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特許7507608ロボット、ロボットの制御装置およびロボットの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ロボット、ロボットの制御装置およびロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20240621BHJP
   H02P 3/22 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B25J19/06
H02P3/22 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020094039
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021186928
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智紀
(72)【発明者】
【氏名】西部 寿起
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓明
(72)【発明者】
【氏名】杉正 哲也
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-178567(JP,A)
【文献】特開2019-161924(JP,A)
【文献】特開平08-149870(JP,A)
【文献】特開2019-037095(JP,A)
【文献】特開平01-209973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/416
H02P 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節を含むロボット本体部と、
前記関節に設けられるモータと、
前記モータに制動力を付与するダイナミックブレーキ回路と、
前記ダイナミックブレーキ回路を作動させるダイナミックブレーキ制御部と、を備え、
前記ダイナミックブレーキ制御部は、前記モータがロボットコントローラによる制御を受けていない場合に、前記ロボット本体部の姿勢が変化することにより前記モータに発生する起電圧が第1閾値電圧以上でかつ通常動作時に前記ロボットコントローラから前記モータに対して供給される電圧よりも小さい第2閾値電圧以下の際に、前記ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する、ロボット。
【請求項2】
前記ロボット本体部は、前記関節を有するアーム部を含み、
前記ダイナミックブレーキ制御部は、前記モータが前記ロボットコントローラによる制御を受けていない場合に、前記アーム部が落下することにより前記アーム部の前記モータに発生する起電圧に基づいて、前記ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記ダイナミックブレーキ制御部は、
前記モータに発生する起電圧が前記第1閾値電圧以上であるか否かを比較する第1比較器と、
前記モータに発生する起電圧が前記第2閾値電圧以下であるか否かを比較する第2比較器とをさらに含む、請求項に記載のロボット。
【請求項4】
前記ダイナミックブレーキ制御部は、前記モータが前記ロボットコントローラによる制御を受けていない場合において、前記ロボット本体部の姿勢が変化することにより前記モータに発生する起電圧が前記第1閾値電圧以上である状態が所定の時間以上継続された場合に、前記ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する、請求項のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項5】
前記ダイナミックブレーキ制御部は、
前記モータに発生する起電圧に基づく電圧が入力されるフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力側に配置され、前記フィルタ回路の出力電圧が第3閾値電圧以上であるか否かを比較する第3比較器とを含み、前記フィルタ回路の出力電圧が前記第3閾値電圧以上である場合に、前記ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する、請求項に記載のロボット。
【請求項6】
前記ダイナミックブレーキ回路は、前記ロボットコントローラから前記モータに電力を供給する配線に接続されるダイオードブリッジを含む整流部と、前記整流部に接続されるサイリスタとを含み、
前記ダイナミックブレーキ制御部は、前記ロボット本体部の姿勢が変化することにより前記モータに発生する起電圧に基づいて、前記サイリスタを点弧することにより前記モータの線間を短絡することによって前記ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する、請求項1~のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項7】
前記ダイナミックブレーキ制御部に電力を供給する電源部をさらに備え、
前記電源部は、前記モータに発生する起電圧により前記ダイナミックブレーキ制御部に供給する電力を生成する、請求項1~のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項8】
前記電源部は、前記ロボットコントローラと前記モータとを接続する配線に電気的に接続されるとともに、前記配線の電圧が第4閾値電圧を超える場合に前記ダイナミックブレーキ制御部に供給する電力を遮断する、請求項に記載のロボット。
【請求項9】
前記電源部は、
前記モータに発生する起電圧が前記第4閾値電圧を超えるか否かを比較する第4比較器と、
前記第4比較器の出力側に設けられ、前記モータに発生する起電圧が前記第4閾値電圧を超える場合、前記ダイナミックブレーキ制御部に対する電力の供給を遮断する半導体素子とを含む、請求項に記載のロボット。
【請求項10】
前記ダイナミックブレーキ制御部は、前記ロボット本体部と前記ロボットコントローラとの接続が遮断されていることにより、前記モータが前記ロボットコントローラによる制御を受けていない場合に、前記ロボット本体部の姿勢が変化することにより前記モータに発生する起電圧に基づいて、前記ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する、請求項1~のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項11】
前記ロボット本体部と前記ロボットコントローラとを電気的に接続するコネクタをさらに備え、
前記ダイナミックブレーキ回路および前記ダイナミックブレーキ制御部は、前記コネクタよりも前記ロボット本体部側に設けられている、請求項1~10のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項12】
関節を含むロボット本体部と、前記関節に設けられるモータと、を備えるロボットの制御装置であって、
前記モータに制動力を付与するダイナミックブレーキ回路と、
前記ダイナミックブレーキ回路を作動させるダイナミックブレーキ制御部と、を備え、
前記ダイナミックブレーキ制御部は、前記モータがロボットコントローラによる制御を受けていない場合に、前記ロボット本体部の姿勢が変化することにより前記モータに発生する起電圧が第1閾値電圧以上でかつ通常動作時に前記ロボットコントローラから前記モータに対して供給される電圧よりも小さい第2閾値電圧以下の際に、前記ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する、ロボットの制御装置。
【請求項13】
関節を含むロボット本体部と、前記関節に設けられるモータと、前記モータに制動力を付与するダイナミックブレーキ回路と、前記ダイナミックブレーキ回路を作動させるダイナミックブレーキ制御部と、を備えるロボットの制御方法であって、
前記モータがロボットコントローラによる制御を受けていない場合に、前記ロボット本体部の姿勢が変化することにより前記モータに発生する起電圧が第1閾値電圧以上でかつ通常動作時に前記ロボットコントローラから前記モータに対して供給される電圧よりも小さい第2閾値電圧以下の際に、前記ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する工程を備える、ロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボット、ロボットの制御装置およびロボットの制御方法に関し、特に、ダイナミックブレーキが作動されるモータを備えるロボット、ロボットの制御装置およびロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイナミックブレーキが作動されるモータの制御装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、サーボモータを制御する制御装置が開示されている。この制御装置は、複数のスイッチング素子を有するインバータと、複数のスイッチング素子を制御してサーボモータを駆動させるモータ制御部と、サーボモータに制動力を付与するダイナミックブレーキと、ダイナミックブレーキを制御するブレーキ制御部とを備えている。また、サーボモータは、たとえば、多関節ロボットのアームを移動させる。多関節ロボットなどでは、多関節ロボットに姿勢や位置を教示する場合、サーボモータに制動力が付与されていると、小さい力でサーボモータを回転させること(多関節ロボットのアームを移動させること)が困難になる。そこで、多関節ロボットに姿勢や位置を教示する場合、ダイナミックブレーキを作動させないことによりサーボモータに対する制動力が解除される。
【0004】
また、上記特許文献1に記載の多関節ロボットでは、サーボモータに対する制動力が解除されている状態で、多関節ロボットのアームが重力やオペレータの接触などによって自然落下(急激に落下)してしまう場合がある。そこで、上記特許文献1のブレーキ制御部は、多関節ロボットのアームが重力によって自然落下することによりサーボモータが回転し、この回転により発生する発電電流に基づいて、ダイナミックブレーキを作動させる。具体的には、このブレーキ制御部は、サーボモータが発電した発電電流が所定の閾値以上の場合、ダイナミックブレーキを作動させる。これにより、多関節ロボットのアームが急激に落下するのが抑制される。なお、上記特許文献1では、インバータの複数のスイッチング素子をオンオフすることにより、サーボモータが発電した発電電流を、インバータを介してサーボモータに戻す回路(電流パス)が形成される。そして、電流パスを流れる発電電流が所定の閾値以上の場合、ダイナミックブレーキが作動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-161924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の制御装置では、サーボモータが発電した発電電流を流すために、インバータを介して発電電流をサーボモータに戻す回路(電流パス)を形成する必要がある。ここで、上記特許文献1に記載のような従来の多関節ロボットでは、多関節ロボットの作業していない場合、インバータと多関節ロボットとの電気的な接続が切り離されている場合がある。この場合、インバータ(ロボットコントローラ)を介して発電電流をサーボモータに戻す回路(電流パス)を形成できないので、発電電流に基づいてダイナミックブレーキを作動させることができないという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ロボット本体部とロボットコントローラとの電気的な接続が切り離されている場合でも、ダイナミックブレーキ回路を作動させることが可能なロボット、ロボットの制御装置およびロボットの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面によるロボットは、関節を含むロボット本体部と、関節に設けられるモータと、モータに制動力を付与するダイナミックブレーキ回路と、ダイナミックブレーキ回路を作動させるダイナミックブレーキ制御部と、を備え、ダイナミックブレーキ制御部は、モータがロボットコントローラによる制御を受けていない場合に、ロボット本体部の姿勢が変化することによりモータに発生する起電圧が第1閾値電圧以上でかつ通常動作時にロボットコントローラからモータに対して供給される電圧よりも小さい第2閾値電圧以下の際に、ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する。
【0009】
この発明の第1の局面によるロボットでは、上記のように、ダイナミックブレーキ制御部は、モータがロボットコントローラによる制御を受けていない場合に、ロボット本体部の姿勢が変化することによりモータに発生する起電圧に基づいて、ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する。ここで、モータとロボットコントローラとの電気的な接続が切り離されている場合、ロボット本体部の姿勢が変化(モータが回転)してもモータからの電流は流れない一方、モータに起電圧は発生する。そこで、上記のように構成することによって、モータとロボットコントローラとの電気的な接続が切り離されている場合でも、ロボット本体部の姿勢が変化することによりモータに発生する起電圧に基づいて、ダイナミックブレーキ回路の制御を行うことができる。その結果、ロボット本体部とロボットコントローラとの電気的な接続が切り離されている場合でも、ダイナミックブレーキ回路を作動させることができる。
【0010】
この発明の第2の局面によるロボットの制御装置は、関節を含むロボット本体部と、関節に設けられるモータと、を備えるロボットの制御装置であって、モータに制動力を付与するダイナミックブレーキ回路と、ダイナミックブレーキ回路を作動させるダイナミックブレーキ制御部と、を備え、ダイナミックブレーキ制御部は、モータがロボットコントローラによる制御を受けていない場合に、ロボット本体部の姿勢が変化することによりモータに発生する起電圧が第1閾値電圧以上でかつ通常動作時にロボットコントローラからモータに対して供給される電圧よりも小さい第2閾値電圧以下の際に、ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する。
【0011】
この発明の第2の局面によるロボットの制御装置では、上記のように、ダイナミックブレーキ制御部は、モータがロボットコントローラによる制御を受けていない場合に、ロボット本体部の姿勢が変化することによりモータに発生する起電圧に基づいて、ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する。ここで、モータとロボットコントローラとの電気的な接続が切り離されている場合、ロボット本体部の姿勢が変化(モータが回転)してもモータからの電流は流れない一方、モータに起電圧は発生する。そこで、上記のように構成することによって、モータとロボットコントローラとの電気的な接続が切り離されている場合でも、ロボット本体部の姿勢が変化することによりモータに発生する起電圧に基づいて、ダイナミックブレーキ回路の制御を行うことができる。その結果、ロボット本体部とロボットコントローラとの電気的な接続が切り離されている場合でも、ダイナミックブレーキ回路を作動させることが可能なロボットの制御装置を提供することができる。
【0012】
この発明の第3の局面によるロボットの制御方法は、関節を含むロボット本体部と、関節に設けられるモータと、モータに制動力を付与するダイナミックブレーキ回路と、ダイナミックブレーキ回路を作動させるダイナミックブレーキ制御部と、を備えるロボットの制御方法であって、モータがロボットコントローラによる制御を受けていない場合に、ロボット本体部の姿勢が変化することによりモータに発生する起電圧が第1閾値電圧以上でかつ通常動作時にロボットコントローラからモータに対して供給される電圧よりも小さい第2閾値電圧以下の際に、ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する工程を備える。
【0013】
この発明の第3の局面によるロボットの制御方法は、上記のように、モータがロボットコントローラによる制御を受けていない場合に、ロボット本体部の姿勢が変化することによりモータに発生する起電圧に基づいて、ダイナミックブレーキ回路の作動を開始する工程を備える。ここで、モータとロボットコントローラとの電気的な接続が切り離されている場合、ロボット本体部の姿勢が変化(モータが回転)してもモータからの電流は流れない一方、モータに起電圧は発生する。そこで、上記のように構成することによって、モータとロボットコントローラとの電気的な接続が切り離されている場合でも、ロボット本体部の姿勢が変化することによりモータに発生する起電圧に基づいて、ダイナミックブレーキ回路の制御を行うことができる。その結果、ロボット本体部とロボットコントローラとの電気的な接続が切り離されている場合でも、ダイナミックブレーキ回路を作動させることが可能なロボットの制御方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、ロボット本体部とロボットコントローラとの電気的な接続が切り離されている場合でも、ダイナミックブレーキ回路を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態によるロボットシステムのブロック図である。
図2】本発明の一実施形態によるロボットの側面図である。
図3】本発明の一実施形態によるダイナミックブレーキのブロック図である。
図4】本発明の一実施形態によるダイナミックブレーキ回路の回路図である。
図5】本発明の一実施形態によるダイナミックブレーキ制御部のブロック図である。
図6】本発明の一実施形態による電源部のブロック図である。
図7】本発明の一実施形態によるロボット(ダイナミックブレーキ制御部)の動作を説明するためのフロー図である。
図8】本発明の一実施形態によるロボット(電源部)の動作を説明するためのフロー図である。
図9】アーム部の落下時におけるダイナミックブレーキ制御部のシミュレーションの結果を示す図である。
図10】アーム部の落下時における電源部のシミュレーションの結果を示す図である。
図11】変形例によるダイナミックブレーキ回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1図6を参照して、本実施形態によるロボットシステム1の構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、ロボットシステム1は、ロボット100と、ロボット100を制御するロボットコントローラ2とを備えている。本実施形態では、ロボット100は、ロボット本体部100aとロボットコントローラ2とを電気的に接続するコネクタ10と備えている。ロボット本体部100aとロボットコントローラ2とは、配線3を介して接続されている。また、ロボットコントローラ2には、商用電源4から交流電力が供給される。ロボットコントローラ2は、商用電源4から供給される交流電力を、配線3を介してロボット100に供給するとともに、ロボット100の動作を制御する。
【0019】
(ロボット)
図2に示すように、ロボット100(ロボット本体部100a)は、アーム部20を含む。アーム部20は、関節21を有する。関節21は、複数設けられている。たとえば、関節21は、6個設けられている。また、関節21には、モータ22(図1参照)が設けられている。モータ22には、電磁ブレーキ(図示せず)が設けられている。また、アーム部20は、基台23に取り付けられている。また、アーム部20の先端には、エンドエフェクタ(図示せず)が取り付けられる。また、ロボット100は、産業用のロボット100である。
【0020】
また、図3に示すように、ロボット100(ロボット本体部100a)には、ダイナミックブレーキ30が設けられている。ダイナミックブレーキ30は、たとえば、6個の関節21のうちの基台23側の関節21(関節21a、図2参照)のモータ22に接続されている。また、ダイナミックブレーキ30は、ダイナミックブレーキ回路40と、ダイナミックブレーキ制御部50と、電源部60とを備えている。なお、本実施形態では、ダイナミックブレーキ回路40およびダイナミックブレーキ制御部50は、コネクタ10よりもロボット本体部100a側に設けられている。また、ダイナミックブレーキ回路40と、ダイナミックブレーキ制御部50と、電源部60とは、制御装置31に含まれている。
【0021】
(ダイナミックブレーキ回路)
図4に示すように、ダイナミックブレーキ回路40は、ロボットコントローラ2からモータ22に電力を供給する配線3に接続されるダイオードブリッジを含む整流部41と、整流部41に接続されるサイリスタ42とを含む。整流部41は、6つのダイオード(ダイオードD11~D16)を含む。整流部41には、配線3を介して、ロボットコントローラ2から供給される3相(U相、V相およびW相)の交流電力が入力される。なお、配線3は、3相に対応するように3本の配線部分3aを含む。整流部41は、ロボットコントローラ2から供給される3相の交流電力を直流電力に整流する。
【0022】
また、サイリスタ42のアノードは、ダイオードブリッジを構成するダイオードD11、D12およびD13のカソード側に接続されている。また、サイリスタ42のカソードは、ダイオードブリッジを構成するダイオードD14、D15およびD16のアノード側に接続されている。また、サイリスタ42のゲートには、ダイナミックブレーキ制御部50からダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する信号(トリガ)が入力される。
【0023】
(ダイナミックブレーキ制御部)
図5に示すように、ダイナミックブレーキ制御部50は、ロボットコントローラ2からモータ22に電力を供給する配線3に接続されるダイオードブリッジを有する整流部51を含む。整流部51には、配線3から、線間電圧が入力される。なお、線間電圧とは、3相のうちの2つの相の間の電圧である。
【0024】
また、ダイナミックブレーキ制御部50は、比較器CP1および比較器CP2を含む。比較器CP1には、整流部51から出力された電圧が入力される。また、比較器CP1には、電源部60から電圧が入力される。また、比較器CP2には、電源部60から電圧が入力される。比較器CP2には、整流部51から電圧が入力される。なお、比較器CP1および比較器CP2は、それぞれ、特許請求の範囲の「第2比較器」および「第1比較器」の一例である。
【0025】
また、ダイナミックブレーキ制御部50は、モータ22に発生する起電圧に基づく電圧が入力されるRCフィルタ回路52を含む。具体的には、RCフィルタ回路52には、比較器CP1および比較器CP2の出力側に設けられ、比較器CP1および比較器CP2から出力された信号が入力される。なお、RCフィルタ回路52は、特許請求の範囲の「フィルタ回路」の一例である。
【0026】
また、ダイナミックブレーキ制御部50は、RCフィルタ回路52の出力側に配置される比較器CP3を含む。比較器CP3には、RCフィルタ回路52から出力される信号が入力される。また、比較器CP3には、電源部60から電圧が入力される。また、比較器CP3の出力信号は、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始するトリガとなる。なお、比較器CP3は、特許請求の範囲の「第3比較器」の一例である。
【0027】
ここで、本実施形態では、ダイナミックブレーキ制御部50は、モータ22がロボットコントローラ2による制御を受けていない場合に、ロボット本体部100aの姿勢が変化することによりモータ22に発生する起電圧(逆起電圧)に基づいて、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する。以下、詳細に説明する。
【0028】
本実施形態では、ロボット本体部100aとロボットコントローラ2との接続が遮断されている(配線3がコネクタ10から外されている)ことにより、モータ22がロボットコントローラ2による制御を受けていないとする。この場合において、ロボット本体部100aの姿勢が変化することによりモータ22に起電圧が発生する。たとえば、アーム部20が落下することによりアーム部20のモータ22(関節21aのモータ22)に起電圧が発生する。そして、ダイナミックブレーキ制御部50は、モータ22に発生する起電圧に基づいて、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する。
【0029】
詳細には、本実施形態では、ダイナミックブレーキ制御部50は、モータ22に発生する起電圧が第1閾値電圧以上でかつ第2閾値電圧以下の際に、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する。また、比較器CP2は、モータ22に発生する起電圧が第1閾値電圧以上であるか否かを比較する。比較器CP1は、モータ22に発生する起電圧が第2閾値電圧以下であるか否かを比較する。
【0030】
すなわち、アーム部20が落下することによりアーム部20のモータ22に発生した起電圧が、整流部51に入力される。入力された電圧(交流電圧)は、直流電圧に整流される。整流された直流電圧は、比較器CP1、および、比較器CP2に入力される。比較器CP1、および、比較器CP2に入力される電圧(起電圧に応じた電圧)が、第1閾値電圧以上第2閾値電圧以下の場合、比較器CP1および比較器CP2から、Hレベルの信号が出力される。
【0031】
また、本実施形態では、ロボット本体部100aの姿勢が変化することによりモータ22に発生する起電圧が第1閾値電圧以上である状態が所定の時間以上継続された場合に、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する。具体的には、RCフィルタ回路52に、モータ22に発生する起電圧に基づく電圧(比較器CP1および比較器CP2から出力した信号)が入力される。RCフィルタ回路52では、比較的周波数の高い信号がカットされる。また、RCフィルタ回路52からの出力電圧は、RCフィルタ回路52の時定数に応じて、徐々に大きくなる。そして、RCフィルタ回路52からの出力電圧は、RCフィルタ回路52の出力側に配置される比較器CP3に入力される。
【0032】
そして、本実実施形態では、ダイナミックブレーキ制御部50は、RCフィルタ回路52の出力電圧が第3閾値電圧以上である場合に、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する。そして、RCフィルタ回路52の出力電圧が第3閾値電圧以上である場合、比較器CP3からLレベルの信号が出力される。この比較器CP3から出力されるLレベルの信号が、ダイナミックブレーキ回路40のサイリスタ42を点弧(ターンオン)する信号(トリガ)となる。
【0033】
なお、ロボット100の通常動作時では、ロボットコントローラ2からモータ22に対して比較的大きな電圧(第1閾値電圧よりも大きな電圧)が供給される。したがって、ロボット100の通常動作時においても、比較器CP1および比較器CP2からHレベルの信号が短時間繰り返し出力される。この信号の周波数は高いため、このHレベルの信号は、RCフィルタ回路52によってカットされる。これにより、ロボット100の通常動作時にロボットコントローラ2からモータ22に対して供給される電圧によって、比較器CP3からLレベルの信号(トリガ)が出力されることはない。また、RCフィルタ回路52の充電時の時定数が大きく、放電時の時定数が小さく設定されており、比較器CP3からLレベルの信号(トリガ)が誤って出力されるのが抑制されている。
【0034】
そして、本実実施形態では、ダイナミックブレーキ制御部50は、ロボット本体部100aの姿勢が変化することによりモータ22に発生する起電圧に基づいて、サイリスタ42を点弧する。これにより、モータ22の線間を短絡することによってダイナミックブレーキ回路40の作動が開始される。すなわち、モータ22、整流部41、サイリスタ42、整流部41、および、モータ22を経路とする閉回路が形成される。起電圧に基づく電流が、この閉回路を流れることにより、モータ22に回転方向と逆方向のトルクが発生する。これにより、モータ22に制動力が働き、モータ22の回転が減速される。このため、アーム部20は、徐々に(比較的ゆっくりと)下方に落下するとともに、床面に接触することにより、アーム部20の落下は停止される。
【0035】
(電源部)
図6に示すように、本実施形態では、ロボット100は、ダイナミックブレーキ制御部50に電力を供給する電源部60を備えている。電源部60は、モータ22に発生する起電圧によりダイナミックブレーキ制御部50に供給する電力を生成する。
【0036】
本実施形態では、電源部60は、ロボットコントローラ2とモータ22とを接続する配線3に電気的に接続されている。そして、電源部60は、配線3の電圧が第4閾値電圧を超える場合にダイナミックブレーキ制御部50に供給する電力を遮断する。以下、具体的に説明する。
【0037】
図5に示すように、電源部60は、ダイナミックブレーキ制御部50の整流部51の出力側から電圧が供給される。電源部60は、レギュレータ61を含む。レギュレータ61は、整流部51の出力側から供給される電圧を、所定の定電圧として出力する。
【0038】
本実施形態では、電源部60は、比較器CP4を含む。比較器CP4は、モータ22に発生する起電圧が第4閾値電圧(たとえば、第1閾値電圧よりも大きく第2閾値電圧よりも小さい)を超えるか否かを比較する。具体的には、整流部51から供給された電圧が入力される。また、レギュレータ61から供給された電圧が入力される。そして、モータ22に発生する起電圧が第4閾値電圧を超える場合、比較器CP4からLレベルの信号が出力される。なお、比較器CP4は、特許請求の範囲の「第4比較器」の一例である。
【0039】
また、本実施形態では、電源部60は、トランジスタTrを含む。トランジスタTrは、比較器CP4の出力側に設けられ、モータ22に発生する起電圧が第4閾値電圧を超える場合、ダイナミックブレーキ制御部50に対する電力の供給を遮断する。電源部60は、DC/DCコンバータ62を介して、ダイナミックブレーキ制御部50(比較器CP1、比較器CP2および比較器CP3など)に接続されている。なお、トランジスタTrは、特許請求の範囲の「半導体素子」の一例である。
【0040】
そして、モータ22に発生する起電圧が第4閾値電圧以下の場合、比較器CP4からHレベルの信号が出力される。これにより、トランジスタTrがオン状態となり、モータ22に発生する起電圧(電力)が、ダイナミックブレーキ制御部50に供給される。一方、モータ22に発生する起電圧が第4閾値電圧を超える場合、比較器CP4からLレベルの信号が出力される。これにより、トランジスタTrがオフ状態となり、ダイナミックブレーキ制御部50に対する電力の供給が遮断される。なお、モータ22に発生する起電圧(電力)が、第4閾値電圧を超える前に、ダイナミックブレーキ制御部50におけるトリガの出力が終了しているので、起電圧が第4閾値電圧を超える場合にダイナミックブレーキ制御部50に対する電力の供給を遮断しても問題はない。また、ロボット100の通常動作時(ロボットコントローラ2からモータ22に対して比較的大きな電圧が供給される場合)には、配線3の電圧が第4閾値電圧を超えているので、ダイナミックブレーキ制御部50に対する電力の供給が遮断されている。これにより、ダイナミックブレーキ制御部50からダイナミックブレーキ回路40のサイリスタ42にトリガが誤って出力されるのが抑制されている。
【0041】
(ロボットの制御方法)
<ダイナミックブレーキ制御部の動作>
次に、図7を参照して、アーム部20の落下時におけるロボット100の動作(ロボット100の制御方法)について説明する。なお、ロボット本体部100aとロボットコントローラ2との電気的な接続が切断されているとする。まず、ダイナミックブレーキ制御部50の動作について説明する。
【0042】
ステップS1において、アーム部20が落下することにより、モータ22が回転して、モータ22に起電圧が発生する。発生した起電圧は、ダイナミックブレーキ制御部50の整流部51に入力される。整流部51によって整流された電圧は、電源部60に入力される。これにより、電源部60から、ダイナミックブレーキ制御部50に電圧(電力)が供給される。また、アーム部20の落下に伴ってモータ22に発生する起電圧が上昇する。
【0043】
次に、ステップS2において、比較器CP1および比較器CP2によって、モータ22に発生する起電圧が第1閾値電圧以上でかつ第2閾値電圧以下であるか否かが比較される。
【0044】
ステップS2において、yesの場合、ステップS3において、比較器CP3において、RCフィルタ回路52からの入力が、第3閾値電圧以上であるか否かが比較される。そして、ステップS3において、yesの場合、ステップS4において、ダイナミックブレーキ制御部50からダイナミックブレーキ回路40のサイリスタ42にトリガが出力され、ダイナミックブレーキ30の作動が開始される。ステップS3において、noの場合、ダイナミックブレーキ30の作動は開始されない。
【0045】
ステップS2は、ステップS2の比較がyesになるまで、繰り返される。
【0046】
<電源部の動作>
次に、図8を参照して、アーム部20の落下時における電源部60の動作(制御方法)について説明する。
【0047】
上記のダイナミックブレーキ制御部50の動作と同様に、ステップS1において、アーム部20が落下することにより、モータ22が回転して、モータ22に起電圧が発生する。発生した起電圧に基づいて、電源部60から、ダイナミックブレーキ制御部50に電圧(電力)が供給される。この場合、トランジスタTrは、オンされている。
【0048】
次に、ステップS11では、比較器CP4により、ロボットコントローラ2とモータ22とを接続する配線3の電圧が第4閾値電圧を超えるか否かが比較される。ステップS11において、yesの場合、ステップS12において、トランジスタTrがオフされることにより、電源部60からダイナミックブレーキ制御部50に供給する電力が遮断される。なお、ステップS11の比較は、ステップS11の比較がyesになるまで繰り返される。
【0049】
(シミュレーション)
次に、本実施形態のダイナミックブレーキ制御部50および電源部60の動作を確認するためのシミュレーションについて説明する。
【0050】
図9は、アーム部20が落下している際のダイナミックブレーキ制御部50のシミュレーションの結果を示している。図9に示すように、モータ22の配線3の線間電圧(逆起電圧)は、モータ22の回転速度の増加(アーム部20の落下)とともに大きくなる。
【0051】
また、図9に示すように、モータ22の配線3の線間電圧(逆起電圧)が第1閾値電圧以上、第2閾値電圧以下の場合、かつ、RCフィルタ回路52からの出力電圧が、第3閾値電圧を超えた場合、比較器CP3からLレベルの信号(トリガとなる信号、図9の斜線で囲まれた領域)が出力されていることが確認された。なお、RCフィルタ回路52からの出力電圧が、ロボット100の通常動作時(第3閾値電圧を超えない場合)では、比較器CP3からHレベルの信号が出力されることが確認された。
【0052】
図10は、アーム部20が落下している際の電源部60のシミュレーションの結果を示している。図10に示すように、電源部60に入力される電圧(モータ22の逆起電圧)が第4閾値電圧を超えない場合(図10の斜線で囲まれた領域)、トランジスタTrがONされて、電源部60にモータ22の逆起電圧が入力されることが確認された。また、電源部60に入力される電圧(モータ22の逆起電圧)が第4閾値電圧を超えた場合、トランジスタTrがOFFされて、電源部60へのモータ22からの逆起電圧の入力が遮断されることが確認された。なお、電源部60への逆起電圧の入力が遮断される電圧は、DC/DCコンバータ62の入力定格電圧よりも小さい。
【0053】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0054】
本実施形態では、上記のように、ダイナミックブレーキ制御部50は、モータ22がロボットコントローラ2による制御を受けていない場合に、ロボット本体部100aの姿勢が変化することによりモータ22に発生する起電圧に基づいて、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する。ここで、モータ22とロボットコントローラ2との電気的な接続が切り離されている場合、ロボット本体部100aの姿勢が変化(モータ22が回転)してもモータ22からの電流は流れない一方、モータ22に起電圧は発生する。そこで、上記のように構成することによって、モータ22とロボットコントローラ2との電気的な接続が切り離されている場合でも、ロボット本体部100aの姿勢が変化することによりモータ22に発生する起電圧に基づいて、ダイナミックブレーキ回路40の制御を行うことができる。その結果、ロボット本体部100aとロボットコントローラ2との電気的な接続が切り離されている場合でも、ダイナミックブレーキ回路40を作動させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、ロボット本体部100aは、関節21を有するアーム部20を含み、ダイナミックブレーキ制御部50は、モータ22がロボットコントローラ2による制御を受けていない場合に、アーム部20が落下することによりアーム部20のモータ22に発生する起電圧に基づいて、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する。これにより、ロボット本体部100aとロボットコントローラ2との電気的な接続が切り離されている場合でも、アーム部20が急激に落下するのをダイナミックブレーキ回路40の制動力により抑制することができるので、アーム部20が床などに衝突することに起因してアーム部20が破損するのを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、ダイナミックブレーキ制御部50は、モータ22がロボットコントローラ2による制御を受けていない場合において、ロボット本体部100aの姿勢が変化することによりモータ22に発生する起電圧が第1閾値電圧以上の際に、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する。ここで、モータ22に起電圧が発生した直後(起電圧が第1閾値電圧よりも小さい状態)において、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始するように構成した場合、ノイズなどによってもダイナミックブレーキ回路40の作動が開始されてしまう。そこで、上記のように、モータ22に発生する起電圧が第1閾値電圧以上の際に、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始することによって、ノイズなどに起因して、ダイナミックブレーキ回路40の作動が誤って開始されるのを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、ダイナミックブレーキ制御部50は、モータ22がロボットコントローラ2による制御を受けていない場合において、ロボット本体部100aの姿勢が変化することによりモータ22に発生する起電圧が第1閾値電圧以上でかつ第2閾値電圧以下の際に、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する。ここで、ロボット100の通常動作時には、ロボットコントローラ2からモータ22に対して比較的大きな電圧が供給される。そこで、上記のように、モータ22に発生する起電圧が第2閾値電圧以下の際に、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始することによって、通常動作時にロボットコントローラ2からモータ22に対して供給される第2閾値電圧よりも大きい電圧に起因して、通常動作時にダイナミックブレーキ回路40の作動が開始されるのを抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、ダイナミックブレーキ制御部50は、モータ22に発生する起電圧が第1閾値電圧以上であるか否かを比較する比較器CP2と、モータ22に発生する起電圧が第2閾値電圧以下であるか否かを比較する比較器CP1とをさらに含む。これにより、比較器CP1および比較器CP2の比較結果に基づいて、容易に、モータ22に発生する起電圧が第1閾値電圧以上でかつ第2閾値電圧以下であるか否かを判定することができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、ダイナミックブレーキ制御部50は、モータ22がロボットコントローラ2による制御を受けていない場合において、ロボット本体部100aの姿勢が変化することによりモータ22に発生する起電圧が第1閾値電圧以上である状態が所定の時間以上継続された場合に、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する。これにより、ロボット100の通常動作時にロボットコントローラ2からモータ22に対して供給されるパルス状の電圧やノイズなどに起因して、ダイナミックブレーキ回路40の作動が誤って開始されるのを抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、ダイナミックブレーキ制御部50は、モータ22に発生する起電圧に基づく電圧が入力されるRCフィルタ回路52と、RCフィルタ回路52の出力側に配置され、RCフィルタ回路52の出力電圧が第3閾値電圧以上であるか否かを比較する比較器CP3とを含み、RCフィルタ回路52の出力電圧が第3閾値電圧以上である場合に、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する。これにより、ロボット100の通常動作時にロボットコントローラ2からモータ22に対して供給されるパルス状の電圧やノイズなどは、RCフィルタ回路52によってカットされるので、比較器CP3によってRCフィルタ回路52の出力電圧が第3閾値電圧以上であると判断されない。これにより、ロボット100の通常動作時にロボットコントローラ2からモータ22に対して供給されるパルス状の電圧やノイズなどに起因して、ダイナミックブレーキ回路40の作動が開始されるのを容易に抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、ダイナミックブレーキ回路40は、ロボットコントローラ2からモータ22に電力を供給する配線3に接続されるダイオードブリッジを含む整流部41と、整流部41に接続されるサイリスタ42とを含み、ダイナミックブレーキ制御部50は、ロボット本体部100aの姿勢が変化することによりモータ22に発生する起電圧に基づいて、サイリスタ42を点弧することによりモータ22の線間を短絡することによってダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する。ここで、サイリスタ42は一旦点弧(ターンオン)されると、サイリスタ42に流れる電流が流れている間は点弧し続ける。また、ダイナミックブレーキ回路40が作動されると、ダイナミックブレーキ回路40の制動力によってモータ22に発生する起電圧が徐々に小さくなる。そこで、上記のように構成することによって、ダイナミックブレーキ回路40の制動力によってモータ22に発生する起電圧が小さくなった場合でも、サイリスタ42が点弧し続けるので、ダイナミックブレーキ回路40の制動力をモータ22の回転が略停止するまで作動させ続けることができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、ダイナミックブレーキ制御部50に電力を供給する電源部60をさらに備え、電源部60は、モータ22に発生する起電圧によりダイナミックブレーキ制御部50に供給する電力を生成する。これにより、ロボットコントローラ2など外部からダイナミックブレーキ制御部50を作動させる電力が供給されている場合と異なり、ロボット本体部100aとロボットコントローラ2との電気的な接続が切り離されている場合でも、モータ22に発生する起電圧により電力を生成する電源部60を用いてダイナミックブレーキ回路40を作動させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、電源部60は、ロボットコントローラ2とモータ22とを接続する配線3に電気的に接続されるとともに、配線3の電圧が第4閾値電圧を超える場合にダイナミックブレーキ制御部50に供給する電力を遮断する。これにより、ロボット100の通常動作時にロボットコントローラ2からモータ22に対して供給される比較的大きな電圧(第4閾値電圧を超える電圧)がダイナミックブレーキ制御部50に供給されるのを抑制することができるので、ダイナミックブレーキ制御部50に電力を供給する機器(DC/DCコンバータ62など)を比較的低い電圧から比較的高い電圧(第4閾値電圧を超える電圧)まで広範囲に対応させる必要がなくなる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、電源部60は、モータ22に発生する起電圧が第4閾値電圧を超えるか否かを比較する比較器CP4と、比較器CP4の出力側に設けられ、モータ22に発生する起電圧が第4閾値電圧を超える場合、ダイナミックブレーキ制御部50に対する電力の供給を遮断するトランジスタTr2およびトランジスタTr3とを含む。これにより、比較器CP4とトランジスタTr2およびトランジスタTr3とによって、容易に、ダイナミックブレーキ制御部50に供給する電力を遮断することができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、ダイナミックブレーキ制御部50は、ロボット本体部100aとロボットコントローラ2との接続が遮断されていることにより、モータ22がロボットコントローラ2による制御を受けていない場合に、ロボット本体部100aの姿勢が変化することによりモータ22に発生する起電圧に基づいて、ダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する。これにより、ロボット本体部100aとロボットコントローラ2との接続が遮断されているようなロボット本体部100aの外部からの電力の供給がない場合において、モータ22に発生する起電圧により、ダイナミックブレーキ回路40を作動させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、ロボット本体部100aとロボットコントローラ2とを電気的に接続するコネクタ10をさらに備え、ダイナミックブレーキ回路40およびダイナミックブレーキ制御部50は、コネクタ10よりもロボット本体部100a側に設けられている。これにより、ロボット本体部100aとロボットコントローラ2との電気的な接続が遮断されている場合でも、ロボット本体部100a側に設けられているダイナミックブレーキ回路40およびダイナミックブレーキ制御部50によって、モータ22に対する制動力を付与することができる。
【0067】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0068】
たとえば、上記実施形態では、産業用のロボット100に本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、人型ロボットに本発明を適用してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、ダイナミックブレーキ30が複数の関節21のうちの基台23側の関節21aのモータ22に接続されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ダイナミックブレーキ30を関節21a以外の1つまたは複数の関節21や、関節21aを含む複数の関節21のモータ22に接続してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、アーム部20が落下することにより発生する起電圧に基づいてダイナミックブレーキ回路40の作動を開始する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、アーム部20が落下すること以外にロボット100の姿勢が変化することにより発生する起電圧に基づいてダイナミックブレーキ回路40の作動を開始してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、特許請求の範囲の「フィルタ回路」としてRCフィルタ回路52を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、特許請求の範囲の「フィルタ回路」としてRCフィルタ回路52以外のフィルタ回路を用いてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、電源部60が、モータ22に発生する起電圧によりダイナミックブレーキ制御部50に供給する電力を生成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、モータ22に発生する起電圧以外の電力源からダイナミックブレーキ制御部50に電力を供給してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、ロボット本体部100aとロボットコントローラ2との接続が遮断されている場合を説明したが、ロボット本体部100aとロボットコントローラ2とが接続されている場合でも、本発明を適用することは可能である。
【0074】
また、上記実施形態では、ダイナミックブレーキ回路40に含まれるサイリスタ42が、モータ22に発生する起電圧に基づいて点弧することにより、ダイナミックブレーキ回路40の作動が開始される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図11に示す変形例によるダイナミックブレーキ回路140のように、ダイナミックブレーキ回路140が、整流部141と、整流部41に接続される整流部142とを含んでいてもよい。なお、整流部142は、リレー、IGBTまたはMOSFETなどからなる。この場合、電源部60は、比較的低い電圧(2Vなど)からダイナミックブレーキ回路140に供給する電圧を生成する必要がある。または、整流部142がオンされても(すなわち、ダイナミックブレーキ30の作動が開始されても)、整流部142の端子間に数十V程度の電圧が生成されるように、ダイナミックブレーキ30の制動力を調整する必要がある。
【符号の説明】
【0075】
2 ロボットコントローラ
3 配線
10 コネクタ
20 アーム部
21 関節
22 モータ
31 制御装置
40 ダイナミックブレーキ回路
41、141 整流部
42、142 サイリスタ
50 ダイナミックブレーキ制御部
52 RCフィルタ回路(フィルタ回路)
60 電源部
100 ロボット
100a ロボット本体部
CP1 比較器(第2比較器)
CP2 比較器(第1比較器)
CP3 比較器(第3比較器)
CP4 比較器(第4比較器)
Tr トランジスタ(半導体素子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11