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  • 特許-離型剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】離型剤
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/60 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
B29C33/60
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020109087
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006705
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】平松 信志
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-288606(JP,A)
【文献】特開2004-034463(JP,A)
【文献】特開昭51-084859(JP,A)
【文献】米国特許第5028366(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意に選択した二種類の炭化水素系ワックスの融点の差が30℃以上である、複数の炭化水素系ワックスを乳化してなるワックスエマルションを含み、
前記二種類の炭化水素系ワックスのうちの高融点側の炭化水素系ワックスと低融点側の炭化水素系ワックスとの重量比が50/50以上82/18以下であり、
前記複数の炭化水素系ワックスの合計含有量が1重量%以上15重量%以下である、離型剤。
【請求項2】
前記融点の差が90℃以下である、請求項1に記載の離型剤。
【請求項3】
融点の差が30℃以上である二種類の炭化水素系ワックスを乳化してなるワックスエマルションを含む離型剤であって、高融点側の炭化水素系ワックスと低融点側の炭化水素系ワックスとの重量比が50/50以上82/18以下であり、
前記二種類の炭化水素系ワックスの合計含有量が1重量%以上15重量%以下である、離型剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型剤に関し、特に離型性及び接着性に優れるポリウレタン樹脂等の成形品の製造に適した離型剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂等の多孔質のプラスチックフォームの成形時に、成形品の金型からの離型を容易にするために、不揮発成分としてワックス若しくはシリコーン、又はこれらの混合物を含有した離型剤が使用されている。このため、成形品の表面には離型剤の成分が金型から転着している。転着成分は化学的に不活性であり、その性状がグリース状、オイル状又は固体状であることから、成形品の接着性が悪くなることがある。例えば革巻ステアリングホイールの製造において、革材料を成形品に接着する際に、成形品に転着した離型剤の成分に起因して接着性が不足することがある。
【0003】
成形品の接着性を向上させるための前処理として、紙やすりによるサンディング処理、有機溶剤によるワイピング、バフ加工等が挙げられる。特許文献1には、成形品の接着表面を二酸化珪素粉末と溶剤との混合物で洗浄し、接着表面に1m2 当り1~10gの二酸化珪素を付着させた後に接着剤を用いて接着を行う、多孔質のプラスチックフォーム成形品の接着方法の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4800811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の前処理を行った場合においても、離型剤が除去できていないこともあり、また前処理は煩雑であるので、前処理を行わずに成形品の接着を行うことが望まれている。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、成形品の金型との離型性が良好であり、成形品への成分の転着が少なく、成形品の接着性も良好である離型剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、融点の差が25℃以上である二種類の炭化水素系ワックスを乳化してなるワックスエマルションを含む離型剤が成形品の金型との離型性が良好であることに加えて、成形品への転着が少なく、成形品の接着性が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の一態様に係る離型剤は、任意に選択した二種類の炭化水素系ワックスの融点の差が25℃以上である、複数の炭化水素系ワックスを乳化してなるワックスエマルションを含む。
ここで、融点の差は、二種類の炭化水素系ワックスの混合物につきDSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量分析)を行って得られたDSC曲線の2つのピークトップの差により求める。
二種類の炭化水素系ワックスとは夫々、一つの炭化水素系ワックスを含むものでもよく、2つ以上の炭化水素系ワックスを混合したものであってもよい。
複数の炭化水素系ワックスとは、二種類、又三種類以上の炭化水素系ワックスを意味する。
【0009】
上述の離型剤において、前記融点の差が90℃以下であってもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る離型剤は、融点の差が25℃以上である二種類の炭化水素系ワックスを乳化してなるワックスエマルションを含む離型剤であって、高融点側の炭化水素系ワックスと低融点側の炭化水素系ワックスとの重量比が50/50以上92/8以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形品の金型との離型性が良好であり、成形品への成分の転着が少なく、成形品の接着性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】高融点側のワックスと低融点側のワックスとの重量比が同じである実施例3、実施例4、及び比較例3に基づいて、融点差と脱型力、及び接着力との関係を求めたグラフである。
図2】融点差が同じである実施例1、実施例2、実施例3、比較例1に基づいて、高融点側の炭化水素系ワックスの炭化水素系ワックスの総量100重量%に対する比率と脱型力、及び接着力との関係を求めたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の実施形態の一態様に係る離型剤は、任意に選択した二種類の炭化水素系ワックスの融点の差が25℃以上である、複数の炭化水素系ワックスを乳化してなるワックスエマルションを含む。
炭化水素系ワックスは、天然ワックス及び合成ワックスのいずれでもよい。天然ワックスとしては、動植物ワックス、石油ワックス等の鉱物ワックスが挙げられる。石油ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等が挙げられる。合成ワックスとしては、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0014】
二種類の炭化水素系ワックスは夫々、上述の一つの炭化水素系ワックスを含むものでもよく、2つ以上の炭化水素系ワックスを混合したものであってもよい。
二種類の炭化水素系ワックスの融点の差が25℃以上である場合、成形品の金型との離型性及び接着性が良好である。これは、高融点側の炭化水素系ワックスにより離型剤の膜強度が大きくなり、成形品への成分の転着が少なくなり、低融点側の炭化水素系ワックスにより離型性が確保されるためであると考えられる。
二種類の炭化水素系ワックスの融点の差は90℃以下であるのが好ましい。融点の差の上限は80℃、73℃、63℃、60℃、55℃の順に好ましい。融点の差の下限は30℃、35℃、40℃の順により好ましい。
【0015】
ワックスエマルションにおける炭化水素系ワックスの配合量については、炭化水素系ワックスの種類と配合比、他の配合成分の種類と配合量等に応じて適宜設定できる。例えば炭化水素系ワックスの総量の配合量は、ワックスエマルション100重量%に対し、1重量%以上30重量%以下とすることが好ましい。この場合、エマルション粒子を容易に形成でき、成形品の金型との離型性及び成形品の接着性が良好である。炭化水素系ワックスの総量の下限は、より好ましくは3重量%である。炭化水素系ワックスの総量の上限は、より好ましくは20重量%、さらに好ましくは15重量%である。
【0016】
本発明の実施形態の一の態様に係る離型剤は、融点の差が25℃以上である二種類の炭化水素系ワックスを乳化してなるワックスエマルションを含む離型剤であって、高融点側の炭化水素系ワックスと低融点側の炭化水素系ワックスとの重量比が50/50以上92/8以下である。この場合、成形品の金型との離型性及び成型品の接着性が良好である。この重量比であれば、高融点側の炭化水素系ワックスにより離型剤の膜強度が大きくなり、成形品への転着が少なくなり、低融点側の炭化水素系ワックスにより離型性が確保されるためであると考えられる。前記重量比の下限は、より好ましくは53/47、さらに好ましくは60/40である。前記重量比の上限は、より好ましくは88/12、さらに好ましくは82/18である。
【0017】
ワックスエマルションは、水を含む。使用する水は、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水等のいずれでもよく、その水は硬水であるか軟水であるかを問わない。ワックスエマルションにおける水の配合量については、ワックスエマルション100重量%に対して、70重量%以上95重量%以下とすることができる。水の配合量の下限は、80重量%が好ましく、水の配合量の上限は、90重量%が好ましい。
【0018】
ワックスエマルションは、炭化水素系ワックスを乳化剤により乳化して得られる。乳化剤としては公知の界面活性剤を適宜使用することができる。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤のいずれも使用することができる。界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0019】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0020】
乳化剤の配合量については、乳化剤の種類、他の配合成分の種類や配合量等に応じて適宜設定できる。例えば、乳化剤の配合量は、ワックスエマルション100重量%に対して、0重量%超過9.0重量%以下とすることが好ましい。この場合、目的のエマルション粒子を容易に形成でき、且つワックスエマルションの安定性を向上させ、成形品の離型性に優れる。乳化剤の配合量の下限は、より好ましくは0.1重量%、さらに好ましくは0.5重量%である。乳化剤の総量の上限は、7.0重量%、5.0重量%、3.0重量%の順に好ましい。
【0021】
ワックスの乳化は従来の方法によって行うことができるが、乳化時の安定性からは転相乳化法を用いるのが好ましい。
【0022】
ワックスエマルションを調製する場合、乳化助剤及びpH調整剤等の他の添加剤を配合してもよい。
乳化助剤としては、例えばセチルアルコール、ラウリルアルコール等の高級アルコール、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、酸化ワックス、塩素化パラフィン、流動パラフィン等が挙げられる。乳化助剤の配合量については、乳化助剤の種類、他の配合成分の種類や配合量等に応じて適宜設定できる。例えば、乳化助剤の配合量は、ワックスエマルション100重量%に対して、0重量%以上9.0重量%以下とすることが好ましい。この場合、目的のエマルション粒子を容易に形成でき、且つワックスエマルションの安定性を向上させ、成形品の金型との離型性に優れる。乳化助剤の配合量の下限は、より好ましくは0.1重量%、さらに好ましくは0.5重量%である。乳化助剤の配合量の上限は、より好ましくは7.0重量%、さらに好ましくは5.0重量%である。
【0023】
pH調整剤としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基やトリエチルアミン等の有機塩基が挙げられる。pH調整剤の配合量については、pH調整剤の種類、他の配合成分の種類や配合量等に応じて適宜設定できる。例えば、pH調整剤の配合量は、ワックスエマルション100重量%に対し、0重量%以上3重量%以下とすることが好ましい。この場合、ワックスエマルションのpHを弱塩基性にすることができ、金型の腐食を防ぐことができるとともに、ワックスエマルションの腐敗も抑制することができる。pH調整剤の下限は、より好ましくは0.1重量%、さらに好ましくは0.2重量%である。pH調整剤の上限は、より好ましくは1重量%である。
【0024】
実施形態のワックスエマルションは、そのまま離型剤として使用できる。また、実施形態のワックスエマルションを原液とし、さらに水等の希釈剤で希釈して離型剤としてもよい。希釈倍率は、ワックスエマルション中の炭化水素系ワックスの配合量等に応じて適宜設定できる。
ワックスエマルションを希釈する場合、ワックスエマルションの配合量は離型剤100重量%に対して1重量%以上40重量%以下であるのが好ましい。配合量の下限は、より好ましくは2重量%、さらに好ましくは5重量%である。前記配合量の上限は、より好ましくは30重量%、さらに好ましくは20重量%である。固形分が離型剤100重量%に対し0.5重量%以上2重量%以下であるのが好ましい。
【0025】
ワックスエマルションを希釈して離型剤を調製する場合、撹拌装置を備えた容器中に上記のワックスエマルション、及び水を任意の比率で投入し、均一な溶液になるまで撹拌を行うことで、水性の離型剤を得ることが出来る。調製の際、すでにエマルションとなっているものを水と混合するものであり、特に加温を行う必要はない。
【0026】
実施形態の離型剤を金型に塗布する方法としては、スプレー塗布又ははけ塗り等によって塗布する方法がある。金型に付着する離型剤の不揮発成分量は1m2 あたり0.5g以上20g以下、好ましくは3g以上10g以下である。上記の量を金型に塗布することによって離型性が十分に得られ、金型汚れが少なく、かつ経済的にも有利である。
【0027】
実施形態の離型剤を用いて成形する際の金型温度は40℃以上80℃以下、好ましくは60℃以上80℃以下である。金型温度が低すぎると、溶媒である水の蒸発速度が遅くなり、作業効率の観点から好ましくない。
また、実施形態の離型剤には必要に応じて、エチルアルコールなどのアルコール、フッ素成分やシリコーン成分等の他の離型成分、防錆剤や防腐剤等の他の成分を配合してもよい。
【0028】
金型に充填する合成樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等があり、中でもポリウレタン樹脂が好ましい。
【0029】
成形品に接着させる材料としては、ポリアクリル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の合成樹脂、牛等の天然皮革、合成皮革、クロス、金属、セラミックス等が挙げられる。
【0030】
接着剤としては、従来公知の各種の接着剤が用いられる。例えば、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム等のゴム系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤等の熱硬化性接着剤が挙げられる。これらの接着剤の塗布方法は、特に限定されないがヘラや刷毛で塗布するか、またはスプレーで塗布する方法を使用できる。これらの塗布方法のうち、作業性の観点からスプレーで塗布する方法が好ましい。
【実施例
【0031】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0032】
1.離型剤の調製
[実施例1]
下記の表1に従う配合比(重量部で示す)のワックス1、ワックス5、乳化助剤、乳化剤、及びpH調整剤を加熱溶融させておき、水(熱湯)を徐々に添加し、転相乳化によってワックスエマルションを得た。ワックスエマルションを水で9倍に希釈し、実施例1の離型剤を得た。ワックス5は2つの炭化水素系ワックスの混合物である。表1中のワックス1及びワックス5の融点は、商品名「EXSTA6000 DSC6200」(セイコーインスツルメンツ株式会社製)の示差走査熱量分析機器を用い、ワックス1及びワックス5の混合物についてDSCを行って得られたDSC曲線のピークトップから求め、2つのピークトップの差をワックス1及びワックス5の融点差としている。他の実施例及び比較例も同様にして融点及び融点差を求めた。
【0033】
【表1】
【0034】
[実施例2、3]
ワックス1とワックス5との配合比を上記表1の通り変えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2、3の離型剤を調製した。
[実施例4、5]
ワックス3とワックス5とを、ワックス1とワックス6とを、上記表1の配合比に従って配合したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4、5の離型剤を調製した。
【0035】
[比較例1~7]
下記表2の配合比に従ってワックスを配合したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1~7の離型剤を調製した。
【0036】
【表2】
【0037】
2.性能評価
以下のようにして成形品を製造し、成形品の金型との離型性及び成型品の接着性を評価した。
[成形品の製造]
65±3℃に加温した試験用の金型の内壁面に、実施例1~5、及び比較例1~7の離型剤をスプレーガンを用いて、金型当たり13g、均一に噴霧塗布した。
ポリウレタン樹脂を金型内に注入し、硬化させて成形品を得た。
【0038】
[離型性評価]
ポリウレタン樹脂が硬化した後、金型から成形品を脱型させるのに要する荷重をプッシュプルスケールで測定した。この荷重を脱型力とする。脱型力の評価を上記表1及び表2の下段に示す。評価の内容は以下の通りである。
A:80N未満
B:80N以上100N未満
C:100N以上
【0039】
[接着性評価]
成形品と革との両方に接着剤を刷毛で塗布し、革を成形品に貼り合わせ、23℃の恒温槽で24時間静置した後、180°ピーリングにより成形品から革を剥離し、剥離に要する荷重をプッシュプルスケールで測定した。この荷重を接着力とする。接着力の評価を上記表1及び表2の下段に示す。評価の内容は以下の通りである。
A:15N以上
B:10N以上15N未満
C:10N未満
【0040】
図1は、高融点側のワックスと低融点側のワックスとの重量比が同じである実施例3、実施例4、及び比較例3に基づいて、融点差と脱型力、及び接着力との関係を求めたグラフである。図1の横軸は融点差(℃)、左側の縦軸は脱型力(N)、右側の縦軸は接着力(N)である。図1中、実線は融点差と脱型力との関係を示すグラフ、破線は融点差と接着力との関係を示すグラフである。
表1及び表2、並びに図1より、二種類の炭化水素系ワックスの融点差が25℃以上である実施例の場合、比較例と比べて成型品の金型との離型性及び成型品の接着性が良好であることが分かる。
融点差の上限は90℃、80℃、73℃、63℃、60℃、55℃の順に好ましい。融点差の下限は30℃、35℃、40℃の順により好ましい。
【0041】
図2は、融点差が同じである実施例1、実施例2、実施例3、比較例1に基づいて、高融点側の炭化水素系ワックスの炭化水素系ワックスの総量100重量%に対する比率と脱型力、及び接着力との関係を求めたグラフである。図2の横軸は比率(%)、左側の縦軸は脱型力(N)、右側の縦軸は接着力(N)である。図2中、実線は比率と脱型力との関係を示すグラフ、破線は比率と接着力との関係を示すグラフである。
表1及び表2、並びに図2より、二種類の炭化水素系ワックスのうちの高融点側の炭化水素系ワックスの比率が50重量%以上92重量%以下である実施例の場合、即ち高融点側の炭化水素系ワックスと低融点側の炭化水素系ワックスとの重量比が50/50以上92/8以下である場合、比較例と比べて離型性及び接着性が良好であることが分かる。前記重量比の下限は、より好ましくは53/47、さらに好ましくは60/40である。前記重量比の上限は、より好ましくは88/12、さらに好ましくは82/18である。
【0042】
以上より、本発明の離型剤は、成形品の金型との離型性が良好であり、成形品の接着性も良好であることが確認された。
【0043】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
例えば前記実施形態においては、二種類の炭化水素系ワックスを配合してワックスエマルションを調製する場合につき説明しているがこれに限定されず、例えば三種類の炭化水素系ワックスを配合してワックスエマルションを調製してもよい。
図1
図2