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特許7507577超音波送受信装置及び超音波送受信プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】超音波送受信装置及び超音波送受信プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20240621BHJP
   G01N 29/46 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/46
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020049276
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021148629
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】392036153
【氏名又は名称】菱電湘南エレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 利明
(72)【発明者】
【氏名】石田 司
(72)【発明者】
【氏名】津▲崎▼ 一浩
(72)【発明者】
【氏名】▲榊▼原 利次
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-145229(JP,A)
【文献】特開2004-279207(JP,A)
【文献】特開2008-232622(JP,A)
【文献】特開平05-288732(JP,A)
【文献】特開2016-085115(JP,A)
【文献】特開平05-240722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0283612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01L 5/00 - G01L 5/28
G01M 5/00 - G01M 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
探触子からボルトに向けて超音波を送信させ、送信させた前記超音波のエコーを前記探触子に受信させる探触子制御部と、
前記探触子によって受信された前記エコーを基にしたエコーデータと比較するための1以上の比較データを格納している比較データ格納部と、
前記エコーデータと、前記比較データとを比較し、比較結果に基づいて前記ボルトへの前記探触子の接触状態を判断する接触状態判断部と、
を備え、
前記比較データ格納部は、
前記比較データを複数格納していると共に、
複数の前記比較データとして、試験用探触子の超音波出射面と、前記超音波出射面が設置されるボルト端面とのなす角度である複数の傾斜角度の傾斜角度ごとに前記超音波出射面から出射された超音波のエコーの周波数特性が高速フーリエ変換によって解析された、前記傾斜角度ごとのFFT解析データを格納しており、
前記探触子制御部は、
前記探触子が受信した前記エコーの周波数特性を高速フーリエ変換によって解析し、解析結果を前記エコーデータとして生成する超音波送受信装置。
【請求項2】
前記接触状態判断部は、
前記ボルトへの前記探触子の接触状態が正常でないと判断した場合に、前記比較結果を示す比較結果信号を、前記ボルトを締めつけるナットランナに出力する請求項1に記載の超音波送受信装置。
【請求項3】
前記比較データ格納部は、
前記比較データとして、ボルトへの前記探触子の正常な接触状態を示す正常データと、前記探触子の正常ではない接触状態を示す非正常データとを格納する請求項1または請求項2に記載の超音波送受信装置。
【請求項4】
コンピュータに、
探触子からボルトに向けて超音波を送信させ、送信させた前記超音波のエコーを前記探触子に受信させる探触子制御処理と、
前記探触子によって受信された前記エコーを基にしたエコーデータと比較するための1以上の比較データを格納する比較データ格納処理と、
前記エコーデータと、前記比較データとを比較し、比較結果に基づいて前記ボルトへの前記探触子の接触状態を判断する接触状態判断処理と、
を実行させる超音波送受信プログラムであって、
前記比較データ格納処理では、
前記比較データを複数格納すると共に、
複数の前記比較データとして、試験用探触子の超音波出射面と、前記超音波出射面が設置されるボルト端面とのなす角度である複数の傾斜角度の傾斜角度ごとに出射された超音波のエコーの周波数特性が高速フーリエ変換によって解析された、前記傾斜角度ごとのFFT解析データを格納し、
前記探触子制御処理では、
前記探触子が受信した前記エコーの周波数特性を高速フーリエ変換によって解析し、解析結果を前記エコーデータとして生成する超音波送受信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、探触子に超音波を送受信させる超音波送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を発する探触子を用いてボルトの軸力を測定するボルト軸力測定装置がある(例えば、特許文献1)。超音波によって軸力値そのものでボルトの締結管理を行うことにより、軸力値のばらつきを低減できる。軸力値のばらつきを低減することで、ボルトの軽量化、低コスト化、締結物の性能向上が見込まれる。
【0003】
しかし、探触子を用いてボルトの軸力を測定するには、ボルトへの探触子の接触状態が正常かどうかを判定する必要がある。従来では、ボルトへの探触子の接触状態が正常かどうかの判定は、熟練したオペレータの判断にたよっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-20763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、オペレータの習熟度に頼ることなく、ボルトへの探触子の接触状態を判定する超音波送受信装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る超音波送受信装置は、
探触子からボルトに向けて超音波を送信させ、送信させた前記超音波のエコーを前記探触子に受信させる探触子制御部と、
前記探触子によって受信された前記エコーを基にしたエコーデータと比較するための1以上の比較データを格納している比較データ格納部と、
前記エコーデータと、前記比較データとを比較し、比較結果に基づいて前記ボルトへの前記探触子の接触状態を判断する接触状態判断部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の超音波送受信装置は比較データ格納部と接触状態判断部とを備えているので、オペレータの習熟度に頼ることなく、ボルトへの探触子の接触状態を判定できる超音波送受信装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1の図で、超音波送受信装置100のハードウェア構成を示す図。
図2】実施の形態1の図で、超音波によるボルトの軸力測定の原理を示す図。
図3】実施の形態1の図で、超音波送受信装置100の動作のフローチャート。
図4】実施の形態1の図で、エコーデータ111Aの測定を示す図。
図5】実施の形態1の図で、図4の測定結果を示す図。
図6】実施の形態1の図で、傾斜角度θ=0度におけるFFT解析結果の周波数スペクトルを示す図。
図7】実施の形態1の図で、傾斜角度θ=3度におけるFFT解析結果の周波数スペクトルを示す図。
図8】実施の形態1の図で、傾斜角度θ=4度におけるFFT解析結果の周波数スペクトルを示す図。
図9】実施の形態1の図で、傾斜角度θ=6度におけるFFT解析結果の周波数スペクトルを示す図。
図10】実施の形態1の図で、傾斜角度θ=0度におけるゲイン値71.5dBの生波形を示す図。
図11】実施の形態1の図で、傾斜角度θ=6度におけるゲイン値101.5dBの生波形を示す図。
図12】実施の形態1の図で、探触子200の設置位置のバリエーションを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図を用いて説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一または相当する部分については、説明を適宜省略または簡略化する。
【0010】
実施の形態1.
図1から図12を参照して、実施の形態1の超音波送受信装置100を説明する。超音波送受信装置100は、超音波を用いてボルトの軸力を計算するボルト軸力測定装置として実現される。超音波送受信装置100は、ボルトに設置されている探触子200の発した超音波のエコーを用いて、ボルトの軸力を測定するための探触子200自身がボルトに正常に接触しているかどうかを判定し、判定結果を出力する。よって、超音波送受信装置100によれば、ボルト軸力測定装置を扱うオペレータの習熟度によらず、精度よくボルトの軸力を測定することが可能となる。以下に超音波送受信装置100を詳しく説明する。
【0011】
***構成の説明***
図1は、超音波送受信装置100のハードウェア構成を示す。超音波送受信装置100は、コンピュータである。超音波送受信装置100はプロセッサ110を備える。超音波送受信装置100は、プロセッサ110の他に、主記憶装置120、補助記憶装置130及び送受信装置140といった、他のハードウェアを備える。プロセッサ110は、信号線150を介して他のハードウェアと接続され、他のハードウェアを制御する。
【0012】
超音波送受信装置100は、機能要素として、探触子制御部111及び接触状態判断部112を備える。探触子制御部111及び接触状態判断部112の機能は、超音波送受信プログラム101により実現される。接触状態判断部112はナットランナ制御装置620に接続しており、ナットランナ制御装置620に比較結果信号112Aを送信する。ナットランナ制御装置620は比較結果信号112Aに従って、ナットランナ610を制御する。超音波送受信プログラム101は補助記憶装置130に格納されている。プロセッサ110は、超音波送受信プログラム101を実行する装置である。プロセッサ110は、演算処理を行うIC(Integrated Circuit)である。プロセッサ110の具体例は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)である。
【0013】
主記憶装置120は記憶装置である。主記憶装置120の具体例は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)である。主記憶装置120は、プロセッサ110の演算結果を保持する。
【0014】
補助記憶装置130は、データを不揮発的に保管する記憶装置である。補助記憶装置130は比較データ格納部である。補助記憶装置130の具体例は、HDD(Hard Disk Drive)である。また、補助記憶装置130は、SD(登録商標)(Secure Digital)メモリカード、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD(Digital Versatile Disk)といった可搬記録媒体であってもよい。
補助記憶装置130は、超音波送受信プログラム101を記憶している。また補助記憶装置130は、探触子200によって受信されたエコーを基にしたエコーデータ111Aと比較するための1以上の比較データ131を格納している。エコーデータ111A及び比較データ131は後述する。
なお、比較データ格納部である補助記憶装置130は、比較データ131として、ボルトへの探触子の正常な接触状態を示す正常データと、探触子の正常ではない接触状態を示す非正常データとの少なくともいずれかを格納している。例えば、後述する図5の傾斜角度θ=0度における{上限周波数、中心周波数、ピーク周波数及び下限周波数}は、ボルトへの探触子の正常な接触状態を示す正常データである。また、図5の傾斜角度θ=4度における{上限周波数、中心周波数、ピーク周波数及び下限周波数}は、ボルトへの探触子の正常ではない接触状態を示す非正常データである。
【0015】
送受信装置140は、探触子200に超音波を送信させ、探触子200が受信したエコーを探触子200から受信する。送受信装置140は探触子制御部111によって制御されることで、探触子200に超音波を送信させ、探触子200の送信した超音波のエコーを探触子200から受信する。
【0016】
超音波送受信プログラム101は、探触子制御部111及び接触状態判断部112のような「~部」を、「~処理」、「~手順」あるいは「~工程」に読み替えた各処理、各手順あるいは各工程をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0017】
また、超音波送信方法は、コンピュータである超音波送受信装置100が超音波送受信プログラム101を実行することにより行われる方法である。なお、超音波送受信プログラム101は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されて提供されてもよい。
【0018】
図1に示すように、探触子200は接触媒質210を介してボルト300のボルト頭310に設置される。接触媒質210は超音波の伝達を向上させるための媒質である。図1では、第2部材420にナット500が溶接で固定されている。なお溶接は一つの例である。例えば後述の第1部材410及び第2部材420に雌ネジが形成されていてもよい。第1部材410と第2部材420とが重ねられている。第1部材410と第2部材420とに開けられた各貫通孔が連通しており、連通した各貫通孔にボルト300のボルト軸320が通されている。ナットランナ610がボルト頭310に嵌っている。図1では、ボルト300はナット500に嵌ってはいるがナット500に締め込まれていない状態とする。すなわち図1の状態では、ボルト300に軸力は発生していないものとする。探触子200の発した超音波はボルト底部321で反射され、エコーとなって探触子200に受信される。
【0019】
図2は、超音波によるボルトの軸力測定の原理を示す。図2を参照して超音波によるボルトの軸力測定の原理を簡単に説明する。図2の左の寸法Lはボルト300に軸力が発生していないときの長さである。図2の右側はボルト300に軸力が発生している状態を示す。ボルト300に軸力が発生すると、軸力が発生していない図2の左側の状態からボルト軸320は△Lだけ伸びる。超音波を用いるボルト軸力測定装置は、探触子200の発する超音波によって「L+△L」を測定し、「L+△L」から既知のLを引くことで△Lを求める。ボルト軸力測定装置は求めた△Lを軸力に換算する。この際、軸力を精度よく求めるには、探触子200がボルト300に正しく接触していることが必要である。そのため、超音波送受信装置100は、探触子200がボルト300に正しく接触しているがどうかを、探触子200の発する超音波のエコーで判定する。
【0020】
***動作の説明***
図3は、超音波送受信装置100の動作を示すフローチャートである。図3を参照して、超音波送受信装置100の動作を説明する。図3の各ステップにおける括弧書きは、そのステップの動作主体を示している。
【0021】
<ステップS11>
ステップS11において、ボルト頭310に探触子200が設置される。探触子200はナットランナ610に取り付けられている。ナットランナ610がボルト300のボルト頭310に接続する際に、同時に、探触子200がボルト頭310に設置される。
【0022】
<ステップS12>
ステップS12において、探触子制御部111は、探触子200からボルト300に向けて超音波を送信させ、送信させた超音波のエコーを探触子200に受信させる。
後述するステップS14では、接触状態判断部112は、エコーデータ111Aと、比較データ131とを比較し、比較結果に基づいてボルトへの探触子200の接触状態を判断するが、「接触状態」には、探触子200がボルト300に接触していない場合も含む。探触子200がボルト300に接触していない場合とは、例えば探触子200が接触媒質210に接触していない場合、あるいは探触子200が接触媒質210に接触しているが、接触媒質210がボルト300に接触していない場合を含む。
探触子制御部111は送受信装置140を介して探触子200に超音波を送信させ、この超音波のエコーを探触子200及び送受信装置140を介して受信する。
【0023】
<ステップS13>
ステップS13において、探触子制御部111は、受信したエコーの信号波形をFFT(Fast Fourier Transform)解析する。以下では、エコーの信号波形に対するFFT解析の結果をエコーデータ111Aと表記する。探触子制御部111は、エコーデータ111Aを補助記憶装置130に格納する。
【0024】
<ステップS14>
ステップS14において、接触状態判断部112は、エコーデータ111Aと、比較データ131とを比較し、比較結果に基づいてボルトへの探触子200の接触状態を判断する。具体的には以下のように判断する。
比較データ格納部である補助記憶装置130は、比較データ131として、超音波のエコーをFFT解析したFFT解析データを格納している。また探触子制御部111は、探触子200が受信したエコーをFFT解析し、解析結果をエコーデータ111Aとして生成する。
具体的には、接触状態判断部112は、補助記憶装置130からエコーデータ111Aと比較データ131を読み込み、エコーデータ111Aと比較データ131とを比較する。比較データ131は、超音波のエコーをFFT解析したデータである。比較データ131は主として以下の(A)から(D)のようなデータである。(A)から(D)の各比較データ131は、FFT解析の周波数スペクトルにおける、上限周波数、中心周波数、ピーク周波数及び下限周波数を要素に有する集合として表すことができる。比較データ131はFFT解析結果のデータベースの形態で補助記憶装置130に格納されている。
(A)比較データ131は、ボルトへの探触子の接触状態が正常なエコーのFFT解析結果のデータである。
(B)比較データ131は、摩耗している探触子の発振した超音波のエコーのFFT解析結果のデータである。
(C)比較データ131は、探触子とボルトとの間に異物が存在している場合に、その探触子の発振した超音波のエコーのFFT解析結果のデータである。
(D)ボルトに異常がある場合に、そのボルトに設置されている探触子の発振した超音波のエコーのFFT解析結果のデータである。
【0025】
<ステップS15>
ステップS15において、接触状態判断部112は、エコーデータ111Aと比較データ131との比較結果により、ボルト300への探触子200の接触状態が正常かどうかを判定する。接触状態判断部112が正常と判定した場合、処理はステップS16に進む。接触状態判断部112が正常ではない判定した場合、処理はステップS17に進む。
【0026】
<ステップS16>
ステップS16において、接触状態判断部112は、比較結果信号112Aとして正常信号をナットランナ制御装置620に送信する。ナットランナ制御装置620は比較結果信号112Aとして正常信号を受信すると、ナットランナ610にボルト300の締め付け処理を継続させる。この場合、探触子200はボルト300の軸力測定に使用される。
【0027】
<ステップS17>
ステップS17において、接触状態判断部112は、ボルト300への探触子200の接触状態が正常でないと判定した場合に、比較結果を示す比較結果信号112Aを、ボルトを締めつけるナットランナ610に出力する。具体的には接触状態判断部112は、比較結果信号112Aとして異常信号をナットランナ制御装置620に送信する。ナットランナ制御装置620は比較結果信号112Aとして異常信号を受信すると、ナットランナ610にボルト300の締め付け処理を中止させる。
【0028】
<比較データ131の具体例>
図4から図11を参照して比較データ131を具体的に説明する。
図4は、試験用ボルト820の端面821と、試験用探触子810の超音波の出射面811との角度θを1度ピッチで変えて、エコーの信号波形及びそのエコーデータ111Aを取得した測定を示す。角度θを以下、傾斜角度θと呼ぶ。
図5は、図4の測定結果を示す。横軸は傾斜角度θであり単位は度である。縦軸はFFT解析における各周波数を示し、単位はMHzである。図5の右にグラフの種類を示している。一点鎖線は上限周波数を示す。実線は中心周波数を示す。点線はピーク周波数を示す。二点鎖線は下限周波数を示す。
【0029】
図6は、傾斜角度θ=0度におけるFFT解析結果の周波数スペクトルを示す。図6の結果が図5の傾斜角度θ=0度の値である。図6の右側はFFT解析結果の元になる生波形である。
図7は、傾斜角度θ=3度におけるFFT解析結果の周波数スペクトルを示す。図7の結果が図5の傾斜角度θ=3度の値である。図7の右側はFFT解析結果の元になる生波形である。
図8は、傾斜角度θ=4度におけるFFT解析結果の周波数スペクトルを示す。図8の結果が図5の傾斜角度θ=4度の値である。図8の右側はFFT解析結果の元になる生波形である。
図9は、傾斜角度θ=6度におけるFFT解析結果の周波数スペクトルを示す。図9の結果が図5の傾斜角度θ=6度の値である。図9の右側はFFT解析結果の元になる生波形である。
図10は、傾斜角度θ=0度におけるFFT解析の元になるゲイン値71.5dBの生波形を示す。
図11は、傾斜角度θ=6度におけるFFT解析の元になるゲイン値101.5dB生波形を示す。
【0030】
図5に示すように、傾斜角度θがゼロ度からだんだん大きくなると周波数が下がる。特に、上限周波数が下がっている。よって、ボルトへの探触子の接触状態が正常かどうかの判定手法として、FFT解析結果における周波数の下降を使用することができる。
【0031】
また、傾斜角度θ=0度、傾斜角度θ=3度、傾斜角度θ=4度、傾斜角度θ=6度を示す、図6図7図8図9をみると、傾斜角度θがゼロ度から次第に大きくなると、図7から図9に丸の破線で示すように、パワースペクトルの両サイドに周波数帯が現れる。この両サイドの周波数帯を、ボルトへの探触子の接触状態が正常かどうかの判定手法として利用することができる。
【0032】
また、傾斜角度θ=0度、傾斜角度θ=6度の生データを示す図10図11をみると、丸の破線で示すように、傾斜角度θがゼロ度から次第に大きくなると反射波のレベルが下がり、ゲイン値を上げることによりノイズレベルが上昇している。図10のゲイン値は71.5dB,図11のゲイン値は101.5dBである。この傾斜角度θの増大に伴うノイズレベルの上昇をボルトへの探触子の接触状態が正常かどうかの判定手法として利用することができる。
【0033】
また、エコー高さを、ボルトへの探触子の接触状態が正常かどうかの判定手法として利用することもできる。
【0034】
さらに、接触状態判断部112は、ボルトへの探触子の接触状態が正常かどうかの判定手法として以下の判定手法を採用することができる。接触状態判断部112はステップS14で述べた(A)から(D)の比較データ131に対して、以下の(1)から(3)の判定手法を採用することができる。
(1)接触状態判断部112は、エコーデータ111Aと比較データ131との{上限周波数、中心周波数、ピーク周波数及び下限周波数}を比較して判定する。
(2)図5における、「ピーク周波数と上限周波数との差、及び、ピーク周波数と下限周波数との差」を、ボルトへの探触子の接触状態が正常かどうかの判定手法として用いる。つまり、接触状態判断部112は、エコーデータ111Aと比較データ131との、「ピーク周波数と上限周波数との差、及び、ピーク周波数と下限周波数との差」を比較して判定する。
(3)接触状態判断部112は、エコーデータ111Aの周波数スペクトルと、比較データ131の周波数スペクトルとを比較し判定する。
【0035】
実施の形態1の超音波送受信装置100は、ボルトへの探触子の接触状態が正常かどうかを判定するので、熟練したオペレータによる人手による判定が不要となる。よって、人手に頼ることなく安定したボルトの軸力管理が可能になる。
また、超音波送受信装置100は、ボルトへの探触子の接触状態が正常でないと判定した場合にはナットランナ制御装置620へ異常信号を送信するので、ボルトへの探触子の接触状態が正常でない状態でのボルト締め付けを防止できる。
【0036】
図12は、探触子200の設置位置のバリエーションを示す。図1では、探触子200はボルト頭310に設置したが、図12の設置位置1に示すように、ボルト底部321に探触子200を設置してもよい。この場合、探触子200の検出するエコーはボルト頭310で反射されたエコーである。また、図1ではボルト300への探触子200の接触状態を判定したが、設置位置2に示すように、ボルト頭310のないボルト700に探触子200を設置してもよい。設置位置2では探触子200は、ボルト軸720の一方の端部の端面に設置される。ボルト700はナット500及びナット510で締め付けられる。また、設置位置3に示すように、設置位置2に対して、探触子200はボルト軸720の他方の端部の端面に設置されてもよい。
【0037】
実施の形態1の超音波送受信装置100は、以上のようにエコー波形をFFT解析した結果を使用する。接触状態判断部112はデータベース化されたFFT解析結果である比較データ131を用いて、エコーデータ111Aと、比較データ131との比較により探触子200の接触状態を判定する。
なお、超音波送受信装置100では、軸力測定前の探触子設置時だけでなく、ボルトの軸力測定中も接触状態判断部112が判定を実施する。すなわち、図3のステップS12以降のステップは、軸力測定前の探触子設置時だけでなく、ボルトの軸力測定中も実施される。
【符号の説明】
【0038】
100 超音波送受信装置、101 超音波送受信プログラム、110 プロセッサ、111 探触子制御部、111A エコーデータ、112 接触状態判断部、112A 比較結果信号、120 主記憶装置、130 補助記憶装置、131 比較データ、140 送受信装置、200 探触子、210 接触媒質、300 ボルト、310 ボルト頭、320 ボルト軸、321 ボルト底部、410 第1部材、420 第2部材、500,510 ナット、610 ナットランナ、620 ナットランナ制御装置、700 ボルト、720 ボルト軸、721 底部、810 試験用探触子、820 試験用ボルト。
図1
図2
図3
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図5
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図10
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図12