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特許7507583受電モジュール型テレメータ送信機、テレメータ計測システム、回転機械、およびテレメータ送信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】受電モジュール型テレメータ送信機、テレメータ計測システム、回転機械、およびテレメータ送信方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/20 20160101AFI20240621BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20240621BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20240621BHJP
【FI】
H02J50/20
G08C17/00 B
H02J50/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020058245
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021158840
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健二
(72)【発明者】
【氏名】森下 慶一
(72)【発明者】
【氏名】大山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】安井 潤
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-170893(JP,A)
【文献】特開2005-312285(JP,A)
【文献】特開平10-172844(JP,A)
【文献】特開2012-139051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C13/00-25/04
H02J50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータに設けられ、ステータ側に円弧状に形成された送電アンテナから受電した電力により通信を行うテレメータ計測システムの受電モジュール型テレメータ送信機であって、
前記ロータに、周方向に間隔をあけて配置された3つ以上の受電モジュールと、
前記3つ以上の受電モジュールから入力される電圧のうち最も高い電圧を出力する、前記受電モジュールと同数の論理和回路と、
監視対象の状態を計測し、前記状態を示す計測データを出力する、前記受電モジュールと同数のセンサと、
前記論理和回路から入力される前記電圧を電源として駆動し、前記センサの計測データを無線信号を介して送信する、前記受電モジュールと同数の送信部と
を備え
前記論理和回路は、各々が前記3つ以上の受電モジュールのうち2つと接続され、
前記送信部は、それぞれ前記論理和回路から入力される前記電圧を電源として駆動する、
受電モジュール型テレメータ送信機。
【請求項2】
前記論理和回路は、複数のダイオードと出力配線とを備え、
複数のダイオードのアノードは、それぞれ前記3つ以上の受電モジュールに接続され、
複数のダイオードのカソードは、前記出力配線に並列に接続される
請求項1に記載の受電モジュール型テレメータ送信機。
【請求項3】
前記3つ以上の受電モジュールが出力する電圧をそれぞれ所定電圧値に変換する複数のDC/DC変換器を備え、
前記論理和回路は、前記複数のDC/DC変換器から入力される電圧のうち最大の電圧を出力する
請求項1または請求項2に記載の受電モジュール型テレメータ送信機。
【請求項4】
前記論理和回路が出力する電圧を所定電圧値に変換するDC/DC変換器を備え、
前記送信部は、前記DC/DC変換器から入力される前記電圧を電源として駆動する
請求項1または請求項2に記載の受電モジュール型テレメータ送信機。
【請求項5】
前記論理和回路を含む複数の論理和回路と、
前記送信部を含み、前記複数の論理和回路に対応して設けられる複数の送信部と
を備え、
前記3つ以上の受電モジュールは、前記複数の論理和回路の一部に接続され、
前記複数の論理和回路は、前記3つ以上の受電モジュールのうち2つの受電モジュールと接続され、
前記複数の送信部は、それぞれ前記複数の論理和回路から入力される前記電圧を電源として駆動する
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の受電モジュール型テレメータ送信機。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の受電モジュール型テレメータ送信機と、
ステータに設けられ、円弧状に形成された送電アンテナと、
前記送電アンテナに高周波信号を供給する発振器と、
前記ステータに設けられ、円弧状に形成された受信アンテナと、
前記受信アンテナを介して前記受電モジュール型テレメータ送信機から前記無線信号を受信する受信部と
を備えるテレメータ計測システム。
【請求項7】
請求項5に記載の受電モジュール型テレメータ送信機と、
ステータに設けられ、円弧状に形成された送電アンテナと、
前記送電アンテナに高周波信号を供給する発振器と、
前記ステータに設けられ、円弧状に形成された受電アンテナと、
受信アンテナを介して前記受電モジュール型テレメータ送信機から前記無線信号を受信する受信部と
前記受信部による前記複数の送信部からの無線信号の受信の正否を判定する判定部と、
前記通信の正否に基づいて、前記受電モジュールまたは前記送信部の故障の診断をする診断部と
を備えるテレメータ計測システム。
【請求項8】
前記ステータと、
前記ステータに対して軸線回りに回転する回転軸および前記回転軸の外周面から放射状に延びるように設けられた複数の動翼を有する前記ロータと、
請求項6または請求項7に記載のテレメータ計測システムと
を備え、
前記センサがそれぞれ前記動翼に設けられた
回転機械。
【請求項9】
ロータに設けられ、ステータ側に円弧状に形成された送電アンテナから受電した電力により通信を行うテレメータ計測システムの受電モジュール型テレメータ送信機であって、
前記ロータに、周方向に間隔をあけて配置された3つ以上の受電モジュールと、
前記3つ以上の受電モジュールから入力される電圧のうち最も高い電圧を出力する、前記受電モジュールと同数の論理和回路と、
監視対象の状態を計測し、前記状態を示す計測データを出力する、前記受電モジュールと同数のセンサと、
前記センサの計測データを無線信号を介して送信する送信部と
を備え
前記論理和回路は、各々が前記3つ以上の受電モジュールのうち2つと接続される、
受電モジュール型テレメータ送信機を用いたテレメータ送信方法であって、
前記3つ以上の受電モジュールが、前記送電アンテナから電力を受電するステップと、
前記送信部が、前記3つ以上の受電モジュールから入力される電圧のうち最も高い電圧を電源として駆動するステップと、
前記送信部が、前記センサの計測データを無線信号を介して送信するステップと
を備えるテレメータ送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受電モジュール型テレメータ送信機、テレメータ計測システム、回転機械、およびテレメータ送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン等の回転機械の運転状況を監視する運転監視システムとして、テレメータ計測システムが知られている。特許文献1には、タービンのステータに設けられた環状の送電アンテナを介して、ロータに設けられる計測信号送信装置の受電モジュールにマイクロ波エネルギー(高周波電波)を供給するテレメータ計測システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-170893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転機械に設けられる送電アンテナから放射される電波は、回転機械が備えるステータなどの構造物によって反射し、屈折し、または散乱する。そのため、電波伝搬において、ステータ側の送電アンテナとロータ側の受電アンテナとの間の伝播経路が複数存在するマルチパスが生じる。マルチパスが生じると受電アンテナにおいて、直接波と反射波との位相合成により電波の受信レベルが変動するフェージングが生じる可能性がある。そのため、送電アンテナから供給される電力も、受電場所によって変動する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、送電アンテナからの安定的な受電を可能とする受電モジュール型テレメータ送信機、テレメータ計測システム、回転機械、およびテレメータ送信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る受電モジュール型テレメータ送信機は、ロータに設けられ、前記ロータを覆うステータ側に円弧状に形成された送電アンテナから受電した電力により通信を行うテレメータ計測システムの受電モジュール型テレメータ送信機であって、前記ロータに、周方向に間隔をあけて配置された複数の受電モジュールと、前記複数の受電モジュールから入力される電圧のうち最も高い電圧を出力する論理和回路と、前記ロータの状態を計測し、前記状態を示す計測データを出力するセンサと、前記論理和回路から入力される前記電圧を電源として駆動し、前記センサの計測データを無線信号を介して送信する送信部とを備える。
【0007】
本開示に係るテレメータ計測システムは、上記態様に係る受電モジュール型テレメータ送信機と、前記ステータに設けられ、円弧状に形成された送電アンテナと、前記送電アンテナに高周波信号を供給する発振器と、前記ステータに設けられ、円弧状に形成された受信アンテナと、前記受信アンテナを介して前記受電モジュール型テレメータ送信機から前記無線信号を受信する受信機とを備える。
【0008】
本開示に係る回転機械は、前記ステータと、前記ステータに対して軸線回りに回転する回転軸および前記回転軸の外周面から放射状に延びるように設けられた複数の動翼を有する前記ロータと、上記態様に係るテレメータ計測システムとを備え、前記センサがそれぞれ前記動翼に設けられる。
【0009】
本開示に係るテレメータ送信方法は、ロータに設けられ、ステータ側に円弧状に形成された送電アンテナから受電した電力により通信を行うテレメータ計測システムの受電モジュール型テレメータ送信機であって、前記ロータに、周方向に間隔をあけて配置された複数の受電モジュールと、監視対象の状態を計測し、前記状態を示す計測データを出力するセンサと、前記センサの計測データを無線信号を介して送信する送信部とを備える受電モジュール型テレメータ送信機を用いたテレメータ送信方法であって、前記複数の受電モジュールが、前記送電アンテナから電力を受電するステップと、前記送信部が、前記複数の受電モジュールから入力される電圧のうち最も高い電圧を電源として駆動するステップと、前記送信部が、前記センサの計測データを無線信号を介して送信するステップとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る受電モジュール型テレメータ送信機によれば、環状の送電アンテナから安定的に受電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】少なくとも1つの実施形態に係るガスタービンの模式的な縦断面図である。
図2】少なくとも1つの実施形態に係るテレメータ計測システムの概略構成を示す縦断面図である。
図3】少なくとも1つの実施形態に係るテレメータ計測システムの概略構成を示す模式的な横断面図である。
図4】少なくとも1つの実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機の構成を示す概略回路図である。
図5】少なくとも1つの実施形態に係るロータの回転位置と受電モジュールが受電する電圧および論理和回路が出力する電圧との関係の例を示す図である。
図6】少なくとも1つの実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信の構成を示す概略回路図である。
図7】少なくとも1つの実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信の構成を示す概略回路図である。
図8】少なくとも1つの実施形態に係る信号処理部の構成を示す概略ブロック図である。
図9】少なくとも1つの実施形態に係る信号処理部による受電モジュール型テレメータ送信機の故障診断方法を示すフローチャートである。
図10】少なくとも1つの実施形態に係る通信の正否と故障状態との関係を示す図である。
図11】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〈第1の実施形態〉
《ガスタービン(回転機械)の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係るガスタービンの模式的な縦断面図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係るガスタービン1は、圧縮機10、燃焼器20、およびタービン30を備える。圧縮機10は、回転により高圧空気を生成する。燃焼器20は、圧縮機10が生成した高圧空気に燃料を混合して燃焼させることで燃焼ガスを生成する。タービン30は、燃焼器20が生成した燃焼ガスによって駆動される。ガスタービン1は、回転機械の一例である。
【0013】
圧縮機10は、軸線O回りに回転する圧縮機ロータ11と、圧縮機ロータ11を外周側から覆う圧縮機ケーシング12と、を有する。圧縮機ロータ11は、軸線Oに沿って延びる柱状をなす。圧縮機ロータ11の外周面上には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼段13が設けられる。各圧縮機動翼段13は、圧縮機ロータ11の外周面上で軸線Oの周方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼14を有する。
【0014】
圧縮機ケーシング12は、軸線Oを中心とする筒状をなす。圧縮機ケーシング12の内周面には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼段15が設けられる。これらの圧縮機静翼段15は、上記の圧縮機動翼段13に対して、軸線O方向から見て交互に配列される。各圧縮機静翼段15は、圧縮機ケーシング12の内周面上で、軸線Oの周方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼16を有する。
【0015】
燃焼器20は、上記の圧縮機ケーシング12と、後述するタービンケーシング32との間に設けられる。圧縮機10で生成された高圧空気は、燃焼器20内部で燃料と混合されて予混合ガスとなる。燃焼器20内で、この予混合ガスが燃焼することで高温高圧の燃焼ガスが生成される。燃焼ガスは、タービンケーシング32内に導かれてタービン30を駆動する。
【0016】
タービン30は、軸線O回りに回転するタービンロータ31と、タービンロータ31を外周側から覆うタービンケーシング32と、を有する。タービンロータ31は、軸線を中心としたディスク状をなす複数のタービンディスク31a(図2参照)が軸線O方向に積層されることで、全体として軸線Oに沿って延びる柱状をなす。各タービンディスク31aの外周にはタービン動翼段33が設けられる。これにより、タービンロータ31には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼段33が設けられる。
【0017】
各タービン動翼段33は、タービンロータ31の外周面上で、軸線Oの周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼34を有する。このタービンロータ31は、上記の圧縮機ロータ11に対して軸線O方向に一体に連結されることで、ガスタービンロータを形成する。
【0018】
タービンケーシング32は、軸線Oを中心とする筒状をなす。タービンケーシング32の内周面には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼段35が設けられる。これらのタービン静翼段35は、上記のタービン動翼段33に対して、軸線O方向から見て交互に配列される。各タービン静翼段35は、タービンケーシング32の内周面上で、軸線Oの周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼36を有する。タービンケーシング32は、上記の圧縮機ケーシング12に対して軸線O方向に連結されることで、ガスタービンケーシングを形成する。すなわち、上記のガスタービンロータは、このガスタービンケーシング内で、軸線O回りに一体に回転可能とされる。
【0019】
《テレメータ計測システム100の構成》
図2は、第1の実施形態に係るテレメータ計測システム100の概略構成を示す縦断面図である。図3は、第1の実施形態に係るテレメータ計測システム100の概略構成を示す模式的な横断面図である。
第1の実施形態に係るガスタービン1は、運転中のガスタービン1の運転状況、例えば、タービン翼の表面温度、歪、振動等を監視するためのテレメータ計測システム100を備える。テレメータ計測システム100は、図2に示すように、複数の受電モジュール型テレメータ送信機110、受信装置120、および給電装置130を備える。
【0020】
《給電装置130の構成》
給電装置130は、タービンロータ31に周方向に間隔をあけて配置された複数の受電モジュール型テレメータ送信機110の受電アンテナ511に対して、ガスタービンケーシングの静止部材32a側から非接触で電力を伝送(給電)する。給電装置130は、送電アンテナ131及び発振器132を有する。静止部材32aは、軸線O回りに回転するタービンロータ31に対して、回転せずに静止している部材であって、例えばタービンケーシング32に固定される。静止部材32aは、タービンケーシング32に固定されているものに限られず、静止している他の構造物に取り付けられたものであってもよい。タービンケーシング32および静止部材32aは、ステータの一例である。
【0021】
送電アンテナ131は、全体として軸線Oを中心とした円環状をなしている。送電アンテナ131は、静止部材32aに対して固定されている。本実施形態では、送電アンテナ131は、漏洩導波管310(漏洩アンテナ)によって構成されている。
【0022】
漏洩導波管310は、周方向に向かって、かつ、軸線Oを中心とした円弧に沿って延びている。漏洩導波管310は、内部が中空状とされており、延在方向に直交する断面形状が例えば方形又は円形とされている。漏洩導波管310は周方向の一方側の端部である第一端部311と、周方向の他方側の端部である第二端部312とが分配器134を介して接続されている。分配器134は、1入力2出力のT字状の導波管であり、入力端に入力された電波を2つの出力端に分配して出力する。分配器134の入力端は、発振器132に接続される。即ち、漏洩導波管310は間隙を除く全周で軸線Oを囲う円環状をなしている。分配器134は、漏洩導波管310と一体に形成されてもよい。また、第一端部311及び第二端部312と対向する位置で、導波管内部に図示しない反射板が設けられ、導波管内部全体の電力分布が一様になるように反射板で調整される。
【0023】
漏洩導波管310は、ガスタービンケーシングの静止部材32aの複数の突出部32cの先端に固定されている。即ち、漏洩導波管310は、周方向に間隔をあけて配置された突出部32cを順次経由しながら、当該突出部32cで固定される。漏洩導波管310は、図2に示すように、円環状に配列された受電モジュール110の受電アンテナ511より軸線O方向一方側(図2における右側、タービンの下流側)に位置している。
【0024】
このような漏洩導波管310における受電アンテナ511側を向く面には、該漏洩導波管310の表面が開口した複数の放射部313が、互いに間隔をあけて配列されている。
【0025】
発振器132は、図示しない電源からの給電に応じて、所定の周波数の高周波信号を発振する。発振器132は、漏洩導波管310の分配器134に電気的に接続されている。発振器132が発振した高周波信号が分配器134を介して漏洩導波管310の第一端部311および第二端部312に伝送されることで、漏洩導波管310内では、第一端部311及び第二端部312から反射板に向かって電磁波が電磁界を形成しながら伝搬する。この電磁波に基づいて、各放射部313から電波(マイクロ波)が空間に放射される。
【0026】
《受電モジュール型テレメータ送信機110の構成》
受電モジュール型テレメータ送信機110は、ガスタービン1のタービンロータ31に一体に設けられており、タービンロータ31の回転に伴って軸線O回りに回転する。受電モジュール型テレメータ送信機110は、給電装置130から電波(マイクロ波)として伝送される電力で駆動し、ガスタービン1に係る状態量の計測値を無線信号で送信する。
【0027】
図4は、受電モジュール型テレメータ送信機110の構成を示す概略回路図である。
受電モジュール型テレメータ送信機110は、2つの受電モジュール111、論理和回路112、センサ113、及び送信部114を備える。
【0028】
受電モジュール111は、給電装置130から供給される電波を受電する。各受電モジュール111は、受電アンテナ511、検波器512、DC/DC変換器513を備える。
受電アンテナ511は、タービンディスク31aの外面から露出するように、タービンディスク31aの軸線O方向一方側を向く面に、周方向に間隔をあけて設けられている。
検波器512は、受電アンテナ511が受信したマイクロ波を直流信号に変換する。例えば、検波器512は、図4に示すように、ダイオードとキャパシタによって構成される。
DC/DC変換器513は、検波器512から入力された直流電圧を所定電圧値に変換する。
【0029】
論理和回路112は、2つの受電モジュール111が出力する電圧のうち最も高い電圧を出力する。すなわち、論理和回路112は、2つの受電モジュール111が出力する電圧信号の論理和に係る信号を出力する。
論理和回路112は、例えば、図4に示すように、2つのダイオード521と出力配線522とを備えるいわゆるダイオードOR回路である。2つのダイオード521のアノードは、それぞれ対応する受電モジュール111に接続される。2つのダイオード521のカソードは、それぞれ出力配線522に並列に接続される。これにより、2つの受電モジュール111が出力する電圧のうち最も高い電圧が、出力配線522から出力される。
なお、他の実施形態に係る論理和回路112は、例えば、ダイオード521に代えてFET(Field Effect Transistor)などのトランジスタやスイッチなどを備えるものであってもよい。
【0030】
第1の実施形態に係るセンサ113は、タービン動翼34に取り付けられる。センサ113の例としては、タービン動翼34の振動を計測する歪みゲージ、タービン動翼34の温度を計測する熱電対など、ガスタービン1の運転状態におけるタービン動翼34の状態量を計測するセンサ113が挙げられる。
【0031】
送信部114は、タービンディスク31aの外面から露出するようにタービンディスク31aの軸線O方向一方側を向く面に設けられる。送信部114は、論理和回路112及びセンサ113と電気的に接続されている。送信部114は論理和回路112から供給される直流電力によって駆動される。送信部114には、対応するセンサ113による計測信号が入力される。送信部114は、センサ113の計測信号を無線情報に変換し、図示しない送信アンテナを介して無線情報を外部に送信する。
【0032】
《受信装置120の構成》
受信装置120は、受信アンテナ121、信号処理部122、及び表示部123を備える。
受信アンテナ121は、静止部材32aの突出部32cに設けられており、受電モジュール型テレメータ送信機110の送信部114が送信する無線情報を受信する。受信アンテナは、送信部114に対して、軸線O方向一方側かつ径方向外側に配置されている。即ち、受信アンテナ121は送信部114に対して軸線O方向に対して傾斜する方向に対向している。
【0033】
受信アンテナ121で受信した無線信号は、受信部で復調され、センサ信号に変換される。このセンサ信号は信号処理部122でAD変換され、温度、歪、振動等の各種データに処理され、表示・保存される。信号処理部122は、例えばコンピュータによって構成される。
表示部123は、信号処理部122が抽出したセンサ113の検出信号を、例えばガスタービン1の管理者が確認できるように表示する。信号処理部122及び表示部123は、ガスタービン1の外部に設けられていてもよい。
【0034】
《作用・効果》
第1の実施形態に係るテレメータ計測システム100の受電モジュール型テレメータ送信機110は、複数の受電アンテナ511と、複数の受電アンテナ511から入力される電圧のうち最も高い電圧を出力する論理和回路112とを備え、送信部114は、論理和回路112の出力電圧を電源として駆動する。これにより、受電モジュール型テレメータ送信機110は、給電装置130から安定的に受電することができる。
【0035】
ここで、第1の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110が給電装置130から安定的に受電することができる理由について説明する。
受電モジュール型テレメータ送信機110において安定的な受電が阻害される原因は、給電装置130と受電モジュール型テレメータ送信機110との間で電波が伝搬する際に発生するマルチパスフェージングによるものである。なお、給電装置130は、連続的に電波を出力するため、フェージングの発生はランダムであり、受電モジュール型テレメータ送信機110の受電アンテナ511の回転位置と受信電力量の変動に相関がない。
【0036】
図5は、第1の実施形態に係るロータの回転位置と受電モジュール111が受電し、検波した電圧および論理和回路112が出力する電圧との関係の例を示す図である。グラフG1は、ロータの回転位置と第1受電モジュール111aが受電し、検波した電圧との関係を示す。グラフG2は、ロータの回転位置と第2受電モジュール111bが受電し、検波した電圧との関係を示す。グラフG3は、ロータの回転位置と論理和回廊112が出力する電圧との関係を示す。
ここで、第1の実施形態に係る複数の受電モジュール111は、ロータ周方向に間隔をあけて配置される。そのため、各受電モジュール111においてフェージングが生じる回転角が異なる。例えば、第1受電モジュール111aが第2受電モジュール111bに対して軸線回りに角度θだけずれた位置に配置される場合、グラフG1、G2に示すように、第2受電モジュール111bにおいてフェージングが生じる回転位置は、第1受電モジュール111aにおいてフェージングが生じる回転位置より、角度θだけずれる。そのため、一方の受電受電モジュール111においてフェージングによる受電電力の低下が生じるとき、他方の受電モジュール111においてはフェージングによる受電電力の低下が生じていない可能性が高い。したがって、このように周方向に間隔をあけて配置された複数の受電モジュール111で受信した信号の検波出力に対して論理和を取ることで、グラフG3に示すように、任意の回転位置においてフェージングによる受電電力の低下が生じていない電圧の出力が期待できる。つまり、受電モジュール型テレメータ送信機110は、複数の受電モジュール111で検波された電圧のうち最も高い電圧を用いることで、フェージングによる電力変動の影響を低減し、安定的な電力の供給を受けることができる。
【0037】
フェージングの影響を加味して安定的な給電を行うためには、給電装置130がマージンをもった大きさの電力を出力することで、フェージングによる電力の低下分を補償する必要がある。この場合、給電装置130に電力を供給する電源設備の規模が増大することとなる。これに対し、第1の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110によれば、電力変動の影響を低減することで、給電装置130に電力を供給する電源設備の増強を抑止することができる。
【0038】
また、第1の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110の論理和回路112は、複数のダイオード521の組み合わせによって構成されるダイオードOR回路である。つまり、第1の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110の複数の受電モジュール111は、それぞれダイオード521を介して接続される。そのため、第1の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110において電流が受電モジュール111側へ逆流することを防ぐことができる。なお、複数の受電モジュール111がダイオード521を介さずに接続される場合、出力の大きい受電モジュール111から出力の小さい受電モジュール111に電流が逆流し、受電モジュール111がダメージを受ける可能性がある。
【0039】
なお、第1の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110は、特許文献1などに係る既存の受電モジュール型テレメータ送信機に、追加の受電モジュール111および論理和回路112を付加することで、受電モジュール型テレメータ送信機の取り換えをすることなく容易に第1の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110の構成を実装することができる。
【0040】
〈第2の実施形態〉
以下、第2の実施形態に係るテレメータ計測システム100について説明する。
第2の実施形態に係るテレメータ計測システム100は、第1の実施形態と受電モジュール型テレメータ送信機110の構成が異なる。
【0041】
《受電モジュール型テレメータ送信機110の構成》
図6は、第2の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110の構成を示す概略回路図である。
第2の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110は、第1の実施形態とDC/DC変換器の配置が異なる。第1の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110は、DC/DC変換器513が各受信モジュール111の検波器512の後段に設けられる。これに対し、第2の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110は、DC/DC変換器115が論理和回路112と送信部114との間に設けられる。
【0042】
すなわち、論理和回路112には、各受電モジュール111の検波器512が出力する電圧が供給される。そして、DC/DC変換器115は、論理和回路112が出力する電圧を所定電圧値に変換する。
【0043】
《作用・効果》
第2の実施形態に係るテレメータ計測システム100の受電モジュール型テレメータ送信機110は、ダイオード521を介して出力された電圧を、DC/DC変換器115によって所定電圧値に変換し、電源として用いる。
ここで、第1の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110は、DC/DC変換器115によって変換された電圧を、ダイオード521を含む論理和回路112に入力する。ダイオード521の順方向に電圧を供給すると、一定の電圧降下が生じることが知られている。そのため、第1の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110の送信部114に供給される電圧は、DC/DC変換器513の出力から電圧降下された電圧となる。
【0044】
これに対し、第2の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110は、ダイオード521を介して出力された電圧についてDC/DC変換器115によって電圧の変換を行うため、ダイオードの電圧降下のない電圧を電源として送信部114に供給できる。つまり、第2の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110は、はダイオード521の電圧降下分の電源マージンを向上させることが可能となる。
なお、第2の実施形態のように、論理和回路112の後段で電圧の変換を行う場合も、受電モジュール型テレメータ送信機110は、複数の受電アンテナ511で受信し、512で検波した最も高い電圧を使用するため、第1の実施形態と同様に、フェージングによる電力変動の影響を低減し、安定的な電力の供給を受けることができる。
【0045】
〈第3の実施形態〉
以下、第3の実施形態に係るテレメータ計測システム100について説明する。
第3の実施形態に係るテレメータ計測システム100は、第1の実施形態と受電モジュール型テレメータ送信機110の構成が異なる。また、第3の実施形態に係る信号処理部122は、受信信号に基づいて受電モジュール型テレメータ送信機110の故障の有無を判定する。
【0046】
《受電モジュール型テレメータ送信機110の構成》
図7は、第3の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110の構成を示す概略回路図である。
第3の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110は、3つの受電モジュール111、3つの論理和回路112、3つのセンサ113、3つの送信部114を備える。
すなわち、受電モジュール型テレメータ送信機110は、受電モジュール111A、受電モジュール111B、受電モジュール111C、論理和回路112A、論理和回路112B、論理和回路112C、センサ113A、センサ113B、センサ113C、送信部114A、送信部114B、送信部114Cを備える。
【0047】
第3の実施形態に係る3つの受電モジュール111は、3つの論理和回路112の一部に接続される。すなわち、1つの受電モジュール111は、3つの論理和回路112すべてには接続されない。また、3つの論理和回路112は、3つの受電モジュール111のうち2つの受電モジュール111と接続される。
具体的には、受電モジュール111Aは、論理和回路112Aおよび論理和回路112Bに接続される。受電モジュール111Bは、論理和回路112Aおよび論理和回路112Cに接続される。受電モジュール111Cは、論理和回路112Bおよび論理和回路112Cに接続される。
【0048】
3つの送信部114は、それぞれ対応する論理和回路112から入力される電圧を電源として駆動する。具体的には、送信部114Aは、論理和回路112Aから入力される電圧により駆動する。送信部114Bは、論理和回路112Bから入力される電圧により駆動する。送信部114Cは、論理和回路112Cから入力される電圧により駆動する。
3つの送信部114は、それぞれ対応するセンサ113の計測信号を送信する。具体的には、送信部114Aは、センサ113Aの計測信号を送信する。送信部114Bは、センサ113Bの計測信号を送信する。送信部114Cは、センサ113Cの計測信号を送信する。
【0049】
受電モジュール型テレメータ送信機110がこのように構成されることで、受信装置120による受信信号に基づいて受電モジュール111または送信部114の故障を判定することができる。
【0050】
《受信装置120の動作》
図8は、第3の実施形態に係る信号処理部122の構成を示す概略ブロック図である。
第3の実施形態に係る受信装置120の信号処理部122は、取得部701、判定部702、特定部703、記憶部704、診断部705、通知部706を備える。
【0051】
取得部701は、受信アンテナ121が受信し、図示しない受信部で復調した計測信号を取得する。
【0052】
判定部702は、取得部701が取得した計測信号が正常に受信できたか否かを判定する。判定部702は、例えば、複数の受電モジュール型テレメータ送信機110からのいずれからも計測信号が取得されない場合や、計測信号が受信されたものの雑音が多いために真値を特定できない場合に、受信に失敗したと判定する。
【0053】
特定部703は、取得部701が取得した計測信号の送信元の受電モジュール型テレメータ送信機110を特定する。
【0054】
記憶部704は、受電モジュール型テレメータ送信機110の周波数チャネルと、当該計測信号が正常に受信されたか否かを示す正否フラグとを関連付けて記憶する。
【0055】
診断部705は、記憶部704が記憶するデータに基づいて、受電モジュール型テレメータ送信機110が故障している可能性を診断する。
【0056】
通知部706は、診断部705による診断結果を表示するための情報を、表示部123に送信することで、診断結果を通知する。
【0057】
《故障診断方法》
図9は、第3の実施形態に係る信号処理部122による受電モジュール型テレメータ送信機110の故障診断方法を示すフローチャートである。故障診断は、ガスタービン1の駆動中に行う。
取得部701は、複数の受信部121が受電モジュール型テレメータ送信機110の各送信部114から受信した計測信号を取得する(ステップS1)。このとき、受電モジュール型テレメータ送信機114A、送信部114B、および送信部114Cから計測信号を受信する。
【0058】
次に、判定部702は、取得された各計測信号が正常に受信できたか否かを判定する(ステップS2)。また、特定部703は、各計測信号の送信元の送信部114を特定する(ステップS3)。記憶部704は、計測信号ごとに、ステップS3で特定された送信元の送信部114の情報、および受信の正否を示す正否フラグを関連付けて記憶する(ステップS4)。
【0059】
次に、診断部705は、各送信部114についてステータの全周分の計測信号を受信したか否かを判定する(ステップS5)。例えば、診断部705は、記憶部704を参照し、各送信部114の計測信号が、すべて受信されたか否かを判定する。
全周分の計測信号を受信していない場合(ステップS5:NO)、受信装置120は、ステップS1に処理を戻し、計測信号の取得を続ける。
【0060】
他方、全周分の計測信号を受信した場合(ステップS5:YES)、診断部705は、各送信部114の通信結果を集計し、送信部114ごとに、通信が全周において成功したか、一部失敗したか、全部失敗したかを特定する(ステップS6)。
図10は、第3の実施形態に係る通信の正否と故障状態との関係を示す図である。以下、診断部705は、ステップS6で集計した通信結果に基づいて、図10に示すように、受電モジュール型テレメータ送信機110の異常の有無を診断する。
【0061】
まず、診断部705は、すべての送信部114の通信が全周において成功したか否かを判定する(ステップS7)。すべての送信部114の通信が全周において成功した場合(ステップS7:YES)、診断部705は、受電モジュール型テレメータ送信機110に異常がないと診断する(ステップS8)。
【0062】
次に(ステップS7:NO)、診断部705は、1つの送信部114の通信が全周の一部において失敗し、他の送信部114の通信が全周において成功したか否かを判定する(ステップS9)。1つの送信部114の通信が全周の一部において失敗し、他の送信部114の通信が全周において成功した場合(ステップS9:YES)、診断部705は、一部において通信に失敗した送信部114に、故障の可能性があると診断する(ステップS10)。例えば、送信部114Aが一部において通信に失敗し、送信部114Bおよび送信部114Cが全周において通信に成功した場合、診断部705は、送信部114Aに故障の可能性があると診断する。
【0063】
次に(ステップS9:NO)、診断部705は、2つの送信部114の通信が全周の一部において失敗し、他の送信部114の通信が全周において成功したか否かを判定する(ステップS11)。2つの送信部114の通信が全周の一部において失敗し、他の送信部114の通信が全周において成功した場合(ステップS11:YES)、診断部705は、通信に失敗した2つの送信部114に接続された受電モジュール111が故障していると診断する(ステップS12)。例えば、送信部114Aおよび送信部114Cが一部において通信に失敗し、送信部114Bおよび送信部114Bが全周において通信に成功した場合、診断部705は、送信部114Aと送信部114Cとに接続される受電モジュール111Bが故障していると診断する。これは、受電モジュール111Bの故障によって、送信部114Aおよび送信部114Cがフェージングの影響を受けた可能性が高いためである。また、このとき診断部705は、通信に失敗した2つの送信部114にも故障の可能性があると診断する。
【0064】
次に(ステップS11:NO)、診断部705は、1つまたは2つの送信部114の通信が全周に亘って失敗し、他の送信部114の通信が全周において成功したか否かを判定する(ステップS13)。1つまたは2つの送信部114の通信が全周に亘って失敗し、他の送信部114の通信が全周において成功した場合(ステップS13:YES)、診断部705は、通信に失敗した送信部114が故障していると診断する(ステップS14)。例えば、送信部114Bおよび送信部114Cが全周に亘って通信に失敗し、送信部114Aが全周において通信に成功した場合、診断部705は、送信部114Bと送信部114Cとに故障の可能性があると診断する。なお、全周に亘って通信に失敗した送信部114が2つ存在する場合、診断部705は、その両方に接続される受電モジュール111Bにも故障の可能性があると診断する。つまり、送信部114Bと送信部114Cとに接続された受電モジュール114Cに故障の可能性がある。
【0065】
すべての送信部114の通信が全周に亘って失敗し、または一部において失敗した場合(ステップS13:NO)、診断部705は、すべての受電モジュール111および送信部114に故障の可能性があると診断する(ステップS15)。
【0066】
そして、通知部706は、ステップS8、S10、S12、S14またはS15の診断結果を示す表示データを、表示部123に出力する(ステップS16)。これにより、信号処理部122による受電モジュール型テレメータ送信機110の故障診断の結果を利用者に知らせることができる。
【0067】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0068】
また、第1および第2の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110は、2つの受電モジュール111を備えるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110は、3つ以上の受電モジュール111を備えてもよい。また、第3の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110は、3つの受電モジュール111、3つの論理和回路112、3つのセンサ113、および3つの送信部114を備えるが、数はこれに限られない。例えば、他の実施形態に係る受電モジュール型テレメータ送信機110は、4つ以上の受信モジュール111を備えてもよいし、4つ以上の送信部114を備えてもよい。ただし、第3の実施形態のように故障の診断を行う場合、論理和回路112、センサ113および送信部114の個数は、それぞれ同じ数とする。
【0069】
第3の実施形態に係る信号処理部122は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、信号処理部122の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで信号処理部122として機能するものであってもよい。
【0070】
〈コンピュータ構成〉
図11は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メモリ93、ストレージ95、インタフェース97、AD変換器99を備える。AD変換器99は、受信アンテナ121が受信し、図示しない受信部で復調した計測信号を、デジタル信号に変換する。AD変換器99は、インタフェース97を介して当該デジタル信号をプロセッサ91に伝送する。
上述の信号処理部122は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ95もしくはメモリ93に記憶されている。プログラムがストレージ95に記憶されている場合、プロセッサ91は、プログラムをストレージ95から読み出してメモリ93に展開する。プロセッサは、メモリ93上のプログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメモリ93に確保する。プロセッサ91の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0071】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ90は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ91によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0072】
ストレージ95の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ95は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース97または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメモリ93に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ95は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0073】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ95に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0074】
〈付記〉
各実施形態に記載の受電モジュール型テレメータ送信機、テレメータ計測システム、および回転機械は、例えば以下のように把握され得る。
【0075】
(1)第1の態様によれば、受電モジュール型テレメータ送信機(110)は、ロータ(31)に設けられ、ステータ(32)側に円弧状に形成された送電アンテナ(131)から受電した電力により通信を行うテレメータ計測システム(100)の受電モジュール型テレメータ送信機(110)であって、前記ロータ(31)に、周方向に間隔をあけて配置された複数の受電モジュール(111)と、前記複数の受電モジュール(111)から入力される電圧のうち最も高い電圧を出力する論理和回路(112)と、監視対象(34)の状態を計測し、前記状態を示す計測データを出力するセンサ(113)と、前記論理和回路(112)から入力される前記電圧を電源として駆動し、前記センサ(113)の計測データを無線信号を介して送信する送信部(114)とを備える。
【0076】
当該態様によれば、受電モジュール型テレメータ送信機(110)は、複数の受電モジュール(111)の受電電力の最大を取ることで、安定した電力供給を受けることができる。
【0077】
(2)第2の態様によれば、第1の態様に係る受電モジュール型テレメータ送信機(110)が、前記論理和回路(112)は、複数のダイオード(521)と出力配線(522)とを備え、複数のダイオード(521)のアノードは、それぞれ前記複数の受電モジュール(111)に接続され、複数のダイオード(521)のカソードは、前記出力配線に並列に接続されるものであってよい。
【0078】
当該態様によれば、受電モジュール型テレメータ送信機(110)において出力の小さい受電モジュール(111)に電流が流れ込むことを防ぐことができる。
【0079】
(3)第3の態様によれば、第1または第2の態様に係る受電モジュール型テレメータ送信機(110)が、前記複数の受電モジュール(111)が出力する電圧をそれぞれ所定電圧値に変換する複数のDC/DC変換器(513)を備え、前記論理和回路(112)は、前記複数のDC/DC変換器(513)から入力される電圧のうち最大の電圧を出力するものであってよい。
【0080】
本態様の構成であれば、既存の受電モジュール型テレメータ送信機にも本開示の受電モジュール型テレメータ送信機の構成を容易に適用させることができる。
【0081】
(4)第4の態様によれば、第1または第2の態様に係る受電モジュール型テレメータ送信機(110)が、前記論理和回路(112)が出力する電圧を所定電圧値に変換するDC/DC変換器(115)を備え、前記送信部(114)は、前記DC/DC変換器(115)から入力される前記電圧を電源として駆動するものであってよい。
【0082】
本態様によれば、ダイオード(521)による電圧降下の影響を受けずにDC/DC変換器(115)の出力電圧を送信部(114)に供給することができる。
【0083】
(5)第5の態様によれば、第1から第4の何れかの態様に係る受電モジュール型テレメータ送信機(110)が、前記論理和回路を含む複数の論理和回路(112)と、前記送信部を含み、前記複数の論理和回路に対応して設けられる複数の送信部(114)とを備え、前記複数の受電モジュール(111)は、前記複数の論理和回路(112)の一部に接続され、前記複数の論理和回路(112)は、前記複数の受電モジュール(111)のうち2つの受電モジュール(111)と接続され、前記複数の送信部(114)は、それぞれ前記複数の論理和回路から入力される前記電源を駆動して駆動するものであってよい。
【0084】
本態様によれば、複数の送信部(114)による通信結果に基づいて受電モジュール型テレメータ送信機(110)の故障状況を判定することができる。
【0085】
(6)第6の態様によれば、テレメータ計測システムは、第1から第5の何れかの態様に係る受電モジュール型テレメータ送信機と、前記ステータに設けられ、円弧状に形成された送電アンテナと、前記送電アンテナに高周波信号を供給する発振器と、前記ステータに設けられ、円弧状に形成された受信アンテナと、前記受信アンテナを介して前記受電モジュール型テレメータ送信機から前記無線信号を受信する受信部とを備える。
【0086】
(7)第7の態様によれば、テレメータ計測システムは、第5の態様に係る受電モジュール型テレメータ送信機と、前記ステータに設けられ、円弧状に形成された送電アンテナと、前記送電アンテナに高周波信号を供給する発振器と、前記ステータに設けられ、円弧状に形成された受信アンテナと、前記受信アンテナを介して前記受電モジュール型テレメータ送信機から前記無線信号を受信する受信部と前記受信機による前記複数の送信部からの無線信号の受信の正否を判定する判定部と、前記通信の正否に基づいて、前記受電アンテナまたは前記送信部の故障の診断をする診断部とを備える。
【0087】
(8)第8の態様によれば、回転機械(1)は、前記ステータと、前記ステータに対して軸線回りに回転する回転軸および前記回転軸の外周面から放射状に延びるように設けられた複数の動翼を有する前記ロータと、第6または第7の態様に係るテレメータ計測システム(100)とを備え、前記センサ(113)がそれぞれ前記動翼に設けられる。
【0088】
(9)第9の態様によれば、テレメータ送信方法は、ロータ(31)に設けられ、ステータ(32)側に円弧状に形成された送電アンテナ(131)から受電した電力により通信を行うテレメータ計測システム(100)の受電モジュール型テレメータ送信機(110)であって、前記ロータ(31)に、周方向に間隔をあけて配置された複数の受電モジュール(111)と、監視対象の状態を計測し、前記状態を示す計測データを出力するセンサ(113)と、前記センサ(113)の計測データを無線信号を介して送信する送信部(114)とを備える受電モジュール型テレメータ送信機(110)を用いたテレメータ送信方法であって、前記複数の受電モジュール(111)が、前記送電アンテナ(131)から電力を受電するステップと、前記送信部(114)が、前記複数の受電モジュール(111)から入力される電圧のうち最も高い電圧を電源として駆動するステップと、前記送信部(114)が、前記センサ(113)の計測データを無線信号を介して送信するステップとを備える。
【符号の説明】
【0089】
1 ガスタービン
100 テレメータ計測システム
110 受電モジュール型テレメータ送信機
111 受電モジュール
112 論理和回路
113 センサ
114 送信部
115 DC/DC変換器
120 受信装置
121 受信アンテナ
130 給電装置
131 送電アンテナ
132 発振器
511 受電アンテナ
513 DC/DC変換器
521 ダイオード
522 出力配線
702 判定部
705 診断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11