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▶ コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】電子刺激脱着による接合方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240621BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L27/12 B
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019203302
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2020077877
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】1860395
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランク・フルネル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・ラレー
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァイン・メトレジャン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・モラール
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-238946(JP,A)
【文献】特開2010-199477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接合面を有する第1の基板と第2の接合面を有する第2の基板とを直接接合する方法であって、
前記第1の接合面及び前記第2の接合面の各々から表面酸化物層を除去するステップと、
前記第1の接合面及び前記第2の接合面の各々を水素パッシベーションするステップと、
真空下で、水素パッシベーションされた前記第1の接合面及び前記第2の接合面の各々に電子衝撃水素脱着を実施した後、前記第1の接合面及び前記第2の接合面を互いに密着させるように配置するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記除去するステップが化学的に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記除去するステップ及び前記水素パッシベーションするステップが同時に実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記除去するステップ及び前記水素パッシベーションするステップが、フッ化水素酸の溶液を使用して実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電子衝撃水素脱着を実施するステップの間に、前記第1の基板及び前記第2の基板の各々が導電性支持体上に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
電気接点が、前記第1の接合面または前記第2の接合面を、前記第1の基板または前記第2の基板がそれぞれ配置された前記支持体に接続する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電子衝撃水素脱着を実施するステップが、1014から1019電子/cmの衝撃を生成するように行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電子衝撃水素脱着を実施するステップが、0.01から100kEvの範囲にある電子衝撃のエネルギーおよび0.01から1,000μA/cmの範囲にある強度で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の接合面及び前記第2の接合面の一方に電子衝撃水素脱を実施するステップが、前記第1の接合面または前記第2の接合面の一方の全体に複数回照射するように電子ビームで掃引するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
互いに密着して配置された前記第1の接合面及び前記第2の接合面を加圧下で維持するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、基板の直接結合の分野である。より詳細には、本発明は、周囲温度で得ることができ、接合エネルギーを増加させるために接合後アニーリングを必要としない直接接合に関する。
【背景技術】
【0002】
直接接合技術は、十分にクリーンで滑らかな表面を互いに密接に接触させて、それらの間の接着が行われるようにすることからなる。したがって、基板は、追加の材料を提供することなく、特に接着剤なしで組み立てることができる。
【0003】
直接接合の分野には数多くの表面処理及び接合技術が存在するが、一般的に言えば、周囲温度での接合ステップの後に、互いに接触するように配置された表面の接着エネルギーを高めるために、アニーリングステップが常に必要である。
【0004】
しかしながら、表面活性化接合技術(SABとして知られている)では、周囲温度程度の低い温度で接着エネルギーを得ることができる。この技術は、高真空下で、アルゴンイオンなどのイオンによって接合される表面に衝撃を与えることから構成される。イオン衝撃により、表面の酸化物と有機汚染物質を除去することができる。高真空は、表面の酸化物の再形成を防ぐ。
【0005】
この方法は、シリコンやゲルマニウムなどの半導体材料で非常によく機能する。これは、イオン衝撃により表面の汚染物質や自然酸化物を除去できる一方で、表面にダングリングボンドを残し、熱アニーリングなしで非常に高い接着力を得ることができるためである。しかし、活性化の結果として、アルゴンイオンが表面に注入され、結晶格子に損傷を与え、表面のアモルファス化をもたらす。
【0006】
活性化によって生成されるアモルファス層を低減するために、ヘリウムなどのアルゴンより小さい原子を使用することが提案されている。しかし、ダングリングボンドを得るための表面のストリッピングは、効果が低くなる。現在の傾向は、たとえばネオンなどのアルゴンより重い原子を使用すること、またはGCIB(ガスクラスターイオンビーム)技術に原子クラスターを使用することである。しかしながら、前述の技術では、合理的な期間内に直径200mmの基板の表面などの大きな表面を処理することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、SABと同様に、接合後の強化アニールを必要とせず、SABとは異なり、アモルファス層の形成をもたらさない直接接合技術を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、第1および第2の基板を直接接合する方法であって、
第1および第2の基板の接合面から表面酸化物層を除去するステップと
接合面を水素パッシベーションするステップと、
真空下で、接合面への電子衝撃水素脱着を実施した後、互いに密着するように結合面を配置するステップと、
を含む方法を提案する。
【0009】
この方法のいくつかの好ましいが非限定的な側面は次のとおりである:
除去ステップは化学的に実施される。
除去及びパッシベーションステップは同時に実施される。
フッ化水素酸の溶液を使用して、除去およびパッシベーションステップが実施される。
電子衝撃水素脱着ステップの間、第1および第2の基板の各々は、導電性支持体上に配置される。
電気接点が、第1および第2の基板の一方の接合面をその支持体に接続する。
電子衝撃により、1014から1019電子/cmの衝撃が生じる。
電子衝撃のエネルギーは0.01から100kEvの範囲にあり、その強度は0.01から1,000μA/cmの範囲にある。
接合面の1つに対する電子衝撃ステップは、接合面全体を複数回照射するように電子ビームで掃引するステップを含む。
互いに密接して配置された接合面は、加圧下で維持される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の他の態様、目的、利点および特徴は、例示の目的で提供される本発明の非限定的な好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【0011】
本発明は、第1および第2の基板を直接説法する方法に関する。基板は、半導体材料、例えばシリコンまたはゲルマニウム製であってよい。
【0012】
本発明による方法は、好ましくは、潜在的な有機汚染または粒子汚染を除去するために、第1および第2の基板を洗浄する事前ステップを含む。
【0013】
この方法は、第1および第2の基板の接合面から表面酸化物層を除去するステップ、およびそれぞれの酸化物層がそれぞれ除去された接合面を水素パッシベーションするステップを含む。除去ステップは化学的に実施され得る。除去及びパッシベーションのステップは、たとえばフッ化水素酸の溶液を使用して同時に実施され得る。あるいは、除去及びパッシベーションのステップは、例えば、超高真空下での高温アニーリング(通常700℃以上)による除去ステップの実施と、水素分圧(通常0.01mbar以上)でのパッシベーションの実施によって順次に実施され得る。
【0014】
除去及びパッシベーションの後、各基板は、一般に10-6mbar未満、好ましくは10-8mbar未満の真空筐体の脱着チャンバに配置される。この方法は、各脱着チャンバにおいて、基板の接合面への電子衝撃水素脱着を実施することにより継続される。したがって、水素原子を除去し、ダングリングボンドを残して、その後の高エネルギー接合を可能にするために、各基板の接合面には、いわゆるESD(電子刺激脱着)技術に従って電子衝撃が施される。
【0015】
電子衝撃水素脱着ステップの間、第1および第2の基板のそれぞれは、導電性支持体上に配置することができる。このようにして、電子を中和することができないために大きな表面積を有する表面の処理の間に発生する可能性のある電荷の問題を解決することができる。SeOI(Semiconductor On Insulator)タイプの基板に有利に適用される1つの可能な実施形態では、電気接点が基板の接合面を支持体に接続する。
【0016】
接合面の電子衝撃水素脱着の間、電子ビームは、1014から1019電子/cm、好ましくは1014から1018電子/cmの衝撃ドーズ量に達するように接合面に衝突することができる。電子のエネルギーは0.01から100kEv、好ましくは0.1から10keVの範囲にあり、その強度は0.01から1000μA/cm、好ましくは1から100μA/cmの範囲にある。ビームが接合面全体をカバーするほど十分に広くない場合、電子衝撃が接合面全体をカバーするように掃引される。対象のドーズ量に到達するために必要な場合、接合面全体を複数回照射するように電子ビームによる掃引が実施される。説明のために、対象のドーズ量は5分未満で到達され得る。
【0017】
各基板の接合面のESD処理後、基板は真空筐体内の接合チャンバに移される。次いで、この方法は、互いに密接に接触するように接合面を配置するステップを含む。互いに密着して配置された接合面は、加圧下、例えば0.01から5MPaの範囲の圧力、好ましくは0.1から1MPaの範囲の圧力で、一般に5秒から60分、好ましくは1分間維持される。次に、接合面を介して接合された2つの基板によって形成されたアセンブリが真空チャンバから取り出される。
【0018】
本発明による方法を実施する一例の方法は以下の通りである。方位<001>、直径200mm、厚さ725μm、抵抗率10オーム/cmの2つのシリコン基板を、30ppmのオゾンが添加された脱イオン水の溶液を使用して洗浄した後に、5:1:1の割合の脱イオン水、アンモニア、および過酸化水素ベースで構成されるSC1(「標準クリーン1」)溶液を使用して洗浄する。基板を、接合面の水素パッシベーションをもたらすHF1%ベースを含む溶液で脱酸素処理する。脱イオン水ですすいで乾燥させた後、2つの基板をそれぞれ10-8mbarの超高真空下のチャンバに入れ、接地された導電性基板支持体上に配置する。
【0019】
1cmの電子ビームが、毎秒10cmの速度で各基板の表面を掃引する。表面全体が約40秒で掃引される。電子ビームのエネルギーは10kEvであり、強度は200μAである。各基板の表面を10回掃引することにより、約1015電子/cmのドーズ量が得られる。2つのチャンバで2つの基板のESD処理を同時に実施した後、基板を接合チャンバに移す。2つの処理された面を互いに向かい合わせて配置し、互いに接触させる。0.2MPaの力を1分間加える。次いで、接合によって生成されたアセンブリを超高真空チャンバから取り出す。