(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】銅、リチウム、及び少なくとも1種のアルカリ土類金属又は希土類金属の添加物を含むアルミニウム合金、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 21/12 20060101AFI20240621BHJP
C22F 1/057 20060101ALI20240621BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
C22C21/12
C22F1/057
C22F1/00 611
C22F1/00 624
C22F1/00 630M
C22F1/00 631A
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018073627
(22)【出願日】2018-04-06
【審査請求日】2021-04-06
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マン, オースティン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー, アンドリュー エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ, ラジーヴ
(72)【発明者】
【氏名】パラニヴェル, シヴァネシュ
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-158851(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102189350(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104451272(CN,A)
【文献】特開平09-111429(JP,A)
【文献】特開2002-053925(JP,A)
【文献】特表2004-505176(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102634706(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102828085(CN,A)
【文献】国際公開第2008/117706(WO,A1)
【文献】特開2008-223087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00-21/18
C22F 1/04- 1/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.8から5.6重量パーセントの銅と、
0.6から2.6重量パーセントのリチウムと、
0.13重量パーセントまでのランタン;
及び
1.5重量パーセントまでのストロンチウム
;
のうち少なくとも1種と、
合計で6.0重量パーセントまでの元素であって、
(i)0.05~0.7重量パーセントの銀、
(ii)0.07~0.15重量パーセントのチタン
、
(iii)任意選択的に、
0.20重量パーセントまでのケイ素、
0.30重量パーセントまでの鉄、
0.6重量パーセントまでのマンガン、
1.9重量パーセントまでのマグネシウム、
0.10重量パーセントまでのクロム、
1.0重量パーセントまでの亜鉛、
0.16重量パーセントまでのジルコニウム、及び
それぞれ0.05重量パーセントまでのニッケル、ガリウム又はバナジウム
のうちの1種又は複数種
、並びに
(iv)不純物
からなる元素と、
残部のアルミニウムと、
から
なる、アルミニウム合金。
【請求項2】
0.05~0.20重量パーセン
トのケイ素を含む、請求項
1に記載のアルミニウム合金。
【請求項3】
0.07~0.30重量パーセン
トの鉄を含む、請求項1
又は2に記載のアルミニウム合金。
【請求項4】
0.03~0.6重量パーセン
トのマンガンを含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項5】
0.05~1.9重量パーセン
トのマグネシウムを含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項6】
0.10重量パーセントまでの非ゼロ量のクロムを含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項7】
0.03~1.0重量パーセン
トの亜鉛を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項8】
0.04~0.16重量パーセン
トのジルコニウムを含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項9】
それぞれ0.05重量パーセントまでのニッケル、ガリウム又はバナジウムを含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項10】
0.05~1.9重量パーセン
トのマグネシウムと、
0.04~0.16重量パーセン
トのジルコニウムとを含む、
請求項1から
9のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項11】
前記ストロンチウムを含む、請求項1から
10のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項12】
前記ランタンを含む、請求項1から
11のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項13】
0.05~1.9重量パーセン
トのマグネシウムと、
0.04~0.16重量パーセン
トのジルコニウムと、
0.03~0.6重量パーセン
トのマンガンと、
0.03~1.0重量パーセン
トの亜鉛と、
を含む、請求項1から
12のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項14】
0.05~0.20重量パーセン
トのケイ素と、
0.07~0.30重量パーセン
トの鉄と、
0.03~0.6重量パーセン
トのマンガンと、
0.05~1.9重量パーセン
トのマグネシウムと、
0.10重量パーセントまでのクロムと、
0.03~1.0重量パーセン
トの亜鉛と、
0.04~0.16重量パーセン
トのジルコニウムと、
を含む、請求項1から
13のいずれか一項に記載のアルミニウム合金。
【請求項15】
請求項1から
14のいずれか一項に記載のアルミニウム合金を製造するための方法であって、
開始材料を量り分ける工程と、
前記開始材料を坩堝に充填する工程と、
前記坩堝をチャンバに挿入する工程と、
前記チャンバを所定の真空レベルまで排気する工程と、
前記開始材料を溶融させて溶融塊を形成する工程と、
前記溶融塊を鋳型に流し込む工程と
を含む方法。
【請求項16】
前記所定の真空レベルは最大6.7Pa(0.05Torr)であり、前記チャンバは不活性ガスで再充填される、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶融塊が鋳型に流し込まれ、
前記溶融塊が冷却されて固体塊を形成し、
前記固体塊が均質化及び水中急冷されて鋳塊をもたらし、
前記鋳塊が面削及び熱間圧延され、
前記鋳塊に溶体化処理、冷間圧延、及び延伸のうち少なくとも1つが施され、
前記鋳塊にエイジングが施される、
請求項
15又は
16に記載の方法。
【請求項18】
量り分けることは、前記ランタン
及び前記ストロンチウ
ムのうち少なくとも1種の供給源としてミッシュメタルを量り分けることを含む、請求項
15から
17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、アルミニウム合金に関し、より具体的には、銅、リチウム、及び少なくとも1種のアルカリ土類金属又は希土類金属の添加物を含むアルミニウム合金に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦攪拌接合(FSW)は、対向する2つの被加工物を、当該被加工物の材料を溶融することなく非消耗ツールを用いて接合する固相接合プロセスである。摩擦攪拌接合は、分類上は固相接合プロセスであるが、通常、多くのアルミニウム合金の主要な強化相を粗大化させ、溶解さえさせるほどの入熱を発生する。主な析出物の粗大化及び溶解により、最終的には、典型的なW字形状の硬度分布(hardness profile)によって表されることが多い接合部全体の強度の相当な低下がもたらされる。
【0003】
したがって、当業者はアルミニウム合金の分野における研究開発の努力を続けている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、開示されるアルミニウム合金は、アルミニウムと、約1.8から約5.6重量パーセントの銅と、約0.6から約2.6重量パーセントのリチウムと、約1.5重量パーセントまでのランタン、約1.5重量パーセントまでのストロンチウム、約1.5重量パーセントまでのセリウム、及び約1.5重量パーセントまでのプラセオジムのうち少なくとも1種とを含む。
【0005】
別の実施形態では、開示されるアルミニウム合金は、アルミニウムと、約1.8から約5.6重量パーセントの銅と、約0.6から約2.6重量パーセントのリチウムと、それぞれ約1.5重量パーセントまでの非ゼロ量のランタン、ストロンチウム、セリウム、及びプラセオジムのうち少なくとも1種と、約1.9重量パーセントまでの非ゼロ量のマグネシウムと、約0.16重量パーセントまでの非ゼロ量のジルコニウムと、約0.7重量パーセントまでの非ゼロ量の銀とを含む。
【0006】
さらに別の実施形態では、開示されるアルミニウム合金は、アルミニウムと、約1.8から約5.6重量パーセントの銅と、約0.6から約2.6重量パーセントのリチウムと、それぞれ約1.5重量パーセントまでの非ゼロ量のランタン、ストロンチウム、セリウム及びプラセオジムのうち少なくとも1種と、約1.9重量パーセントまでの非ゼロ量のマグネシウムと、約0.16重量パーセントまでの非ゼロ量のジルコニウムと、約0.7重量パーセントまでの非ゼロ量の銀と、約0.6重量パーセントまでの非ゼロ量のマンガンと、約1.0重量パーセントまでの非ゼロ量の亜鉛と、約0.15重量パーセントまでの非ゼロ量のチタンとを含む。
【0007】
一実施形態では、アルミニウム合金を製造するための開示される方法は、(1)アルミニウムと、約1.8から約5.6重量パーセントの銅と、約0.6から約2.6重量パーセントのリチウムと、約1.5重量パーセントまでのランタン、約1.5重量パーセントまでのストロンチウム、約1.5重量パーセントまでのセリウム、及び約1.5重量パーセントまでのプラセオジムのうち少なくとも1種とを含む材料の塊を得るように開始材料を量り分ける工程、(2)材料を坩堝に充填する工程、(3)坩堝をチャンバに挿入する工程、(4)チャンバを所定の真空レベルまで排気する工程、(5)材料を溶融させて溶融塊を形成する工程、及び(6)溶融塊を鋳型に流し込む工程を含む。
【0008】
開示されるアルミニウム合金組成物及び方法の他の実施形態は、以下の詳細な説明、添付の図面及び特許請求の範囲により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】航空機の製造及び保守方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ランタン(La)、セリウム(Ce)、ストロンチウム(Sr)、プラセオジム(Pr)、他の希土類金属又はアルカリ土類金属、他のランタノイド、及びミッシュメタルの形態の希土類金属を、アルミニウム合金に従来用いられる種々の他の元素と共に添加することにより改善されたアルミニウム合金が開示される。例えば、アルミニウム協会(Aluminum Association)により登録された2xxxシリーズのAl-Cu-Li合金のうちのアルミニウム合金は、La、Ce、Sr、Pr、他の希土類金属又はアルカリ土類金属、及びミッシュメタルの形態の希土類鉱石を添加することにより改善されてきた。開示されるアルミニウム合金は、摩擦攪拌接合(FSW)プロセスに対して材料の動的応答を生じるように設計される。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、これら添加元素は、下記のように、開示されるアルミニウム合金の特性を改善する3つの主な熱力学的及び物理的基準を有していると考えられる。
【0011】
T1相(Al-Cu-Li系の主な強化相)は、核生成の格子歪部位にとって有利に働く。したがって、これら添加元素により生じるミスフィットひずみの程度が大きいことで、T1相の核生成が促進される。併せて、本明細書に記載する基準により、FSWプロセス中のT1相の核生成及びそれに続く再析出の理想的なシナリオが生み出される。結果として、溶接ゾーンの強度及びその他固有の材料特性が著しく改善するという効果が得られうる。最後に、添加元素によって、溶接ゾーン全体にわたり通常観測される強度の相当な低下が解消されうる。これによって、より重要な設計空間において実装でき、且つ所望の効率的な作製プロセス(例えばFSW)に対してより適合しうる新たな等級のアルミニウム合金が得られうる。
【0012】
開示されるアルミニウム合金の一般的な実施例は、表1に示す組成を有する。
【0013】
【0014】
このように、表1のアルミニウム合金は、約1.8から約5.6重量パーセントの銅と、約0.6から約2.6重量パーセントのリチウムと、約1.5重量パーセントまでの非ゼロ量のランタン、ストロンチウム、セリウム、及びプラセオジムのうち少なくとも1種とを含み、ランタン、ストロンチウム、セリウム、及びプラセオジムのうち少なくとも1種の各々は、約1.5重量パーセントまでの非ゼロ量で存在してよく、残部はほぼアルミニウムである。La、Sr、Ce、及びPrのうち少なくとも1種は、ミッシュメタルに由来しうる。ミッシュメタルは希土類金属鉱石の混合物であり、通常、主としてCe及びLaと、少量のPr、Sr、及びネオジム(Nd)とを含むが、他のランタノイドも含有しうる。したがって、開示されるアルミニウム合金には低濃度の他のランタノイドも存在しうる。
【0015】
第1の実施形態のアルミニウム合金は、約0.20重量パーセントまでの非ゼロ量の、又は約0.05から約0.20重量パーセントのケイ素をさらに含みうる。第1の実施形態のアルミニウム合金は、約0.30重量パーセントまでの非ゼロ量の、又は約0.07から約0.30重量パーセントの鉄をさらに含みうる。第1の実施形態のアルミニウム合金は、約0.6重量パーセントまでの非ゼロ量の、又は約0.03から約0.6重量パーセントのマンガンをさらに含みうる。第1の実施形態のアルミニウム合金は、約1.9重量パーセントまでの非ゼロ量の、又は約0.05から約1.9重量パーセントのマグネシウムをさらに含みうる。第1の実施形態のアルミニウム合金は、約0.10重量パーセントまでの非ゼロ量のクロムをさらに含みうる。第1の実施形態のアルミニウム合金は、約1.0重量パーセントまでの非ゼロ量の、又は約0.03から約1.0重量パーセントの亜鉛をさらに含みうる。第1の実施形態のアルミニウム合金は、約0.15重量パーセントまでの非ゼロ量の、又は約0.07から約0.15重量パーセントのチタンをさらに含みうる。第1の実施形態のアルミニウム合金は、約0.7重量パーセントまでの非ゼロ量の、又は約0.05から約0.7重量パーセントの銀をさらに含みうる。第1の実施形態のアルミニウム合金は、約0.16重量パーセントまで非ゼロ量の、又は約0.04から約0.16重量パーセントのジルコニウムをさらに含みうる。第1の実施形態のアルミニウム合金は、ニッケル、ガリウム、及びバナジウムのうち少なくとも1種を、それぞれ約0.05重量パーセントまでの非ゼロ量でさらに含みうる。
【0016】
当業者であれば、第1の実施形態のアルミニウム合金の物理的特性に実質的に影響を与えない種々の不純物も存在しうること、及び、そのような不純物の存在によって本開示の範囲から逸脱することはないことを理解するであろう。
【0017】
開示されるアルミニウム合金の別の一般的な実施例は、表2に示す組成を有する。
【0018】
【0019】
表2のアルミニウム合金は列挙した元素を含み、残部は、アルミニウムであるか又は種々の不純物を伴ってほぼアルミニウムである。表2の一般的な実施例では、La、Sr、Ce、及びPrのうち少なくとも1種が非ゼロ量で存在しなければならない。
【0020】
開示されるアルミニウム合金の非限定的な特定の一実施例は、表3に示す組成を有する。
【0021】
【0022】
開示されるアルミニウム合金の別の非限定的な特定の実施例は、表4に示す組成を有する。
【0023】
【0024】
開示されるアルミニウム合金のさらに別の非限定的な特定の実施例は、表5に示す組成を有する。
【0025】
【0026】
開示されるアルミニウム合金は、多種多様な技術により製造することができる。開示されるアルミニウム合金を製造するための一方法は、(1)約1.8から約5.6重量パーセントの銅と、約0.6から約2.6重量パーセントのリチウムと、それぞれ約1.5重量パーセントまでの非ゼロ量のランタン、ストロンチウム、セリウム、及びプラセオジムのうち少なくとも1種と、アルミニウムとを含むアルミニウム合金の組成範囲内で材料の塊を得るように開始材料を量り分ける工程、(2)坩堝に材料を充填する工程、(3)坩堝をチャンバに挿入する工程、(4)チャンバを所定の真空レベルまで排気する工程であって、チャンバは任意選択的に不活性ガスで再充填されてもよい、チャンバを排気する工程、(5)材料を溶融させて溶融塊を形成する工程、及び(6)溶融塊を鋳型に流し込む工程を含む。溶融塊は鋳型に流し込まれると冷却されて固体塊を形成し、当該固体塊は均質化及び水中急冷されて鋳塊をもたらし、当該鋳塊は面削及び熱間圧延され、当該鋳塊は溶体化処理及び水中急冷され、冷間圧延又は延伸され、人工的にエイジング又は自然にエイジングされて、アルミニウム合金をもたらす。
【0027】
開始材料を量り分ける工程は、それぞれ約1.5重量パーセントまでの非ゼロ量のランタン、ストロンチウム、セリウム、及びプラセオジムのうち少なくとも1種の供給源としてミッシュメタルを使用することを含みうる。ミッシュメタルは、希土類金属鉱石の混合物であり、通常、主としてCe及びLaと、少量のPr、Sr、及びNdとを含むが、他のランタノイドも含有しうる。ミッシュメタルは、コスト低減のために本発明で使用されうる費用効率の高い希土類元素である。希土類元素は、希土類元素の分離工程がコストの多くを占めるため、比較的高価である。ミッシュメタルを利用することにより分離工程が回避され、したがって最終製品は同様の効果を発揮しつつもより安価となる。
【0028】
開示される方法の非限定的な特定の一実施例では、装入材料が量り分けられ、黒鉛の坩堝に充填される。次いで、チャンバが約0.05Torrを下回る真空レベルまで排気され、約760Torrの分圧まで不活性ガス(例えば、アルゴン)で再充填される。装入物は溶融され、黒鉛の鋳型に流し込まれ、そして空冷される。鋳放しの鋳塊は次いで、華氏約840度で約24時間均質化され、水中急冷されうる。鋳塊は次いで、厚みに対して面削され、華氏約900度で熱間圧延されうる。鋳塊は次いで、華氏950度で約1時間溶体化処理され、水中急冷される。最後に、鋳塊は約5%の圧下率で冷間圧延され、人工的にエイジングされる。鋳塊は華氏約310度で約32時間人工的にエイジングされ、本発明のアルミニウム合金がもたらされる。
【0029】
本開示の実施例は、
図1に示す航空機の製造及び保守方法100、及び
図2に示す航空機102の観点から記載することができる。製造前の段階では、航空機の製造及び保守方法100は、例えば、航空機102の仕様及び設計104並びに材料の調達106を含む。製造段階では、航空機102の構成要素/サブアセンブリの製造108及びシステム統合110が行われる。その後、航空機102は認可及び納品112を経て運航114に供されうる。顧客により運航される期間中、航空機102には、改変、再構成、改修等も含みうる定期的な整備及び保守116が予定される。
【0030】
方法100の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実行又は実施されうる。本明細書において、システムインテグレータは、限定しないが、任意の数の航空機製造業者及び主要システムの下請業者を含み、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含み、オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関等でありうる。
【0031】
図2に示すように、例示的方法100により製造された航空機102は、例えば、複数のシステム120及び内装122を有する機体118を含む。複数のシステム120の例には、推進システム124、電気システム126、液圧システム128、及び環境システム130の一又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれていてもよい。
【0032】
開示されるアルミニウム合金組成物及び当該組成物から形成される物品は、航空機の製造及び保守方法100の段階のうち任意の一又は複数の段階で採用されうる。一実施例として、構成要素/サブアセンブリの製造108、システム統合110、及び/又は整備及び保守116に対応する構成要素又はサブアセンブリは、開示されるアルミニウム合金組成物を用いて作製又は製造されうる。別の実施例として、機体118は開示されるアルミニウム合金組成物を用いて組み立てられうる。また、一又は複数の装置の実施例、方法の実施例、又はこれらの組み合わせは、例えば、機体118及び/又は内装122のような航空機102の組み立てを実質的に効率化するか、又は航空機102のコストを低減することにより、構成要素/サブアセンブリの製造108及び/又はシステム統合110の最中に利用されうる。同様に、システムの実施例、方法の実施例、又はこれらの組み合わせのうちの一又は複数は、例えば、限定するものではないが、航空機102の運航中に整備及び保守116に対して利用されうる。
【0033】
開示されるアルミニウム合金組成物及び当該組成物から形成される物品を、航空機の観点から記載したが、当業者であれば、開示されるアルミニウム合金組成物及び当該組成物から形成される物品は多種多様な用途で利用できることを容易に認識するであろう。例えば、開示されるアルミニウム合金組成物及び当該組成物から形成される物品は、例えば、ヘリコプター、旅客船、自動車、海洋製品(ボート、モーター等)等の様々な種類のビークル(乗り物)において実装することができる。
【0034】
開示されるアルミニウム合金組成物及び当該組成物から形成される物品の様々な実施形態を図示及び記載してきたが、当業者であれば本明細書を読むことにより変更例に想到するであろう。本出願は、そのような変更例を含み、また特許請求の範囲によってのみ限定される。