(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】炎検知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/12 20060101AFI20240621BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20240621BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G08B17/12 A
G08B17/00 G
H05K5/06 B
H05K5/06 D
(21)【出願番号】P 2020145473
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】萩原 直紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小町 淳
(72)【発明者】
【氏名】西川 浩平
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-071775(JP,A)
【文献】特開2017-138968(JP,A)
【文献】特開2002-358583(JP,A)
【文献】特開2010-073019(JP,A)
【文献】特開平08-180273(JP,A)
【文献】実開平02-080891(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0073926(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00-17/12
H05K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎の検出機能を有する回路が形成された回路基板を内蔵した防爆構造を構成する筐体と、
前記筐体の正面側に設けられた開口部に臨むように配設され、炎が発する所定波長光を受光する複数の検知用受光素子と、
前記開口部と前記複数の検知用受光素子との間に設けられた検知窓と、
前記筐体の正面側に光放出部が露出するように設けられた表示灯と、
を備えた炎検知器であって、
前記表示灯は、
光導入部を有し前記筐体の前記開口部の縁部より光放出部が露出するように配設された透光性材料からなる環状の光放出部材と、
前記回路基板の所定位置に実装された発光素子と、
前記発光素子に一方の端面が対向し前記光放出部材の前記光導入部の入射面に他方の端面が対向するように配設された導光部材と、を備えることを特徴とする炎検知器。
【請求項2】
前記導光部材は、ガラスにより構成され、外周面に弾性材料からなる保護膜が被着されていることを特徴とする請求項1に記載の炎検知器。
【請求項3】
前記筐体の正面側には、前記開口部に対応した開口部を有し表面が黒色を呈するカバープレートが接合され、
前記光放出部材の環状本体部は、前記カバープレートの内側縁部と前記筐体の壁面との間に挟持されるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の炎検知器。
【請求項4】
前記光導入部は、前記回路基板の側へ突出する突出部を備え、前記突出部の周囲にシール材が介装されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の炎検知器。
【請求項5】
前記回路基板には、前記検知窓に向かって光を出射する試験用発光素子と、前記検知窓を挟んで反対の側の所定位置に配置され前記試験用発光素子の出射光を受光する試験用受光素子と、が実装され、
前記光放出部材には、前記試験用受光素子に対応する部位に前記光放出部材の環状本体部に入射された光を誘導して前記回路基板の側へ出射させる光導出部が設けられ、
前記光導出部と前記試験用受光素子との間には導光部材が配設されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の炎検知器。
【請求項6】
前記光導出部は、前記回路基板の側へ突出する突出部を備え、前記突出部の周囲にシール材が介装されていることを特徴とする請求項5に記載の炎検知器。
【請求項7】
前記光放出部の表面には金属膜等の反射膜が形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の炎検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎の検知を行う炎検知器に関し、特に可燃性ガスが充満又は滞留するおそれのある場所に設置される耐圧防爆構造を有する炎検知器において筐体の前面側に設けられる表示灯の視認性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内部に設けられている火災報知システムに使用される火災感知器にはサーミスタを使用した熱感知器や光電式の煙感知器、赤外線センサのような素子を備え炎に固有の波長光を捉えて感知を行う炎検知器など種々の形式のものがある。いずれの形式の火災感知器においても、感知器が火災を検出していること示す作動表示灯や故障等の状態を表示する状態表示灯が設けられている。従来、火災感知器の表示灯は、点発光タイプのLED(発光ダイオード)を用いて感知器の表面の1カ所に設けられることが多い。
かかる点発光タイプの表示灯は視認の方向性が生じ、見る方向によっては表示灯が見えなくなるため、火災検出時に感知器の作動を確認する作業に手間がかかってしまうという課題がある。
【0003】
そこで、表示灯の視認方向性をなくすために複数の点発光タイプのLEDを感知器のカバーに設けたり、感知器頭頂部に点発光タイプの表示灯を設置したり、あるいは特許文献1の発明のように、感知器のカバーの平坦部に環状に発光する表示灯を設けたものもある。このような感知器は、発光部の見え方が低減することを抑え、感知器の作動の確認が容易になる。
一方、従来、火災感知器として可燃性ガスが充満又は滞留するおそれのある場所に設置される防爆型炎検知器がある。炎検知器は、筐体の正面開口部から赤外線を受光して炎を検知する受光素子を備えており、受光素子の正面には透明な保護用ガラスが設けられた受光窓(センサ窓)が設けられている。従来、防爆型炎検知器においては、特許文献2の発明のように、受光窓の内側に点光源タイプの表示灯が配されていた。なお、特許文献1の火災感知器は、非防爆型の炎検知器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-71775号公報
【文献】特開2002-358583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている環状の表示灯は、回路基板上に実装されたLEDの光を環状の光放出部へ誘導するため光放出部と直交する方向に延びる柱状の光入射部が光放出部と一体に設けられている。かかる環状の表示灯は点光源タイプの表示灯に比べて面積が大きいとともに方向性がないため視認性に優れるという利点を有する。そこで、本発明者らは、環状の表示灯を防爆型炎検知器に設けることを検討した。
【0006】
その結果、上記のような光入射部と光放出部とが一体の構造の表示灯を防爆型炎検知器に設けた場合、衝撃試験や過圧試験の際に光入射部と光放出部との境界部に応力集中が生じて破損するおそれがあるという課題があることが分かった。
また、上記特許文献1の環状の表示灯は、光入射部と光放出部が透明な材料(合成樹脂)で形成されているが、光入射部(導光部)と光放出部とを別個の透明な材料で形成した場合、光入射部(導光部)と光放出部との間に隙間(空気層)が生じることとなる。そのため、その隙間に水が浸入すると、光の屈折率が変わることで光が外部へ拡散して輝度が低下してしまうという課題があることが明らかになった。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、破損のおそれを回避しつつ視認性の高い表示灯を備えた炎検知器を提供することにある。
本発明の他の目的は、導光部材と光放出部とを別個の透明な材料で形成した場合に、それらの部材の隙間に水が浸入したとしても、輝度が低下するおそれがなく、高い視認性を維持することができる表示灯を備えた炎検知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、
炎の検出機能を有する回路が形成された回路基板を内蔵した防爆構造を構成する筐体と、
前記筐体の正面側に設けられた開口部に臨むように配設され、炎が発する所定波長光を受光する複数の検知用受光素子と、
前記開口部と前記複数の検知用受光素子との間に設けられた検知窓と、
前記筐体の正面側に光放出部が露出するように設けられた表示灯と、
を備えた炎検知器であって、
前記表示灯は、
光導入部を有し前記筐体の前記開口部の縁部より光放出部が露出するように配設された透光性材料からなる環状の光放出部材と、
前記回路基板の所定位置に実装された発光素子と、
前記発光素子に一方の端面が対向し前記光放出部材の前記光導入部の入射面に他方の端面が対向するように配設された導光部材と、を備えるように構成したものである。
【0009】
上記のような構成を有する炎検知器によれば、環状の光放出部材を有する表示灯を備えているため、点光源タイプの表示灯に比べて光放出部の面積を大きくして視認性を向上させることができる。また、環状の光放出部材と発光素子の光を光放出部材へ誘導する導光部材とが分離されているため、衝撃試験や過圧試験の際に光放出部材と導光部材との境界部に応力集中が発生するのを回避して表示灯の破損を防止することができる。その結果、耐圧防爆構造の炎検知器において、試験時の衝撃力や圧力よる破損のおそれを回避しつつ視認性の高い表示灯を実現することができる。
ここで、「防爆構造を構成する筐体」や「防爆構造を構成する固定部材」とは、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所が技術指針として刊行している「工場電気設備防爆指針」における「第1編総則」や「第2編耐圧防爆構造“d”」の「容器の材料」にて示されている条件に適合している材料を用いたものである。後述の実施例においては金属、より具体的にはステンレス鋳鋼を採用している。なお、上記指針の「非金属製容器及び容器の非金属製部分」で示されているように、金属製以外の場合、その材料としては例えばサファイアガラスやダイヤモンド、プラスチック等、上記指針を満たすものであれば良い。
【0010】
ここで、望ましくは、前記導光部材は、ガラスにより構成され、外周面に弾性材料からなる保護膜が被着されているようにする。
かかる構成によれば、導光部材の耐力を高めつつ外周の弾性材料で導光部材の破損を防止することができるため、検知器の表面側に表示灯を構成する環状の光放出部材を設けることができ、耐圧防爆構造の筐体に適合した視認性の高い表示灯を実現することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記筐体の正面側には、前記開口部に対応した開口部を有し表面が黒色を呈するカバープレートが接合され、
前記光放出部材の環状本体部は、前記カバープレートの内側縁部と前記筐体の壁面との間に挟持されるように構成する。
かかる構成によれば、光放出部材の光放出部(テーパ面部)の周囲が黒色のカバープレートの開口部の縁部で囲まれているため、光放出部と周囲との明度差が大きくなり、より鮮明に光放出部の発光状態を視認させることができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記光導入部は、前記回路基板の側へ突出する突出部を備え、前記突出部の周囲にシール材が介装されているようにする。
かかる構成によれば、突出部の周囲にシール材が設けられているため、光導入部の入射面と導光部材の端面との隙間に水が浸入するのを防止することができ、隙間に水が浸入することで光放出部材へ入射する光量が減少して、光放出部の輝度が低下するのを防止することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記回路基板には、前記検知窓に向かって光を出射する試験用発光素子と、前記検知窓を挟んで反対の側の所定位置に配置され前記試験用発光素子の出射光を受光する試験用受光素子と、が実装され、
前記光放出部材には、前記試験用受光素子に対応する部位に前記光放出部材の環状本体部に入射された光を誘導して前記回路基板の側へ出射させる光導出部が設けられ、
前記光導出部と前記試験用受光素子との間には導光部材が配設されているように構成する。
かかる構成によれば、検知窓に向かって光を出射する試験用発光素子と試験用受光素子と判定回路を備えるため、検知窓の汚れを検知することができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記光導出部は、前記回路基板の側へ突出する突出部を備え、前記突出部の周囲にシール材が介装されているようにする。
かかる構成によれば、耐圧防爆構造の筐体を有する炎検知器において、耐力を低下させることなく検知窓の汚れを検知するための回路や試験光を誘導する構造を実現することができる。
さらに、前記光放出部の表面には反射膜が形成されているようにしても良い。光放出部の表面が水で濡れると光の屈折率が変わることで光が外部へ拡散して輝度が低下するおそれがあるが、反射膜が形成されていると、外部への光の洩れをなくして光放出部の輝度を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、破損するおそれを回避しつつ光放出部の面積を大きくして視認性の高い表示灯を備えた炎検知器を提供することができる。また、導光部材と光放出部とを別個の透明な材料で形成した場合に、それらの部材の隙間に水が浸入したとしても、輝度が低下するおそれがなく、高い視認性を維持することができる表示灯を備えた炎検知器を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る炎検知器の一実施形態を示すもので、(A)は炎検知器を斜め上方から見た斜視図、(B)は炎検知器を斜め下方から見た斜視図である。
【
図2】実施形態の炎検知器の内部構造を示す断面図である。
【
図3】実施形態の炎検知器の上部ケース内部における表示灯の導光構造を示す拡大断面図である。
【
図4】実施形態の炎検知器の表示灯を構成する光放出部材の構造を示すもので、(A)は光放出部材を斜め上方から見た斜視図、(B)は光放出部材を斜め下方から見た斜視図である。
【
図5】実施形態の炎検知器における試験用光源と試験用受光素子の配置例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る炎検知器の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態の炎検知器10の斜視図、
図2はその内部構造を示す断面図である。
炎検知器は、一般に、背面側を取付け面に向けた状態で建造物の壁面に直接あるいは角度調整器などを台座として固定設置され、正面前方の領域の炎を検出する。かかる炎検知器は、検知対象のエリア内の複数の炎検知器を集中的に管理する図示しない受信機に配線により接続され、炎を検出すると、検出信号を受信機へ送信する。
【0018】
なお、以下の説明では、説明の便宜上、炎検知器を建造物に設置した状態で正面前方になる側を上側、背面側を下側と称する。また、本実施形態の炎検知器10では、
図2に示すように、筐体20内に各々検出波長の異なる三つの赤外線センサ(例えば焦電素子)などからなる検知用受光素子50A,50B,50Cが紙面と直交する方向に並んで回路基板223上に配設されており、場合によっては、炎検知器10の検知用受光素子50A,50B,50Cが向く方向を正面側、反対側を背面側と呼ぶ。なお、回路基板223には、検知用受光素子の他、これらの素子からの信号を増幅する回路や炎の有無を判定する回路等を構成する素子やICが実装されている。
【0019】
本実施形態の炎検知器10は、
図1(B)に示すように、円筒状をなす上部ケース220と、その正面側を覆う円板状のカバープレート210と、円筒状をなし上部ケース220の背面側に結合されて設置箇所に固定される下部ケース230とからなる筐体20を備える。このうち上部ケース220と下部ケース230はステンレス鋳鋼製であり、カバープレート210はアルミ鋳造品でアルマイト処理を行うことで表面が黒色を呈するように形成されている。カバープレート210は、
図1(A)に示すように、4箇所に設けられたネジ挿通穴に挿通されたネジ219によって、上部ケース220の上面に結合されている。
【0020】
カバープレート210と上部ケース220の上壁221には、
図1(A)に示すように、長円状の受光窓部210A,220Aがそれぞれ形成され、受光窓部220Aには、例えばサファイアガラスのような透光材料からなる保護カバー222が検知用受光素子50A,50B,50Cの上方を覆うように配設されている。なお、本明細書においては、受光窓部210A,220Aに配設される透光性保護カバー222を検知窓と称する。
【0021】
上部ケース220の下部は、上記下部ケース230よりも若干外径が大きなドーム状の円筒体であり、上部ケース220の下部の開口部に下部ケース230の上端部が挿入され、上部ケース220の内側に下部ケース230の上端部が嵌め込まれる。そして、
図1(B)に示すように、下部ケース230の底壁部233に側方へ突出するように形成された固定片233aに挿通されたネジ241によって、下部ケース230と上部ケース220とが結合されるように構成されている。
また、下部ケース230の下側には、翼状をなすフランジ状の取付けベース231が形成され、取付けベース231の4隅にネジ挿通穴232が形成されそのネジ挿通穴232に挿通されたネジによって設置面に固定されるように構成されている。
【0022】
図2には、炎検知器10の断面構造が示されている。
図2に示すように、カバープレート210と上部ケース220の上壁221との間には、透明な樹脂で形成された発光表示部を構成する長円環状の光放出部材211が配設されており、光放出部材211は受光窓部210Aを有するカバープレート210の内側縁部の下面とカバープレート210の上面との間に挟持されている。
光放出部材211は環状(リング状)の本体部の断面が台形をなすように形成されており、リング内側に位置するテーパ部が光放出面として、カバープレート210の受光窓部210Aの内側に露出するように構成されている。さらに、上部ケース220の上壁221の受光窓部220Aの内側縁部にも、上記光放出部材211の内側に形成されたテーパ部と連続するようにテーパ部が形成されている。
【0023】
また、光放出部材211の下面には、上部ケース220内に収納された回路基板223上に実装された例えば赤色発光のLEDに対向する部位(2箇所)に光導入部211bが設けられている。これにより、光導入部211bより導入された光を環状光放出部材211に沿って反射させながら誘導して、上記窓の内側より出射させることで、光放出部材211をリング状に光らせることができるように構成されている。このとき、光放出部材211の光放出面の周囲が黒色のカバープレート210の受光窓部210Aで囲まれているため、光放出面と周囲との明度差が大きくなり、より鮮明に光放出面の発光状態を視認させることができる。
【0024】
また、上部ケース220の上壁221の下面には、受光窓部220Aを囲むようにして下方へ突出した円筒状をなす垂下壁224が形成されている。そして、この垂下壁224の内壁面には雌ネジが形成されており、この雌ネジに、外周に雄ネジが形成された円筒状のステンレス製窓固定部材225が螺合されることで、窓固定部材225が垂下壁224の内側に装着されている。
さらに、窓固定部材225は、
図3に示すように、その内周面の中段位置に内側フランジ225aが形成されており、内側フランジ225aの内端部は上方へ僅かに突出したリブが全周に亘って設けられている。そして、このリブの内側には上記内側フランジ225aの上面と窓固定部材225の内周面に接するようにL字状のシリコンゴムからなる弾性支持体226が配設されている。
【0025】
また、この弾性支持体226に外周面が接するようにして円形の検知窓222が配設され、検知窓222は、下面の縁部が上記内側フランジ225aの端部のリブに接触し、上面の縁部が上記上部ケース220の受光窓部220Aの内側縁部のテーパ部の下面に接触する状態で、上部ケース220の上壁221と窓固定部材225とに挟持されている。なお、受光窓部220Aは長円形であるのに対し、検知窓222は円形である。
【0026】
上記のように検知窓222が、ステンレス製の窓固定部材225の内側フランジ225aの端部と同じくステンレス製の上部ケース220の上壁221の下面との間に挟持されることで、機械的強度を固着剤(シリコンゴムを含む)の接着力だけに頼らない構造となる。その結果、衝撃試験時の衝撃力や過圧試験時の圧力にしっかりと耐えることができ、耐久性が向上する。
また、検知窓222の周縁部には、シリコンゴムからなる弾性支持体226が密着されているため、検知器の筐体内部の気密性を確保することができる。
さらに、検知窓222の上面縁部と上部ケース220の上壁221下面との間には、防水用のOリング227が配設されており、受光窓部220Aから浸入した水が筐体内に入るのを防止できるように構成されている。
【0027】
さらに、
図3に拡大して示すように、発光表示部(表示灯)を構成する光放出部材211の光導入部211bに対向して、透明なガラスで形成された円柱状の導光部材212が鉛直方向に配設されている。また、この導光部材212の下方の回路基板223上には発光素子としてのLED213が配設されており、LED213より出射された光は導光部材212の下端面より進入して上端面から出て光導入部211bへ入射されるように構成されている。
なお、導光部材212は、上部ケース220の垂下壁224の所定部位に形成された空洞部内に挿入され、導光部材212の下端は垂下壁224の下面に接合された支持プレート214によって支持されている。
【0028】
また、導光部材212の外周面には透明なシリコンゴムからなる保護チューブ215が密着した状態で被着されており、衝撃試験の際の衝撃からガラス製の導光部材212を保護するように構成されている。このように、導光部材212がシリコンゴムチューブで保護されているとともに、ガラスで形成されかつ光放出部材211とは分離された応力集中が生じない構造であるため、導光部材212が衝撃試験の際の衝撃力で破損するのを防止することができ、耐圧防爆構造の筐体に適合したガラス部品の支持構造が実現される。
【0029】
さらに、導光部材212が挿入される垂下壁224の所定部位に形成された空洞部の内面は鏡面加工されており、導光部材212の下端面より進入した光を反射させて、光導入部211bを介して光放出部材211へ入射される光の量が減少しないようにされている。なお、空洞部の内面は鏡面加工する代わりに、ガラス製の導光部材212の外周面に、例えばアルミ蒸着による金属膜や箔、塗料等からなる反射膜を形成して、光を反射させるように構成しても良い。
【0030】
さらに、光放出部材211の光導入部211bは、光放出部材211の環状本体部211aの裏面より少し突出するように形成され、その外周に気密性維持のためのOリング216が配設されている。
本実施例では、導光部材212と光放出部材211とが分離され、光導入部211bと導光部材212の端面とが対向する構成であるため、光導入部211bと導光部材212の端面との隙間に水が浸入すると、光導入部211bより光放出部材211へ進入するする光の量が減少するおそれがあるが、上記のように、光導入部211bの外周にOリング216が配設されているため、水が浸入して光放出部材211へ進入する光の量が減少するのを防止することができる。
【0031】
図4には、光放出部材211の具体例が示されている。
図4に示されているように、光放出部材211は、本体部211aが長円リング状をなし、互いに180度離れた部位にてリングの接線方向外側へ突出するように形成された一対の導光部の先端に設けられた一対の光導入部211bと、光導入部211bからおよそ90度離れた部位にて外側へ突出するように形成された一対のアーム211fの先端に設けられた一対の光導出部211cとを有している。上記各アームの先端には、水平方向へ進行して来た光を垂直方向へ90度変換して反射する反射部211gが設けられている。
【0032】
また、
図4(A)に示されているように、本体部211aの内縁部にはテーパ面211dが形成され、このテーパ面211dと光導入部211bおよび光導出部211cの端面を除く表面には金属膜等の反射膜が形成されていてもよい。光導入部211bより光放出部材211へ入射した光はテーパ面211dから出射するように構成されている。
上記のように、光放出部材211のテーパ面211dを除く部位の表面に反射膜が形成されている場合は、光放出部材211のテーパ面211d以外の部位から光が外部へ漏れるのを防止して、表示灯としての輝度を高めることができる。
【0033】
さらに、本実施形態の炎検知器10の筐体20の内部には、
図5に示すように、回路基板223上に、検知窓222の汚れ具合を検知するための試験用光源として2つのLED217A,217Bと2つの試験用受光素子218A,218B(
図5には表われていない)と、試験用受光素子218A,218Bからの信号に基づいて汚れを判定する判定回路を構成する素子が実装されている。試験用受光素子218A,218Bは一対の光導出部211cに対応して配設され、試験用受光素子218A,218Bと対応する光導出部211cとの間には、円柱状のガラスからなる導光部材212A,212Bが設けられている。この導光部材212A,212Bの外周にもシリコンゴムからなる保護チューブ215A,215Bが嵌合され、耐圧防爆構造の筐体に適合するように構成されている。
【0034】
また、試験用LED217A,217Bは、試験用受光素子218A,218Bとほぼ180度離れた位置に傾斜した姿勢で配設されており、試験用LED217A(217B)から出射した光は、
図5に示すように、検知窓222を通過してから光放出部材211のテーパ面211dより入射し、前記アーム先端の反射部211gで反射して導光部材212A,212Bを経由して試験用受光素子218A(218B)へ入射する。この際、検知窓222が汚れていると、試験用受光素子218A(218B)へ到達する試験光の光量が減少するので、試験用受光素子218A(218B)の検出信号に基づいて検知窓222の汚れ具合を判定することができる。
なお、試験用受光素子218A(218B)には、試験用LED217A(217B)が出射する光の波長を含む波長帯の光を検知するものが選択される。これにより、外部光のある場所に検知器が設置されている場合にも、検知窓222の汚れ具合を検知することができる。
【0035】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、検知窓222の汚れ具合を検知するための試験用LED217A,217Bと試験用受光素子218A,218Bを設けているが、これらは必須の構成ではなく省略した構成も可能である。
また、上記実施形態では、検知窓222を構成する透光性の材料としてサファイアガラスを使用すると説明したが、透光性材料はサファイアガラスに限定されるものではなく、使用する検知用受光素子の波長帯の光を透過し易い素材であれば良い。また、導光部材についてもガラスを用いると説明したが、サファイアガラスやダイヤモンド等、光を透過し易い素材であれば良い。
【符号の説明】
【0036】
10 炎検知器
20 筐体
30 ケーブル
31 カプラ
50A,50B,50C 検知用受光素子
210 カバープレート
211 光放出部材
211b 光導入部
211d テーパ面(光放出面)
212 導光部材
214 支持プレート
215 保護チューブ
216 Oリング
217A,217B 試験用光源(LED)
218A,218B 試験用受光素子
220 上部ケース
221 上壁
222 検知窓(保護カバー)
223 回路基板
224 垂下壁
225 窓固定部材
226 弾性支持体(シリコンゴム)
227 Oリング(シール材)
230 下部ケース
231 取付けベース
232 ネジ挿通穴
233 底壁部