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特許7507562水素ガス用のバルブブロック、及びその製造方法
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  • 特許-水素ガス用のバルブブロック、及びその製造方法 図1
  • 特許-水素ガス用のバルブブロック、及びその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】水素ガス用のバルブブロック、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/00 20060101AFI20240621BHJP
   C25D 11/00 20060101ALI20240621BHJP
   C25D 11/04 20060101ALN20240621BHJP
   C25D 11/16 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
F16K27/00 Z
C25D11/00 302
C25D11/00 308
C25D11/04 302
C25D11/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020001246
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021110351
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊
(72)【発明者】
【氏名】二宮 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡本 将佳
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋司
(72)【発明者】
【氏名】井上 昌明
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-102111(JP,A)
【文献】特開2001-23908(JP,A)
【文献】国際公開第2005/024281(WO,A1)
【文献】特開2007-278460(JP,A)
【文献】特表2010-504483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
C25D 11/00-11/04,11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面にアルミニウム陽極酸化処理が施されているアルミニウム製のバルブブロック本体と、
前記バルブブロック本体に形成される水素ガス用の流路と、を備え、
前記流路は、その内面にシール面を有し、
前記シール面は、機械加工面である、水素ガス用のバルブブロック。
【請求項2】
外表面にアルミニウム陽極酸化処理が施されているアルミニウム製のバルブブロック本体と、
前記バルブブロック本体に形成される水素ガス用の流路と、を備え、
前記流路は、少なくとも2つの流路部を有し、
前記2つの流路部は、交差部分において互いに交差するように配置され、
前記交差部分の内面は、機械加工面を有している、水素ガス用のバルブブロック。
【請求項3】
前記バルブブロック本体は、その外表面にアルミニウム陽極酸化処理によって形成される酸化層を有し、
前記酸化層は、5μm以上30μm以下である、請求項1又は2の何れか1つに記載の水素ガス用のバルブブロック。
【請求項4】
アルミニウム製のバルブブロックを成形する成形工程と、
前記成形工程後において前記バルブブロックの外表面にアルミニウム陽極酸化処理を施す外表面処理工程と、
前記バルブブロックに水素ガス用の流路の内面を機械加工として形成する流路形成工程とを有し、
前記外表面処理工程は、前記流路形成工程で形成される流路をマスキングした後、又は前記流路形成工程の前に実施される、水素ガス用のバルブブロックの製造方法。
【請求項5】
前記流路は、内面にシール面を有し、
前記流路形成工程では、前記シール面を機械加工面として形成する、請求項4に記載の水素ガス用のバルブブロックの製造方法。
【請求項6】
前記バルブブロックに前記流路とは異なる孔を形成する孔形成工程を更に有し、
前記孔形成工程は、前記外表面処理工程の前に実施され、
前記孔の内面は、前記外表面処理工程においてアルミニウム陽極酸化処理が施される、請求項4又は5に記載の水素ガス用のバルブブロックの製造方法。
【請求項7】
前記流路は、少なくとも2つの流路部を有し、
前記2つの流路部は、交差部分において互いに交差するように配置され、
前記流路形成工程では、前記交差部分を機械加工面として形成する、請求項4乃至6の何れか1つに記載の水素ガス用のバルブブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス用の流路を有する水素ガス用のバルブブロック、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧の水素ガスが流れるバルブブロックは、アルミニウム系合金から成り、バルブブロックにアルミニウム陽極酸化処理を施すことによって耐食性の向上を図っている。このようなバルブブロックの例としては、例えば特許文献1の弁本体(即ち、バルブブロック)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6258016号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルブブロックにおいて、流路の内面にアルミニウム陽極酸化処理を施すことによって流路の内面が粗面化する。流路は、その内面にシール面を有している。シール面が粗面化されることによってシール面のシール性が低下する。また、特許文献1のバルブブロックでは、流路内を高圧の水素ガスが流れており、その流路の内面に繰り返し荷重が作用する。特に、流路の交差部分においては、その内面に応力が集中する。他方、流路の内面にアルミニウム陽極酸化処理を施すことによって流路の内面の強度が低下する。それ故、流路の内面(特に交差部分の内面)の耐久性が低下する。このように流路の内面にアルミニウム陽極酸化処理を施すことによって様々な影響が生じる。
【0005】
そこで本発明は、外表面の耐食性を保ちつつ、アルミニウム陽極酸化処理によって流路の内面に生じる影響を抑えることができる水素ガス用のバルブブロック及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明である水素ガス用のバルブブロックは、外表面にアルミニウム陽極酸化処理が施されているアルミニウム製のバルブブロック本体と、前記バルブブロック本体に形成される水素ガス用の流路と、を備え、前記流路は、その内面にシール面を有し、前記シール面は、機械加工面であるものである。
【0007】
第1の発明に従えば、アルミニウム陽極酸化処理によってバルブブロックの外表面に酸化層が形成されるので、外表面の耐食性を保つことができる。他方、流路の内面にあるシール面は、機械加工面であるので、アルミニウム陽極酸化処理によってシール面が粗面化することを抑制することができる。これにより、シール面からの水素ガスの漏れを抑制することができる。即ち、バルブブロックにおいて、外表面の耐食性を保ちつつ、流路の内面のシール性を確保することができる。
【0008】
第2の発明である水素ガス用のバルブブロックは、外表面にアルミニウム陽極酸化処理が施されているアルミニウム製のバルブブロック本体と、前記バルブブロック本体に形成される水素ガス用の流路と、を備え、前記流路は、少なくとも2つの流路部を有し、前記2つの流路部は、交差部分において互いに交差するように配置され、前記交差部分の内面は、機械加工面を有している、ものである。
【0009】
第2の発明に従えば、アルミニウム陽極酸化処理によってバルブブロックの外表面に酸化層が形成されるので、外表面の耐食性を保つことができる。他方、流路における交差部分の内面が機械加工面であるので、水素ガスから受ける応力が集中しやすい交差部分において強度を確保することができる。即ち、バルブブロックにおいて、外表面の耐食性を保ちつつ、流路の内面の耐久性を確保することができる。
【0010】
第3の発明の水素ガス用のバルブブロックの製造方法は、アルミニウム製のバルブブロックを成形する成形工程と、前記成形工程後において前記バルブブロックの外表面にアルミニウム陽極酸化処理を施す外表面処理工程と、前記バルブブロックに水素ガス用の流路の内面を機械加工として形成する流路形成工程とを有し、前記外表面処理工程は、前記流路形成工程で形成される流路をマスキングした後、又は前記流路形成工程の前に実施される、方法である。
【0011】
第3の発明に従えば、アルミニウム陽極酸化処理によってバルブブロックの外表面に酸化層が形成されるので、外表面の耐食性が保つことができる。また、流路形成工程で形成される流路をマスキングした後、又は流路形成工程の前に外表面処理工程を実施することによって流路の内面を機械加工面として残すことができるので、外表面の耐食性を保ちつつ流路の内面の強度を確保することができる。即ち、バルブブロックにおいて、外表面の耐食性を保ちつつ、流路の内面の耐久性を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
第1乃至第3の発明によれば、外表面の耐食性を保ちつつ、アルミニウム陽極酸化処理によって流路の内面に生じる影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態のバルブブロックを示す断面図である。
図2図1に示すバルブブロックの製造手順を示すフローチャートである。
図3図1に示すバルブブロックのその他の製造手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態のバルブブロック1及びその製造方法について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明するバルブブロック1及びその製造方法は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0015】
<バルブブロック>
水素ガスを貯留するガスタンク(図示せず)には、その口部を封止すると共にそこから送出される水素ガスの量を調整すべくタンクバルブ装置が口部に取り付けられている。より詳細に説明すると、タンクバルブ装置は、図1に示すようなバルブブロック1を備えている。バルブブロック1は、図1の紙面奥側に挿入部(図示せず)を有しており、挿入部がガスタンクの口部に挿入されている。そして、バルブブロック1は、ガスタンクの口部から突出部1aを突き出させている。またタンクバルブ装置は、水素ガスの送出量を調整すべく、種々の弁、例えば電磁弁、リリーフ弁、手動弁、及び安全弁等を含んで構成されている。そして、バルブブロック1は、それらの弁を構成するべく以下のように構成されている。
【0016】
即ち、バルブブロック1は、バルブブロック本体2と、流路3とを有している。バルブブロック1は、アルミニウム製、より詳しくはアルミニウム又はアルミニウム系合金から成る。そして、バルブブロック1の外表面には、後述の通り、アルミニウム陽極酸化処理が施されている。これにより、外表面全体に酸化層4が形成されている。また、バルブブロック1には、タンクから送出される水素ガスが流れる水素ガス用の流路3が形成されている。
【0017】
流路3は、タンク内の水素ガスを水素消費機器、例えば燃料電池等に送出すべく形成されている。流路3は、2つの収容部11,12と、4つの流路部21~23とを有している。なお、流路3が有する収容部の数及び流路部の数はあくまで一例であり、その数は前述する数に限定されない。収容部11,12は、互いに同一平面上に形成され且つ大略断面円形状に形成されている。そして、収容部11,12には、弁体(図示せず)が収容されている。これにより、バルブブロック1には、前述する種々の弁が構成されている。更に詳細に説明すると、バルブブロック1は、後面(図1の紙面上側の面)1b及び左右の両側面1c,1dを有し。そして、3つの面1b、1c,1dのうちの2つ(本実施形態において、後面1bと右側面1d)に収容部11,12が夫々形成されている。第1収容部11は、後面1bに直交する方向に延在するように形成されている。第2収容部12は、右側面1dに直交する方向に延在するように形成されている。
【0018】
また、バルブブロック1の外表面には、収容部11,12のうち少なくとも1つを塞ぐべく蓋5が締結されている。そして、バルブブロック1には、蓋5を締結すべくボルト孔1eが形成されている。本実施形態では、第2収容部12が蓋5によって塞がれ、複数のボルト孔1eは、右側面1dに形成されている。即ち、蓋5に挿通されるボルトをボルト孔1eに螺合することによって蓋5がバルブブロック1に締結される。また、収容部11,12は、3つの流路部21~23を介してタンク内と繋がっている。3つの流路部21~23は、例えば以下のように形成されている。
【0019】
第1流路部21は、タンク内に繋がっており、図1の紙面において奥から手前(即ち、上方向)に真っ直ぐ延在している。また、第1流路部21には、第2流路部22が繋がっている。第2流路部22は、第1流路部21からその軸線に直交する第1方向(即ち、前後方向)に延在している。また、第2流路部22の一端には、第1収容部11が繋がっている。また、第2流路部22の他端側には、第3流路部23が繋がっている。第3流路部23は、第2流路部22からその軸線に直交する方向(即ち、右方向)に延在している。更に、第3流路部23は、第2収容部12に繋がっている。なお、流路3は、更に以下のような第4流路部(図示せず)を備えている。即ち、第4流路部は、第1収容部11の内面11aに繋がっている。第4流路部は、水素ガスをバルブブロック1外へと送出すべく形成されている。
【0020】
このように形成されている流路3は、以下の部位に交差部分31,32を有している。即ち、第1交差部分31は、互いに直交する第1流路部21と第2流路部22とが交差する部位に形成されている。第2交差部分32は、第2流路部22と第3流路部23とが交差する部位に形成されている。なお、第4流路部と第1収容部11とが交差する部位にも図示しない交差部分が形成されている。これらの交差部分31,32では、断面円形状の孔が互いに交差する部位であるので、水素ガスが流路3を流れる際に繰り返し荷重による応力集中が生じやすくなっている。
【0021】
また、流路3の第1及び第2収容部11,12には、弁体が摺動可能に収容されている。そして、収容部11,12の内面11a,12aがシール面を成している。即ち、弁体と内面11a,12aとの間が封止されて流路3を流れる水素ガスが各収容部11,12から漏れ出ないようにしている。また、第1収容部11は、第2流路部22の開口端周りに第1弁座部11bを有している。第2収容部12は、第3流路部23の開口端周りに第2弁座部12bを有している。各々の弁体は、対応する弁座部11b,12bに着座することができる。そして、着座することによって第2流路部22と第1収容部11との間、及び第3流路部23と第2収容部12との間が閉じられる。
【0022】
このように構成されているバルブブロック1は、アルミニウム製、より詳しくはアルミニウム又はアルミニウム系合金から成る半製品にアルミニウム陽極酸化処理を施して形成される。即ち、バルブブロック1では、その外表面にアルミニウム陽極酸化処理を施されている。これにより外表面全体に酸化層4が形成されている。酸化層4は、例えば5μm以上30μm以下の厚さで形成されている。このようにアルミニウム陽極酸化処理によってバルブブロック1の外表面に酸化層4が形成されるので、外表面の耐食性を保つことができる。また、酸化層4を比較的短い時間で形成することができるので、製造コストを低下することができる。なお、酸化層4の厚みは、前述する範囲に限定されない。
【0023】
他方、流路3は、ドリル等の治具を用いて機械加工、より詳しくは孔あけ加工によって形成されている。即ち、流路3の内面が機械加工面として形成されている。それ故、流路3の内面は、製品の状態において機械加工された状態のままとなっており、酸化層4が内面を形成していない。それ故、流路3の内面の強度が確保される。これにより、流路3の内面における耐久性を確保することができる。即ち、バルブブロック1は、酸化層4を有することによって外表面の耐食性を保ちつつ、機械加工面を有することによって流路3の内面の耐久性を確保することができる。特に、応力集中が生じやすい交差部分31,32において、それらの内面を機械加工面とすることはより好適である。また、バルブブロック1では、収容部11,12の内面が機械加工面として形成されるので、その内面11a,12a及び弁座部11b,12bの面粗度を低く抑えることができる。これにより、弁体と内面11a,12aとの間及び弁体と弁座部11b,12bとの間のシール性、即ち弁体とシール面との間のシール性を確保することができる。即ち、収容部11,12からの水素ガスの漏れを抑えることができる。この点でも、バルブブロック1で、その外表面の耐食性を保ちつつ流路3の内面の耐久性を確保することができる。
【0024】
<バルブブロックの製造方法>
このように構成されているバルブブロック1は、本実施形態において図2に示す手順によって製造されている。即ち、バルブブロック1の製造処理が始まると、ステップS1に移行する。ステップS1であるバルブブロック外形成形工程では、バルブブロック1の外形を成形して半製品が製造される。バルブブロック1の外形成形は、本実施形態において切削加工又は鍛造によって行われる。なお、バルブブロック1の外形成形では、前述する方法以外に引抜加工や押出加工によって行われてもよい。バルブブロック1の半製品が製造されると、ステップS2に移行する。ステップS2である孔形成工程では、流路3とは異なる孔であって後述するアルミニウム陽極酸化処理を内面に施すべき孔を形成する。本実施形態においては、ボルト孔1eであり、その他配線通路(図示しない)等がある。ボルト孔1eは、右側面1dにねじ穴加工、例えばタップ加工を施して形成される。そして、ボルト孔1eが形成されると、ステップS3に移行する。
【0025】
ステップS3である外表面処理工程では、半製品の外表面にアルミニウム陽極酸化処理を施し、外表面全体に5μm以上30μm以下の厚さの酸化層4を形成する。更に詳細に説明すると、外表面処理工程では、アルミニウム陽極酸化処理を行う前の処理として半製品の外表面に対して脱脂処理が行われ、次にエッチング処理が行われる。その後、アルミニウム陽極酸化処理を行うべく、半製品を電解浴に浸漬する。ここで、電解浴としては、例えば硫酸浴、リン酸浴、クロム浴、及びシュウ酸浴があり、本実施形態においては硫酸浴が用いられる。そして、半製品を電解浴に浸漬している状態で電気浴の電解液を電気分解することによって、半製品の外表面に酸化層4を形成する。この際、外表面に5μm以上30μm以下の厚さの酸化層4が形成されるようにアルミニウム陽極酸化処理の条件を設定する。なお、前述する条件には、例えば電解浴の温度及び処理時間がある。酸化層4が形成された後は、封孔処理が行われて酸化層4が完成する。このようにアルミニウム陽極酸化処理によってバルブブロック1の外表面に酸化層4が形成されるので、外表面の耐食性が保つことができる。また、アルミニウム陽極酸化処理の前に孔形成工程を施すことによって、ボルト孔1eの内面が酸化層4によって形成される。これにより、ボルト孔1eの耐食性を向上させることができる。それ故、孔に湿気や雨水が入ってきた際にも孔の内面が腐食することを抑制することができる。そして、酸化層4が形成されると、ステップS4に移行する。
【0026】
ステップS4である収容部加工工程では、バルブブロック1に第1乃至第3収容部11,12を機械加工によって形成する。より詳細に説明すると、バルブブロック1では、後面(図1の紙面上側の面)1b及び左右の両側面1c,1dにドリル等の治具によって孔あけ加工を施す。例えば、第1収容部11は、後面1bに直交する方向に延在するように形成される。また、第2収容部12は、右側面1dに直交する方向に延在するように形成される。このように形成される2つの収容部11,12は、各々の軸が略同一平面上に位置するように形成される。このようにして収容部11,12が形成されると、ステップS5に移行する。
【0027】
ステップS5である流路部加工工程では、内面に機械加工面を形成すべく、機械加工によってバルブブロック1に第1乃至第3流路部21~23及び第4流路部を形成する。より詳細に説明すると、第1及び第2収容部11,12の各々にドリル等の治具を差し込んで治具によって孔あけ加工が施される。これにより、第2及び第3流路部22,23の各々は、第1及び第2収容部11,12の各々から各々の軸線に沿って延在するように形成される。これにより、第2流路部22及び第3流路部23が互いに交差して連通する。また、第4流路部は、第1収容部11の内面11aに達するまで孔あけが行われる。更に、第1流路部21は、バルブブロック1の下面側から孔あけ加工によって形成される。そして、第1流路部21と第2流路部22とが互いに交差して連通するまで、第1流路部21の孔あけが行われる。第1乃至第3流路部21~23及び第4流路部の孔あけ加工が終了すると、バルブブロック1が完成し、バルブブロック1の製造処理が終了する。
【0028】
このようなバルブブロック1の製造方法において、流路3はアルミニウム陽極酸化処理の後にて実施される収容部加工工程及び流路部加工工程を含む流路形成工程において機械加工を施すことによって形成されている。それ故、流路3の内面を機械加工面として残すことができるので、外表面の耐食性を保ちつつ流路3の内面の強度を確保することができる。即ち、バルブブロックにおいて、外表面の耐食性を保ちつつ、流路の内面の耐久性を確保することができる。また、収容部11,12がアルミニウム陽極酸化処理の後に機械加工によって形成されるので、シール面である内面11a,12a及び弁座部11b,12bの面粗度を低く抑えることができる。即ち、シール面を機械加工面として残すことによって、アルミニウム陽極酸化処理によってシール面が粗面化することを抑制することができる。これにより、シール面からの水素ガスの漏れが抑制されたバルブブロック1を製造することができる。
【0029】
<その他の実施形態について>
本実施形態のバルブブロック1の製造方法では、アルミニウム陽極酸化処理の後に流路3が形成されているが、必ずしもこのように形成する必要はない。即ち、図3のフローチャートに示すように、ステップS2の後に収容部加工工程であるステップS4に移行して収容部11,12を形成し、その次に流路部加工工程であるステップS5に移行して第1乃至第3流路部21~23及び第4流路部を形成する、即ちアルミニウム陽極酸化処理の前に流路3を形成する。その後、マスキング工程であるステップS6に移行し、流路3をマスキングする。本実施形態においては、流路3の各開口部に栓で塞いで、その中に電解液が入らないようにする。栓をした後、外表面処理工程であるステップS3に移行する。そして、ステップS3にてバルブブロック1の外表面全体に酸化層4を形成させる。最後にマスキング除去工程であるステップS7にて栓を取り外す。このようにして製造されるバルブブロック1もまた、流路3の内面を機械加工面として残すことができるので、前述するバルブブロック1の製造方法と同様の作用効果を奏する。
【0030】
また、本実施形態においてステップS2の孔形成工程は、必ずしもステップS3の外表面処理工程の前に実施される必要はなく、ステップS3の外表面処理工程の後に実施されてもよい。また、ステップS4の収容部形成工程もまた、ステップS5の流路部形成の前に実施されているが、必ずしもそれに限定されない。即ち、ステップS4の収容部形成工程がステップS5の流路部形成の後に実行されてもよい。
【0031】
また、バルブブロック1は、必ずしも前述するようなタンクバルブ装置のバルブブロックである必要はない。即ち、バルブブロック1に水素ガスが流れる流路3が形成されているものであればよい。また、本実施形態において、流路3は、第1流路部21を除く各部に関して各々の軸線が略同一平面上に位置するように形成されているが、必ずしも略同一平面上に形成されている必要はない。即ち、流路部22,23が上下等にずれて配置されていてもよい。また、各流路部22,23は、必ずしも対応する収容部11,12の軸線に沿って形成されている必要もなく、軸線に対して傾けて形成されていてもよい。また、流路部21~23は、T字形状になるように交差しているが、必ずしもそのような形状に限定されず十字交差であってもよい。また、流路部21~23は、L字状に交差してもよい。また、交差する流路部21~23が直角に交差するものであってもよい。
【0032】
更に、バルブブロック1におけるシール面は、前述する内面11a,12a及び弁座部11b,12bだけに限定されない。即ち、シール面は、樹脂ガスケット等が当接する部分であってもよく、シールされる面であればよい。
【符号の説明】
【0033】
1 バルブブロック
1e ボルト孔
2 バルブブロック本体
3 流路
4 酸化層
11 第1収容部
11a 内面(シール面)
11b 第1弁座部(シール面)
12 第2収容部
12a 内面(シール面)
12b 第2弁座部(シール面)
31 第1交差部分
32 第2交差部分
図1
図2
図3