のロック機構をロック解除状態に設定すると同時に、前記係止突起と前記被係止部との係止が解除された開蓋状態に設定されることを特徴とする、と云うものである。
本発明の主たる手段では、回転体を回転させると、蓋体が持ち上がって開蓋状態とすることができる。
また回転体を開方向に回転させると、ロック機構のロック状態を解除することができるため、誤作動によって蓋体が開放されてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0007】
また本発明は、上記主たる手段に、前記回転体を閉方向に回転させたときには、前記一対の移動溝内を移動した前記一対の持ち上げ突起が前記斜面を下ることで前記蓋体を閉じる方向に押し下げ、前記一対のロック機構をロック状態に設定すると同時に、前記係止突起が前記被係止部を係止する閉蓋状態に設定される、との手段を加えたものである。
上記手段では、回転体を閉方向に回転させると、ロック機構をロック状態に設定することができる。
【0008】
また本発明は、上記いずれかの手段に、蓋体に固定された蓋側模様円板と回転体に固定された透明又は半透明な回転体側模様円板とを対向配置させることで形成される意匠部が設けられ、前記回転体に形成された窓部を介して前記意匠部の模様を視認可能とされている、との手段を加えたものである。
上記手段では、回転体を回転させることで意匠部の模様を変化させることができる。
【0009】
また本発明は、上記手段に、意匠部の模様は、蓋側模様円板に中心側から径方向外側に向かって放射状に延びる多数の線により形成した模様と、回転体側模様円板に前記蓋側模様円板側の模様を反転させた模様とによって形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、模様円板側の模様と回転体側模様円板の反転模様とにより、幾何学的な模様を現出させることができる。
【0010】
また本発明は、上記手段に、回転体は、蓋体を覆うように全周に渡って連続して延びるリング状の部材で形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、回転体をリング状の部材とすることにより、周方向のいずれの箇所であっても操作が可能になるため、操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、回転体を開方向に回転させると、ロック機構が解除されて開蓋状態となり、回転体を閉方向に回転させると、ロック機構をロック状態に設定される構成としたことから、誤作動によって蓋体が開放されてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0012】
また回転体を回転させることで回転体の天面に設けられた意匠部の模様を変化させることができるため、変化に富むと共に高級感に溢れた模様による意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例として、閉蓋状態を示す蓋付き容器の斜視図である。
【
図3】開蓋状態にある蓋付き容器を側方から示す断面図である。
【
図4】
図1のO-IV線における部分断面図である。
【
図6】開閉動作を示す蓋付き容器の正面図であり、(a)は閉蓋状態、(b)は開蓋状態を示す。
【
図7】(a)は閉蓋操作を示す
図1のO-VIIa線における部分断面図、(b)は開蓋操作を示す
図1のO-VIIb線における部分断面図である。
【
図8】(a)は蓋側模様円板の平面図、(b)は回転体側模様円板である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
先ず、蓋付き容器の構成について説明する。
尚、下記の説明において、後部又は後方とはヒンジ20が設けられた背面側(
図3の右側)を、前部又は前方とはヒンジ20とは逆側となる正面側(
図3の左側)を夫々意味するものとする。また周方向とは
図1に示す中心軸Oに対して周回する方向(閉方向及び開方向)を意味する。
【0015】
図1乃至
図3に示すように、本実施例に示す蓋付き容器1は、化粧料などの内容物を入れる薄型のコンパクト容器であり、内容物を収容する容器本体10と、容器本体10の後方に設けられたヒンジ20(
図3参照)を介して開閉自在に連結された蓋体30と、蓋体30に設けられた回転体40とを有して構成され、これらはすべて合成樹脂材料を射出形成することにより形成されている。
【0016】
容器本体10は、底部11の上に平面視十六角形からなる壁部12を有して成る有底短筒状の部材であり、正面側の壁部12には前方部分を部分的に切り欠いた前凹部14が形成されており、この前凹部14には前方向に突出する被係止部15が形成されている。また容器本体10の上面13上で、前凹部14を中心に挟んで周方向に対称をなす位置には周方向に円弧状に延びる一対の移動溝16が形成されている。各移動溝16の周方向の一端(本実施例では開方向の端部)には、溝底から上面13に続く凹湾曲状の斜面16a(
図6(a)(b)参照)が形成されている。また各移動溝16の周方向の他端(本実施例では閉方向の端部)で且つ径方向内側の面には、径方向外側に向かって突出する被係止片16b(
図2、
図7(a)参照)が一端から他端に向かって周方向に所定の円弧長を有して突設されている。
更に、
図3に示すように、容器本体10の後方には壁部12の一部を切り欠いて形成した後側凹部17が設けられており、後側凹部17の周方向において対向する一対の後凹部対応面17aにはヒンジ20を構成する回転軸18が設けられている。
【0017】
図3に示すように、蓋体30は、径方向の外周端に平面視十六角形状に形成されたフランジ32と、その中央に立設された大径短円筒状の挿入筒33を備えると共に、挿入筒33の内側に頂壁31を有して形成されており、蓋体30の後方の位置には蓋体30の開閉動作を支える凸状の支持部34が突設され、蓋体30の前方には、先端に径方向内側に突出する係止突起35aを備えたフック片35がフランジ32の周縁部から垂下設されている。挿入筒33の外周面には、周方向に延びる複数(本実施例では4箇所)の案内溝37が形成されている。挿入筒33内で且つ頂壁31の上には、後述する意匠部50の一方を形成する蓋側模様円板51(
図8(a)参照)が回転不動な状態で取り付けられている。また
図2に示すように、フランジ32上で且つフック片35を挟んで周方向において対称となる2箇所の位置には、一対の切欠き孔部36が所定の円弧長を有して夫々形成されている。
【0018】
回転体40は、中央に円形の窓部42を有すると共に蓋体30のフランジ32を覆うように全周に渡って連続して延びる天板41と、天板41の周縁部に十六角形を形成する壁部43が垂下設されたリング状の部材で構成されている。壁部43の内面には、蓋体30に設けられた各案内溝37に挿入され且つ周方向に移動可能に設けられる複数(本実施例では4箇所)の案内凸部44が形成されている(
図5参照)。各案内凸部44が各案内溝37内を周方向に移動することで、回転体40は周方向に安定して回転できるように構成されている。
【0019】
図2、
図3及び
図6(a)(b)に示すように、天板41下面で且つ前方となる2箇所の位置には、蓋体30に形成された一対の切欠き孔部36及び容器本体10に形成された一対の移動溝16内に夫々挿通可能であり、挿通された状態で一対の切欠き孔部36及び一対の移動溝16内を周方向に夫々移動可能に設けられた一対の持ち上げ突起45が突設されている。一対の持ち上げ突起45の先端には、容器本体10側の移動溝16に形成された被係止片16bに係止可能に設けられた係止片45aが形成されている。尚、係止片45aと被係止片16bとは、蓋体30を閉蓋状態に保持するロック機構を構成している。
【0020】
天板41の下面には、後述する意匠部50の他方を形成する回転体側模様円板55(
図8(b)参照)が固定されており、窓部42を介して外部から視認することが可能となっている(
図9参照)。
【0021】
回転体40は天板41の下面に回転体側模様円板55を固定した状態で、頂壁31上に蓋側模様円板51が固定された蓋体30に対して組み付けられる。この際、回転体40に設けられた一対の持ち上げ突起45が、蓋体30に形成された一対の切欠き孔部36に挿通される。
蓋体30は、後方に設けられたヒンジ20を構成する支持部34を、同じくヒンジ20を構成する容器本体10の後凹部対応面17aの間に装着すると共に回転軸18を設けることにより、容器本体10に対して開閉可能に取り付けられている。
【0022】
次に、上記構成からなる蓋付き容器の開閉動作について説明する。
(1)初期状態
蓋付き容器1が閉じた初期状態について、
図1、
図4、
図5、
図6(a)及び
図7(a)を参照しつつ説明する。尚、
図6(a)(b)では一部の壁部43aを墨色で示しており、(a)は壁部43aが正面の位置にある閉蓋状態を示し、(b)は壁部43aが開方向に回転した開蓋状態を示している。
蓋付き容器が閉じた初期状態では、回転体40に設けられた一対の持ち上げ突起45が、容器本体10側に設けられた一対の移動溝16内に周方向に移動可能な状態で挿入されている。より詳しくは、回転体40は、周方向の他端(
図1の閉方向)に回転させられており、一対の持ち上げ突起45は一対の切欠き孔部36及び一対の移動溝16の他端側(閉方向の端部)に位置している。そして、一対の持ち上げ突起45の係止片45aが一対の移動溝16に設けられた各被係止片16bに夫々係止してロックしており(
図7(a)参照)、蓋体30は開けることができない状態にある。
【0023】
図4に示すように、この初期状態では、蓋体30の前方の位置に設けられたフック片35が容器本体10前方に設けられた前凹部14に嵌合すると共に、フック片35に設けられた係止突起35aが前凹部14に設けられた被係止部15に係止している。
【0024】
(2)開蓋操作
次に、蓋付き容器1を開けるための開蓋操作について、
図1、
図6(b)及び
図7(b)を参照しつつ説明する。
初期状態から蓋付き容器を開ける操作は、
図1にて開方向に回転体40を回転させることにより行う。
回転体40が開方向に回転すると、一対の持ち上げ突起45が、一対の切欠き孔部36及び一対の移動溝16内を一端側(開方向の端部)に移動する。これにより、ロック機構を構成する一対の持ち上げ突起45の係止片45aと一対の移動溝16に設けられた各被係止片16bとの係止が解除されたロック解除状態に至る。更に、
図6(b)及び
図7(b)に示すように、一対の持ち上げ突起45は、一対の移動溝16の一端側に設けられた斜面16a上を摺動して乗り上げるため、蓋体30が回転体40の回転に伴って開く方向(上方)に押し上げられる。これにより、蓋付き容器を、蓋体30と容器本体10との間に隙間が形成される開蓋状態とすることができる。
【0025】
同時に、蓋体30側のフック片35に設けられた係止突起35aと容器本体10側の前凹部14に設けられた被係止部15との係止が解除される。係止突起35aが被係止部15を乗り越えることによって抵抗が生じることから、使用者は蓋付き容器が開蓋状態に至ったことを容易に把握することが可能となっている。尚、抵抗が生じる際には、乗り越え音を発生させることもできる。
【0026】
使用者は、更に蓋体30を回転軸18回りに回転させることにより、蓋付き容器を
図2又は
図3に示すような蓋体30が大きく開いた状態に設定して使用することが可能となる。
【0027】
(3)閉蓋操作
蓋付き容器を開蓋状態から閉蓋状態に設定するは、開蓋操作と逆の操作を行えばよい。
すなわち、蓋体30を容器本体10側(蓋体30を閉じる方向)に押し込んで一対の持ち上げ突起45を、一対の移動溝16内に挿入させる。続いて、回転体40を
図1にて閉方向に回転させる操作を行う。すると、一対の持ち上げ突起45は、回転体40の回転に伴って斜面16aを下りながら一対の移動溝16内を閉方向に移動し、
図6(a)及び
図7(a)に示すように、一方のロック機構を構成する一対の持ち上げ突起45の係止片45aが、他方のロック機構を構成する一対の移動溝16に設けられた各被係止片16bを係止するロック状態に至る。これにより、蓋付き容器を閉蓋状態とすることができる。
【0028】
そして、この際には蓋体30の前方の位置に設けられたフック片35が、容器本体10前方に設けられた前凹部14に嵌合すると共に、フック片35に設けられた係止突起35aが前凹部14に設けられた被係止部15を乗り越える際に抵抗を生じながら係止する。よって、使用者は蓋付き容器が閉蓋状態に至ったと容易に把握することが可能である。
【0029】
このように蓋付き容器では、回転体40を周方向に回転させなければロック機構のロック状態が解除されず、蓋体30の開閉を行うことのできない構成としたことから、従来のように蓋付き容器をバックの中に入れて持ち歩いているうちに、蓋体30が開いてしまうといった誤作動を抑制することができる。
【0030】
次に、蓋体30の天面に設けられる意匠部50の構成及び動作について説明する。
【0031】
図8(a)に示すように、意匠部50を構成する一方の蓋側模様円板51は合成樹脂材料を射出成形することにより形成された薄い板状の円板であり、その表面には中心から所定の半径r1までの領域には、反時計回り方向外側に向かって放射状に延びる多数の線から成る蓋側内模様52が設けられている。同様に、所定の半径r1から外周端r2までの領域には、時計回り方に向外側に向かって放射状に延びる多数の線から成る蓋側外模様53が設けられている。蓋側内模様52及び蓋側外模様53は、蓋側模様円板51を射出成形する際に、蓋側内模様52及び蓋側外模様53に対応して金型に形成された凹凸によって形成することができる。
尚、蓋側内模様52及び蓋側外模様53の表面に、蒸着や蒸着箔を積層することで鏡のように光が反射する加飾が施された構成が好ましく、例えばホログラム箔を積層する構成にすると、より一層意匠性を向上させることが可能となる点でより好ましい。
【0032】
図8(b)に示すように、意匠部50を構成する他方の回転体側模様円板55は、径方向外側に形成された円環状のフランジ56と、その内側を厚く形成して成る凸領域57とを備えた断面凸形状から成る部材(
図3参照)であり、透明又は半透明からなる合成樹脂材料を用いて形成されている。そして、凸領域57の上面には、蓋側内模様52及び蓋側外模様53を反転させた模様によって構成された回転体側内模様58及び回転体側外模様59が形成されている。すなわち、凸領域57の上面で、中心から所定の半径r1までの領域には、時計回り方向外側に向かって放射状に延びる多数の線から成る回転体側内模様58が設けられ、同様に所定の半径r1から外周端r2までの領域には、反時計回り方向外側に向かって放射状に延びる多数の線から成る回転体側外模様59が形成されている。
【0033】
蓋側内模様52、蓋側外模様53、回転体側内模様58及び回転体側外模様59に形成された放射状に延びる各線は、それぞれ中心側から径方向外側に向かって時計回り方向又は反時計回り方向に傾斜状に延びる線であることが好ましく、更には湾曲部を有して傾斜状に延びる線であることがより好ましい。
【0034】
上記のように、蓋付き容器1では、回転体40を蓋体30に対して周方向に回転させることが可能となっている。
図3に示すように、蓋付き容器1内では、蓋側模様円板51を蓋体30の頂壁31の上に固定し、回転体側模様円板55を回転体40の天板41の下面に固定し、蓋側模様円板51と回転体側模様円板55とを対向配置することにより、蓋体30の天面に意匠部50が設けられている。
【0035】
そして、
図9に示すように、この状態において蓋付き容器1を上方から覗くと、窓部42内に現れる意匠部50を視認することができる。すなわち、蓋側模様円板51に形成された蓋側内模様52及び蓋側外模様53上に、回転体側模様円板55に形成された回転体側内模様58及び回転体側外模様59が夫々重なることで形成される幾何学模様を視認することができる。
【0036】
より詳しくは、蓋側内模様52と回転体側内模様58とが重なる内側の領域(中心から所定の半径r1までの領域、以下同様)では、互いに逆向きに延びる放射状の線によって形成される内側幾何学模様を視認することができ、同じく蓋側外模様53と回転体側外模様59とが重なる外側の領域(所定の半径r1から外周端r2までの領域、以下同様)では、互いに逆向きに延びる放射状の線によって形成された外側幾何的模様を視認することができる。
【0037】
そして、回転体40を回転させると、意匠部50の内側の領域では蓋側内模様52と回転体側内模様58との重なり具合が変化し、外側の領域では蓋側外模様53と回転体側外模様59との重なり具合が変化する、そしてこのような内側の領域の内側幾何学模様及び外側の領域の外側幾何学模様は同時に変化する。これにより、蓋付き容器1の天面に、変化に富むと共に高級感に溢れた模様による意匠性を向上させることが可能となっている。
【0038】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
例えば、上記実施例では、蓋付き容器として、薄型のコンパクト容器を例示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、コンパクト容器以外の容器にも適用可能である。
【0039】
また上記実施例では、蓋体30の開閉操作を安定させるために、回転体40に一対の持ち上げ突起45を設けると共に、容器本体10側にも一対の移動溝16を設けた構成(合計二組の持ち上げ突起45と移動溝16の構成)を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、持ち上げ突起45と移動溝16とは少なくとも一組あればよい。
【0040】
また上記実施例では、回転体40側に持ち上げ突起45を設け、容器本体10側に移動溝16を設けた構成を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、これとは逆に回転体40側に移動溝を設け、容器本体10側に持ち上げ突起を設ける構成としてもよい。
【0041】
また上記実施例では、蓋体30の全体にリング状の部材から成る回転体40を設けた場合を示して説明したが、回転体40は部分的に回転可能な部材であればよく、またリング状の部材でなくてもよい。
【0042】
また上記実施例では、蓋体30と容器本体10とが、蓋体30に設けた支持部34、容器本体10に設けた後凹部対応面17a及び回転軸18によって構成されるヒンジ20を介して開閉自在に連結される構成を示して説明したが、蓋体30と容器本体10とが一体にヒンジ結合される構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、誤作動による蓋体の開放を抑制する蓋付き容器の分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 : 蓋付き容器
10 : 容器本体
11 : 底部
12 : 壁部
14 : 前凹部
13 : 上面
16 : 移動溝
16a: 斜面
16b: 被係止片
17 : 後側凹部
17a: 後凹部対応面
18 : 回転軸
20 : ヒンジ
30 : 蓋体
31 : 頂壁
32 : フランジ
33 : 挿入筒
34 : 支持部
35 : フック片
35a: 係止突起
36 : 切欠き孔部
37 : 案内溝
40 : 回転体
41 : 天板
42 : 窓部
43 : 壁部
43a: 壁部
44 : 案内凸部
45 : 持ち上げ突起
45a: 係止片
50 : 意匠部
51 : 蓋側模様円板
52 : 蓋側内模様
53 : 蓋側外模様
55 : 回転体側模様円板
56 : フランジ
57 : 凸領域
58 : 回転体側内模様
59 : 回転体側外模様
O : 中心軸
r1 : 所定の半径
r2 : 外周端