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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240621BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240621BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240621BHJP
【FI】
G02B27/01
G09G5/00 510B
B60K35/23
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020098086
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021189410
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 隆延
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-161661(JP,A)
【文献】特開2005-003918(JP,A)
【文献】特開2009-288484(JP,A)
【文献】特開2015-087422(JP,A)
【文献】特開2019-105785(JP,A)
【文献】特開2013-174855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G09G 5/00
B60K 35/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示パネルを備えた画像表示部と、表示された画像の画像光を車両のウインドシールドに投射する光学系を備え、当該ウインドシールドで反射された光により前記画像の虚像を視認できるようにした車両用表示装置であって、
前記光学系は前記画像表示部から出射された画像光を反射する第1反射部と、当該第1反射部の反射光を前記ウインドシールドに向けて反射する第2反射部を備え、
前記画像表示部は前記第1反射部の反射面の一方の側において当該第1反射部に対向配置されており、
前記第2反射部は前記第1反射部の反射面の他方の側に配置され、
前記画像表示部から前記第2反射部に至る画像光の光路が折り畳み状態に設定されており、
前記画像表示部は、前記画像を表示する有効表示領域が、前記表示パネルにおいて前記第2反射部に近い一方の端部に偏った領域に設定されていることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記第1反射部は凸面鏡、平面鏡、凹面鏡のいずれかで構成され、前記第2反射部は凹面鏡で構成される請求項に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記表示パネルは透過型の液晶パネル又はエレクトロクロミックで構成され、当該液晶パネル又はエレクトロクロミックは少なくとも一部がケースに支持されており、当該ケースには前記液晶パネルのバックライト用の光源とヒートシンクが配設されている請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記表示パネルは、前記有効表示領域を除く無効表示領域が前記ヒートシンクに熱的に結合されている請求項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記ヒートシンクは、ケースの一部に形成された放熱フィンを備える請求項3又は4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記放熱フィンに対向配置された放熱ファンを備える請求項に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記ケースにヒートパイプが接続され、前記ケースは当該ヒートパイプを介してケースと独立して形成されたヒートシンクが連結されている請求項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に装備される表示装置に関し、特にヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
HUD装置として、自動車のフロントガラスに画像を構成する光を投射し、その反射光により運転者等の乗員が当該画像の虚像を視認できるようにしたものが提案されている。なお、以降において虚像を視認できるようにすることを、画像を表示するとも言う。特許文献1には、液晶パネル等の表示ユニットに表示された画像の光(以下、画像光)を平面鏡と凹面鏡で順次反射して自動車のフロントガラスに投射して虚像を視認させるHUD装置が提案されている。
【0003】
この種のHUD装置においては、表示する画像の大きさ、すなわち虚像の大きさをある程度の大きさになるように構成するためには、虚像を作成する凹面鏡の焦点距離をそれ相応の長さに設定する必要がある。特許文献1では、表示ユニットの画像光を一旦平面鏡で反射することにより、HUD装置のサイズ、特に凹面鏡の光軸方向の長さを短縮し、小型のHUD装置を構成することが可能になる。なお、平面鏡の代わりに凸面鏡を用いる構成も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-174583公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のHUD装置において、さらなる小型化を図るためには、表示ユニット、平面鏡、凹面鏡をそれぞれ可及的に近接配置する必要がある。しかし、特許文献1のHUD装置は、平面鏡と凹面鏡によって表示ユニットからフロントガラスに至るまでの画像光の光路が、自動車の前後方向に沿って折り畳み状態に屈曲される構成であるため、平面鏡で反射された画像光の一部が表示ユニットによって遮光されてしまうことがある。また、凹面鏡で反射された画像光の一部が平面鏡によって遮光されてしまうこともある。
【0006】
このように、画像光の一部が遮光されると、当該遮光された画像光がフロントガラスに投射されず、画像の一部が表示されなくなりHUD装置での画像の表示の品質が低下する。また、遮光された光により表示ユニットや平面鏡が加熱されることもある。特に、表示ユニットを液晶装置で構成している場合には、液晶装置から画像光を出射させるための光源で発生した熱により液晶装置が熱的ダメージを受け易くなり、HUD装置の耐熱性が低下することになる。
【0007】
本発明の目的は、画像表示の品質が高く、しかも耐熱性の高い小型のHUD装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、画像を表示する表示パネルを備えた画像表示部と、表示された画像の画像光を車両のウインドシールドに投射する光学系を備え、当該ウインドシールドで反射された光により当該画像の虚像を視認できるようにした車両用表示装置であり、画像表示部は、画像を表示する有効表示領域が表示パネルの一方の端部に偏った領域に設定されている。
【0009】
すなわち、本発明は、光学系は画像表示部から出射された画像光を反射する第1反射部と、第1反射部の反射光をウインドシールドに向けて反射する第2反射部を備えている。画像表示部は第1反射部の反射面の一方の側において第1反射部に対向配置されており、第2反射部は第1反射部の反射面の他方の側に配置され、画像表示部から第2反射部に至る画像光の光路が折り畳み状態に設定されている。その上で、画像表示部は、画像を表示する有効表示領域が、表示パネルにおいて第2反射部に近い一方の端部に偏った領域に設定されている
【0010】
本発明における画像表示部の好ましい形態として、表示パネルは透過型の液晶パネルで構成され、当該液晶パネルはケースに支持されており、当該ケースには液晶パネルのバックライト用の光源とヒートシンクが配設されている。その上で、表示パネルは、有効表示領域を除く無効表示領域がヒートシンクに熱的に結合される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像表示部から出射される画像光が遮光されることが防止され、好適な画像の表示が可能な品質の高い小型の車両用表示装置が提供される。また、本発明によれば、画像表示部での放熱効果を高めた耐熱性の高い車両用表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】HUD装置の概念構成図。
図2】HUD装置を側面から見た模式図。
図3】画像表示部の縦断面図。
図4】画像表示部の概略の部分分解斜視図。
図5】液晶パネルの平面図。
図6】HUD装置の画像表示部と光学系の位置関係を示す概略の側面図。
図7】HUD装置の(a)参照例1と(b)参照例2の概略の側面図。
図8】HUD装置の変形例の概略の側面図。
図9】画像表示部の変形例1の縦断面図。
図10】画像表示部の変形例2の縦断面図。
図11】画像表示部の変形例3の縦断面図。
図12】画像表示部の変形例4の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は自動車に適用されたHUD装置1の概念構成図である。自動車のダッシュボードDB内にHUD装置1が配設されており、当該HUD装置1から出射した画像光Lを、当該ダッシュボードDBの上面開口Hを通して自動車のフロントガラス(ウインドシールドと称する)WSに投射させる。投射された画像光LはウインドシールドWSで反射されて自動車の運転者等の乗員Mに向けられる。この画像光Lが乗員Mの眼に入ることにより、当該乗員MはウインドシールドWSを透して自動車の前方位置に画像光による虚像Iを視認することができ、当該画像の表示が行われる。この例では、表示する画像として、スピードメータ画像とナビゲーション画像が左右方向に並んで表示される。なお、以降における上下方向と前後方向はそれぞれ自動車を基準とした上下方向と前後方向を示している。
【0014】
図2に前記HUD装置1を側面方向から見た模式図を示す。このHUD装置1は、画像表示部2と、この画像表示部2に表示された画像をウインドシールドWSに投射する光学系3を備えている。この画像表示部2は後述する表示パネルを備えており、その表示パネルの画像表示面に画像を表示する。前記光学系3は、画像表示部2で表示された画像の画像光Lを反射する第1反射部31と、この第1反射31で反射された光を更に反射してウインドシールドWSに投射する第2反射部32を備えている。この第1反射部31は凸面鏡で構成され、第2反射部32は凹面鏡で構成されている。
【0015】
前記凹面鏡32は所要の焦点距離となる曲率の球面または非球面もしくは自由曲面で構成されている。前記凸面鏡31は凹面鏡31での収差を改善し、かつ凹面鏡32の焦点距離を実質的に延長させるために設けられている。そして、前記画像表示部2において表示された画像が凹面鏡32の焦点距離内に配置されるようにHUD装置1を構成することにより、表示された画像の虚像Iを乗員Mが視認することができる。
【0016】
図3は画像表示部2の概略構成を示す断面図、図4はその概略構成の分解斜視図である。画像表示部2は、熱伝導性の高い部材で構成されたケース21を備えており、このケース21上面の少なくとも一部に表示パネルとしての透過型の液晶パネル22が支持されている。この液晶パネル22は、図5にその画像表示面を概略図示するように、当該画像表示面の一部の領域が有効表示領域22aとして設定されている。すなわち、液晶パネル22の画像表示面の縦横寸法比(アスペクト比)と、図1に示したウインドシールドWSを通して表示する画像Iのアスペクト比が相違しているため、画像表示面の全領域のうち画像Iのアスペクト比に対応する領域が有効表示領域22aとして設定され、この有効表示領域22aに画像Iを表示するように構成されている。
【0017】
この実施形態では、液晶パネル22の画像表示面のアスペクト比が3:4であるのに対し、表示する画像のアスペクト比は略1:2であるので、この画像のアスペクト比を満たす領域を有効表示領域22aとしている。また、前記液晶パネル22は図5の左方向が表示する画像の下方に対応するため、当該液晶パネル22の左側が画面下方向として設定されている。したがって、この有効表示領域22aは図5の左端、すなわち液晶パネル22の画面下側に相当する一方の端部に偏った領域に設定されている。この液晶パネル22の有効表示領域22aよりも右側の領域は、画像の表示に寄与しない無効表示領域22bとして設定される。
【0018】
前記ケース21は液晶パネル22の有効表示領域22aに対応する領域が上面から下方に向けて凹設された光源室21aが構成されており、この光源室21aの内底面にバックライト光源23が配設されている。このバックライト光源23はLED(発光ダイオード)23aを搭載した回路基板23bで構成されており、当該LED23aが発光されたときに出射される白色光が前記液晶パネル22の背面側に投射される。この光源室21aの内壁面はLED23aから液晶パネル22に向けて広がるように傾斜されており、LED23aの白色光はこの内壁面において反射されて液晶パネル22に向けられる。液晶パネル22に投射された白色光は液晶パネル22を透過して所要の色相を有する画像光として出射される。
【0019】
前記液晶パネル22は前記ケース21の上面に載置された上で、その上側から覆うように被されたカバー24により前記ケース21に固定されている。このカバー24は一部に液晶パネル22の有効表示領域22aを露呈させる開口窓24aが形成される一方で、その無効表示領域22bを含む他の領域を覆うようにしてその周縁がケース21に嵌合するようにして取り付けられている。
【0020】
これらケース21と液晶パネル22との間、及び液晶パネル22とカバー24との間にはそれぞれ熱伝導性の高い弾性材からなる伝熱シート25,26が介在されている。前記伝熱シート25,26には有効表示領域22aを露呈させる開口窓25a,26aが形成されている。また、各伝熱シート25,26は、自身の弾性により液晶パネル22に加えられる外力を均一化し、液晶パネル22に機械的ダメージを与えるような部分的な応力が生じることが防止されている。この伝熱シート25,26は、液晶パネル22の周縁領域と、有効表示領域22aを除く無効表示領域22bの領域に配設されている。
【0021】
さらに、前記ケース21は、前記光源室21aを除く部位の外壁面に複数の放熱フィン21bが形成されており、ケース21に発生する熱、特にLED23aで発生する熱と、液晶パネル22に発生する熱が放熱フィン21bを介して放熱されるようになっている。一般に表示画像の表示倍率の大きなHUD装置では表示画像の光の密度が低下するため、発光光度の高いLEDを使用する必要があり、LEDにおける発熱が高くなる。また、これに伴って液晶パネルにおける吸光作用によって発生する熱も高くなる。
【0022】
以上の構成の画像表示部2では、図には表れない制御手段により液晶パネル22が駆動されると、当該液晶パネル22の有効表示領域22aに所定の画像が表示される。ここでは、図5に模式的に示すように、図1に示した画像Iに対応して、スピードメータ画像とナビゲーション画像が左右方向に並んで表示される。また、これと同時にLED23aが発光され、当該LED23aから出射される白色光が有効表示領域22aに照射される。LED23aから出射された白色光は光源室21aの内壁で反射されることにより均一な明るさ分布のバックライトとして有効表示領域22aに照射される。これにより、表示された画像Iを透過した光、すなわち画像光Lが液晶パネル22から出射される。
【0023】
このように、液晶パネル22をLED23aの光が透過する際に光の一部が液晶パネル22で熱に変換されることにより熱が発生し、またLED23aが発光されることにより熱が発生する。これらの熱はケース21に伝熱され、また一部の熱はカバー24を介してケース21に伝熱され、さらにケース21に形成されているヒートシンクとしての放熱フィン21bにまで伝熱されてここから放熱される。特に、液晶パネル22の全領域のうち、有効表示領域22aを除く無効表示領域22bが伝熱シート25,26を介してケース21とカバー24に密接されているので、液晶パネル22における放熱面積を可及的に大きくすることができ、放熱効果を高めることができる。この放熱により液晶パネル22における温度上昇が抑制され、液晶パネル22の熱的信頼性が向上する。
【0024】
この構成の画像表示部2は、図2に示したように、前記光学系3の凸面鏡31の下方領域に配置される。図6は画像表示部2と光学系2の位置関係を示す概略の拡大側面図であり、自動車の前後方向を基準とすれば、画像表示部2は凸面鏡31の前方の斜め下方から下方に配置され、液晶パネル22の有効表示領域22aから出射された画像光が凸面鏡31に投射される。この投射された画像光は凸面鏡31において前方に向けて反射され、凹面鏡32に投射された上で反射されてダッシュボードDBの上面開口Hを通して自動車のウインドシールドWSに投射される。したがって、液晶パネル22からの画像光は、自動車の前後方向に沿って折り畳み状態の光路を経てウインドシールドWSに投射される。
【0025】
ここで、図7(a)に参照例1を示すように、画像表示部2を凸面鏡31の下方領域に近接配置したときに、画像表示部2Aの一部X1が画像光Lの光路に進入されて画像光Lの一部が遮光されることがある。すなわち、同図に点描するように、液晶パネル22の有効表示領域22aから出射された画像光Lの一部が遮光されてウインドシールドWSに投射されなくなり、好適な画像表示ができなくなることがある。特に、有効表示領域22aが液晶パネル22の画面上下方向の中央領域あるいは画面上方向に設定されている画像表示部2Aでは、凸面鏡31に対して有効表示領域22aを所定の位置に設定したときには、画像表示部2が凹面鏡32側に偏った位置に配置されることになり、画像表示部2Aの一部X1が画像光Lの光路内に進入され易くなる。
【0026】
このように画像表示部2Aの一部が凸面鏡31で反射された画像光Lの光路に進入されることを防止するために、画像表示部2Aあるいは凸面鏡31の位置を調整すると、図7(b)に参照例2を示すように、今度は凹面鏡32で反射された画像光Lの光路内に凸面鏡31の一部X2が進入されることがある。この場合にも、同図に点描するように、ウインドシールドWSに投射される画像光Lの一部が遮光され、好適な画像表示ができなくなる。特に、表示する画像の拡大率を大きくするために凹面鏡32の曲率半径を大きくすると、これに伴って画像光Lの光路の領域が広がることになり、凸面鏡31の一部X2が光路内に進入され易くなる。
【0027】
前記した実施形態の画像表示部2では、液晶パネル22の有効表示領域22aが画像表示部2の画面下方向に対応する一方の端部に偏った領域に配設されている。そして、画像表示部2はこの一方の端部が凸面鏡31において画像光Lが反射される側、すなわち前方にある凹面鏡32側に向けられた姿勢で配設されている。換言すると、凸面鏡31の反射面に所定の法線を仮想したときに、当該法線の一方の側に液晶パネル22が配設され、法線の他方の側に凹面鏡32が配置されており、液晶パネル22の有効表示領域22aは当該法線に近い側に向けられた姿勢で配設されていることになる。
【0028】
したがって、有効表示領域22aが凸面鏡31に対して所定の位置となるように画像表示部2が配設された場合でも、画像表示部2の一部が凸面鏡31に対して顕著に前方側に突出されることがなくなる。すなわち、有効表示領域22aが凸面鏡31に対して所定の位置関係となるように画像表示装置2を配置した場合でも、図7(a),(b)に示した参照例1,2に比較して画像表示部2の前方側の部位が凸面鏡31で反射された画像光Lの光路に進入されなくなる。
【0029】
これにより、参照例1のように凸面鏡31で反射された画像光Lの一部が画像表示部2によって遮光されることが防止され、好適な画像表示が可能になる。また、このようにすることにより、凸面鏡31と画像表示部2との対向間隔寸法を小さくすることができ、HUD装置1の小型化に有利になる。同時に、凸面鏡31を小型に構成することができ、参照例2のように凸面鏡31が凹面鏡32で反射された画像光Lの光路内に進入することも防止できる。したがって、表示する画像の拡大率を大きくするために凹面鏡32の曲率半径が小さくされ、凹面鏡32の端部が表示装置2の方向に突出しても好適な画像表示が可能になる。
【0030】
本発明においては、図8にHUD装置の変形例を示すように、第1反射部が凹面鏡31Aで構成されてもよい。あるいは、図示は省略するが平面鏡で構成されてもよい。図8の変形例では凹面鏡31Aを第1凹面鏡と称し、前記実施形態と同じ凹面鏡32を第2凹面鏡と称する。このように、凸面鏡を第1凹面鏡31Aで構成した場合には、画像表示部2と第1凹面鏡31Aの上下の位置関係を反対にすることができる。これにより、第1凹面鏡31Aで反射された画像表示部2の画像光はほぼ水平に近い光路となり、第1凹面鏡31Aで反射された画像光Lと、第2凹面鏡32で反射された画像光Lのそれぞれの光路内に画像表示部2が進入され難くなる。したがって、画像表示部2と第1凹面鏡31Aの間隔寸法をさらに小さくすることができる。この第1凹面鏡31Aを備える形態は第2凹面鏡32の曲率半径が十分に大きくされたHUD装置に適用して好適である。
【0031】
また、本発明においては、画像表示部2のケース21は反射するタイプの光学系だが、レンズなどの屈折タイプなどに適宜変更が可能である。さらに、ケース21に形成されている放熱構造は適宜の変更が可能である。以降の変形例においては、前記実施形態と等価な部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。図9は画像表示部2の変形例1の縦断面図である。ケース21に形成された放熱フィン21bの間隔や数が部分的に相違されている。また、図示は省略するが放熱フィンの寸法が部分的に相違されてもよい。図示は省略するが、ケース21及び放熱フィン21bの一部を伝熱性の低い材料に変更してもよい。このように放熱フィン21bの形態を適宜に設計することによりケース21における放熱分布が制御され、LED23aと液晶パネル22のそれぞれにおける好適な放熱効果が得られる。
【0032】
図10は画像表示部2の変形例2の縦断面図である。ケース1に形成された放熱フィン21bに対向する位置に放熱ファン27が取り付けられている。画像表示部2が駆動されたときに、同期して放熱ファン27が駆動されることによりケース21、すなわち放熱フィン21bにおける放熱効果を高めることができる。この放熱ファン27は、図9に示した変形例1の画像表示部2のケース21に対しても同様に適用することができる。
【0033】
図11は画像表示部2の変形例3の縦断面図である。カバー24の一部に補助放熱フィン28が一体に形成されている。すなわち、カバー24の表面の一部、特に液晶パネル22の無効表示領域22bに対応する領域に1つ以上の補助放熱フィン28が一体に形成されている。この構成では、液晶パネル22で発生した熱は無効表示領域22bからカバー24に伝熱され、補助放熱フィン28から放熱される。このように比較的に広い面積の無効表示領域22bからの放熱が行われるので、放熱効果が高められる。この補助放熱フィン28は、HUD装置1に配設されたときに凸面鏡31等の他の構成部品と干渉しない形態で配設される。
【0034】
図12は画像表示部2の変形例4の縦断面図である。ケース21には放熱フィンは形成されておらず、ケース21は別体に構成した別体ヒートシンク4にヒートパイプ29により熱的に連結されている。ここでは、画像表示部2を内装しているHUD装置1のハウジング11の外部に別体ヒートシンク4が配設されている。そして、当該ハウジング11を貫通して延長配設されたヒートパイプ29によりケース21と別体ヒートシンク4とが連結されている。LED23a及び液晶パネル22において発生した熱はケース21からヒートパイプ29を介して別体ヒートシンク4に伝熱され、ここから放熱される。別体ヒートシンク4はハウジング11の外部に配置されているので放熱効果がより高められる。変形例4と同様にカバー24からヒートパイプ29を介して別体ヒートシンク4を接続し、放熱効果を高めてもよい。
【0035】
以上の実施形態及び変形例において、画像表示部2に設けられている伝熱シート25,26は、伝熱性が高くかつ液晶パネル22とケース21及びカバー24との間の応力を吸収する効果がある部材が好ましく、例えば伝熱グリスが用いられてもよい。ただし、伝熱グリスを使用する際は、使用環境の影響等によりグリスが流出し、有効表示領域22aに付着する不具合が発生することは容易に想像がつく。そのため、有効表示領域と伝熱シート25及び26の境界には流出防止のための構造を設けることは言うまでもない。
【0036】
本発明において、画像表示部2の表示パネルは表示する画像に対応した画像光を出射する構成であればよいので、微細ミラーをマトリクス配置して光源の光を選択的に反射して画像光を出射するDMD装置で構成されてもよい。あるいは、有機ELやエレクトロミック素子で構成されてもよい。
【0037】
本発明におけるウインドシールドは実施形態に記載の自動車のフロントガラスに限定されるものではなく、車両に備えられる透光性のあるウインド等の車体の一部であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 HUD装置
2 画像表示部
3 光学系
4 別体ヒートシンク
21 ケース
21b 放熱フィン
22 表示パネル(液晶パネル)
22a 有効表示領域
22b 無効表示領域
23 バックライト光源
23a LED(発光ダイオード)
24 カバー
25,26 伝熱シート
27 放熱ファン
28 補助放熱フィン
29 ヒートパイプ
31 第1反射部(凸面鏡)
32 第2反射部(凹面鏡)
WS ウインドシールド
L 画像光
I 虚像(表示画像)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12