(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】配線シート、配線シート付き太陽電池セル、および太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20240621BHJP
【FI】
H01L31/04 570
(21)【出願番号】P 2020029749
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】上遠野 浩一
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-174724(JP,A)
【文献】特開2009-266848(JP,A)
【文献】実開平01-125563(JP,U)
【文献】特開2013-016860(JP,A)
【文献】特開2018-195653(JP,A)
【文献】特開2017-073552(JP,A)
【文献】特表2015-534288(JP,A)
【文献】特表2017-517145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0204968(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0144218(US,A1)
【文献】中国実用新案第205900567(CN,U)
【文献】国際公開第2011/105510(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基材と、前記絶縁性基材の表面に設置されて導電体からなる配線材とを有する配線シートであって、
前記配線材は、第1方向に沿って延びる配線を備えた複数の配線パターン領域と、
前記第1方向に互いに隣り合う前記配線パターン領域の間に配置された接続領域とを有し、
複数の前記配線パターン領域は、前記接続領域を介して連続するように形成されており、
前記配線材は、前記接続領域にライン形状開口部を備える接続パターン領域を有し、
前記ライン形状開口部は、前記第1方向に交差し、かつ
前記配線シートの面内で前記第1方向に直交する第2方向にも交差する第3方向に延びる部分を含み、
前記接続領域の前記第1方向の両端部には、前記第2方向に沿って延び、前記ライン形状開口部を有しない領域が前記配線パターン領域に隣接して設けられていることを特徴とする配線シート。
【請求項2】
請求項1に記載の配線シートにおいて、
前記接続パターン領域は、前記第1方向に直交する
前記第2方向に沿って並べられた複数のライン形状開口部を有することを特徴とする配線シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の配線シートにおいて、
前記接続領域
の前記第2方向の端部にバイパス部が設けられ、
前記バイパス部と前記接続パターン領域との間の配線材が部分的に除去され、
前記バイパス部は、隣接する一方の配線パターン領域と他方の配線パターン領域とに跨がることを特徴とする配線シート。
【請求項4】
請求項1または2に記載の配線シートにおいて、
前記接続領域
の前記第2方向の端部にバイパス部が設けられ、
前記バイパス部は、前記第2方向において前記接続パターン領域と切り離されるとともに、隣接する一方の配線パターン領域と他方の配線パターン領域とに跨がることを特徴とする配線シート。
【請求項5】
請求項3または4に記載の配線シートにおいて、
前記バイパス部は、曲部を有する帯状であることを特徴とする配線シート。
【請求項6】
請求項5に記載の配線シートにおいて、
前記バイパス部は、複数のアール部を有する曲線状であることを特徴とする配線シート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つの請求項に記載の配線シートが備えられる配線シート付き太陽電池セルであって、
前記配線シートの前記配線パターン領域には、半導体基板の一方の面側に電極を有する裏面電極型太陽電池セルが設置され、前記電極と前記配線材とが電気的に接続されていることを特徴とする配線シート付き太陽電池セル。
【請求項8】
請求項7に記載の配線シート付き太陽電池セルを備え、前記配線シート付き太陽電池セルが封止材中に封止されてなることを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線シート、配線シート付き太陽電池セル、および太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁性基材の少なくとも一方の面に配線材を備える配線シートに太陽電池セルを配置し、太陽電池セルの電極を配線シートの配線材に接続するとともに、太陽電池セルと配線シートとを樹脂などの接着材で固定する技術は知られている。例えば、特許文献1には、裏面に電極を備えた太陽電池セルと配線シートとが接着材で固定された構成の太陽電池について開示されている。
【0003】
前記特許文献1では、太陽電池セルの出力を外部に取り出すために、太陽電池セルの電極に配線シートの配線材を接続し、その配線材が太陽電池セルの外側に引き出されている。太陽電池セルの電極形成面と配線シートとの間には接着材が配置され、太陽電池セルは配線シートに接着固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の太陽電池セルでは、配線材は接着材に接触している部分と、接着材に接していない部分とを有しており、接着材の有無の境界部が配線材上に形成されることとなる。この場合、接着材に接している部分の配線材は、その配線材に対応する部分の絶縁性基材とともに、温度変化や応力などによる伸縮や変形が抑制されている。
【0006】
しかしながら、接着材に接していない部分の配線材は、これに対応する部分の絶縁性基材とともに、太陽電池セルには固定されていないので、温度変化や応力などによって伸縮や変形を生じるおそれがある。仮に、配線材に伸縮や変形が生じた場合には、配線材が一様には変形せずに、特に接着材の有無の境界部に歪みが集中しやすくなると考えられた。このように境界部に歪みが集中すると、配線材が断線してしまうおそれがあることから、境界部においてそのような断線を生じないように対策を講じることが求められた。
【0007】
本発明は、前記のような事情にかんがみてなされたものであり、太陽電池セルとの電気的接続を安定的に保持し得る配線シート、その配線シートを備えて高い耐久性および信頼性を有する配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明では、絶縁性基材と、前記絶縁性基材の表面に設置されて導電体からなる配線材とを有する配線シートであって、前記配線材は、第1方向に沿って延びる配線を備えた複数の配線パターン領域と、隣り合う前記配線パターン領域の間に配置された接続領域とを有し、前記配線材は、前記接続領域にライン形状開口部を備える接続パターン領域を有し、前記ライン形状開口部は、前記第1方向とは異なる方向に延びる部分を含むことを特徴としている。
【0009】
前記構成の配線シートにおいて、前記接続パターン領域は、前記第1方向に直交する第2方向に延びるライン形状開口部を含むことが好ましい。また、前記接続パターン領域は、前記第1方向に交差する第3方向に延びるライン形状開口部を含む構成とされてもよく、また、前記第1方向と、前記第1方向に直交する第2方向との両方向に延びるライン形状開口部を含む構成とされてもよい。
【0010】
また、前記構成の配線シートにおいて、前記接続パターン領域は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って並べられた複数のライン形状開口部を有することが好ましい。
【0011】
また、前記構成の配線シートにおいて、前記接続領域は端縁部にバイパスパターンが設けられてもよく、前記バイパスパターンは、前記端縁部と前記接続パターン領域とを切り離すとともに、隣接する一方の配線パターン領域と他方の配線パターン領域とに跨がるバイパス部を有することが好ましい。
【0012】
また、前記配線シートを用いた配線シート付き太陽電池セルも本発明の技術的思想の範疇にあり、前記配線シートの前記配線パターン領域には、半導体基板の一方の面側に電極を有する裏面電極型太陽電池セルが設置され、前記電極と前記配線材とが電気的に接続されていることを特徴としている。
【0013】
さらに、前記配線シート付き太陽電池セルを備える太陽電池モジュールも本発明の技術的思想の範疇にあり、前記配線シート付き太陽電池セルが封止材中に封止されてなることを特徴としている。
【0014】
本発明は前記構成を具備することによって、太陽電池セルとの電気的接続を安定的に保持し得る配線シート、その配線シートを備えて高い耐久性および信頼性を有する配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、太陽電池セルとの電気的接続を安定的に保持し得る配線シートとすることができ、その配線シートを備えて高い耐久性および信頼性を有する配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る配線シート付き太陽電池セルを模式的に示す平面図である。
【
図2】前記配線シート付き太陽電池セルにおける太陽電池セルと配線シートとの配置関係を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る配線シート付き太陽電池セルを備える太陽電池モジュールを示す断面図である。
【
図5】前記配線シートを示す説明図であり、A部拡大図は接続領域の接続パターン領域を拡大して示し、B部拡大図は接続領域の端縁部のバイパスパターンを拡大して示している。
【
図6】前記配線シートにおける接続領域の接続パターン領域の他の構成例を示し、
図5におけるA部拡大図に相当する図である。
【
図7】前記配線シートにおける接続領域の接続パターン領域の他の構成例を示し、
図5におけるA部拡大図に相当する図である。
【
図8】前記配線シートにおける接続領域の接続パターン領域の他の構成例を示し、
図5におけるA部拡大図に相当する図である。
【
図9】前記配線シートにおける接続領域の接続パターン領域の他の構成例を示し、
図5におけるA部拡大図に相当する図である。
【
図10】前記配線シートにおける接続領域の接続パターン領域の他の構成例を示し、
図5におけるA部拡大図に相当する図である。
【
図11】前記配線シートにおける接続領域のバイパスパターンの他の構成例を示し、
図5におけるB部拡大図に相当する図である。
【
図12】前記配線シートにおける接続領域のバイパスパターンの他の構成例を示し、
図5におけるB部拡大図に相当する図である。
【
図13】前記配線シートにおける接続領域のバイパスパターンの他の構成例を示し、
図5におけるB部拡大図に相当する図である。
【
図14】従来例の配線シートにおける接続領域を拡大して示し、
図5におけるA部拡大図に相当する図である。
【
図15】従来例の配線シートにおける接続領域の端縁部を示し、
図5におけるB部大図に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る配線シート、配線シート付き太陽電池セル、および配線シート付き太陽電池セルを備えた太陽電池モジュールについて、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
以下の実施形態では、複数の太陽電池セルを、配線シートに対して行方向および列方向にマトリクス状に配列する例について説明する。なお、単に「太陽電池」と記載する場合には、太陽電池セルと配線シートとから構成される配線シート付き太陽電池セルも、その配線シート付き太陽電池セルを封止材により封止した太陽電池モジュールも含みうる。また、図面において、同一の参照符号は同一部分または相当部分を表すものとする。
【0019】
図1は、本実施形態に係る配線シート付き太陽電池セル1を、受光面側から見て模式的に示す平面図である。
【0020】
配線シート付き太陽電池セル1(以下、単に太陽電池1という)は、配線シート10に複数の裏面電極型太陽電池セル20が設置されて構成されている。裏面電極型太陽電池セル20は、裏面電極型(バックコンタクト型)の太陽電池セルとされている。
【0021】
裏面電極型太陽電池セル20(以下、単に太陽電池セル20という)は、配線シート10の絶縁性基材11の表面上において、第1方向(行方向)Yに直列接続された太陽電池ストリング列が、第2方向(列方向)Xに複数配置されている。これにより、太陽電池セル20は、太陽電池ストリング列の端部同士が接続されることで、通電経路が蛇行するようにして電気的に直列に接続された構成を有している。
【0022】
配線シート10は、絶縁性基材11の一方の面側に配線材12が設けられて、太陽電池セル20が配置される部分となる配線パターン領域13(
図2参照)を備えるものとされている。太陽電池1は、絶縁性基材11の表面上の配線材12によって、太陽電池セル20が電気的に接続される。
【0023】
なお、
図1では、配線シート10に9個×6列の計54個の太陽電池セル20が直列接続される例を示したが、配線シート10および太陽電池セル20としては、かかる構成であるに限定されない。すなわち、配線シート10に設けられる配線パターン領域13の数は54個(54直列)であるに限られず、30個(30直列)、42個(42直列)、48個(48直列)であるなど、どのような直列数により構成されてもよい。
【0024】
(配線シート)
図2は、太陽電池セル20と配線シート10との配置関係を示す斜視図である。
図2において配線シート10は、
図1に示す太陽電池1の一部に相当する。配線シート10は、絶縁性基材11と、絶縁性基材11の表面に設置されて導電体からなる配線材12とを有し、太陽電池セル20を電気的に接続するものとなされている。
【0025】
絶縁性基材11には、電気絶縁性の材質であれば特に限定なく用いることができ、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリビニルフルオライド(PVF)およびポリイミドなどの合成樹脂系材料を含む材質からなる基板を用いることができる。
【0026】
絶縁性基材11の厚さは特に限定されず、例えば25μm以上200μm以下とすることができる。また、絶縁性基材11は、1層のみからなる単層構造であってもよく、2層以上からなる複数層構造であってもよい。
【0027】
配線材12は、太陽電池セル20の電極との接続のための配線130として、第1配線131と第2配線132とを含む配線パターンを備えている。これらの第1配線131および第2配線132が設けられた配線パターン領域13には、太陽電池セル20が配置される。
【0028】
配線材12としては、銅を主材とする導電体からなり、帯状導線(リボン線)や平角線、銅箔線などを用いることができる。配線材12の材料や構造はこれに限定されるものではなく、また、配線130は、銅、金、銀、アルミニウムやニッケル等の導電性の高い金属、それらを含む合金や複数種類積層したもの、構造としては通常のリード線や、ペースト状の電極材料をインクジェット等で基材上に直接塗布して形成した平面パターンやワイヤ状パターンの配線であってもよい。
【0029】
配線パターンの一例として、
図2に示す配線シート10では、配線材12は、櫛形状に形成され、櫛形状の櫛歯に相当する部分が1本ずつ交互に噛み合わさるように、それぞれ配置されている。第1配線131および第2配線132は、配線材12の櫛形状の櫛歯に相当する部分であり、それぞれ1本ずつ交互に所定の間隔を設けて配置されている。
【0030】
配線シート10には、第1配線131と第2配線132との組み合わせである配線パターン領域13が、絶縁性基材11の表面に複数並べられている。
図2においては、
図1に示す太陽電池1の一部に相当するものであり、3つの配線パターン領域13を備えた構成例を示している。
【0031】
図示するように、絶縁性基材11の表面に形成された第1配線131と第2配線132との組み合わせにより、1つの配線パターン領域13が形成されている。第1配線131と第2配線132とは、絶縁性基材11上に第1方向Yに沿って延びるライン状に設けられ、配線パターン領域13も第1方向Yに繰り返し反復する形態で設けられている。
【0032】
また、第1配線131および第2配線132を含む複数の配線パターン領域13は、接続領域14を介して連続するように形成されている。
図1および
図2に示される太陽電池1においては、第1方向Yに互いに隣り合う配線パターン領域13間で、一方の第1配線131と他方の第2配線132とが接続領域14を介して電気的に接続されている。配線シート10の端部で互いに隣り合う2つの配線パターン領域13は、一方の第1配線131と他方の第2配線132とが接続領域14を介して電気的に接続されることになる。接続領域14は、太陽電池セル20が配置されない部分であり、太陽電池1を受光面側から見て太陽電池セル20間に位置する部分を含む。
【0033】
なお、本実施形態においては、第1配線131と第2配線132とが交互に並ぶ櫛形状の構成の配線パターンを示しているが、配線材12の配線130の本数や形状等は太陽電池セル20の電極の構成や、それらとの接続の仕方に応じて、多様に構成することができる。また、配線パターンは櫛形状とされるに限らず、第1方向Yに沿って延びる配線130を備える形状であれば、どのようなパターンとされてもよい。
【0034】
図3は、
図2におけるI-I断面模式図である。
図3に示される太陽電池セル20は、例えばn型またはp型の導電型を有するシリコン基板などの半導体基板21と、太陽電池セル20の受光面となる半導体基板21の一方の面側の凹凸表面上に形成された反射防止膜22と、太陽電池セル20の裏面となる半導体基板21の裏面に形成されたパッシベーション膜23とを有している。
【0035】
太陽電池セル20は、裏面接合型の太陽電池セルである場合、例えば
図3に示すように、n型またはp型のいずれかの導電型を有する半導体基板21を備えて構成される。半導体基板21の一方の面側には、第1導電型不純物が拡散して形成された第1導電型不純物領域24と第2導電型不純物が拡散して形成された第2導電型不純物領域25とが、所定の間隔を空けて交互に形成されている。また、半導体基板21の裏面のパッシベーション膜23に設けられたコンタクトホールを通して、第1導電型不純物領域24に接する第1導電型用電極26および第2導電型不純物領域25に接する第2導電型用電極27がそれぞれ設けられている。
【0036】
第1導電型不純物および第2導電型不純物として、例えば、導電型がn型の場合はリンなどを用いることができ、導電型がp型の場合はボロンなどを用いることができる。半導体基板21の一方の面側では、第1導電型不純物領域24または第2導電型不純物領域25と、半導体基板21内部との界面において複数のpn接合が形成されることになる。
【0037】
太陽電池セル20の第1導電型用電極26の少なくとも一部の表面および/または第2導電型用電極27の少なくとも一部の表面には、例えば、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、錫(Sn)、SnPbはんだ、およびITOからなる群から選択された少なくとも1種を含む電気導電性物質を設置してもよい。この場合には、配線シート10の配線と太陽電池セル20の電極(第1導電型用電極26および第2導電型用電極27)との電気的接続を良好なものとし、太陽電池セル20の電極の耐候性を向上させることが可能となる。
【0038】
半導体基板21としては、n型またはp型の導電型を有する多結晶シリコンまたは単結晶シリコンなどからなるシリコン基板などを用いることができる。第1導電型用電極26および第2導電型用電極27としてはそれぞれ、例えば、銀などの金属からなる電極を用いることができる。反射防止膜22としては、例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、または酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層体などを用いることができる。パッシベーション膜23としては、例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、または酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層体などを用いることができる。
【0039】
図2および
図3に示す例では、1つの配線パターン領域13における配線シート10の一端が第1配線131の配線となり、他端が第2配線132の配線となるように、両端の導電型(極性)が異なるものとされているが、これら両端の配線の導電型(極性)が同一となるようにすることもできる。同様に、
図3に示す構成では、1つの太陽電池セル20の一端が第1導電型用電極26となり、他端が第2導電型用電極27となるように、両端の導電型(極性)が異なるものであるが、これら両端の電極ラインの導電型(極性)が同一となるようにすることもできる。
【0040】
なお、前記裏面電極型太陽電池セルの概念には、上述した半導体基板21の裏面に第1導電型用電極26および第2導電型用電極27の双方が形成された構成のものだけでなく、例えばMWT(メタルラップスルー)やEWT(エミッタラップスルー)と呼ばれる形式の太陽電池セルなど、いわゆるバックコンタクト型太陽電池セル(太陽電池セルの受光面と反対側の裏面から電流を取り出す構造の太陽電池セル)のすべてを含むことができる。
【0041】
また、
図2に示すように、配線シート10の表面上には、太陽電池セル20を設置することによって太陽電池1を作製することができる。
図3に示すように、太陽電池セル20の第1導電型用電極26と、配線シート10の第1配線131とが接合され、太陽電池セル20の第2導電型用電極27と、配線シート10の第2配線132とが接合される。太陽電池セル20の第1導電型用電極26と、配線シート10の第1配線131との接合方法、および太陽電池セル20の第2導電型用電極27と、配線シート10の第2配線132との接合方法は、特に限定されない。
【0042】
図4は、本実施形態に係る配線シート付き太陽電池セル1を備える太陽電池モジュール30を模式的に示す断面図である。前記のように構成される裏面電極型の太陽電池セル20を、前記構成を有する配線シート10に設置し、太陽電池セル20および配線シート10を固定する接着材、透光性基板、裏面保護材、および封止材等を備えさせることで、太陽電池セル20の表面が太陽光の受光面となる太陽電池モジュール30を構成することができる。
【0043】
例えば、
図4に示すように、太陽電池モジュール30においては、受光面側から、少なくとも、透光性基板31、封止材32、および太陽電池セル30がこの順に配置される。配線シート10と接続された太陽電池セル20の受光面側に、封止材32および透光性基板31が配置されている。さらに、配線シート10の裏面側に、封止材32、およびアルミニウムフィルムが蒸着されたPETフィルムからなる裏面保護材33が配置された状態で太陽電池モジュール30が封止されている。透光性基板31としては、例えば、ガラスを用いることができる。受光面側の封止材32としては、例えば、エチレンビニルアセテート(EVA)などのオレフィン材料を用いることができる。太陽電池セル20の第1導電型用電極26および第2導電型用電極27と、配線シート10の配線130との周囲に、図示しない接着材が設けられることによって、これらの間の電気的な絶縁が保たれる。
【0044】
(接続領域の構成例)
前記のとおり、配線シート10において、接続領域14には接着材に接していない部分が設けられることとなる。接着材に接していない部分である接続領域14は、太陽電池セル20に固定されない領域となる。言い換えれば、太陽電池1を受光面側から見て太陽電池セル20間に位置する部分である接続領域14の配線材12は、太陽電池セル20に固定されない。そのため、温度変化や応力などによっては、接続領域14の配線材12に伸縮や変形等を生じることが懸念された。
【0045】
これに対して、本実施形態に係る太陽電池1を構成する配線シート10では、隣り合う配線パターン領域13の間に配置されている接続領域14に、接続パターン領域141を備えさせることで、変形等が発生したとしても断線することを防ぐように構成されている。
【0046】
図5は、配線シート10を示す説明図である。
図5において、A部拡大図は接続領域14の接続パターン領域141を拡大して示している。
【0047】
図示するように、接続領域14には接続パターン領域141が設けられており、この接続パターン領域141は、配線材12がライン状に除去されてなる複数のライン形状開口部140を備えている。配線パターン領域13には、配線130が第1方向Yに沿って延びるように設けられているのに対し、接続領域14には、第1方向Yに直交する第2方向Xに、複数のライン形状開口部140が繰り返し並べられて接続パターン領域141が構成されている。
【0048】
図5のA部拡大図では、ライン形状開口部140が、第1方向Y(および第2方向X)とは異なる方向である第3方向Z1に延びるライン状に形成されて、接続パターン領域141を構成している。この場合、1本のライン形状開口部140は、第1方向Y(および第2方向X)に交差する斜め方向の第3方向Z1に延び、隣り合う配線パターン領域13の間に配置されている。
【0049】
接続パターン領域141には、複数本の同形状のライン形状開口部140が均等間隔で形成され、並べられている。ライン形状開口部140同士は、第1方向Yに重なり合うように密に配置され、これにより、接続パターン領域141は、第1方向Yに沿って切断した断面で捉えたとき、いずれの切断面にもライン形状開口部140が含まれる配置形態を有している。
【0050】
このような接続パターン領域141は、配線パターン領域13と同時に形成することができる。すなわち、配線シート10として、例えばPETフィルムなどの絶縁性基材11の一方の表面の全面に金属箔または金属プレートなどの電気導電性物質を貼り合わせ、次いで、絶縁性基材11の表面に貼り合わされた電気導電性物質の一部をフォトエッチングなどにより除去して電気導電性物質をパターニングすることによって、絶縁性基材11の表面上にパターニングされた電気導電性物質からなる配線パターン領域13および接続パターン領域141を形成することができる。
【0051】
従来の配線シート100では、
図14に例示するように、接続領域14は隣り合う配線パターン領域13の間で配線材12が連続しており、接続パターン領域(141)を有しない構成とされていた。これに対して、本実施形態では、
図5のA部拡大図に示すように、接続領域14に接続パターン領域141が設けられている。接続パターン領域141により、断面で捉えたとき配線材12が不連続となることで、接続領域14の配線材12に、温度変化や局所的な変形等により応力がかかるのを緩和することができ、歪みの集中を防ぐことが可能となる。また、接続パターン領域141は、複数のライン形状開口部140が配置されて、接続パターン領域141における第1方向Yのどの部分にもライン形状開口部140が含まれるように構成されている。そのため、接続領域14の特定個所に歪みが集中することが回避され、断線の発生を防ぐことができる。
【0052】
なお、接続領域14におけるライン形状開口部140同士は、
図5のA部拡大図に示したように第1方向Yに重なり合うよう均等間隔で密に配置された構成に限られない。ライン形状開口部140は、均等間隔に配置されなくてもよい。また、より密に配置されても、反対に、重なり合わないよう疎に配置された構成とされてもよい。いずれの構成にあっても、接続パターン領域141としては、第1方向Yに沿って切断した断面で捉えたときに、各切断面にライン形状開口部140が含まれる配置形態を有することが好ましい。
【0053】
また、本実施形態においては、ライン形状開口部140はライン形状であるが、開口部の形状は、ライン形状であるに限られず、例えば、円形、楕円形、多角形などでもよい。いずれの形状にあっても、接続パターン領域141としては、第1方向Yに沿って切断した断面で捉えたときに、各切断面に開口部が含まれる配置形態を有することが好ましい。
【0054】
なお、本実施形態においては、接続パターン領域141は、接続領域14の第1方向Yに亘って設けられているが、接続パターン領域141の第1方向Yの長さは、接続領域14の第1方向Yの長さと同一であっても、また同一でなくともよく、接続領域14の第1方向Yの長さより短く設けられても長く設けられてもよい。また、接続パターン領域141は、接続領域14の第2方向Xに亘って設けられていても、断続的に設けられていてもよい。
【0055】
(接続領域の他の構成例)
配線シート10において、接続パターン領域141は、
図5のA部拡大図に示される形態であるに限られず、他の様々な形態により構成することができる。
図6~
図10は、それぞれ、接続領域14の接続パターン領域141の他の構成例を示し、
図5におけるA部拡大図に相当する図である。これらの配線シート10は、接続パターン領域141のライン形状開口部140の形状に特徴を有し、配線シート10における他の基本構成は前記形態と共通するものである。
【0056】
図6に示す接続パターン領域141は、第1方向Yと、第1方向Yに直交する第2方向Xとの両方向に沿ったライン状に設けられたライン形状開口部140を備えて形成されている。例示の形態では、1つのライン形状開口部140は、接続領域14と配線パターン領域13との境界部に沿って延び、第2方向Xの異なる位置に設けられた2本のラインが、第1方向Yに沿って設けられた1本のラインで接続された、略Z字形状を有している。そして、同形状のライン形状開口部140が複数、第2方向Xに沿って均等間隔で並べられている。
【0057】
図7に示す接続パターン領域141では、ライン形状開口部140が、第1方向Yに交差する、第4方向Z2および第5方向Z3に沿って延びるライン状に形成されている。この場合、ライン形状開口部140は、接続領域14と配線パターン領域13との境界部に、その両端が位置する略V字形状に設けられて、第2方向Xに複数が並べられている。1つのライン形状開口部140の両端と、隣接する他のライン形状開口部140の屈曲部とは、第2方向Xの同じ位置に配置されるように設けられている。
【0058】
図8に示す接続パターン領域141では、ライン形状開口部140は、
図6に示す形態と類似するものであり、第1方向Yと、第1方向Yに直交する第2方向Xとの両方向に沿ったライン状の部分を含む形状とされている。この場合、ライン形状開口部140は、第2方向Xに沿って長いライン状の部分を含む、略Z字形状を有している。
【0059】
図9および
図10に示す接続領域14では、ライン形状開口部140は、第1方向Yに沿って延びる1つのライン状の部分と、第2方向Xに沿った複数のライン状の部分とを含む形状を有して形成されている。
【0060】
図9に示す接続パターン領域141では、第1方向Yに沿ったライン状の部分の両端に第2方向Xに沿ったライン状の部分が接続され、中間部に第2方向Xの反対方向に延びるライン状の部分が接続された形状を有している。また、
図10に示す接続パターン領域141では、第1方向Yに沿ったライン状の部分の両端に第2方向Xおよびその反対方向に延びるライン状の部分がそれぞれ接続され、中間部にも第2方向Xおよびその反対方向に延びるライン状の部分がそれぞれ接続された形状を有し、これらのライン状の部分が互い違いに配置されている。いずれの形態にあっても、複数のライン形状開口部140が第2方向Xに沿って並べられ、重なり合う範囲を有するように設けられている。
【0061】
これにより、接続領域14において、温度変化や応力などによる局所的な変形等を生じにくくすることができ、配線材12に断線が生じるのを防止できる。なお、接続パターン領域141を構成するためのライン形状開口部140の形状や幅等は、例示した形態に限定されるものではない。
【0062】
(接続領域の端縁部)
図5に示すように、配線シート10は、接続領域14の端縁部に切欠部15を有している。また、配線シート10には、接続領域14の端縁部に、配線材12が除去されてなるバイパスパターン150が設けられてもよい。バイパスパターン150により、端縁部と接続パターン領域141は、第2方向Xにおいて切り離される。また、接続領域14のバイパスパターン150のパターンは、接続パターン領域141のパターンとは異なる。
【0063】
図5のB部拡大図に示すように、バイパスパターン150は、隣接する一方の配線パターン領域13と他方の配線パターン領域13とに跨がるバイパス部151を備えるように形成されている。
図5に示す例では、切欠部15と配線パターン領域13との間で配線材12が部分的に除去されて、第1方向Yに延びる帯状のバイパス部151が設けられている。
【0064】
従来の配線シート100では、
図15に例示するように、接する一方の配線パターン領域13と他方の配線パターン領域13とを切断するように切欠部15に1本のスリット状部16が設けられていた。これに対して、本実施形態では、
図5のB部拡大図に示すように、隣接する一方の配線パターン領域13と他方の配線パターン領域13とに跨がるバイパス部151を備えるようにバイパスパターン150が設けられていることで、温度変化や応力などによって接続領域14の端縁部に負荷がかかってもバイパス部151により電気的な接続が維持され、長期的に断線を防ぐことが可能となる。また、端縁部と接続パターン領域141は、第2方向Xにおいて切り離すことで、隣接する一方の配線パターン領域13と他方の配線パターン領域13とを接続する複数の経路を確保することができる。
【0065】
バイパスパターン150は、
図5のB部拡大図に示される形態であるに限られず、様々な形態により構成することができる。
図11~
図13は、それぞれ、接続領域14の端縁部のバイパスパターン150の他の構成例を示し、
図5におけるB部拡大図に相当する図である。
【0066】
図11~
図13に示すバイパスパターン150は、バイパス部151が、隣接する一方の配線パターン領域13と他方の配線パターン領域13とに跨がる曲線状(曲部を有する帯状)に設けられている。
【0067】
図11に示すバイパス部151は、配線材12が略U字状に除去されて、3つのアール部を有する曲線状に形成されている。同様に、
図12に示すバイパス部151は、5つのアール部を有する曲線状に形成されている。また、
図13に示すバイパス部151は、切欠部15に沿う形状の1つのアール部を有する曲線状に形成されている。
【0068】
また、
図11~
図13に示すバイパスパターン150は、太陽電池セル20の角部側に配置されているので、接続パターン領域141に比べると歪みの影響を受けにくく、バイパス部151は断線しにくいと考えられる。太陽電池セル20が角部に切欠形状や丸みを有する場合、隣接する太陽電池セル20間の距離は、角部間で広くなる。隣接する太陽電池セル20間の距離が広くなる領域にバイパスパターン150を配置することで、より歪みの影響を受けにくくすることができる。
【0069】
配線シート10は、このようなバイパス部151を備えたバイパスパターン150が設けられていることによって、接続領域14における配線材12の断線を防止することができる。
【0070】
以上、説明したように、配線シート10は、接続領域14の端縁部にバイパスパターン150が設けられていることで、隣接する一方の配線パターン領域13と他方の配線パターン領域13との間における断線の発生をより確実に防ぐことができ、その結果、信頼性が高く耐久性に優れた太陽電池1および太陽電池モジュール30を提供することができる。
【0071】
なお、前記実施形態の他にも、配線シート10を用いることによって多様な直列数の太陽電池セル20を備えた太陽電池(配線シート付き太陽電池セル)1を構成することが可能となる。配線シート10には、単数または複数の太陽電池セル20を、行方向および列方向に多様に配列する構成とすることができる。
【0072】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 配線シート付き太陽電池セル(太陽電池)
10 配線シート
11 絶縁性基材
12 配線材
13 配線パターン領域
130 配線
131 第1配線
132 第2配線
14 接続領域
140 ライン形状開口部
141 接続パターン領域
15 切欠部
150 バイパスパターン
151 バイパス部
20 裏面電極型太陽電池セル(太陽電池セル)
21 半導体基板
22 反射防止膜
23 パッシベーション膜
24 第1導電型不純物領域
25 第2導電型不純物領域
26 第1導電型用電極(電極)
27 第2導電型用電極(電極)
30 太陽電池モジュール
31 透光性基板
32 封止材
33 裏面保護材